特許第6204636号(P6204636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6204636-両面粘着シート 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6204636
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】両面粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20170914BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170914BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20170914BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20170914BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   B32B27/00 M
   B32B27/36
   C08J5/18
   C09J133/00
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-534751(P2017-534751)
(86)(22)【出願日】2017年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2017012471
【審査請求日】2017年6月28日
(31)【優先権主張番号】特願2016-65499(P2016-65499)
(32)【優先日】2016年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(72)【発明者】
【氏名】三浦 迪
(72)【発明者】
【氏名】平野 千春
(72)【発明者】
【氏名】宮田 壮
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−75999(JP,A)
【文献】 特開2014−198411(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/56499(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/02
B32B 27/00
B32B 27/36
C08J 5/18
C09J 133/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の両面に、それぞれ第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層を有する両面粘着シートであって、
前記支持体がポリ乳酸を含み、且つ、前記支持体の厚さが1.5μm以下である、
両面粘着シート。
【請求項2】
前記支持体の膜強度が1〜300mNである、請求項1に記載の両面粘着シート。
【請求項3】
前記ポリ乳酸の含有量が、前記支持体の全質量に対して、70〜100質量%である、請求項1又は2に記載の両面粘着シート。
【請求項4】
第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の少なくとも一方が、アクリル系樹脂を含むアクリル系粘着剤から形成された層である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項5】
第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層のそれぞれの厚さが、各々独立に、0.5〜3.0μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項6】
第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の合計厚さ100に対する、前記支持体の厚さの割合が、5.0〜70.0である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項7】
前記両面粘着シートを介して2つの被着体に貼付する際の前記両面粘着シートの総厚が、6.0μm以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項8】
23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、ステンレス板(SUS304鋼板、120番研磨)に貼付してから24時間経過後にJIS Z0237:2000に準拠して測定した粘着力が、1.5N/25mm以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は両面粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートの粘着力は、粘着剤の組成、極性の他、支持体上の粘着剤の塗布量、すなわち、形成される粘着剤層の厚さに依存する。つまり、一般的に粘着剤層が厚い粘着シート程、粘着シートの粘着力は高くなる。
ラベル、テープ等の粘着シートが有する粘着剤層の厚さは、粘着シートの用途に応じて適宜設定されるが、粘着力の低下が懸念されるために、10μmより薄くすることはあまり行われていない。
しかしながら、近年、電子機器や光学機器等においては薄型化が望まれており、このような電子機器や光学機器の部材の接合、又は加工時の一時的な接着等に用いられる粘着シートに対しては、薄膜化しつつも、高い粘着力を有するという特性が求められている。
【0003】
このような要求に対応するべく、様々な粘着シートが提案されている。
例えば、特許文献1には、厚さが0.002〜0.012mmであるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の支持体の両面に粘着剤層を有し、総厚が0.003mm以上0.03mm未満であり、破断強度が2〜26MPa/10mm幅である、両面接着テープが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−105212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、薄型化された電子機器や光学機器等が備える2つの部材を両面粘着シートを介して接合することがある。機器の薄膜化の要求に対応するため、接合する2つの部材間のクリアランスが狭い場合が多い。そのため、接合に用いる両面粘着シートには更なる薄膜化が要求される。
両面粘着シートの更なる薄膜化の要求に対応する手段としては、両面粘着シートを構成する粘着剤層や支持体等の各層の薄膜化が考えられる。
