特許第6204675号(P6204675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6204675-非接触厚さ測定方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204675
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】非接触厚さ測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 17/02 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   G01B17/02 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-70168(P2013-70168)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-194358(P2014-194358A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】大楽 和夫
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−38680(JP,A)
【文献】 特開2012−215561(JP,A)
【文献】 特開2005−106560(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/166383(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 17/00−17/08
G01N 29/00−29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の一方の面にバースト波超音波もしくはチャープ波超音波の発信プローブを配置し、他方の面にバースト波超音波もしくはチャープ波超音波の受信プローブを配置し、発信プローブから発せられ、対象物を透過し受信プローブで受信されるバースト波超音波もしくはチャープ波超音波の受信波の強度または強度の逆数から対象物の厚さを測定する非接触厚さ測定方法にあって、
対象物と発信プローブ及び受信プローブとの距離が50mm以上である非接触厚さ測定方法。
【請求項2】
発信プローブ及び受信プローブと対象物との間に空気を介する請求項1に記載の非接触厚さ測定方法。
【請求項3】
発信する超音波の周波数が20kHzから60kHzである請求項1または2に記載の非接触厚さ測定方法。
【請求項4】
対象物が厚さ1μmから130μmの膜状物である請求項1〜3のいずれかに記載の非接触厚さ測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で厚さを測定する測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業的製品の厚さを測定し管理することは重要である。そして、工場では高速で生産工程を流れているため、非接触かつ自動的な測定方法によることが望ましい。対象物が透明であれば、レーザー光を用いた厚さ測定が可能であり、非接触法として設備は比較的安価であり精度も優れている。
【0003】
しかし不透明の場合にはレーザー光による方法は難しく、β線や超音波による方法が用いられていた。β線による厚さ測定法は、機器が高価でありかつ放射線使用に伴う管理が必要である等、簡便な測定法とは言い難い。
【0004】
超音波による厚さ特定法は簡便であり、対象物が透明でなくても測定できるが、対象物と超音波発信プローブとの間に空気層が存在すると、超音波は、対象物と空気との界面で大半が反射されるため接触式でないと膜厚の測定は難しかった(特許文献1)。
【0005】
空気を介して対象物に超音波を透過させた非接触の厚さ測定計は、原理的には可能であるが、超音波の減衰が大きいため発信プローブとの距離を3〜20mmm程度と近接させた上でベルト上を自動搬送されている対象物が重なっていることを判定するなど、精度が低くても実用化できるような用途に用いられていた(特許文献3)。
【0006】
一般に対象物を透過した超音波は、受信プローブで検出されると同時に反対方向に反射し、これがさらに対象物表面で反射し再度受信プローブで検出される。このような反射波の伝播する行程が短いと、透過波に重なってとらえられる。反射波は、対象物表面の平滑状態などに大きく影響されるため、これが重なると透過波を正確にとらえることはできない。
【0007】
