特許第6204780号(P6204780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6204780液圧ブレーキシステムのマスタシリンダ用のプライマリピストン構成要素及び液圧ブレーキシステムの操作方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204780
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】液圧ブレーキシステムのマスタシリンダ用のプライマリピストン構成要素及び液圧ブレーキシステムの操作方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20170914BHJP
   B60T 11/16 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   B60T13/74 Z
   B60T11/16 Z
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-207489(P2013-207489)
(22)【出願日】2013年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-76796(P2014-76796A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2016年9月21日
(31)【優先権主張番号】12187488.7
(32)【優先日】2012年10月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】ロラン・リュイリエー
(72)【発明者】
【氏名】バスティアン・カニャック
(72)【発明者】
【氏名】志波 正貴
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ブノワ
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−294145(JP,A)
【文献】 特開平10−138909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/74
B60T 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧ブレーキシステムのマスタシリンダ(14)用のプライマリピストン構成要素において、
前記マスタシリンダ(14)の貯留室(12)内に少なくとも部分的に移動できるように構成されたプライマリピストンハウジング(10)であって、前記プライマリピストンハウジング(10)の後ろ側(18)にキャビティ(16)が形成され、前記プライマリピストンハウジング(10)の前方(24)に向いた前記キャビティ(16)の内側面(22)に少なくとも1つの連続孔(20)が形成されたプライマリピストンハウジング(10)と、
前記プライマリピストンハウジング(10)の前記キャビティ(16)内に少なくとも部分的に移動できるように構成された補助ピストン構成要素(30)と、を有するプライマリピストン構成要素であって、
前記プライマリピストン構成要素の中心線(28)に沿って前記キャビティ(16)内に延在する内側ピストン本体(26)を有し、前記内側ピストン本体(26)は、前記少なくとも1つの第1の制動力伝達要素(56,62,66)の近くに配置され、ブレーキ作動要素に加えられた制動力(Fd)が少なくとも1つの第1の制動力伝達要素(56,62,66)を介して前記内側ピストン本体(26)に少なくとも部分的に伝わるように設計され、また前記内側ピストン本体(26)は、前記制動力(Fd)が前記プライマリピストンハウジング(10)に少なくとも部分的に伝わるように前記プライマリピストンハウジング(10)と接触し、
