(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204794
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】配管部材の固定装置
(51)【国際特許分類】
F16L 3/02 20060101AFI20170914BHJP
E03C 1/12 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
F16L3/02 Z
E03C1/12 Z
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-228047(P2013-228047)
(22)【出願日】2013年11月1日
(65)【公開番号】特開2015-86992(P2015-86992A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108638
【氏名又は名称】タカヤマ金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】高山 昌照
(72)【発明者】
【氏名】高山 正義
(72)【発明者】
【氏名】玉岡 富彦
(72)【発明者】
【氏名】及川 智之
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−183680(JP,A)
【文献】
特開2004−132536(JP,A)
【文献】
米国特許第05573210(US,A)
【文献】
特開2003−227156(JP,A)
【文献】
特開2006−125546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/02
E03C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管部材を保持する保持部材と、該保持部材を支持する支持部材と、前記保持部材を前記支持部材に固定する固定具とを備え、
前記支持部材は、前記保持部材を支持する少なくとも1本の支柱を備え、該支柱は、長さ方向に拡幅部と狭窄部とを交互に形成した長孔を有する支柱本体を備え、
前記固定具は、回転操作される係止体と、前記支柱本体に接離して昇降する板バネ状部材と、前記支柱本体の長孔内を挿通し、前記係止体及び板バネ状部材を抜止状態で連結する軸体とを備え、前記係止体又は板バネ状部材の少なくとも一方は、前記板バネ状部材側又は係止体側に膨出した押圧膨出部を備え、前記板バネ状部材は、前記係止体が回転操作され、前記押圧膨出部に押圧されることによって前記支柱本体の拡幅部内に嵌り込み、前記押圧膨出部に押圧されないことによって前記支柱本体の拡幅部内から抜け出る係止突起を備えていることを特徴とする配管部材の固定装置。
【請求項2】
前記押圧膨出部は、前記係止体と板バネ状部材とに備えられ、一方の押圧膨出部は、先細り部を備え、他方の押圧膨出部は、前記先細り部が係入する窪み部を備えていることを特徴とする配管部材の固定装置。
【請求項3】
前記板バネ状部材は、前記押圧膨出部及び係止突起を形成した基盤と、前記支柱本体の各エッジを挟むように前記基盤に連設されたガイド部と、前記支柱本体の長さ方向に沿うように前記基盤に連設された弾性変形部とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の配管部材の固定装置。
【請求項4】
前記弾性変形部は、前記基盤に連設された二対の可撓片と、該可撓片の先端側で前記支柱本体側に曲げ加工した押さえ部とを備えていることを特徴とする請求項3に記載の配管部材の固定装置。
【請求項5】
前記係止突起は、前記長孔の拡幅部の幅と同じ長さの突条に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の配管部材の固定装置。
【請求項6】
前記支柱は、一対の支柱本体を備えていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の配管部材の固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管などの配管部材を所望の高さで支持する配管部材の固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の汚水のような液体を排出するための排水管、あるいは気体や粒状物などの通路とされるダクト、その他の配管部材(以下、主として「排水管」という。)は、配管部材の固定装置に支持されて敷設される。そして、排水管を確実に固定し、しかも、排水管の高さ位置の調整を迅速に行えるようにした配管部材の固定装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の配管部材の固定装置は、
