(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ブラケットは、上記支柱の道路側のフランジ外側に固定される第1の支持材と、上記第1の支持材に対して民地側に向けて離間させた当接面を有し、当該当接面を上記枠材へ当接させつつこれに固定するための第2の支持材を有し、
上記第2の支持材は、上記枠材と接合するためのボルトの頭部を上記当接面と上記第1の支持材との間で狭持させてなること
を特徴とする請求項2記載の透光性遮音壁。
【背景技術】
【0002】
従来より、高速道路、一般道路、鉄道等の路側部には、車両の走行に伴う騒音を防止するために遮音壁が設置されている。特にこの遮音壁においては、外界への視界が開けるようにして車両からの眺望性を向上させる観点から、パネル材としてポリカーボネートやガラス等の透光性材料を使用する透光性遮音壁も頻繁に用いられるようになっている。
【0003】
このような透光性遮音壁を実際に道路等の路側部に立設配置する際にはH形鋼等で構成した支柱の間に上から透光性パネルを嵌め込んで固定する。具体的には、支柱としてのH形鋼を構成するフランジ及びウェブにより囲まれた溝部に透光性パネルを上から落とし込んで嵌合固定する。
【0004】
しかしながら、このような支柱の溝部に上から透光性パネルを挿入して落とし込み、嵌合する組立方法では、支柱の上方において透光性パネルを嵌め込むための空間が必要となる。このため、例えば高速道路同士が交差する場合には、一方の高速道路の直上に他方の高架の高速道路が配設される場合もある。かかる交差部に透光性遮音壁を設置する場合に、その直上に他方の高架の高速道路が位置している場合には、上述した透光性パネルを嵌め込むための空間を確保することができない。このため、かかる交差部では、支柱の溝部に上から透光性パネルを挿入して嵌合する組立方法により透光性遮音壁を立設配置することができないという問題点がある。
【0005】
このため、支柱の溝部に上から遮音パネルを挿入することなく嵌合することが可能な遮音パネルの取付構造が提案されている(例えば特許文献1参照。)。この特許文献1の開示技術によれば、
図11に示すように遮音パネル181の外側面に断面コ字状の側枠材182をボルト183によって固着する。これをH形鋼からなる支柱91に取り付ける際には、当該支柱91の車両走行側(道路側)のフランジ92に対して側枠材182のフランジ182aを当接させ、これらを互いにボルト93により接合する。同様に、この遮音パネル181よりも上段に位置する他の遮音パネル181についても側枠材182のフランジ182aを介して支柱91へ接合する。
【0006】
この特許文献1の開示技術によれば、支柱91の所定高さに道路側から遮音パネル181を当接させてボルト93を介して固定させることで取り付けすることができ、ひいては道路の延長方向に隣接する他の遮音パネル181を当該延長方向に向けて連続させて索状体で連結して設置することができる。このため、上述した従来技術のように遮音パネルを支柱の溝部に上から挿入することなく接合することが可能となる。
【0007】
また、特許文献2には、遮音パネルを狭持させた枠材をH形鋼からなる支柱に取り付ける例が開示されている。この特許文献2の開示技術は、車両が衝突した際に遮音パネルが枠材から抜け出すことを防止することを念頭においたものである。一般的に枠材と遮音パネルの固定する際にボルト等を介して強固に固定した場合、車両がこれに衝突した際に遮音パネルのボルト固定部に応力が集中してしまい、破損してしまう虞がある。このため、特許文献2の開示技術では、遮音パネルの両側端部にアルミニウム材からなる横断面L字状の引き抜き抵抗片を設け、当該引き抜き抵抗片の他端側を上述の枠材に遊嵌させることで遮音パネルを破損することなく抜け出し防止を可能としている。この特許文献2の開示技術も同様に、支柱に対して道路側から遮音パネルを取り付けることができる。