(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記入力電圧レンジ検出信号に基づいて、前記差動入力信号の電圧が前記第1または第5の入力電圧レンジに含まれていることが検出されている場合に、直ちに、前記差動入力信号の電圧が異常な入力電圧レンジに含まれていることを表すフェイルフラグを発生し、前記入力電圧レンジ検出信号に基づいて、前記差動入力信号の電圧が前記第2または第4の入力電圧レンジに含まれていることが検出されている場合に、前記差動入力信号の電圧が前記第2の入力電圧レンジに含まれている時間、または、前記第4の入力電圧レンジに含まれている時間が、あらかじめ設定された時間継続した場合に、前記差動入力信号の電圧が異常な入力電圧レンジに含まれていることを表すフェイルフラグを発生するフェイルフラグ発生回路を備える請求項1に記載の入力電圧レンジモニタ回路。
さらに、前記入力電圧レンジ検出信号に基づいて、前記差動入力信号の電圧が前記第1または第5の入力電圧レンジに含まれていることが検出されている場合に、直ちに、前記差動入力信号の電圧が異常な入力電圧レンジに含まれていることを表すフェイルフラグを発生し、前記入力電圧レンジ検出信号に基づいて、前記差動入力信号の電圧が前記第2または第4の入力電圧レンジに含まれていることが検出されている場合に、前記差動入力信号の電圧が前記第2および第4の入力電圧レンジに含まれている時間の累積時間があらかじめ設定された時間に到達した場合に、前記差動入力信号の電圧が異常な入力電圧レンジに含まれていることを表すフェイルフラグを発生するフェイルフラグ発生回路を備える請求項1に記載の入力電圧レンジモニタ回路。
さらに、前記フェイルフラグが、前記差動入力信号の電圧が異常な入力電圧レンジに含まれていることを表す場合に、前記差動入力信号のコモンモード電圧を、あらかじめ設定された電圧に設定するコモンモード電圧設定回路を備える請求項2〜4のいずれか1項に記載の入力電圧レンジモニタ回路。
【背景技術】
【0002】
近年、1つのマクロでPCIe Gen1/Gen2(PCI express Gen1/Gen2)、XAUI(10 Gigabit Attachment Unit Interface)、DDR-XAUI(Double Data Rate XAUI)などの、通信規格の異なる複数のインタフェイスに対応するマルチプロトコルマクロが増えてきている。これにより、従来は複数のマクロを使用して通信規格の異なる複数のインタフェイスに対応していたものが、1つのマクロで対応できるようになった。
【0003】
しかしその一方で、マルチプロトコルマクロを使用することにより以下の2つのリスクが増大している。
1)動作モードを設定するレジスタの設定が複雑になったため、レジスタの設定を間違えたり、マクロの仕様書と実際のマクロの動作との間に食い違いが生じるなどして、誤った動作モードを設定するリスク。
2)全ての動作モードを十分に検証することが困難になったため、回路バグが混入するリスク。
【0004】
本発明は、上記1)に起因するリスクを鑑みてなされたものである。
【0005】
上記1)に起因するリスクの具体例としては、LVDS(Low voltage differential signaling)の規格のインタフェイスに対応したDCカップリングモードと、PECL(Positive Emitter Coupled Logic)の規格のインタフェイスに対応したACカップリングモードの、2つの動作モードを切り替えて使用する、SerDes(Serializer/Deserializer)マクロが備えるPLL回路(Phase Locked Loop)で使用されるリファレンスクロックを受信する回路が考えられる。
【0006】
ACカップリングモードの場合、リファレンスクロック源と、SerDesマクロとの間に直列にカップリング容量が接続される。つまり、リファレンスクロックのDC成分はカップリング容量により遮断され、SerDesマクロの内部では、リファレンスクロックのコモンモード電圧がグランドに対してフローティングになる。そのため、ACカップリングモードの場合、SerDesマクロの内部では、コモンモード電圧設定回路により、コモンモード電圧が、あらかじめ設定された所定の電圧に設定される。
【0007】
一方、DCカップリングモードの場合、リファレンスクロックはそのままSerDesマクロの内部に入力される。
【0008】
【0009】
LVDSの規格のインタフェイスの場合、表1に示すように、例えば、差動入力信号の振幅Vodは、247〜454mV、そのコモンモード電圧Vocは、1.125〜1.375Vである。また、差動入力信号間に100Ωの終端抵抗が接続される。
