(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィードバックシステムは、前記X線撮影装置モデル及び前記人間被曝モデルに基づいて人間のX線画像を表示するX線撮影シミュレータを更に備え、前記X線撮影シミュレータは、前記入力パラメータの前記変化に応答して一連のX線画像を表示する請求項1に記載のシステム。
前記放射線量プロセッサは、前記入力パラメータの前記変化に基づいてX線画像ノイズパターンを計算し、前記X線撮影シミュレータは、表示されたX線画像にX線ノイズを加え、前記X線ノイズは、放射線量に基づいて生成される請求項3に記載のシステム。
前記X線撮影シミュレータは、前記血管内シミュレータに基づいて、前記人間被曝モデルの内部を動く医療機器の模倣した蛍光透視画像を表示する請求項9に記載のシステム。
前記放射線被曝量を計算するステップは、一連のX線画像を生成することと、前記入力パラメータの変化に応答してノイズパターンを生成することと、前記一連のX線画像を、前記ノイズパターンを用いて変更することと、を更に備える請求項13に記載の方法。
前記出力するステップは、前記X線誘導医療処置の間に計算した現在の放射線量及び累積放射線量に基づく人の放射線被曝のレベルを表すヒートマップを表示することを備える請求項13に記載の方法。
前記出力するステップは、前記X線誘導医療処置の間に計算した累積放射線量に基づく確率的及び決定的リスクのレベルを表すヒートマップを表示することを備える請求項13に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで説明する発明は、放射線のない環境におけるX線誘導医療処置の現実的なシミュレーションのシステム及び方法を提供する。システム及び方法を、医療的及び職業的な放射線の被曝を減少させるために専門家を訓練するとともに認定し、かつ、最も害のないやり方でX線撮影装置を使用する方法をX線システムのオペレータに教えるのに用いることができる。発明の実施の形態を、治療用機器の設計、開発及び検査に用いることもできる。
【0022】
図1は、発明の一実施の形態によるシステムの複数の構成要素のブロック図である。これらの構成要素によって、ユーザは、X線誘導処置をシミュレートし、かつ、ユーザが処置の間に操作設定を調整するときに放射線被曝の変化及び画質の変化を視覚化することができる。放射線防護シミュレーションシステムの構成要素は、システム入力部101と、放射線量プロセッサ102と、フィードバックシステム103と、評価システム104と、を含んでもよい。X線撮影装置とシステム入力部101からの人体構造情報とを用いることによって、放射線防護シミュレーションは、放射線量を生成し、フィードバックを提供し、かつ、処置のパフォーマンスを評価する。放射線防護シミュレーション部は、ユーザ、患者及び医療チームの人が電離放射線によって被曝することなく放射線量及びフィードバックを予測的に生成する。さらに、放射線防護シミュレーション部は、処置の過程において放射線量、フィードバック及びパフォーマンス評価を生成し、処置の過程において設定を変更したときの放射線被曝の変化及びX線画像品質の変化を現実的にシミュレートするユーザに実地体験を提供する。
【0023】
X線撮影装置モデル及び人間被曝モデルは、線量率及び累積線量情報のような放射線量を計算する放射線量プロセッサ102に入力されるデータを生成する。放射線量プロセッサは、処置の間に部屋にいる人間の放射線量を計算してもよく、それは、患者に対する直接的な放射線被曝及び医療チームに対する散乱放射線を含む。X線誘導医療処置の過程において、これらの放射線量は、フィードバックシステム103に提供されるとともにユーザに対して表示される。フィードバックシステム103は、現在の操作設定の下でX線撮影装置によって生成されるX線画像又は散乱放射の現実的な視覚化を提供するために放射線量を用いる。放射線量を視覚化することによって、ユーザは、所望のレベルの放射線量又はX線画像のノイズを実現するためにX線撮影装置の操作設定を調整することができる。評価システム104は、ユーザのパフォーマンスを評価するとともにユーザの線量減少技術を向上させるための手順を示唆する。
【0024】
システム入力部101によって、ユーザは、シミュレーションで用いられるX線撮影装置並びに患者又は医療チームの人の位置及び人体構造についての情報を指定することができる。シミュレーションは、情報をX線撮影装置モデル及び人間被曝モデルに組み込み、これによって、シミュレーションは、どのようにして機器が放射線を放出するか及びどのようにして患者又は医療チームのメンバーが放射線によって被曝するかを決定することができる。さらに、システム入力部によって、ユーザは、X線撮影装置又は患者/医療チームメンバーの人体構造の設定を変更することができる。
【0025】
X線撮影装置モデルを、共通の実際の形態に対応するように選択してもよい。例えば、X線蛍光透視装置モデルに対応するようにX線撮影装置を設定するために、ユーザは、フラットパネル検出器、台の下に搭載されたX線源及び自動的な線量制御性能を選択してもよい。X線撮影装置モデルを、放射線防護シミュレーションシステムにプレインストールするとともに選択のためにユーザに提示してもよく、又は、モデルの個別の特性をユーザによって任意に設定してもよい。
【0026】
人間被曝モデルを、患者及び/又は手術チームのメンバーのモデルのライブラリから構成してもよい。患者については、モデルライブラリは、放射線防護訓練に重要な種々の訓練対象、例えば、異なる年齢及び体重、性別及び妊娠中の患者を表すモデルのセットを含んでもよい。そのような人体構造モデルを、CT若しくはMRIデータから取得してもよく、又は、そのような人体構造モデルを、3次元モデリングソフトウェアによってモデル化してもよく、そのような人体モデルは、患者の皮膚及び他の器官を含有してもよい。代替的に、プレインストールされた人体構造を用いてもよく、ユーザは、体重、身長又は厚さのような人体構造パラメータを入力することによってプレインストールされたモデルの外観を変更できるようにしてもよい。人間被曝モデルは、患者の人体構造に対応してもよい。一実施の形態において、人間被曝モデルは、身長、目の高さ又は生殖腺の高さのような人体構造の寸法であってもよい。ユーザは、これらの人体構造の寸法を変更してもよい。
【0027】
一実施の形態において、システム入力部は、X線撮影装置制御を更に含む。X線撮影装置制御は、典型的にはX線撮影装置の動作を制御するのに用いられる制御を模倣(emulate)する。そのような制御を、例えば、台及びCアームの動き及び角度、X線機器の蛍光透視パルスレート、蛍光透視線量レベル(ロー/ノーマル/ハイ)、シネ収集(オン/オフ)、シネ収集フレームレート、Cアーム検出器の高さ、コリメーション(方形又は円形)、使用される楔状フィルタの個数、倍率若しくは視野(FOV)、デジタルサブトラクション血管造影(DSA)の使用、特定の処置に用いられる線量プロトコル、X線管電圧及び電流、ビーム成形フィルタの使用、自動線量率制御(ADRC)の使用、放射線源の位置(患者台の上又は下)、又は、フラットパネルの代わりのイメージインテンシフィアの使用のような上述した入力パラメータとしてもよい。X線撮影装置モデルによって、ユーザは、型、モデル又は製造年のようなX線撮影装置についての他の情報を変更することができる。
【0028】
X線撮影装置モデルは、外部制御源から受信した入力も処理する。例えば、Cアームの動き、角度又はコリメーションの変化を、X線撮影装置から放出される放射線の特性を変更するためにX線撮影モデルによって処理する。これは、放射線量、フィードバック、及び、システムによって提供されるパフォーマンス評価を変更する。
【0029】
用いられるX線撮影装置についての情報の指定に加えて、システム入力部101によって、ユーザは、シミュレーション中に手術される患者又は医療チームの人の位置及び人体構造を指定する人間被曝モデルを指定することができる。人間被曝モデルを、3次元メッシュモデルとして実現してもよい。これらのモデルを、実際の患者のCTスキャン又はMRIスキャンをセグメント化することによって生成してもよい。人間被曝モデルは、侵入、後方散乱及び臓器線量の更に正確な推定値を計算するために心臓、脳、目、甲状腺及び生殖腺を含むがそれに限定されない患者の器官を含んでもよい。これを、異なる器官が放射線に対する異なる感度を有するために特別な感度の特定領域を識別及び強調するために追加的に用いてもよい。患者の3次元メッシュモデルを用いることによって、結果的に得られる放射線被曝を推定するのに重要な要因であるX線システムの一部(例えば、X線管又は画像検出器)と患者の皮膚との間の距離を正確に決定することができる。
【0030】
一部の実施の形態において、患者特有の人体構造モデルを患者のCTスキャン又はMRIスキャンに基づいて作成してもよい。この場合、CTスキャン又はMRIスキャンを、異なる人体構造の正確な位置を決定するために用いる。そのような患者特有のモデルは、患者が放射線によって非常に被曝しやすい及び/又は妊娠中の患者若しくは若年患者のように正確な人体構造が極めて重要である状況において有益となることができる。この場合、患者特有のモデルを、実際の処置をシミュレートするのに使用し、これによって、医療専門家又はチームは、安全で放射線のない環境において特定の患者に対する放射線を最小にする方法を実行することができる。患者の身体に対する予測される放射線の視覚的なフィードバック及び実行中の処置の改善の示唆を、実際の処置の間に患者に照射される実際の放射線を最小にするのに用いることができる。
【0031】
人間被曝モデルは、患者の年齢、寸法及び外形、病歴、体重、性別又は患者が妊婦であるか否かのような種々の現実の状況に対応する患者の人体構造及び患者のバックグラウンドの多数の異なる変化から構成してもよい。人間被曝モデルに対する入力は、肥満/低体重患者、男性/女性、妊婦、新生児、子供、若者若しくは高齢者又はその任意の組合せに由来してもよい。
【0032】
放射線プロセッサ102は、X線撮影装置モデル及び人間被曝モデルに基づいて放射線量を計算する。放射線量プロセッサ102は、照射された放射線が入力パラメータの変化の結果どのように変化するかをモデル化する。これらの放射線量は、フィードバックシステム103によって処理され、それによって、ユーザは、X線画像ノイズ及び患者/医療チームの放射線被曝を変化させるために入力パラメータを調整する方法を決定することができる。放射線量を、ユーザのパフォーマンスを評価するとともにどのようにしてユーザが放射線被曝を減少させることができるかについての推奨を行うために評価システム104によって用いることもできる。放射線量プロセッサ102は、種々の異なる点の種々の異なる線量を計算してもよい。線量は、現在の線量率及び累積線量率を反映することができる。線量は、処置の過程において変化する複数の入力パラメータに依存してもよい。
【0033】
フィードバックシステム103は、放射線量プロセッサによって計算された現在の線量率及び累積線量率に基づいてユーザに情報を提供する。フィードバックシステム103によって提供される情報は、放射線量を、ユーザが現実の設定において関連することができる又は電離放射線の根本原理の理解を向上させるのに有用となることができる値に変換する。特に、情報は、シミュレートされたX線画像、線量インジケータ(dosage indicator)、線量ヒートマップ、散乱放射線プロファイル及び放射線量のタイムラインを含んでもよい。
【0034】
一実施の形態において、フィードバックシステム103は、データ収集記憶装置に放射線量を格納する。データ収集記憶装置は、例えば、シミュレートされたX線処置の後に報告を行うために放射線量を格納してもよい。
【0035】