図8に示すように、排水管Pを保持する保持部材110と、この保持部材110を支持する支持部材120と、保持部材110を支持部材120に固定する固定具130とを備えている。
【0004】
保持部材110は、帯板状の金属部材を円弧状に曲げ成形したもので、両端部111付近に軸座112が設けられている。軸座112には、挿通孔(図示せず)が形成されている。
【0005】
そして、支持部材120は、コンクリート基礎S上に設置されるベース部材121と、このベース部材121に立設される一対の支柱122とを備えている。支柱122は、長孔123を上下方向(長さ方向)に形成した支柱本体122aを備えている。長孔123を確定する一対の対向辺は、波形状に形成され、拡幅部123aと狭窄部123bとが長手方向に交互に形成されている。
【0006】
そして、固定具130は、回転操作される係止体131と、リベットなどの軸体133と、スプリングワッシャなどの付勢部材(図示せず)とを備えている。係止体131は、支柱本体122aの外側面に重なって昇降する。ただし、係止体131は、90°の範囲で回転し、支柱本体122aに沿った昇降が規制される係止姿勢と、支柱本体122aに沿った昇降が許容される係止解除姿勢とに姿勢変更する。
【0007】
この係止体131は、変形四角形状の基板部131aと、この基板部131aの一対の対辺から突出した一対の操作片131b及び一対のストッパ片131cとを備えている。操作片131bとストッパ片131cとは反対方向に突出している。
【0008】
そして、基板部131aの中心には、軸体133が貫通する嵌挿孔(図示せず)が形成されている。また、基板部131aは、支柱本体122aの方に膨出した長円状の膨出部(図示せず)を備えている。この膨出部の中心に嵌挿孔が形成されている。
【0009】
そして、膨出部は、係止体131が係止解除姿勢に姿勢設定された状態で、前記長孔123の狭窄部123bを通過し得るように前記長孔123に嵌り込み、係止体131が係止姿勢に姿勢変更されると、前記長孔123から抜け出て、支柱本体122aの外側面に圧接するように、嵌挿孔を中心に斜め向きに膨出している。また、膨出部の頂部には、前記長孔123の狭窄部123b内に嵌り込む一対の係止突起(図示せず)が設けられている。
【0010】
このような膨出部が膨出していない側の基板部131aの外面には、スプリングワッシャのような中心に貫通穴を有する付勢部材(図示せず)が宛がわれている。
【0011】
そして、前記軸体133は、前記長孔123の狭窄部123bを通過できる外径の軸部(図示せず)と、この軸部の各端部を拡径した頭部とを有している。この軸部が、前記付勢部材の貫通穴と前記係止体131の嵌挿孔と支柱122の長孔123と保持部材110の挿通孔とに挿通され、一方の頭部が付勢部材の貫通穴の周囲に衝合し、他方の頭部が保持部材110の軸座112に衝合することで、抜止状態とされる。したがって、軸体133と付勢部材と係止体131と保持部材110とが一体化され、支柱本体122aに沿って昇降する。
【0012】
また、付勢部材は、係止体131が係止姿勢に姿勢設定されると、係止体131の膨出部が支柱本体122aの外側面に当接し、圧縮部材が圧縮することで、係止体131の膨出部と支柱本体122aの外側面とが圧着し、また、支柱本体122aの内側面と保持部材110の軸座112とが圧着する。
【0013】
以上のように構成された配管部材の固定装置は、排水管Pの敷設ラインに複数台設置される。具体的には、コンクリート基礎S上にベース部材121が固定される。そして、係止体131が回転操作され、係止解除姿勢に姿勢設定されることにより、膨出部及び係止突起が長孔123の狭窄部123b内に嵌り込み、係止体131の昇降が許容され、保持部材110の高さ位置が調整される。
【0014】
そして、係止体131が回転操作され、係止姿勢に姿勢変更されることにより、膨出部が長孔123から抜け出し、支柱本体122aの外側面に乗り上げる。そして、係止体131は、付勢部材の付勢力によって支柱本体122aに向けて押圧され、係止体131の膨出部と支柱本体122aの外側面とが圧着し、また、支柱本体122aの内側面と保持部材110の軸座112とが圧着する。
