(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヘテロ元素は、窒素(N)、ケイ素(Si)、酸素(O)、セレニウム(Se)、又はこれらの組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項3に記載の有機光電材料。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態につき、本発明が属する技術分野において通常の知識を持った者が容易に実施できる程度に詳しく説明する。しかしながら、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0014】
本明細書において、別途に断りのない限り、「置換」とは、化合物中の水素原子がハロゲン原子(F、Br、Cl、又はI)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、C1〜C20のアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C2〜C20のアルキニル基、C6〜C30のアリール基、C7〜C30のアリールアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C20のヘテロアルキル基、C3〜C20のヘテロアリールアルキル基、C3〜C30のシクロアルキル基、C3〜C15のシクロアルケニル基、C6〜C15のシクロアルキニル基、C2〜C20のヘテロシクロアルキル基及びこれらの組み合わせから選ばれる置換基で置換されたものを意味する。
【0015】
また、本明細書において、別途に断りのない限り、「ヘテロ」とは、N、O、S及びPから選ばれるヘテロ原子を1〜3個含有するものを意味する。
【0016】
図中、複数の層および領域を明確に表現するために、厚さを拡大して示す。明細書全般に亘って類似する部分に対しては同じ図面符号を付する。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとしたとき、これは、他の部分の「直上に」ある場合だけではなく、これらの間に他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分の「真上に」あるとしたときには、これらの間に他の部分がないことを意味する。
【0017】
図中、本実施形態を明確に表現するために、説明とは無関係な部分は省略した。なお、明細書全般に亘って同じ又は類似の構成要素に対しては同じ図面符号を付した。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、下記一般式1で表わされる化合物を含む有機光電材料を提供する。
【化8】
式中、Aは、4個〜7個の環が縮合されているチオフェン含有芳香族基である。
【0019】
前記Aは、少なくとも2つのチオフェンを含むことができ、前記環のうちの少なくとも一種は、ヘテロ元素を有することができる。ここで、ヘテロ元素は、窒素(N)、ケイ素(Si)、酸素(O)、セレニウム(Se)、又はこれらの組み合わせを含む。
【0020】
前記化合物は、コアに4個〜7個の環を有するチオフェン含有芳香族基を有することにより、緑色波長領域の光を選択的に吸収できる。特に、前記4個〜7個の環が何れも縮合された形を有することにより、化合物の構造的な変形を低減でき、これにより、吸収波長領域を分散させることなく、狭い波長領域、即ち、約500〜600nmの波長領域における光吸収度を向上できる。
【0021】
また、前記化合物は、両末端に電子受容基であるジシアノビニル基を有することにより、LUMO(最低空分子軌道)レベルを上げるとともにHOMO(最高被占分子軌道)レベルを下げてそのバンドギャップを低減できる。例えば、前記化合物のバンドギャップは、約2.0〜3.0eVになる。このように前記化合物のエネルギーレベルを調節することにより、約500〜600nmの波長領域の光を効果的に吸収でき、これにより、高い外部量子効率(external quantum efficiency、EQEと略)を具現して、光電変換効率を改善できる。
【0022】
前記有機光電材料は、例えば、下記一般式2〜7で表わされる化合物のうちの少なくとも一種を含む。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
式中、X
1〜X
5は、同一又は異なり、それぞれ独立して、CR
1R
2、SiR
3R
4、NR
5、酸素(O)、又はセレニウム(Se)であり、ここで、R
1〜R
5は、同一又は異なり、それぞれ独立して、水素、置換若しくは非置換のC1〜C20のアルキル基、置換若しくは非置換のC6〜C20のアリール基、置換若しくは非置換のC3〜C20のヘテロアリール基、又はこれらの組み合わせである。
【0023】
以下、
図1に基づき、本発明の一実施形態に係る有機光電素子について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る有機光電素子を示す断面図である。