ユーザに対して表示されるX線画像は、X線撮影シミュレータによって生成される。X線撮影シミュレータは、X線撮影装置入力パラメータに関連したノイズを含むように修正されるX線画像を生成する。シミュレートされたX線画像は、ベースとなるX線画像にノイズを加えることによって生成される。ベースとなるX線画像を、種々の処置若しくは予め存在するX線画像のデータベースから取得してもよく、又は、CTスキャン及びMRIスキャンからモデル化してもよい。好適な実施の形態において、ベースとなるX線画像を、血管内シミュレータとの連動から取得することもできる。X線画像ノイズ及びコントラストのレベルを、現在の入力パラメータに基づいて計算する。その後、ノイズパターンを、減少又は向上したX線画像品質の効果を与えるために画像に加える。
【0036】
発明の一態様において、X線撮影シミュレータは、2次元又は3次元のオーバレイを含んでもよい。例えば、X線撮影シミュレータは、X線画像にマスクを重ね合せてもよい。マスクは、処置を通じてユーザのナビゲートを助ける血管系のような関連の領域又は身体部分のオーバレイである。他のタイプのオーバレイは、患者の実際の人体構造上の身体部分の画像であってもよい。これらの画像を、例えば、CTスキャンによって実際の処置の前に取得してもよく、又は、例えば、回転血管造影法又はCBCTを用いることによって処置の間に取得してもよい。投影されるオーバレイを、それをX線画像から更によく区別できるようにするために着色することができる。画像オーバレイを、血管系の「ロードマップ」を作成するために前回のX線画像とともに用いるとともに現在の画像からデジタル的に減算してもよい。オーバレイされた画像の透明度を、ライブのX線画像とオーバレイされたマスク画像の両方を同時に表示するために変化させてもよい。アクティブなマスク画像によって取り込まれる画像及びシネ収集に対して、ユーザは、新たな記録を行うとともに患者が追加の放射線によって被曝する必要なくマスク又は減算処理した画像をオン又はオフに切り替えることができる。既に記録された画像又はフレームをシネ収集から取得するともにそれをマスク画像としてユーザに対して直接選択することもできる。
【0037】
X線画像シミュレータは、フルオロ記憶機能(fluoro store functionality)を提供してもよい。フルオロ記憶又はフルオロループは、アクティブであるとき又は処置を通じて連続的に所定の制限された数の蛍光透視フレームの記録を記憶する。オペレータは、その必要がないときには、シネ又はDSAを記録する代わりに、処置の所定のステップをレビュー又は記録する手段としてフルオロ記憶から最後の蛍光透視シーケンスを格納するよう選択してもよい。このようにして、フルオロ記憶の使用は、シネ及びDSA収集の過度の使用を回避する。X線撮影シミュレータは、複数の最近見たフレームを保存することによってフルオロ記憶機能を提供する。保存されるフレームの数は、最近の30秒のライブのX線のような予め決定された時間窓に基づいてもよい。
【0038】
フィードバックシステム103は、種々のしきい値を超える放射線量に基づくユーザに対する通知を管理してもよい。シミュレーションの実行中に放射線量がしきい値に近づく又はしきい値を超える場合、シミュレーションはユーザに通知を行ってもよい。例えば、累積的なピーク皮膚線量、基準点空気カーマ、KAP及び/又は蛍光透視時間が所定のしきい値を超えるときに警告を与えてもよい。これらの警告を、可聴警告、ディスプレイにおいて点滅するアイコン、又は、どのしきい値を超えたか、しきい値の値が何であるか及びユーザの警告を表示するタッチスクリーン若しくはタブレットの書込みメッセージとしてもよい。通知は、ユーザが通知を認識又は確認することを要求してもよい。
【0039】
通知は、最初の通知及びそれに続く他の追加の固定量の放射線を超えるときの各ポイントでの通知から構成されてもよい。患者の追跡のためのしきい値を超えた場合、放射線誘発損傷が生じた可能性があること及び患者が追跡を受ける必要があることを指定する他の警告テキストを追加してもよい。フィードバックシステムは、これらのしきい値の何れかを超える事態を回避するのを助けるためにユーザに指示を与えてもよい。
【0040】
図2は、発明の一実施の形態によるX線撮影装置制御を有するシステム入力部を示す。システム入力部は、台の横位置の動きの制御201及び台の高さの上昇/下降の動きの制御202のような患者台の動きの制御を含んでもよい。システム入力部は、Cアームガントリー角度の動きの制御203、検出器の上昇/下降の動きの制御204及び検出器の輝度レベルの変更の制御205のようなCアームの動きの制御を更に含んでもよい。システム入力部は、コリメータ/楔状フィルタの位置の制御206、コリメータ/楔状フィルタの使用のトグルの制御207、コリメータ/楔状フィルタの位置のリセットの制御208及び倍率レベルの上昇/下降の調整の制御209のようなCアームのコリメーション設定の制御を更に含んでもよい。システム入力部は、血管系の半透明の以前に取得した3次元マスク画像をX線画像にオーバレイするのに用いることができる3次元オーバレイを可能にするトグル210を更に含んでもよい。システム入力部は、蛍光透視画像の取得を可能にするスイッチ211、一連の収集を行うためのスイッチ212及び一連の収集によるポーズ/ステップのスイッチ213のような画像記憶の制御を更に含んでもよい。システム入力部は、マスク画像の取得を可能にするスイッチ214、ロードマップをオン/オフに切り替えるトグル215、マスクの重み付けの増大/減少を変化させる制御216及び線量レベルをロー/ノーマル/ハイに変更するトグルのような蛍光透視設定の制御を更に含んでもよい。システム入力部は、Cアームの正面/側面/2方向(biplane)の配置の間の選択を行うトグル218及びアクティブな正面/側面/2方向透視の間のトグル219のような2方向設定の制御を更に含んでもよい。
【0041】
発明の一実施の形態において、X線撮影装置の制御の選択及び配置は、操作可能なX線撮影装置の実際のメーカ仕様の制御ボックスにみられる制御の選択及び配置を模倣する。例えば、X線撮影装置の制御ボックスを、シーメンス、フィリップス、ゼネラルエレクトリック又は東芝のX線機器と同一の制御及び配置で製造してもよい。したがって、X線撮影装置を制御するユーザは、ユーザが実際のシーメンス、フィリップス、ゼネラルエレクトリック又は東芝のX線機器を操作していると感じる。このようにして、システムは、シミュレーションの実際の実地訓練の要素を向上させることができる。発明の他の実施の形態において、制御の選択及び配置は、実際のメーカから独立してもよい又は実際のメーカに関連しなくてもよい。すなわち、制御ボックスは、市販のX線システムに共通するシステムに基づくことができる。共通の制御は、例えば、台及びCアームの動作、撮影、X線、ロードマップ、蛍光記憶、コリメーション、楔状フィルタ及び2方向の設定を含むがそれに限定されない。
【0042】
他の実施の形態において、X線撮影装置の制御を、X線撮影装置からの実際の制御ボックスによるものとしてもよい。一部のX線撮影装置システムによって、制御ボックスをシステムから切り離すことができる。これらの切り離された制御ボックスを、入力をシミュレーションシステムに供給するように適合させてもよい。例えば、シーメンス、フィリップス、ゼネラルエレクトリック又は東芝のX線機器からの制御インタフェースを、X線撮影装置モデルとの通信を行うように適合させてもよい。
【0043】
図3A、
図3B及び
図3Cは、X線撮影装置をタブレット、スマートホン、タッチスクリーンモニタ及び同様な装置によって実現する追加の実施の形態を示す。
図3Aにおいて、X線撮影装置の制御装置301を、シーメンス、フィリップス、ゼネラルエレクトリック又は東芝のX線機器のような実際のメーカ仕様のX線機器を模倣するように配置された制御を有する物理的な制御装置としてもよい。制御ボックスは、メーカから独立し、制御の選択を提供し、かつ、任意の特定のメーカに関連しない配置であってもよい。制御ボックス301を、放射線プロセッサ、フィードバックシステム及び評価システムを実現することができるコンピュータ302又は304に結合してもよい。
図3Bにおいて、X線撮影装置の制御装置301を、タブレット、スマートホン又は同様なモバイル機器303によって実現してもよい。放射線プロセッサを、コンピュータ302及び304、制御ボックス301又はモバイル機器303で実現してもよい。モバイル機器の制御をソフトウェア及びタッチスクリーンを用いて実現してもよい。モバイル機器の使用によって、ユーザは、システムの周りを自由に動くことができる。さらに、ユーザインタフェースを、制御の異なる選択を異なる配置で、例えば、メーカ仕様の制御設計に適合するように提供するためにプログラムしてもよい。したがって、シミュレーションシステムを、メーカが制御装置の設計を更新又は変更するときに適合させることができる。
【0044】
図3Cは、医療用シミュレータ305並びにタッチスクリーン306及び307を示す。医療用シミュレータ305は、人間の形をした形状を含む。人間の形をした形状は、処置をシミュレートするのに用いることができる一つ以上の開口308を含んでもよい。タッチスクリーン306及び307を、処置中にユーザ入力を受信するとともに放射線量、フィードバック及び評価を表示するのに用いてもよい。他の実施の形態において、
図3Cの医療用シミュレータ及びディスプレイを、上述したような制御ボックス301又はモバイル機器303と共に用いてもよい。放射線量プロセッサを医療用シミュレータ305又はタッチスクリーン306及び307で実現してもよい。
【0045】
図4A、4B及び4Cは、システム入力部に結合することができるシミュレータの種々の形態を示す。種々のシミュレータは、ユーザのリアリズム及びポータビリティのレベルの変更を提供する。
【0046】
図4Aに示す一実施の形態によれば、システム入力部401及びディスプレイ402をポータブル医療用シミュレータ403に結合してもよい。医療用シミュレータは、任意に統合システム入力部401を有してもよい。システム入力部401は、上述したようなX線撮影装置を操作する制御装置を含む。しかしながら、シミュレータ403が物理的なX線機器に結合されていないので、ディスプレイ402は、X線撮影装置がユーザによって供給される入力に応答して配置される場合をシミュレートする。
図4Aに示すように、ディスプレイ402は、現在の入力パラメータの下でX線撮影装置によって生成されるX線画像をシミュレートしてもよい。ポータブルシミュレータ403を、例えば、血管造影及びインターベンション処置のような血管内手術のシミュレーションを提供するために用いてもよい。血管内手術のシミュレータは、個別のハードウェア装置によって医療機器の動きを追跡するシステムであり、検出された動きは、患者の仮想モデル内の仮想的な機器の動きに変換される。仮想的な患者の内側を動く機器の再現されたX線画像は、コンピュータのスクリーンに示され、これによって、医師は、所定の処置の特定のインターベンション又は詳細(particularities)のステップの訓練を行うことができる。
【0047】
ポータブルシミュレータ403が血管内手術を模倣するのに用いられる一実施の形態において、シミュレータは、侵入地点の心臓血管系へのアクセスをシミュレートするための開口404を含んでもよい。例えば、開口404を、右橈骨動脈から右冠動脈へのカテーテル挿入をシミュレートするのに用いてもよい。ユーザは、開口404に実際のガイドワイヤ又はカテーテルを入れてもよい。ガイドワイヤ又はカテーテルが血管の経路に進むと、ディスプレイ402は、ユーザが実際の患者を手術している場合にガイドワイヤ又はカテーテルが配置される場所を示す。このようにして、ポータブルシミュレータ403を、血管造影又は血管内インターベンションにおいて専門家を訓練させるのに用いてもよい。
【0048】
