(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シート状のマイクロ流体チップ内にマイクロ流体流路として円弧状流路が形成され、該マイクロ流体チップの該円弧状流路にロータを押し付け、回転駆動手段により該ロータを回転駆動し、該ロータの回転により該円弧状流路を蠕動させて流路内の液体を送液するマイクロ蠕動ポンプであって、
該マイクロ流体チップは、ベースに設けたチップ収容部内に収容され、
該回転駆動手段は、該ベースの取付部に取付られ、
該ロータの回転軸と垂直の平面上には、複数の自在回転体が、該平面上で該円弧状流路に押圧接触して自在回転するように保持され、
該マイクロ流体チップの該円弧状流路は、横断面が略山形形状となるように、該マイクロ流体チップの平面から膨出して円弧状に形成されるとともに、該自在回転体の該回転軌跡の半径と略同じ半径を有し、且つ該複数の自在回転体の回転軌跡に沿って配置され、
該自在回転体の反対側から該マイクロ流体チップの該円弧状流路を覆って堅固部材が取り付けられ、
該堅固部材は、該ロータ上の該自在回転体の反対側から該マイクロ流体チップを覆い、且つ該ベースに対し取り外し可能に固定具により固定され、
該マイクロ流体チップは、該堅固部材を該ベースから取り外した状態で、露出して取り外し可能とされたことを特徴とするマイクロ蠕動ポンプ。
前記ロータには、該ロータの平面と垂直方向に前記回転駆動手段として駆動モータにより駆動される回転軸が連結され、該駆動モータは該ベースに取り付けられ、該ベースに設けた開口部内に該ロータが回転可能に配設されたことを特徴とする請求項1記載のマイクロ蠕動ポンプ。
前記駆動モータの出力軸にばね保持部が嵌合され、該ばね保持部と前記ロータとの間にばねが装着され、該ロータの該自在回転体を、該ばねにより前記マイクロ流体チップの円弧状流路に押し当て付勢することを特徴とする請求項2記載のマイクロ蠕動ポンプ。
前記ロータには、前記自在回転体として複数のローラが、該ローラの外周面を該ロータの回転軸と垂直の平面上に位置させ、前記円弧状流路に押圧可能に該ロータの平面から露出して、回転自在に軸支され、該ローラは、該ロータの本体とは非接触状態で軸支されたことを特徴とする請求項1記載のマイクロ蠕動ポンプ。
前記ロータには、前記自在回転体として複数のボールが、該ボールの外周面を該ロータの回転軸と垂直の平面上に位置させ、前記円弧状流路に押圧可能に該ロータの平面から露出して、回転自在に保持されたことを特徴とする請求項1記載のマイクロ蠕動ポンプ。
前記マイクロ流体チップの円弧状流路は、2枚の高分子弾性シートを重ね合わせ、前記自在回転体が接触する側の一方の該高分子弾性シートを流路の円弧状部分で撓ませて山形形状に膨出させた状態で、該2枚の高分子弾性シートを相互に接着させて形成されたことを特徴とする請求項1記載のマイクロ蠕動ポンプ。
前記ロータの前記ローラは、回転時、該ローラの外周面の内周側と外周側の周速度が同一となるように、略円錐台形に形成され、該ローラの外周面が前記マイクロ流体チップの円弧状流路の表面と平行になるように、該ローラの支軸が傾斜して軸支されたことを特徴とする請求項4記載のマイクロ蠕動ポンプ。
前記ロータ上には3個の自在回転体が約120°の間隔をおいて配設され、前記マイクロ流体チップの円弧状流路は、約240°の角度範囲内で、円弧状に形成されたことを特徴とする請求項1記載のマイクロ蠕動ポンプ。
前記ロータの前記ボールは、該ロータの平面に設けた保持穴内に回転自在に収容され、回転時、該ボールの一部が該ロータの平面から僅かに突出して、該ボールの外周面が前記マイクロ流体チップの円弧状流路に押圧接触されることを特徴とする請求項5記載のマイクロ蠕動ポンプ。
