特許第6204799号(P6204799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204799
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/16 20060101AFI20170914BHJP
   F16J 15/24 20060101ALI20170914BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20170914BHJP
   F16K 5/06 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
   F16J15/16 B
   F16J15/24 Z
   F16J15/18 B
   !F16K5/06 C
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-236492(P2013-236492)
(22)【出願日】2013年11月15日
(65)【公開番号】特開2015-96747(P2015-96747A)
(43)【公開日】2015年5月21日
【審査請求日】2016年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】松本 大介
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−106116(JP,A)
【文献】 実開平02−060773(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/16
F16J 15/24
F16J 15/18
F16K 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
このハウジングの内周に軸方向移動自在に配置された樹脂リングと、
前記ハウジングの内周に配置され前記樹脂リングを軸方向へ付勢して前記ハウジングの外部方向押す弾性体と、
前記樹脂リングから延びて前記ハウジングの内周と前記弾性体の外周との間へ挿入され、前記弾性体の軸方向非圧縮状態において前記ハウジングの内周と前記弾性体の外周との間への挿入状態維持する筒状部と、
を備えることを特徴とする密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転、往復動あるいは揺動する相手面に対して、樹脂リングをハウジングから軸方向へ押し出して摺動可能に密接させることによって密封機能を奏する密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貫通孔を有する球体を介して流路を回転あるいは揺動可能に接続する機器の密封手段として、従来から、図6あるいは図8に例示したような密封装置が知られている。
【0003】
このうち図6に示す密封装置100は、内周孔111が形成されたハウジング110と、このハウジング110の内周に軸方向移動自在に配置された合成樹脂からなる樹脂リング101と、この樹脂リング101とハウジング110の内周孔111の開口端部近傍に形成された径方向段差面112との間に配置されたOリング102を備え、Oリング102の圧縮弾性によって軸方向へ付勢された樹脂リング101の先端が、球状弁体120の表面に摺動可能に密接されているものである。なお、球状弁体120は貫通孔121を有し、貫通孔121と直交する方向へ延びる不図示の軸心を中心として回動されることによって、ハウジング110の内周孔111及び樹脂リング101の内周孔101aによる流路と、球状弁体120の貫通孔121を互いに連通したり遮断したりして、流路を開閉するものである(例えば下記の特許文献1〜2参照)。
【0004】
また、図8に示す密封装置200も基本的には上述の密封装置100と同様であって、内周孔211が形成されたハウジング210と、このハウジング210の内周における開口端部に軸方向移動自在に配置された合成樹脂からなる樹脂リング201と、この樹脂リング201と前記内周孔211に形成された径方向段差面212の間に配置された金属製のコイルスプリング202と、樹脂リング201の外周面に形成された環状溝201aに装着されてハウジング210の内周面との間を密封するゴム状弾性材料からなるOリング203を備え、コイルスプリング202の圧縮弾性によって軸方向へ付勢された樹脂リング201の先端が、貫通孔221を有する球状弁体220の表面に摺動可能に密接されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−60251号公報
