(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記低融点ガラスは、バリウムガラス、ボロンガラス、ストロンチウムガラス、アルミナ珪酸ガラス、ソーダ亜鉛ガラス、及び、ソーダバリウムガラスのうち少なくとも1種を含むガラスである請求項5に記載のガス流通部材。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1(a)は、タービンハウジングの一例を模式的に示す上面図であり、
図1(b)は、ガス流通面に表面被覆層を形成したタービンハウジングの一例を模式的に示す上面図である。
図1(c)は、
図1(b)のA−A線断面図である。
【
図2】
図2(a)は、エキゾーストマニホールドの一例を模式的に示す斜視図であり、
図2(b)は、
図2(a)のエキゾーストマニホールドをB−B線で切断した断面図である。
図2(c)は、ガス流通面に表面被覆層を形成したエキゾーストマニホールドの一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4(a)は、排ガス浄化装置のガス流入部又はガス流出部となる基材の一例を模式的に示す一部切断斜視図であり、
図4(b)は
図4(a)にCで示す領域の拡大図である。
図4(c)はガス流通面に表面被覆層を形成したガス流通部材の一例を模式的に示す一部切断斜視図であり、
図4(d)は
図4(c)にDで示す領域の拡大図である。
【0023】
(発明の詳細な説明)
以下、本発明について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0024】
以下、本発明のガス流通部材について説明する。
本発明のガス流通部材は、ガス流通面を有する金属からなる基材と、
上記基材の上記ガス流通面に被覆され、非晶性無機材及び結晶性無機材を含む表面被覆層とを備えたガス流通部材であって、
上記結晶性無機材は、カルシア、マグネシア、セリア、アルミナ、及び、ジルコニアからなる群から選択された少なくとも1種からなり、
上記基材の上記ガス流通面は、その粗さ曲線における十点平均粗さRzJISが10〜50μmであり、かつ、そのうねり曲線における最大高さうねりWzが15〜100μmである面であり、
上記基材の上記ガス流通面の粗さ及びうねりが上記表面被覆層によって埋められており、
上記表面被覆層の平均厚さは50μmを超えており、
上記基材の上記ガス流通面が上記表面被覆層で被覆されてなる被覆ガス流通面は、粗さ曲線における十点平均粗さRzJISが5μm以下である平滑面であり、かつ、うねり曲線における最大高さうねりWzが10μm以下である平坦面であることを特徴とする。
【0025】
本発明のガス流通部材は、ターボエンジンのハウジング用部品や排ガス浄化装置のガス流入部又はガス流出部となる排気系部品として用いることができる。
最初に、ターボエンジンのハウジング用部品の例として、タービンハウジングとして用いられる本発明のガス流通部材について説明する。
【0026】
図1(a)は、タービンハウジングの一例を模式的に示す上面図であり、
図1(b)は、ガス流通面に表面被覆層を形成したタービンハウジングの一例を模式的に示す上面図である。
図1(c)は、
図1(b)のA−A線断面図である。
図1(a)にはタービンハウジング20を示しており、タービンハウジング20はガス流通面を有する金属からなる基材(基材20)である。
【0027】
基材20の材質としては、耐熱性の高い鋳物が好適に用いられ、オーステナイト系耐熱鋳鋼、オーステナイト系耐熱鋳鉄、フェライト系耐熱鋳鋼、フェライト系耐熱鋳鉄等が挙げられる。ターボエンジンにおいては、タービンハウジング20内にタービンインペラが収容され、エンジンから排出された排ガスがタービンハウジング20内に流通する。
図1(a)に示すタービンハウジング20において、排ガスは点線で描いた2つの円の間の領域に流通するので、その領域を構成する基材の表面がガス流通面21である。
【0028】
上述したように、基材の材質として鋳物を用いた場合、ガス流通面は鋳肌面となる。鋳肌面は一般的には面粗度が高い表面であり、例えば、その表面の十点平均粗さRzJISが10〜50μmであり、10〜30μmが望ましく、12〜19μmがより望ましい。
鋳肌面のうねりは、うねり曲線における最大高さうねりWzが15〜100μmであり、15〜50μmが望ましく、19〜38μmがより望ましい。
