(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
放射線硬化型の粘着性樹脂層を有する粘着性フィルムと、前記粘着性樹脂層上に貼り付けられた1または2以上の半導体チップと、を備える構造体を準備する工程(A)と、
前記粘着性フィルムに対して放射線を照射し、前記粘着性樹脂層を架橋する工程(B)と、
前記工程(B)の後に、前記粘着性樹脂層上に貼り付けられた状態で、前記半導体チップの動作を確認する工程(C)と、
前記工程(C)の後に、前記粘着性樹脂層から前記半導体チップをピックアップする工程(D)と、
を備える半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、数値範囲の「A〜B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、メタクリルまたはアクリルおよびメタクリルの両方を意味する。
【0017】
図1は、本発明に係る半導体装置の製造方法の一例を示すフロー図である。
図2は、本発明に係る実施形態の粘着性フィルム50の構造の一例を模式的に示した断面図である。
図3は、本発明に係る実施形態の半導体装置の製造方法の一例を模式的に示した断面図である。
【0018】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、以下の4つの工程を少なくとも備えている。
(A)放射線硬化型の粘着性樹脂層30を有する粘着性フィルム50と、粘着性樹脂層30上に貼り付けられた1または2以上の半導体チップ70と、を備える構造体100を準備する工程
(B)粘着性フィルム50に対して放射線を照射し、粘着性樹脂層30を架橋する工程
(C)工程(B)の後に、粘着性樹脂層30上に貼り付けられた状態で、半導体チップ70の動作を確認する工程
(D)工程(C)の後に、粘着性樹脂層30から半導体チップ70をピックアップする工程
【0019】
本発明者らの検討によれば、従来の半導体装置の製造方法に関し、以下のような課題を見出した。
まず、本発明者は、従来の半導体装置の製造方法において、高温または低温で半導体チップの動作確認をおこなう際に、半導体チップを固定する粘着性フィルムが変形したり、溶融したりすることを知見した。この場合、粘着性フィルム上の半導体チップの位置ズレが起きたり、半導体チップに対する粘着力が大きく向上したりするため、その後の半導体チップのピックアップが上手くできなくなってしまう。
さらに、本発明者の検討によれば、粘着性フィルムの変形や溶融を抑制するために、粘着性フィルムの耐熱性を高めると、粘着性フィルムの変形や溶融が抑制されて半導体チップの位置ズレや半導体チップに対する粘着力の昂進は改善される一方で、今度は粘着性フィルムの伸縮性や柔軟性が悪化し、半導体チップのピックアップが上手くできなくなってしまうことが明らかになった。
すなわち、従来の半導体装置の製造方法では、高温または低温での半導体チップの動作確認の後における半導体チップのピックアップ性において改善の余地があった。
【0020】
そのため、従来の半導体装置の製造方法では、半導体チップのピックアップを上手くおこなう観点から、
図4に示すように粘着性フィルム50A上の半導体チップ70Aをチップトレー80A等に一度ピックアップしてから、再度、半導体チップ70Aをロボットにて移送して検査台90Aに配置し、高温または低温での半導体チップの動作確認を行い、その後、再び半導体チップ70Aをチップトレー80A等にピックアップしなければならず、工程が複雑になっていた。
すなわち、本発明者らは、従来の半導体装置の製造方法には、ダイシング工程から半導体チップの動作確認工程までの間の工程の簡略化と、半導体チップのピックアップ性とを両立させるという観点において、改善の余地があることを見出した。
【0021】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、半導体チップを固定するフィルムとして、放射線架橋型の粘着性樹脂層30を有する粘着性フィルム50を使用し、かつ、半導体チップ70の動作を確認する工程の前に、粘着性樹脂層30を放射線架橋することにより、ダイシング工程から半導体チップの動作確認工程までの間の工程の簡略化と、半導体チップのピックアップ性とを両立できることを見出した。
すなわち、粘着性樹脂層30を架橋して耐熱性が向上した粘着性フィルム50を使用して上記工程(C)をおこなうことで、粘着性樹脂層30の変形や溶融が抑制されて半導体チップ70の位置ズレや半導体チップに対する粘着力の昂進を抑制でき、その結果、上記工程(D)での半導体チップ70のピックアップをより正確におこなうことができる。
さらに、粘着性フィルム50上に貼り付けたまま、高温または低温での半導体チップ70の動作確認をおこなうことができるため、半導体チップ70の動作確認の前に粘着性フィルム50から半導体チップ70をピックアップしてチップトレー等に移動させる必要がなく、ダイシング工程から半導体チップの動作確認工程までの間の工程を簡略化することができる。
以上のように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、上記工程(A)〜(D)を備えることで、ダイシング工程から半導体チップの動作確認工程までの間の工程を簡略化できるとともに、半導体チップを精度よくピックアップすることが可能となる。
【0022】
1.粘着性フィルム
はじめに、本実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いる粘着性フィルム50について説明する。
粘着性フィルム50は、放射線架橋型の粘着性樹脂層30を少なくとも有する。また、粘着性フィルム50は、粘着性樹脂層30に加えて、耐熱性樹脂層10および柔軟性樹脂層20のうち少なくとも一方をさらに有していてもよく、粘着性フィルム50の耐熱性および柔軟性のバランスをより良好にする観点から、耐熱性樹脂層10および柔軟性樹脂層20の両方をさらに有することが好ましい。
粘着性フィルム50が粘着性樹脂層30、耐熱性樹脂層10および柔軟性樹脂層20を含む場合、
図2に示すように、粘着性フィルム50は耐熱性樹脂層10、柔軟性樹脂層20および粘着性樹脂層30をこの順番に有することが好ましい。