【特許文献2】特開2001−254849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図6に示す密封装置100は、樹脂リング101が球状弁体120の表面に摺動可能に密接された装着状態では、樹脂リング101がハウジング110の内周に保持されているが、この樹脂リング101はハウジング110の内周面に対する締め代を持たないため、図7に示す未装着状態では、Oリング102及び樹脂リング101がハウジング110の内周に保持されにくい。このため組み付け時にOリング102及び樹脂リング101がハウジング110から脱落しやすく、装着作業が困難であるといった問題がある。
【0007】
また図8に示す密封装置200も同様であり、未装着状態では、図9に示すようにコイルスプリング202の伸長によって樹脂リング201が押し出され、ハウジング210の内周から飛び出してしまうため、装着作業が困難であるといった問題がある。
【0008】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、樹脂リングをハウジングから軸方向へ押し出して相手面に摺動可能に密接させる構造の密封装置において、装着の作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る密封装置は、ハウジングと、このハウジングの内周に軸方向移動自在に配置された樹脂リングと、前記ハウジングの内周に配置され前記樹脂リングを軸方向へ付勢して前記ハウジングの外部方向押す弾性体と、前記樹脂リングから延びて前記ハウジングの内周と前記弾性体の外周との間へ挿入され、前記弾性体の軸方向非圧縮状態において前記ハウジングの内周と前記弾性体の外周との間への挿入状態維持する筒状部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る密封装置によれば、弾性体が軸方向非圧縮状態にあっても、これによってハウジングの外部方向押される樹脂リングが筒状部によってハウジングに支持されるため、機器への装着作業の際に樹脂リング及び弾性体がハウジングから脱落するのを防止して装着の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1封装置の第一の実施の形態を、軸心を通る平面で切断して示す装着状態の断面図である。
図2封装置の第一の実施の形態を、軸心を通る平面で切断して示す未装着状態の断面図である。
図3封装置の第二の実施の形態を、軸心を通る平面で切断して示す未装着状態の断面図である。
図4封装置の第三の実施の形態を、軸心を通る平面で切断して示す未装着状態の断面図である。
図5封装置の第四の実施の形態を、軸心を通る平面で切断して示す未装着状態の断面図である。
図6】従来の技術による密封装置の一例を、軸心を通る平面で切断して示す装着状態の断面図である。
図7】従来の技術による密封装置の一例を、軸心を通る平面で切断して示す未装着状態の断面図である。
図8】従来の技術による密封装置の他の例を、軸心を通る平面で切断して示す装着状態の断面図である。
図9】従来の技術による密封装置の他の例を、軸心を通る平面で切断して示す未装着状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、密封装置の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。まず図1及び図2は、第一の実施の形態を示すものである。
【0015】
第一の実施の形態において、密封装置1は、内周孔11が形成されたハウジング10と、このハウジング10の内周孔11内に軸方向移動自在に配置された樹脂リング20と、内周孔11内に配置され樹脂リング20を軸方向へ付勢してハウジング10の外部へ押し出す弾性体としてのコイルスプリング30と、ハウジング10の内周面と樹脂リング20の外周面との間に圧縮状態で介在されたOリング40を備える。
【0016】
樹脂リング20はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)や、ポリアミドなどの合成樹脂からなるものであって、略円筒状に成形され、すなわち軸方向へ貫通した内周孔21を有する。この樹脂リング20の外端には、図1に示すように例えば貫通孔2aを有する球状弁体2等の表面と摺動可能に密接される円錐面状の摺動面20aが形成されている。ハウジング10の内周孔11には径方向段差面12が形成されており、樹脂リング20は、前記内周孔11のうち前記径方向段差面12より外側(大径側)に挿入されると共に、外端側(摺動面20a側)がハウジング10の開口端部10aより外側へ突出した状態で配置されている。
