(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フッ素含有アニオンがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、トリフルオロ酢酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン及びモノフルオロリン酸イオンから選ばれる1種以上である、請求項2に記載の水溶性ポリマー組成物。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[水溶性ポリマー組成物]
本発明の水溶性ポリマー組成物は、フッ素を含有する塩とカチオン化グリセロール化セルロース(以下、「CGC」ともいう)とを含有する。
【0008】
<CGCに対するフッ素を含有する塩の添加量>
本発明に用いるCGCに対するフッ素を含有する塩の添加量は、毛髪化粧料組成物に用いた際に、毛髪を処理した後のすすぎ時における良好なすべり性及びその持続感を得る観点から、CGCのカチオン基1モルに対するフッ素を含有する塩のモル比〔モル/カチオン基〕で、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上であり、また、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.1以下である。
その中でも、上記のすべり性及び持続性を向上させる観点に加え、経済性を向上させると共に持続性をより向上させる観点から、当該添加量はモル比〔モル/カチオン基〕で、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。
また、上記のすべり性及び持続性を向上させる観点に加え、皮膚洗浄剤組成物に用いた際に、皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、当該添加量はモル比〔モル/カチオン基〕で、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上である。
【0009】
<CGCの含有量>
本発明の水溶性ポリマー組成物中におけるCGCの含有量は、予め製造した水溶性ポリマー組成物を用いて、毛髪化粧料組成物又は皮膚洗浄剤組成物に添加する場合の配合容易性の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上、より更に好ましくは0.50質量%以上である。そして、水溶性ポリマー組成物の取り扱い性の観点から、好ましくは90質量%、より好ましくは20質量%以下が、更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
【0010】
前記水溶性ポリマー組成物の形態は、フッ素を含有する塩とCGCの混合物、又はそれらを水に添加した水溶液であってもよい。
【0011】
<フッ素を含有する塩>
本発明に用いるフッ素を含有する塩は、フッ素含有アニオンの塩であることが好ましい。このフッ素を含有する塩としては、入手性の観点から、具体的には、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、及びカルシウム塩等から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0012】
(フッ素含有アニオン)
フッ素含有アニオンとしては、無機アニオン及び有機アニオンの一方又は双方であってもよい。その中でも、毛髪化粧料組成物に用いた際に、毛髪を処理した後のすすぎ時における良好なすべり性及びその持続感を得る観点、及び皮膚洗浄剤組成物に用いた際に、皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、前記フッ素含有アニオンは、無機アニオン又は炭素数8以下の有機アニオンが好ましく、無機アニオン又は炭素数5以下の有機アニオンがより好ましく、無機アニオン又は炭素数2以下の有機アニオンが更に好ましく、無機アニオンがより更に好ましい。
無機アニオンとしては、好ましくはヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、モノフルオロリン酸イオンが、より好ましくはヘキサフルオロリン酸イオンが挙げられる。
有機アニオンとしては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、トリフルオロ酢酸イオン、ペンタフルオロプロパン酸イオン、2,2,3,3,−テトラフルオロプロピオン酸イオン、ヘプタフルオロブタン酸イオン、ノナフルオロペンタン酸イオン、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンタン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、フルオロ安息香酸イオン、ペンタフルオロ安息香酸イオン、ウンデカフルオロヘキサン酸イオン、ドデカフルオロヘプタン酸イオン、トリデカフルオロヘプタン酸イオン、ペンタデカフルオロオクタン酸イオン、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸イオン等が挙げられる。その中でも、好ましくは、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、トリフルオロ酢酸イオンが挙げられる。
【0013】
〔フッ素含有アニオンの分子量〕
本発明に用いるフッ素含有アニオンの分子量は、毛髪化粧料組成物に用いた際に、毛髪を処理した後のすすぎ時における良好なすべり性及びその持続感を得る観点、及び皮膚洗浄剤組成物に用いた際に、皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、好ましくは20以上、より好ましくは50以上、更に好ましくは100以上であり、そして、好ましくは500以下、より好ましくは400以下、更に好ましくは300以下、より更に好ましくは200以下である。
【0014】
<カチオン化グリセロール化セルロース(CGC)>
本発明に用いるCGCは、下記一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖を有し、かつ該アンヒドログルコース単位あたりのカチオン化オキシアルキレン基の置換度が0.01以上0.18以下であることが好ましく、グリセロール基の置換度が0.5以上5.0以下であることが好ましい。
【0016】
一般式(1)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、下記式(2)〜(5)から選ばれる1種以上の繰り返し単位からなる置換基、又は水素原子を示す。nはアンヒドログルコース由来の主鎖の平均重合度を示し、100以上12000以下の数である。
【0018】
式(2)〜(5)において、式(2)又は(3)で表される繰り返し単位構造はカチオン化オキシアルキレン基を示し、式(4)又は(5)で表される繰り返し単位構造はグリセロール基を示す。R
4〜R
9は、それぞれ独立に炭素数1以上3以下の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、X
-及びY
-はアニオンを示し、r及びsは0以上3以下のいずれかの整数であることが好ましい。式(2)〜(5)で表される繰り返し単位構造において、酸素原子は、水素原子又は他の繰り返し単位の炭素原子と結合している。
【0019】
(置換基R
1、R
2及びR
3)
前記一般式(1)において、置換基R
1が、式(2)〜(5)から選ばれる1種以上の繰り返し単位からなる置換基である場合、置換基R
1は、式(2)〜(5)から選ばれる複数の繰り返し単位からなる置換基であってもよいし、式(2)〜(5)から選ばれるただ一つの繰り返し単位の酸素原子に、水素原子が結合した置換基であってもよい。
また、置換基R
1が、式(2)〜(5)から選ばれる複数の繰り返し単位からなる置換基である場合、繰り返し単位同士は、一方の繰り返し単位の酸素原子と他方の繰り返し単位の炭素原子とで結合しており、他の繰り返し単位の炭素原子と結合していない酸素原子、即ち、置換基の末端に位置する酸素原子は、水素原子と結合している。
また、繰り返し単位の組合せに特に限定はなく、式(2)〜(5)から選ばれる1種の繰り返し単位が複数結合していてもよいし、式(2)〜(5)から選ばれる2〜4種の繰り返し単位が結合していてもよい。一般式(1)中、R
1がカチオン化オキシアルキレン基及びグリセロール基を有する置換基である場合、カチオン化オキシアルキレン基とグリセロール基の結合様式は、ブロック結合、ランダム結合、又は交互結合のいずれであってもよいが、製造の容易さの観点から、ブロック結合であることが好ましい。
式(2)〜(5)から選ばれる複数の繰り返し単位からなる置換基の具体例としては、例えば、下記式(6)〜(8)で表される構造を挙げることができる。
【0021】
置換基R
1が式(2)〜(5)から選ばれる1種以上の繰り返し単位からなる置換基である場合、その末端の炭素原子は、アンヒドログルコース由来の主鎖の水酸基の酸素原子に結合している。
なお、置換基R
1は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、式(2)〜(5)の繰り返し単位以外の構造の繰り返し単位を含んでいてもよい。
置換基R
2が式(2)〜(5)から選ばれる1種以上の繰り返し単位からなる置換基である場合の該置換基の態様は、前記の置換基R
1が式(2)〜(5)から選ばれる1種以上の繰り返し単位からなる置換基である場合の態様と同様である。
置換基R
3が式(2)〜(5)から選ばれる1種以上の繰り返し単位からなる置換基である場合の該置換基の態様は、前記の置換基R