図4Bに示す他の実施の形態によれば、システム入力部405及びディスプレイ402を、ヒト患者シミュレータ406に結合してもよい。システム入力部405及び患者シミュレータ406は、X線撮影装置及び実際の全身マネキンに対する制御入力の現実的な選択及び配置を提供することによって、追加のレベルのリアリズムを提供する。全身マネキンは、一つ以上の開口407を含んでもよい。ポータブル医療用シミュレータ403と同様に、患者シミュレータ406によって、ユーザは、種々のタイプのX線誘導医療処置をシミュレートすることができる。ディスプレイ402は、X線撮影装置がユーザによって提供される入力に応答して配置される場所をシミュレートする。
図4Aに示すように、ディスプレイ402は、現在の操作条件の下でX線撮影装置によって生成されるX線画像をシミュレートすることもできる。したがって、ポータブルシミュレータ403と同様に、患者シミュレータ406は、X線誘導医療処置の放射線訓練を提供する。
【0049】
図4Cに示す他の実施の形態によれば、システム入力部408及びX線機器409をディスプレイ402又は410に結合してもよい。X線機器409を、医療設定に用いられるとともに実際のシステム入力部408によって操作される実際のX線機器としてもよい。例えば、X線機器を、蛍光透視誘導処置を行うのに用いられる可動式又は固定式のCアームマシンとしてもよい。システム入力部408は、システム入力部408で供給される制御信号に応答して、台及びヒト患者シミュレータの上でのCアームの動き及び設定を制御してもよい。X線機器409がシステム入力部408に応答して動く間に、X線機器は放射線を放出しない。ユーザがシステム入力部408で設定を行う位置及び操作設定は、ディスプレイ402又は410に示されるシミュレートされた画像を取得するのに用いられる。ディスプレイ402又は410に示されるシミュレートされた画像は、当該位置で実際の処置の間のこれらの特定の設定の下でX線機器409によって生成されるX線画像を表す。このようにして、実際のマシン409及びシステム入力部408を用いることによって、リアリズムの更に別の側面をユーザに提供する。さらに、ユーザに示されるX線画像を、電離放射線を用いることなく生成することができる。したがって、ユーザ(又はチーム)は、患者又はユーザ自体が有害な放射線によって被曝することなく実際の手術室環境で特定の医療処置の訓練を行うことができる。発明の他の実施の形態において、シミュレータ409を、病院又は医療施設の実際の手術室内に配置してもよい。
【0050】
発明の一態様において、X線機器409を台411に結合する。台を、通常のカテーテル検査台又は手術台とすることができる。台411が手術台である場合、シミュレーションシステムを、X線撮影技術と手術台で行われる観血手術とを組み合わせた複合処置をシミュレートするのに用いてもよい。そのような複合システムは、X線誘導処置及び開腹処置の訓練を提供し、したがって、そのような複合システムを、チーム及び異種専門(cross-specialty)訓練に用いることができる。
【0051】
図5は、発明の一実施の形態による放射線量を計算する方法のフローチャートである。
図5に示す手順は、IRP線量率及びKAP線量率を標準モデルに従って初期化した後に種々の入力パラメータの変化に従って線量率を量ることによって放射線量を計算する。
図5に示すステップの一部は、任意であり、シミュレーションを行うために実行する必要がない。
図5に示す任意のステップは、ユーザがシミュレーションに組み込むのに有益となることができる線量を生成するのに用いられる。
【0052】
放射線量プロセッサによって計算される放射線量データは、複数の異なる基準点で計算することができる複数の線量を含む。一実施の形態において、線量を「インターベンション基準点」(IRP)で計算する。IRPは、一般的には患者台の下に配置されている放射線源に面する「アイソセンター」の典型的には15cm前となるように測定される基準点である。「アイソセンター」は、Cアームの回転中心、すなわち、Cアームの角度に関係なく視野の中心に常に存在する点である。IRPを、患者の皮膚の位置の近似として用いてもよく、IPRの空気カーマ率を計算するのに用いてもよい。台の高さが変化してもIRPの位置は変化せず、これによって、IPRでの推定される皮膚線量と患者が受けた実際の皮膚線量との間に相当な相違が生じうる。
【0053】
発明の他の実施の形態によれば、線量率をFDA線量点(FDP)で計算してもよい。FDPを、フラットパネル検出器の30cm前の点としてもよい。検出器の高さが変わると、この点が動き、これによって、IFRがFDPの前にある又はFDPがIRPの前にあるIRP及びFDPが合致する複数の状況が生じる。時々、FDPを、システムの最大の許容可能な線量率を制限する基準点として用いてもよい。例えば、FDPでの蛍光透視線量率を、88mGy/分に制限することができる。出力線量の自動調整を用いる、すなわち、検出器によって画像品質を略一定に維持するために自動輝度制御(ABC)又は自動線量調整制御(ADRC)を用いる撮影システムに対して、このような線量率制限の結果、一旦限界に到達するとX線画像品質が低減することがある。他の実施の形態において、患者台の上面が中央ビームと交差する実際の位置を、基準点として用いてもよい。
【0054】
基準点に到達すると、放射線量プロセッサは、X線撮影装置モデルからのソース及び台の位置のような基準点とX線撮影装置のついての具体的情報とを用いて線量を計算してもよい。放射線量は、KAP率、IRPでの空気カーマ率、ピーク皮膚線量(PDS)及び対応する累積線量を含んでもよい。放射線量データは、患者ヒートマップ、散乱放射マップ及び等曲線を更に含んでもよい。種々の放射線量が処置の経過を通じて変化するので、これらの放射線量を種々の時点で保存して放射線量のタイムラインを作成してもよい。
【0055】
ステップ501において、放射線量データをゼロに初期化し、放射線線量しきい値を設定してもよい。放射線量しきい値は、アラームを引き起こす又はフィードバック及びパフォーマンス評価を提供するためにシミュレーションの初めから終わりまで用いることができる線量率のような所定の線量の値である。しきい値を、政府規制、入院費用保険及びX線システムが動作してもよい限界を制御するための技術的なしきい値を反映するように設定してもよい。例えば、FDAルールは、ADRCを行うシステムでのライブの蛍光透視に対して最大で88mGy/分のFDA線量点に線量率の上限を定める。しかしながら、この制限は、高いフルオロ線量設定のような特定の高線量モード又はシネ若しくはDSA収集には適用されず、この場合、率は、このしきい値より何倍も高いレベルに到達してもよい。大抵の撮影システムは、FDAしきい値より低い率の限界を設定する特定の処置のプロトコルも有する。しきい値は、処置の過程において変化してもよい又は設定されてもよい。
【0056】
ステップ502において、基準IRP線量率及び基準KAP率k
refをシステムによって設定する。上述したように、シミュレーションは、台及びCアームの動き及び角度、撮影される身体の部分、X線機器の蛍光透視パルスレート、蛍光透視線量レベル(ロー/ノーマル/ハイ)、シネ収集(オン/オフ)、シネ収集フレームレート、Cアーム検出器の高さ、コリメーション(方形又は円形)、使用される楔状フィルタの個数、倍率若しくは視野(FOV)、デジタルサブトラクション血管造影(DSA)の使用、台上の患者の位置(体形)の変化、特定の処置に用いられる線量プロトコル、X線管電圧及び電流、ビーム成形フィルタの使用、自動線量率制御(ADRC)の使用、放射線源の位置(患者台の上又は下)、又は、フラットパネルの代わりのイメージインテンシフィアの使用を含む任意の数の入力パラメータを設定する入力を含んでもよい。基準IRP線量率及び基準KAP率を、予め決定された値を有するこれらのパラメータの予め決定されたセットに基づいて計算する。例えば、一実施の形態において、基準IRP線量率及び基準KAP率は、以下のセットのパラメータに基づいて計算され、以下の初期セットの値を有してもよい。
【0058】
上述したように、処理の過程において、ユーザは、これらの入力パラメータの一部を調整又は変更してもよい。また、上述したように、入力パラメータを変化させることによって、患者及びチームに照射される放射線の線量率並びに機器によって生成されるX線画像の品質を変化させることができる。発明の一部の実施の形態によれば、パラメータ値の変化を無視してもよい。
【0059】
一実施の形態において、上述したしきい値は、これらのパラメータに依存してもよい。例えば、患者の厚さ、ロー/ノーマルのフルオロ線量設定、パルスレート及び照射された患者の線量率の間の関係は、どの点でこれらの線量しきい値に到達したかを決定する。高パルスレートを用いた結果、例えば、低パルスレートが用いる場合に比べて更に小さい厚さの患者に対してしきい値に到達する。「ロー」のフルオロ線量レベルの設定を用いることによって、しきい値も低減し、更に容易にしきい値に到達する。したがって、パラメータ値の変更の結果、しきい値が変化する。シミュレーションの間、任意のセットのしきい値又はしきい値プロファイルの間の比較を表示してもよい。さらに、シミュレーションの間又は前に、シミュレータは、任意のしきい値又はしきい値プロファイル内に維持する方法に関するユーザに対する指示を表示してもよい。例えば、現在の線量率が非常に高い場合、シミュレータは、ローの線量設定からノーマルの線量設定に切り替えるようユーザに指示してもよい。しきい値を、一度しきい値に到達すると所定のパラメータ値又は設定を制限するために用いてもよい。その結果、シミュレーションによって出力線量率が増大するのを防止することができるとともに画像品質が低下するおそれがある。例えば、ライブの蛍光透視に対する88mGy/分の線量点制限を超えた後に、シミュレーション中のX線画像ノイズのレベルが増大し始めることがある。又は、シネ収集又はDSAに対して1400mGy/分の線量制限を超えた後に、記録された収集のX線画像ノイズのレベルも同様に増大することがある。
【0060】
発明の一態様において、モデルは、入力パラメータの変化と放射線の被曝線量の変化とを関連させてもよい。発明の一部の実施の形態によれば、パラメータ値の変化を、ステップ503及び504において倍増率及び線量率を計算することによって放射線の被曝線量を変化させるのに用いてもよい。ステップ503において、倍増率を計算し、ステップ504において、現在のIPR線量率及び現在のKAP率を、IPR線量率及びKAP率と倍増率を掛け合わせることによって計算する。現在の線量率d
tを、以下のように表現してもよい。
【0062】
この場合、d
tは、時間ステップtでの線量率であり、k
refは、上述した基準線量率であり(すなわち、値
【0063】
【数2】
の予め決定されたセットを有する予め規定されたセットのパラメータに対する予測される線量率)、iは、患者に照射される線量に影響を及ぼす全てのパラメータをカバーする添え字であり、
【0064】
【数3】
は、重みw
i及びパラメータ
【0065】
【数4】
の関数として計算される倍増率である。重みw
iを、実際の操作可能なX線システムの測定された線量率に対する各因子依存関数を較正するのに用いることができ、
【0066】
【数5】
は、時間ステップtでの全ての入力パラメータ値のベクトルである。
【0067】
【数6】
を満足する因子依存関数の要求は、
【0068】
【数7】
であるときにd
t=k
refを保証する。
【0069】
上述した線量率d
tを、IRPの空気カーマ率、FDPの空気カーマ率、台表面の空気カーマ率及び実際の皮膚線量のような種々の線量率を計算するのに用いることができる。ある種の線量率は、所定のパラメータによって影響を及ぼされない。例えば、コリメーションパラメータ及び楔状フィルタパラメータは、DAP線量率に影響を及ぼすことがあるが、IRPの空気カーマ率に影響を及ぼさない。したがって、異なる種類の線量率に対するk
refの値及び重みは異なってもよい。
【0071】
【数8】
を、シミュレーションの入力パラメータを変化させるときに線量率を正確に調整するシステムを作成するために物理モデル及び実験によって得られるデータを用いて生成する。発明の種々の実施の形態による複数のパラメータに対する因子関数
【0072】
