【実施例】
【0092】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0093】
<シラン架橋性樹脂組成物の原料>
シラン架橋性樹脂組成物の調製には、原料として、以下のベース樹脂、グラフト化剤、架橋剤、難燃剤、カラーMB、老化防止剤MB、スコーチ防止剤、シリコーンMB及び触媒を使用した。
【0094】
(1)ベース樹脂
EEA1:宇部丸善ポリエチレン社製、商品名「UBEポリエチレン ZE708」(EA含有率16質量%)
EEA2:宇部丸善ポリエチレン社製、商品名「UBEポリエチレン ZE742」(EA含有率25質量%)
EVA1:三井・デュポン ポリケミカル社製、商品名「エバフレックス EV460R」(VA含有率19質量%)
EVA2:三井・デュポン ポリケミカル社製、商品名「エバフレックス EX560R」(VA含有率14質量%)
酸変性ポリオレフィン:無水マレイン酸変性ポリエチレン、デュポン社製、商品名「Fusabond E226Y」
PE:住友化学社製、商品名「エクセレン GMH GH030」
【0095】
(2)グラフト化剤
(2−1)グラフト化剤1(低温分解)
1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン
日本油脂株式会社製、商品名「パーヘキサC−80(S)」(1分間半減期温度:153.8℃)
(2−2)グラフト化剤2(低温分解)
t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート
日本油脂株式会社製、商品名「パーブチルE」(1分間半減期温度:161.4℃)
(2−3)グラフト化剤3(高温分解)
ジクミルパーオキサイド
日本油脂株式会社製、商品名「パークミルD」(1分間半減期温度:175.2℃)
【0096】
(3)架橋剤
(3−1)架橋剤1
ビニルトリエトキシシラン
信越シリコーン社製、商品名「KBE−1003」
(3−2)架橋剤2
ビニルトリメトキシシラン
信越シリコーン社製、商品名「KBM−1003」
【0097】
(4)難燃剤
(4−1)難燃剤1
神島化学工業社製、商品名「マグシーズHV−6F」、平均粒径0.6μm
ビニルシランカップリング剤で水酸化マグネシウムを表面処理したもの。
水酸化マグネシウム:ビニルシランカップリング剤=100:0.7(質量比)
(4−2)難燃剤2
神島化学工業社製、商品名「マグシーズV−6」、平均粒径1.1μm
ビニルシランカップリング剤で水酸化マグネシウムを表面処理したもの。
水酸化マグネシウム:ビニルシランカップリング剤=100:0.3(質量比)
(4−3)難燃剤3
神島化学工業社製、商品名「マグシーズV−6F」、平均粒径0.7μm
ビニルシランカップリング剤で水酸化マグネシウムを表面処理したもの。
水酸化マグネシウム:ビニルシランカップリング剤=100:0.3(質量比)
(4−4)難燃剤4
神島化学工業社製、商品名「マグシーズS−6」、平均粒径1.1μm
ビニルシランカップリング剤及びステアリン酸で水酸化マグネシウムを表面処理したもの。
水酸化マグネシウム:ビニルシランカップリング剤:ステアリン酸=100:0.3:0.3(質量比)
(4−5)難燃剤5
神島化学工業社製、商品名「マグシーズS−6F」、平均粒径0.7μm
ビニルシランカップリング剤及びステアリン酸で水酸化マグネシウムを表面処理したもの。
水酸化マグネシウム:ビニルシランカップリング剤:ステアリン酸=100:0.3:0.3(質量比)
(4−6)難燃剤6
神島化学工業社製、商品名「マグシーズN」、平均粒径1.1μm
ステアリン酸で水酸化マグネシウムを表面処理したもの。
水酸化マグネシウム:ステアリン酸=100:0.3(質量比)
(4−7)難燃剤8
信越化学工業株式会社製、商品名「X−22−2426」
メタクリル変性反応性シリコーンオイル