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係る有機光電素子は、相対向するアノード10及びカソード20と、アノード10とカソード20との間に配設される活性層30と、を備える。
図1には、アノード10が活性層30の下部に配設され、カソード20が活性層30の上部に配設される場合が示してあるが、これとは逆に、カソード20が活性層30の下部に配設され、アノード10が活性層30の上部に配設されてもよい。
【0024】
アノード10及びカソード20のうちの一方は、例えば、インジウム−スズ酸化物(indium tin oxide、ITOと略)、インジウム−亜鉛酸化物(indium zinc oxide、IZOと略)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(aluminum doped zinc oxide、AZOと略)、ガリウムドープ酸化亜鉛(gallium doped zinc oxide、GZOと略)などの透明導電体から製作されてもよく、もう一方は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、チタン(Ti)、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、これらの合金、又はこれらの組み合わせなどの不透明導電体から製作されてもよい。
【0025】
活性層30は、光電効果を用いて光を電気的な信号に変換でき、上述の有機光電材料を含む。
活性層30は、上述の有機光電材料を含むことにより、緑色波長領域の光を選択的に吸収でき、活性層30の吸収スペクトルは、約500nm〜600nmの波長領域において最大吸収ピークを示すことができる。なお、活性層30は、上述したように、約2.0eV〜3.0eVの比較的に小さなバンドギャップを有することにより、前記波長領域の光を効果的に吸収できる。
【0026】
前記有機光電材料は、p層、i層、n層、又はこれらの組み合わせを含みうる。
例えば、前記p層は、アノード10と隣り合う位置に形成され、n層は、カソード11と隣り合う位置に形成され、i層は、前記p層及び前記n層に隣り合うように配設される。しかしながら、本発明はこれに限定されず、前記p層及び前記n層が形成されない場合に、前記i層は、アノード10及びカソード20に隣り合う位置に形成されてもよい。
【0027】
上述の前記有機光電材料は、p層、i層、n層、又はこれらの組み合わせを含みうる。ここで、p層は、p型物質を含む層であって、i層において生成されたエクシトンから分離された正孔が伝達される層であり、n層は、n型物質を含む層であって、i層において生成されたエクシトンから分離された電子が伝達される層であり、i層は、p型物質とn型物質とが混合されてpn接合を形成する層であって、外部から光を受光してエクシトンを生成した後、生成されたエクシトンを正孔と電子に分離する層である。
【0028】
一例として、前記一般式1で表わされる化合物がp型物質として用いられる場合に、前記化合物よりもLUMOレベルの低い物質がn型物質として使用可能である。このとき、前記p型物質として用いられる化合物は、前記p層、前記i層、又はこれらの組み合わせを含み、前記n型物質は、前記n層、前記i層、又はこれらの組み合わせを含みうる。
【0029】
他の例として、前記一般式1で表わされる化合物がn型物質として用いられる場合に、前記化合物よりもLUMOレベルの高い物質がp型物質として使用可能である。このとき、前記n型物質として用いられる化合物は、前記n層、前記i層、又はこれらの組み合わせを含み、前記p型物質は、前記p層、前記i層、又はこれらの組み合わせを含みうる。
【0030】
前記i層は、バルクへテロ接合(bulk heterojunction、BHJと略)、有無機ハイブリッド、又はこれらの組み合わせを含みうるが、これに限定されない。
【0031】
前記バルクへテロ接合は、前記一般式1で表わされる化合物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、MEH−PPV(poly[2−methoxy−5−(2’−ethyl−hexyloxy)−1,4−phenylene vinylene]、MDMO−PPV(poly(2−methoxy−5−(3,7−dimethyloctyloxy)−1,4−phenylene−vinylene、ペンタセン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(3−アルキルチオフェン)、フタロシアニン(phthalocyanine)、トリアリールアミン(triarylamine)、ベンジジン(benzidine)、ピラゾリン(pyrazoline)、スチリルアミン(styrylamine)、ヒドラゾン(hydrazone)、カルバゾール(carbazole)、チオフェン(thiophene)、ピロール(pyrrole)、フェナントレン(phenanthrene)、テトラセン(tetracence)、ナフタレン(naphthalene)、フラーレン(C60、C70、C74、C76、C78、C82、C84、C720、C860など)、1−(3−メトキシ−カルボニル)プロピル−1−フェニル(6,6)C61(1−(3−methoxy−carbonyl)propyl−1−phenyl(6,6)C61:PCBM)、C71−PCBM、C84−PCBM、bis−PCBM、ペリレン(perylene)、これらの誘導体及びこれらの組み合わせから選ばれる少なくとも2つを含むことができるが、これに限定されない。