【0015】
そして、係止体131が係止姿勢に姿勢変更されることにより、係止突起が長孔123の拡幅部123aに嵌り込む。したがって、係止体131は、軸体133を軸にして回動しにくく、係止姿勢を維持する。このようにして、保持部材110は設定された所望の高さ位置で支柱本体122aに固定される。
【0016】
そして、保持部材110上に排水管Pが載せられることで、排水管Pが配管部材の固定装置に固定される。しかも、排水管Pは、保持部材110の高さが調整されることで、上流側から下流側に向けて先下りに傾斜した姿勢とされる。
【0017】
このように構成され配管部材の固定装置は、施工時などにおいて、作業者が排水管Pを踏んだとしても、保持部材110が調整された高さ位置を維持できるように構成されている。
【0018】
すなわち、係止体131が係止姿勢とされると、膨出部が支柱本体122aの外側面に乗り上げ、付勢部材のバネ性によって支柱本体122aに圧着し、係止突起が長孔123の拡幅部123aに入り込むことで固定される。この拡幅部123aに入り込んだ係止突起が拡幅部123a内から抜け出ることなく、保持部材110は所定の高さ位置を維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許第4360818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記のように構成された配管部材の固定装置は、係止体131を係止解除姿勢から係止姿勢に回転操作するに際して、膨出部と支柱本体122aとの間で大きな抵抗力が生じるため、係止体131を回転操作しにくいものになっている。
【0021】
したがって、係止体131を係止解除姿勢から係止姿勢に姿勢転換する途中で回転操作が止められることがある。そうすると、膨出部が斜面を有し、また、係止体131が付勢部材によって付勢されていることから、係止体131が元の係止解除姿勢に戻り、保持部材110は、下降し、所定の高さ位置を維持できなくなる。
【0022】
逆に、係止体131の回転操作をスムーズにするため、膨出部の膨出量を小さくし、また、付勢力のバネ性を弱めると、係止姿勢の係止体131は、緩(ゆる)く支柱122に固定される。そうすると、施工時などにおいて、作業者が排水管Pを踏んだときに、保持部材110は、下降し、調整された高さ位置を維持できなくなる。
【0023】
そこで、本発明は、係止体をスムーズに回転操作することができ、しかも、保持部材を支柱に強固に固定することができるようにした配管部材の固定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明に係る配管部材の固定装置は、配管部材を保持する保持部材と、該保持部材を支持する支持部材と、前記保持部材を前記支持部材に固定する固定具とを備え、前記支持部材は、前記保持部材を支持する少なくとも1本の支柱を備え、該支柱は、長さ方向に拡幅部と狭窄部とを交互に形成した長孔を有する支柱本体を備え、前記固定具は、回転操作される係止体と、前記支柱本体に接離して昇降する板バネ状部材と、前記支柱本体の長孔内を挿通し、前記係止体及び板バネ状部材を抜止状態で連結する軸体とを備え、前記係止体又は板バネ状部材の少なくとも一方は、前記板バネ状部材側又は係止体側に膨出した押圧膨出部を備え、前記板バネ状部材は、前記係止体が回転操作され、前記押圧膨出部に押圧されることによって前記支柱本体の拡幅部内に嵌り込み、前記押圧膨出部に押圧されないことによって前記支柱本体の拡幅部内から抜け出る係止突起を備えていることを特徴としている。
【0025】
この配管部材の固定装置によれば、係止体は、回転操作によって、係止姿勢と係止解除姿勢とに姿勢転換される。係止体が係止姿勢に姿勢設定されると、係止体又は板バネ状部材の少なくとも一方に備えられた押圧膨出部によって、板バネ状部材と支柱本体とが圧着し、板バネ状部材の係止突起が支柱本体の長孔に形成された拡幅部内に嵌り込むとともに、保持部材と支柱本体の内側面とが圧着する。
【0026】
そして、係止体が係止解除姿勢に姿勢設定されると、板バネ状部材が押圧膨出部に押圧されなくなることで、板バネ状部材の係止突起が支柱本体の長孔に形成された拡幅部から抜け出る。したがって、保持部材と支柱本体の内側面とが圧着されなくなることで、保持部材の高さ位置を調整することができる。