ただし、粘着剤層を更に薄膜化した場合、粘着力の低下を引き起こし、2つの部材の接合が不十分となることが懸念される。
一方、支持体の薄膜化は、支持体の製造や強度の点で限界がある。例えば、特許文献1に記載の両面接着シートにおいて、支持体として使用されているPETフィルムの厚さを2μm未満とすることは、成形の観点から極めて難しい。
【0006】
また、両面粘着シートの薄膜化の手段として、支持体(芯材)を備えず、粘着剤層が2枚の剥離材で挟持された構造を有する両面粘着シートとし、支持体(芯材)の厚さを低減させる方法も考えられる。
しかしながら、支持体(芯材)を省略化すると2枚の剥離材のうち一方の剥離材を剥離する際に、剥離材が本来剥がれるべき所定の界面で剥がれずに、粘着剤層が凝集破壊し、双方の剥離材に粘着剤層が一部付着し残ってしまうといった「泣き別れ現象」が発生し易い。
なお、特許文献1では、両面接着シートの粘着力を維持しながら更なる薄膜化すること、及び、粘着剤層の薄膜化に伴う「泣き別れ現象」を回避するための検討は行われていない。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、薄膜化しても、十分に高い粘着力を発現することができ、泣き別れ現象の抑制効果に優れる両面粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、支持体の両面に粘着剤層を有する両面粘着シートにおいて、ポリ乳酸を含む支持体を用いると共に、当該支持体の厚さを所定値以下に調整することで、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[8]を提供するものである。
[1]支持体の両面に、それぞれ第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層を有する両面粘着シートであって、
前記支持体がポリ乳酸を含み、且つ、前記支持体の厚さが1.5μm以下である、
両面粘着シート。
[2]前記支持体の膜強度が1〜300mNである、上記[1]に記載の両面粘着シート。
[3]前記ポリ乳酸の含有量が、前記支持体の全質量に対して、70〜100質量%である、上記[1]又は[2]に記載の両面粘着シート。
[4]第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の少なくとも一方が、アクリル系樹脂を含むアクリル系粘着剤から形成された層である、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
[5]第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層のそれぞれの厚さが、各々独立に、0.5〜3.0μmである、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
[6]第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の合計厚さ100に対する、前記支持体の厚さの割合が、5.0〜70.0である、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
[7]前記両面粘着シートを介して2つの被着体に貼付する際の前記両面粘着シートの総厚が、6.0μm以下である、上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
[8]23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、ステンレス板(SUS304鋼板、120番研磨)に貼付してから24時間経過後にJIS Z0237:2000に準拠して測定した粘着力が、1.5N/25mm以上である、上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明の両面粘着シートは、薄膜化しても、十分に高い粘着力を発現することができ、泣き別れ現象の抑制効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一態様の両面粘着シートの構成を示す、当該両面粘着シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、両面粘着シートを構成する各層の厚さ及び両面粘着シートの総厚は、反射光の分光解析により測定した値であって、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値を意味する。
本明細書において、質量平均分子量(Mw)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値を意味する。
本明細書において、例えば「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの双方を指す語であり、他の類似用語も同様である。
【0012】
〔両面粘着シートの構成〕
本発明の両面粘着シートは、支持体の両面に、それぞれ第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層(以下、まとめて「粘着剤層」ともいう)を有するものであれば、特に限定されない。
図1は、本発明の一態様の両面粘着シートの構成を示す、当該両面粘着シートの断面図である。
【0013】
本発明の一態様の両面粘着シートとしては、例えば、図1(a)に示すような、支持体11の両面に、それぞれ第1の粘着剤層12a及び第2の粘着剤層12bが直接積層した構成を有する両面粘着シート1が挙げられる。
また、取扱性の観点から、図1(b)に示すように、第1の粘着剤層12a及び第2の粘着剤層12bの表面上に、それぞれ更に剥離材13a、13bを積層した両面粘着シート2としてもよい。
また、本発明の一態様の両面粘着シートとしては、第1の粘着剤層12a及び第2の粘着剤層12bのいずれかの表面上に、両面に剥離処理が施された剥離材を積層し、ロール状に巻いた構成を有する両面粘着シートであってもよい。
つまり、本発明の一態様の両面粘着シートは、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の一方もしくは双方の表面上に、更に剥離材を積層した構成であってもよい。
【0014】
本発明の両面粘着シートを介して2つの被着体に貼付する際の当該両面粘着シートの総厚としては、クリアランスが狭い2つの部位の接合にも使用し得る両面粘着シートとする観点から、好ましくは6.0μm以下、より好ましくは5.0μm以下、更に好ましくは4.0μm以下、より更に好ましくは3.5μm以下、特に好ましくは3.0μm以下である。
本発明の両面粘着シートは、6.0μm以下と薄膜化しても、十分に高い粘着力を発現することができ、泣き別れ現象も効果的に抑制し得る。