前記バルクへテロ接合を形成するとき、エネルギーレベルが異なる物質を用いる場合、LUMOレベルの相対的に低い物質がn型物質として用いられ、LUMOレベルの相対的に高い物質がp型物質として用いられうる。
【0032】
前記有無機ハイブリッド層は、前記一般式1で表わされる化合物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、MEH−PPV(poly[2−methoxy−5−(2’−ethyl−hexyloxy)−1,4−phenylene vinylene]、MDMO−PPV(poly(2−methoxy−5−(3,7−dimethyloctyloxy)−1,4−phenylene−vinylene)、ペンタセン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(3−アルキルチオフェン)、フタロシアニン(phthalocyanine)、トリアリールアミン(triarylamine)、ベンジジン(benzidine)、ピラゾリン(pyrazoline)、スチリルアミン(styrylamine)、ヒドラゾン(hydrazone)、カルバゾール(carbazole)、チオフェン(thiophene)、ピロール(pyrrole)、フェナントレン(phenanthrene)、テトラセン(tetracence)、ナフタレン(naphthalene)、フラーレン(C60、C70、C74、C76、C78、C82、C84、C720、C860など)、1−(3−メトキシ−カルボニル)プロピル−1−フェニル(6,6)C61(1−(3−methoxy−carbonyl)propyl−1−phenyl(6,6)C61:PCBM)、C71−PCBM、C84−PCBM、bis−PCBM、ペリレン(perylene)、これらの誘導体及びこれらの組み合わせから選ばれる一つを含む有機物、及び、CdS、CdTe、CdSe、ZnO及びこれらの組み合わせから選ばれる一つを含む無機半導体を含むことができるが、これに限定されない。有無機ハイブリッド層を形成するとき、エネルギーレベルが異なる物質を用いる場合、LUMOレベルの相対的に低い物質がn型物質として用いられ、LUMOレベルの相対的に高い物質がp型物質として用いられうる。
【0033】
前記i層がp層、n層及びこれらの組み合わせとともに光活性層を形成する場合、前記i層に用いられるp型物質としてp層に用いられる物質を使用でき、前記i層に用いられるn型物質としてn層に用いられる物質を使用できる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、前記i層に使用されるp型物質は、前記p層に使用される物質と異なり、前記i層に用いられるn型物質は、前記n層に用いられる物質と異なっていてもよい。
【0034】
活性層30は、約1nm〜500nmの厚さを有することができる。前記範囲の厚さを有することにより、光を効果的に吸収し、正孔と電子を容易に分離し、分離された正孔及び電子を容易に伝達するので、光電変換効率を改善できる。前記範囲内において約5nm〜300nmの厚さを有することができ、前記範囲内において約10nm〜200nmの厚さを有することができる。
【0035】
前記有機光電素子において、アノード10及び/又はカソード20側から光が入射して活性層30が緑色波長領域の光を吸収すると、内部においてエクシトンが形成される。前記エクシトンは、活性層30において正孔と電子とに分離され、分離された正孔はアノード10側に移動し、分離された電子はカソード30側に移動して有機光電素子に電流が流れる。
【0036】
このとき、活性層30において分離された正孔と電子の移動を容易にするために、アノード10と活性層30との間及び/又はカソード20と活性層30との間に補助層(図示せず)をさらに含むことができる。
【0037】
補助層は、正孔輸送層(hole transporting layer、HTLと略)、電子遮断層(electron blocking layer、EBLと略)、電子輸送層(electron transporting layer、ETLと略)、正孔遮断層(hole blocking layer、HBLと略)から選ばれる少なくとも一つを含む。
【0038】