前記補助ピストン構成要素(30)は、前記内側ピストン本体(26)と前記プライマリピストンハウジング(10)との間の前記キャビティ(16)内に少なくとも部分的に移動でき、前記補助ピストン構成要素(30)は、前記少なくとも1つの第1の制動力伝達要素(56,62,66)、少なくとも1つの第2の制動力伝達要素(58)及び/又はブレーキ倍力装置(64)の近くに配置されて、前記ブレーキ倍力装置(64)によって提供されるブレーキ倍力装置力(Fb)が前記補助ピストン構成要素(30)に少なくとも部分的に伝わるように設計され、前記補助ピストン構成要素(30)は、前記ブレーキ倍力装置力(Fb)が前記内側ピストン本体(26)を介して前記プライマリピストンハウジング(10)に少なくとも部分的に伝わるように前記内側ピストン本体(26)と接触する、プライマリピストン構成要素。
【請求項2】
前記補助ピストン構成要素(30)が、中空円筒状ピストン(30)であり、前記内側ピストン本体(26)が、前記中空円筒状ピストン(30)内の円形開口(32)に少なくとも部分的に延在する、請求項1に記載のプライマリピストン構成要素。
【請求項3】
前記内側ピストン本体(26)は、前記内側ピストン本体(26)の第1端(34)での第1の直径(d1)と、前記内側ピストン本体(26)の第2端(36)でのより大きい第2の直径(d2)とを有する円筒形状を有し、前記内側ピストン本体(26)の前記第1の直径(d1)が、前記中空円筒状ピストン(30)内の前記円形開口(32)の内径(di)以下ある、請求項2に記載のプライマリピストン構成要素。
【請求項4】
前記内側ピストン本体(26)が、前記プライマリピストンハウジング(10)に拘束されないピストンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプライマリピストン構成要素。
【請求項5】
前記プライマリピストンハウジング(10)と前記内側ピストン本体(26)が、単一部分として構成された、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプライマリピストン構成要素。
【請求項6】
前記プライマリピストンハウジング(10)が、前記プライマリピストンハウジング(10)の前方(24)で、前記キャビティ(16)の前記内側面(22)と共に前記プライマリピストンハウジング(10)の内壁(52)から突出する環状サブユニット(50)を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプライマリピストン構成要素。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のプライマリピストン構成要素を有する液圧ブレーキシステム用のマスタシリンダ(14)。
【請求項8】
請求項7に記載のマスタシリンダ(14)を有する車両用の液圧ブレーキシステム。
【請求項9】
プライマリピストンハウジング(10)を有するプライマリピストン構成要素、前記プライマリピストン構成要素の中心線(28)に沿って前記プライマリピストンハウジング(10)の後ろ側(18)でキャビティ(16)内に延在する内側ピストン本体(26)、及び補助ピストン構成要素(30)を含むマスタシリンダ(14)を備えた液圧ブレーキシステムを操作する方法であって、
前記プライマリピストンハウジング(10)が、制動力(Fd)によって前記マスタシリンダ(14)の貯留室(12)内に少なくとも部分的に移動され、前記制動力(Fd)が、ブレーキ作動要素に加えられ、また前記内側ピストン本体(26)と接触する少なくとも1つの第1の制動力伝達要素(56,62,66)を介して前記内側ピストン本体(26)に伝達され、また前記内側ピストン本体(26)を介して前記プライマリピストンハウジング(10)に少なくとも部分的に伝達される際に、
前記補助ピストン構成要素(30)と接触する前記少なくとも1つの第1の制動力伝達要素(56,62,66)及び/又は少なくとも1つの第2の制動力伝達要素(58)にブレーキ倍力装置力(Fb)を加える段階を含み、前記補助ピストン構成要素(30)が、前記ブレーキ倍力装置力(Fb)によって前記内側ピストン本体(26)と前記プライマリピストンハウジング(10)との間の前記キャビティ(16)内に少なくとも部分的に移動され、前記補助ピストン構成要素(30)を介して前記ブレーキ倍力装置力(Fb)が前記内側ピストン本体(26)上と、更に前記プライマリピストンハウジング(10)に少なくとも部分的に伝達されるように前記内側ピストン本体(26)と接触し、前記プライマリピストンハウジング(10)が、前記ブレーキ倍力装置力(Fb)の少なくとも一部分によっても移動される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧ブレーキシステムのマスタシリンダ用のプライマリピストン構成要素に関する。