前記堅固部材として、透明板状の堅固なカバー体が、前記自在回転体の反対側から前記円弧状流路を覆って取り付けられたことを特徴とする請求項1記載のマイクロ蠕動ポンプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のこの種の蠕動ポンプは、モータにより回転駆動する円形のロータが、その外周部に複数のローラを回転自在に軸支し、各ローラの支軸がロータの回転軸と直角方向に配置され、ロータの回転時、各ローラの外周面をチューブ(可撓性導管)に、押し当て、ロータのローラを順にチューブに押し付けて回転移動させながら、流体を送液するように構成される。
【0005】
このため、各ローラがチューブを押し付ける荷重の反力がモータの回転軸に対し垂直に印加されるため、モータの回転負荷が増大し、特に、培養液、各種試薬等の微少流体を、マイクロ流体流路に流して、細胞培養、試薬スクリーニング、化学分析などを行なう際に使用する小型のマイクロ蠕動ポンプにおいては、モータが大型化し、ポンプ全体としての小型化が難しいという課題があった。
【0006】
また、この種の蠕動ポンプは、通常、ロータを含むポンプケーシングからチューブの部分を、簡単に取り外すことができない。このため、細胞培養、試薬スクリーニング、化学分析などを行なう際、マイクロ流体流路を有したマイクロチップを、ロータのローラ部分に、簡単に接触させて取り外し可能に装着することができず、培養やスクリーニングごとに、使用済みのマイクロチップを、簡便に使い捨てすることができないという課題があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、ロータの回転負荷を減少させ、回転駆動する駆動力の低減が可能となり、流路を形成したマイクロチップの取り付け取り外しを容易に行うことができるマイクロ蠕動ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のマイクロ蠕動ポンプは、
シート状のマイクロ流体チップ内にマイクロ流体流路として円弧状流路が形成され、該マイクロ流体チップの該円弧状流路にロータを押し付け、回転駆動手段により該ロータを回転駆動し、該ロータの回転により該円弧状流路を蠕動させて流路内の液体を送液するマイクロ蠕動ポンプであって、
該マイクロ流体チップは、ベースに設けたチップ収容部内に収容され、
該回転駆動手段は、該ベースの取付部に取付られ、
該ロータの回転軸と垂直の平面上には、複数の自在回転体が、該平面上で該円弧状流路に押圧接触して自在回転するように保持され、
該マイクロ流体チップの該円弧状流路は、横断面が略山形形状となるように、該マイクロ流体チップの平面から膨出して円弧状に形成されるとともに、
該自在回転体の該回転軌跡の半径と略同じ半径を有し、且つ該複数の自在回転体の回転軌跡に沿って配置され、
該自在回転体の反対側から該マイクロ流体チップの該円弧状流路を覆って堅固部材が取り付けられ、
該堅固部材は、該ロータ上の該自在回転体の反対側から該マイクロ流体チップを覆い、且つ該ベースに対し取り外し可能に固定具により固定され、
該マイクロ流体チップは、該堅固部材を該ベースから取り外した状態で、露出して取り外し可能とされたことを特徴とする。
【0009】
この発明のマイクロ蠕動ポンプによれば、マイクロ流体チップの円弧状流路が、横断面が略山形形状となるように、マイクロ流体チップの平面から膨出して円弧状に形成されるため、ロータの各自在回転体の外周面が、円弧状流路を押圧して潰す荷重は、非常に小さくなる。つまり、例えば従来の蠕動ポンプで使用される、円形断面の可撓性チューブを、ロータで押圧し潰しながら回転駆動する場合に比して、横断面を山形形状とする円弧状流路は、ロータの押圧側が山形で反押圧側が平面となるため、円弧状流路を押圧して潰す荷重は、非常に小さくすることができる。
【0010】
さらに、円弧状流路を押し潰す荷重は、駆動用の回転軸と平行にかかるため、この押圧荷重が回転駆動手段の回転負荷に与える影響は極めて小さくなり、ロータの回転負荷を大幅に低減することができる。
【0011】