鋳肌面の十点平均粗さRzJIS及び最大高さうねりWzは、JIS B0601:2001で規定され、測定装置として株式会社キーエンス製ワンショット3D測定マクロスコープVR−3000を用いて、25℃の環境下において、カットオフ値λs=設定なし、λc=0.8mm、計測距離=4mmで測定することができる。
【0029】
基材の厚さの望ましい下限は0.2mm、より望ましい下限は0.4mmであり、望ましい上限は10mm、より望ましい上限は4mmである。
基材の厚さが0.2mm未満であると、ガス流通部材の強度が不足する。また、基材の厚さが10mmを超えると、ガス流通部材の重量が大きくなり、例えば、自動車等の車輌に搭載することが難しくなり、実用に適しにくくなる。
【0030】
基材20のガス流通面21は、
図1(b)及び
図1(c)に示すように表面被覆層30によって被覆され、ガス流通面21の粗さが表面被覆層30によって埋められる。
このように基材20のガス流通面21が表面被覆層30によって被覆され、本発明のガス流通部材10となる。
そして、基材のガス流通面21が表面被覆層30で被覆されてなる被覆ガス流通面40は、十点平均粗さRzJISが5μm以下である平滑面となっている。被覆ガス流通面40の十点平均粗さRzJISは4〜5μmであることが望ましい。
また、被覆ガス流通面40は、最大高さうねりWzが10μm以下である平坦面となっている。被覆ガス流通面40の最大高さうねりWzは7〜10μmであることが望ましい。
なお、被覆ガス流通面の粗さ測定及びうねり測定は鋳肌面の粗さ測定及びうねり測定と同様の装置及び条件により行うことができる。
【0031】
表面被覆層は、非晶性無機材を含む層であり、非晶性無機材としては、軟化点が300〜1000℃である低融点ガラスであることが好ましい。
上記低融点ガラスの種類は特に限定されるものではないが、バリウムガラス、ボロンガラス、ストロンチウムガラス、アルミナ珪酸ガラス、ソーダ亜鉛ガラス、及び、ソーダバリウムガラスのうち少なくとも1種を含むガラスであることが好ましい。
これらのガラスは、上述のように、単独で用いてもよいし、2種類以上のガラスが混合されていてもよい。
また、表面被覆層のなかには気孔を含んでいてもよい。
【0032】
上記のような低融点ガラスの軟化点が300〜1000℃の範囲にあると、低融点ガラスを融解させて基材(金属材料)の表面に塗布(コート)した後、加熱、焼成処理を施すことにより、金属からなる基材のガス流通面上に表面被覆層を容易に形成することができる。しかも、基材との密着性に優れた表面被覆層を形成することができる。
【0033】
上記低融点ガラスの軟化点が300℃未満であると、軟化点の温度が低すぎるため、加熱処理の際に、表面被覆層となる層が溶融等により流れ易く、均一な厚さの層を形成することが難しくなり、一方、上記低融点ガラスの軟化点が1000℃を超えると、逆に、加熱処理の温度を極めて高く設定する必要があるため、加熱により基材の機械的特性が劣化するおそれが生じる。
なお、軟化点は、JIS R 3103−1:2001に規定される方法に基づき、例えば、有限会社オプト企業製の硝子自動軟化点・歪点測定装置(SSPM−31)を用いて測定することができる。
【0034】
表面被覆層には、さらに結晶性無機材が含まれており、結晶性無機材はカルシア、マグネシア、セリア、アルミナ、及び、ジルコニアからなる群から選択された少なくとも1種からなる。
【0035】
ジルコニアを含む結晶性無機材の具体例としては、例えば、イットリア安定化ジルコニア、CaO安定化ジルコニア、MgO安定化ジルコニア、ジルコン、CeO安定化ジルコニア等が挙げられる。
これらの結晶性無機材の中では、耐熱性及び耐腐食性に優れる、α−アルミナ、イットリア安定化ジルコニアが好ましい。
【0036】
結晶性無機材の粒子の平均粒子径は0.1〜50μmであることが望ましく、5〜50μmであることがより望ましい。
また、表面被覆層に含まれる非晶性無機材と結晶性無機材の合計量に対する結晶性無機材の重量割合は、10〜70重量%であることが望ましく、15〜65重量%であることがより望ましい。
【0037】
表面被覆層の平均厚さは50μmを超えて厚く形成されている。そのため、基材のガス流通面の粗さ及びうねりを埋めて平滑面かつ平坦面となる被覆ガス流通面が得られる。
表面被覆層の平均厚さは100μm以上であることが望ましく、200μm以上であることがより望ましい。また、表面被覆層の平均厚さの望ましい上限値は1000μmであり、より望ましい上限値は750μmである。