本発明は、更に、液圧ブレーキシステム用のマスタシリンダ及び車両用の液圧ブレーキシステムに関する。更に、本発明は、液圧ブレーキシステムを操作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、液圧車両ブレーキシステム用の主ブレーキシリンダ及びその操作方法について述べている。主ブレーキシリンダは、外側ピストンを備えたプライマリピストン構成要素を有し、外側ピストンは、マスタシリンダの貯留室内に少なくとも部分的に移動できるように構成されている。外側ピストンは、外側ピストンの後ろ側に形成されたキャビティを有する。プライマリピストン構成要素は、更に、内側ピストンを有し、内側ピストンは、外側ピストンの後ろ側に形成されたキャビティ内で少なくとも部分的に動くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2011/085836のWO A1
【発明の概要】
【0004】
本発明は、請求項1の特徴を有する液圧ブレーキシステムのマスタシリンダ用のプライマリピストン構成要素、請求項7の特徴を有する液圧ブレーキシステム用のマスタシリンダ、請求項8の特徴を有する車両用の液圧ブレーキシステム、請求項9の特徴を有する液圧ブレーキシステムを動作させる方法を提供する。
【0005】
本発明は、マスタシリンダのプライマリピストン構成要素を提供し、ブレーキ倍力装置によって提供されるブレーキ倍力装置力は、補助ピストン構成要素を介して内側ピストン本体に伝達可能であり、内側ピストン本体は、プライマリピストン構成要素が、ブレーキ倍力装置力によってマスタシリンダの貯留室内に少なくとも部分的に移動されるように、プライマリピストンハウジングと接触する。更に、ブレーキ作動要素(例えば、ブレーキペダル)に加えられたドライバの制動力は、内側ピストン本体を介してプライマリピストンハウジングに伝達される。したがって、両方の力を使用して、プライマリピストン構成要素をマスタシリンダの貯留室内に移動させることができる。したがって、プライマリピストン構成要素は、ドライバにきわめて快適な通常モードを提供する。
【0006】
更に、ブレーキ倍力装置が故障した場合、プライマリピストン構成要素は、バックアップモードで動作可能であり、マスタシリンダの貯留室内の内圧を高めるために内側ピストン本体とプライマリピストンハウジングを移動するだけでよい。これにより、ブレーキ倍力装置の故障後にプライマリピストンハウジングを低い力で移動させることができる。したがって、本発明は、ブレーキ倍力装置の動作なしにマスタシリンダの貯留室内の内圧を高めるドライバに、より良い快適さを提供する。
【0007】
本発明は、複雑な構造物のないプライマリピストン構成要素を提供する。したがって、生産が安価である。更に、本発明のプライマリピストン構成要素の梱包サイズがきわめて小さい。これにより、本発明のプライマリピストン構成要素の配置が容易になる。
【0008】
例えば、補助ピストン構成要素は、中空円筒状ピストンであり、内側ピストン本体は、中空円筒状ピストン内の円形開口を少なくとも部分的に延在する。後述するように、そのような中空円筒状ピストンは、ブレーキ倍力装置の倍力体と容易に接触することができる。したがって、従来の安価な倍力体を使用してブレーキ倍力装置力を移動させることができる。
【0009】
好ましくは、内側ピストン本体は、内側ピストン本体の第1端での第1の直径と、内側ピストン本体の第2端でのより大きい第2の直径とを有する円筒形状を有し、内側ピストン本体の第1の直径は、中空円筒状ピストン内の円形開口の内径以下ある。この場合、ブレーキ倍力装置力は、第1の直径と第2の直径との間の段と接触する中空円筒状ピストンを介して内側ピストン本体に伝達可能である。これにより、ブレーキ倍力装置力が、プライマリピストンハウジングと中空円筒状ピストンとの(直接)接触なしにプライマリピストンハウジングに伝達されることが保証される。
【0010】