さらに、自在回転体の外周面が円弧状流路を押圧する押圧荷重は、反対側から円弧状流路を覆う堅固部材により保持されるので、小さい押圧荷重であっても、円弧状流路を効率良く潰しながら押圧移動して蠕動させることができる。
【0012】
これにより、例えば回転駆動手段として駆動モータを使用する場合、ロータの回転負荷は大幅に低減され、駆動モータに小型モータの使用が可能となるため、マイクロ蠕動ポンプの全体形状を、より小型化することができる。
【0013】
ここで、上記ロータには、ロータの平面と垂直方向に上記回転駆動手段として駆動モータにより駆動される回転軸が連結され、該駆動モータはベースに取り付けられ、該ベースに設けた開口部内に該ロータが回転可能に配設され
た構成とすることができる。
【0014】
またここで、上記駆動モータの出力軸にばね保持部を嵌合させ、該ばね保持部と上記ロータとの間にばねを装着し、該ロータの該自在回転体を、該ばねにより上記マイクロ流体チップの円弧状流路に押し当て付勢するように構成することが好ましい。これによれば、簡単な構成で、マイクロ流体チップの円弧状流路を、ロータの自在回転体に対し、適度な荷重で押し当てるように、容易に装着することができる。
【0015】
またここで、上記ロータには、上記自在回転体として複数のローラが、該ローラの外周面を該ロータの回転軸と垂直の平面上に位置させ、前記円弧状流路に押圧可能に該ロータの平面から露出して、回転自在に軸支され、
該ローラは、該ロータの本体とは非接触状態で軸支された構成とすることができる。
【0016】
またここで、上記ロータには、上記自在回転体として複数のボールが、該ボールの外周面を該ロータの回転軸と垂直の平面上で上記円弧状流路に押圧可能に、該ロータの平面から露出して回転自在に保持される構成とすることができる。
【0017】
またここで、上記マイクロ流体チップの円弧状流路は、2枚の高分子弾性シートを重ね合わせ、上記自在回転体が接触する側の一方の該高分子弾性シートを流路の部分で山形形状に撓ませて膨出させるように、該2枚の高分子弾性シートを相互に接着させて形成することができる。これによれば、蠕動ポンプ用の円弧状流路を有するマイクロ流体チップを、高い精度で且つ簡単に製造することができる。また、山形形状に膨出する円弧状流路の高分子弾性シートの部分は、より薄く形成することができるので、円弧状流路の押し潰し荷重は非常に小さくなり、ロータの回転負荷を一層低減することができる。
【0018】
またここで、上記ロータの上記ローラは、回転時、ローラの外周面の内周側と外周側の周速度が同一となるように、略円錐台形に形成され、該ローラの外周面が上記マイクロ流体チップの円弧状流路の表面と平行になるように、該ローラの支軸が傾斜して軸支される構成とすることができる。これによれば、ローラの外周面の内周側と外周側の周速度を同一にして、該ローラをスムーズに回転させ、その回転負荷を軽減することができる。
【0019】
またここで、上記ロータ上には3個の自在回転体が約120°の間隔をおいて配設され、上記マイクロ流体チップの円弧状流路は、約240°の角度範囲で、形成することができる。これによれば、ロータの回転時、常時、2個の自在回転体がマイクロ流体チップの円弧状流路を確実に押圧するため、ポンプのシール性を向上させることができる。
【0020】
また
、上記堅固部材は、上記ベースに対し固定具で固定され、該堅固部材を取り外したとき、上記マイクロ流体チップが露出して取り外し可能な状態
となるので、マイクロ流体チップの円弧状流路に液体を流して、細胞培養、試薬スクリーニング、化学分析などを行なった後、堅固部材を外すのみで、簡単にマイクロ流体チップを取り外して、使い捨てとし、新たなマイクロ流体チップを簡単にセットすることができる。
【0021】