【数9】
の詳細な説明は、以下の通りである。
【0073】
発明の一実施の形態において、因子関数は、パラメータ「経路長」に基づいてもよい。「経路長」は、人体を通過するX線ビームの長さである。患者の経路長は、三つの副要因(i)患者の厚さ(例えば、太った患者、経路長が更に長くなる)、(ii)Cアームの角度(例えば、更に鋭い角度、人体はその厚さより幅が広いので経路長が更に長くなる)及び(iii)X線ビームが通過する人体の部分(例えば、腹部は腕より厚い)によって影響が及ぼされることがある。人体を通過する経路長を、これらの三つの副要因を用いて計算することができる。このように患者の厚さをモデル化することによって、ユーザは、異なる形状、性別及びサイズの患者を容易にシミュレートすることができ、水平方向の台の動き及び台上の患者の位置を考慮することができる。
【0074】
「経路長」の因子を組み入れる一部の実施の形態において、経路長を、3次元の三角形メッシュオブジェクトとして人体をモデル化するとともにX線ビームをメッシュオブジェクトを通過する直線として取り扱うことによって計算してもよい。レイトレーシングを、光線を交差する全ての三角形を識別するのに用いてもよい。これらの交差点の間の内部経路長を、三角形オブジェクトを通過する全ての経路長を取得するために合計してもよい。
【0075】
一般的に、ADRCに適合したX線システムは、検出器で受ける線量を一定にすることを試み、したがって、人体を通過する「経路長」が更に長くなる結果、放出される線量が、短い経路長の場合に比べて増大する。同様に、人体がほとんど水によって構成されるという仮定に基づく理論モデルは、患者の厚さが「ノーマル」の20cmから約3cm増大した結果として必然的に入射線量が2倍になることを示唆した。同様に、物理的及び幾何学的モデルは、(完全な楕円形の身体を有する20cmの厚さ及び40cmの幅の患者を仮定したときに)患者の身体が前後方向(AP)の視野から45°回転すると入射線量が360%増大し、55°回転すると700%増大することを示唆した。しかしながら、実践的研究は、実際の入射線量値が上述した理論値と著しく異なることを示す。その理由は、理論値は、身体がほとんど水によって構成されているという不正確な前提に基づくからである。実際には、身体は、水だけでなく骨、器官及び他の有機物によって構成されている。実践的研究は、経路長が12cmから36cmまで(3:1の比)増大すると皮膚線量率が0.4から5.6まで(14:1の比)増大しうることを示した。
【0076】
理論モデルと実験によって得られるデータとの間の相違を考慮するために、モデル経路長に対して以下の因子依存関数を用いてもよい。
【0077】
【数10】
この場合、l
refを基準経路長とし、l
tを時点tでの経路長とし、w
iを較正重みとし、この場合、放射線量が2倍になる経路長の増加に対応する。
【0078】
例えば、理論値に対応するために、基準経路長l
ref=20cm及びw
i=3cmの較正重みは、線量増倍率f
i=1を与えることができ、その結果、後に経路長が3cm増加する(l
t=23cm)と、f
i=2となる。同様に、経路長が3cm減少する(l
t=17cm)と、f
i=2となる、等々。
【0079】
代替的には、重みを、実世界の機器からの実験によって得られる値に適合させてもよい。この場合、重みをw
i=6.304に設定すると、経路長が24cmまで増加したときに線量率の実験によって得られる測定値が14倍になる。
【0080】
経路長が非常に短くなる又はゼロになる場合には特殊な考察を行う必要がある。経路長が非常に長い場合、X線管及び線量規則に対する所定の制限因子を関連させてもよく、その結果、後に詳細に説明する線量率のしきい値化が行われるとともに画像品質が低下する。
【0081】
「経路長」因子を組み込む一部の実施の形態において、経路長因子は、視野内の個別のビームをモデル化してもよい。現実環境において、視野内の種々の点のX線ビームは、中央X線ビームからの異なる経路長を有することがある。この場合、各ビームの経路長を、中央ビームに対して上述したのと同様に計算し、(考察されるX線ビームの数に応じた)個別の増倍率の寄与を、異なる経路長に対してそれぞれ計算し、これらの寄与を、最終的な増倍率を得るために互いに合計する。
【0082】
発明の一実施の形態において、因子関数は、パラメータ「蛍光透視パルスレート」に基づいてもよい。パルスレートが半分に減少すると、理論的にはIPRの空気カーマ線量率は約半分に減少する。例えば、30p/sから7.5p/sまで減少すると、75%の線量が省かれる。
【0083】
蛍光透視パルスレートをモデル化する以下の因子依存関数を用いてもよい。
【0085】
この場合、p
refは、基準パルスレートであり、p
tは、時点tでのパルスレートであり、w
iは、較正重みであり、この場合、純粋な物理ベースのモデルに対して1に等しくなる。
【0086】
しかしながら、実証的研究は、入射皮膚線量率はさらに緩やかな減少を示すことがあることを示し、この場合、画像品質を維持するためのADRCによる管電流の補償により30p/sから15p/sまで低減することによって線量が22%しか減少せず、7.5%まで減少することによって約50%減少する。したがって、重みを、w
i=2に設定することによってこの実際の測定関係を反映するように調節してもよい。
【0087】
ADRCを、(画像品質の著しい損失がある)線形的な線量減少手法又は(画像品質の損失は少ないが線量の減少が小さい)バランスの取れた手法で明確に動作するように構成してもよい。したがって、追加の入力パラメータをこのモデルの更に複雑なバージョンに組み込んでもよい。
【0088】
したがって、この情報に基づいて、蛍光透視パルスレートに対して十分にシミュレートされた放射線被曝モデルは、バランスの取れた画像品質値を構築することができる。例えば、基準パルスレートをp
ref=30p/sに設定するとともに較正重みをw
i=2に設定すると、パルスレートを15p/sまで低減するとf
i=0.75の空気カーマ線量率係数を与え、p
t=7.5まで更に低減すると、f
i=0.5となる、等々。
【0089】
発明の一実施の形態において、因子関数は、パラメータ「蛍光透視線量レベル」に基づいてもよい。多数の最近のシステムは、シミュレーションが同一の高画像品質を要求しないときに蛍光透視線量率を減少させるためのオペレータに対する迅速な設定を提供する。このオプションを用いることによって画像ノイズが増大する。時々、処置の所定の重要な部分の間に又は困難な撮影状況において線量を増大させる設定もある。典型的には、ローの線量率設定によって、放出線量をノーマルの線量率設定の50%まで減少させることができ、それに対し、ハイの線量率設定によって、ノーマルの線量に比べて線量を2倍にすることができる。
【0090】
蛍光透視線量レベルをモデル化するための以下の因子依存関数を用いてもよい。
【0092】
この場合、w
iは、較正重みであり、この場合、2に等しくなる。その理由は、実験によって得られる測定値が理論値に従うと予測されるからである。標準的な基準値は、「ノーマル」に設定された線量レベルに対応する。
【0093】
したがって、放射線シミュレーションの一部として、ローの線量率設定、ノーマルの線量率設定及びハイの線量率設定との間をトグルする選択を加えてもよい。しかしながら、他の中間設定又は中間設定の他の組合せを用いてもよい(例えば、ロー及びノーマルのみ)。ローの線量設定によって、放出線量を50%(又は他の値)まで減少させることができ、画像ノイズは、それに応じて増大する。ハイの線量設定によって、放出線量を100%(又は他の値)まで増大させることができ、画像ノイズは、それに応じて減少する。
【0094】
ハイの線量モードを用いると、高線量のオペレータに対して警告を与えるために、明確な連続な信号が放射線シミュレータで音を出すようにしてもよい(しかしながら、これをこの形態においてオフにできるようにする必要がある。)。ハイの線量モードを20秒又は他の設定期間に亘って連続的に用いる場合、ハイの線量モードを自動的にノーマルモードに戻すようにしてもよい。
【0095】
発明の一実施の形態において、因子関数は、パラメータ「シネ収集」に基づいてもよい。シネ収集に対して、線量レベルは、良好な画像品質を提供するためにライブの蛍光透視に対する場合よりも著しく高い。一般的に、大抵のX線シネ透視撮影(x-ray cinefluorographic)部は、そのような収集に対するフレームごとの線量が蛍光透視に対する場合の約15倍となるように較正される。一部の場合において、収集を10〜15倍より大きく指定もよい。したがって、シミュレートされた放射線被曝モデルは、シネ収集を用いるときに蛍光透視線量の15倍の値(又は他の値)を用いてもよい。
【0096】
シネ収集をモデル化するための以下の因子依存関数を用いてもよい。
【0098】
この場合、w
iは、較正重みであり、この場合、実験によって得られる測定値に対応するように15に等しく設定することができる。標準的な基準値は、「オフ」であるシネ収集に対応する。
【0099】
「ノーマル」又は「ロー」の蛍光透視線量レベル設定は通常、一連のシネを収集するときに照射線量率を変化させないが、因子依存関数を、収集中にそのような効果を含むように変更してもよい。しかしながら、典型的には、蛍光透視線量レベル及びパルスレートに対する因子依存関数は、シネ収集を「オン」に設定したときには全体の線量率の式から省かれる。
【0100】
発明の一実施の形態において、因子関数は、パラメータ「シネ収集のフレームレート」に基づいてもよい。シネフレームレートを設定した結果、蛍光透視に対してパルスレートを変化させると同一の比例する変化が生じ、したがって、同様にしてモデル化することができる。
【0102】
この場合、p
refは、基準シネフレームレートであり、p
tは、時点tでのシネフレームレートであり、w
iは、較正重みであり、純粋な物理に基づくモデルに対して1に等しくなるが、更に現実的な実験によって得られるモデルにおいては、蛍光透視パルスレートに対する全く同一の論証を用いることによって2に設定してもよい。
【0103】
発明の一実施の形態において、因子関数は、パラメータ「Cアーム検出器高さ(SID)」に基づいてもよい。研究は、ソース画像距離(SID)を105cmから120cmまで増大すると距離に対する逆の2次関係(inverse quadratic relationship)に基づいてIRPの空気カーマ線量率を約30%増大させることを示唆する。他の研究は、検出器と患者との間の追加の10cmの空隙の結果として皮膚線量が20〜38%増大することを諮圧する。
【0104】
このための因子依存関数を以下のように表現してもよい。
【0106】
この場合、s
refは、基準SIDであり、s
tは、時点tでのシネフレームレートであり、w
iは、較正重みであり、純粋な物理に基づくモデルに対して1に等しくなる。検出器を所定の距離だけ上昇させた結果、SIDも全く同じように増大する。
【0107】
発明の一実施の形態において、因子関数は、パラメータ「コリメーション」に基づいてもよい。調節可能な円形又は矩形のコリメータは、通常、放射源とKAPリーダとの間に配置され、患者に放出される合計の線量を非コリメート領域に比例する量だけ有効に減少させる。合計の放出される放射線量が減少するが、IRPの空気カーマは略一定である。その理由は、IRPがコリメートされた窓の中央に配置されるからである。現実環境において、IRP線量率は、ADRCによる補償のためにむしろ増大する。したがって、放射線窓において、全領域に対するコリメートされた領域の割合は、合計の線量の減少を決定することができ、これは、KAP値計算に影響を及ぼすことがあるが、必ずしもIRPの皮膚線量に影響を及ぼさない。例えば、コリメータが全景の30%をカバーする場合、KAP率も同様に30%減少し、それ対して、IRPの空気カーマ率は変化しないままである。
【0108】