例えば、内側ピストン本体は、プライマリピストンハウジングに拘束されないピストンである。あるいは、プライマリピストンハウジングと内側ピストンハウジングは、単一部品で構成される。いずれの場合も、内側ピストン本体は、低コストで生産可能である。
【0011】
好ましい実施形態では、プライマリピストンハウジングは、プライマリピストンハウジングの前方で、キャビティの内側面と共にプライマリピストンハウジングの内壁から突出する環状サブユニットを備える。後述するように、そのようなプライマリピストン構成要素は、マスタシリンダの貯留室とリザーバとの間の少なくとも1つの液圧接続(例えば、オリフィス孔)の高速閉鎖を保証する。
【0012】
また、上に列挙した利点は、対応するマスタシリンダによって提供される。
【0013】
更に、これらの利点は、そのようなマスタシリンダを含む液圧ブレーキシステムにより実現することができる。
【0014】
更に、前述の利点は、液圧ブレーキシステムを操作する対応の方法を実施することによっても提供される。
【0015】
本発明の更なる特徴及び利点は、図と関連して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1a】プライマリピストン構成要素の第1の実施形態の概略図である。
図1b】プライマリピストン構成要素の第1の実施形態の概略図である。
図1c】プライマリピストン構成要素の第1の実施形態の概略図である。
図2a】プライマリピストン構成要素の第2の実施形態の側面図である。
図2b】プライマリピストン構成要素の第2の実施形態の断面図である。
図2c】プライマリピストン構成要素の第2の実施形態の側面図である。
図2d】プライマリピストン構成要素の第2の実施形態の断面図である。
図2e】プライマリピストン構成要素の第2の実施形態の側面図である。
図2f】プライマリピストン構成要素の第2の実施形態の断面図である。
図3】液圧ブレーキシステムを操作する方法の一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1a〜図1cは、プライマリピストン構成要素の第1の実施形態の概略図を示す。
【0018】
後述するプライマリピストン構成要素は、液圧ブレーキシステムのマスタシリンダ14内で使用するように設計されている。プライマリピストン構成要素の使用は、特定のタイプのマスタシリンダ14や特定の実施形態の液圧ブレーキシステムに限定されない。代わりに、プライマリピストン構成要素と共に、様々なタイプのマスタシリンダ14と液圧ブレーキシステムを使用することができる。
【0019】
プライマリピストン構成要素は、マスタシリンダ14の貯留室12内に少なくとも部分的に移動できるように構成されたプライマリピストンハウジング10を有する。マスタシリンダ14は、例えば、タンデムマスタシリンダでよい。この場合、マスタシリンダ14は、また、マスタシリンダ14の別の貯留室内に少なくとも部分的に移動できるように構成されたセコンダリピストン構成要素(図示せず)を有する。しかしながら、マスタシリンダ14は、図1a〜図1cに示されたように、単一の貯留室12を有するタイプでもよい。
【0020】
キャビティ16は、プライマリピストンハウジング10の後ろ側18に形成される。プライマリピストンハウジング10の後ろ側18は、プライマリピストンハウジング10がマスタシリンダ14から部分的に突出するときに、貯留室12の内容積から遠ざかる側である。キャビティ16の内側面22/底には少なくとも1つの連続孔20が形成され、内側面22/底は、プライマリピストンハウジング10の前面24に向けられる。(プライマリピストン構成要素がマスタシリンダ14内に少なくとも部分的に移動されたときに、前面24は、プライマリピストンハウジング10の後ろ側18から遠ざかり、それにより、前面24が、貯留室12の内容積の方に導かれる。)少なくとも1つの連続孔20は、ブレーキ液が少なくとも1つの連続孔20を通って貯留室12からキャビティ16に流れ込むことができるように形成される。したがって、少なくとも1つの連続孔20が、貯留室12とキャビティ16内で同じ圧力を保証する。
【0021】