またここで、上記ロータの上記ボールは、上記ロータの平面に設けた保持穴内に回転自在に収容され、回転時、ボールの一部が該ロータの平面から僅かに突出して、該ボールの外周面が上記マイクロ流体チップの円弧状流路の表面に押圧接触するように構成することができる。これによれば、ロータの平面から僅かに突出するボールの外周面で、マイクロ流体チップの円弧状流路の表面を押圧して、良好に蠕動ポンピングを行なうことができる。
【0022】
またここで、上記堅固部材として、透明板状の堅固なカバー体を、上記自在回転体の反対側から円弧状流路を覆って取り付けることができる。これによれば、外側から透明なカバー体を通して円弧状流路の状態を観察することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のマイクロ蠕動ポンプによれば、ロータの回転負荷を減少させ、回転駆動する回転駆動手段の駆動力の低減が可能となり、円弧状流路を形成したマイクロ流体チップの取り付け取り外しを容易に行うことができ、マイクロ流体チップの使い捨て使用も容易に可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜
図12は第1実施形態のマイクロ蠕動ポンプを示し、このマイクロ蠕動ポンプは、マイクロ流体チップに形成した流路内で、微小流量の液体を送液するために、ロータ10上に3個のローラ15を軸支して構成したマイクロ蠕動ポンプの一例を示している。
【0026】
このマイクロ蠕動ポンプは、概略的には、シート状のマイクロ流体チップ20内にマイクロ流体流路として円弧状流路21が形成され、マイクロ流体チップ20の円弧状流路21にロータ10のローラ15を押し付け、回転駆動手段としての駆動モータ4によりロータ10を回転駆動し、ロータ10の回転により円弧状流路21を蠕動させて流路内の液体を送液するように構成される。
図1,3,4,5に示すように、駆動モータ4は、ベース1の下部に設けた取付部3に、上向きに取り付けられる。
【0027】
ベース1は、取付部3の上部に板状部を一体に形成して構成され、板状部には、マイクロ流体チップ20を収容するホルダーとして機能させるために、略正方形のチップ収容部8が形成される。板状部の下側には取付部3が下側に向けて突設され、その取付部3に駆動モータ4が上向きに取り付けられる。取付部3には開口部が下方に開口して形成され、その開口部に、下側から駆動モータ4の出力軸側が挿入されて固定される。ベース1の板状部には、上面に略長方形のチップ収容部8がシート状の空間として、且つ上方を開口して形成される。チップ収容部8の中央に円形の開口部9が形成され、円形の開口部9には、
図12に示すロータ10の上部が下側から挿入される。
【0028】
図3に示すように、駆動モータ4の出力軸4aは上向きに設けられ、その出力軸4aには、ばね保持部13が上から被せるように固定される。ばね保持部13上にはコイルばね14を介して、カップを伏せた形状のロータ10(
図12)が、上から被せるように取り付けられる。ばね保持部13の外周には、コイルばね14が、そのフランジ部13aとロータ10との間に装着される。
【0029】
ロータ10は、このコイルばね14によって、ばね保持部13つまり駆動モータ4の出力軸4aに対し上方に付勢される。ばね保持部13の上部には、ロータ10の回転軸となる軸状の先端部13bが突設され、ばね保持部13の先端部13bは、回転軸として、ロータ10の中央に設けた異形孔に嵌合してロータ10と連結される。
【0030】
ばね保持部13は、その中央軸孔に、駆動モータ4の出力軸4aを嵌合させて出力軸4aと連結され、駆動モータ4の回転駆動力を、ばね保持部13を介してロータ10に伝達し、ロータ10が低速で回転するようになっている。駆動モータ4には、例えば、減速機を内蔵した、非常に小型のDCモータ或いはステッピングモータが使用され、その出力軸4aは低速で回転駆動される。
【0031】
ばね保持部13に装着されるコイルばね14は、非常に小さいばね力のばねであり、ロータ10を上から押えたとき、コイルばね14のばね力により、ロータ10が弱いばね力で僅かに押し上げられ、ロータ10に上向き荷重を付与する。