表面被覆層の平均厚さは、膜厚計により測定することができる。膜厚計として株式会社フィッシャー・インストルメンツ製、デュアルスコープMP40を用いて測定する場合、膜厚補正を任意の30点を用いて行ったのち、膜厚測定を10点に対して行い、その測定値の平均をとって表面被覆層の平均厚さとすることができる。
膜厚測定を10点に対して行う場合、測定領域内で測定部位の偏りがないように任意の10点を取ることが望ましい。例えば、測定を1mm等間隔おきに行う等の方法が挙げられる。
【0038】
本発明のガス流通部材は、ガス流通面を有する金属からなる基材のガス流通面に、表面被覆層を形成するための塗料組成物を塗布して表面被覆層を形成することによって製造することができる。
表面被覆層を形成するための塗料組成物の材料としては、上述した非晶性無機材の粉末及び結晶性無機材の粉末が挙げられる。そのほかに分散媒、有機結合材等が配合されていてもよい。
【0039】
上記分散媒としては、例えば、水や、メタノール、エタノール、アセトン等の有機溶媒等が挙げられる。塗料組成物に含まれる非晶性無機材の粉末と分散媒との配合比は、特に限定されるものでないが、例えば、非晶性無機材の粉末100重量部に対して、分散媒が50〜150重量部であることが望ましい。基材に塗布するのに適した粘度となるからである。
上記有機結合材としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、分散媒と有機結合材とを併用してもよい。
【0040】
以下、上記した塗料組成物の調製とそれを用いたガス流通部材の製造方法について説明する。
【0041】
(1)金属からなる基材を準備する工程
ガス流通面を有する金属からなる基材(以下、基材ともいう)を出発材料とし、まず、基材のガス流通面の不純物を除去するために洗浄処理を行う。
上記洗浄処理としては特に限定されず、従来公知の洗浄処理を用いることができ、具体的には、例えば、アルコール溶媒中で超音波洗浄を行う方法等を用いることができる。
【0042】
(2)表面被覆層を形成する工程
結晶性無機材、非晶性無機材等を混合し、塗料組成物を調製する。
具体的には、例えば、結晶性無機材の粉末と、非晶性無機材の粉末とをそれぞれ所定の粒度、形状等になるように調製し、各粉末を所定の配合比率で乾式混合して混合粉末を調製し、さらに水を加えて、ボールミルで湿式混合することにより塗料組成物を調製する。
ここで、混合粉末と水との配合比は、特に限定されるものでないが、混合粉末100重量部に対して、水100重量部程度が望ましい。基材に塗布するのに適した粘度となるからである。また、必要に応じて、塗料組成物には、上記したように、有機溶剤等の分散媒及び有機結合材等を配合してもよい。
【0043】
(3)次に、基材のガス流通面に塗料組成物を塗布する。
上記塗料組成物を塗布する方法としては、例えば、スプレーコート、静電塗装、インクジェット、スタンプやローラ等を用いた転写、ハケ塗り、又は、電着塗装等の方法を用いることができる。
【0044】
(4)続いて、塗料組成物を塗布した基材に焼成処理を施す。
具体的には、上記塗料組成物を塗布した基材を乾燥後、加熱焼成することにより表面被覆層を形成する。
上記焼成温度は、非晶性無機材の軟化点以上とすることが望ましく、配合した非晶性無機材の種類にもよるが700℃〜1100℃が望ましい。焼成温度を非晶性無機材の軟化点以上の温度とすることにより基材と非晶性無機材とを強固に密着させることができ、基材と強固に密着した表面被覆層を形成することができるからである。
【0045】
上記手順により、本発明のガス流通部材の一例である、タービンハウジングとして用いられる、
図1に示した本発明のガス流通部材10を製造することができる。
【0046】
次に、ターボエンジンのハウジング用部品の別の例として、エキゾーストマニホールドとして用いられる本発明のガス流通部材について説明する。
【0047】
図2(a)は、エキゾーストマニホールドの一例を模式的に示す斜視図であり、
図2(b)は、
図2(a)のエキゾーストマニホールドをB−B線で切断した断面図である。
図2(c)は、ガス流通面に表面被覆層を形成したエキゾーストマニホールドの一例を模式的に示す断面図である。
図2(a)及び
図2(b)にはエキゾーストマニホールド120を示しており、エキゾーストマニホールド120は金属管からなる基材(基材120)である。
ターボエンジンにおいては、エンジンの各燃焼室から排出された排ガスがエキゾーストマニホールド120内に流通する。