こうすることで、耐熱性樹脂層10により粘着性樹脂層30の変形や溶融が抑制されて半導体チップ70の位置ズレや半導体チップに対する粘着力の昂進を抑制でき、その結果、上記工程(D)での半導体チップ70のピックアップをより正確におこなうことができる。すなわち、粘着性フィルム50の粘着性、耐熱性および柔軟性のバランスをより良好にすることができる。
【0023】
ここで、本実施形態において、耐熱性とは高温または低温におけるフィルムや樹脂層の寸法安定性を意味する。すなわち、耐熱性に優れるフィルムや樹脂層ほど、高温または低温における膨張や収縮、軟化等の変形や溶融等が起き難いことを意味する。
【0024】
<粘着性樹脂層>
粘着性樹脂層30は放射線架橋型であり、粘着性フィルム50を半導体基板に貼り付ける際に、半導体基板の表面に接触して粘着する層である。
【0025】
粘着性樹脂層30を構成する粘着剤は、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、スチレン系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、接着力の調整を容易にできる点等から、(メタ)アクリル系重合体をベースポリマーとする(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
【0026】
粘着性樹脂層30を構成する粘着剤としては、放射線を照射することにより架橋する放射線架橋型粘着剤を用いる。放射線架橋型粘着剤により構成された粘着性樹脂層30は、放射線の照射により架橋して耐熱性が向上するため、工程(C)において、粘着性樹脂層30の変形や溶融が抑制されて半導体チップ70の位置ズレや半導体チップに対する粘着力の昂進を抑制することができる。放射線としては、紫外線、電子線、赤外線等が挙げられる。
放射線架橋型粘着剤としては、紫外線架橋型粘着剤が好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル系粘着剤に含まれる(メタ)アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル化合物とコモノマーとの共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
また、(メタ)アクリル系共重合体を構成するコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリルニトリル、スチレン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアマイド、メチロール(メタ)アクリルアマイド、無水マレイン酸等が挙げられる。これらのコモノマーは一種単独で用いてもよく、二種以上を併用して用いてもよい。
【0028】
放射線架橋型粘着剤は、例えば、上記(メタ)アクリル系粘着剤等の粘着剤と、架橋性化合物(炭素−炭素二重結合を有する成分)と、光重合開始剤または熱重合開始剤と、を含む。
【0029】
架橋性化合物としては、例えば、分子中に炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合により架橋可能なモノマー、オリゴマーまたはポリマー等が挙げられる。このような架橋性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル;エステル(メタ)アクリレートオリゴマー;2−プロペニルジ−3−ブテニルシアヌレート、2−ヒドロキシエチルビス(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートまたはイソシアヌレート化合物等が挙げられる。
なお、粘着剤が、ポリマーの側鎖に炭素−炭素二重結合を有する放射線架橋型ポリマーである場合は、架橋性化合物を加えなくてもよい。
【0030】
架橋性化合物の含有量は、粘着剤100質量部に対して5〜900質量部が好ましく、5〜100質量部がより好ましく、10〜50質量部がさらに好ましい。架橋性化合物の含有量が上記範囲であることにより、上記範囲よりも少ない場合に比べて粘着力の調整がし易くなり、上記範囲よりも多い場合に比べて、熱や光に対する感度が高すぎることによる保存安定性の低下が起こりにくい。
【0031】
光重合開始剤としては、放射線を照射することにより開裂しラジカルを生成する化合物であればよく、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等の芳香族ケトン類;ベンジルジメチルケタール等の芳香族ケタール類;ポリビニルベンゾフェノン;クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン類等が挙げられる。
【0032】
熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物誘導体やアゾ系重合開始剤等が挙げられる。加熱時に窒素が発生しない点から、好ましくは有機過酸化物誘導体である。熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステルおよびパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0033】
粘着剤には架橋剤を添加してもよい。架橋剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリストールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N'−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物等が挙げられる。
架橋剤の含有量は、粘着性樹脂層30の耐熱性や密着力とのバランスを向上させる観点から、(メタ)アクリル系重合体100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
【0034】
粘着性樹脂層30の厚みは特に制限されないが、例えば、1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0035】
粘着性樹脂層30は、例えば、基材層や耐熱性樹脂層10、柔軟性樹脂層20上に粘着剤塗布液を塗布することにより形成することができる。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80〜200℃の温度範囲において、10秒〜10分間乾燥することが好ましい。更に好ましくは、80〜170℃において、15秒〜5分間乾燥する。架橋剤と粘着剤との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40〜80℃において5〜300時間程度加熱してもよい。