【0032】
なお、コイルばねに代えて、板ばねなどを使用してロータ10を上方に付勢することもできる。また、駆動モータ4に代えてハンドル式の手動回転機構を使用することもでき、この場合、ハンドルによりばね保持部13を手動で回転駆動することとなる。
【0033】
上記ロータ10は、
図8,12に示すように、円筒部12の上部に円形の平面部11を設けて形成され、平面部11には、3個の保持穴17が形成され、上記自在回転体となるローラ15が各保持穴17内に回転自在に軸支される。平面部11には、カバー部11aが3本の取付ねじ19により3個のローラ15を覆うように取り付けられ、保持穴17内の各ローラ15は、支軸15aにより回転自在に軸支して取り付けられる。平面部11に設けた3個の保持穴17は、120°の角度間隔で形成され、各保持穴17内にはローラ15が、放射状に配設された支軸15aにより、回転自在に軸支される。カバー部11aには保持穴17より小径の穴が形成され、
図8に示す如く、この穴から各ローラ15の上部が僅かに突き出し露出するようになっている。
【0034】
ロータ10上に3個のローラ15が約120°の角度間隔で配置され、120°間隔の3個のローラ15が、マイクロ流体チップ10に約240°の角度範囲で形成された、円弧状流路21に当接して回転するため、回転時、常に2個のローラ15が円弧状流路21を押し潰した状態にあり、これにより、ポンプのシール性を良好にすることができる。
【0035】
ローラ15の支軸15aは、
図7に示すように、平面視で放射状に配置されるとともに、
図8に示すように、外周部でより下方に、内周部でより上方になるように傾斜して、保持される。また、ローラ15は円錐台状に形成され、その外周面は、
図8のように内周側で細く外周側で太くなるように、傾斜して形成される。これにより、3個のローラ15は、その上部外周面を、
図3、8に示す如く、ロータ10の平面部11上において、平面部11の平面と水平となるように配設されている。
【0036】
このように、平面部11上に放射状に配設されたローラ15が円錐台状に形成され、それらの支軸15aが傾斜して軸支されて各ローラ15の上部外周面が平面部11と平行となって僅かに突出するため、3個のローラ15が、その上のマイクロ流体チップ10の円弧状流路21に当接して回転したとき、内周部と外周部との周速が同じとなるようにしている。また、これら3個のローラ15の回転軌跡の半径は、マイクロ流体チップ20の円弧状流路21の半径と同じに設定される。
【0037】
一方、ロータ10が下から挿入されるベース1内には、
図3に示すように、長方形板状のチップ収容部8が形成され、チップ収容部8内にマイクロ流体チップ20が収容される。ベース1の上部には、
図1に示す如く、マイクロ流体チップ20の上面を覆うように、堅固部材として透明板状のカバー体2がベース1上に固定ねじ2aにより固定される。カバー体2は、硬質の透明合成樹脂により成形され、内部のマイクロ流体チップ20内の状態がカバー体2を通して観察できるようになっている。なお、透明板状のカバー体2に代えて、不透明で堅固な構造の平坦部を有した単純な壁面部材(堅固部材)とすることもできる。また、カバー体2を固定する固定ねじ2aに代えて、固定クリップなどの固定具を使用して、カバー体2を固定することもできる。
【0038】
マイクロ流体チップ20は、
図9,10,11に示すように、PDMS,シリコーン樹脂等の、軟質透明の合成樹脂である高分子弾性体により、長方形のシート状に形成される。マイクロ流体チップ20の本体内中央に、円形の凹部27が形成され、その凹部27内に円弧状流路21が形成されている。円弧状流路21の半径は、ロータ10上の3個のローラ15の回転軌跡の半径と同じであり、円弧状流路21の横断方向の幅は、ローラ15の軸方向に長さ幅と略同じである。この円形の凹部27内に下方からロータ10の上部が挿入され、ローラ15が円弧状流路21を押し潰しながら回転する。円弧状流路21の両側は微少流体を流すためのチューブ状の流路24が、マイクロ流体チップ20内の縁部まで形成され、流路24の端縁部には外部接続用の接続パイプ(ステンレスパイプ等)25が接続される。