このため、この特許文献2の開示技術によれば、遮音パネルを支柱の溝部に上から挿入することなく接合することが可能となり、支柱の上方に高架橋等が存在し、施工のための空間が確保できない場合においても遮音パネルの接合を実現できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1、2の開示技術は、何れも遮音パネルが支柱から道路側に大きく張り出す構成であるため、車両が実際に走行する道路が遮音パネルによって圧迫され、しかも道路側の建築限界を犯す虞がある。このため、事故等で車両が正しい進行方向を外れて遮音壁に異常接近してしまった場合等には、遮音壁下部の縁石にタイヤが接触するばかりでなく、この道路側に突出した遮音パネルに車両が接近することがあった。特に路面が傾斜するカーブ区間等においては、走行する車両もこれに応じて傾斜してしまう。このため、このような道路が傾斜する箇所において、車両が正しい進行方向を外れて遮音壁に異常接近してしまった場合等には、当該車両の一部が、道路側に突出した遮音壁へ接触してしまう虞があった。
【0010】
また遮音壁の中でも、透光性遮音壁では、運転者が道路外の景色を見られるようにすることで車両からの眺望性を向上させる効果があり、運転者が走行中に受ける圧迫感を軽減させる効果がある。
【0011】
しかしながら、特許文献1、2の開示技術のように、支柱から道路側に張り出された状態で配置される場合には、支柱より運転者に接近した箇所に透光パネルが配置されることとなる。通常、透光性遮音壁を介して道路外の景色を眺望する運転者の視線角度(眺望角度)は、ちょうど運転席から斜め前方への眺望角度となる。このため、運転者からみて、より手前に位置する支柱付近では、透光パネルの枠材が道路側に張り出された景観となっており、運転者からの眺望角度が狭まり、運転者に却って圧迫感を与えてしまい、眺望が害されてしまう。また運転者からみて、より奥側に位置する支柱付近では、透光パネルの枠材が道路側に張り出されている分において眺望角度は広がる。しかしながら、より奥側に位置する支柱における民地側のフランジがあるため眺望そのものは改善されないばかりか、支柱を構成するH形鋼の溝部が透光パネルを介して視界に入ることとなり、運転者の眺望性が低下してしまうという問題点があった。
【0012】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、例えば高速道路同士が交差し、一方の道路の直上に他方の高架の道路が位置している場合であって、支柱の上方に透光パネルを嵌め込むための空間を確保することができない場合においても、これを支柱に取り付けることが可能であり、しかも道路側に透光パネルが張り出してしまうのを防止することで建築限界を満たすことができ、眺望性能を向上させることが可能な透光性遮音壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上述した課題を解決するために、透光板の4辺に枠材が設けられた透光パネルを支柱間に取り付ける際において、その透光パネルを、支柱を構成するH形鋼のフランジ間の間隔に収まる奥行き長さとされ、左右に設けられた枠材の道路側にはブラケットが当該枠材の側端に近接する支柱側に張り出すように設け、そのブラケットを、張り出した側が支柱の道路側のフランジ外側となるように固定し、透光パネルを支柱の道路側のフランジ外側よりも民地側に位置するような形状とした透光性遮音壁を発明した。
【0014】
請求項1記載の透光性遮音壁は、透光板の4辺に枠材が設けられた透光パネルを支柱間に取り付けた透光性遮音壁において、上記各支柱は、H形鋼のウェブを互いに対向させつつ離間させて配置され、上記透光パネルは、上記支柱を構成するH形鋼のフランジ間の間隔に収まる奥行き長さとされ、左右に設けられた上記枠材の道路側にはブラケットが当該枠材の側端に近接する支柱側に張り出すように設けられ、上記ブラケットは、上記張り出した側が上記支柱の道路側のフランジ外側に固定され、上記透光パネルを上記支柱の道路側のフランジ外側よりも民地側に位置するような形状とされていることを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の透光性遮音壁は、請求項1記載の発明において、上記ブラケットは、上記枠材への固定箇所が上記支柱への固定箇所よりも民地側に位置していることを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の透光性遮音壁は、請求項1又は2記載の発明において、上記ブラケットの高さ方向長さは、上記枠材の高さ方向の長さと略同一とされていることを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の透光性遮音壁は、請求項1〜3のうち何れか1項記載の発明において、上記透光パネルの左右に設けられた枠材の少なくとも一方には、平面視で環状の索状体挿通環が当該枠材の道路側から民地側までの厚みに収まる配置で設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項5記載の透光性遮音壁は、請求項4記載の発明において、索状体挿通環には、上下方向に索状体が挿通されていることを特徴とする。
【0019】
請求項6記載の透光性遮音壁は、請求項2記載発明において、上記ブラケットは、上記支柱の道路側のフランジ外側に固定される第1の支持材と、上記第1の支持材に対して民地側に向けて離間させた当接面を有し、当該当接面を上記枠材へ当接させつつこれに固定するための第2の支持材を有し、上記第2の支持材は、上記枠材と接合するためのボルトの頭部を上記当接面と上記第1の支持材との間で狭持させてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
上述した構成からなる本発明によれば、透光パネルが支柱から道路側に張り出された状態で配置されることがなくなり、支柱の道路側フランジより民地側に透光パネルが配置されることとなる。このため、運転者からみて、より手前に位置する支柱付近では、透光パネルの枠材が道路側に張り出すことなく支柱間に収納された景観となり、運転者からの眺望角度が狭まることもなくなり、運転者に圧迫感を与えてしまうのを防止できる。その結果、眺望性を向上させることが可能となる。また運転者からみて、より奥側に位置する支柱付近では、支柱を構成するH形鋼の溝部が透光パネルを介して視界に入るのを防止でき、運転者の眺望性が低下するのを防止できる。また透光パネルを支柱の道路側フランジより民地側に透光パネルが配置させることが可能となるため、道路側に透光パネルが張り出してしまうのを防止することができ、建築限界を満たすことができる。
【0021】
さらに本発明によれば、支柱に対して道路側から透光パネルを取り付けることができる。このため本発明によれば、透光パネルを支柱の溝部に上から挿入することなく接合することが可能となり、支柱の上方に高架橋等が存在し、施工のための空間が確保できない場合においても透光パネルの接合を実現できる。このため本発明では、例えば高速道路同士が交差し、一方の道路の直上に他方の高架の道路が位置している場合においてもこれにより施工が阻害されるのを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用した透光性遮音壁について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明を適用した透光性遮音壁1の構成を示している。この透光性遮音壁1は、コンクリート製のベース2上に立設された複数の支柱3と、この支柱3間に取り付けられた透光パネル4と、透光パネル4を支柱3へ取り付けるためブラケット5とを備えている。
【0025】
支柱3は、ウェブ33の両端に一対のフランジ31、32が連設されたH形鋼からなる。このフランジ31は、車両走行側(道路側)に位置するように配置され、フランジ32は、車道の外側である民地側に位置するように配置される。支柱3の下端はコンクリート製のベース2に埋め込まれているため、強固にかつ安定した状態で固定されている。支柱3の立設間隔は、これに取り付けられる透光パネル4の幅に対応した所定長とされる。また支柱3は、隣接する他の支柱3との間で、H形鋼のウェブ33を互いに対向させつつ離間させて配置される。
【0026】
図2(a)は、支柱3に取り付けられる透光パネル4及びブラケット5の道路側から見た斜視図であり、
図2(b)は透光パネル4及びブラケット5の民地側からみた斜視図である。また