図2(a)及び
図2(b)に示すエキゾーストマニホールド120において、排ガスは金属管内を流通するので、金属管の内周面がガス流通面121である。
エキゾーストマニホールドの材質としては、上述したタービンハウジングと同様の耐熱性の高い鋳物であることが望ましく、その場合、ガス流通面は鋳肌面となる。
金属からなる基材としてのエキゾーストマニホールドの望ましい形態は、金属からなる基材がタービンハウジングである場合に説明した各形態と同様であり、基材のガス流通面の面粗度及びうねりの望ましい形態も同様である。
【0048】
基材120のガス流通面121は、
図2(c)に示すように表面被覆層130によって被覆され、ガス流通面121の粗さが表面被覆層130によって埋められる。
このように基材120のガス流通面121が表面被覆層130によって被覆され、本発明のガス流通部材110となる。
そして、基材120のガス流通面121が表面被覆層130で被覆されてなる被覆ガス流通面140は、十点平均粗さRzJISが5μm以下である平滑面となっている。また、被覆ガス流通面140は、最大高さうねりWzが10μm以下である平坦面となっている。
表面被覆層130の望ましい形態は、金属からなる基材がタービンハウジングである場合に説明した各形態と同様である。
また、表面被覆層130の平均厚さは50μmを超えており、表面被覆層の厚さの望ましい範囲も、金属からなる基材がタービンハウジングである場合に説明した範囲と同様である。
【0049】
本発明のガス流通部材がエキゾーストマニホールドである場合の、ガス流通部材の製造方法は、ガス流通部材がタービンハウジングである場合と同様である。
塗料組成物を塗布する方法として、金属管の内周面に塗料組成物を塗布するのに適した方法を用いることが望ましい。
【0050】
続いて、本発明のガス流通部材を排ガス浄化装置のガス流入部又はガス流出部となる排気系部品として用いる例について説明する。
図3は、排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。
図3に示す排ガス浄化装置400では、排ガス処理体420が筒状のケーシング430に収容されている。排ガス処理体420の周囲には無機繊維製のマットである保持シール材410が巻きつけられている。
図3では排ガスの流れる向きを矢印Gで示しており、排ガス処理体420の排ガス流入側端面420a及び排ガス流出側端面420bがともに開口した貫通孔425に排ガスが流入し、貫通孔425を隔てる隔壁426に担持させた触媒の作用により排ガスが浄化される。
排ガス浄化装置400に排ガスが流入する部位であるガス流入部にはガス流通部材210が設けられ、排ガスが流出する部位であるガス流出部にもガス流通部材310が設けられている。
ガス流通部材210はケーシング430のガス流入側端部431に溶接等の接合手段により配設されている。ガス流通部材210は、その径がケーシング430のガス流入側端部431から離れるにしたがって次第に小さくなる形状の筒状部材である。
ガス流通部材310はケーシング430のガス流出側端部432に溶接等の接合手段により配設されている。ガス流通部材310の形状もガス流通部材210と同様に、その径がケーシング430のガス流出側端部432から離れるにしたがって次第に小さくなる形状の筒状部材である。
本発明のガス流通部材は、
図3に示す排ガス浄化装置において、ガス流通部材210及び/又はガス流通部材310となる排気系部品として用いることができる。
【0051】
図4(a)は、排ガス浄化装置のガス流入部又はガス流出部となる基材の一例を模式的に示す一部切断斜視図であり、
図4(b)は
図4(a)にCで示す領域の拡大図である。
図4(c)はガス流通面に表面被覆層を形成したガス流通部材の一例を模式的に示す一部切断斜視図であり、
図4(d)は
図4(c)にDで示す領域の拡大図である。
【0052】
以下、排ガス浄化装置のガス流入部となるガス流通部材210について説明するが、排ガス浄化装置のガス流出部となるガス流通部材310についても同様の構成とすることができる。
図4(a)には排ガス浄化装置のガス流入部となる基材220を示しており、基材220はガス流通面221を有する。
【0053】
基材220の材質としては、ステンレス、鋼、鉄、銅等の金属、又は、インコネル、ハステロイ、インバー等のニッケル合金等が挙げられる。
【0054】