プライマリピストン構成要素は、また、プライマリピストン構成要素の中心線28に沿ってキャビティ16内に延在する内側ピストン本体26を有する。したがって、内側ピストン本体26は、プライマリピストン構成要素の中心線28に沿って移動する。内側ピストン本体26は、少なくとも1つの第1の制動力伝達要素の近くに配置されて、内側ピストン本体26上の少なくとも1つの第1の制動力伝達要素を介してドライバがブレーキ作動要素(図示せず)に加える制動力Fdが少なくとも部分的に伝達できるように設計される。ブレーキ作動要素は、例えば、ブレーキペダルである。しかしながら、プライマリピストン構成要素の使用は、ブレーキペダルとして設計されたブレーキ作動要素に限定されない。少なくとも1つの第1の制動力伝達要素の例を下に示す。
【0022】
内側ピストン本体26は、更に、制動力Fdが内側ピストン本体26を介してプライマリピストンハウジング10に少なくとも部分的に伝達できるように、プライマリピストンハウジング10と接触する。これにより、プライマリピストンハウジング10は、制動力Fdによって貯留室12内に少なくとも部分的に入り、マスタシリンダ14の少なくとも1つの貯留室12内の内圧を高める。したがって、プライマリピストン構成要素を備えた車両のドライバは、ブレーキ作動要素に制動力Fdを加えることによって、マスタシリンダ14の少なくとも1つの貯留室12内の内圧を高めることができる。したがって、ドライバは、車両の電気システムが故障した場合でも、少なくとも1つの貯留室12内の内圧を高めることができる。
【0023】
プライマリピストン構成要素は、また、プライマリピストンハウジング10のキャビティ16内に少なくとも部分的に移動することができるように構成された補助ピストン構成要素30を備える。補助ピストン構成要素30は、内側ピストン本体26とプライマリピストンハウジング10との間にあるキャビティ16のスペース内に少なくとも部分的に移動することができる。補助ピストン構成要素30は、少なくとも1つの第1の制動力伝達要素、少なくとも1つの第2の制動力伝達要素及び/又はブレーキ倍力装置(図示せず)の近くに配置されて、ブレーキ倍力装置によって提供されたブレーキ倍力装置力Fbが、補助ピストン構成要素30上に少なくとも部分的に伝達して、補助ピストン構成要素30をキャビティ16内に少なくとも部分的に入れることができるように設計される。更に、補助ピストン構成要素30は、ブレーキ倍力装置力Fbが、内側ピストン本体26を介してプライマリピストンハウジング10に少なくとも部分的に伝わることができるように、内側ピストン本体26と接触してもよい。
【0024】
したがって、車両の速度が低下する際にドライバの支援としてブレーキ倍力装置を使用することができる。この場合、プライマリピストンハウジング10は、制動力Fdより大きい合力によって貯留室12に入れられる。例えば、合力は、ドライバの制動力Fdとブレーキ倍力装置力Fbの和である。したがって、プライマリピストンハウジング10が、きわめて高い合力によって貯留室12に入れられた場合でも、ドライバは、より低い制動力Fdをブレーキ作動要素に加えなければならない。したがって、図1a〜図1cの実施形態は、ドライバが貯留室12内の内圧の高めるのを容易にする。
【0025】
プライマリピストン構成要素と共に任意のタイプのブレーキ倍力装置を使用することができる。例えば、ブレーキ倍力装置は、少なくとも1つの第1の制動力伝達要素及び/又は第2の制動力伝達要素のブレーキ倍力装置力Fbを加える電動モータを備える。
【0026】
図1a〜図1cの実施形態では、補助ピストン構成要素30は、中空円筒状ピストン30であり、内側ピストン26は、中空円筒状ピストン30内の円形開口32に少なくとも部分的に延在する。しかしながら、補助ピストン構成要素30の形状は、中空円筒形状に限定されない。
【0027】
内側ピストン本体26は、内側ピストン本体26の第1端34で第1の直径d1を有し、内側ピストン本体26の第2端36でより大きい第2の直径d2を有する円筒形状を有することが好ましい。特に、内側ピストン本体26の第1の直径d1は、中空円筒状ピストン30内の円形開口32の内径di以下ある。構成要素26及び30のこの実施形態は、中空円筒状ピストン30の前面が、プライマリピストンハウジング10内のキャビティ16の内側面22と接触することなく、第1の直径d1と第2の直径d2の間の段と接触することを保証する。したがって、ブレーキ倍力装置により加えられたブレーキ倍力装置力Fbは、内側ピストン本体26の動きを支援する。このように、プライマリピストンハウジング10と中空円筒状ピストン30との直接接触が抑制される。したがって、ドライバは、ブレーキ作動要素(図示せず)に制動力Fdを加えるときに快適なブレーキ感覚を持つ。