一方、優れた粘着力を発現させると共に、泣き別れ現象を効果的に抑制し得る両面粘着シートとする観点から、本発明の両面粘着シートを介して2つの被着体に貼付する際の当該両面粘着シートの総厚は、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは1.7μm以上、更に好ましくは2.0μm以上である。
【0015】
なお、本明細書において、「薄膜化された両面粘着シート」とは、両面粘着シートを介して2つの被着体に貼付する際の両面粘着シートの総厚が6.0μm以下に調整された両面粘着シートを意味する。
【0016】
さらに、本明細書において「両面粘着シートを介して2つの被着体に貼付する際の両面粘着シートの総厚」とは、被着体に貼付する際に除去される剥離材等の層の厚さを除いた両面粘着シートの厚さを意味し、例えば、図1に示す両面粘着シート1では「Z1」、両面粘着シート2では「Z2」で示される厚さを指す。
つまり、「両面粘着シートを介して2つの被着体に貼付する際の両面粘着シートの総厚」には、図1(b)に示す両面粘着シート2が有する剥離材13a、13bの厚さは含まれないが、例えば、被着体に貼付する際にも除去されない支持体及び粘着剤層以外の層の厚さは含まれる。
被着体に貼付する際にも除去されない支持体及び粘着剤層以外の層としては、例えば、プライマー層、帯電防止層、及び紫外線吸収層等が挙げられ、これらの層は、支持体と第1の粘着剤層又は第2の粘着剤層との間に設けられることが好ましい。
【0017】
本発明の一態様の両面粘着シートにおいて、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の合計厚さ100に対する、支持体の厚さの割合は、好ましくは5.0〜70.0、より好ましくは5.2〜50.0、更に好ましくは5.5〜40.0、より更に好ましくは6.0〜30.0、特に好ましくは6.2〜20.0である。
当該割合が上記範囲内であれば、優れた粘着力を発現させると共に、泣き別れ現象を効果的に抑制し得る両面粘着シートとすることができる。また、貼付時や剥離時に発生し易い両面粘着シートの破れを抑制することができる。
【0018】
以下、本発明の一態様の両面粘着シートを構成する、支持体、粘着剤層(第1及び第2の粘着剤層)、並びに、剥離材の詳細について説明する。
【0019】
<支持体>
本発明の両面粘着シートが有する支持体は、ポリ乳酸を含み、且つ、厚さが1.5μm以下のものである。
一般的な粘着シートに用いられる支持体の構成樹脂であるポリエチレンテレフタレート(PET)やポリウレタン等の汎用樹脂は、通常の成形方法では、厚さ1.5μm以下と薄く成形すること自体が困難である。
また、特殊な成形方法によって、PETやポリウレタン等の汎用樹脂を用いて厚さ1.5μm以下の支持体を得たとしても、当該支持体を用いることによっては、粘着力の向上効果は発現されない。
【0020】
一方、ポリ乳酸を含む支持体は、自己支持性が高いため、厚さを1.5μm以下と薄く成形することが可能である。
また、本発明者らは、ポリ乳酸を含む支持体の両面に粘着剤層を設けた両面粘着シートは、粘着力の向上効果が非常に高く、特に、薄膜化しても、高い粘着力を発現させることが可能となることを見い出し、その知見に基づき、本発明の両面粘着シートを完成されたものである。
特に、ポリ乳酸を含む支持体は、厚さを1.5μm以下と薄膜化しても、自己支持性が高く、適度な柔軟性を有している。
そのため、当該支持体の両面に薄膜化した粘着剤層を設けた両面粘着シートは、被着体に貼付時に、被着体の表面に対する追従性に優れることに起因し、粘着剤層を薄膜化しても、優れた粘着力が発現されると考えられる。
【0021】
さらに、一般的なPETフィルム等の支持体の両面に粘着剤層を有する両面粘着シートは、支持体によって2つの粘着剤層が区分けされており、一方の粘着剤層の柔軟性等によって、他方の粘着剤層の粘着力が変化することは考え難い。
つまり、それぞれの粘着剤層の粘着力は、基本的にそれぞれの粘着剤層の構成や特性のみに依存し、他方の粘着剤層の構成や特性によって受ける影響は極めて微少なものである。
その一方、本発明の両面粘着シートは、ポリ乳酸を含む支持体が1.5μm以下と薄膜化されているため、例えば、一方の粘着剤層が有する柔軟性等の特性によって、支持体を介して、他方の粘着剤層の粘着力の向上に寄与させることができる。
その結果、本発明の両面粘着シートは、薄膜化した場合においても、両面において優れた粘着力が発現されるものと考えられる。
また、本発明の両面粘着シートは、構成として支持体を有するため、泣き別れ現象を効果的に抑制することができる。
【0022】
本発明で用いる支持体の厚さとしては、1.5μm以下であるが、好ましくは1.2μm以下、より好ましくは1.0μm以下、更に好ましくは0.8μm以下、より更に好ましくは0.6μm以下、特に好ましくは0.4μm以下である。
厚さが1.5μmを超える支持体を用いた両面粘着シートは、支持体自体が硬いために、被着体の表面に対する追従性が低下し、結果として、粘着力の低下を引き起こし易くなる。
なお、支持体の厚さは、下限値の制限は無いが、泣き別れ現象を効果的に抑制し得る両面粘着シートとする観点、及び、貼付時や剥離時に生じ得る両面粘着シートの破断を抑制する観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.10μm以上である。
【0023】
本発明において、「ポリ乳酸」とは、下記式(I)で表される構成単位(1)を有する重合体を指し、当該重合体は、構成単位(1)以外の構成単位を有していてもよい。
【化1】
【0024】
なお、構成単位(1)は、L−乳酸に由来する構成単位であってもよく、D−乳酸に由来する構成単位であってもよい。
つまり、ポリ乳酸は、L−乳酸の単独重合体であるポリ−L−乳酸であってもよく、D−乳酸の単独重合体であるポリ−D−乳酸であってもよく、L−乳酸とD−乳酸との共重合体であってもよい。
これらの中でも、ポリ乳酸としては、L−乳酸とD−乳酸との共重合体であることが好ましい。
【0025】
L−乳酸とD−乳酸との共重合体を用いる場合、当該共重合体における、L−乳酸に由来する構成単位と、D−乳酸に由来する構成単位とのモル比率([L−乳酸]/[D−乳酸])としては、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは20/80〜80/20、更に好ましくは30/70〜70/30、より更に好ましくは40/60〜60/40である。
当該モル比率が上記範囲である共重合体とすることで、結晶性を適度に維持することができ、当該共重合体を含む支持体は、適度な硬さを有するように調整することができる。その結果、得られる粘着シートを被着体に貼付時に、被着体の表面に対する追従性に優れ、優れた粘着力が発現され易くなる。
【0026】