図3は、透光パネル4及びブラケット5を道路側からみた正面図である。また、
図4は、
図3のA−A断面図、
図5は、
図3のB−B断面図である。
【0027】
透光パネル4は、透光板11と、この透光板11の上下2辺に設けられた上枠12及び下枠13と、左右2辺に設けられた縦枠14、15とを備えている。透光パネル4は、縦枠15に取り付けられた補強板23と、透光板11と縦枠14、15との間に介装される縦枠用シール材24と、透光板11と上枠12及び下枠13との間に介装される横枠用シール材25と、縦枠14に設けられたアイボルト27と、上枠12に設けられる上部補強材28と、下枠13に設けられる下部補強材29とを備えている。
【0028】
また、透光パネル4を支柱3へ取り付けるためブラケット5は、カバー16と、カバー16により被覆された第1の支持材21と、第1の支持材21に取り付けられた第2の支持材22とを備えている。
【0029】
透光板11は、アクリルやポリカーボネート等を始めとした透明性の樹脂又はガラス等で構成されている。この透光板11は、矩形状で構成されており、その上端が上枠12に狭持され、その下端が下枠13に狭持される。また透光板11は、その左右側端が縦枠14、15にそれぞれ狭持される。
【0030】
上枠12は、金属製で構成され、
図6(a)に示す断面図のように、上面41が傾斜されて構成されている。また下面42は、縦枠14、15の上端が当接されるために平面状に構成され、ネジ44で固定するためのネジ孔43が設けられている。また、この下面42から上方に向けて溝45が設けられている。この溝45は、上述した透光板11の上端が挿入され、これを狭持した状態で固定するために設けられている。また、溝45及び下面42に沿うようにして断面略L字状の押し縁46が設けられている。この押し縁46は、リベット47を介して上枠12に固定されている。このような押し縁46が設けられることにより、溝45の断面形状は
図6(a)に示すように水平方向に向けて拡径された拡径部45aが形成される。この拡径部45aには、
図5に示すような抜け止め材49を配設するための空間とされる。
【0031】
抜け止め材49は、上枠12における拡径部45aに設けられ、透光板11の上部に設けられた孔に貫通させるボルトと、これを螺着するナットで構成される。溝45は拡径部45aから下方に向けて縮径されているため、抜け止め材49は、この縮径された部位に係止されることとなる。このため、抜け止め材49を透光板11に設けることにより、透光板11の重量を、抜け止め材49を介して支持することが可能となる。
【0032】
下枠13は、金属製で構成され、
図6(b)に示す断面図のように、下面51が傾斜されて構成されている。この下面51における傾斜角は、上枠12の上面41と略同一とすることで、これらを互いに際に隙間無く当接させた状態で上下に連設することが可能となる。また上面52は、縦枠14、15の下端が当接されるために平面状に構成され、ネジ54で固定するためのネジ孔53が設けられている。また、この上面52から上方に向けて溝55が設けられている。この溝55は、上述した透光板11の下端が挿入され、これを狭持した状態で固定するために設けられている。また、溝55及び上面52に沿うようにして断面略L字状の押し縁56が設けられている。この押し縁56は、リベット57を介して下枠13に固定されている。このような押し縁56が設けられることにより、溝55の断面形状は
図6(b)に示すように水平方向に向けて拡径された拡径部55aが形成される。
【0033】
横枠用シール材25は、例えば合成ゴム等の弾性体で構成され、透光板11及び上枠12との間に介装され、又は透光板11及び下枠13との間に介装され、緩衝材としての役割を担う。
【0034】
透光板11と上枠12、下枠13の固定は、透光板11を上枠12の溝45及び下枠13の溝55へ嵌め入れた後、横枠用シール材25を介して押し縁46、55を溝55にそれぞれ嵌め入れて、リベット47、57で固定することで透光板11と上枠12及び下枠13が固定される。
【0035】