前記正孔輸送層(HTL)は、正孔の輸送を容易にする層であり、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホネート)(poly(3,4−ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonate)、「PEDOT:PSS」と略)、ポリアリールアミン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(poly(N−vinylcarbazole)、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−ベンジジン(N,N,N’,N’−tetrakis(4−methoxyphenyl)−benzidine、TPDと略)、4−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(4−bis[N−(1−naphthyl)−N−phenyl−amino]biphenyl、「α−NPD」と略)、m−MTDATA、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)−トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(N−carbazolyl)−triphenylamine、「TCTA」と略)及びこれらの組み合わせから選ばれる一つを含むが、これに限定されない。
【0039】
前記電子遮断層(EBL)は、電子の移動を阻止する層であり、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン:ポリ(スチレンスルホネート)(poly(3,4−ethylenedioxythiophene):poly(styrenesulfonate)、PEDOT:PSS)、ポリアリールアミン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(poly(N−vinylcarbazole)、ポリアニリン(polyaniline)、ポリピロール(polypyrrole)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−ベンジジン(N,N,N’,N’−tetrakis(4−methoxyphenyl)−benzidine、TPDと略)、4−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(4−bis[N−(1−naphthyl)−N−phenyl−amino]biphenyl、「α−NPD」と略)、m−MTDATA、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)−トリフェニルアミン(4,4’,4”−tris(N−carbazolyl)−triphenylamine、「TCTA」と略)及びこれらの組み合わせから選ばれる一つを含むが、これに限定されない。
【0040】
前記電子輸送層(ETL)は、電子の輸送を容易にする層であり、例えば、1,4,5,8−ナフタレン−テトラカルボキシリックジアンハイドライド(1,4,5,8−naphthalene−tetracarboxylic dianhydride、「NTCDA」と略)、バトクプロイン(bathocuproine、BCPと略)、LiF、Alq
3、Gaq
3、Inq
3、Znq
2、ZnBTZ
2、BeBq
2及びこれらの組み合わせから選ばれる一つを含むことができるが、これに限定されない。
【0041】
前記正孔遮断層(HBL)は、正孔の移動を阻止する層であり、NTCDA、バトクプロイン(BCP)、LiF、Alq
3、Gaq
3、Inq
3、Znq
2、ZnBTZ
2、BeBq
2及びこれらの組み合わせから選ばれる一つを含むことができるが、これに限定されない。
【0042】
前記有機光電素子は、例えば、太陽電池、イメージセンサー、光検出器、光センサー及び有機発光ダイオードなど種々の分野に適用されうる。特に、前記有機光電素子がイメージセンサーに適用される場合に、カラーフィルターを同時に代用することができて高集積化に非常に有利である。
【0043】
イメージセンサーは、マトリックス状に配列された複数の画素よりなる画素アレイを含み、各画素は、上述した有機光電素子を備えることができる。上述の有機光電素子は光感知素子であってもよく、光を感知し、感知された情報は伝送トランジスタに伝達されうる。
【0044】
以下、実施例を挙げて上述の本発明の実施形態について詳述する。但し、下記の実施例は、単に説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0047】
下記一般式3Aで表わされる化合物を準備した。
【化15】
【0049】
下記一般式4Aで表わされる化合物を準備した。
【化16】
【0051】
下記一般式5Aで表わされる化合物を準備した。
【化17】
【0053】
下記一般式6Aで表わされる化合物を下記の方法により準備した。
【化18】
【0055】