ポリ乳酸の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは2万〜50万、より好ましくは5万〜40万、更に好ましくは7万〜30万である。
【0027】
本発明の一態様で用いる支持体は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリ乳酸以外の樹脂や添加剤等を含有していてもよい。
支持体に含み得るポリ乳酸以外の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ウレタンアクリレート等のウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0028】
支持体に含み得る添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が挙げられる。
【0029】
本発明の一態様で用いる支持体は、ポリ乳酸を含むものであればよく、例えば、ポリ乳酸を含む樹脂組成物を成形してなる支持体だけでなく、ポリ乳酸以外の樹脂、紙類、もしくはアルミ、銅等の金属箔からなる支持体をポリ乳酸を含む樹脂組成物でラミネートした支持体等であってもよい。
ただし、厚さ1.5μm以下の支持体を製造する観点から、本発明の一態様で用いる支持体としては、ポリ乳酸を含む樹脂組成物を成形してなる単一層の支持体であることが好ましい。
また、前記樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリ乳酸以外の樹脂成分や、各種添加剤が含まれていてもよい。
【0030】
本発明の一態様で用いる支持体に含まれるポリ乳酸の含有量は、薄膜化しても十分に高い粘着力を発現し得る両面粘着シートとする観点、及び、厚さ1.5μm以下の支持体を製造する観点から、当該支持体の全質量(100質量%)に対して、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%、より更に好ましくは95〜100質量%である。
【0031】
特に、本発明の一態様で用いる支持体に含まれる、L−乳酸とD−乳酸との共重合体の含有量は、当該支持体の全質量(100質量%)に対して、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%、より更に好ましくは90〜100質量%、特に好ましくは95〜100質量%である。
【0032】
本発明の一態様で用いる支持体の膜強度としては、薄膜化しても十分に高い粘着力を発現し得る両面粘着シートとする観点から、好ましくは1〜300mN、より好ましくは3〜250mN、更に好ましくは5〜200mN、より更に好ましくは10〜130mN、特に好ましくは15〜90mNである。
支持体の膜強度が上記範囲内であれば、当該支持体の両面に薄膜化した粘着剤層を設けた両面粘着シートとした場合においても、被着体に貼付時に、被着体の表面に対する追従性に優れ、優れた粘着力が発現され易くなる。
なお、本明細書において、支持体の膜強度は、JIS Z1707(1997)に準拠して測定された値であって、具体的には、実施例に記載の方法及び条件に基づいて測定した値を意味する。
【0033】
<第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層>
本発明の両面粘着シートは、支持体の両面に、それぞれ第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層を有する。
第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層のそれぞれの厚さとしては、各々独立に、好ましくは0.5〜3.0μm、より好ましくは0.7〜2.0μm、更に好ましくは0.8〜1.8μm、より更に好ましくは0.9〜1.6μmである。
本発明の両面粘着シートは、ポリ乳酸を含み、且つ、厚さが1.5μm以下の支持体を有するため、各粘着剤層の厚さを3.0μm以下と薄膜化しても、十分に高い粘着力を発現し得る両面粘着シートとすることができる。
【0034】
また、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の合計の厚さとしては、好ましくは1.0〜6.0μm、より好ましくは1.4〜4.0μm、更に好ましくは1.6〜3.6μm、より更に好ましくは1.8〜3.2μmである。
【0035】
第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の形成材料である粘着剤としては、粘着剤層を薄膜化しても十分に高い粘着力を発現し得るものであれば特に制限はされず、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、及びポリオレフィン系樹脂から選ばれる粘着性樹脂を1種以上含む粘着剤が挙げられる。
ただし、十分に高い粘着力を環境によらずに維持し得るようにする観点から、当該粘着性樹脂は、紫外線非硬化型樹脂であることが好ましい。
なお、本明細書において、紫外線非硬化型樹脂とは、紫外線の照射によって重合し得る重合性官能基を有しない樹脂を意味する。
【0036】
また、当該粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、架橋剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、可塑剤、消泡剤及び濡れ性調整剤等の粘着剤用添加剤を含有してもよい。
ただし、十分に高い粘着力を環境によらずに維持し得るようにする観点から、当該粘着剤は、重合性官能基を有するオリゴマー成分の含有量は少ないほど好ましい。
重合性官能基を有するオリゴマー成分の含有量は、粘着剤に含まれる粘着性樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部未満、より好ましくは1質量部未満、更に好ましくは0.01質量部未満、より更に好ましくは0.001質量部未満である。
【0037】
また、粘着剤層は支持体や剥離材に粘着剤を塗布して形成されるが、厚さの薄い粘着剤層を形成し易くするために、粘着剤を有機溶媒で希釈して、粘着剤の溶液としてもよい。
当該有機溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等が挙げられるが、粘着剤層中に含まれる樹脂の合成時に使用した有機溶媒をそのまま用いてもよい。
粘着剤の溶液の固形分濃度としては、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
【0038】
本発明の一態様の両面粘着シートにおいて、形成する粘着剤層を薄膜化しても十分に高い粘着力を発現されるようにする観点から、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の少なくとも一方が、アクリル系樹脂を含むアクリル系粘着剤から形成された層であることが好ましく、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の双方が、当該アクリル系粘着剤から形成された層であることがより好ましい。