【0036】
<耐熱性樹脂層>
耐熱性樹脂層10は、粘着性フィルム50の取り扱い性や機械的特性、耐熱性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。
耐熱性樹脂層10は、高温または低温で半導体チップの動作確認をおこなう際に、半導体チップの位置ズレが起きるほどの変形や溶融が起きない程度の耐熱性があれば特に限定されないが、例えば、耐熱性樹脂フィルムを用いることができる。
【0037】
上記耐熱性樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;変性ポリフェニレンエーテル;ポリアセタール;ポリアリレート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;フッ素系樹脂;液晶ポリマー;塩化ビニリデン樹脂;ポリベンゾイミダゾール;ポリベンゾオキサゾール;ポリメチルペンテン等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
【0038】
これらの中でも、耐熱性や機械的強度、透明性、価格等のバランスに優れる観点から、ポリイミド、ポリアミド、およびポリエステルから選択される一種または二種以上が好ましい。
【0039】
耐熱性樹脂層10の融点は200℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましい。あるいは、耐熱性樹脂層10は融点を示さないものであることが好ましく、分解温度が200℃以上であることがより好ましく、分解温度が220℃以上であることがさらに好ましい。
このような耐熱性樹脂層10を用いると、高温または低温での動作確認試験の際の粘着性フィルム50の変形をより一層抑制することができる。
【0040】
耐熱性樹脂層10は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、耐熱性樹脂層10を形成するために使用する樹脂フィルムの形態としては、延伸フィルムであってもよいし、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであってもよいが、耐熱性樹脂層10の耐熱性や機械的強度を向上させる観点から、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムであることが好ましい。
【0041】
耐熱性樹脂層10の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、好ましくは10μm以上1000μm以下、より好ましくは10μm以上500μm以下、さらに好ましくは20μm以上300μm以下である。
耐熱性樹脂層10は他の層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
【0042】
耐熱性樹脂層10は柔軟性樹脂層20に対して剥離可能なように積層されていることが好ましい。
剥離可能に積層する方法は特に限定されないが、例えば、剥離可能な接着層(図示しない)を介して積層する方法や、耐熱性樹脂層10の柔軟性樹脂層20と接する側の表面の表面粗さを調整し、かつ、その表面を離型処理する方法等が挙げられる。剥離可能な接着層とは、剥離の際に放射線や熱等の何らかの刺激を加えることによって容易に剥離することが可能な層をいう。
【0043】
このような剥離可能な接着層としては、例えば、(1)放射線照射により粘着力の昂進を抑制できる放射線架橋型粘着剤により構成された接着層、(2)加熱により膨張して粘着力の昂進を抑制できる加熱膨張型粘着剤により構成された接着層、(3)加熱により収縮して粘着力の昂進を抑制できる、収縮性フィルムを基材とした両面粘着性フィルムにより構成された接着層、(4)高温または低温での処理後も粘着力の昂進を抑制できる耐熱性接着層等が挙げられる。
【0044】
((1)放射線照射により粘着力の昂進を抑制できる放射線架橋型粘着剤により構成された接着層)
放射線架橋型粘着剤は、放射線照射前には耐熱性樹脂層10および柔軟性樹脂層20に対して十分な接着力を有し、放射線照射後には粘着力の昂進を抑制できるものである。すなわち、放射線照射前には耐熱性樹脂層10および柔軟性樹脂層20を接着でき、放射線照射後には柔軟性樹脂層20から耐熱性樹脂層10を容易に剥離することができる。
放射線架橋型粘着剤としては、一般的に公知の紫外線架橋型粘着剤等の放射線架橋型粘着剤を用いることができる。
【0045】
((2)加熱により膨張して粘着力の昂進を抑制できる加熱膨張型粘着剤により構成された接着層)
加熱膨張型粘着剤は粘着剤中に熱膨張性微粒子や発泡剤等が分散している粘着剤をいう。粘着剤としては、一般的に公知の粘着剤を用いることができ、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。
熱膨張性微粒子としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタン等の加熱によって容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微粒子が挙げられる。
発泡剤としては、例えば、熱分解して、水、炭酸ガス、窒素を発生させる能力を有する化学物質等挙げられる。
加熱により、熱膨張性微粒子や発泡剤が膨張すると、接着層の表面状態が変化し、柔軟性樹脂層20と耐熱性樹脂層10との粘着力の昂進を抑制することができ、その結果、柔軟性樹脂層20から耐熱性樹脂層10を容易に剥離することができる。
【0046】
((3)加熱により収縮して粘着力の昂進を抑制できる、収縮性フィルムを基材とした両面粘着性フィルムにより構成された接着層)
収縮性フィルムを基材とした両面粘着性フィルムに使用される収縮フィルムとしては、加熱により収縮する熱収縮フィルムが挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の一軸または二軸延伸フィルム等を挙げることができる。
収縮性フィルムの両面に設けられる粘着剤としては、一般的に公知の粘着剤を用いることができ、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。