1が式(2)〜(5)から選ばれる1種以上の繰り返し単位からなる置換基である場合の態様と同様である。
置換基R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立であり、互いに同一でもよく異なってもいてもよい。
【0022】
〔式(2)又は(3)で表されるカチオン化オキシアルキレン基〕
前記式(2)又は(3)において、R
4〜R
9は、それぞれ独立に炭素数1以上3以下の直鎖又は分岐のアルキル基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。これらの中では、CGCの水溶性の観点、及び原料の入手性の観点から、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
式(2)又は(3)において、X
-及びY―は、4級アンモニウムイオンの対イオンであるアニオンを示す。X
-及びY
-は、本発明に用いるフッ素含有アニオン以外のアニオンであれば特に限定されず、具体例としては炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1以上3以下の脂肪酸イオン、及びハロゲン化物イオンから選ばれる1種以上が挙げられる。
これらの中では、製造の容易さの観点から、炭素数1以上3以下のアルキル硫酸イオン、硫酸イオン及びハロゲン化物イオンから選ばれる1種以上が好ましく、ハロゲン化物イオンがより好ましい。ハロゲン化物イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオンから選ばれる1種以上が挙げられるが、CGCの水溶性及び化学的安定性の観点から、塩化物イオン、臭化物イオンから選ばれる1種以上が好ましく、塩化物イオンがより好ましい。
r及びsは0以上3以下の整数であることが好ましく、原料の入手の容易さの観点から、r及びsは1であることがより好ましい。
【0023】
(カチオン化オキシアルキレン基の置換度)
本発明に用いるCGCにおいて、カチオン化オキシアルキレン基の置換度(以下、「MS(N+)」ともいう)とは、CGCの分子中に存在するカチオン化オキシアルキレン基の数の、主鎖を構成するアンヒドログルコース単位1つあたりに対する平均値をいう。MS(N+)は、後述の実施例に記載の方法により測定され、算出される。
本発明に用いるCGCにおけるMS(N+)は、毛髪化粧料組成物に用いた際に、毛髪を処理した後のすすぎ時における良好なすべり性及びその持続感を得る観点、及び皮膚洗浄剤組成物に用いた際に、皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.06以上、より更に好ましくは0.08以上、より更に好ましくは0.1以上であり、そして、好ましくは0.18以下、より好ましくは0.16以下、更に好ましくは0.13以下である。
【0024】
(グリセロール基の置換度)
本発明においてグリセロール基の置換度(以下、「MS(Gly)」ともいう)とは、CGC分子中に存在するグリセロール基の数の、主鎖を構成するアンヒドログルコース単位1つあたりに対する平均値をいう。MS(Gly)は、後述の実施例に記載の方法により測定され、算出される。
本発明に用いるCGCのMS(Gly)は、毛髪化粧料組成物に用いた際に、毛髪を処理した後のすすぎ時における良好なすべり性及びその持続感を得る観点、及び皮膚洗浄剤組成物に用いた際に、皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点、水溶性ポリマー組成物、毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物へのCGCの溶解性を向上させる観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.8以上、より更に好ましくは1.0以上であり、上記の観点、及び経済性の観点から、MS(Gly)は、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは2.5以下、より更に好ましくは2.0以下、より更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1.3以下である。
【0025】
(その他の置換基)
本発明に用いるCGCにおいて、カチオン化オキシアルキレン基、及びグリセロール基以外に置換していてもよい置換基としては、疎水基が挙げられる。ここで疎水基とは、炭素数3以上の炭化水素基を指す。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルカリール基等が挙げられる。
本発明に用いるCGCにおいて、疎水基の置換度は、製造の容易さの観点から、好ましくは0.01未満、より好ましくは0.005以下、更に好ましくは0.001以下、より更に好ましくは0である。
疎水基の置換度とは、CGCの分子中に存在する前記疎水基の数の、主鎖を構成するアンヒドログルコース単位1つあたりに対する平均値をいう。
疎水基の置換度は、Analytical Chemistry, Vol.51, No.13, 2172(1979)、「第十五改正日本薬局方(ヒドロキシプロピルセルロースの分析方法の項)」等に記載の、セルロースエーテルのアルコキシ基の平均付加モル数を分析する手法として知られるZeisel法に準じた方法で得られる、CGC中に含有される疎水基の含有量%(質量%)から算出することができる。
【0026】
(カチオン電荷密度)
本発明に用いるCGCのカチオン電荷密度は、毛髪化粧料組成物に用いた際に、毛髪を処理した後のすすぎ時における良好なすべり性及びその持続感を得る観点、及び皮膚洗浄剤組成物に用いた際に、皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、好ましくは0.05mmol/g以上、より好ましくは0.1mmol/g以上、更に好ましくは0.2mmol/g以上、より更に好ましくは0.25mmol/g以上、より更に好ましくは0.3mmol/g以上であり、そして、好ましくは0.8mmol/g以下、より好ましくは0.7mmol/g以下、更に好ましくは0.6mmol/g以下、より更に好ましくは0.5mmol/g以下である。
本発明において、カチオン電荷密度とは、CGC1gあたりに含まれる、カチオン電荷のモル数をいい、下記計算式より、算出される。
カチオン電荷密度(mmol/g)=MS(N+)/(74.1×MS(Gly)+a×MS(N+)+162.1)×1000
(式中、aはカチオン化オキシアルキレン基の分子量を示す。)
【0027】
(CGCの平均重合度)
本発明に用いるCGCにおいて、アンヒドログルコース由来の主鎖の平均重合度nとは、銅−アンモニア法により測定される粘度平均重合度をいう。
前記平均重合度nは、毛髪化粧料組成物に用いた際に、毛髪を処理した後のすすぎ時における良好なすべり性及びその持続感を得る観点、及び皮膚洗浄剤組成物に用いた際に、皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、好ましくは100以上であり、より好ましくは200以上、更に好ましくは500以上、より更に好ましくは1000以上である。また、毛髪化粧料組成物に用いた際に、毛髪を処理した後のすすぎ時における良好なすべり性及びその持続感を得る観点、及び皮膚洗浄剤組成物に用いた際に、皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点、本発明に用いるCGCを含有する水溶性ポリマー組成物、毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物の粘度増加抑制、及び水への溶解性の観点から、前記平均重合度nは、好ましくは12000以下、より好ましくは10000以下、更に好ましくは5000以下、より更に好ましくは2500以下である。
【0028】
(カチオン化グリセロール化セルロースの水溶液粘度)
本発明において、水溶液粘度とは、B型粘度計を用い、25℃において測定した1質量%水溶液の粘度をいい、具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
一般にセルロース誘導体の平均重合度nと、そのセルロース誘導体の水溶液粘度は相関があり、平均重合度nが高いほど水溶液粘度が高いことが知られている。水溶液粘度は平均重合度のみならず、溶質の電荷密度、不溶性分・半可溶成分の存在、架橋等によって変化するが、CGCの水溶液粘度は、毛髪化粧料組成物に用いた際に、毛髪を処理した後のすすぎ時における良好なすべり性及びその持続感を得る観点、及び皮膚洗浄剤組成物に用いた際に、皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、好ましくは1mPa・s以上、より好ましくは10mPa・s以上、更に好ましくは20mPa・s以上である。また、配合した水溶性ポリマー組成物の取り扱い性の観点、毛髪化粧料組成物に用いた際に、毛髪を処理した後のすすぎ時における良好なすべり性及びその持続感を得る観点、及び皮膚洗浄剤組成物に用いた際に、皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、CGCの水溶液粘度は好ましくは100000mPa・s以下、より好ましくは10000mPa・s以下、更に好ましくは6000mPa・s以下である。
【0029】
(カチオン化グリセロール化セルロース(CGC)の製造)
本発明に用いるCGCは、セルロースを、本発明に用いるCGCのカチオン化オキシアルキレン基に対応するカチオン化剤(以下、単に「カチオン化剤」ともいう)、及びグリセロール化剤と反応させることにより製造できる。ここで、グリセロール化反応及びカチオン化反応の順序は特に限定されず、どちらを先に行ってもよく、同時に行ってもよく、交互に繰り返し行ってもよいが、カチオン化オキシアルキレン基のセルロース骨格への導入を先に行った場合、グリセロール化剤基準のグリセロール化反応の収率は低下しやすいため、最初にグリセロール化反応を行い、その後にカチオン化反応を行うことが好ましい。