【0027】
ここで、本発明に係る配管部材の固定装置の一態様として、前記押圧膨出部は、前記係止体と板バネ状部材とに備えられ、一方の押圧膨出部は、先細り部を備え、他方の押圧膨出部は、前記先細り部が係入する窪み部を備えている構成を採用することができる。
【0028】
この配管部材の固定装置によれば、係止姿勢となった係止体の押圧膨出部と板バネ状部材の押圧膨出部とが衝合した状態において、一方の押圧膨出部に備えられた先細り部が他方の押圧膨出部に備えられた窪み部に係入することで、両膨出部が衝合した状態を維持しやすくすることができる。
【0029】
また、本発明に係る配管部材の固定装置の他態様として、前記板バネ状部材は、前記押圧膨出部及び係止突起を形成した基盤と、前記支柱本体の各エッジを挟むように前記基盤に連設されたガイド部と、前記支柱本体の長さ方向に沿うように前記基盤に連設された弾性変形部とを備えている構成を採用することができる。
【0030】
この配管部材の固定装置によれば、板バネ状部材が押圧膨出部及び係止突起を形成した基盤に弾性変形部を連設したものであることにより、弾性変形部によって基盤が支柱本体から離間した状態と圧着した状態とに変位する。そして、板バネ状部材の基盤に連設されたガイド部が支柱本体の各エッジを挟むことによって、板バネ状部材が支柱本体に沿って昇降する。
【0031】
この場合、前記弾性変形部は、前記基盤に連設された二対の可撓片と、該可撓片の先端側で前記支柱本体側に曲げ加工した押さえ部とを備えていることが好ましい。
【0032】
この配管部材の固定装置によれば、弾性変形部が二対の可撓片を備えることにより、弾性変形部を撓みやすくすることができる。そして、弾性変形部が、曲げ加工された押え部を備えていることにより、係止体が係止解除姿勢とされると、二対の可撓片が支柱本体部から離隔可能となり、係止体が係止姿勢とされると、二対の可撓片が撓み、基盤が支柱本体に圧着する。
【0033】
また、本発明に係る配管部材の固定装置のさらに異なる他態様として、前記係止突起は、前記長孔の拡幅部の幅と同じ長さの突条に形成されている構成を採用することができる。
【0034】
この配管部材の固定装置によれば、係止突起が長孔の拡幅部の幅と同じ長さの突条に形成されていることにより、係止突起の剛性を大きくし、また、成形しやすくすることができる。
【0035】
また、本発明に係る配管部材の固定装置のさらに異なる他態様として、前記支柱は、一対の支柱本体を備えている構成を採用することができる。この配管部材の固定装置によれば、支柱が一対の支柱部材を備えていることにより、縦向きの姿勢とされた支柱部材が配管部材を安定した状態で支持することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、係止体をスムーズに回転操作することができ、しかも、保持部材を支柱に強固に固定することができるようにした配管部材の固定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、本発明に係る配管部材の固定装置の一実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る配管部材の固定装置の一実施形態であって、係止解除姿勢を示し、(a)は要部を拡大した正面図、(b)は要部を拡大した側面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る配管部材の固定装置の一実施形態であって、係止姿勢を示し、(a)は要部を拡大した正面図、(b)は要部を拡大した側面図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る配管部材の固定装置を構成している固定具の一実施形態を含む分解斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る配管部材の固定装置を構成している係止体の一実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は(a)のV−V線断面図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る配管部材の固定装置を構成している板バネ状部材の一実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図、(d)は(a)のVI−VI線断面図である。
【
図7】