加熱により、基材の収縮性フィルムが収縮すると、接着層の表面状態が変化し、柔軟性樹脂層20と耐熱性樹脂層10との粘着力の昂進を抑制することができ、その結果、柔軟性樹脂層20から耐熱性樹脂層10を容易に剥離することができる。
【0047】
((4)高温または低温での処理後も粘着力の昂進を抑制できる耐熱性接着層)
高温または低温での処理後も粘着力の昂進を抑制できる耐熱性接着層を構成する粘着剤は、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、スチレン系粘着剤等が挙げられる。
ここで、(メタ)アクリル系粘着剤は(メタ)アクリル系粘着性樹脂を必須成分として含んでいる。シリコーン系粘着剤はシリコーン系粘着性樹脂を必須成分として含んでいる。ウレタン系粘着剤はウレタン系粘着性樹脂を必須成分として含んでいる。
これらの中でも耐熱性樹脂層10と柔軟性樹脂層20との間の剥離強度の調整をより容易にする観点等から、(メタ)アクリル系粘着剤が好ましい。
【0048】
(メタ)アクリル系粘着剤に使用される(メタ)アクリル系粘着性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(A)および架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(B)を含む共重合体が挙げられる。
本実施形態において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、またはこれらの混合物を意味する。
【0049】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(A)および架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(B)を含むモノマー混合物を共重合することにより得ることができる。
【0050】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(A)を形成するモノマー(A)としては、炭素数1〜12程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(A)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、10質量%以上98.9質量%以下であることが好ましく、85質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(B)を形成するモノマー(B)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、メサコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ターシャル−ブチルアミノエチルアクリレート、ターシャル−ブチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド等である。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂において、モノマー単位(B)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0052】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂は、モノマー単位(A)およびモノマー単位(B)以外に、2官能性モノマー(C)や界面活性剤としての性質を有する特定のコモノマー(以下、重合性界面活性剤と称する)単位をさらに含んでもよい。
重合性界面活性剤は、モノマー(A)、モノマー(B)およびモノマー(C)と共重合する性質を有すると共に、乳化重合する場合には乳化剤としての作用を有する。
【0053】
2官能性モノマー単位(C)を形成するモノマー(C)としては、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートや、例えば、両末端がジアクリレートまたはジメタクリレートで主鎖の構造がプロピレングリコール型(例えば、日本油脂(株)製、商品名;PDP−200、同PDP−400、同ADP−200、同ADP−400)、テトラメチレングリコール型(例えば、日本油脂(株)製、商品名;ADT−250、同ADT−850)およびこれらの混合型(例えば、日本油脂(株)製、商品名:ADET−1800、同ADPT−4000)であるもの等が挙げられる。
【0054】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂において、モノマー単位(C)の含有量は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂中の全モノマー単位の合計を100質量%としたとき、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0055】
重合性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのベンゼン環に重合性の1−プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンRN−10、同RN−20、同RN−30、同RN−50等)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1−プロペニル基を導入したもの(第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンHS−10、同HS−20、同HS−1025等)、および分子内に重合性二重結合を持つ、スルホコハク酸ジエステル系(花王(株)製;商品名:ラテムルS−120A、同S−180A等)等が挙げられる。
【0056】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂は、さらに必要に応じて、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の重合性2重結合を有するモノマーにより形成されたモノマー単位をさらに含有してもよい。