これに対し、PECLの規格のインタフェイスの場合、例えば、入力信号の高電圧VOHは、VDD-1.0V、入力信号の低電圧VOLは、VDD-1.71Vである。また、VDD-2Vに対して50Ωの終端抵抗が接続される。
【0010】
このように、LVDSとPECLの規格のインタフェイスは、入力信号の範囲も、終端抵抗の接続方法も全く違うため、SerDesマクロは、LVDSとPECLのインタフェイスの入力信号をそのまま受信することができない。そこで、PECLのインタフェイスの場合に、ACカップリングモードとして、リファレンスクロック源と、SerDesマクロとの間に直列にカップリング容量を接続してDC成分をカットし、AC成分の信号振幅のみを取り出すと共に、コモンモード電圧は、別途、内部で設定回路を設けて設定している。
【0011】
そのため、LVDSとPECLの規格のインタフェイスの入力信号を1つのSerDesマクロで受信するためには、前述のように、ACカップリングモードとDCカップリングモードの、2つのモードを切り替える必要がある。
【0012】
しかし、上記1)に起因して、マクロの仕様書と実際のマクロの動作との間に食い違いが生じ、マクロ外部ではACカップリングモードを想定してリファレンスクロックが入力されるが、マクロ内部ではDCカップリングモードの設定となるリスクが考えられる。
【0013】
この場合、実際にはACカップリングモードであるにもかかわらず、コモンモード電圧設定回路により、コモンモード電圧が設定されない。そのため、コモンモード電圧がフローティングのままで安定せず、リファレンスクロックに基づいて動作するPLL回路のロックが外れてデータ転送エラーが発生しうる。また、データ転送エラーが発生した場合に、動作モードが多くレジスタ設定も複雑であるため、デバッグに多大の時間が必要となる可能性が大きい。
【0014】
SerDesマクロを使用したシステムでは、例えば、1日中データ転送が行われ、その間に発生したエラーがカウントされて、エラーレートに対する問題の有無がチェックされる。
しかし、前述のように、コモンモード電圧がフローティング状態の場合、直ちにデータ転送エラーとはならずに、最初は安定して動作し、数時間後に動作不良となるなど、不定期にデータ転送エラーが発生する現象となる可能性がある。
【0015】
図7は、SerDesマクロが備える差動入力バッファとPLL回路の構成を表す一例のブロック図である。
リファレンスクロックREFCLKDは、差動入力バッファ12により受信され、シングルエンド出力信号のリファレンスクロックREFCLKSに変換される。そして、PLL回路14により、差動入力バッファ12から出力されるリファレンスクロックREFCLKSに位相同期した出力クロックが発生される。
また、PLL回路14からは、PLL回路14がロック状態なのかアンロック状態なのかを表すロックフラグが出力されている。ロックフラグは、PLL回路14がロック状態の場合にL(ローレベル)となり、アンロック状態の場合にH(ハイレベル)になる。
【0016】
図7に示す従来の回路では、例えば、リファレンスクロックREFCLKDが不安定となり、PLL回路14がアンロック状態になると、ロックフラグをチェックすることにより、PLL回路14がロック状態なのかアンロック状態なのかを知ることはできる。
【0017】
しかし、PLL回路14がアンロック状態となった場合に、その原因がどこにあるのかを特定することは非常に難しい。例えば、リファレンスクロックREFCLKDが原因かもしれないし、それ以外にもノイズが原因の場合や、PLL回路14に電源電圧を供給するレギュレータが原因の場合もあり、色々な原因が考えられるため、それらを1つずつ検証していくには多大な労力を必要とする。また、直ちにエラーが発生すれば分かりやすいが、数時間が経過した後にエラーが発生する場合もあり、エラー発生の原因を特定することが難しい。
【0018】
ここで、本発明に関連性のある先行技術文献として、特許文献1,2がある。
【0019】
特許文献1には、差動増幅回路において、出力コモン電圧とその上限電圧および下限電圧とをそれぞれ比較し、出力コモン電圧がその上限電圧と下限電圧の範囲外となる、出力コモン電圧の異常を検出すると、差動信号入力端子に同相入力電圧範囲内の固定電圧を与えることにより、出力コモン電圧が異常な電圧のまま固定化されることがないようにすることが記載されている。
【0020】