CGCの製造方法としては、一般にセルロースは高い結晶性を持ち、反応性に乏しいため、反応前にその結晶性を低下させ、反応性を改善させる処理を行うことが好ましい。例えば、以下の方法(i)〜(iii)を挙げることができる。
方法(i):一般にアルセル化又はマーセル化と呼ばれる活性化方法、すなわち、原料セルロースと大量の水、及び大過剰のアルカリ金属水酸化物を混合して、アルカリセルロースを得た後、グリセロール化剤及びカチオン化剤と反応させる方法。
方法(ii):セルロースを、例えば、テトラブチルアンモニウムフルオリドを含むジメチルスルホキシド、パラホルムアルデヒドを含むジメチルスルホキシド、塩化リチウムを含むジメチルアセトアミド等の溶媒、「セルロースの事典、編者:セルロース学会、発行所:株式会社朝倉書店」、Macromol.Chem.Phys.201,627−631(2000)等に記載されるセルロースの溶解が可能な溶媒を用い、原料セルロースを溶解させ、その後原料セルロースとグリセロール化剤及びカチオン化剤を反応させる方法。
方法(iii):前記(i)や(ii)の方法のように、過剰の水、アルカリ、及びセルロースを溶解可能な特殊な溶媒を用いず、粉末状、ペレット状、チップ状又は綿状の原料セルロースとグリセロール化剤及びカチオン化剤をアルカリ共存下に反応させる方法。
以下、本発明に用いるCGCの製造原料に用いられるセルロース、グリセロール化剤、カチオン化剤、及び活性化法等について述べる。
【0030】
(原料セルロース)
本発明に用いられるCGCの原料に用いられるセルロース(以下、「原料セルロース」ともいう)の種類に、特に制限はなく、一般に、市販のパルプ類、バイオマス資源として利用される紙類、植物茎・葉類、植物穀類、間伐材、剪定枝材、建築廃材等の木材類を用いることができるが、セルロース純度、重合度、及び入手の容易さの観点から、各種木材チップ;木材から製造されるウッドパルプ、綿の種子の周囲の繊維から得られるコットンリンターパルプ等のパルプ類が好ましい。
原料セルロースの平均重合度は、毛髪化粧料組成物に用いた際に、毛髪を処理した後のすすぎ時における良好なすべり性及びその持続感を得る観点、及び皮膚洗浄剤組成物に用いた際に、皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、更に好ましくは500以上、より更に好ましくは1000以上であり、同様の観点から、好ましくは12000以下、より好ましくは10000以下、更に好ましくは5000以下、より更に好ましくは2500以下である。
原料セルロースの平均重合度とは、銅−アンモニア法等により測定される粘度平均重合度をいう。
原料セルロースの形状は、製造装置内への導入に支障がない限り特に限定されないが、操作上の観点から、シート状、ペレット状又はチップ状や、綿状、粉末状であることが好ましく、チップ状、綿状又は粉末状がより好ましく、綿状又は粉末状が更に好ましい。チップ状セルロースは、例えば原料セルロースを、裁断処理することで得ることができ、綿状または粉末状セルロースは、例えば原料セルロース又は裁断処理を行った原料セルロースを、必要に応じて乾燥処理を行った後、粉砕処理することで得ることができる。
【0031】
〔裁断処理〕
原料セルロースの種類や形状によっては、粉砕処理の前処理として裁断処理を行うことが好ましい。原料セルロースを裁断する方法は、原料セルロースの種類や形状により適宜の方法を選択することができるが、例えば、シュレッダー、スリッターカッター及びロータリーカッターから選ばれる1種以上の裁断機を使用する方法が挙げられる。
シート状の原料セルロースを用いる場合、裁断機としてシュレッダー又はスリッターカッターを使用することが好ましく、生産性の観点から、スリッターカッターを使用することがより好ましい。
スリッターカッターは、シートの長手方向に沿った縦方向にロールカッターで縦切りして、細長い短冊状とし、次に、固定刃と回転刃でシートの幅方向に短く横切りする裁断機であって、スリッターカッターを用いることにより、原料セルロースの形状をさいの目形状にすることができる。スリッターカッターとしては、株式会社ホーライ製のシートペレタイザを好ましく使用でき、この装置を使用すると、シート状の原料セルロースを約1〜20mm角に裁断することができる。
【0032】
間伐材、剪定枝材、建築廃材等の木材類、あるいはシート状以外の原料セルロースを裁断する場合には、ロータリーカッターを使用することが好ましい。ロータリーカッターは、回転刃とスクリーンから構成され、ロータリーカッターを用いることにより、回転刃によりスクリーンの目開き以下の大きさに裁断された原料セルロースを容易に得ることができる。なお、必要に応じて固定刃を設け、回転刃と固定刃により裁断することもできる。
ロータリーカッターを使用する場合、得られる粗粉砕物の大きさは、スクリーンの目開きを変えることにより、制御することができる。
【0033】
裁断処理後に得られる原料セルロースの大きさとしては、生産性の観点から、好ましくは1mm角以上、より好ましくは2mm角以上であり、後の粉砕処理における粉砕に要する負荷を軽減する観点、及び後述する乾燥処理を効率良く容易に行う観点から、好ましくは70mm角以下、より好ましくは50mm角以下である。
【0034】
〔乾燥処理〕
原料セルロースを粉砕処理する際の水分含量は、少ない方が好ましい。粉砕処理時の水分含量の下限は、原料セルロースに対して0質量%であるが、生産性の観点から、該水分含量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。また、原料セルロースの粉砕効率の観点から、該水分含量は好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、更に好ましくは4質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
一般に、市販のパルプ類、バイオマス資源として利用される紙類、木材類、植物茎・葉類、植物殻類等の原料セルロースは、5質量%を超える水分を含有しており、通常5〜30質量%程度の水分を含有している。したがって、原料セルロース、好ましくは裁断処理後に得られる原料セルロースの乾燥処理を行うことによって、原料セルロースの水分含量を調整することが好ましい。
【0035】
乾燥方法としては、公知の乾燥手段を適宜選択すればよく、例えば、熱風受熱乾燥法、伝導受熱乾燥法、除湿空気乾燥法、冷風乾燥法、マイクロ波乾燥法、赤外線乾燥法、天日乾燥法、真空乾燥法、凍結乾燥法等が挙げられる。
上記の乾燥方法において、公知の乾燥機を適宜選択して使用することができ、例えば、「粉体工学概論」(社団法人日本粉体工業技術会編集 粉体工学情報センター1995年発行)176頁に記載の乾燥機等が挙げられる。
これらの乾燥方法及び乾燥機は1種以上を組み合わせて使用してもよい。乾燥処理はバッチ処理、連続処理のいずれでも可能であるが、生産性の観点から、連続処理が望ましい。
【0036】
〔粉砕処理〕
粉砕処理で用いられる粉砕機に特に制限はなく、原料セルロースを粉末化又は綿状化できる装置であればよい。
粉砕機の具体例としては、高圧圧縮ロールミルや、ロール回転ミル等のロールミル、リングローラーミル、ローラーレースミル又はボールレースミル等の竪型ローラーミル、転動ボールミル、振動ボールミル、振動ロッドミル、振動チューブミル、遊星ボールミル又は遠心流動化ミル等の容器駆動媒体ミル、塔式粉砕機、攪拌槽式ミル、流通槽式ミル又はアニュラー式ミル等の媒体攪拌式ミル、高速遠心ローラーミルやオングミル等の圧密せん断ミル、乳鉢、石臼、マスコロイダー、フレットミル、エッジランナーミル、ナイフミル、ピンミル、カッターミル等が挙げられる。
これらの中では、セルロースの粉砕効率、生産性、及び後のグリセロール化等の反応収率向上の観点から、容器駆動式媒体ミル又は媒体攪拌式ミルが好ましく、容器駆動式媒体ミルがより好ましく、振動ボールミル、振動ロッドミル又は振動チューブミル等の振動ミルが更に好ましく、振動ロッドミルがより更に好ましい。粉砕方法としては、バッチ式、連続式のどちらでもよい。
【0037】
粉砕処理の時間は、原料セルロースが粉末化又は綿状化されるよう、適宜調整すればよい。粉砕処理の時間は、用いる粉砕機や使用するエネルギー量等によって変わるが、通常10秒間以上12時間以下である。原料セルロースを十分に粉末化又は綿状化させる観点から、粉砕処理時間は好ましくは15秒間以上、より好ましくは1分間以上であり、生産性の観点から、好ましくは3時間以下、より好ましくは1時間以下、更に好ましくは20分間以下である。
【0038】
(グリセロール化剤)
本発明に用いるCGCの製造に用いられるグリセロール化剤としては、グリシドール;3−クロロ−1,2−プロパンジオール、3−ブロモ−1,2−プロパンジオール等の3−ハロ−1,2−プロパンジオール;グリセリン;グリセリンカーボネート等から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中では、塩が副生しないこと、及び反応性の観点から、グリシドールが好ましい。これらのグリセロール化剤は、1種以上を組み合わせて用いることができる。
使用するグリセロール化剤の量は、所望するMS(Gly)を考慮して適宜選択すればよいが、CGCの水溶性の観点、毛髪化粧料組成物に用いた際に、毛髪を処理した後のすすぎ時における良好なすべり性及びその持続感を得る観点、及び皮膚洗浄剤組成物に用いた際に、皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、原料セルロースのアンヒドログルコース単位(以下、「AGU」ともいう)1モルに対し、好ましくは0.2モル以上、より好ましくは0.4モル以上、更に好ましくは1モル以上、より更に好ましくは5モル以上であり、好ましくは60モル以下、より好ましくは20モル以下、更に好ましくは10モル以下である。