【0057】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着性樹脂の重合反応機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられる。(メタ)アクリル系粘着性樹脂の製造コスト、モノマーの官能基の影響等を等慮すればラジカル重合によって重合することが好ましい。
ラジカル重合反応によって重合する際、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、メチルエチルケトンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−ヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド等の有機過酸化物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4'−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等のアゾ化合物が挙げられる。
【0058】
乳化重合法により重合する場合には、これらのラジカル重合開始剤の中で、水溶性の過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、同じく水溶性の4,4'−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物が好ましく、過硫酸アンモニウム、4,4'−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物がさらに好ましく、4,4'−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物が特に好ましい。
【0059】
(メタ)アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂に加えて、架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤をさらに含むことが好ましい。
架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤は、(メタ)アクリル系粘着性樹脂が有する官能基と反応させ、粘着力および凝集力を調整するために用いる。
このような架橋剤としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レソルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N'−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N'−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系化合物;N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N'−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の4官能性エポキシ系化合物;ヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物およびアジリジン系化合物から選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。
【0060】
(メタ)アクリル系粘着剤中の架橋剤の含有量は、接着層の耐熱性や密着力とのバランスを向上させる観点から、(メタ)アクリル系粘着性樹脂100質量部に対し、10質量部以上50質量部以下であることが好ましく、12質量部以上30質量部以下がより好ましい。
また、(メタ)アクリル系粘着剤中の架橋剤の含有量を調整することにより、耐熱性樹脂層10と柔軟性樹脂層20との間の剥離強度を調整することができる。
【0061】
本実施形態に係る(メタ)アクリル系粘着剤は、粘着性樹脂に加えて、紫外線重合開始剤をさらに含んでもよい。これにより紫外線照射による硬化時間ならびに紫外線照射量を少なくすることができる。
紫外線重合開始剤の例には、メトキシアセトフェノン等のアセトフェノン系光重合開始剤;4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン等のα−ケトール化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、等のベンゾイン系光重合開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸等のベンゾフェノン系光重合開始剤等が挙げられる。
粘着剤中の紫外線重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0062】
接着層の厚さは特に制限されないが、例えば、1μm以上100μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0063】
接着層は、例えば、耐熱性樹脂層10または柔軟性樹脂層20上に粘着剤塗布液を塗布することにより形成することができる。
粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えば、ロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80〜200℃の温度範囲において、10秒〜10分間乾燥することが好ましい。さらに好ましくは、80〜170℃において、15秒〜5分間乾燥する。架橋剤と粘着剤との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後、40〜80℃において5〜300時間程度加熱してもよい。
【0064】
また、本実施形態に係る粘着性フィルム50において、耐熱性樹脂層10の柔軟性樹脂層20と接する側の表面の表面粗さを調整し、かつ、その表面を離型処理することによっても、耐熱性樹脂層10と柔軟性樹脂層20との間の剥離強度を調整することが可能である。
ここで、JIS−B0601により規定される、耐熱性樹脂層10の柔軟性樹脂層20と接する側の表面の表面粗さ(Ra)は好ましくは0.10μm以上10μm以下である。
また、耐熱性樹脂層10の柔軟性樹脂層20と接する側の表面がシリコーンやポリテトラフルオロエチレンなどの離型剤により離型処理されていることが好ましい。
【0065】
(柔軟性樹脂層)