【0017】
コイルスプリング30は弾性体に相当するものであって、ハウジング10の内周孔11の径方向段差面12と、樹脂リング20の背面(摺動面20aと反対側の面)20bとの間に配置され、軸方向圧縮に対する伸長力によって樹脂リング20をハウジング10の内周から外部へ向けて押し出すように付勢するものである。
【0018】
樹脂リング20の背面20b寄りの外周面には環状溝22が形成されており、Oリング40は、この環状溝22に保持されている。
【0019】
Oリング40は支持手段及びパッキンに相当するものであって、NBR(ニトリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)などのゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなり、樹脂リング20の環状溝22の底面と、ハウジング10の径方向段差面12より外側(大径側)の内周面11aとの間に、径方向へ圧縮された状態で介在している。そしてこのOリング40は、ハウジング10の内周面と樹脂リング20の外周面との間の隙間を密封すると共に、径方向への圧縮反力による樹脂リング20の環状溝22の底面及びハウジング10の内周面11aの双方との摩擦力によって、コイルスプリング30の非圧縮状態においてハウジング10の内周への樹脂リング20の挿入状態を維持し、この樹脂リング20をハウジング10に支持するものである。
【0020】
以上のように構成された第一の実施の形態による密封装置1は、図1に示すように、ハウジング10の内周孔11及びこれに連通する樹脂リング20の内周孔21が、例えばボールバルブにおける流路の一部を構成するものであって、樹脂リング20が図2に示す位置よりもハウジング10の内方へ押し込まれることによってコイルスプリング30が軸方向へ適宜圧縮され、その圧縮反力によって付勢された樹脂リング20の外端の摺動面20aが、相手面である球状弁体2の表面2bと摺動可能に密接されるようになっている。そして球状弁体2は、貫通孔2aと直交する方向へ延びる不図示の軸心を中心として例えば図1における時計方向又は反時計方向へ回動されることによって、ハウジング10の内周孔11及び樹脂リング20の内周孔21による流路と、球状弁体2の貫通孔2aを互いに連通したり遮断したりして、流路を開閉するものである。
【0021】
そして図2に示す未装着状態では、コイルスプリング30が軸方向に伸びきっているか、あるいは僅かに圧縮された状態にあっても、樹脂リング20の環状溝22の底面とハウジング10の内周面11aの間で径方向へ圧縮されたOリング40が、圧縮反力による摩擦力によって、樹脂リング20の不用意な軸方向移動を規制する機能を有する。このため、ハウジング10の内周への樹脂リング20の挿入状態が維持され、すなわちこの樹脂リング20がOリング40を介してハウジング10に支持されるため、図1に示すように組み付ける過程で樹脂リング20及びコイルスプリング30がハウジング10から脱落するのを防止することができ、その結果、装着の作業性を向上することができる。
【0022】
次に図3、密封装置の第二の実施の形態を示すものである。この実施の形態において、上述した第一の実施の形態と異なるところは、樹脂リング20及びコイルスプリング30がハウジング10から脱落するのを防止する支持手段が、樹脂リング20から延びる筒状部50からなる点にある。
【0023】
詳しくは、筒状部50は樹脂リング20に一体に形成されたものであって、その背面20bの外径部から円筒状に延び、ハウジング10の開口端部10a側の内周面11aと非圧縮状態のコイルスプリング30の外端近傍部分との間へ挿入可能となっている。
【0024】
また、この例では樹脂リング20の摺動面20aから筒状部50の後端部50aまでの軸方向長さは、図1及び図2に示す第一の実施の形態における樹脂リング20の軸方向長さと略同等としており、したがって樹脂リング20の本体部分の軸方向長さ(摺動面20aから背面20bまでの軸方向長さ)は第一の実施の形態の樹脂リング20の軸方向長さより短いものとなっている。
【0025】
以上のように構成された第二の実施の形態による密封装置1も、第一の実施の形態と同様、装着状態では樹脂リング20が図3に示す位置よりもハウジング10の内方へ押し込まれることによってコイルスプリング30が軸方向へ適宜圧縮され、Oリング40が樹脂リング20の環状溝22の底面とハウジング10の内周面11aとの間に径方向へ圧縮された状態で介在し、コイルスプリング30の圧縮反力によって付勢された樹脂リング20の外端の摺動面20aが、球状弁体2(図1参照)の表面と摺動可能に密接されるものである。