グリセロール化剤の添加方法は、一括、間欠、連続のいずれでもよいが、原料セルロースへのグリセロール化剤の反応収率を高める観点から、連続添加が好ましい。
【0039】
(カチオン化剤)
本発明に用いるCGCの製造に用いられるカチオン化剤としては、下記一般式(9)又は(10)で表される化合物等が挙げられる。
【0041】
一般式(9)又は(10)中、R
10〜R
15及びその好ましい態様は、前記一般式(2)及び(3)のR
4〜R
9と同様である。t、u及びその好ましい整数は、前記式(2)のr、及び前記式(3)のsと同様である。Q
-、W
-及びその好ましい態様は、前記式(2)のX
-、及び前記式(3)のY
-と同様である。Zはハロゲン原子を示す。R
10〜R
15は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
前記一般式(9)又は(10)で表される化合物の具体例としては、グリシジルトリメチルアンモニウム、グリシジルトリエチルアンモニウム、グリシジルトリプロピルアンモニウムの塩化物、臭化物又はヨウ化物や、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム、又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムの塩化物、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム、又は3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムの臭化物や、3−ヨード−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、3−ヨード−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウム、又は3−ヨード−2−ヒドロキシプロピルトリプロピルアンモニウムのヨウ化物が挙げられる。
これらの中では、原料の入手性及び化学的安定性の観点から、グリシジルトリメチルアンモニウム又はグリシジルトリエチルアンモニウムの塩化物又は臭化物;3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムの塩化物;3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム又は3−ブロモ−2−ヒドロキシプロピルトリエチルアンモニウムの臭化物から選ばれる1種以上が好ましく、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド又は3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドから選ばれる1種以上がより好ましく、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライドが更に好ましい。
これらのカチオン化剤は、1種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
使用するカチオン化剤の量は、所望するMS(N+)と反応収率とを考慮して適宜選択すればよいが、CGCの水溶性の観点、毛髪化粧料組成物に用いた際に、毛髪を処理した後のすすぎ時における良好なすべり性及びその持続感を得る観点、及び皮膚洗浄剤組成物に用いた際に、皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、原料セルロースのAGU1モルに対し好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.1モル以上、更に好ましくは0.3モル以上であり、そして、好ましくは10モル以下、より好ましくは8モル以下、更に好ましくは5モル以下、より更に好ましくは1モル以下である。
カチオン化剤の添加方法は一括、間欠、連続のいずれでもよいが、原料セルロースへのカチオン化の反応収率を高める観点から、連続添加が好ましい。
【0044】
(アルカリ化合物)
本発明に用いるCGCは、好ましくは上記粉砕処理を行って得られた粉末セルロース又は綿状セルロースと、前記のグリセロール化剤及びカチオン化剤とを反応させて、グリセロール化反応及びカチオン化反応を行うことにより得ることができる。これらの反応は、いずれもアルカリ化合物共存下で行う。該反応で用いられるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の3級アミン類等が挙げられる。
これらの中ではグリセロール化反応及びカチオン化反応の反応速度の観点から、アルカリ金属水酸化物、又はアルカリ土類金属水酸化物が好ましく、アルカリ金属水酸化物がより好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが更に好ましい。これらのアルカリ化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
アルカリ化合物の添加方法に特に限定はなく、一括添加でも、分割添加でもよい。また、アルカリ化合物は固体状態で添加してもよく、水溶液としてから添加してもよい。
【0045】
前記方法(i)の場合を除き、グリセロール化反応において用いられるアルカリ化合物の量は、アルカリ化合物がアルカリ金属水酸化物や分子中に1つの3級アミンを有する化合物等の1価の塩基化合物である場合は、セルロースの反応活性の向上、及びグリセロール化反応剤の反応選択性の観点から、原料セルロースのAGU1モルに対して、好ましくは0.2モル以上、より好ましくは0.7モル以上、更に好ましくは0.8モル以上であり、同様の観点から、好ましくは2.0モル以下、より好ましくは1.3モル以下、更に好ましくは1.2モル以下である。
前記方法(i)の場合を除き、カチオン化反応において用いられるアルカリ化合物の量は、アルカリ化合物が1価の塩基化合物の場合は、反応剤の反応選択性の観点から、原料セルロースのAGU1モルに対して、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.05モル以上、更に好ましくは0.1モル以上であり、同様の観点から、好ましくは1.0モル以下、より好ましくは0.8モル以下、更に好ましくは0.5モル以下である。
グリセロール化反応、又はカチオン化反応において用いられるアルカリ化合物がアルカリ土類金属水酸化物等の多価塩基である場合、用いられるアルカリ化合物の量の好ましい範囲は、上記それぞれの反応におけるアルカリ化合物の好ましい量の範囲を、該多価塩基価数で除した範囲である。例えば用いられるアルカリ化合物が水酸化カルシウム(2価の塩基)である場合、グリセロール化反応において用いられる水酸化カルシウムの量は、前記方法(i)の場合を除き、セルロースの反応活性の向上、及びグリセロール化反応剤の反応選択性の観点から、原料セルロースのAGU1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.35モル以上、更に好ましくは0.4モル以上であり、同様の観点から、好ましくは1.0モル以下、より好ましくは0.65モル以下、更に好ましくは0.6モル以下である。
【0046】
本発明に用いるCGCは、好ましくは上記粉砕処理を行って得られた粉末セルロース又は綿状セルロースと、前記のグリセロール化剤及びカチオン化剤とを反応させて、グリセロール化反応及びカチオン化反応を行うことにより得ることができる。以下、グリセロール化反応及びカチオン化反応を総称して、「CGC製造時の各反応」ともいう。
CGC製造時の各反応において、グリセロール化剤及びカチオン化剤の添加時の形態に特に制限はない。グリセロール化剤及びカチオン化剤が液体状態である場合はそのまま用いてもよいし、水や非水溶剤等の、グリセロール化剤やカチオン化剤の良溶剤で希釈した形で用いてもよい。
希釈に用いる非水溶剤としては、一般的に使用されるイソプロパノール、tert−ブタノール等の2級又は3級の炭素数3以上4以下の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の炭素数3以上6以下のケトン;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル溶媒;ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。
CGC製造時の各反応は、前記方法(ii)においては、反応時にセルロースの溶解が可能な溶媒を用い、原料セルロースを溶解させて反応を行うが、方法(i)及び(iii)においても、グリセロール化剤及びカチオン化剤の反応収率の観点から、非水溶剤の存在下に行うこともできる。その非水溶剤としては、上記と同じ非水溶剤を用いることができる。
【0047】
上記CGC製造時の各反応に用いる装置としては、レディゲミキサー等のミキサーや、粉体、高粘度物質、樹脂等の混錬に用いられる、いわゆるニーダー等の混合機を挙げることができる。
CGC製造時の各反応の反応時の温度は、反応速度の観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上である。また、グリセロール化剤、カチオン化剤の分解抑制から、好ましくは200℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
CGC製造時の各反応の反応時間は、グリセロール化剤及びカチオン化剤の反応速度、所望のエーテル基の導入量等により適宜調整すればよい。反応時間は通常0.1時間以上72時間以下であり、反応収率及び生産性の観点から、好ましくは0.2時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上、より更に好ましくは3時間以上である。また、好ましくは36時間以下、より好ましくは18時間以下、更に好ましくは12時間以下、より更に好ましくは8時間以下である。