柔軟性樹脂層20は、粘着性フィルム50の柔軟性や伸縮性等の特性を良好にすることを目的として設けられる層である。
柔軟性樹脂層20を設けることにより、耐熱性樹脂層10を剥離した後の粘着性フィルム50の伸縮性や柔軟性が向上し、半導体チップ70をピックアップする工程(D)において粘着性フィルム50を面内方向に拡張させることができる。
こうすることにより、隣接する半導体チップ70間の間隔が拡大するため、粘着性フィルム50から半導体チップ70をピックアップし易くなる。さらに、粘着性フィルム50の面内方向の拡張によって生じる、半導体チップ70と粘着性樹脂層30とのずり応力により、半導体チップ70と粘着性樹脂層30との粘着力が低下するため、粘着性フィルム50から半導体チップ70をピックアップし易くなる。
【0066】
柔軟性樹脂層20は面内方向に拡張できるものであれば特に限定されないが、柔軟性や伸縮性等の特性に優れ、かつ、高温または低温で半導体チップの動作確認をおこなう際に耐熱性樹脂層10と粘着性樹脂層30との接着性を維持できる程度の耐熱性があるものが好ましい。
上記柔軟性樹脂層20を構成する柔軟性樹脂としては、例えば、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリイミド系エラストマー、およびポリブチレンテレフタレート等から選択される一種または二種以上が挙げられる。
【0067】
JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度300mm/分の条件で測定される、柔軟性樹脂層20の160℃での引張弾性率(E')が1MPa以上300MPa以下であることが好ましく、5MPa以上150MPa以下であることがより好ましい。これにより、柔軟性樹脂層20の柔軟性や伸縮性等の特性を良好に保ちつつ、高温または低温で半導体チップ70の動作確認工程をおこなう際の粘着性フィルム50の熱膨張をより一層抑制することができる。
【0068】
柔軟性樹脂層20の融点は100℃以上250℃以下であることが好ましい。
このような柔軟性樹脂層20を用いると、高温または低温での動作確認試験の際の粘着性フィルム50の変形をより一層抑制することができる。
【0069】
柔軟性樹脂層20の厚みは特に制限されないが、例えば、10μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上300μm以下であることがより好ましく、30μm以上250μm以下であることがさらに好ましく、50μm以上200μm以下であることが特に好ましい。
【0070】
本実施形態に係る粘着性フィルム50は、粘着性樹脂層30上に離型フィルムをさらに積層させてもよい。離型フィルムとしては、例えば、離型処理が施されたポリエステルフィルム等が挙げられる。
【0071】
本実施形態に係る粘着性フィルム50の全光線透過率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。こうすることで、粘着性フィルム50に透明性を付与することができる。そして、粘着性フィルム50の全光線透過率を上記下限値以上とすることにより、本実施形態に係る粘着性フィルム50において放射線を照射する際に、粘着性樹脂層30へより効果的に放射線を照射することができ、放射線照射効率を向上させることができる。なお、粘着性フィルム50の全光線透過率は、JIS K7105(1981)に準じて測定することが可能である。
【0072】
次に、本実施形態に係る粘着性フィルム50の製造方法の一例について説明する。
まず、耐熱性樹脂層10の一方の面に柔軟性樹脂層20を押出しラミネート法によって形成する。次いで、柔軟性樹脂層20上に粘着剤塗布液を塗布し乾燥させることによって、粘着性樹脂層30を形成し、粘着性フィルム50が得られる。
また、耐熱性樹脂層10と柔軟性樹脂層20とは共押出成形によって形成してもよいし、フィルム状の耐熱性樹脂層10とフィルム状の柔軟性樹脂層20とをラミネート(積層)して形成してもよい。
【0073】
2.半導体装置の製造方法
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程について説明する。
【0074】
(工程(A))
はじめに、放射線硬化型の粘着性樹脂層30を有する粘着性フィルム50と、粘着性樹脂層30上に貼り付けられた1または2以上の半導体チップ70と、を備える構造体100を準備する。
【0075】
このような構造体は、例えば、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層30上に、半導体基板を貼り付け、次いで、粘着性フィルム50上の半導体基板を半導体チップ70にダイシングすることにより作製することができる。
以下、構造体100の製造方法について説明する。
【0076】
はじめに、粘着性フィルム50の粘着性樹脂層30上に、半導体基板を貼り付ける。
粘着性フィルム50に貼り付ける半導体基板としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム−ヒ素、ガリウム−リン、ガリウム−ヒ素−アルミニウム等の基板(例えば、ウェハ)が挙げられる。
また、半導体基板としては、表面に回路が形成された半導体基板を用いることが好ましい。
【0077】
粘着性フィルム50の貼り付けは、人の手で行なってもよいが、通常、ロール状の表面保護フィルムを取り付けた自動貼り機によって行なう。
貼り付け時の粘着性フィルム50および半導体基板の温度には特に制限はないが、25℃〜80℃が好ましい。
また、貼り付け時の粘着性フィルム50と半導体基板との圧力については特に制限はないが、0.3MPa〜0.5MPaが好ましい。
【0078】
次いで、粘着性フィルム50上の半導体基板を半導体チップ70にダイシングする。
ここでいう「ダイシング」には、
(a)半導体基板に対してこの半導体基板の厚さと同じ深さの切れ込みを設けることによって半導体基板を分断し、複数の分断された半導体チップを得る操作(以下、「フルカットダイシング」ともいう)、および、
(b)レーザー光を照射することにより、半導体基板に対し、半導体基板の切断までには至らない変質領域を設け、複数の半導体チップを得る操作(以下、「ステルスダイシング」ともいう)が含まれる。
上記ダイシングは、ダイシングブレード(ダイシングソー)、レーザー光等を用いて行うことができる。
【0079】