【0028】
プライマリピストンハウジング10と中空円筒状ピストン30との間にはシールリング31が配置されることが好ましい。中空円筒状ピストン30と内側ピストン本体26との間に別のシールリング33が配置されてもよい。これにより、貯留室12からのブレーキ液の漏れを阻止することができる。シールリング31と33の少なくとも一方が、構成要素10、26及び30のうちの少なくとも1つの構成要素内の切欠きに挿入されてもよい。シールリング31と33の少なくとも一方が、例えば、リップ状シールでもよい。しかしながら、プライマリピストン構成要素は、いかなる特別のシールリング31及び33にも限定されない。
【0029】
図1a〜図1cの実施形態では、内側ピストン本体26は、プライマリピストンハウジング10のキャビティ16に少なくとも部分的に移動することができるピストンである。しかしながら、プライマリピストンハウジング10と内側ピストン本体26を単一部分として形成することもできる。これにより、プライマリピストン構成要素をマスタシリンダ14の近く又はその中に配置し易くなる。
【0030】
少なくとも1つのブレーキ回路38は、少なくとも1つのブレーキ回路38の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ40内のブレーキ圧力が、少なくとも1つの貯留室12内の内圧の上昇により上昇できるように、マスタシリンダ14の少なくとも1つの貯留室12に結合/接続されてもよい。プライマリピストン構成要素を備えたマスタシリンダ14の使用は、特定のタイプの少なくとも1つのブレーキ回路36にも少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ14にも限定されない。
【0031】
マスタシリンダ14のハウジングは、少なくとも1つのブレーキ回路38を少なくとも1つの貯留室12に結合する少なくとも1つの開口42を備えてもよい。マスタシリンダ14のハウジングは、少なくとも1つの貯留室12の内壁からリザーバ46で液圧管まで延在する少なくとも1つのオリフィス孔44を有してもよい。また、マスタシリンダ14は、少なくとも2つのシールリング48(例えば、リップ状シール)を有してもよく、シールリング48は、少なくとも1つのオリフィス孔44を取り囲む2つの切欠き内に配置され、またプライマリピストンハウジング10の外側と接触する。この場合、シールリング48とプライマリピストンハウジング10とマスタシリンダ14との接触により、少なくとも貯留室12からのブレーキ液の漏れが阻止される。
【0032】
プライマリピストンハウジング10は、プライマリピストンハウジング10の前面24で、キャビティ16の内側面23と共にプライマリピストンハウジング10の内壁52から突出する環状サブユニット50を備える。環状サブユニット50は、プライマリピストンハウジング10の大部分がマスタシリンダ14から更に突出するときに、少なくとも1つのオリフィス孔44をプライマリピストンハウジング10の位置で迅速に閉じることを保証する。少なくとも1つのオリフィス孔44の拡張部54が、環状サブユニット50を貫通して形成されることが好ましい。
【0033】
図1a〜図1cの実施形態では、液圧ブレーキシステムは、少なくとも1つの第1の制動力伝達要素として、少なくとも1つの入力ロッド56/プッシュロッドを有する。少なくとも1つの第2の制動力伝達要素は、ブレーキ倍力装置(図示せず)によって移動可能な少なくとも倍力体58である。倍力体58は、倍力体58のマスタシリンダ14から遠い方の側の第1の直径を有する開口60を有する。倍力体58のマスタシリンダ14に向いた第2の側には、より大きい第2の直径の開口60が形成される。倍力体58の開口60内の第1の直径と第2の直径との間の段にリアクションディスク62が配置される。リアクションディスク62は、一方の側が入力ロッド56と接触され、別の側が内側ピストン本体26の第1端34と接触されてもよい。したがって、制動力Fdは、リアクションディスク62を介して入力ロッド56から内側ピストン本体26に少なくとも部分的に伝達可能である。また、ブレーキ倍力装置力Fbの少なくとも一部分が、リアクションディスク62を介して内側ピストン本体26に伝達されてもよい。有利な実施形態では、リアクションディスクは、中空円筒状ピストン30内の円形開口32の内径diと等しい直径を有する。ブレーキ倍力装置力Fbのほとんどは、補助ピストン構成要素30と倍力体58との(直接)接触により補助ピストン構成要素30に伝達されることが好ましい。