【0026】
そして、未装着状態においてコイルスプリング30が軸方向に伸びきっていても、樹脂リング20に形成された筒状部50がハウジング10の開口端部10a側の内周面11aとコイルスプリング30の外端近傍部分の外周との間へ挿入されていることによって、樹脂リング20をハウジング10に支持するため、ボールバルブ等への組み付け過程で樹脂リング20及びコイルスプリング30がハウジング10から脱落するのを防止することができ、その結果、装着の作業性を向上することができる。
【0027】
また、樹脂リング20及びコイルスプリング30の脱落防止を、Oリング40を樹脂リング20の環状溝22の底面とハウジング10の内周面11aの間で径方向へ締め代を持たせることによって行うものではないため、ハウジング10の開口端部10aからの径方向段差面12の軸方向深さ(内周面11aの軸方向長さ)を、図1及び図2に示す第一の実施の形態のものよりも短くすることができるといった利点もある。
【0028】
次に図4、密封装置の第三の実施の形態を示すものである。この実施の形態は、上述した第二の実施の形態における筒状部50を金属等によって製作し、樹脂リング20と嵌合又は接着等により一体化させたものである。
【0029】
詳しくは、筒状部50は樹脂リング20の内周面と接合された相対的に小径の接合筒部51と、ハウジング10の内周面11aとコイルスプリング30の外端近傍部分との間へ挿入可能な相対的に大径の挿入筒部52と、前記接合筒部51と挿入筒部52の間を径方向へ延びて樹脂リング20の背面20bと接合された円盤部53からなる。なお、接合筒部51は樹脂リング20の摺動面20aに達しない長さであり、円盤部53は、Oリング40を装着する環状溝22の一部をなすと共に、コイルスプリング30の付勢力を受けるスプリングリテーナとして機能するものである。
【0030】
この構成によれば、第二の実施の形態と同様の効果が実現される。すなわち未装着状態において、コイルスプリング30が軸方向に伸びきっていても、筒状部50における挿入筒部52がハウジング10の開口端部10a側の内周面11aとコイルスプリング30の外端近傍部分の外周との間へ挿入されていることによって、樹脂リング20をハウジング10に支持するため、ボールバルブ等への組み付け過程で樹脂リング20及びコイルスプリング30がハウジング10から脱落するのを防止することができ、その結果、装着の作業性を向上することができる。
【0031】
加えて、筒状部50が金属からなるものであるため、図3に示す第二の実施の形態のものに比較して筒状部50の剛性を向上させることができ、接合筒部51によって樹脂リング20の剛性も向上させることができる。
【0032】
次に図5、密封装置の第四の実施の形態を示すものである。この実施の形態も、上述した第三の実施の形態と同様、筒状部50を金属等によって製作し、樹脂リング20と嵌合又は接着等により一体化させたものである。そして第三の実施の形態と異なるところは、筒状部50が、挿入筒部52と、樹脂リング20の背面20bと接合された円盤部53からなる断面略L字形に形成された点にある。樹脂リング20の背面20bと接合された円盤部53の接合面53aは、接合強度を高めるために段差形状に形成されている。
【0033】
この構成によれば、第三の実施の形態と同様の効果が実現されるほか、筒状部50の形状が簡素であるため、その加工が容易であり、第三の実施の形態に比較して安価に提供できるといった効果がある。
【0034】
なお、上述した各形態は、樹脂リング20を軸方向へ付勢してハウジング10の外部へ押し出す弾性体としてコイルスプリング30を用いているが、コイルスプリング30以外のもの、例えばゴム状弾性材料などを用いたものであっても、実施することが可能である。
【0035】
また、図3図5に示す第二〜第四の実施の形態でも、図2と同様、樹脂リング20の環状溝22の底面と、ハウジング10の内周面11aとの間に、径方向へ圧縮された状態で介在されるようにすることによって、筒状部50とOリング40の双方に、樹脂リング20及びコイルスプリング30がハウジング10から脱落するのを防止する支持手段としての機能を付与しても良い。
【符号の説明】
【0036】
1 密封装置
10 ハウジング
10a 開口端部
11 内周孔
11a 内周面
12 径方向段差面
20 樹脂リング
20a 摺動面
20b 背面
21 内周孔
22 環状溝
30 コイルスプリング(弾性体)
40 Oリング
50 筒状部
50a 後端部
51 接合筒部
52 挿入筒部
53 円盤部
53a 接合面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9