2,5−ジブロモテレフタレート(2,5−dibromoterephthalate)(TCI社製)33.4g(0.0879mol,1eq)及びK
2CO
3を49g(0.3517mol,4eq)、トルエン500mlに溶かした。次いで、前記混合物を脱気した後、PdCl
2(dppf).DCM(アルドリッチ社製)7.2g(0.0088mol,0.1eq)を添加した。次いで、前記反応物を60℃において2時間加熱した。次いで、前記反応物にチオフェン−2−ボロン酸(thiophene−2−boronic acid)45g(0.3517mol,4eq)を添加し、110℃において16時間加熱した。2,5−ジブロモテレフタレートが反応物に残っているときに、チオフェン−2−ボロン酸23g(2eq)をさらに添加した後、40時間後にさらに12g(1eq)を添加した。前記反応混合物を8時間還流した後、室温まで冷却し、H
2Oの500mlを添加した。反応混合物をメチレンクロライド(methylene chloride、MCと略)500mlで抽出し、MgSO
4を用いて乾燥した後にろ過した。次いで、カラムクロマトグラフィ(ここで溶離液は、ヘキサンとエチルアセテートとの混合物)を用いて不純物を除去して、黄色固体である下記化合物Aを20.4g得た。このとき、歩留まりは、60%であった。
【化19】
【0057】
前記化合物Aを20g(0.0517mol,1.0eq)、エチルアルコール200mlに入れ、ここに3.75N NaOH190ml(0.7038mol,14eq)を添加し、15時間還流した。前記反応物を室温まで冷却し、回転蒸発器を用いて前記エチルアルコールを除去した。次いで、残渣を氷浴中で冷却し、6N HClの150mlを添加した後、1時間攪拌した。次いで、前記反応物をろ過し、水で洗浄してねばねばした固体を得た。次いで、前記ねばねばした固体をエーテル400mlとTHF100mlの混合溶媒に溶かし、MgSO
4を用いて乾燥した。次いで、ろ過して黄色固体である下記化合物Bを20.4g、得た。このとき、歩留まりは、93%であった。
【化20】
【0059】
前記化合物Bを16g(0.0484mol,1eq)、メチレンクロライド800mlに溶かし、ここにオキサリルクロライド17ml(0.1937mol,4eq)を添加した。次いで、前記反応物を氷浴中で冷却した。次いで、前記反応物にDMF7.5ml(0.0969mol,2eq)を45分かけて点滴した。次いで、前記反応物を室温まで昇温した後、22時間攪拌した。反応が完了した後、回転蒸発器を用いて溶媒を除去した後、得られた黄色固体残渣をメチレンクロライド(MC)400mlに溶かした(溶液C)。
【0060】
次いで、AlCl
332g(0.2420mol,5eq)をメチレンクロライド800mlに溶かした後、0℃まで冷却して黄色懸濁液を得た。前記黄色懸濁液に前記溶液C400mlを添加して茶色懸濁液を得た。前記茶色懸濁液を室温下で24時間攪拌した後、6N HClの1Lを含むアイスに注いで青色懸濁液を得た。前記青色懸濁液を10分間攪拌した後、1Lのアイスをさらに供給した後、ろ過して青色固体を得た。前記青色固体を2N HClの500ml、H
2Oの500ml及びアセトン500mlで洗浄した後、空気中において乾燥して青色固体である下記化合物Dを14g、得た。このとき、歩留まりは、98%であった。
【化21】
【0062】
前記化合物Dを13g(0.0442mol,1.0eq)、エチレングリコール500mlに溶かした後、氷浴中で冷却して青色懸濁液を得た。次いで、前記青色懸濁液にKOHの49.6g(0.8833mol,20eq)を添加し、30分間攪拌した。次いで、室温まで昇温した後、ヒドラジン41ml(0.8833mol,20eq)を添加し、30分間攪拌して青色混合物を得た。次いで、前記青色混合物を140℃において23時間加熱した。反応が完了した後、反応混合物を室温まで冷却した後、6N HClの200ml(pH=2)を含むアイスに注いだ。次いで、前記反応混合物をエーテル300mlとメチレンクロライド300mlで抽出した後、水層をろ過して固体を分離した。次いで、前記固体を乾燥、ろ過及び濃縮して茶色固体残渣を得た。前記茶色固体残渣をメタノール100ml中で攪拌し、ろ過して淡い黄色固体である下記化合物Eを6g(51%)、得た。
【化22】
【0064】
前記化合物Eを5.7g(0.0214mol,1.0eq)、蒸留されたTHF200mlに溶かした後、前記溶液にカリウムt−ブトキシド(potassium t−butoxide、「t−BuOK」と略)19.2g(0.1712mol,8eq)を添加して青っぽい緑色懸濁液を得た。次いで、前記青っぽい緑色懸濁液を60℃において1時間加熱した後、室温まで冷却して黒色懸濁液を得た。次いで、前記黒色懸濁液にヨードメタン(iodomethane)11ml(0.1712mol,8eq)を点滴して黒色混合物を得た。次いで、前記黒色混合物を室温下で24時間攪拌した。反応が完了した後、反応混合物を氷浴中で冷却し、ここにNH