図7は、本発明に係る配管部材の固定装置を構成している固定具の他実施形態を含む分解斜視図である。
【
図8】
図8は、従来の配管部材の固定装置の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明に係る配管部材の固定装置の一実施形態について
図1ないし
図6を参照しながら説明する。
【0039】
この配管部材の固定装置は、排水管などの配管部材(以下、主として「排水管」という。)Pを保持する保持部材10と、この保持部材10を支持する支持部材20と、保持部材10を支持部材20に固定する固定具30とを備えている。
【0040】
前記保持部材10は、帯板状の金属部材を排水管Pの周面に沿うC字状などの円弧状に曲げ成形したもので、両端部11付近に軸座12を備えている。軸座12には、挿通孔(図示せず)が形成されている。そして、保持部材10の各端部11の間隔は、排水管Pの直径よりも狭くされ、排水管Pが保持部材10から抜け出ないようにされている。
【0041】
そして、支持部材20は、コンクリート基礎(
図8のS参照)上に固定される金属製のベース部材21と、このベース部材21上に立設される一対の金属製の支柱22とを備えている。この支柱22は、帯板状の支柱本体22aと、前記ベース部材21に内向きで固定される座部22bとによって正面視L字状に成形されている。
【0042】
この支柱本体22a及び座部22bの両エッジには、内向きに折り曲げられた一対のフランジ22cが形成されている。支柱本体22aに形成された一対のフランジ22c間に前記保持部材10の軸座12が嵌め入れられる。なお、支柱本体22aの外側面には、高さ位置を表示する目盛(採番せず)が付されている。
【0043】
そして、支柱本体22aの長さ方向には、長孔23が形成されている。長孔23を確定する一対の対向辺は、波形状に形成され、拡幅部23aと狭窄部23bとが交互に長手方向に形成されている。
【0044】
そして、固定具30は、
図4に示すように、回転操作される金属製の係止体31と、この係止体31と前記支柱本体22aとの間に挟まれる金属製の板バネ状部材32と、支柱本体22aの長孔23内を挿通し、係止体31及び板バネ状部材32を抜止状態で連結するリベットのような金属製の軸体33とを備えている。
【0045】
係止体31は、
図5にも示すように、支柱本体22aの幅と同じ幅の異形板状体31aと、この異形板状体31aの各側縁から支柱本体22aと反対方向に突出した一対の操作片31bと、異形板状体31aの各側縁から支柱本体22aの方に突出した一対のストッパ片31cとを備えている。このような係止体31は、金属板を打ち抜き処理及びプレス処理することで成形される。
【0046】
したがって、異形板状体31aは、ストッパ片31cを成形するため、切欠部31hを形成した形状とされている。また、異形板状体31aの中心には、軸体33が貫通する嵌挿孔31dが形成されている。また、異形板状体31aは、板バネ状部材32側に膨出した一対の押圧膨出部(以下、「第1押圧膨出部」という。)31eを備えている。各第1押圧膨出部31eは、先細り部31fを有する截頭円錐状に形成され、傾斜面を有している。
【0047】
このような一対の第1押圧膨出部31eの間に前記嵌挿孔31dが形成されている。したがって、一対の第1押圧膨出部31eと嵌挿孔31dとが一列に並んだ状態とされる。この一対の第1押圧膨出部31eと嵌挿孔31dの両側に2本のリブ31gが設けられている。このリブ31gは、操作片31bが突出している方向に突出している。
【0048】
そして、嵌挿孔31dに軸体33が嵌挿されることで、係止体31は、嵌挿孔31dを中心に90°の範囲で回転操作され、係止姿勢と係止解除姿勢とに姿勢転換する。すなわち、係止体31は、ストッパ片31cが支柱本体22aの各エッジに形成されたフランジ22cに当たることで、90°以上回転しないように規制されている。
【0049】
そして、係止姿勢になった係止体31の一対の第1押圧膨出部31eは、支柱本体22aを圧接する方向(
図3(b)に示す横方向)の状態となる。また、係止解除姿勢になった係止体31の一対の第1押圧膨出部31eは、長孔23に入る方向(
図2(b)に示す縦方向)の状態となる。
【0050】
そして、板バネ状部材32は、
図6にも示すように、支柱本体22aの幅と同じ幅の基盤32aと、支柱本体22aの各エッジに形成されたフランジ22cを挟むように基盤32aに連設された一対のガイド部32bと、支柱本体22aの長さ方向に沿うように基盤32aに連設された弾性変形部32cとを備えている。