パルス波による超音波を空中で伝播させサンプル膜に透過させる場合、超音波の減衰が大きく、ある程度以上距離をはなすと測定に十分な強度の透過波が得られないため、反射波と重なるリスクを冒して送信装置や受信装置と膜との距離を短くしている(特許文献2)。その結果、精度のよい測定は難しい。したがって、膜厚を非接触で測定する精度よく扱いやすい測定方法の開発が待たれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−101656
【特許文献2】特開2005−249486
【特許文献3】特開2000−25987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、厚さを非接触で計測する測定方法及び非接触厚さ測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、厚さを非接触により測定する方法係るものである。
すなわち本発明は、以下の構成を有するものである。
【0011】
対象物の一方の面にバースト波超音波もしくはチャープ波超音波の発信プローブを配置し、他方の面にバースト波超音波もしくはチャープ波超音波の受信プローブを配置し、発信プローブから発せられ、対象物を透過し受信プローブで受信されるバースト波超音波もしくはチャープ波超音波の受信波の強度または強度の逆数から対象物の厚さを測定する厚さの非接触測定方法。
【0012】
信プローブ及び受信プローブと対象物との間に空気を介する
【0013】
対象物と発信プローブ及び受信プローブとの距離が50mm以上である非接触厚さ測定方法。
【0014】
発信する超音波の周波数が20kHzから60kHzである。
【0015】
対象物が厚さ1μmから130μmの膜状物である。
【発明の効果】
【0016】
非接触で対象物の厚さを自動的に計測する測定方法を提供する。従来のレーザー光を用いた方法は対象物が光を透過する場合に限って測定できたが、本法は光が透過しない場合でもなんら問題なく測定が可能である。また、β線による測定方法のように放射線被爆の対策をとる必要もなく設備も安価であり工場への応用も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1に係る検査装置の図である。
図2】本発明の実施例1に係る受信波の強度の逆数と膜厚の関係を示す図である。
図3】サンプル膜と送信および受信プローブとの距離200mmにおける透過波の波形。
図4】サンプル膜と送信および受信プローブとの距離50mmにおける透過波の波形。
図5】サンプル膜と送信および受信プローブとの距離20mmにおける透過波の波形。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の厚さの測定方法は、測定対象の一方の面にバースト波もしくはチャープ波超音波発信プローブを配置し、他方の面に、超音波の受信プローブを配置し、発信プローブから発せられ、対象物の略反対側に設けられた受信プローブで受信されるバースト波もしくはチャープ波超音波の受信波の強度または強度の逆数を計算し非接触で厚さを測定することを特徴とする測定方法である。
【0019】
発信プローブから発せられた超音波は対象物を透過し、略反対側の受信プローブで受信される。得られた受信波の強度、すなわち超音波振動のピーク高さと膜厚とは負の相関関係があるので、この関係を利用して受信されたピーク高さから膜厚を計算するか、もしくはピーク高さの逆数と膜厚は直線関係にあるので、この関係を用いるものである。
【0020】
発信プローブ及び又は受信プローブは対象物を除けば直接受信できるような位置関係、すなわち対象物を境に互いに相対するように設けることが望ましいが、超音波発信装置、受信装置は、超音波を実質的に減衰なく導くことができる導波路等を設けることにより任意に設置することができる。その場合、導波路等は対象物を境に相対するように設けることが好ましい。
【0021】
本発明の厚さの測定方法においては、バースト波超音波やチャープ波超音波は、図1に示すように、超音波発信・受信装置2において電気信号として発せられ、発信プローブ3から超音波となって空気中へ発信される。次に、サンプル1を透過した超音波は受信プローブ4にて受信され電気信号に変換され、プリアンプ5で増幅され、超音波発信・受信装置2に入力され、必要な信号処理を施されて、受信波として表示装置6に表示される。プリアンプ5は設けても設けなくても良い。設ける場合、図1に示すように別に設ける場合、受信プローブ内、超音波発信・受信装置内に設けても構わない。
【0022】
発信する超音波は、30kHzから100kHzの周波数が好ましく、40kHzから50kHzの範囲の周波数がより好ましい。本発明はパルス波よりもバースト波あるいはチャープ波はの方が測定の精度が高いことを見いだし、それを厚さ特定に用いることが特徴である。バースト波とは、パルス波を繰り返すものでありその波数は3から6波程度のパルス波を繰り返すのが望ましい。さらに、条件によってはバースト波よりも周波数を変調させるチャープ波が効果的であることがある。