4OHの30mlを添加した後、15分間攪拌した。次いで、前記反応混合物に水500mlを添加し、エーテル300mlとメチレンクロライド300mlで抽出した。次いで、前記抽出物をMgSO
4で乾燥した後、ろ過及び濃縮して黒色残渣を得た。次いで、前記黒色残渣をメチレンクロライド200mlに溶かした後、カラムクロマトグラフィ(ここで溶離液は、ヘキサン)でろ過して茶色がかった黄色固体である下記化合物Fを6g、得た。このとき、歩留まりは、86%であった。
【化23】
【0066】
前記化合物Fを6g(0.0186mol,1eq)、1,2−ジクロロエタン250mlに溶かした後、ここにPOCl
39ml(0.0930mol,5eq)とDMF7.2ml(0.0930mol,5eq)の溶液を添加して赤燈色溶液を得た。次いで、前記赤燈色溶液を24時間還流して燈色懸濁液を得た。次いで、前記燈色懸濁液を室温まで冷却した後、メチレンクロライド100mlを添加し、飽和ソジウムアセテート1Lに注ぎ、2時間攪拌した。次いで、メチレンクロライド層を分離し、水層をメチレンクロライド200mlで抽出した後、MgSO
4で乾燥し、ろ過及び濃縮した。次いで、カラムクロマトグラフィ(ここで溶離液は、ヘキサン)、エチルアセテート、メチレンクロライドを用いてろ過して黄燈色固体である下記化合物Gを6.2g、得た。このとき、歩留まりは、88%であった。
【化24】
【0068】
マロノニトリル8.4g(0.1268mol,8eq)をクロロホルム200mlに溶かした後、ここに前記化合物Gを6g(0.0159mol,1.0eq)、添加して茶色がかった黄色溶液を得た。次いで、前記茶色がかった黄色溶液にTEAを0.7ml(0.0048mol,0.3eq)、点滴して栗色懸濁液を得た。次いで、前記栗色懸濁液を64℃において10時間還流した。反応が完了した後、反応混合物を室温まで冷却した後、ここにメチレンクロライド300mlと水500mlを添加した後、メチレンクロライド500mlで抽出し、MgSO
4を用いて乾燥した。次いで、カラムクロマトグラフィ(ここで溶離液は、ヘキサン)、エチルアセテートを用いてろ過して赤色固体である化合物H(一般式6A)を3.22g、得た。このとき、歩留まりは、43%であった。
【化25】
【0069】
前記化合物H(一般式6A)のNMR(400MHz,DMSO−d6)データは、下記の通りである。
8.67 (s, 2H), 8.19(s, 2H), 8.00(s, 2H), 1.53(s, 12H)
【0071】
下記一般式6Bで表わされる化合物を準備した。
【化26】
【0073】
下記一般式7Aで表わされる化合物を準備した。
【化27】
【0075】
下記一般式8で表わされる化合物を準備した。
【化28】
【0077】
下記一般式9で表わされる化合物を準備した。
【化29】
【0078】
評価1、有機光電材料のエネルギーレベル
【0079】
合成例1〜6において得られた化合物のHOMOレベル、LUMOレベル及びバンドギャップをシミュレーションで評価した。
その結果を下記表1に示す。
【表1】
【0080】
表1を参照すると、合成例1〜6において得られた化合物は、約2.0〜3.0eV、中でも、約2.0〜2.7eVのバンドギャップを有すると評価された。
【0082】
合成例1〜6において得られた化合物の吸光特性の波長依存性をシミュレーションで評価した。
【0083】
図2は、合成例1〜3において得られた化合物の吸光係数を波長の関数として示すグラフであり、
図3は、合成例4〜6において得られた化合物の吸光係数を波長の関数として示すグラフであり、
図4は、比較合成例1において得られた化合物の吸光係数を波長の関数として示すグラフであり、
図5は、比較合成例2において得られた化合物の吸光係数を波長の関数として示すグラフである。
【0084】
図2及び
図3を参照すると、合成例1〜6において得られた化合物は、約500nm〜600nmの波長領域において最大吸光ピークを示し、これより、緑色波長領域の光を選択的に吸収できることが分かる。また、前記波長領域においてシャープなピークを示すことにより、感度及び色純度を向上できることが分かる。
【0085】
これに対し、
図4を参照すると、比較合成例1において得られた化合物は、最大吸光ピークが約500nm未満で現れ、約500nm〜600nmの波長領域における吸光度が大きくないことが分かる。これにより、比較合成例1において得られた化合物は、合成例1〜6において得られた化合物よりも短波長領域の光を主に吸収することが分かる。
【0086】
また、
図5を参照すると、比較合成例2において得られた化合物は、約300nm〜約700nmの広い波長領域の光を吸収することが分かる。これにより、比較合成例2において得られた化合物は、緑色波長領域の光に対する選択性が低いことが分かる。
【0087】
これより、合成例1〜6において得られた化合物の方が、比較合成例1、2において得られた化合物と比較して、約500〜600nmの緑色波長領域の光を吸収する選択性が高いことが分かる。
【0089】
合成例4において得られた化合物を用いて薄膜を形成して、吸光特性の波長依存性を評価した。