【0034】
内側ピストン本体26のまわりの補助ピストン構成要素30が構成されることにより、補助ピストン構成要素30の倍力体58との接触が容易になる。したがって、従来の安価な倍力体58が使用されてもよい。
【0035】
図1aは、ドライバがブレーキ作動要素(図示せず)に力を加えないときの状況のプライマリピストン構成要素を示す。したがって、制動力Fdは、0である。ブレーキ倍力装置も非活動化され、ブレーキ倍力装置力Fbは0である。
【0036】
特別の実施形態では、ドライバがブレーキ作動要素を操作しないとき、入力ロッド56とリアクションディスク62の間にギャップ(図示せず)があってもよい。したがって、少なくとも1つの貯留室12内にブレーキ圧力が蓄積する前に、自動車の速度を低下させるためのジェネレータを使用することができる。
【0037】
図1bは、ブレーキシステムが通常モードのときの制動状況でのプライマリピストン構成要素を示す。ブレーキシステムは、ブレーキ倍力装置が操作可能な場合に通常モードで動作可能であり、したがってドライバを支援する。
【0038】
ドライバは、ブレーキ作動要素(図示せず)にゼロではない制動力Fdを加える。ブレーキ倍力装置は、補助ピストン構成要素30によってプライマリピストンハウジング10上にブレーキ倍力装置力Fbを加えることによりドライバを支援する。例えば、ブレーキ倍力装置力Fbは、制動力Fdの関数である。したがって、プライマリピストンハウジング10に加えられた合力は、制動力Fdよりかなり大きくてもよい。したがって、プライマリピストンハウジング10を入力ロッド56より速く移動させて、少なくとも1つの貯留室12内の内圧を迅速に高めることができる。(図1bを参照)。
【0039】
通常モードでは、プライマリピストン構成要素の様々な部分は、隣接した貯留室12の容積が第1の領域A1で減少するように移動可能である。第1の領域A1は、隣接した貯留室12に向けられたプライマリピストンハウジング10の第1の前方面積Af1と、ブレーキ液と接触する補助ピストン構成要素30の第2の前方面積Af2の和でよい。したがって、プライマリピストン構成要素の様々な部分の動きに作用する圧縮力Fc1は、次の通りである。
【0040】
Fc1=p*A1
【0041】
ここで、pは、少なくとも1つの貯留室12内の圧力である。
【0042】
図1cは、液圧ブレーキシステムがバックアップモードのときの制動状況におけるプライマリピストン構成要素を示す。バックアップモードは、少なくともブレーキ倍力装置の故障又は機能障害の際の液圧ブレーキシステムのモードとして定義される。例えば、液圧ブレーキシステムは、その車両の電気システムの故障後にバックアップモードで実行される。
【0043】
バックアップモードでは、ブレーキ倍力装置力Fbは0である。したがって、ドライバが、内側ピストン本体26とプライマリピストンハウジング10を隣接貯留室12に押し込んだ場合でも、補助ピストン構成要素30は、その外側位置に留まる。したがって、駆動力Fdによって移動される質量が減少する。
【0044】
更に、プライマリピストンハウジング10の内壁52内の少なくとも1つの連続孔20により、隣接貯留室12の容積は、第1の領域A1より小さい第2の領域A2で減少する。例えば、第2の領域A2は、隣接貯留室12に向けられたプライマリピストンハウジング10の第1の前方面積Af1と等しくてもよい。したがって、プライマリピストン構成要素の様々な部分の動きに作用する圧縮力Fc2は、次の通りである。
【0045】
Fc2=p*A2<Fc1
【0046】
したがって、ドライバは、圧縮力Fc1より小さい制動力Fdによってプライマリピストンハウジング10を隣接貯留室12内に入れることができる。
【0047】
図2a〜図2fは、プライマリピストン構成要素の第2の実施形態の概略図を示し、図2a、図2c及び図2eは、側面図を示し、図2b、図2d及び図2fは、断面図を示す。