【0039】
図11に示すように、マイクロ流体チップ20の円弧状流路21は、その横断面が、下側に山形形状に膨出するように平面の下側に形成され、円弧状流路21の上面は平坦形状となり、これにより、小さい押圧荷重でも、ローラ15が、円弧状流路21を良好に潰しながら転動できるようになっている。
【0040】
このような形状のマイクロ流体チップ20は、製造時、例えば、同じ厚さの2枚の高分子弾性シート(PDMS等のシート)を使用し、下側のシートを上側のシートに重ね合わせ、下側のシートを成形して円形の凹部27を形成し、さらに、凹部27内に円弧状流路21を形成するように成形・接着して製作することができる。その際、凹部27内の円弧状流路21は、流路の横断面が山形形状に膨出するように、下側の薄い第2弾性シート23の部分を円弧状に撓ませながら接着して製作する。これにより、
図11に示すように、マイクロ流体チップ20のポンプ部となる円弧状流路21の部分は、厚さの厚い第1弾性シート22の下に、厚さの薄い第2弾性シート23を、円弧状に撓ませながら、接合することとなる。
【0041】
なお、第1弾性シート22に代えて堅固部材を使用し、堅固部材の表面に第2弾性シート23を、円弧状に撓ませながら接合して円弧状流路21を形成することもできる。
【0042】
マイクロ流体チップ20の具体例としては、例えば、
図11に示すように、厚さ約1.1mmの第1弾性シート22と第2弾性シート23とを重ね合わせて接着し製作される。その場合、ポンプ部の凹部27の深さを約0.8mmとすれば、ポンプ部の第2弾性シート23の厚さは約0.3mmとなり、円弧状流路21は、その膨出側の外側層の厚さが約0.1mmとなり、円弧状流路21内空間の高さ幅は約0.1mmとなる。
【0043】
このように、第2弾性シート23の下面に、円形の凹部27を形成し、凹部27内に円弧状流路21を形成しているので、この凹部27の深さを調整することにより、僅かな押圧荷重で潰すことができる円弧状流路21を形成することができる。つまり、凹部27の深さを変えれば、円弧状流路21の外側層の厚さを調整することができるため、円弧状流路21の耐久性を良好に保ちながら、ローラ15による押し潰し時の荷重が最少となるように、円弧状流路21を製作することができる。
【0044】
なお、上記実施形態では、ベース1の下側から駆動モータ4を上向きに固定し、ベース1内のチップ収容部8内に収容したマイクロ流体チップ20の下面に、蠕動ポンプ用の円弧状流路21を設け、駆動モータ4により回転駆動されるロータ10の上面に押圧用のローラ15を軸支したが、それらの部材を上下反転した位置と形態に配設し、マイクロ流体チップ20の上面に形成した円弧状流路に対し、その上側に配設したロータの下面のローラを押し付け、出力軸を下方に向けて配設した駆動モータによりロータを回転駆動する構成とすることもできる。
【0045】
また、上記チップ収容部8内に収容したマイクロ流体チップ20の形状は、
図9に示すように、長方形としたが、正方形或いは三角形とすることもでき、また、各々のチップ部材をチップモジュールとして形成し、それらのチップモジュールを組み合わせて使用するチップモジュールとして、マイクロ流体チップ20を構成することもできる。
【0046】
次に、上記構成のマイクロ蠕動ポンプの使用形態とその動作を説明する。このマイクロ蠕動ポンプは、例えば、培養液、各種試薬等の微少流体を、マイクロ流体チップ20の流路に流して、細胞培養、試薬スクリーニング、化学分析などを行なう際に使用される。
【0047】
使用するマイクロ流体チップ20は、ポンプ上面の固定ねじ2aを外してカバー体2を外し、