基材220はその形状から、絞り加工によって作製されることが望ましい。基材220が絞り加工によって作製された場合、その表面は絞り加工面であり、絞り加工面には絞り加工に伴う痕跡としてのうねりが生じている。
図4(a)及び
図4(b)にはガス流通面221にうねりが生じている様子を示している。
絞り加工面のうねり曲線における最大高さうねりWzは、例えば15〜100μmであり、15〜50μmが望ましく、19〜38μmがより望ましい。
絞り加工面の面粗度は、その表面の十点平均粗さRzJISが10〜50μmであり、10〜30μmが望ましく、12〜19μmがより望ましい。
絞り加工面の十点平均粗さRzJIS及び最大高さうねりWzは、JIS B0601:2001で規定され、測定装置として株式会社キーエンス製ワンショット3D測定マクロスコープVR−3000を用いて、25℃の環境下において、カットオフ値λs=設定なし、λc=0.8mm、計測距離=4mmで測定することができる。
【0055】
基材220の厚さの望ましい範囲は、上述したタービンハウジングとして用いられる基材の場合と同様である。
【0056】
基材220のガス流通面221は、
図4(c)及び
図4(d)に示すように表面被覆層230によって被覆される。そして、ガス流通面221のうねりが表面被覆層230によって埋められる。
このように基材220のガス流通面221が表面被覆層230によって被覆され、本発明のガス流通部材210となる。
そして、基材220のガス流通面221が表面被覆層230で被覆されてなる被覆ガス流通面240は、最大高さうねりWzが10μm以下である平坦面となっている。また、被覆ガス流通面240は、十点平均粗さが5μm以下である平滑面となっている。
なお、被覆ガス流通面の粗さ測定及びうねり測定は絞り加工面の粗さ測定及びうねり測定と同様の装置及び条件により行うことができる。
【0057】
表面被覆層230は、非晶性無機材及び結晶性無機材を含む層である。非晶性無機材及び結晶性無機材の好ましい形態は、上述したタービンハウジングとして用いられるガス流通部材において例示した表面被覆層における非晶性無機材及び結晶性無機材と同様であるのでその詳細な説明は省略する。
また、表面被覆層230の平均厚さは50μmを超えて厚く形成されており、表面被覆層の平均厚さは、上述した膜厚計及び測定方法により測定することができる。
【0058】
本発明のガス流通部材が排ガス浄化装置のガス流入部又はガス流出部となる排気系部品である場合の、ガス流通部材の製造方法は、ガス流通部材がタービンハウジングである場合と同様である。
塗料組成物を塗布する方法として、金属管の内周面に塗料組成物を塗布するのに適した方法を用いることが望ましい。
【0059】
排ガス浄化装置のガス流入部又はガス流出部となる排気系部品としてのガス流通部材を用いて排ガス浄化装置を製造する場合、表面被覆層を形成したガス流通部材を準備し、これにケーシングの端部を溶接等により接合する方法を用いることが望ましい。
【0060】
以下に、本発明のガス流通部材の作用効果について列挙する。
(1)本発明のガス流通部材では、基材のガス流通面が表面被覆層で被覆された被覆ガス流通面が形成されている。
表面被覆層は基材のガス流通面の表面の粗さを埋めて被覆ガス流通面を平滑面とするように形成されている。そのため、面粗度の高い表面に起因して気体の流通が妨げられることが防止され、エンジンの出力の低下が防止される。
また、面粗度の高い表面に起因してガス流れが乱れることも防止され、排ガス浄化性能の低下も防止される。
【0061】
(2)本発明のガス流通部材では、表面被覆層は基材のガス流通面のうねりを埋めて被覆ガス流通面を平坦面とするように形成されている。そのため、基材のガス流通面のうねりに起因して気体の流通が妨げられることが防止され、エンジンの出力の低下が防止される。また、基材のガス流通面のうねりに起因してガス流れが乱れることも防止され、排ガス浄化性能の低下も防止される。
【0062】
(3)本発明のガス流通部材が、ターボハウジング用の排気系部品であると、被覆ガス流通面が平滑面であるためエンジンの出力の低下が防止されて、ターボエンジンを搭載した目的が好適に達成される。
【0063】
(4)本発明のガス流通部材が、排ガス浄化装置のガス流入部又はガス流出部となる排気系部品であると、被覆ガス流通面が平坦面であるためガス流れが乱れることが防止され、排ガスの温度が低下しにくくなるので、排ガス浄化性能の低下が防止される。
【0064】
(実施例)