縦枠14、15は、それぞれ金属製で構成され、それぞれ上枠12に対してネジ44を介して固定され、また下枠13に対してネジ54を介して固定される。これにより、縦枠14、15、上枠12及び下枠13が互いに接合されて、透光板の4辺に枠材が設けられた構成とされる。
図7は、縦枠15(14)、第1の支持材21、第2の支持材22、補強板23、カバー16の取り付け状態を示している。縦枠15は、ビスホール60と、溝61とを有するとともに、突出片15a、15bが互いに略平行に突出されている。ビスホール60には、上述したネジ44、ネジ54が挿入される。溝61は、上述した透光板11の側端が挿入され、これを狭持した状態で固定するために設けられている。また縦枠14(15)には、後述するアイボルト27を固定するためのアイボルト用孔69が設けられている。
【0036】
補強板23は、断面コ字型の金属で構成されている。この補強板23は、突出片15a、15bの間に内接可能なサイズで構成されている。補強板23を突出片15a、15bの間に介装する際には、この補強板23における開口している側を縦枠15(14)に向けて挿入する。その結果、
図7に示すように断面視で見た場合に、補強板23並びに縦枠15(14)との間で閉空間が構成されることとなる。この補強板23は、突出片15a、15bの間に介装された場合に互いにリベット63を介して固定される。補強板23における第2の支持材22近傍には、ナット65が溶着される。また溶着されたナット65の孔の位置に対応させて補強板23においても図示しない孔を予め形成させておく。このナット65には、ボルト66が螺着可能とされている。補強板23は、縦枠14、15の上部から下部にかけて連続して設けられる必要は無く、
図5に示すようにボルト66の接合位置に対応させた1又は複数の箇所に断続的に設けられていてもよい。
【0037】
なお、縦枠14(15)は、上述した構成でそれぞれ構成する以外に、例えば
図4に示すようにアイボルト27を設けるようにしてもよい。このアイボルト27は、平面視で環状の索状体挿通環である。アイボルト27は、縦枠14(15)におけるアイボルト用孔69に螺着固定され、環状部分がちょうど縦枠14(15)における突出片15a、15bの間に位置するように固定される。換言すれば、このアイボルト27は、縦枠14(15)における道路側から民地側に至るまでの厚みに収まる配置に設けられている。
【0038】
縦枠用シール材24は、例えば合成ゴム等の弾性体で構成され、透光板11及び縦枠14、15との間に介装され、緩衝材としての役割を担う。
【0039】
上部補強材28は、上枠12にリベットを介して固定される金属製の面材で構成される。下部補強材29は、下枠13にリベットを介して固定される金属製の面材で構成される。
【0040】
上述した構成からなる透光パネル4は、支柱3を構成するH形鋼のフランジ31、32間の間隔に収まる奥行き長さとされている。
【0041】
次にブラケット5の構成について説明をする。
【0042】
第1の支持材21は、2枚の金属製の薄板21a、21bを互いに間隔をあけて設けた構成とされている。この薄板21a、21bは互いに上下端において接合されている。第1の支持材21は、組立時において補強板23や縦枠15よりも水平方向に向けて張り出すような状態で固定される。また、この第1の支持材21には、カバー16がリベット67を介して取り付けられる。このリベット67の頭は直接外部に露出することになるため、図示しない化粧キャップでこれを被覆するようにしてもよい。
【0043】
カバー16は、金属製の薄板で構成され、これが接合される第1の支持材21を被包できるサイズに構成されている。また、カバー16は、平面視で側端が民地側へと折り曲げられて構成されている。この折り曲げられたカバー16により、車両からは、第1の支持材21や第2の支持材のみならず、縦枠14、15も遮蔽されることになる。その結果、車両からの透光パネル4そのものへの眺望性を向上させることも可能となる。
【0044】