なお、アクリル系粘着剤は、形成する粘着剤層を薄膜化しても十分に高い粘着力を環境によらずに維持し得るようにする観点から、紫外線非硬化型アクリル系粘着剤であることが好ましい。
つまり、粘着剤に含まれるアクリル系樹脂は、紫外線非硬化型アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0039】
本発明の一態様で用いるアクリル系粘着剤としては、形成する粘着剤層を薄膜化しても十分に高い粘着力を発現されるようにする観点から、アクリル系樹脂として、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a1)及び官能基含有モノマーに由来する構成単位(a2)を有するアクリル系共重合体(A)を含むことが好ましい。
また、当該アクリル系粘着剤は、アクリル系共重合体(A)と共に、架橋剤(B)を含有することが好ましく、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の粘着剤用添加剤を含有してもよい。
【0040】
以下、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の形成材料である粘着剤として好適なアクリル系粘着剤に含まれる、アクリル系共重合体(A)及び架橋剤(B)について説明する。
【0041】
(アクリル系共重合体(A))
アクリル系共重合体(A)は、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、「モノマー(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)及び官能基含有モノマー(以下、「モノマー(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)を有する。
なお、アクリル系共重合体(A)は、構成単位(a1)及び(a2)と共に、モノマー(a1’)及び(a1’)以外の他のモノマー(a3’)に由来する構成単位(a3)を有していてもよい。
アクリル系共重合体(A1)の共重合の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
アクリル系共重合体(A)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ただし、アクリル系共重合体(A1)は、重合性官能基を有しない紫外線非硬化型アクリル系共重合体であることが好ましい。
【0042】
モノマー(a1’)が有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1〜16、より好ましくは1〜12、更に好ましくは4〜8、より更に好ましくは4〜6である。
モノマー(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのモノマー(a1’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明の一態様において、モノマー(a1’)としては、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、n−ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0044】
構成単位(a1)の含有量は、アクリル系共重合体(A)の全構成単位(100モル%)に対して、好ましくは50〜98モル%、より好ましくは60〜97モル%、更に好ましくは70〜96モル%、より更に好ましくは80〜93モル%である。
【0045】
モノマー(a2’)としては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有物モノマー、シアノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。
これらのモノマー(a2’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
本発明の一態様のおいて、モノマー(a2’)としては、カルボキシ基含有モノマーが好ましい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びこれらの誘導体等が挙げられるが、(メタ)アクリル酸、コハク酸、及びこれらの誘導体が好ましく、コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)及びアクリル酸2−カルボキシエチルがより好ましい。
【0047】
構成単位(a2)の含有量は、アクリル系共重合体(A)の全構成単位(100モル%)に対して、好ましくは2〜50モル%、より好ましくは3〜40モル%、更に好ましくは4〜30モル%、より更に好ましくは7〜20モル%である。
【0048】
本発明の一態様において、アクリル系共重合体(A)は、構成単位(a2)として、コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)及びアクリル酸2−カルボキシエチルのいずれかに由来する構成単位(a2−1)を有することが好ましい。
構成単位(a2)中の構成単位(a2−1)の含有割合は、構成単位(a2)の全量(100モル%)に対して、好ましくは60〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、更に好ましくは80〜100モル%、より更に好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは100モル%である。
また、構成単位(a2−1)の含有量は、アクリル系共重合体(A)の全構成単位(100モル%)に対して、好ましくは2〜45モル%、より好ましくは3〜35モル%、更に好ましくは4〜25モル%、より更に好ましくは7〜20モル%である。
【0049】
モノマー(a3’)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート等の環状構造を有する(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。
これらのモノマー(a3’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
構成単位(a3)の含有量は、アクリル系共重合体(A)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは0〜20モル%、より好ましくは0〜10モル%、更に好ましくは0〜5モル%、より更に好ましくは0〜1モル%である。