(4−8)難燃剤10
Martinswerk社製、商品名「OL−107ZO」
ビニルシランカップリング剤で水酸化アルミニウムを表面処理したもの。
水酸化アルミニウム:ビニルシランカップリング剤=100:0.7(質量比)
(4−9)難燃剤11
Maerinswerk社製、商品名「OL−107C」、平均粒径1.7μm
ステアリン酸で水酸化アルミニウムを表面処理したもの。
水酸化アルミニウム:ステアリン酸=100:2(質量比)
(4−10)難燃剤12
疎水性シリカ、東ソー・シリカ株式会社製、商品名「ニップシールSS−30V」
【0098】
(5)カラーMB
上記(1)に記載のPEとカーボン(※)とで構成されるマスターバッチ。
PE:カーボン=70:30(質量比)
(※)カーボン:旭カーボン社製、商品名「旭#35」
【0099】
(6)老化防止剤MB
上記(1)のEVA1と、老化防止剤1(※1)及び老化防止剤2(※2)と、上記(5)のカラーMBとで構成されるマスターバッチ。
EVA1:老化防止剤1:老化防止剤2:カラーMB=100:5:10:96(質量比)
(※1)老化防止剤1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、BASF社製、商品名「IRGANOX 1010」)
(※2)老化防止剤2:ヒンダードアミン系光安定剤、Double Bond Chemical社製、商品名「Chisorb 622」
【0100】
(7)スコーチ防止剤
2−メルカプトベンズイミダゾール、大内新興化学工業社製、商品名「ノクラックMB」
【0101】
(8)シリコーンMB
(8−1)シリコーンMB1
信越シリコーン社製、商品名「X−22−2138B」
シリコーン(難燃剤7):EVA2=40:60(質量比)
(8−2)シリコーンMB2
旭化成ワッカーシリコーン社製、商品名「GENIOPLAST PELLET S」
シリコーン(難燃剤9):ヒュームドシリカ=65:35(質量比)
【0102】
(9)触媒
ジオクチル錫ジラウレート
【0103】
<難燃樹脂の調製>
上記のシラン架橋性樹脂組成物の原料のうちEEA1、EVA1、酸変性ポリオレフィン、難燃剤、シリコーンMB、老化防止剤MB(又は、老化防止剤1、老化防止剤2及びカーボン)及びスコーチ防止剤を表1〜19に示す割合で配合し、バンバリーミキサー((株)神戸製鋼所製)を用いて150〜200℃で10〜20分間溶融混練することにより、難燃樹脂1〜71を得た。なお、表1〜19において、EEA1、EVA1、酸変性ポリオレフィン、難燃剤、シリコーンMB、老化防止剤MB及びスコーチ防止剤の配合量の単位は質量部である。
【0104】
<架橋剤MBの調製>
上記のシラン架橋性樹脂組成物の原料のうち架橋剤1〜2及びグラフト化剤1〜3を表20〜28に示す割合でEEA2に含浸させることにより、架橋剤MB1〜35を得た。なお、表20〜28において、EEA2、架橋剤1〜2及びグラフト化剤1〜3の配合量の単位は質量部である。
【0105】
<触媒MBの調製>
上記のシラン架橋性樹脂組成物の原料のうちEEA1及び触媒を表29に示す割合で配合し、二軸混練押出機((株)神戸製鋼所社製)を用いて100〜130℃で溶融混練することにより、触媒MBを得た。なお、表29において、EEA1及び触媒の配合量の単位は質量部である。
【0106】
(実施例1〜160及び比較例1〜101)
上記のようにして得られた難燃樹脂1〜71、架橋剤MB1〜35及び触媒MBを表30〜63に示す割合(質量%)でブレンダー((株)友定建機社製)を用いてドライブレンドして実施例1〜160及び比較例1〜101のシラン架橋性樹脂組成物を得た。
【0107】
上記のシラン架橋性樹脂組成物を押出機(HCI社製)に投入し、100〜215℃で溶融混練し、その押出機からチューブ状の押出物を押し出して架橋させ、錫メッキ軟銅線からなる導体(断面積3.5mm
