【実施例1】
【0019】
本発明の第1の実施形態について説明する。本発明の理解を容易にするため、最初に従来の低圧タービン排気室の構造について
図1から
図3、
図5、および
図6を用いて説明した後、本実施形態に係る低圧タービン排気室の構造について
図4、
図13、および
図14を用いて説明する。
【0020】
図1は低圧タービン排気室の基本構造を模式的に表す側断面図、
図2は
図1中のI−I断面による断面図である。
図2において、ベアリングコーン3は説明のため図示を省略している。
【0021】
図1及び
図2に図示したタービン排気室101は、タービンロータ1を駆動させた後の排気を下方の復水器(図示せず)に導くものである。このタービン排気室101は、タービンロータ1を内包する低圧タービン内部車室2、タービンロータ1の軸受(図示せず)を取り囲むように設置されたベアリングコーン3、タービンロータ1に固定された最終段落を構成する動翼10の下流に、低圧タービン内部車室2の外周部に連続して設置された環状のフローガイド6、さらにこれら全てを取り囲むように形成された低圧タービン外部車室5を備えている。低圧タービンのタービン排気室101は、低圧タービン外部車室5の下方に開口している低圧排気室出口4を通じて下方の復水器と連結されている。ベアリングコーン3の外周側壁面とフローガイド6の内周側壁面および低圧タービン外部車室5の内壁面は、最終段動翼出口環帯11より排出された蒸気を、圧力回復を図りながら滑らかに下方の復水器に導く環状のディフューザ流路を形成している。
【0022】
図3は低圧タービン(図示せず)を覆う低圧タービン外部車室5の要部構造を示す図である。
図3では、低圧タービン外部車室5を、ロータ中心軸20を通る鉛直面と車室中央を通る鉛直面で切断して、4分の1対
称にして示している。低圧タービン外部車室5は、上下半分割構造を有し、低圧タービン外部車室上半部5a、及び低圧タービン外部車室下半部5bを有する。低圧タービン外部車室上半部5aと低圧タービン外部車室下半部5bは、ロータ中心軸20の位置で上下半分割されており、水平フランジ面30で接続している。低圧タービン外部車室下半部5bの外壁面には、タービン支持架台(図示せず)の上面上に設置されて外車室を支持するフート32が設けられている。また、低圧タービン外部車室下半部5bには、タービンロータ1を支承する軸受機器を覆うベアリングコーン3が設けられている。また、低圧タービン外部車室下半部5bのロータ中心軸に垂直な方向の内壁面間には、低圧タービン外部車室下半部5bを補強するため板状内部強度部材40が接合されている。
【0023】
次に低圧排気室内部の流れ場の様子と、内部強度部材が流れ場および圧力損失に与える影響を
図5乃至
図6を用いて概念的に説明する。
【0024】
図5は、比較的高性能の従来型低圧排気室に対する内部流れ解析結果の軸方向正面流線図である。図では簡単のため、流線は半面のみの表示としている。また、
図6は、
図5と同一解析結果の側面流線図である。なお、図の濃淡は流線の始点の違いを示すものであり、これにより流れ場の様子を視覚的に理解し易くしている。
図5から分かるように、比較的高性能を示す低圧排気室では、ディフューザ流路を通過する蒸気は、概ね放射状に流れた後、次第に合流しながら下流の復水器へ排出される。また、
図6から板状内部強度部材40の左右で流れが異なり、板状内部強度部材40が流れ場に大きな影響を与えることが分る。
【0025】
従来構造では、板状内部強度部材40は必ずしも排気室の性能面を優先して配置してあるわけではなく、主に強度上の要請を優先して配置されていた。そのため、一般的に低圧排気室の流路性能は、理想的な状態より劣化していると考えられる。特に、板状内部強度部材40のような内車支持に用いられている板材(図)は、低圧排気室下半部の内部流路を強制的に複数の少数流路に分割するので、ディフューザ流路から排出した蒸気はそれぞれの少流路に等分配されずに一部に偏った流量配分となり易い。実際、流体解析により流れ場を詳細に分析すると、多くの場合で各小部屋への蒸気の流量配分は偏り、結果的に流速の速い領域と遅い領域が生じていることが分かった。排気室で生じる流体の損失は主に、蒸気の混合によるものと、壁面での摩擦によるものの2つであるが、どちらも流速の二乗に比例して大きくなるので、局所的に流速の速い領域があると、全体的に平均化した流れの場合よりも圧力損失が大きくなる。