【0051】
アクリル系共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは5万〜150万、より好ましくは15万〜130万、更に好ましくは25万〜110万、より更に好ましくは35万〜90万である。
【0052】
本発明の一態様で用いるアクリル系粘着剤中のアクリル系共重合体(A)の含有量としては、当該アクリル系粘着剤の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは60〜99.99質量%、更に好ましくは70〜99.90質量%、より更に好ましくは80〜99.00質量%、特に好ましくは90〜98質量%である。
【0053】
なお、本発明の一態様で用いるアクリル系粘着剤は、アクリル系共重合体(A)以外の粘着性樹脂を含有してもよい。
ただし、アクリル系共重合体(A)以外の粘着性樹脂の含有量は、アクリル系粘着剤中に含まれるアクリル系共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部、より好ましくは0〜60質量部、更に好ましくは0〜30質量部、より更に好ましくは0〜15質量部、特に好ましくは0〜10質量部である。
【0054】
(架橋剤(B))
本発明の一態様で用いるアクリル系粘着剤は、アクリル系共重合体(A)と共に、架橋剤(B)を含有することが好ましい。
架橋剤(B)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アミン系架橋剤、アミノ樹脂系架橋剤等を挙げられる。
これらの架橋剤(B)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明に一態様において、薄膜化した粘着剤層においても十分に高い粘着力を発現させる観点から、架橋剤(B)としては、イソシアネート系架橋剤を含むことが好ましい。
【0055】
本発明の一態様で用いるアクリル系粘着剤中の架橋剤(B)の含有量は、アクリル系共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜8質量部、より好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜3質量部である。
【0056】
<剥離材>
本発明の一態様の両面粘着シートは、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の少なくとも一方の表面上に、さらに剥離材が積層した構成を有することが好ましい。
なお、本発明の両面粘着シートは、ポリ乳酸を含む支持体を有するため、図1(b)に示す両面粘着シート2のような構成である場合、一方の剥離材を除去する際に、生じ得る泣き別れ現象を効果的に抑制することができる。
【0057】
用いる剥離材としては、特に制限が無いが、取り扱い易さの観点から、基材上に剥離剤を塗布した剥離シートが好ましい。剥離シートは、基材の両面に剥離剤が塗布され剥離処理がされたものでもよく、基材の片面のみに剥離剤が塗布され剥離処理がされたものでもよい。
【0058】
剥離材用基材としては、例えば、グラシン紙、コート紙、キャストコート紙等の紙基材;これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙;又ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等のプラスチックフィルム;等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等の樹脂を含む剥離剤が挙げられる。
【0059】
なお、図1(b)に示す両面粘着シート2のように、2枚の剥離材13a、13bを用いる場合、剥離材13a、13bは、互いに同じものを用いてもよく、異なるものを用いてもよい。ただし、剥離材13aと剥離材13bとの剥離力の差が異なるように調整し、剥離力が重い剥離材(重剥離材)と、当該重剥離材に比べて剥離力が軽い剥離材(軽剥離材)の2種を用いることが好ましい。
また、両面に剥離剤が塗布され剥離処理された剥離材を用いる場合は、当該剥離材のそれぞれの面の剥離力の差が異なるように調整されたものであることが好ましい。
【0060】
剥離シートの厚さとしては、特に制限は無く適宜選択されるが、通常10〜200μm、好ましくは25〜150μm、更に好ましくは35〜80μmである。
【0061】
〔両面粘着シートの製造方法〕
本発明の両面粘着シートの製造方法は、特に限定されない。
例えば、図1(a)の両面粘着シート1であれば、支持体11の一方の面上に、粘着剤を塗布し、乾燥させて第1の粘着剤層12aを形成した後、支持体11の他方の面上に、同様に粘着剤を塗布し、乾燥させて第2の粘着剤層12bを形成して作製することができる。
【0062】
また、図1(b)の両面粘着シート2であれば、以下の(ia)〜(iiia)の手順で作製することができる。
(ia)剥離材13aの剥離処理が施された面上に、粘着剤を塗布し、乾燥させて第1の粘着剤層12aを形成して支持体11を貼り合わせて片面粘着シートを作製する。
(iia)別途用意した剥離材13bの剥離処理が施された面上に、同じように粘着剤を塗布し、乾燥させて第2の粘着剤層12bを形成する。
(iiia)上記(ia)で作製した片面粘着シートの支持体11の表面と、上記(iia)で形成した第2の粘着剤層12bの表出している表面とをそれぞれ貼り合わせて、両面粘着シート2を得る。
【0063】
なお、図1(b)の両面粘着シート2の製造方法としては、以下の(ib)〜(iiib)の手順で作製することもできる。
(ib)剥離材13aの剥離処理が施された面上に、粘着剤を塗布し、乾燥させて第1の粘着剤層12aを形成する。
(iib)別途用意した剥離材13bの剥離処理が施された面上に、同じように粘着剤を塗布し、乾燥させて第2の粘着剤層12bを形成する。
(iiib)支持体11の両面に、第1の粘着剤層12aの表出している表面と、第2の粘着剤層12bの表出している表面とをそれぞれ貼り合わせて、両面粘着シート2を得る。
【0064】
上記の両面粘着シートの製造方法において、使用する支持体11は厚さが非常に薄いため、支持体11のハンドリング性を向上させるために、アプリケーションシートを使用してもよい。
本明細書において、「アプリケーションシート」とは、搬送や貼付が困難になる程非常に薄い芯材や粘着シートの取扱性を向上させるために、当該芯材や粘着シートを支持するために貼付されるシートのことを意味する。
上記の両面粘着シートの製造過程において、支持体11にこのアプリケーションシートを積層したままの状態で粘着剤層と貼り合わせ、その後にアプリケーションシートを剥離し、剥離後の支持体11の表面に、もう一方の粘着剤層を貼り合わせて、両面粘着シートを製造してもよい。