【0048】
図2a〜図2fに示されたプライマリピストン構成要素は、前述の全ての特徴を有する。プライマリピストン構成要素は、図2a〜図2fに示されたモータ64を有するブレーキ倍力装置と相互作用するように設計されている。図2a〜図2fは、また、リアクションディスク62と内側ピストン本体26との間で配置された出力ロッド66と、リターンスプリング68(上の図に示されていない)を示す。
【0049】
図2a〜図2fのプライマリピストンは、補助貯留室70を有するタンデムマスタシリンダ14内に配置され、その容積は、セコンダリピストン72を補助貯留室70内に少なくとも部分的に移動させることにより縮小可能である。
【0050】
図2aと図2bは、制動力Fdが0に等しい状況でのプライマリピストン構成要素を示す。図2cと図2dに、通常モードの制動状況でのプライマリピストン構成要素の作動機構を示す。更に、図2eと図2fに、バックアップモードの制動状況でのプライマリピストン構成要素の作動機構を示す。
【0051】
前述のプライマリピストン構成要素は、高い頑強性を有する。これらのプライマリピストン構成要素は、従来の機器を使用して生産可能である。中心線28に沿ったプライマリピストン構成要素のパッケージ長は、極めて短い。これにより、マスタシリンダ内の任意のプライマリピストン構成要素の配置が容易になる。
【0052】
また、前述の利点は、そのようなプライマリピストン構成要素を含む液圧ブレーキシステム用のマスタシリンダと、対応するマスタシリンダを含む車両用の液圧ブレーキシステムとによって保証される。
【0053】
図3は、液圧ブレーキシステムの操作方法の一実施形態のフローチャートを示す。
【0054】
後述する方法は、プライマリピストンハウジングと共にプライマリピストン構成要素を有する液圧ブレーキシステムのマスタシリンダと、プライマリピストンハウジングの後ろ側でプライマリピストン構成要素の中心線に沿ってキャビティ内に延在する内側ピストン本体と、補助ピストン構成要素とによって実行されてもよい。例えば、この方法は、前述の実施形態のうちの1つにより実行されてもよい。しかしながら、この方法の実施は、そのようなマスタシリンダ又はそのようなプライマリピストン構成要素に限定されない。
【0055】
方法は、プライマリピストンハウジングが、制動力によってマスタシリンダの貯留室内に少なくとも部分的に移動されている間に実行されるステップS1を含む。制動力は、ドライバによってブレーキ作動要素に加えられ、内側ピストン本体と接触する少なくとも1つの第1の制動力伝達要素によって内側ピストン本体に伝達される。次に、制動力は、内側ピストン本体によってプライマリピストンハウジングに少なくとも部分的に伝達される。したがって、プライマリピストンは、少なくとも制動力によって隣接した貯留室内に少なくとも部分的に移動される。
【0056】
ステップS1では、ブレーキ倍力装置力が、(ブレーキ倍力装置によって)少なくとも1つの第1の制動力伝達要素及び/又は少なくとも1つの第2の制動力伝達要素に加えられる。少なくとも1つの第1及び/又は第2の制動力伝達要素が、補助ピストン構成要素と接触し、補助ピストン構成要素は、ブレーキ倍力装置力によって、内側ピストン本体とプライマリピストンハウジングとの間のキャビティ内に少なくとも部分的に移動される。補助ピストン構成要素は、ブレーキ倍力装置力が補助ピストン構成要素を介して内側ピストン本体と、更にプライマリピストンハウジングとに少なくとも部分的に伝達されるように、内側ピストン本体と接触する。したがって、プライマリピストンハウジングは、ブレーキ倍力装置力の少なくとも一部分によって移動される。
【0057】
また、前述の利点は、ここで説明される方法によって提供される。
【符号の説明】
【0058】
10 プライマリピストンハウジング
12 貯留室
14 マスタシリンダ
16 キャビティ
18 後ろ側
20 連続孔
22 内側面
24 前面
26 内側ピストン本体
28 中心線
30 補助ピストン構成要素
56,62,66 第1の制動力伝達要素
58 第2の制動力伝達要素
64 ブレーキ倍力装置
Fb ブレーキ倍力装置力
Fd 制動力
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図3