ダイシングがフルカットダイシングである場合には、ダイシングによって半導体基板が複数の半導体チップに分断される。
一方、ダイシングがステルスダイシングである場合には、ダイシングのみによっては半導体基板が複数の半導体チップに分断されるまでには至らず、ダイシング後の粘着性フィルム50の拡張によって半導体基板が分断されて複数の分断された半導体チップが得られる。なお、ステルスダイシングである場合の粘着性フィルム50の拡張は、工程(B)の前におこなってもよいし、工程(B)の後におこなってもよい。
なお、工程(A)における半導体チップ70には、フルカットダイシングにより得られる分断された複数の半導体チップと、ステルスダイシングにより得られる分断される前の複数の半導体チップの両方を含む。
【0080】
(工程(B))
次いで、粘着性フィルム50に対して放射線を照射し、粘着性樹脂層30を架橋させることで、粘着性樹脂層30の耐熱性を向上させる。
放射線は、例えば、粘着性フィルム50の半導体チップ70が貼り付けられた面とは反対側の面から照射される。
放射線として紫外線を用いる場合、粘着性フィルム50に対して照射する紫外線の線量は、50mJ/cm
2以上が好ましく、100mJ/cm
2以上がより好ましい。
紫外線の線量が上記下限値以上であると、粘着性樹脂層30の耐熱性をより向上させることができ、その結果、粘着性樹脂層30の変形や溶融がより一層抑制されて半導体チップ70の位置ズレをより一層抑制できる。
また、粘着性フィルム50に対して照射する紫外線の線量の上限は特に限定されないが、生産性の観点から、例えば、1500mJ/cm
2以下であり、好ましくは1200mJ/cm
2以下である。
紫外線照射は、例えば、高圧水銀ランプやLEDを用いておこなうことができる。
【0081】
(工程(C))
次に、粘着性樹脂層30上に貼り付けられた状態で、半導体チップ70の動作を確認する。
半導体チップ70の動作確認は、例えば、
図3に示すように構造体100を検査台90に載せて、公知の半導体試験装置を用いておこなうことができる。
例えば、半導体チップ70の電極75に対して、テスタに接続された接触端子95を接触させる。これにより、半導体チップ70とテスタとの間で、動作電力や動作試験信号等の授受を行い、半導体チップ70の動作特性の良否等を判別する。
【0082】
工程(C)では、0℃以下または50℃以上200℃以下の温度環境下で半導体チップ70の動作確認をおこなうことが好ましく、60℃以上180℃以下の温度環境下で半導体チップ70の動作確認をおこなうことがより好ましく、80℃以上160℃以下の温度環境下で半導体チップ70の動作確認をおこなうことがさらに好ましい。こうすることで、不良発生の要因が内在している半導体チップの劣化を加速でき、半導体チップの初期不良を早期に発生させ、その不良品を除去することができる。これにより、信頼性に優れた半導体チップ70を歩留りよく得ることができる。
例えば、構造体100を恒温槽やオーブンに入れるか、または検査台90に設けられたヒーターで加熱することによって、上記の温度環境下とすることができる。
【0083】
(工程(E))
粘着性フィルム50が耐熱性樹脂層10、柔軟性樹脂層20および粘着性樹脂層30をこの順番に有する場合、工程(C)の後に耐熱性樹脂層10を粘着性フィルム50から剥離する工程(E)をさらにおこなうことが好ましい。
粘着性フィルム50の剥離は手により行われる場合もあるが、一般には自動剥がし機と称される装置によって行うことができる。
上記工程(C)の後に上記工程(E)をおこなうことで伸縮性や柔軟性に劣る耐熱性樹脂層10が除去されるため、上記工程(D)において、粘着性樹脂層30および柔軟性樹脂層20を備えるフィルムの伸縮性や柔軟性が良好になり、上記工程(D)での半導体チップ70のピックアップをより容易におこなうことができる。
【0084】
(工程(D))
次いで、工程(C)の後に粘着性樹脂層30から半導体チップ70をピックアップする。
このピックアップにより、粘着性フィルム50から半導体チップ70を剥離することができる。
半導体チップ70のピックアップは、公知の方法で行うことができる。
【0085】
工程(D)では、粘着性樹脂層30における半導体チップ70が貼り付けられた領域をフィルムの面内方向に拡張させて、隣接する半導体チップ70間の間隔を拡大させた状態で、粘着性樹脂層30から半導体チップ70をピックアップすることが好ましい。
こうすることにより、隣接する半導体チップ70間の間隔が拡大するため、粘着性フィルム50から半導体チップ70をピックアップし易くなる。さらに、粘着性フィルム50の面内方向の拡張によって生じる、半導体チップ70と粘着性樹脂層30とのずり応力により、半導体チップ70と粘着性樹脂層30との粘着力が低下するため、粘着性フィルム50から半導体チップ70をピックアップし易くなる。
【0086】
(その他の工程)
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、上記以外のその他の工程を有していてもよい。その他の工程としては、半導体装置の製造方法において公知の工程を用いることができる。
【0087】
例えば、工程(D)を行った後、得られた半導体チップを回路基板に実装する工程や、ワイヤボンディング工程、封止工程等の電子部品の製造工程において一般的におこなわれている任意の工程をさらに行ってもよい。
【0088】
また、半導体基板として一方の面のみに回路面を有する半導体基板を用いる場合、半導体基板の回路面を封止する封止工程をさらに有していてもよい。
封止工程では、例えば、粘着性フィルム50が貼着された半導体基板の回路面上に保護層を形成することで、回路面を内部に封止する。その場合、封止工程の後のダイシング工程によって、回路面が封止された半導体基板をダイシングする。
なお、封止工程は、半導体基板に粘着性フィルム50を貼り付ける工程の前に行ってもよい。
【0089】
また、回路面を有する半導体基板を用いる場合、例えば、半導体基板の回路形成面に通常用いられる方法で電極形成および非回路面に保護膜形成を行う工程をさらに有してもよい。この電極形成および保護膜形成を行う工程が設けられた製造方法は、WLP(Wafer Level Package)とも呼ばれている。
また、半導体基板の回路面に再配線層を形成する工程をさらに有してもよい。半導体チップ面積を超える広い領域に再配線層を形成することにより得られる半導体装置は、ファンアウトパッケージ(Fan−out Package)とも呼ばれている。