IRPの空気カーマ率が典型的にはコリメータ設定によって大きな影響が及ぼされないので、放射線シミュレーションモデルは、この因子依存関数を完全に除外してもよい。しかしながら、実際にはこの制御パラメータを考慮する必要があるKAP率に対する他の同様な因子関数を、以下のように代わりに設ける。
【0110】
この場合、a
refは、基準非コリメート領域であり、a
tは、時点tでの非コリメート領域であり、w
iは、較正重みであり、純粋な物理に基づくモデルに対して1に等しくなる。
【0111】
発明の一実施の形態において、因子関数は、パラメータ「楔状フィルタ」に基づいてもよい。主要なコリメータブレード(main collimator blade)に加えて、主要なコリメータと組み合わされる半透明コリメータを用いる種々の方法がしばしば存在する。主要なコリメータは、通常、合計の放出される線量を減少させ、その結果、KAP率に影響を及ぼす。半透明コリメータは、しばしば、(ブレードのエッジがX線画像における円滑な遷移を形成するように)コリメータブレードに亘る厚さを変化させる楔として形成され、主要な矩形コリメーションを洗練するのに用いられ、画像のコントラストの差を均一にする。したがって、これらは、楔状フィルタ又は等化フィルタとしてしばしば知られている。これらは、異なる形状(例えば、矩形、円形、半円形、楕円形、三角形又はその組合せ)を有してもよいが、最近のX線システムにおいては、典型的には、それぞれの側から挿入されるとともに視野の傾斜部分をシールドするために回転してもよい一つの左側フィルタ及び一つの右側フィルタを有する対で用いられる。
【0112】
シミュレーションモデルは、半透明コリメータ材料の使用に起因する線量率の変化による被曝量の変化を考慮してもよい。コリメータブレードは、厚さが一様でなく、異なる材料及び形状を有することがあり、互いに重ね合わせることがあるので、楔状フィルタにより減少した放射線のレベルの決定は複雑になることがある。さらに、主要なコリメータブレードの位置は変化することがある。一部の研究において、等化フィルタが放射線を少なくとも1/6に減衰させることが分かった。一部の研究は、特殊なX線システムに対して値の大きな変化を示唆し、他の研究は、楔状フィルタを挿入したときにADRCによる補償のために空気カーマ率及びKAP率が増大することを示した。
【0113】
KAP率を得るための個のパラメータの一つの因子関数を以下のように表現してもよい。
【0116】
【数18】
は、時点tでの非コリメート領域であり、
【0117】
【数19】
は、時点tでの非コリメート及びフィルタ領域であり、w
iは、較正重みであり、この場合、実験に基づくモデルに対して6に等しくなる。モデルは、楔状フィルタの挿入の結果としての放射線の増大を考慮してもよく、上述した例においては、w
iが1より下の値に設定されることを意味する。
【0118】
さらに、更に複雑なモデルは、並べられた主要なコリメータ及び/又は補助的なコリメータを結果的に得られる形状又は透明度となるように回転又は移動できるようにするために、並べられた主要なコリメータ及び/又は補助的なコリメータの影響を考慮してもよい。これを、因子関数を複数の部分に分けることによって成し遂げることができ、各部分は、重複する所定の透明度の特定の幾何学的領域に対応する。そのような幾何学的な部分の各々の減衰が計算され、全ての領域からの寄与が、全体の照射領域を介して合計される。それは、それぞれの側からの代わりにX線ビームの中央に挿入される指型フィルタ又はコリメータを同様に考慮してもよい。
【0119】
発明の一実施の形態において、因子関数は、パラメータ「増倍」に基づいてもよい。従来、増倍レベルは、X線ビームの視野(FOV)を変更することによって変更され、逆二乗の法則に従ってIRPの空気カーマ率を変化させ、KAP率は略一定のままである。したがって、シミュレーションモデルは、この作用を考慮し、そのようなシステムをシミュレートするときに同様な方法で放射線被曝量を計算してもよい。
【0120】
しかしながら、最近の撮影システムは、しばしば、線量率の影響を軽減するためにノイズレベルが若干増大するのを許容し、二次関係ではなくFOVとの線形的な関係に従う。これによって、KAP率が大きな増倍率で減少する。したがって、シミュレーションモデルは、この作用を考慮し、そのようなシステムをシミュレートするときに同様な方法で放射線被曝量を計算してもよい。
【0121】
更に複雑化させる要素として、フラットパネル検出器の最大の増倍率レベルは、一部のシステムにおいて、更に多くの線量を削減することによって又は次の更に低い増倍率レベルに対して線量を全く変化させないことによってデジタル的に得られる。そのような作用を、拡張した因子関数において同様にモデル化してもよい。
【0122】
このパラメータを、上述した種々の因子の全ての間の折衷物としてのIRPの空気カーマ率及びKAP率の両方に対する線形的な関係を用いてモデル化してもよい。これを、空気カーマ率及びKAP率の両方に対する因子依存関数において以下のように示す。
【0124】
この場合、v
refは、基準FOVであり、v
tは、時点tでのFOVであり、w
iは、較正重みであり、空気カーマ及びKAPに対して異なってもよいが、この場合には両方に対して1に等しい。
【0125】
例えば、例示する放射線シミュレーションモデルにおいて、空気カーマ及びKAP率の両方に対してv
ref=23cm及びw
i=1である場合、v
t=15cmのFOVの変化は、IRP線量率の因子f
i=1.5及びKAP率の因子
【0127】
画像ノイズレベルを、IRPの空気カーマ率と同様に線形的に増大すると仮定してもよい。代替的に、画像ノイズレベルは、差何複雑な関係(例えば、指数、対数)に従ってもよい。
【0128】
発明の一実施の形態において、因子関数は、パラメータ「デジタルサブトラクション血管造影(DSA)」に基づいてもよい。DSAは、処置の間にX線画像において血管を他の解剖構造と更に明確に区別するために用いる技術である。それは、造影剤を血管系に注入し、血管が造影剤によって充填されているマスク画像を取得し、このマスク画像を後の画像から差し引くことによって行われる。サブトラクションプロセスが画像ノイズを強めるので、(20倍と同程度の)十分に高い線量/フレームでオリジナル画像の各々を取得することによってこの影響を無効にする必要がある。増大した線量/フレームを、更に低いフレームレートを用いることができるようにすることによって部分的にオフセットしてもよい。しかしながら、デジタルサブトラクション撮影を用いる処置は、一般的には、サブトラクションが行われないシネフルオログラフィー(cinefluorography)の処置より多くの合計の放射線量を有し、低線量の蛍光撮影に比べて線量/フレームが325倍になる。一部の研究は、サブトラクションが行われないシネ収集で予測することができる線量率の25〜50倍という幾分大きい差を示唆する。
【0129】
DSAを考慮するために、シミュレータモデルは、IRPの空気カーマ率を、ノーマルの線量の蛍光透視の150倍に又はサブトラクションが行われないシネの実行(cine run)の10倍に増大してもよい。これを、以下の因子依存関数として表現することができる。
【0131】
この場合、w
iは、較正重みであり、この場合、シネ収集及びDSA因子関数が最終的な因子増倍に含まれると仮定すると10に設定してもよい。さらに、シミュレーションモデルは、ライブのサブトラクションロードマップ及びノーマルのライブの蛍光透視に対する線量率の差を考慮してもよい。
【0132】
一旦全てのパラメータが独立して取り扱われると、個別の線量の因子からの寄与を、所定の時点の「合計線量」を与えるために互いに掛け合わせてもよい。一部の線量率の因子を、対応する「KAP率の因子」を与えるためにIRPのビームコーンの領域に掛け合わせてもよい。
【0133】
上述したモデル及び因子依存関数に基づいて、IRPの空気カーマ率及びKAP率を、処置の間の任意の時点で計算してもよい。発明の一実施の形態によれば、IRPの現在の空気カーマ率及び現在のKAP率のような現在の線量率を、IRPの累積空気カーマ率及び累積KAPを得るために処置の過程に亘って合計してもよい。任意の時点での合計の累積線量を、処理の開始から現在の時点までの個別の線量率の合計として、すなわち、以下のように表現してもよい。
【0135】
累積値を、報告及び教示のために処置の終了まで個別の「フルオロ(fluoro)」部及び「収集」部として保持してもよい。累積値を、合計して処置の間の任意の時点の「合計」IRP線量又はKAP値にするとともにシミュレーションディスプレイにおいてユーザに対して表示することもできる。
【0136】
IRPの累積空気カーマ率及び累積KAP率を経時的に追跡することによって、シミュレーションは、どのようにしてこれらの率が蛍光透視、シネ記録又はDSAのような操作設定の変化に基づいて変化するかを示すことができる。
【0137】
先ず、現在のIRP線量率及び現在のKAP率を計算し、これらは、上述したステップ502から計算した基準IRP線量率及び基準KAP率に設定される。次の反復において、IRP線量率及びKAP率を、全ての入力パラメータに対する増倍率を生成することによって計算する。生成された増倍率の各々は、標準IRF線量率及び標準KAP率に掛け合わされる。
【0138】
現在のIRP線量率及び現在のKAP率を用いることによって、X線画像ノイズのレベル及びコントラストをステップ505で計算してもよい。IRPの要求される線量率を、(蛍光線量レベル及び増倍について既に説明した画像品質の損失は別として)一定の画像品質に対して計算することができる。この率が、例えば、制限22mGy/分(ロー設定)、44mGy/分(ノーマル設定)又は88mGy/分(ハイ設定)を超えると、シミュレートされるノイズが増大することがある。実験によって得られるデータに基づいて、相対ノイズは、患者の厚さがしきい値を6cm超えるときには略2倍になる。そのような増大は、要求される線量の4倍の増大と同一である。それに応じて、画像ノイズの相対的な増大を以下のように計算することができる。
【0140】
この場合、n
tは、ノイズ増倍率であり、d
tは、時間ステップtでの線量率であり、d
thresholdは、適切なしきい値線量率である。
【0141】
放射線シミュレーションシステムは、標準的なホワイトノイズ、ショットノイズ又は従来の画像処理に共通の同様な付加ノイズのようなノイズをモデル化してもよい。ノイズ増倍率を、画像のホワイトノイズの分布を調整するためにホワイトノイズパターンに適用してもよい。その後、調整されたホワイトノイズを、ノイズのあるX線画像の影響をシミュレートするためにX線画像に適用してもよい。
【0142】
ステップ506において、放射線が患者に照射される表面領域位置を計算してもよい。表面領域位置を、患者の3次元又は2次元空間モデル及びX線撮影装置のビーム放出モデルを用いて決定してもよい。上述したように、患者モデルは、例えば、3次元メッシュグリッドとすることができる患者の人体構造についての空間情報を含む。一実施の形態において、3次元患者モデルを、患者のセグメント化されたCTスキャン又はMRIスキャンから取得してもよい。特に、皮膚の3次元モデルを用いてもよい。その理由は、放射線が身体に入射する場所及び入射する線量が最も高い場所が皮膚であるからである。また、これは、患者のどの部分が照射されたかを視覚化するのに最も関連のあるキャンバス(canvas)である。
【0143】