図8のように、ベース1内のチップ収容部8上を開放し、その内部の所定位置に、マイクロ流体チップ20の円弧状流路21を下側にして収容する。このように、カバー体2を外すのみで、容易にマイクロ流体チップ20を簡単にセットすることができるので、培養や分析ごとにマイクロ流体チップを交換する場合、非常に簡単にチップの交換を行なうことができ、マイクロ流体チップの使い捨て使用を容易に行うことができる。
【0048】
チップ収容部8内にマイクロ流体チップ20をセットしてカバー体2を所定の位置に取り付け、固定ねじ2aによりカバー体2を固定すると、マイクロ流体チップ20の凹部27内の円弧状流路21は、ロータ10の3個のローラ15に当接して押圧する状態となり、ロータ10はコイルばね14を圧縮して僅かに押し下げられる。このときのローラ15にかかる押圧荷重は非常に小さいが、山形形状に膨出した円弧状流路21の外側層は非常に薄く、また円弧状流路21の反押圧側は平坦形状となっているため、
図3に示す如く、ローラ15が当接する円弧状流路21の外側層は低荷重で容易に潰される。
【0049】
この状態で、ロータ10が、
図2の時計方向に回転し、3個のローラ15が円弧状流路21を押し潰しながら自在回転し、円弧状流路21に沿ってローラ15は転動する。このとき、ローラ15が円弧状流路21を押圧する荷重は、駆動モータ4の出力軸4aと平行にかかる。このため、ローラ15の押圧荷重によって、その出力軸4a及びばね保持部13の回転負荷が増大する割合は微少である。
【0050】
したがって、非常に小型で低出力の駆動モータ4であっても、ロータ10を回転駆動して、流路24内の液体を送液することができる。このような駆動モータ4によるロータ10の回転駆動によって、円弧状流路21が蠕動運動し、マイクロ流体チップの流路24内の液体が、
図2の左から右に送液される。
【0051】
このように、上記マイクロ蠕動ポンプは、ロータ10の平面上に、3個のローラ15が、ロータ10の回転軸と垂直の平面上で、マイクロ流体チップ20の円弧状流路21に押圧接触して自在回転するように保持され、円弧状流路21は、各ローラ15の回転軌跡に沿って配置され、ロータ10の中央部に、駆動モータ4の出力軸4aがロータ10の平面と垂直方向に連結される。
【0052】
駆動モータ4によるロータ10の回転駆動時、ロータ10上のローラ15が、その外周面をマイクロ流体チップ20の円弧状流路21に、ロータ10の回転軸と平行に押し付けながら、山形形状に膨出する横断面形状の流路を押し潰して回転し、円弧状流路21内の液体を送液するので、非常に小さい回転負荷によりロータ10が回転駆動される。このため、駆動モータ4には低出力の小型モータを使用することができ、マイクロ蠕動ポンプを大幅に小型化することができる。
【0053】
図13〜
図17は第2実施形態のマイクロ蠕動ポンプを示している。このマイクロ蠕動ポンプは、そのロータ40の平面部に、上記ローラに代えてボール45を回転自在に設けて構成される。なお、上記第1実施形態のマイクロ蠕動ポンプと同じ部分については、上記と同じ符号を図面に付して、その詳細な説明は、省略する。
【0054】
このマイクロ蠕動ポンプのロータ40は、
図14〜
図17に示すように、円筒部42の上部に円形の平面部41を設けて形成される。円筒部42内にはコイルばね14を介して、下方からばね保持部13が上向きに挿入され、ばね保持部13の先端部13bが、回転軸としてロータ40の軸孔46に嵌入される。ロータ40の平面部41内には3個の保持穴47が形成され、各保持穴47にはボール(ステンレス球)45が回転自在に配設される。
【0055】
平面部41の上面には、カバー部41aが3本の取付ねじ19によってボール45を覆うように取り付けられる。3個のボール45は保持穴47内に回転自在に保持される。ロータ40の平面視において、3個のボール45は、ロータ40の回転軸(ばね保持部13の先端部13b)を中心にして放射状に120°の間隔をおいて配置される。ロータ40の上部を覆うカバー部41aには、3個の保持穴47に対応した位置に、より小径の穴が形成され、