なお、CGC製造時の各反応は、着色、及びアンヒドログルコース由来の主鎖の分子量低下を抑制する観点から、それぞれ必要に応じて窒素等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0048】
反応終了後は、酸を用いてアルカリ化合物を中和することができる。グリセロール化反応及びカチオン化反応を別個に行う際には、各反応間で中和を行うこともできるが、中和塩の生成を抑制する観点から、全ての反応の終了後に行うことが好ましい。酸としては、硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸、酢酸、乳酸等の有機酸を用いることができる。
CGC製造時のすべての反応終了後に得られたCGCは、必要に応じて、濾過等により分別したり、熱水、含水イソプロピルアルコール、含水アセトン溶媒等で洗浄して未反応のカチオン化剤、グリセロール化剤、並びにこれらの反応剤由来の副生物、中和等により副生した塩類を除去したりしてから使用することもできる。その他、精製方法としては、再沈殿精製、遠心分離、透析等一般的な精製方法を用いることができる。
【0049】
(その他の成分)
前述のとおり、本発明の水溶性ポリマー組成物は、必須成分であるフッ素を含有する塩及びCGCの他に、水を含有していてもよい。
【0050】
<水溶性ポリマー組成物の製造方法>
本発明の水溶性ポリマー組成物の製造方法に特に制限はなく、フッ素を含有する塩とCGCのみを混合して製造できるが、好ましくは、フッ素を含有する塩とCGCを水に添加して製造する方法が挙げられる。具体的には、CGCを水に溶解させた後、前述した添加量範囲でフッ素を含有する塩を添加し、攪拌することにより得ることができる。
また、上記混合後は、水溶液中である場合、CGC及びフッ素を含有する塩はイオンに解離して存在してもよい。
なお、CGC中のカチオン化オキシアルキレン基である式(2)又は(3)に示されるX
-及びY
-の一部又は全部が、前記フッ素を含有する塩に含まれるフッ素含有アニオンに置換されていてもよい。
【0051】
[毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物]
本発明の毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物は、フッ素を含有する塩、CGC、及び界面活性剤を含有する。
【0052】
<CGC>
本発明の毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物に用いられるCGC及びその好ましい態様は、前述の水溶性ポリマー組成物で示したCGCと同じである。
毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物中におけるCGCの含有量は、毛髪化粧料組成物に用いた際に、毛髪を処理した後のすすぎ時における良好なすべり性及びその持続感を得る観点、及び皮膚洗浄剤組成物に用いた際に、皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点、並びに毛髪化粧料及び皮膚洗浄剤への配合性の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上が更に好ましい。また、毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物の粘度増加抑制や、毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物へのCGCの溶解性の観点から、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、1質量%以下がより更に好ましい。
【0053】
<フッ素を含有する塩>
本発明の毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物に用いられるフッ素を含有する塩及びその好ましい態様は、前述の水溶性ポリマー組成物で記載したとおりである。
毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物中におけるフッ素を含有する塩の添加量は、CGCの添加量に依存する。すなわち、毛髪化粧料組成物に用いた際に、毛髪を処理した後のすすぎ時における良好なすべり性及びその持続感を得る観点から、CGCのカチオン基1モルに対するフッ素を含有する塩のモル比〔モル/カチオン基〕で、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上であり、また、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.1以下である。
その中でも、上記のすべり性及び持続性を向上させる観点に加え、経済性を向上させると共に持続性をより向上させる観点から、当該添加量はモル比〔モル/カチオン基〕で、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下である。
また、上記のすべり性及び持続性を向上させる観点に加え、皮膚洗浄剤組成物に用いた際に、皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、当該添加量はモル比〔モル/カチオン基〕で、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上である。
【0054】
<界面活性剤>
本発明の毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物は、1種以上の界面活性剤を含有する。
界面活性剤としては、通常、医薬品、医薬部外品、化粧料、トイレタリー、雑貨等で用いられる界面活性剤であればいずれも用いることができる。具体的には、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上が挙げられる。
本発明の水溶性ポリマー組成物、及び本発明に用いる界面活性剤をシャンプー、ボディシャンプー、洗顔料等の洗浄剤として使用する場合は、特に毛髪を処理した後のすすぎ時における優れたすべり性とその持続感を得る観点、及び皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上が好ましい。
【0055】
(陰イオン性界面活性剤)
陰イオン性界面活性剤としては、疎水性部位を有する硫酸エステル塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸エステル塩及びアミノ酸塩から選ばれる1種以上が好ましい。
具体的には、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の疎水性部位を有する硫酸エステル塩;スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩、アルカンスルホン酸塩、アシルイセチオネート、アシルメチルタウレート等の疎水性部位を有するスルホン酸塩;炭素数8以上16以下の高級脂肪酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩等の疎水性部位を有するカルボン酸塩;アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等の疎水性部位を有するリン酸エステル塩;アシルグルタミン酸塩、アラニン誘導体、グリシン誘導体、アルギニン誘導体等の疎水性部位を有するアミノ酸塩等が挙げられる。
陰イオン性界面活性剤は、毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物の洗浄性、起泡性及び泡質の観点、特に毛髪を処理した後のすすぎ時における優れたすべり性とその持続感を得る観点、及び皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、前記界面活性剤は、疎水性部位として炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を有することが好ましく、炭素数10以上のアルキル基又はアルケニル基を有することがより好ましく、炭素数20以下のアルキル基又はアルケニル基を有することが好ましく、炭素数16以下のアルキル基又はアルケニル基を有することがより好ましい。
【0056】
これらの中では、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(ラウレス−2硫酸ナトリウム)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム及びパルミチン酸カリウム等の高級脂肪酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(ラウレス−4,5酢酸ナトリウム)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ラウレス−2スルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸アルキルエステル塩、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウム(ココイルグルタミン酸ナトリウム)等のアシルグルタミン酸塩、ラウリルサルコシン酸カリウム等のアシルサルコシネート、及びココイルメチルタウリンナトリウム等のアシルメチルタウレート等から選ばれる1種以上が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及びアルキル硫酸塩から選ばれる1種以上が好ましい。