【0051】
そして、基盤32aの中心には、軸体33が貫通する挿通孔32dが形成されている。また、基盤32aは、ガイド部32bに沿って係止体31の側に膨出した一対の押圧膨出部(以下、「第2押圧膨出部」という。)32eを備えている。第2押圧膨出部32eは、支柱本体22aの長さ方向に沿う長円状に形成され、傾斜面を有している。また、第2押圧膨出部32eの中心には、第1押圧膨出部31eの先細り部31fが係入する窪み部32fが形成されている。このような一対の第2押圧膨出部32eの間に前記挿通孔32dが形成されている。
【0052】
そして、基盤32aには、一対のガイド部32bに直交する方向に一対の係止突起32gが形成されている。係止突起32gは、基盤32aに切込みを入れ、第2押圧膨出部32eと反対方向に折り曲げられることで成形される。この係止突起32gは、長孔23の拡幅部23aの幅と同じ長さの突条に形成されている。すなわち、基盤32aが支柱本体22aに重なることで、係止突起32gが長孔23の拡幅部23aに入り、基盤32aが支柱本体22aから離れることで、係止突起32gが長孔23から抜け出る。
【0053】
そして、弾性変形部32cは、支柱本体22aに沿う方向に基盤32aから連設された二対(4本)の真っ直ぐな可撓片32hと、この可撓片32hの先端側で支柱本体22a側に曲げ加工された押さえ部32iとを備えている。
【0054】
可撓片32hと押さえ部32iとによって、係止体31が係止姿勢に姿勢設定されたときに、基盤32aが支柱本体22aに圧着した状態になり、係止突起23gが長孔23の拡幅部23a内に嵌り込む。また、係止体31が係止解除姿勢に姿勢設定されたときに、基盤32aが支柱本体22aから離れた状態となり、係止突起31が長孔23から抜け出る。
【0055】
以上のように構成された配管部材の固定装置は、排水管Pの敷設ラインに複数台設置される。具体的には、コンクリート基礎上に支持部材20のベース部材21が固定される。そして、保持部材10に保持される排水管Pを、上流側から下流側に向けて先下がりに傾斜した姿勢とするように、保持部材10の高さ位置が調整される。
【0056】
そのため、係止体31が
図2に示すように係止解除姿勢に姿勢設定される。この係止解除姿勢の係止体31は、一対の第1押圧膨出部31eが支柱本体22aの長孔23に入る向き(
図2に示すような縦向)の状態であり、第2押圧膨出部32eと衝合していないことから、板バネ状部材32が支柱本体22aから離れることができる状態となる。
【0057】
すなわち、係止体31と板バネ状部材32と支柱本体22aと保持部材10に形成された軸座12とが圧着していない。したがって、係止突起32bが長孔23の拡幅部23a内に入り込まないことから、係止体31と板バネ状部材32と保持部材10とは、昇降可能な状態であり、高さ位置を調整することができる。
【0058】
そして、係止体31ないし保持部材10の高さ位置が調整されると、ワンタッチで90°回転操作されることで、係止体31が
図3に示すように係止姿勢に姿勢設定される。この係止体31は、ストッパ片31cが支柱本体22aのエッジに形成されたフランジ22cに当たることで、90°以上回転することなく、係止姿勢を維持する。
【0059】
また、この係止姿勢の係止体31は、一対の第1押圧膨出部31eが支柱本体22aに圧接する方向(
図3に示すような縦向)の状態となるため、第2押圧膨出部32eに衝合する。このとき、第1押圧膨出部31eの斜面が第2押圧膨出部32eの斜面に沿うため、第1押圧膨出部31eと第2押圧膨出部32eとは、大きな抵抗力を受けることなくスムーズに衝合する。したがって、係止体31は、大きな抵抗力を受けることなく、係止解除姿勢から係止姿勢に姿勢変更することができる。
【0060】
そして、第1押圧膨出部31eの先細り部31fが第2押圧膨出部32eの窪み部32f内に係入することによっても、第1押圧膨出部31eと第2押圧膨出部32eとが衝合した状態が維持される。そして、第1押圧膨出部31eが第2押圧膨出部32eを押圧することで、板バネ状部材32の基盤32aが支柱本体22aに圧着し、軸座12が支柱本体22aに圧着する。
【0061】