ビーム放出モデルを、X線撮影装置及び上述した操作設定からの情報を用いて生成する。ビーム放出モデルは、X線源からのX線放出の形状を特徴付ける。例えば、X線ビームの放出を、X線源において頂点を有するとともに検出器において底部を有する(フラットパネル検出器に対する)4面体形状又は(画像増強検出器(image intensifier detector)に対する)円錐形状を有するものとしてモデル化してもよい。コリメータ、楔状フィルタ及びFOVの設定は、ビーム放出モデルの結果的に得られる形状及び強度に影響を及ぼすこともある。例えば、コリメータ及び/又はFOV設定は、フラットパネルに対する4面体ビーム形状の底部は更に小さい矩形に制限され、楔状フィルタは、4面体に八角形の底部を形成するために4面体の底部の角を斜めに切り取る。また、ビーム放出モデル内の強度分布は、楔状フィルタの存在によって変化することがある。X線ビームの空間コヒーレンスを、4面体の底部の矩形を設定することによってモデル化してもよい。円形、楕円形、方形、矩形、多項式関数又はその線形結合のような他の形状モデルを、ビーム放出の形状を特徴付けるために用いてもよい。ビームコーンの形状及び強度を、コリメータ及び/又は楔状フィルタの使用のような操作設定に応じて変更してもよい。2方向設定において、複数の異なるビーム放出モデルを同時に用いてもよい。
【0144】
放射線が患者を照射する表面領域位置を、患者の空間モデルとビーム放出の空間モデルとの交差を計算することによって決定してもよい。
【0145】
ステップ506で計算した表面位置を用いることによって、患者ヒートマップをステップ507で生成してもよい。皮膚線量、吸収線量及び実効線量の患者ヒートマップを、線量率の情報、患者の人体構造及び患者の形状の組合せから計算する。一実施の形態において、ヒートマップは、患者の人体構造の視覚的な3次元又は2次元モデルに適用される点描パターン、グレースケール又はカラースケールである。3次元モデルは、例えば、患者のメッシュグリッドオブジェクトであってもよく、3次元モデルは、例えば、患者の外形の輪郭であってもよい。ヒートマップを、線量率の異なる値に対してカラースケールを割り当てることによって生成する。例えば、赤を、高レベルのIRP線量率を表すために用いてもよく、青を、低レベルのIRP線量率を表すために用いてもよい。この場合、カラースケールは、患者の身体の種々の位置に亘って適用され、色を、患者の身体の当該位置の線量率に対応する3次元又は2次元モデルに付加する。ヒートマップを、処理の過程の間に動的に更新するとともにシミュレーションディスプレイに表示してもよい。他の実施の形態において、ヒートマップを、累積線量率を表示するのに用いてもよく、処置の過程の全体に亘って表示される。
【0146】
発明の一態様において、異なるヒートマップを訓練目的に応じて用いてもよい。例えば、無地の(solid)ヒートマップを、空気カーマ率若しくは皮膚線量率又は対応する累積線量を表示するのに用いてもよく、それに対し、半透明のヒートマップを、体内に吸収された放射線、実効線量又は器官若しくは身体部分ごとの推定されるがんにかかる危険性を示すのに用いてもよい。
【0147】
発明の一実施の形態において、確率的危険因子をステップ508で計算してもよい。上述したように計算した線量及び患者の人体構造の身体部分の位置についての空間情報を用いることによって、各身体部分の実効線量を、組織又は器官の重み付け係数のセットを線量率に適用することによって推定することができる。身体部分の実効線量を、放射線被曝の確率的及び決定的な影響を推定するのに用いることができる。
【0148】
患者又は手術チームのメンバーの皮膚のような身体の一部又は身体全体によって受け取る実効的な照射された放射線量は、危害のリスクの増大に寄与する。決定的な影響から生じるリスクは、やけど又は脱毛のような受け取った線量によって徐々に悪化する影響である。確率的な影響に起因するリスクは、典型的には、後期発症であり、影響の深刻度は、受け取った線量それ自体に関係しない。放射線の確率的な影響から生じるリスクの例は、癌である。
【0149】
一実施の形態において、処置に対する累積放射線量を、照射線量の重大さのユーザの理解を高めるために他の確率的放射線源と比較してもよい。例えば、照射線量率を、同等の数の胸部X線若しくは胸部CTスキャン又は自然バックグラウンド放射線の年数と比較してもよい。他の実施の形態において、処置の間の照射線量の結果としての長引く癌又は死のリスクを、他の活動によって生じる死、癌又は負傷の同等の推定される生涯リスクと比較してもよい。例えば、25mSVの線量に起因する確率的な影響によって増大する死のリスクを、3500本のたばこの喫煙によって増大する死のリスクと等価なものとして放射線防護シミュレータのユーザに説明することができる。これらのリスクの等価物(risk equivalents)は、年齢及び性別、喫煙、ダイエット若しくは運動習慣のようなライフスタイルの要因、家族及び遺伝又は以前の放射線被曝のような個別の危険因子を考察してもよい又は考察しなくてもよい。
【0150】
決定的な影響は、一旦所定のしきい値線量を超えると予想通りに現れ、影響のリスクは、照射された放射線量に関連する。したがって、シミュレーションは、これらのしきい値のいずれかを超えたか否かをモニタしてもよく、シミュレートされた処置の間にすぐに又は累積的なやり方で後に、これが実際の手術である場合には損傷が生じた可能性があることをユーザに警告する。しきい値を、例えば、赤斑、脱毛、落屑、潰瘍、真皮壊死、皮膚の委縮、硬化、毛細血管拡張症、レンズの混濁及び白内障のような損傷のリスクをユーザに警告するために設定してもよい。これらの線量率しきい値を、しきい値を超えた後又は損傷が発生すると予測できるときに生じる典型的な損傷の画像の表示を行うのに用いてもよい。
【0151】
発明の一態様において、確率的な危険因子を、現在の操作設定によって生じた推定される増大した癌のリスクを視覚化するマップを生成するためにヒートマップに適用してもよい。
【0152】
ステップ509において、現在の3次元散乱放射線プロファイルを、手術室において患者から後方に散乱されるとともに医療チームの人間に散乱される二次放射線をモデル化するために計算してもよい。散乱放射プロファイルは、患者の人体構造についての情報、異なる時点の患者の線量率及びX線ビームの放出形状に基づく。
【0153】
一実施の形態において、モデルは、中央ビームからの異なる距離の領域を構築することができ、この場合、各領域の境界は、一定の散乱線量率を有する所定の等値面(isosurface)に対応する。等値面を、線量率が予め決定された値を有する位置として選択してもよい。例えば、等値面を、線量率が4.0mGy/時間の位置、2.0mGy/時間の位置、1.0mGy/時間の位置及び0.5mGy/時間の位置として選択してもよい。散乱線量率が設定された距離及び散乱角でのKAP率に略比例すると示唆する研究に基づいて、散乱放射線プロファイルは、KAP率の変化に比例するように等値面の線量率をモデル化してもよい。
【0154】
好適な実施の形態において、散乱放射線プロファイルは、X線管と検出器との間の中央ビーム軸線の周辺で一様であるものとして散乱放射線等値面をモデル化してもよい。散乱放射線プロファイルを、好適には、X線管からの距離の関数として中央軸線に沿った所定のポイントの等値面の半径を表す1次元関数としてパラメータ化してもよい。関数を、例えば、多項式関数、半円形状の線形結合、ベジエ曲線又は磁気双極子関数としてもよい。他の実施の形態において、等値面を、中央ビームに垂直な所定の平面において一定の線量率楕円(dose rate ellipse)を決定する個別の短半径プロファイル関数及び長半径プロファイル関数を用いることによって中央ビームの周辺の楕円形上を有するようにモデル化してもよい。
【0155】
一実施の形態において、等値面を、3次元表面としてモデル化してもよい。3次元モデルを、例えば、病院において設定された現実のシステムについての情報のようなX線撮影装置及び手術室についての空間データとともに又はそのような詳細なデータを特定のX線システムのメーカから入手できるときに用いてもよい。
【0156】
発明の一態様において、散乱放射線プロファイルは、患者台、X線管若しくは検出器、オペレータ若しくはチームそれ自体の身体、又は、専用の放射線防護シールドのような手術室に存在しうるX線防護オブジェクトをモデル化してもよい。散乱放射線プロファイルは、防護オブジェクトが存在する場所の散乱放射線を減少させることができる。
【0157】
ステップ510において、現在の放射線量を、現在のKAP率を散乱放射線プロファイルに適用することによって計算する。一旦、中央ビームの周辺の散乱放射線プロファイル及び全ての対応する散乱放射線等値面を決定すると、これらを、患者の周辺の空間の任意の点に対する散乱線量率を所定の時点において計算するのに用いることができる。更に具体的に説明すると、これを、最高の線量率の等値面を選択することによって行うことができ、空間の点は、当該等値面の内側に配置される。この場合、空間の特定の点の線量率を、選択された等値面と同一の線量率に設定してもよい。代替的に、空間の特定の点の線量率を、点に最も近接する二つの等値面の散乱線量率の線形結合を用いて計算してもよく、この場合、線量率は、各等値面に対する点の距離に基づいて重み付けされる。
【0158】
Cアームの角度及び他のX線撮影装置モデルパラメータが変化すると、散乱領域及び3次元散乱等値面はそれに応じて変化する。Cアームの角度の場合、回転した等値面を、3次元回転行列を用いることによって演算してもよい。他の全ての入力パラメータの影響を、各散乱等値面の初期散乱線量率を放射線量プロセッサによって演算したKAP率の因子に掛け合わせることによって考慮してもよい。その理由は、KAPが散乱線量に略比例するからである。
【0159】
一実施の形態において、患者の周辺の累積的散乱放射能を、所定の時間に亘って計算してもよい。これは、
図9A〜9Dを参照しながら更に詳細に説明するように、手術室の患者の周辺の空間をサブボリュームに分割することによって行われる。手術室の周辺の空間のボックス化されたサブボリュームの各々に対して、現在の散乱線量率を計算するとともにサブボリュームごとに所定の時間に亘って合計する。
【0160】
発明の一実施の形態において、散乱に対する等値面の2次元断面をステップ511で計算してもよい。計算は、上述した3次元プロファイルに基づく。断面を、Cアームの位置に関連する医療チームメンバーの位置を用いて導き出してもよい。例えば、右大腿部に近づいて血管内処置を行う手術室の医師の典型的な位置は、患者の右側であり、Cアーム面からCアームの右側に約45°回転している。医師の断面は、この位置及び角度に基づくことができる。
【0161】
ステップ512において、医療チームメンバーの身体の特定の位置の線量値を計算してもよい。上述した2次元又は3次元散乱放射線プロファイル及びチームメンバーの位置についての情報を用いて、正確なチームメンバーの位置の散乱放射線量を決定することができる。さらに、チームメンバーの人体構造についての空間情報を、手、目、甲状腺又は生殖腺のような放射線感受性器官を含む特定の関心のある点の正確な位置を決定するのに用いることができる。上述した患者の人体構造と同様な方法でチームメンバーの人体構造をモデル化することによって、放射線量プロセッサは、人間の実際の高さ及び組成に基づいて種々の器官又は身体部分の位置を決定することができる。例えば、医師の目の線量を表す散乱領域の特定の点を、人間の実際の目の高さに基づいて設定してもよい。背の高い医師については高いポイントを選択し、背の低い医師については低いポイントを選択する。
【0162】
発明の一態様において、手術する医師、チーム及び目、甲状腺、手及び生殖腺のような身体の特定の点の位置を、位置センサを装着させることによって処置の間に追跡してもよい。散乱放射線量率を、新たな位置の散乱放射線プロファイルに対応するように更新してもよい。このようにして、散乱放射線プロファイルによって、シミュレーションは、チームメンバーが手術室を動き回るときの位置の変化を動的に考慮することができる。これによって、シミュレーションは、例えば、チームが放射線の発生時に機械から離れ又はX線ビームから抜けるように手を動かす場合にどのようにしてチームが放射線イベントにいかに良く反応を示すかを考慮することができる。
【0163】