【0065】
なお、粘着剤を支持体や剥離材に塗布する際、厚さの薄い粘着剤層を形成しやすくするために、上述のとおり、粘着剤を有機溶媒で希釈して、粘着剤の溶液の形態とすることが好ましい。
【0066】
支持体上又は剥離材上に粘着剤を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等の公知の方法が挙げられる。
溶剤や低沸点成分の残留を防ぐと共に、架橋剤が配合されている場合には架橋(反応)を進行させて粘着性を発現するために、支持体上又は剥離材上に粘着剤を塗布して塗膜を形成した後、加熱処理をすることが好ましい。
加熱処理の温度条件としては、好ましくは70〜150℃、より好ましくは80〜120℃である。加熱処理の処理時間としては、好ましくは30秒〜5分間、より好ましくは40〜180秒間である。
【0067】
〔両面粘着シートの物性〕
本発明の両面粘着シートは、薄膜化しても、十分に高い粘着力を発現することができ、泣き別れ現象の抑制効果に優れる。
本発明の一態様の両面粘着シートについて、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、ステンレス板(SUS304鋼板、120番研磨)に貼付してから24時間経過後にJIS Z0237:2000に準拠して測定した粘着力としては、好ましくは1.5N/25mm以上、より好ましくは2.0N/25mm以上、更に好ましくは2.5N/25mm以上、より更に好ましくは3.0N/25mm以上、特に好ましくは4.5N/25mm以上である。
なお、本明細書において、上記粘着力は、JIS Z0237:2000に準拠して測定された値を指し、具体的には、後述の実施例に記載の方法及び条件にて測定された値を意味する。
【実施例】
【0068】
以下の実施例の記載において示された各種物性値は、以下のとおり測定した値である。
(1)質量平均分子量(Mw)
下記の装置及び条件にて測定し、標準ポリスチレン換算にて求めた値である。
装置名:「HLC−8220GPC」(東ソー株式会社製)
カラム:「TSKgelGMHXL」、「TSKgelGMHXL」、及び「TSKgel2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの
展開溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:80μl
測定温度:40℃
流速:1.0mL/min
検出器:示差屈折計
【0069】
(2)厚さ測定
両面粘着シートの各層の厚さ及び総厚は、反射式膜厚計(フィルメトリクス株式会社製、製品名「F20」)にて測定した。
具体的には、前記反射式膜厚計を用いて、10mm×100mmに裁断した両面粘着シートの任意の7箇所における膜厚を測定し、測定した7箇所の膜厚の値のうち最大値及び最小値を除いた5箇所の膜厚の値の平均値を算出し、当該平均値を測定対象である両面粘着シートの各層の厚さもしくは総厚とした。
【0070】
(3)支持体の膜強度
JIS Z 1707(1997)に準拠して測定した。
具体的には、クリープメーター(株式会社山電製、RE2−33005B)によって、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を速度30mm/分で、測定対象となる支持体の表面に対して垂直に突き差し、当該針が貫通するまでの間に示した最大応力を膜強度(mN)とした。なお、これら以外の測定条件は、JIS Z1707(1997)に準拠した。
対象となる支持体に対して、上記測定を3回行って膜強度をそれぞれ算出し、3回の平均値を、その支持体の膜強度とした。
【0071】
製造例1
(PLAフィルムの作製)
ポリ乳酸樹脂(PURAC社製、製品名「PURASORB(R) PDL20」、L−乳酸とD−乳酸との共重合体、[L−乳酸]/[D−乳酸]=50/50(モル比))をエタノールに溶解させて、樹脂分濃度5質量%のポリ乳酸エタノール溶液を調製した。
そして、アプリケーションシートとして、ポリオレフィン系フィルム(ゼオン株式会社製、製品名「ゼオノア」、厚さ50μm)を用意し、当該アプリケーションシート上に、乾燥後に所定の厚さとなるように、上述のポリ乳酸エタノール溶液を塗布し、100℃、2分間乾燥して、アプリケーションシート上に積層したポリ乳酸フィルムを作製した。
なお、ポリ乳酸フィルムは、厚さが0.2μm、0.5μm、0.7μm、1.0μm、及び2.0μmのものをそれぞれ作製した。
【0072】
実施例及び比較例で使用した支持体及び粘着剤の詳細を以下に示す。
<支持体>
・PLAフィルム(0.2):
製造例1で作製した、厚さが0.2μmのポリ乳酸フィルム(膜強度=40mN)。
・PLAフィルム(0.5):
製造例1で作製した、厚さが0.5μmのポリ乳酸フィルム(膜強度=45mN)。
・PLAフィルム(0.7):
製造例1で作製した、厚さが0.7μmのポリ乳酸フィルム(膜強度=97mN)。
・PLAフィルム(1.0):
製造例1で作製した、厚さが1.0μmのポリ乳酸フィルム(膜強度=230mN)。
・PLAフィルム(2.0):
製造例1で作製した、厚さが2.0μmのポリ乳酸フィルム(膜強度=480mN)。
・PETフィルム(0.5):
厚さが0.5μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(膜強度=180mN)。
・PETフィルム(6.0):
厚さが6.0μmのPETフィルム(膜強度=2040mN)。
・ポリウレタンフィルム(6.0):
厚さを2μmから6.0μmに変更した以外は、特許文献2の段落〔0073〕の製造例4の記載に基づき作製した、厚さが6.0μmのポリウレタンフィルム(膜強度=1540mN)。
【0073】
<粘着剤>
・粘着剤(1):
n−ブチルアクリレート(BA)及びコハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)(2AOE)を重合してなるアクリル系共重合体(BA/2AOE=90/10(モル比)、Mw=28万)100質量部(固形分質量部)、及びイソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製、製品名「コロネートL」)0.45質量部(固形分質量部)を混合し、酢酸エチルで希釈した、固形分濃度13質量%のアクリル系粘着剤の溶液。
・粘着剤(2):
n−ブチルアクリレート(BA)及びアクリル酸(AAc)を重合してなるアクリル系共重合体(BA/AAc=96/4(モル比)、Mw=100万)100質量部(固形分質量部)、粘着付与樹脂(ハリマ化成株式会社製、製品名「ハリエスターTF」)50質量部(固形分質量部)、及びイソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製、製品名「コロネートL」)0.1質量部(固形分質量部)を混合し、酢酸エチルで希釈した、固形分濃度13質量%のアクリル系粘着剤の溶液。