そして、係止突起32gが長孔23の拡幅部23a内に入り込む。仮に、係止突起32gが長孔23の狭窄部23bと対向している場合は、係止突起32gが拡幅部23a内に入り込まない。この場合は、係止体31、板バネ状部材32及び軸座12を少しだけ上又は下にずらせることで、係止突起32gを長孔23の拡幅部23a内に入り込ませることができる。係止突起32gが長孔23の拡幅部23a内に入り込むことで、高さ位置を調整した係止体31と板バネ状部材32と保持部材10は、荷重が加えられても、位置ずれしない。
【0062】
以上のように、この配管部材の固定装置は、係止体31をスムーズに回転操作し、しかも、保持部材10を支柱本体22aに強固に固定することができる。したがって、保持部材10が保持した排水管Pを作業者が踏んだとしても、排水管Pは所定の高さ位置を維持する。
【0063】
なお、本発明は、上記実施形態に限定することなく、種々変更することができる。例えば、上記実施形態では、板バネ状部材32は、係止体31と支柱本体22aとの間に挟まれるように配置した。しかし、板バネ状部材32は、
図7に示すように、支柱本体22aの内側面に沿うように配置してもよい。
【0064】
この場合の板バネ状部材32は、支柱本体22aのフランジ22cに挟まれるため、ガイド部32bを備えなくてよい。また、この場合の板バネ状部材32の第2押圧膨出部32fは、支柱本体22a側に膨出する。さらに、この場合の板バネ状部材32に備えられた係止突起32g及び弾性変形部32cの押え部32iも、支柱本体22aに向けられる。
【0065】
また、上記実施形態では、第1押圧膨出部31eが截頭円錐状に形成され、先細り部31fを有するとした。しかし、第2押圧膨出部32eが截頭円錐状に形成され、先細り部31fを有し、第1押圧膨出部31eに窪み部32fを形成してもよい。あるいは、第1押圧膨出部31e又は第2押圧膨出部32eには、膨出の程度によっては、先細り部31f又は窪み部32fを形成しないようにしてもよい。
【0066】
さらに、第1押圧膨出部31eを係止体31に設けず、第2押圧膨出部32eを板バネ状部材32に設けただけとしてもよいし、逆に、第2押圧膨出部32eを板バネ状部材32に設けず、第1押圧膨出部31eを係止体31に設けただけとしてもよい。
【0067】
さらに、上記実施形態では、板バネ状部材32に備えられた弾性変形部32cを真っ直ぐな可撓片32hと曲げ加工した押さえ部32iとを備えたものとした。しかし、この弾性変形部32cは、全体的に円弧状にカーブした形状としてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、支柱本体22a及び座部22bに一対のフランジ22cを形成したものとした。しかし、支柱本体22a及び座部22bを厚肉の帯状金属部材によって成形することで、フランジ22cを形成しないものとしてもよい。さらに、一対の支柱本体22aは、異なる外径の排水管Pに対応できるように、その対面距離を可変としてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、支持部材20が一対の支柱22を備えたものとした。しかし、支柱22や保持部材10の剛性が大きい場合などにおいて、支柱22を1本のみとしてもよい。そして、上記実施形態では、支柱本体22aを縦向き姿勢とした。しかし、支柱本体22aは、横向き姿勢としてもよい。この場合は、1本の支柱22が排水管Pを下から支承してもよい。
【0070】
また、実施形態では、係止突起32gが長孔23の拡幅部23aの長さを有する突条であるとした。しかし、係止突起32gは、長孔23の拡幅部23aの凹部にのみ入り込む一対の軸状のものとしてもよい。
【0071】
また、配管部材は、排水管P以外にドレン、農業用水、工業用水などを流すパイプや、気体や粒状物などの通路とされるダクトなどであってもよい。したがって、この配管部材の固定装置は、配管を傾斜するように支持するだけでなく、水平姿勢で支持してもよい。また、上記実施形態では、各部材が金属製であるとして説明した。しかし、使用状況などによっては、各部材は樹脂製としてもよい。
【符号の説明】
【0072】
10…………保持部材
20…………支持部材
22…………支柱
22a………支柱本体
23…………長孔
23a………拡幅部
23b………狭窄部
30…………固定具
31…………係止体
31e………(第1)押圧膨出部
31f………先細り部
32…………板バネ状部材
32a………基盤
32c………弾性変形部
32e………(第2)押圧膨出部
32f………窪み部
32g………係止突起
32h………可撓片
32i………押え部
33…………軸体
P……………配水管(配管部材)