【0057】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油等のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤と、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド等の多価アルコール型非イオン性界面活性剤及び脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤は、毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物の洗浄性及び洗浄時の泡量、泡質の観点、毛髪を処理した後のすすぎ時における優れたすべり性とその持続感を得る観点、及び皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、疎水性部位として炭素数8以上20以下のアルキル基又はアルケニル基を有することが好ましい。
これらの中では、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸アルカノールアミド及びアルキルグリコシドから選ばれる1種以上が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及び脂肪酸アルカノールアミドから選ばれる1種以上が好ましく、ポリオキシエチレンラウリルエーテル及びポリオキシエチレンセトステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸N−メチルモノエタノールアミド等の脂肪酸モノアルカノールアミドがより好ましい。
【0058】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、イミダゾリン系ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤、及びアルキルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイド型界面活性剤等が挙げられる。
これらの中では、毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物の洗浄性及び洗浄時の泡量、泡質の観点、毛髪を処理した後のすすぎ時における優れたすべり性とその持続感を得る観点、及び皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、イミダゾリン系ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、及びアルキルヒドロキシスルホベタイン等から選ばれる1種以上が好ましく、具体的には、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルカルボメトキシメチルヒドロキシイミダゾリウムベタイン、及びラウリルヒドロキシスルホベタインから選ばれる1種以上が好ましい。
【0059】
(陽イオン性界面活性剤)
陽イオン性界面活性剤としては、アミド基、エステル基又はエーテル基で分断されていてもよい炭素数12以上28以下の炭化水素基を有する第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、又は3級アミンの鉱酸又は有機酸の塩が挙げられる。具体的には、セチルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩、オクダデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等のモノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩や、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジイソテトラデシルジメチルアンモニウム塩等のジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩や、ステアリルジメチルアミン、ベヘニルジメチルアミン、オクタデシロキシプロピルジメチルアミンの塩酸、クエン酸又は乳酸塩等のモノ長鎖アルキルジメチルアミン塩が挙げられる。
これらの中では、毛髪化粧料組成物で処理した毛髪のすすぎ時における優れたすべり性とその持続感を得る観点、及び皮膚洗浄剤組成物で皮膚を洗浄し、乾燥した後の優れた保湿感を得る観点から、モノ長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましい。
【0060】
(界面活性剤含有量)
本発明の毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物中の界面活性剤含有量は、毛髪化粧料組成物に用いた際に、毛髪を処理した後のすすぎ時における良好なすべり性及びその持続感を得る観点、及び皮膚洗浄剤組成物に用いた際に、皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは36質量%以下である。
本発明に用いるフッ素を含有する塩、CGC及び界面活性剤を毛髪化粧料組成物として用いる場合、界面活性剤の含有量は、本発明の毛髪化粧料組成物で毛髪を処理した後のすすぎ時における優れたすべり性とその持続感を得る観点から、8質量%以上であることが更に好ましく、そして、20質量%以下であることがより更に好ましい。
本発明に用いるフッ素を含有する塩、CGC及び界面活性剤を皮膚洗浄剤組成物として用いる場合、界面活性剤の含有量は、皮膚を洗浄し、すすぎ、乾燥を行った後に優れた保湿感を得る観点から、8質量%以上であることがより好ましく、そして、36質量%以下であることが更に好ましい。
【0061】
(CGCと界面活性剤の質量比)
本発明の毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物中、CGCと界面活性剤の質量比は、毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物の洗浄性及び洗浄時の泡量、泡質の観点、毛髪を処理した後のすすぎ時における優れたすべり性とその持続感を得る観点、及び皮膚を洗浄した後の保湿感を得る観点から、界面活性剤に対するCGCの質量比〔CGC/界面活性剤〕で、好ましくは0.0002以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.008以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0.05以下である。
【0062】
(その他の成分)
本発明の毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物には、更に、通常、毛髪化粧料や皮膚洗浄剤に配合される水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール等のアルコール、グリセリン、保湿剤、多糖類、ポリペプタイド、パール化剤、溶剤、色素、香料、噴射剤、エデト酢酸塩及びクエン酸塩等のキレート剤、pH調整剤、防腐剤、ジンクピリチオン及びピロクトンオラミン等の抗フケ剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0063】
<毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物の製造方法>
本発明の毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物の製造方法に特に制限はなく、常法により製造することができる。具体的には、例えば、予め本発明の水溶性ポリマー組成物を準備する。液状毛髪用シャンプーの場合は、水及び界面活性剤を必要に応じて、加温し、均一混合する。水及び界面活性剤が、均一に溶解したことを確認後、上記の水溶性ポリマー組成物を添加し、均一に混合する。
水溶性ポリマー組成物は、予め水に添加してもよく、界面活性剤と同時に添加しても良い。また、予め水溶性ポリマー組成物を準備せずに、毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物の製造時に、フッ素を含有する塩及びCGCを分けて添加してもよい。
上記混合後は、CGC及びフッ素を含有する塩はイオンに解離して存在してもよい。また、CGC中のカチオン化オキシアルキレン基である式(2)又は(3)に示されるX
-及びY
-の一部又は全部が、前記フッ素を含有する塩から解離したフッ素含有アニオンに置換されていてもよい。
さらに、必要に応じて、パール化剤、pH調製剤、香料、色素等から選ばれる1種以上を加えて調製することができる。
【0064】
本発明の毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物の剤型も特に制限されず、液体状、泡状、ペースト状、クリーム状、固形状、粉末状等、任意の剤型とすることができるが、液体状、ペースト状又はクリーム状とすることが好ましく、液体状とすることが特に好ましい。液体状とする場合には、液体媒体として水の他、ポリエチレングリコール、エタノール等を用いるのが好ましく、水の配合量は、全組成物中に10質量%以上、90質量%以下であることが好ましい。
【0065】
本発明の毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物は、該毛髪化粧料組成物で、特に毛髪を処理した後のすすぎ時に優れたすべり性とその持続感を与える。また、該皮膚洗浄組成物で、皮膚を洗浄し、すすぎ、乾燥を行った後に皮膚に優れた保湿感を与える。