第2の支持材22は、金属製の薄板を折り曲げ加工することで成形される。この第2の支持材22は、少なくとも縦枠15への当接面22aと、第1の支持材21への当接面22bが形成されるような折り曲げ形状であればいかなる構成とされていてもよい。この当接面22aと当接面22bは互いに略平行となるように間隔をあけて構成される。換言すれば、この当接面22aは、第1の支持材21における薄板21aに対して民地側に向けて離間させて構成されている。そして、当該当接面22aを縦枠14(15))へ当接させつつこれに固定する。当接面22aは、リベット63の頭に対応させた位置において、当該リベット63の頭よりも径大な孔が設けられ、またボルト66の挿入位置に対応した位置において当該ボルト66の足よりも径大な孔が設けられている。また、当接面22bには、第1の支持材21における薄板21aが当接され、リベット68により互いに固定される。
【0045】
なお、この当接面22aと当接面22bとは互いにボルト66における頭部の厚さに対応させた間隔が設けられていることが望ましい。その理由として、組立時において
図4に示すようにボルト66の頭は、第1の支持材21における薄板21aと、第2の支持材22における当接面22aとの間に狭持した状態で固定することができる。即ち、ボルト66の頭部が、薄板21aと当接面22aとの間に押さえ込まれることにより、車両の走行による振動や風により、ボルト66がナット65に対して弛んでしまうのを防止することが可能となる。
【0046】
ちなみに、上述したカバー16を含むブラケット5の高さ方向長さは、枠材12〜15の高さ方向の長さと略同一とされていることが望ましい。ブラケット5を介して車道からの車両の走行に伴う騒音を遮蔽することができるが、枠材12〜15との関係においてブラケット5の高さ方向長さを揃えることで、隙間無く配設することが可能となり、外部への騒音の漏れを防止できる。なお、カバー16を含むブラケット5の上端は、上枠12の上端よりも若干低く、ブラケット5の下端は、下枠13の下端よりも若干高く設定されていてもよい。その理由として上下に隣接する他の透光パネル4を接合する際に、上枠12の上面41と、下枠13の下面51とを互いに当接させて固定する場合もある。かかる場合にブラケット5の上端が上枠12の上端より上方に突出している場合や、ブラケット5の下端が、下枠13の下端よりも突出している場合に当該ブラケット5が取り付け時の障壁となるためである。
【0047】
上述した構成からなるブラケット5によれば、左右に設けられた縦枠14、15の道路側(突出片15b)に設けられるものであるが、当該縦枠14、15の側端から外側(最も近接する支柱3側)に張り出すように設けられる。
【0048】
次に、このような透光性遮音壁1の実際の組立方法について説明をする。先ず、支柱3をベース2上に所定間隔をおいて立設する。
【0049】
次に透光パネル4を、ブラケット5を介して支柱3へ取り付ける作業を行う。先ず、支柱3への取り付けを行う前に、透光パネル4をブラケット5に取り付ける作業を行う。かかる場合には、四辺に上枠12、下枠13、縦枠14、15を取り付けた透光板11における縦枠14、15にブラケット5を接合する作業を行う。その結果、
図4に示すようなブラケット5が連結された透光パネル4が得られる。なお、この連結時においてブラケット5を構成する各部材についていかなる順序で組立を行ってもよいことは勿論である。
【0050】
次に、このようなブラケット5が連結された透光パネル4を支柱3へ取り付ける。かかる場合には、
図8に示すように支柱3の間にこの透光パネル4を搬入し、両側端に形成されたブラケット5を、両脇に形成された各支柱3にそれぞれ道路側から当てがう。より詳細には、
図9に示すように、道路側のフランジ31にブラケット5における第1の支持材21を道路側から当接させる。上述したように、ブラケット5(第1の支持材21)は、縦枠14、15の側端から外側(最も近接する支柱3側)に張り出すように設けられるため、この張り出したブラケット5を介して支柱3へ道路側から当接させることが可能となる。
【0051】