2)上に、厚さ1.16mmとなるように被覆層を形成した。こうしてケーブルを得た。
【0108】
なお、押出温度は、押出機から排出される時の押出物の温度であり、グラフト化剤1〜3ごとに決定した。具体的には、押出温度は、グラフト化剤1を用いている実施例及び比較例では183℃とし、グラフト化剤2を用いている実施例及び比較例では188℃とし、グラフト化剤3を用いている比較例では215℃とした。
【0109】
[特性評価]
こうして得られたケーブルを用いて、以下のようにしてケーブルの耐熱性、難燃性、外観及びスコーチの評価を行った。
【0110】
(1)耐熱性
上記のようにして得られた実施例1〜160及び比較例1〜101のケーブルについて、JIS C 3660−2−1−9に準拠したホットセット試験を行い、荷重時の伸び、及び、解放冷却後の永久伸びを測定した。そして、荷重時の伸び、及び、解放冷却後の永久伸びを耐熱性の指標とした。このとき、オーブンの温度は200℃、荷重は20N/cm
2とし、試験時間は15分とした。合否の結果を表30〜63に示す。なお、耐熱性の合格基準は以下の通りとした。
(合格基準) 荷重時の伸びが100%以下であり且つ解放冷却後の永久伸びが25%以下であること
【0111】
(2)難燃性
上記のようにして得られた実施例1〜160及び比較例1〜101のケーブルについて、JIS C3005 4.26.2(2)に準拠した60度傾斜燃焼試験を行った。合否の結果を表30〜63に示す。なお、難燃性の合格基準は以下の通りとした。
(合格基準) 着火後60秒以内に自己消火すること
【0112】
(3)外観
上記のようにして得られた実施例1〜160及び比較例1〜101のシラン架橋性樹脂組成物を押出機に投入し、30分連続押出し後に得られた被覆層を採取した。そして、マイクロスコープを用いて被覆層の表面及び断面の状態観察を行い、発泡の有無を調べた。この発泡の有無を外観の指標とした。結果を表30〜63に示す。なお、表30〜63において、「なし」は、発泡が確認されなかったことを意味し、「あり」は、発泡が確認されたことを意味する。外観の合格基準は以下の通りとした。
(合格基準) 発泡が確認されないこと
【0113】
(4)スコーチ
上記のようにして得られた実施例1〜160及び比較例1〜101のシラン架橋性樹脂組成物を押出機に投入し、30分連続押出し後に得られた被覆層を採取した。そして、マイクロスコープを用いて被覆層の表面及び断面の状態観察を行い、スコーチに起因する粒状の樹脂塊のサイズを調べた。この樹脂塊のサイズをスコーチの指標とした。結果を表30〜63に示す。表30〜63において、「なし」は、樹脂塊のサイズが0.3mm以下であったことを意味し、「あり」は、樹脂塊のサイズが0.3mmより大きかったことを意味する。スコーチの合格基準は以下の通りとした。
(合格基準) 樹脂塊のサイズが0.3mm以下であること
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【表34】
【表35】
【表36】
【表37】
【表38】
【表39】
【表40】
【表41】
【表42】
【表43】
【表44】
【表45】
【表46】
【表47】
【表48】
【表49】
【表50】
【表51】
【表52】
【表53】
【表54】
【表55】
【表56】
【表57】
【表58】
【表59】
【表60】
【表61】
【表62】
【表63】
【0114】
表30〜63に示すように、実施例1〜160は、耐熱性、難燃性、外観及びスコーチの点で合格基準に達していた。これに対し、比較例1〜101は耐熱性、難燃性、外観又はスコーチの点で合格基準に達していなかった。
【0115】
以上より、本発明のシラン架橋樹脂組成物によれば、押出機内においてスコーチを抑制しながら、押出機から押し出して得られる架橋体に優れた耐熱性、難燃性及び外観を付与できることが確認された。