【0066】
上述した実施の形態に関し、本発明は以下の水溶性ポリマー組成物、毛髪化粧料組成物及び皮膚洗浄剤組成物を開示する。
【実施例】
【0067】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「%」は「質量%」を意味する。なお、各種物性等の測定は、以下の方法により行った。
(1)パルプの粘度平均重合度の測定(銅アンモニア法)
(i)測定用溶液の調製
メスフラスコ(100mL)に塩化第一銅0.5g、25%アンモニア水20〜30mLを加え、完全に溶解した後に、水酸化第二銅1.0g、及び25%アンモニア水を液のメニスカス下面がメスフラスコの標線上縁と一致するまで加えて、3時間攪拌し、完全に溶解させた。
(ii)サンプルの調製
メスフラスコ(25mL)に測定サンプルを25mg添加後、上記に調整した溶液を液のメニスカス下面がメスフラスコの標線上縁と一致するまで加えた。これを、6時間攪拌し完全に溶解させた。
(iii)粘度平均重合度の測定
得られた銅アンモニア水溶液をウベローデ粘度計に入れ、恒温槽(20±0.1℃)中で1分間静置した後、液の流下速度を測定した。種々の試料濃度(g/l)の銅アンモニア溶液の流下時間(t(秒))と試料無添加の銅アンモニア水溶液の流下時間(t
0(秒))から、下記式に示した相対粘度η
rを求めた。
η
r=t/t
0
次に、それぞれの濃度における還元粘度(η
sp/c)を以下の式より求めた。
η
sp/c=(η
r−1)/c (c:試料濃度(g/dl))
更に、還元粘度をc=0に外挿して固有粘度〔η〕を求め、以下の式より粘度平均重合度(n)を求めた。
n=2000×〔η〕
【0068】
(2)水分量の測定
パルプ、粉末セルロースの水分量は、電子式水分計「MOC−120H」(株式会社島津製作所製)を用いて測定した。約1gのサンプルを用い、測定温度120℃で、30秒間の重量変化率が0.1%以下となる点を測定の終点とした。
【0069】
(3)CGCの置換度:MSの算出
カチオン化オキシアルキレン基の置換度(MS(N+))、グリセロール基の置換度(MS(Gly))は以下の連立方程式により算出した。
(74.1−74.1×(グリセロール基の含有量(質量%)))×MS(Gly)−a×(グリセロール基の含有量(質量%))×MS(N+)=162.1×(グリセロール基の含有量(質量%))
(−74.1×(窒素含有量(質量%)))×MS(Gly)+(14−a×(窒素含有量(質量%)))×MS(N+)=162.1×(窒素含有量(質量%))
(式中、aはカチオン化オキシアルキレン基の分子量を示す。)
【0070】
上記、連立方程式中の窒素含有量(質量%)、グリセロール基の含有量(質量%)は、それぞれCGC中に含有される、カチオン化オキシアルキレン基を構成する窒素、グリセロール基の質量%を示し、下記の方法にて算出した。
〔グリセロール基の含有量%〕
CGC中に含有される、グリセロール基の含有量%(質量%)はAnalytical Chemistry,Vol.51,No.13,2172(1979)、「第十五改正日本薬局方(ヒドロキシプロピルセルロースの分析方法の項)」等に記載の、セルロースエーテルのアルコキシ基の平均付加モル数を分析する手法として知られるZeisel法に準じて算出した。以下に手順を示す。
(i)25mLメスフラスコにn−オクタン1mLを加え、o−キシレンを液のメニスカス下面がメスフラスコの標線上縁と一致するまで添加、撹拌して、内部標準溶液を調製した。
(ii)精製、乾燥を行ったCGC65mg、アジピン酸65mgを10mLバイアル瓶に精秤し、(ii)で調製した内部標準溶液2mL、ヨウ化水素酸2mLを加えて密栓した。
(iii)上記バイアル瓶中の混合物を、スターラーチップにより攪拌しながら、150℃のブロックヒーターにて1時間加熱した。
(iv)バイアル瓶中の2相に分離した混合物の上層(o-キシレン層)をガスクロマトグラフィーにて分析した。分析条件は以下のとおりであった。
カラム:Chromosorb WAW DMCS 60−80mesh
カラム温度:60℃(5min)→10℃/min→300℃(10min)
インジェクター温度:250℃、検出器温度:250℃、打ち込み量:1μL
よう化イソプロピルの検出量からCGC中のグリセロール基の含有量(質量%)を算出した。
〔窒素含有量(質量%)の測定〕(ケルダール法)
精製、乾燥したCGC100mgを精秤し、ここへ硫酸10mL、分解促進剤(株式会社なかやま理化製作所製、ケルタブ錠)1錠を加え、ケルダール分解装置(BUCHI社製、K−432)を用いて250℃で30分、300℃で30分、420℃で80分と順に昇温させながら完全分解を行った。分解反応終了後、サンプルにイオン交換水30mLを加え、自動ケルダール蒸留・滴定装置(BUCHI社製、K−370)を用いて、30%水酸化ナトリウム水溶液40mLを加えアルカリ性とした後、蒸留操作により遊離したアンモニアを1%ホウ酸水溶液中に収集し、0.01N硫酸(和光純薬工業株式会社製、定量分析用)を用いて滴定することにより、CGC中の窒素含有量(質量%)を求めた。
【0071】
製造例1〔CGC(1)の製造〕
(1)セルロースの粉末化工程
シート状木材パルプ(テンベック社製Biofloc HV+、平均重合度1550)をシュレッダー(株式会社明光商会製、MSX2000−IVP440F)にかけてチップ状にした。その後、80℃減圧下で12時間乾燥処理を行い、水分量0.8%のチップ状の乾燥パルプを得た。
次に、得られたチップ状の乾燥パルプ920gを、バッチ式振動ロッドミル(中央化工機株式会社製、FV−10:容器全容積33L、ロッドとして、φ30mm、長さ510mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド63本)に投入した。振動数20Hz、全振幅8mm、温度10〜40℃の範囲で10分粉砕処理を行い、セルロース粉末890gを得た。
(2)グリセロール化反応工程
3つ口丸底フラスコに、ジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬工業株式会社製)389.2g、テトラ(n−ブチル)アンモニウムフロリド三水和物(TBAF、関東化学株式会社製)77.5gを投入し、均一に溶解させた。これに、上記で得られたセルロース粉末7.0gを加えて室温で1時間撹拌し、溶解させた。更に、微粉末化した水酸化カリウム2.42g(1.0モル/AGU)を加えてよく分散させた。70℃に昇温した後、窒素気流下で反応液を撹拌しながら、予めグリシドール26.6g(8.3モル/AGU)とジメチルスルホキシド26.6gを混合した溶液を5時間かけて添加した。滴下終了後、更に70℃のまま1時間撹拌を続け、反応を終了させた。
続いて、反応溶液を室温まで冷却した後に、遠心分離を行い、得られた上澄み液をイオン交換水/アセトン/メタノール=2/4/4(体積比)の混合溶媒中へ投入し、析出したポリマーを回収、減圧乾燥することで白色の固形物としてグリセロール化されたセルロース8.82gを得た。
(3)カチオン化反応工程
3つ口丸底フラスコに、50質量%ジメチルスルホキシド水溶液166.7gを投入し、上記で得られたグリセロール化されたセルロース2.5gを加えて、室温で撹拌し、均一に溶解させた。その後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液0.4g(0.2モル当量/AGU)を加えて室温で撹拌した。その後、カチオン化剤としてグリシジルトリメチルアンモニウムクロライド(阪本薬品工業株式会社製、含水量20質量%、純度80%)1.28g(0.65モル/AGU)を撹拌添加後、50℃に昇温後5時間反応を行った。その後、反応液を酢酸で中和し、エタノール中に投入して、析出したポリマーを回収、減圧乾燥することで白色の固形物としてCGC(1)を2.1g得た。
得られたCGC(1)の置換度の分析を行った結果、グリセロール基の含有量は30.5%であった。また、窒素含有量は0.60%であった。MS(Gly)及びMS(N+)はそれぞれ1.06、及び0.11であった。
【0072】
製造例2〔CGC(2)の製造〕
グリセロール化反応工程におけるグリシドールを19.7g(6.15モル/AGU)、ジメチルスルホキシドを19.7g、及びカチオン化反応工程におけるグリセロール化されたセルロースを2.6g、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライドを1.16g(0.59モル/AGU)に変えた以外は製造例1と同様に行い、CGC(2)を得た。
得られたCGC(2)の置換度の分析を行った結果、グリセロール基の含有量は32.1%であった。また、窒素含有量は0.52%であった。MS(Gly)及びMS(N+)はそれぞれ1.13、及び0.10であった。
【0073】
製造例3〔CGC(3)の製造〕
グリセロール化反応工程におけるグリシドールをグリシドール19.2g(6.0モル/AGU)、ジメチルスルホキシドを19.2g、及びカチオン化反応工程におけるグリセロール化されたセルロースを2.7g、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライドを1.58g(0.8モル/AGU)に変えた以外は製造例1と同様に行い、CGC(3)を得た。
得られたCGC(3)の置換度の分析を行った結果、グリセロール基の含有量は30.3%であった。また、窒素含有量は0.71%であった。MS(Gly)及びMS(N+)はそれぞれ1.07、及び0.13であった。
【0074】
製造例4〔CGC(4)の製造〕
グリセロール化反応工程におけるグリシドールを25.6g(8.0モル/AGU)、ジメチルスルホキシドを25.6g、及びカチオン化反応工程におけるグリセロール化されたセルロースを2.7g、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライドを0.79g(0.4モル/AGU)に変えた以外は製造例1と同様に行い、CGC(4)を得た。