・粘着剤(3):
n−ブチルアクリレート(BA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、アクリル酸(AAc)、及び4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)を重合してなるアクリル系共重合体(BA/2EHA/AAc/4HBA=70/30/3/0.05(質量比)、Mw=44万)100質量部(固形分質量部)、粘着付与剤(荒川化学工業株式会社製、製品名「ペンセルD125」)30質量部(固形分質量部)、及びイソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製、製品名「コロネートL」)2質量部(固形分質量部)を混合し、酢酸エチルで希釈した、固形分濃度13質量%のアクリル系粘着剤の溶液。
【0074】
実施例1〜6、比較例2〜5
重剥離シート(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」、シリコーン系剥離剤で剥離処理された厚さ38μmのPETフィルム)の剥離処理面上に、表1に示す種類の粘着剤を塗布し、100℃で1分間乾燥させ、表1に示す厚さの第1の粘着剤層を形成した。
そして、表出している第1の粘着剤層の表面に、表1に示す種類の支持体を貼り合わせて、片面粘着シートを得た。
なお、支持体として、各種PLAフィルムを用いた場合、ハンドリング性の維持のために、PLAフィルムに積層しているアプリケーションシートを残した状態で、アプリケーションシートを積層していない側のPLAフィルムの表面と第1の粘着剤層を貼り合わせた後、アプリケーションシートを除去して、片面粘着シートを得た。
また、別途用意した軽剥離シート(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381130」、シリコーン系剥離剤で剥離処理された厚さ38μmのPETフィルム)の剥離処理面上に、第1の粘着剤層の形成に用いた種類と同じ粘着剤である表1に示す種類の粘着剤を塗布し、100℃で1分間乾燥させ、表1に示す厚さの第2の粘着剤層を形成した。
そして、上述の片面粘着シートの支持体側の表面と、第2の粘着剤層の表面とをそれぞれ貼合し、重剥離シート、第1の粘着剤層、支持体、第2の粘着剤層、軽剥離シートをこの順で積層した構成の両面粘着シート(P)を作製した。
また、両面粘着シート(P)の作製過程において、上記「重剥離シート」を、「軽剥離シート(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381130」)」に代えた以外は、同様にして、軽剥離シート、第1の粘着剤層、支持体、第2の粘着剤層、軽剥離シートをこの順で積層した構成の両面粘着シート(Q)も併せて作製した。
【0075】
比較例1
重剥離シート(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381031」)の剥離処理面上に、粘着剤(1)を塗布し、100℃で1分間乾燥させ、厚さ2μmの粘着剤層を形成した。
そして、形成した当該粘着剤層の表出している表面に、軽剥離シート(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381130」)を積層し、重剥離シート、粘着剤層、軽剥離シートをこの順で積層した構成の両面粘着シート(P’)を作製した。
また、両面粘着シート(P’)の作製過程において、上記「重剥離シート」を、「軽剥離シート(リンテック株式会社製、製品名「SP−PET381130」)に代えた以外は、同様にして、軽剥離シート、第1の粘着剤層、支持体、第2の粘着剤層、軽剥離シートをこの順で積層した構成の両面粘着シート(Q)も併せて作製した。
【0076】
実施例及び比較例で作製した両面粘着シート(P)又は(P’)及び両面粘着シート(Q)を用いて、以下の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0077】
(評価1)粘着力測定
実施例及び比較例で作製した「両面粘着シート(P)又は(P’)」について、軽剥離シートを剥離し、表出した粘着剤層の表面に、厚さ25μmのポリエステルフィルムを貼付した後、25mm×300mmにカットして、試験片を作製した。
次に、23℃、50%RH(相対湿度)環境下で、当該試験片の重剥離シートを剥離し、表出した粘着剤層の表面を、被着体であるステンレス板(SUS304鋼板、120番研磨)に貼付し、同環境下で24時間静置した。
そして、同環境下で貼付後24時間経過後の粘着力を、JIS Z0237:2000に準拠して、180°引き剥がし法により、引張り速度300mm/分にて測定した。
【0078】
(評価2)泣き別れ試験
実施例及び比較例で作製した「両面粘着シート(Q)」について、一方の軽剥離シートを剥離した際に、軽剥離シートと粘着剤層との界面での泣き別れの発生の有無の確認を20回行い、以下の基準で評価した。
A:確認した20回のすべてにおいて、泣き別れは発生しなかった。
B:確認した20回中、1回泣き別れが発生した。
C:確認した20回中、2回以上泣き別れが発生した。
【0079】
【表1】
【0080】
表1によれば、実施例1〜6で作製した両面粘着シートは、粘着剤層を薄膜化したにも関わらず、泣き別れ現象が発生し難く、優れた粘着力を有することがわかる。
一方、比較例1で作製した両面粘着シートは、泣き別れ現象が発生頻度が高い結果となった。また、比較例2〜5で作製した両面粘着シートは、泣き別れ現象の発生は抑制できたが、粘着剤層を薄膜化したことに伴い、実施例で作製した両面粘着シートに比べて、十分な粘着力が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の両面粘着シートは、薄膜化しても、十分に高い粘着力を発現することができ、泣き別れ現象の抑制効果に優れる。
そのため、本発明の両面粘着シートは、例えば、薄型化が要求される携帯型電子機器や光学機器において、クリアランスが狭い箇所での2つの部材の接合、もしくは加工時の一時的な接着等の用途に好適である。
【符号の説明】
【0082】
1、2 両面粘着シート
11 支持体
12a 第1の粘着剤層
12b 第2の粘着剤層
13a、13b 剥離材
【要約】
支持体の両面に、それぞれ第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層を有する両面粘着シートであって、前記支持体がポリ乳酸を含み、且つ、前記支持体の厚さが1.5μm以下である、両面粘着シートを提供する。当該両面粘着シートは、薄膜化しても、十分に高い粘着力を発現することができ、泣き別れ現象の抑制効果に優れる。
図1