【0090】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0091】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0092】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0093】
粘着性フィルムの作製に用いた材料の詳細は以下の通りである。
【0094】
<耐熱性樹脂層>
耐熱性樹脂層1:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(ユニチカ社製、製品名:エンブレット(登録商標)S−50、融点:260℃、分解温度:約400℃、厚み:50μm)
【0095】
<柔軟性樹脂層形成用の柔軟性樹脂>
柔軟性樹脂1:ポリエステル系エラストマー(東レ・デュポン社製、商品名:ハイトレル(登録商標)5557、融点:208℃)
【0096】
<粘着性樹脂層形成用の粘着剤>
(粘着剤1(紫外線架橋型アクリル系粘着剤))
アクリル酸エチル48質量部、アクリル酸−2−エチルヘキシル27質量部、アクリル酸メチル20質量部、メタクリル酸グリシジル5質量部、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5質量部を混合した。これを、トルエン65質量部、酢酸エチル50質量部が入った窒素置換フラスコ中に、撹拌しながら80℃で5時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌して反応させた。反応終了後、この溶液を冷却し、これにキシレン25質量部、アクリル酸2.5質量部、およびテトラデシルベンジルアンモニウムクロライド1.5質量部を加え、空気を吹き込みながら80℃で10時間反応させ、光重合性炭素−炭素二重結合が導入されたアクリル酸エステル共重合体溶液を得た。
【0097】
この溶液に、共重合体(固形分)100質量部に対して紫外線重合開始剤としてベンゾイン7質量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名:オレスターP49−75S)2質量部、1分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM−400)15質量部を添加し、粘着剤1(紫外線架橋型粘着剤塗布液)を得た。
【0098】
[実施例1]
耐熱性樹脂層1上に、柔軟性樹脂層となる柔軟性樹脂1により構成されたフィルム(厚さ:110μm、160℃での引張弾性率:40MPa(JIS K7161に準拠し、サンプル幅10mm、チャック間距離30mm、引張速度300mm/分の条件で測定))を積層した。次いで、得られたフィルムの柔軟性樹脂層上に、粘着剤1の塗布液を塗布した後、乾燥させて、厚さ20μmの粘着性樹脂層を形成し、粘着性フィルムを得た。
【0099】
次いで、粘着性樹脂層がシリコンウェハに接するように、粘着性フィルムをシリコンウェハに貼り付け、構造体を準備した(工程(A))。次いで、25℃の環境下で高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製UVX−02528S1AJA02)を用いて主波長365nmの紫外線を照射強度108mW/cm
2、紫外線量540mJ/cm
2の条件で上記構造体の粘着性フィルムに対して照射して粘着性樹脂層を架橋させた(工程(B))。
次いで、得られた構造体をホットプレート上で150℃、0〜6時間加熱処理した。このとき、耐熱性樹脂層側をホットプレート側とした。ここで、この加熱処理は、工程(B)の後に、高温環境下で、粘着性樹脂層上に貼り付けられた状態で半導体チップの動作を確認する工程(C)に対応する。
次いで、一定時間加熱処理を行った後に、粘着性フィルムとシリコンウェハとの間の剥離強度を測定した。ここで、粘着性フィルムとシリコンウェハとの間の剥離試験は上記工程(C)の後に粘着性樹脂層から半導体チップをピックアップする工程(D)に対応する。
粘着性フィルムとシリコンウェハとの間の剥離強度は以下の方法により測定した。まず、引張試験機(東洋精機社製、商品名:ストログラフ)を用いて、粘着性フィルムをシリコンウェハから、25℃、引張速度100mm/分の条件で180度方向に剥離し、そのときの強度(N/25mm)を2回測定し、その平均値を剥離強度とした。
得られた結果を表1に示す。
【0100】
[比較例1]
構造体に対する加熱処理をおこなう前に紫外線照射を行わず、構造体に対する加熱処理をおこなった後に紫外線照射をおこなった(すなわち、工程(B)を工程(C)の後におこなった)以外は実施例1と同様にして粘着性フィルムとシリコンウェハとの間の剥離強度を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
工程(C)の前に工程(B)をおこなった実施例1では、粘着性フィルムとシリコンウェハとの間の粘着力の昂進が抑制され、粘着性フィルムからシリコンウェハを良好に剥離することができた。一方で、工程(C)の前に工程(B)をおこなわない比較例1では、加熱時間とともに粘着性フィルムとシリコンウェハとの間の粘着力が大きく増加してしまった。
すなわち、工程(A)〜(D)をおこない、かつ、工程(C)の前に工程(B)をおこなう実施例1の半導体装置の製造方法によれば、工程(C)の前に工程(B)をおこなわない比較例1の半導体装置の製造方法に比べて、半導体チップを精度よくピックアップすることが可能であることが理解できる。
【0103】
この出願は、2016年3月30日に出願された日本出願特願2016−068856号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
本発明の半導体装置の製造方法は、以下の4つの工程を少なくとも備えている。(A)放射線硬化型の粘着性樹脂層(30)を有する粘着性フィルム(50)と、粘着性樹脂層(30)上に貼り付けられた1または2以上の半導体チップ(70)と、を備える構造体(100)を準備する工程、(B)粘着性フィルム(50)に対して放射線を照射し、粘着性樹脂層(30)を架橋する工程、(C)工程(B)の後に、粘着性樹脂層(30)上に貼り付けられた状態で、半導体チップ(70)の動作を確認する工程、(D)工程(C)の後に、粘着性樹脂層(30)から半導体チップ(70)をピックアップする工程