【0026】
ところで、低圧排気室の流路性能に大きな影響を与える大型の部材である、板状内部強度部材40は、少なくともその一端を低圧タービン外部車室5の内壁面に接続する必要がある。そして低圧タービン外部車室5は、回転翼を供えたロータを内包する必要があるため、一般的に水平面で上下に二分割された構造をとる。また、組立性の理由からタービン外車室下半部5bでロータや低圧タービン内部車室2を支持する必要があるため、板状内部強度部材40等の大型内部部材はタービン外車室下半部5b側に設置する必要がある。
【0027】
ところが上記のように、タービン外車室下半部5bが水平面で二分割されているために、大型の内部部材の形状変更幅を大きく取ることが困難であり、結果的に大きな損失低減効果を得ることが難しい。そこで、本発明は、上記したような問題点を解決するものである。
【0028】
本発明の第1の実施形態を
図4、および
図7から
図13までを用いて説明する。
図4は、本発明の一実施の形態に係る低圧蒸気タービン外車室の要部構造を示す斜視図である。
【0029】
低圧タービン外部車室上半部5aと低圧タービン外部車室下半部5bの接続面である水平フランジ面31の一部が、ロータ中心軸を通る水平面より上方に形成され、板状内部強度部材41の端面の一部が、タービン外部車室下半部5bでありかつロータ中心軸を通る水平面より上方の内壁面で接合されている。この時用いられる、板状内部強度部材41は、流路損失を低減するように形状変更されている。
【0030】
図7は、従来型低圧排気室の板状内部強度部材40の一例を示す軸方向正面図である。また
図8は、本発明に係る実施形態に合わせて適用される板状内部強度部材41の第1の例を示す軸方向正面図である。従来例でも、この様に板状部材の一部を切り欠いて用いることはあるが、本発明では上下方向に、より大きい開口スペースをとることができる。また、流れを妨げる元となる外車室壁面への接合部の位置を、低圧排気室の上側つまり、合流前でより低流量側となる流れの上流側に取ることができる。このような理由で、従来型の構造に比べて損失低減効果を高めることが可能となる。
【0031】
図9と
図10は、それぞれ本発明に係る実施形態に合わせて適用される板状内部強度部材41の、第2と第3の例を示す軸方向正面図である。
図8の構造の代わりに、
図9に示した下方に凸する略V字型の板状内部強度部材41a、または
図10に示した下方に凸する略弓形の板状内部強度部材41bのような構造、あるいはこれらに準じた構造でも効果が期待できることは言うまでもない。
図11は、標準的な板状内部強度部材を用いた従来型の低圧排気室を示す軸方向正断面図である。また
図12は、改良型の板状内部強度部材を用いた従来型の低圧排気室を示す軸方向正断面図である。さらに
図13は、本発明に係る第1の実施形態を示す軸方向正断面図である。ここで、断面の軸方向位置は
図1のI−Iに対応している。
図12と
図13を見比べることにより、本発明では上下方向に、より大きい開口スペースをとることができることが分る。
【0032】
このように本実施例のタービン排気室構造によれば、大型の内部部材の形状変更幅を、従来型の低圧排気室に比べて大きく取ることが可能であるため、従来型の低圧排気室よりも高い損失低減効果が得られる。
【0033】
以上、本実施例のタービン排気室構造は、CFD解析結果から得られた知見に基づいて考案したものであり、その効果を従来技術と比較して、より確実に期待できる。
【0034】
従って、本実施例のタービン排気室構造によれば、現状の低圧タービン内外車室寸法やロータの支持構造などの基本仕様を変更することなく、内部構造部材の改良による圧力損失低減効果を最大限に発揮させることができる蒸気タービンの低圧排気室を提供することができる。
【0035】
また、既設の従来型タービン排気室に換えて、本実施例に係わる低圧タービン外部車室および内部強度部材を設置しても良い。