前記吸光特性は、合成例4において得られた化合物を、熱蒸着器を用いて蒸着速度1A/sにて蒸着し、70nmの膜厚の薄膜を形成して、吸光特性の波長依存性を評価した。吸光特性は、Cary 5000 UV分光計(バリアン社製)を用いて、紫外線−可視光(UV−Vis)を照射して評価した。
【0090】
図6は、合成例4において得られた化合物を用いて形成された薄膜の吸光特性を示すグラフである。
図6を参照すると、合成例4において得られた化合物を用いて形成された薄膜は、約500nm〜600nmの波長領域において最大吸光ピークを示すことを確認できた。これにより、該薄膜が緑色波長領域の光を選択的に吸収できることが分かる。
【0093】
ガラス基板の上にITOをスパッタリングにより積層して約120nmの厚さのアノードを形成し、その上に正孔輸送層としてのMoOxを30nm蒸着した。その上にp型半導体物質としてのN,N’−ジメチルキナクリドン(N,N’−dimethyl quinacridone、NNQAと略)を熱蒸着して35nmの厚さのp型層を形成した。次いで、n型半導体物質である前記合成例4において得られた一般式6Aで表わされる化合物を熱蒸着して35nmの厚さのn型層を形成した。次いで、アルミニウム(Al)をスパッターリングにより積層して80nmの厚さのカソードを形成して有機光電素子を製作した。
【0095】
実施例1に係る有機光電素子の外部量子効率(EQE)の波長依存性を評価した。
外部量子効率は、IPCE計測システム(マックサイエンス社製、韓国)設備を用いて測定した。先ず、Siフォトダイオード(浜松社製、日本)を用いて設備のキャリブレーションを行い、実施例1に従い製造された有機光電素子を設備に取り付けた後、波長範囲350〜750nm領域における外部量子効率を測定した。
【0096】
図7は、実施例1に係る有機光電素子の、外部量子効率を波長の関数として示すグラフである。
図7を参照すると、実施例1に係る有機光電素子は、約500〜600nmの緑色波長領域において外部量子効率(EQE)の最大ピークを示し、具体的には、約550nmにおいて約27%の外部量子効率(EQE)を示すことが分かる。
【0098】
実施例1に係る有機光電素子に様々なバイアスを印加しながら電流密度を測定した。
図8は、実施例1に係る有機光電素子の電圧による電流密度を示すグラフである。
図8を参照すると、実施例1に係る有機光電素子は、逆電圧方向において電流の流れが抑えられるダイオード特性がよく現れていることが分かる。
【0100】
ガラス基板の上にITOをスパッターリングにより積層して約120nmの厚さのアノードを形成し、その上に正孔輸送層としてのMoOxを30nm蒸着した。その上にp型半導体物質としてのNNQAと合成例4において得られた前記一般式6Aで表わされる化合物をそれぞれ2:1の組成比で共蒸着して合計90nmの厚さの活性層を形成した。次いで、アルミニウム(Al)をスパッタリングにより積層して80nmの厚さのカソードを形成して有機光電素子を製作した。
【0102】
実施例2に係る有機光電素子の外部量子効率(EQE)の波長依存性を評価した。
外部量子効率は、IPCE計測システム(マックサイエンス社製、韓国)設備を用いて測定した。先ず、Siフォトダイオード(浜松社製、日本)を用いて設備のキャリブレーションを行い、実施例2に従い製造された有機光電素子を設備に取り付けた後、波長範囲350〜750nm領域における外部量子効率を測定することができた。
【0103】
図9は、実施例2に係る有機光電素子の外部量子効率を波長の関数として示すグラフである。
図9を参照すると、実施例2に係る有機光電素子は、約500〜600nmの緑色波長領域において外部量子効率(EQE)の最大ピークを示し、具体的には、約550nmにおいて約20.6%の外部量子効率(EQE)を示すことが分かる。
【0104】
また、実施例2に係る有機光電素子に様々な電圧を印加することにより、外部量子効率が変化することを確認できた。実施例2に係る有機光電素子は、可視光領域中の緑色を選択的に吸収して電流を発生するセンサーであり、微細な信号差を、電圧を印加して信号を増幅する機能が非常に重要である。
図9を参照すると、実施例2に係る有機光電素子は、−5Vまで印加したときに外部量子効率グラフが変形されることなく約65.7%の効率にて増幅されることが分かり、−3Vの低電圧において約55%の効率を確認できた。
【0106】
実施例2に係る有機光電素子に様々なバイアスを印加しながら電流密度を測定した。
【0107】
図10は、実施例2に係る有機光電素子の電圧による電流密度を示すグラフである。
図10を参照すると、実施例2に係る有機光電素子は、逆電圧方向において電流の流れが抑えられるダイオード特性がよく現れていることが分かる。
【0108】
以上、本発明の好適な実施例について詳述したが、本発明はこれに何ら限定されず、次の特許請求の範囲において定義している本発明の基本概念を用いた当業者の種々の変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属するものである。