図14に示す如く、この穴から各ボール45の上部が僅かに突き出し露出するようになっている。
【0056】
また、3個の保持穴47は、ロータ40の平面部41のカバー部41a内に、同様に形成されるため、
図14に示す如く、各保持穴47に収容されるボール45は、ロータ40の平面部41上からその上部外周面を僅かに突き出し、3個のボール45の上部外周面は、平面部41の平面と平行に位置する。
【0057】
このように、平面部41上に放射状に配設された3個のボール45が120°の角度間隔で配置され、その上部外周面が平面部41と平行となって僅かに突出する。また、ロータ40の回転時の、これら3個のボール45の回転軌跡の半径は、マイクロ流体チップ20の円弧状流路21の半径と同じである。このため、ロータ40がその上部をベース1の開口部9内に挿入され、ベース1のチップ収容部8内に、マイクロ流体チップ20が収容された状態で、
図14に示す如く、ロータ40の上面の3個のボール45は、その上部外周面がマイクロ流体チップ20の円弧状流路21に当接して、円弧状流路21を僅かな押圧荷重で潰すことができる。
【0058】
上記構成のマイクロ蠕動ポンプは、その使用時、上記と同様に、ポンプ上面の固定ねじ2aを外してカバー体2を外し、ベース1内のチップ収容部8上を開放し、その内部の所定位置に、マイクロ流体チップ20がその円弧状流路21を下側にして収容される。
【0059】
チップ収容部8内にマイクロ流体チップ20をセットしてカバー体2を所定の位置に取り付け、固定ねじ2aによりカバー体2を固定すると、
図14に示すように、マイクロ流体チップ20の凹部27内の円弧状流路21は、ロータ40の3個のボール45の上部外周部に当接して押圧する状態となり、ロータ40はコイルばね14を圧縮して僅かに押し下げられる。このときのボール45にかかる押圧荷重は非常に小さいが、山形形状に膨出した円弧状流路21の外側層は非常に薄く、また円弧状流路21の反押圧側は平坦形状となっているため、
図14に示す如く、ボール45が当接する円弧状流路21の外側層は低押圧荷重で容易に潰される。
【0060】
この状態で、ロータ40が、
図13の時計方向に回転し、3個のボール45が円弧状流路21を押し潰しながら自在回転し、円弧状流路21に沿ってボール45は転動する。このとき、ボール45が円弧状流路21を押圧する荷重は、駆動モータ4の出力軸4aと平行にかかる。このため、ボール45の押圧荷重によって、その出力軸4a及びばね保持部13の回転負荷が増大する割合は微少である。
【0061】
よって、非常に小型で低出力の駆動モータ4であっても、ロータ40を回転駆動して、流路24内の液体を送液することができる。このような駆動モータ4によるロータ40の回転駆動によって、円弧状流路21が蠕動運動し、マイクロ流体チップの流路24内の液体が、
図13の右から左に送液される。
【0062】
このように、上記マイクロ蠕動ポンプは、ロータ40の平面上に、3個のボール45が、ロータ40の回転軸と垂直の平面上で、マイクロ流体チップ20の円弧状流路21に押圧接触して自在回転するように保持され、円弧状流路21は、各ボール45の回転軌跡に沿って配置され、ロータ40の中央部に、駆動モータ4の出力軸4aがロータ40の平面と垂直方向に連結される。
【0063】
駆動モータ4によるロータ40の回転駆動時、ロータ40上のボール45が、その外周面をマイクロ流体チップ20の円弧状流路21に、ロータ40の回転軸と平行に押し付けながら、山形形状に膨出する横断面形状の流路を押し潰して回転し、円弧状流路21内の液体を送液するので、非常に小さい回転負荷によりロータ40が回転駆動される。このため、駆動モータ4には低出力の小型モータを使用することができ、マイクロ蠕動ポンプを大幅に小型化することができる。