得られたCGC(4)の置換度の分析を行った結果、グリセロール基の含有量は36.0%であった。また、窒素含有量は0.36%であった。MS(Gly)及びMS(N+)はそれぞれ1.31、及び0.07であった。
【0075】
実施例1
CGC(1)0.5gを水49.5gに溶解させ、次いでビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム16.6mg(0.27モル/カチオン基)を添加し、室温で30分攪拌することで、ポリマー組成物水溶液を得た。
【0076】
実施例2
CGC(1)0.5gを水49.5gに溶解させ、次いでビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム33.2mg(0.54モル/カチオン基)を添加し、室温で30分攪拌することで、ポリマー組成物水溶液を得た。
【0077】
実施例3
CGC(1)0.5gを水49.5gに溶解させ、次いでビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム61.4mg(1モル/カチオン基)を添加し、室温で30分攪拌することで、ポリマー組成物水溶液を得た。
【0078】
実施例4
CGC(2)0.5gを水49.5gに溶解させ、次いでヘキサフルオロリン酸ナトリウム32.2mg(1モル/カチオン基)を添加し、室温で30分攪拌することで、ポリマー組成物水溶液を得た。
【0079】
実施例5
CGC(2)0.5gを水49.5gに溶解させ、次いでトリフルオロ酢酸ナトリウム26.1mg(1モル/カチオン基)を添加し、室温で30分攪拌することで、ポリマー組成物水溶液を得た。
【0080】
比較例1
CGC(3)0.5gを水49.5gに溶解させ、ポリマー水溶液を得た。
【0081】
比較例2
CGC(4)0.5gを水49.5gに溶解させ、ポリマー水溶液を得た。
【0082】
比較例3
カチオン化ヒドロキシエチルセルロース(花王株式会社製、商品名:ポイズ C−80M)0.5gを水49.5gに溶解させ、次いでビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム144.6mg(1モル/カチオン基)を添加し、室温で30分攪拌することで、ポリマー組成物水溶液を得た。
【0083】
比較例4
カチオン化グアーガム(三晶株式会社製、商品名:JAGUAR C−13S)0.5gを水49.5gに溶解させ、次いでビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム126.9mg(1モル/カチオン基)を添加し、室温で30分攪拌することで、ポリマー組成物水溶液を得た。
【0084】
[毛髪化粧料組成物の評価]
(毛髪化粧料組成物の製造)
実施例1〜5、比較例3若しくは4のポリマー組成物水溶液、又は比較例1若しくは2のポリマー水溶液を用いて、下記に示す組成の毛髪化粧料組成物を常法により調整した。
具体的には、ポリマー組成物水溶液又はポリマー水溶液以外の各成分をビーカーに取り、80℃に加温後、攪拌し、均一溶解した後にポリマー組成物水溶液又はポリマー水溶液を加え、均一に混合後、冷却した。最後に、加温により蒸発した水分を補充した。
【0085】
(評価用ヘアシャンプーの組成)
(成分) (%)
ポリオキシエチレン(1)アルキルエーテル硫酸ナトリウム 13.0
(エマール170J(花王株式会社製、有効分70%)として18.6%)
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 1.5
(アンヒトール55AB(花王株式会社製、有効分30%)として5.0%)
ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド 0.3
(アミゾール CMEA(川研ファインケミカル社製))
ポリマー組成物水溶液又はポリマー水溶液 30.0
(実施例1〜5、比較例1〜4のいずれか1種)
塩化ナトリウム 0.8
pH調整剤*1 適 量
精製水 バランス
計 100.0
*1: クエン酸
【0086】
(毛髪化粧料組成物の評価方法)
下記組成物の各成分をビーカーに取り、80℃に加温後、混合し、均一に溶解したことを確認した後、冷却して、プレーンヘアシャンプーを得た。
(プレーンシャンプーの組成)
(成分) (%)
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸Na 11.3
(エマールE−27C(花王株式会社製、有効分27%)として42.0%)
ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド 3.0
(アミノーン C−11S(花王株式会社製))
クエン酸 0.2
メチルパラベン 0.3
精製水 バランス
計 100.0
【0087】
得られたプレーンヘアシャンプーで毛束を洗浄し、35〜40℃の温水で十分に湿らせた後、評価用ヘアシャンプーで洗浄し、温水ですすいだ。このように処理した毛束を評価用トレスとして用い、4人のパネラーが、以下の評価基準、評価方法により、毛髪のすすぎ時における、すべり性、すべりの持続感を評価した。
(評価基準)
・すべり性:
5:すべりが非常によい
4:すべりがよい
3:普通(比較例1のすべり性を基準)
2:すべりが悪い
1:すべりが非常に悪い
・持続感:
5:すべり性の持続感が非常に強い
4:すべり性の持続感が強い
3:普通(比較例1のすべり性を基準)
2:すべり性の持続感が弱い
1:すべり性の持続感が非常に弱い
(評価方法)
4人のパネラーの評価結果を平均して評点を求めた。
結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1から、実施例1〜5のポリマー組成物水溶液を用いた毛髪化粧料は、すすぎ時における優れたすべり性とその持続感を付与できたことが分かる。
【0090】
[皮膚洗浄剤組成物の評価]
実施例6(ボディシャンプー)
下記組成のボディシャンプーを常法により製造した。
両手を濡らし、得られたボディシャンプー0.5mLを両手に塗布し、泡立てた後、その両手を10秒間流水中ですすぎ、タオルで水滴を拭き取り、乾燥後の肌感触を評価した。
その結果、このボディシャンプーで洗浄、乾燥後の肌は優れた保湿感を有していた。
(成分) (%)
ラウリン酸 8.6
ミリスチン酸 8.4
パルミチン酸 2.5
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム*1 2.9
グリセリン 1.9
プロピレングリコール 1.2
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン*2 0.9
ポリマー組成物水溶液(実施例3) 30.0
水酸化カリウム(pH9.6に調製する量) 適 量
香料,防腐剤 適 量
精製水 バランス
計 100.0
*1:花王株式会社製、商品名:エマール270J
*2:花王株式会社製、商品名:アンヒトール55AB
【0091】
実施例7(ボディシャンプー)
下記組成のボディシャンプーを常法により製造し、実施例6と同様に評価した。その結果、このボディシャンプーで洗浄、乾燥後の肌は優れた保湿感を有していた。
(成分) (%)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム*1 10.0
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン*2 1.5
ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド 1.0
グリセリン 2.0
塩化ナトリウム 1.0
ポリマー組成物水溶液(実施例3) 30.0
香料,防腐剤 適 量
精製水 バランス
計 100.0
*1:花王株式会社製、商品名:エマール270J
*2:日油株式会社製、商品名:アンヒトール55AB
【0092】
実施例8(ボディシャンプー)
下記組成のボディシャンプーを常法により製造し、実施例6と同様に評価した。その結果、このボディシャンプーで洗浄、乾燥後の肌は優れた保湿感を有していた。
(成分) (%)
ラウロイルサルコシンK*1 6.0
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム*2 3.3
プロピレングリコール 3.2
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン*3 2.8
ジステアリン酸グリコール 1.0
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 0.7
ポリマー組成物水溶液(実施例3) 30.0
香料,防腐剤 適 量
pH調整剤(pH6.0に調製する量) 適 量
精製水 バランス
計 100.0
*1:日光ケミカルズ株式会社製、商品名:NIKKOLサルコシネートLK−30
*2:花王株式会社製、商品名:エマール270J
*3:花王株式会社製、商品名:アンヒトール55AB
【0093】
実施例9(洗顔料)
下記組成の洗顔料を製造し、実施例6と同様にして評価した。その結果、この洗顔料で洗浄、乾燥後の肌は優れた保湿感を有していた。
(成分) (%)
ココイルメチルタウリンNa*1 1.4
ラウリン酸 28.2
ミリスチン酸 2.8
パルミチン酸 3.1
PEG−32*2 2.0
グリセリン 16.0
ポリマー組成物水溶液(実施例3) 30.0
香料,防腐剤 適 量
pH調整剤(pH9.0に調製する量) 適 量
精製水 バランス
計 100.0
*1:日光ケミカルズ株式会社製、商品名:NIKKOL CMT−30
*2:日油株式会社製、商品名:PEG#1500