以下、本発明のガス流通部材をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0065】
(実施例1)
(1)基材の準備
金属からなる基材として、ガス流通面に相当する面が鋳肌面である鋳物(オーステナイト系耐熱鋳鋼)を準備した。
この鋳肌面の十点平均粗さRzJIS及び最大高さうねりWzを、測定装置として株式会社キーエンス製ワンショット3D測定マクロスコープVR−3000を用いて、カットオフ値λs=設定なし、λc=0.8mmで測定したところ、RzJIS=19μm、Wz=19μmであった。
【0066】
(2)塗料組成物の調製
非晶性無機材の粉末として、旭硝子株式会社製K4006A−100M(Bi
2O
3−B
2O
3系ガラス、軟化点770℃)を準備した。
また、結晶性無機材の粒子として、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)を配合した。
非晶性無機材と結晶性無機材の合計量に対する結晶性無機材の重量割合は、35重量%であった。
【0067】
さらに、有機結合材として、信越化学工業株式会社製のメチルセルロース(製品名:METOLOSE−65SH)を準備し、塗料組成物全体に対する濃度が0.05重量%となるように配合した。
塗料組成物の調製にあたっては、さらに水を塗料組成物全体に対する濃度が60重量%となるように配合し、ボールミルで湿式混合することにより塗料組成物を調製した。
調製後のYSZの平均粒子径は25μmであった。
【0068】
(3)ガス流通部材の製造
基材の鋳肌面に、調製した塗料組成物を用いてスプレーコート法により塗布を行い、乾燥機内において70℃で20分乾燥した後、空気中、850℃で90分間、加熱焼成処理することにより、表面被覆層を形成した。
【0069】
(4)得られたガス流通部材の評価
(i)膜厚測定
表面被覆層の平均厚さは、500μmであった。
表面被覆層の平均厚さの測定は、膜厚計として株式会社フィッシャー・インストルメンツ製、デュアルスコープMP40を用いて、膜厚補正を任意の30点を用いて行ったのち、膜厚測定を10点に対して行い、その測定値の平均をとることによって行った。
(ii)面粗度測定及びうねり測定
表面被覆層の表面(被覆ガス流通面)の面粗度及びうねりとして、十点平均粗さRzJIS及び最大高さうねりWzを、測定装置として株式会社キーエンス製ワンショット3D測定マクロスコープVR−3000を用いて、カットオフ値λs=設定なし、λc=0.8mmで測定したところ、RzJIS=4μm、Wz=7μmであった。
表1には、これらの結果をまとめて示した。実施例1で製造したガス流通部材では面粗度及びうねりが低くなっているため、エンジンの出力の低下や排ガス浄化性能の低下を防止し得るものと考えられるので、総合判定を○として示した。
【0070】
(実施例2)
実施例1において、結晶性無機材の粒子として、YSZに代えてα−アルミナを用い、非晶性無機材と結晶性無機材の合計量に対する結晶性無機材の重量割合を、15重量%とした。
塗料組成物調製後のα−アルミナの平均粒子径は10μmであった。
そのほかは実施例1と同様にしてガス流通部材を製造した。
表1に、膜厚測定、面粗度測定及びうねり測定の結果並びに総合判定を示した。
【0071】
(実施例3)
金属からなる基材として、ガス流通面に相当する面が絞り加工面である基材(ステンレス製)を準備した。
この絞り加工面の十点平均粗さRzJIS及び最大高さうねりWzを、測定装置として株式会社キーエンス製ワンショット3D測定マクロスコープVR−3000を用いて、カットオフ値λs=設定なし、λc=0.8mmで測定したところ、RzJIS=12μm、Wz=38μmであった。
塗料組成物の調製は、実施例1において、結晶性無機材の粒子として、YSZを用い、非晶性無機材と結晶性無機材の合計量に対する結晶性無機材の重量割合を、60重量%とした。
塗料組成物調製後のYSZの平均粒子径は10μmであった。
そのほかは実施例1と同様にしてガス流通部材を製造した。
表1に、膜厚測定、面粗度測定及びうねり測定の結果並びに総合判定を示した。
【0072】
(比較例1、2)
比較例1として実施例1で用いた基材のガス流通面に相当する面の面粗度及びうねりを表1に示した。
比較例2として実施例3で用いた基材のガス流通面に相当する面の面粗度及びうねりを表1に示した。
これらの基材の面粗度及びうねりは大きく、エンジンの出力の低下や排ガス浄化性能の低下が生じるものと考えられるので、総合判定を×として示した。
【0073】
【表1】