【0023】
対象物と発信プローブ及び受信プローブとの間の距離は、それぞれある程度の間隔を設けておくことが好ましい。ある程度の間隔とはそれぞれ15mm以上であることが好ましく、40mm、100mm、さらには150mm以上がより好ましい。また、それぞれ、500mm以下、さらには450mm以下、特には300mm以下が好ましい。対象物と発信プローブ及び受信プローブとの間の距離は同じでなくても構わない。
【0024】
このように、各プローブと膜との距離を離すことにより、対象物を透過し、受信プローブに到達した透過波とプローブと対象物との間で発生する反射波が重なることを防ぎ、精度よく透過波の強度を測定することができる。対本発明の測定方法は常温の大気圧雰囲気下で行うことができ、特定温度、減圧あるいは特定気体雰囲気下等の特定条件下で行わなくてもかまわない。また、対象とプローブの間には特定の物質例えば、気体、物質(液体、ゲル状物等)、固体、器具等、特別なものを介在させなくてもかまわない。
【0025】
本発明に係る厚さ測定方法で測定できる対象物は、バースト波あるいはチャープ波の超音波が透過するものであれば特に限定はないが、膜状物が好ましい。膜状物の場合、膜厚は、厚さの下限は0.5μm、さらには1μm、特には5μmを好ましい例としてあげることができる。また、上限としては500μmが好ましく、より好ましくは250μm、さらには130μm、特には90μmが好ましく、最も好ましいものは60μmをあげることができる。対象物の表面は平滑であることが好ましいが、対象物の平均厚さの±25%の略連続的な凹凸が設けられたあるいは凹凸が存在するものでも構わない。
【0026】
対象物が膜状物である場合、発信する超音波の波長は膜の平均膜厚より小さいことが好ましく、平均膜厚の10〜95%、さらには25〜80%、特には30〜70%の超音波を用いることが好ましい。
【0027】
膜状物の材質としては、合成樹脂が好ましく、透明であっても実質的に光を通さない膜状物であっても構わない。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
膜の厚さ測定にかかる実施形態例である測定装置について、図1を用いて説明する。
測定対象のサンプル膜1をはさんで、片側に発信プローブ3を配置、反対側に受信プローブ4を配置する。超音波発信・受信装置2で生成されたバースト波超音波信号を発信プローブ3から超音波としてサンプル膜1に発信し、サンプル膜1を透過した超音波を受信プローブ4で受信し、プリアンプ5で増幅し超音波発信・受信装置2に入力し信号処理を施し、受信波形すなわちエコーを表示装置6に表示する。このエコー高さを読み取る。
【0029】
厚さ12.5、25、75、125μmである合成樹脂製膜をサンプルとした。サンプル膜1と発信プローブの距離は200mm、膜の反対側に位置する受信プローブとの距離は250mmである。発信する超音波の周波数は42KHzの5波のバースト波を用いた。受信波の強度の逆数と膜厚をプロットしたものが図2である。膜厚と透過波強度の逆数が直線関係にあることから、本発明の方法により簡便に非接触で膜の厚さを正確に測定できることがわかる。
【0030】
(実施例2、比較例1)
実施例1と同じ測定装置を用い、従来技術であるパルス波超音波とバースト波超音波を比較した。両者の出力はいずれも20Vである。またバースト波は5波である。
サンプル膜と発信プローブ、受信プローブとの距離は、同一とし、下表のとおりそれぞれその距離を200mm、50mm,20mmの3水準について透過波の強度を測定した。サンプル膜は厚さ75μmの合成樹脂製膜である。
【0031】
【表1】
【0032】
観測された透過波の波形を図3〜5にしめす。膜と送信プローブおよび受信プローブとの距離が200mmあれば、透過波は、単純なパターンを示しているが、50mmと膜と装置が接近すると波形が複雑になってくる様子がわかる。さらに20mmにすると一見単純なパターンとみえるが、50mmのとき、分離されて観測されていた複数の波が重なって一つの波の集合に合成されている。
【0033】
以上、バースト波においては20mm、さらには50mm以上はなすことにより透過波の波長重なりが少なくなり膜厚測定精度が向上することがわかる。一方、パルス波の場合には距離が大きくなると共に波長強度が小さくなり膜厚測定には適しないことがわかる。
【符号の説明】
【0034】
1. サンプル膜
2. 超音波発信・受信装置
3. 発信プローブ
4. 受信プローブ
5. プリアンプ
6. 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5