次にフランジ31と第1の支持材21とをボルト81とナット82により互いに接合する。具体的には第1の支持材21における薄板21aをフランジ31へ当接させ、これらをボルト81とナット82により接合する。このとき薄板21aと薄板21bとの間隔をボルト81の頭部の厚さに対応させて予め設定しておくことで、ボルト81の頭部が薄板21aと薄板21bとの間に押さえられることとなり、ボルト81が弛んでしまうのを防止できる。
【0052】
これらの工程を通じて、透光パネル4を、ブラケット5を介して支柱3へ取り付けることが可能となる。これらの取り付け動作では、支柱3に対して道路側から透光パネル4を取り付けることができる。このため本発明によれば、透光パネル4を支柱3の溝部に上から挿入することなく接合することが可能となり、支柱3の上方に高架橋等が存在し、施工のための空間が確保できない場合においても透光パネル4の接合を実現できる。このため本発明では、例えば高速道路同士が交差し、一方の道路の直上に他方の高架の道路が位置している場合においてもこれにより施工が阻害されるのを防止することができる。
【0053】
なお、フランジ31の民地側面にナット82を保持する手段として、プレートをコ字形に加工してナット82を固着させたクリップナット83としてフランジ31に挟み込んでナット82を配置している。
【0054】
このようにして、一枚の透光パネル4を、ブラケット5を介して支柱3へ取り付けが完了すると、これよりも上段又は下段にある透光パネル4も同様に支柱3へ取り付けが行われる。これらの工程を繰り返し行うことにより、本発明を適用した透光性遮音壁1が構築されていくことになる。
【0055】
このようにして得られた透光性遮音壁1では、上述したように、縦枠14、15への固定箇所が第2の支持材22における当接面22aであり、支柱3への固定箇所が薄板21aである。このとき、縦枠14、15への固定箇所としての当接面22aは、支柱3への固定箇所としての薄板21aよりも、民地側に位置していることが分かる。これにより、透光パネル4自体は支柱3における道路側のフランジ31表面よりも民地側に配設することが可能となる。
【0056】
これにより、透光パネル4が支柱3から道路側に張り出された状態で配置されることがなくなり、支柱3より民地側に透光パネル4が配置されることとなる。このため、運転者からみて、より手前に位置する支柱付近では、透光パネル4における枠材12〜15が道路側に張り出すことなく支柱3間に収納された景観となり、運転者からの眺望角度が狭まることもなくなり、運転者に圧迫感を与えてしまうのを防止できる。その結果、眺望性を向上させることが可能となる。また運転者からみて、より奥側に位置する支柱3付近では、支柱3を構成するH形鋼の溝部が透光パネルを介して視界に入るのを防止でき、運転者の眺望性が低下するのを防止できる。また透光パネル4を支柱3より民地側に透光パネル4が配置させることが可能となるため、道路側に透光パネル4が張り出してしまうのを防止することができ、建築限界を満たすことができる。
【0057】
特にこの透光パネル4では、
図10に示すようにアイボルト27における環状部分に索状体121が上下に挿通されていていてもよい。この索状体121は、これよりも上段又は下段に位置する他の透光パネル4に設けられたアイボルト27にも挿通されている。これにより、上下に連設されている各透光パネル4は、それぞれアイボルト27を介して一の索状体121が挿通されている。ちなみに、この索状体121は、ロープ等で構成されていてもよく、少なくともその上下端が固定されている。
【0058】
これにより、各透光パネル4はその端部がアイボルト27を介して索状体121に固定されていることにより、車両事故等による衝撃で透光パネル4が支柱3から逸脱した場合においても、アイボルト27を介して当該索状体121に引っ掛かることで透光パネル4が支持されることになる。その結果、透光パネル4が民地側へ落下してしまうのを防止することが可能となる。
【0059】
しかも本発明によれば、このアイボルト27は、縦枠14(15)における道路側から民地側に至るまでの厚みに収まる配置に設けられている。このため、アイボルト27自体は、縦枠14(15)やカバー16によって被覆されるため、当該アイボルト27自体が外部から視認されることなく、これにより眺望性が悪化するのを防止することが可能となる。