ステップ513において、現在の時点に関連する線量をタイムラインに取っておく。処置全体の過程に亘って、タイムラインは、所定の時間に亘る制御入力パラメータのセットと線量率との間の関係を視覚化するのに用いることができる種々の時点の線量を含む。一実施の形態において、各時点で計算された放射線量を、これらが処置の間に計算される時点に関連させる。放射線量が更新される度に、放射線量を、例えば、データ収集記憶装置に格納してもよい。この場合、種々の時点の放射線量の格納を、時間の関数である曲線として線量を視覚化するのに用いてもよい。患者又はチームメンバーに対する最も大きな線量の寄与の一つが処置の制限された時間フレームに亘って生じることがあるので、どのように照射線量が任意の時点で変化したか、X線撮影装置を効果的に用いたか否か及びその結果としてどのように種々の線量が変化したかを理解するのがユーザにとって有用である。
【0164】
ステップ514において、パフォーマンス評価を、ステップ513で計算したタイムライン線量に基づいて生成してもよい。いかに良く処置に対する放射線量の管理を行ったかを説明するパフォーマンス評価を、シミュレーションのユーザに提供してもよい。パフォーマンスを、例えば、病院、国又は世界の他人のパフォーマンスのような種々の基準に対して評価してもよい。評価は、同一のカテーテル検査室、同一の病院、領域、国又は世界の中での同一の処置の測定された平均値に対する放射線シミュレータのユーザの到達したシミュレーションされた線量レベルとの比較に基づいてもよい。そのような平均線量値を、国又は世界のデータベース及び調査機関の病院品質システムから取得することができる。線量値を、他の線量、例えば、中央値線量又は信頼区間若しくは四分位範囲のような線量の範囲と比較してもよい。パフォーマンスを、ユーザ自体の過去のパフォーマンス、病院及び社会の基準及び指針又は社会若しくは病院に対して見積もられる医療費に対して評価してもよい。さらに、システムにより、比較値をユーザによって自由に設定することができ、放射線シミュレータは、病院又は病院がある国からの値との比較を行うことができる。
【0165】
発明の一態様において、シミュレーションシステムは、較正のステップ515を含んでもよい。較正のステップは、出力放射線量に適用するときにX線撮影装置モデル及び患者モデルに更に近づける放射線量値を生成する較正重みの生成を含む。例えば、出力放射線量を、実際のカテーテル検査室で用いられるX線撮影装置に近づけるように較正又は調整してもよい。一実施の形態において、較正重みを、実際のX線誘導処置の間に生成される放射線量を用いることによって計算してもよい。この場合、シミュレートされた放射線量に対する実際の放射線量の比を、較正重みを決定するのに用いてもよい。このようにして、較正重みによって、シミュレーションは、シミュレータ訓練プログラムを実現する際に病院内の実際の放射線量の品質にどのぐらいの大きさの影響を及ぼしているかを推定することができる。較正重みは、上述した因子関数を調整する較正重みと同様にして出力放射線量を調整する。
【0166】
発明の他の態様において、システムは、ユーザが取得したシミュレートされた線量レベルと標準化された又は推奨されたしきい値レベルと比較してもよい。病院は、しばしば、ローカル品質基準に基づくそれ自体のしきい値を有し、しきい値を超えると、所定の行動がとられ又はコストが生じる。そのような行動は、高線量を受けた患者の次の訪問の予約、ローカルALARA線量しきい値を超えた人々へのALARA警告書の送付、又は、法律によって規定されるような最大線量レベルを超えた人々の職務停止を含む。そのようなしきい値は、典型的には、団体及び規制機構によって発行される病院放射線安全ハンドブック及びマニュアルで見つけられる。本発明のしきい値を、シミュレーションが行われる現地の法律、推奨及びガイドラインに対応するように設定してもよい。
【0167】
発明の一態様において、シミュレーションは、パフォーマンスが医療機関又は医療提供者に及ぼすコストの影響がどれだけ小さいかを評価するためにパフォーマンス評価及びしきい値の違反の記録を用いてもよい。一般的に、病院は、ALARA警告書の発行、追加された患者の次の訪問、又は、人々の職務停止に対してコストが生じる。パフォーマンス評価が、ALARA警告書が発行されたこと、患者の次の訪問が予約された又は人々が職務停止になったことを表す場合、病院は、生じると予測されるコストを見積もるために当該情報を用いてもよい。発明の他の態様において、団体に対して見積もられるコストを、放射線を浴びた被爆者ごとの関連するコストを用いて計算してもよい。そのようなコスト又はコストの範囲を、公の健康安全調査から取得することができる。
【0168】
発明の一態様において、シミュレーションは、任意の個数のX線機器をシミュレートしてもよい。複数のX線機器を、各機器の影響を個別にシミュレートした後に各機器の正味の影響を組み合わせることによってシミュレートしてもよい。したがって、例えば、二つのX線機器A及びBからなる2方向形態において、501〜503に記載したステップを、二つのセットのIRP線量率及びKAP線量率を生成するために各機器に対して独立して実行してもよい。この場合、患者及び医療チームに対する各機器の正味の影響を、各機器に関連した線量を組み合わせることによって計算してもよい。任意の個数の追加の機器の総合的な影響を、追加の機器の各々のIRP線量率及びKAP線量率を同様に組み合わせることによって計算してもよい。
【0169】
図6は、ユーザが制御入力パラメータを変化させたときにどのようにX線蛍光透視のノイズ及びコントラストレベルが変化しうるかの例である。
図6Aにおいて、X線画像品質が非常によく、挿入されたワイヤがはっきりと見えるような放射線レベルの状況を示す。しかしながら、このような高画像品質の結果、患者及び手術チームに対する高い放射線量が生じる。
図6Bにおいて、逆の状況を示す。ここでは、放射線量が非常に低く保持されるが、そのために、ワイヤがほとんど見えず、医療処置の実行の成功に悪影響を及ぼすおそれがある。放射線の最適な使用は、これら両極のバランスを取り、オペレータの処置の技能及び放射線減少技能に依存する。
【0170】
図7は、X線画像の操作設定の影響をシミュレートする発明の他の実施の形態を示す。特に、
図7は、シミュレートされたX線画像に対するコリメーション、楔状フィルタ及び台パンの影響を示す仮想インジケータを用いる。仮想インジケータを、コリメータ、楔状フィルタ及び患者台の位置決めの手段として用いてもよい。これらのインジケータは、X線画像に重ね合わされ、実際のX線を用いる必要なく機器のパーツを配置できるようになる。仮想コリメータ及び台パンインジケータ703を、矩形又は円形としてもよく、スクリーン上の最後に取得したX線画像の破線として重ね合わせてもよい。仮想コリメータ及び台パンインジケータ703は、一旦実際のX線がオンになると全体のX線画像のどの部分が見えるかを示す。仮想コリメータ及び台パンインジケータ703を、台が移動したか否かを示すのに用いてもよく、破線は、実際のX線が生じると患者のどの部分が見えるかを示すために対応して移動してもよい。左側仮想楔状フィルタ701及び右側仮想楔状フィルタ702を、新たな位置を示すために点線としてX線撮影シミュレータスクリーンに示してもよい。任意に、仮想コリメータ及び/又は楔状フィルタの下の領域を、これらが新たな位置に存在するときにどのように画像が変化するかを視覚化するために陰影を付けてもよい。
【0171】
図7において、ディスプレイによって、ユーザは、放射線量プロセッサが計算する放射線量を視覚的に監視することができる。
図7に示すように、これらの線量704及び705は、放射線量プロセッサによって計算されるIRP値及びKAP値の空気カーマを含む。これらの線量を、シミュレーションの任意の部分の間にシミュレータのディスプレイにおいて視覚化してもよい。操作設定又は入力パラメータを変更するとき、線量を動的に更新してもよい。ディスプレイは、現在の線量、累積線量又は両方を示してもよい。
【0172】
図8A、8B及び8Cは、放射線量ヒートマップを患者の人体構造に3次元的に重ね合わせることができる実施の形態を示す。さらに、患者モデルの画像に、異なるタイプの情報を示す別個のマーカ801〜803を重ね合せてもよい。例えば、
図8Aの別個のマーカ801〜803を、ピーク皮膚線量の位置及びレベル又は皮膚とのX線ビームの交差の投影された輪郭を示すのに用いてもよい。これらは、利用可能なデータが与えられる場合には、推定される増大した癌リスク及び/又は器官若しくは身体部位ごとの有効線量を示してもよい。
【0173】
発明の一態様において、ディスプレイは、上述したビーム放出モデルを示してもよい。例えば、ビーム放出形状が4面体としてモデル化される場合、ディスプレイは、
図8Bに示すように、放射線源の頂点805を有するとともに806で患者と交差する(
図8Cの804のような)4面体807を示してもよい。ビームの形状及び強度を、コリメータ及び/又は楔状フィルタの影響を含むようにカット又は変更することもできる。
図8A〜8Cにおいて、蛍光透視ビームの4面体は、患者の身体のどの部分が現在被曝しているかをユーザが理解するのを助けるために視覚化される。
【0174】
図8Aは、患者の傾斜前面を示す。胸部及び腹部の放射線被曝を、領域803の皮膚に示される垂直方向の点描パターンによって示す。本実施の形態において、垂直方向の点描パターンは、ローレベルの被曝を表す。
図8Bは、患者の左側面を示す。患者の背中の放射線被曝を、本実施の形態ではハイ線量被曝レベルを表す水平方向の点描パターンとして示す。
図8Cは、患者の傾斜背面を示す。ハイ放射線被曝を受けた患者の背中の上側領域を、水平方向の点描パターンとして示す。ビーム源が患者の背中に近接しているので、放射線被曝は、患者の背中の方が患者の前側より強い。
【0175】
図9A、9B、9C及び9Dは、3次元空間サブボリュームボックスを各ボックスの散乱放射線量分布を計算するために用いる方法を例示する。
図9A〜9Dは、散乱放射線等値面901〜904の2次元スライスを示す。散乱放射線等値面901〜904は、Cアーム源と検出器との間に存在する。手術室を、複数のサブボリュームに細分してもよい。例えば、
図9A〜9Dにおいて、一つの特定のサブボリュームAを、ボックス905及び907によって表し、異なるサブボリュームBを、ボックス906及び908によって表す。散乱放射線等値面901〜904に配置された任意のサブボリュームは、当該等値面から所定の散乱線量率で曝されるサブボリュームを表す。全体の現在の散乱領域線量率の演算中に、異なる大きさを有する複数のそのような散乱線量率の等値面を計算するとともにサブボリュームが最高の線量の等値面内にあるときに各サブボリュームに追加する。
【0176】
図9A及び9Bにおいて、患者の側面及び頭部面をそれぞれ示し、この場合、X線蛍光透視部が、前後方向に配置される。
図9C及び9Dは、処置の異なる時点の異なる状況を示し、この場合、X線蛍光透視部の角度を傾斜面に変更した。
図9Cは、ボックス907によって示すサブボリュームAがもはや散乱放射線等値面903の内側に存在せず、当該等値面からの線量率の寄与がないことを示す。それに対し、
図9Dのサブボリューム908は、等値面904からの線量率の寄与を受けたままである。処置が進行すると、サブボリュームごとの累積散乱放射線量を、所定の時間に亘って合計し続ける。
図9A〜9Dに示す実施の形態において、(ボックス905及び907によって示した)サブボリュームAは、処置の終了までに(ボックス906及び908によって示した)サブボリュームBより低い合計の散乱線量を受ける。
【0177】
上述した方法を用いることによって、患者の周辺の瞬時の散乱領域及び累積散乱領域の3次元容量評価を、所定の空間解像度で得ることができる。この場合、これらの散乱領域を、システムのユーザに対する最良の学習経験を作るために種々の方法で可視化してもよい。一実施の形態において、容量的な3次元領域を、患者台の周辺の異なる色の複数の半透明な等値面として3次元で視覚化してもよく、この場合、色は、各等値面の線量率又は累積線量に依存する。そのような視覚的表示を、散乱状況をあらゆる角度から見るためにユーザによって回転させてもよい。
【0178】
代替的に、散乱領域の特定の断面を視覚化してもよい。その理由は、散乱領域の特定の断面は、全体の散乱領域よりもユーザに理解しやすいからである。特定の関心のある一つのそのような断面は、散乱領域と患者に近接した手術チームのメンバーの身体とが交差する場所である。典型的には、手術チームのメンバーが患者に近づくに従って、受ける職業的な散乱線量が高くなり、したがって、全ての内の最も関心のある断面は、通常最も高い線量を受ける手術をしている医師の断面である。
【0179】
図10A及び10Bは、発明の他の実施の形態による手術している外科医の周辺の2次元散乱放射線等曲線の断面のセットの断面視覚化である。各等曲線1001〜1004は、異なる散乱放射線レベルを表す。
図10Aは、頭部面を示し、この場合、オペレータの身体の全体に亘る種々の高さの散乱放射線を見ることができる。
図10Bは、外側角(lateral angulation)にCアームを有する上面を示し、この場合、患者台を包囲する散乱領域を見ることができる。
【0180】
図11A及び11Bは、どのようにして固定された又は移動する医療チームメンバーが散乱放射によって影響を及ぼされたかを決定するための等曲線の使用を示す。
図11Aにおいて、目1101、甲状腺1102及び生殖腺1103のような医師の身体の放射線感受性部位に対応する位置を、これらの位置の線量率を見るために用いる。この場合、上述したように、これらの位置の散乱放射線量率を、これらの特定の器官の確率的又は決定的リスクを決定するのに用いてもよい。
図11Bにおいて、複数のチームメンバー1104〜1106の位置を、一人一人の複合線量評価(compound dose estimates)を演算するために用いる。動き追跡又は位置センサ技術を用いることによって、これらの評価は、経時的に変化することもあり、蛍光透視が有効であるときの台からの後退のような放射線減少技術からの利点を含むために用いてもよい。
【0181】
関心のある種々の点及び種々の手術チームメンバーの線量率及び累積線量の測定値を、共にディスプレイに表示してもよい。これらの値に、放射線シミュレータのユーザがオン及びオフにトグルすることができる一つ以上の減衰係数をかけてもよく、それは、防護シールド、エプロン、眼鏡、頸部カラー、手袋又はヘッドカバーのような種々の防護装置の使用に起因する減少した線量に対応する。ディスプレイインタフェースは、一次放射線と二次放射線の両方の患者に関連する線量情報、オペレータの関連する線量情報及びチームの関連する線量情報を合成統括フォーマット(compound overview format)で統合してもよく、これによって、所定の放射状況において危険レベルの画像を迅速に取得することは、訓練生にとって容易となる。
【0182】
図12は、発明の一実施の形態による放射線量及び線量ヒートマップを示すディスプレイを示す。ディスプレイは、患者に関連した線量情報1201と、シミュレーションシステムのユーザに対する散乱に関連した線量情報1202及び1203と、を示す。ユーザは、現在の線量率測定値1204又は全体の累積線量1205を表示するか否かを選択してもよい。患者1201の動的に更新される回転可能な3次元モデルは、(増大した癌リスクに関連する)実際の皮膚線量(又は線量率)、吸収線量又は有効線量を示す。散乱等曲線1206〜1210は、手術している医師及び患者台の周辺の放射線領域を示す。オペレータの目の線量1211、甲状腺の線量1212及び生殖腺の線量1213を計算及び表示し、鉛のエプロン1214、眼鏡1215又はシールド1216を用いることによるこれらの値の影響も、訓練を改善するためにユーザに繰り返し表示される。
【0183】
図13は、処置のタイムライン及び対応する線量曲線を備える一実施の形態を示し、この場合、放射線量を時間に対してプロットする。グラフは、IRPの線量率、皮膚線量率、KAP率又は放射線量プロセッサによって計算される他の任意の放射線量を示すことができる。処置が進行するとともにオペレータがX線撮影装置モデル制御入力を変化させると、結果的に得られる線量率は上下する。曲線の時点をクリック又は曲線にポインターを重ねることによって、ユーザは、タイムラインに隣接して示されるとともにどの制御入力パラメータが当該時点に存在するかを示すウィンドウ1301及び1302に容易にアクセスすることができ、これによって、ユーザは、線量が高かった又は低かった理由をいつでも理解することができる。短い時間フレームに亘って線量率の大幅な増大が生じた制御入力の変化を強調することができ、それを、図面のCアームの角度について示す。また、線量率の大幅な増大が生じたイベント1303及び1304を自動的に識別するとともに図示したように曲線の上に表すことができる。基準となる又は過去のパフォーマンス曲線を示す一つ以上の追加の曲線1305を、ユーザによってパフォーマンスを設定基準と比較するとともに訓練により技能を向上させる方法を知るためにグラフに示すこともできる。さらに、所定のタイプの処置についての既知の情報を用いることによって、及び/又は、基準となる線量率曲線との比較を行うことによって、ユーザの放射線減少技術が無力になる場合の特定の技能を識別することができ、係属中の訓練において重視する必要があるあり得る処置の改善1306のリストを示唆することができる。
【0184】
イベントの自動的な注釈を、例えば、計量曲線の極大点、極小点若しくは変曲点又は大幅な増大が生じたタイムライン上の点において行ってもよい。これらを、曲線の基準曲線との比較によって決定してもよく、この場合、ある程度基準曲線を超える点にマークを行う。手術器具が動くことなく蛍光透視ペダル(fluoroscopy pedal)が長時間踏まれたときのように機器パラメータを最適にすることができる時点を識別することによってイベントに注釈をつけることもできる。
【0185】
自動的に識別されたイベントを、所望の線量減少技術が用いられたか否かを調べるとともにどのようにして放射線を更に減少させることができるかについての推奨をユーザに行うために次に用いてもよい。これは、例えば、シャッター及び楔状フィルタの適切な使用、必要のない蛍光透視時間の減少、シネ収集の使用の減少、並びに、台の位置及びCアームの角度の更に頻繁な変更を含んでもよい。
【0186】
図14A及び14Bは、発明の一態様において、実際の処置に起因するパラメータ及び放射線量の記録データをX線撮影装置モデル及び患者モデルの入力として用いてもよいことを示す。このようにして、シミュレーションを、どのようにして実際のX線撮影装置が実際の患者に対して動作するかを反映するために実行することができる。記録データを、被曝線量構造化レポート(RDSR)の記録として収集されるDICOMフォーマットのデータとしてもよい。RDSRの一例を
図14Bに示す。
図14Aに示すように、システム入力は、ユーザによって制御される入力インタフェースからの代わりにRDSRデータによって供給される。したがって、RDSRに記録された各時点の種々のパラメータ値を、シミュレーションに対する入力として用いてもよい。
【0187】
RDSRからのシステム入力を処理する一実施の形態において、シミュレーションは、手術の時間中にユーザが前進又は後退することができるインタフェースをユーザに提供してもよい。例えば、インタフェースをスライダーとしてもよく、この場合、ユーザは、処置の時間中に前後に動くことができ、各瞬時の線量、視覚化及びフィードバック/評価を、スライダーの位置に対応する瞬時に表示してもよい。
【0188】
図15は、人間被曝モデルが患者特有の人体構造に基づく場合の発明の一実施の形態を示す。CTスキャン又はMRIスキャンが1501で行われる。スキャンを患者又は医療チームメンバーのスキャンとしてもよい。この場合、スキャンを、種々の人間の人体構造の位置を決定するとともに人間被曝モデルを形成するためにセグメント化してもよい(1502)。この場合、これらの位置を、人間の器官の構造及び位置を含んでもよい3次元メッシュモデルを形成するために用いてもよい。例えば、人間被曝モデルは、心臓、脳、目、甲状腺及び生殖腺の寸法及び形状を含んでもよい。このような患者特有のモデルを用いることによって、ユーザは、シミュレートされたX線誘導処置を実行するとともに放射線減少訓練に取り組んでもよい(1503)。この場合、シミュレーションシステムは、上述したようなフィードバック(1504)及びパフォーマンス評価(1505)を提供してもよい。このようにして、患者特有のモデルを、実際の処置をシミュレートするために用いることができ、これによって、医療専門家又はチームは、安全かつ放射線のない環境で特定の患者に対する放射線を最適に最小にする方法を実行することができる。この場合、患者の身体に対する予測される放射線の視覚的なフィードバック及び訓練実行中の処置の改善の示唆を、実際の処置の間に患者に照射される実際の放射線を最小にするために用いることができる。
【0189】
図16A及び
図16Bは、発明の一態様において、出力放射線量を調整するために較正重みを適用することによってシミュレーションシステムをX線撮影装置に合わせて較正してもよいことを示す。較正重みは、上述したように因子関数を調整する較正重みと同様なやり方で出力放射線量を調整する。例えば、出力放射線量を、訓練が行わる実際のカテーテル検査室に近づけるために較正又は調整してもよい。較正重みによって、シミュレーションは、シミュレータ訓練プログラムの実現の効果が病院内の実際の放射線量品質にどの程度の大きさを及ぼすかを推定することができる。
【0190】
較正重みを、PMMA(ポリメチルメタクリレート)から構成されるとともに線量測定として頻繁に用いられる人間の組織に類似するタイプのブロックである一つ以上の標準的な放射線「ファントム」を手術台に配置するとともにどの程度放射線量が各パラメータについて変化したかを測定することによって生成してもよい。
図16Aは、SIDパラメータについて生成した較正重みの例を示す。画像検出器1601を、一定のステップで上下し、これによって、所定のSIDに対するソース−画像−距離(SID)及び対応する線量率が変化する。PMMAファントム1602の放射線量は、各SIDで測定される。
図16Bは、固定されたSID設定に対してプロットされた取得した線量率データ点及び曲線の最良適合を示す。この場合、最良適合パラメータモデルの既定値を、較正重みとしてシミュレートされる放射線量アルゴリズムに供給され、これによって、本発明の使用の間に計算された線量率は、個別のX線撮影装置の値に更によく対応する。代替的に、同一の較正処置を、線形関数、二次関数、対数関数又は指数関数のようなどのタイプの因子関数が特定のX線システムを最適にモデル化するかを最初に決定する手段として用いることができ、その後、選択した因子関数を測定した曲線に最もよく適合させるために用いることができる。
【0191】
上述したシステム及び方法を、血管内及び/又は経皮への適用、外傷外科、塞栓、整形外科、胃腸管の検査、CVCライン及びPICCラインの配置、栄養チューブの配置、泌尿器外科、腫瘍学への適用、胆道ドレナージ及び椎間板造影を含むがそれに限定されない種々のタイプのX線誘導処置又は蛍光透視誘導処置に対する放射線減少技術を教示するのに用いることができる。
【0192】
上述したシステム及び方法は、血管内手術の特に適している。血管内処置は、典型的には足の付け根、手首又は頸部の開口を通じて患者の血管に挿入される医療機器を用いる侵入が最小の画像誘導処置であり、患者の体内における医療機器の動きは、蛍光透視又はX線システムによって可視化される。したがって、それは、インターベンショナル心臓学、インターベンショナル放射線学、血管手術、インターベンショナル神経放射線学、電気生理学、器質的心疾患、インターベンショナル腫瘍学及び心臓血管外科の分野の処置に最も有用である。
【0193】
ここで説明したものの変更、変形及び他の実現を、本発明の精神及び範囲並びに特許請求の範囲を逸脱することなく当業者によって行うことができる。