特許文献2には、それぞれ容量素子を介して入力される差動電圧信号を増幅する入力バッファ回路において、差動電圧信号とこれに重畳されるノイズの正および負のピーク値とを比較し、差動電圧信号が入力されている場合には差動電圧信号を、差動電圧信号が入力されていない場合には基準電圧を後段の信号処理回路へ出力することにより、増幅されたノイズが後段の信号処理回路へ誤信号出力されるのを防止することが記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の入力電圧レンジモニタ回路を詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明の入力電圧レンジモニタ回路の構成を表す一実施形態の回路図である。同図に示す入力電圧レンジモニタ回路10は、差動入力バッファ12により受信される、リファレンスクロックREFCLKDの入力電圧レンジをモニタするものであり、第1〜第4の比較器16,18,20,22と、入力電圧レンジ検出回路24と、フェイルフラグ発生回路26とを備えている。
【0035】
同図には、入力電圧レンジモニタ回路10の他に、
図7に示すものと同じ差動入力バッファ12と、PLL回路14とが示されている。
差動入力バッファ12には、リファレンスクロックREFCLKDが入力され、入力信号端子間には、100Ωの終端抵抗13が接続されている。PLL回路14には、差動入力バッファ12の出力信号が入力されている。
リファレンスクロックREFCLKDは、差動入力バッファ12により受信され、シングルエンド出力信号のリファレンスクロックREFCLKSに変換される。そして、PLL回路14により、差動入力バッファ12から出力されるリファレンスクロックREFCLKSに位相同期した出力クロックが発生される。
【0036】
なお、終端抵抗13の抵抗値は、規格により決定されたものが使用されている。また、リファレンスクロックREFCLKDの周波数は何ら制限されないが、本実施形態の場合、100MHzのリファレンスクロックが入力されている。
【0037】
入力電圧レンジモニタ回路10において、第1の比較器16には、一方の差動入力信号INPの電圧と第2の基準高電圧VREFH_Limitとが入力されている。
第1の比較器16は、一方の差動入力信号INPの電圧と第2の基準高電圧VREFH_Limitとを比較し、その比較結果を表す第1の電圧比較信号Aを出力するものである。
第2の比較器18には、一方の差動入力信号INPの電圧と第1の基準高電圧VREFHとが入力されている。
第2の比較器18は、一方の差動入力信号INPの電圧と第1の基準高電圧VREFHとを比較し、その比較結果を表す第2の電圧比較信号Bを出力するものである。
【0038】
また、第3の比較器20には、他方の差動入力信号INNの電圧と第1の基準低電圧VREFLとが入力されている。
第3の比較器20は、他方の差動入力信号INNの電圧と第1の基準低電圧VREFLとを比較し、その比較結果を表す第3の電圧比較信号Cを出力するものである。
第4の比較器22には、他方の差動入力信号INNの電圧と第2の基準低電圧VREFL_Limitとが入力されている。
第4の比較器22は、他方の差動入力信号INNの電圧と第2の基準低電圧VREFL_Limitとを比較し、その比較結果を表す第4の電圧比較信号Dを出力するものである。
【0039】
ここで、第1の基準高電圧VREFHおよび第1の基準低電圧VREFLは、それぞれ、規格により決定された差動入力信号の最大電圧および最小電圧である(規格値)。
また、第2の基準高電圧VREFH_Limitおよび第2の基準低電圧VREFL_Limitは、それぞれ、差動入力バッファ12が受信することが可能な差動入力信号の最大電圧および最小電圧である(差動入力バッファ12の実力値)。
第2の基準高電圧VREFH_Limitは、第1の基準高電圧VREFHよりも高く、第2の基準低電圧VREFL_Limitは、第1の基準低電圧VREFLよりも低い。
【0040】
第1の電圧比較信号Aは、一方の差動入力信号INPの電圧が第2の基準高電圧VREFH_Limitよりも高い場合にHとなり、低い場合にLとなる。
以下順に、第2の電圧比較信号Bは、一方の差動入力信号INPの電圧が第1の基準高電圧VREFHよりも高い場合にHとなり、低い場合にLとなる。
第3の電圧比較信号Cは、他方の差動入力信号INNの電圧が第1の基準低電圧VREFLよりも高い場合にHとなり、低い場合にLとなる。
第4の電圧比較信号Dは、他方の差動入力信号INNの電圧が第2の基準低電圧VREFL_Limitよりも高い場合にHとなり、低い場合にLとなる。
【0041】
なお、第1〜第4の比較器16,18,20,22には、一方の差動入力信号INP、または、他方の差動入力信号INNのどちらを入力してもよい。
【0042】
続いて、入力電圧レンジ検出回路24には、第1〜第4の電圧比較信号A,B,C,Dが入力されている。
入力電圧レンジ検出回路24は、第1〜第4の電圧比較信号A,B,C,Dに基づいて、差動入力信号INP,INNの電圧が、第1〜第5の入力電圧レンジのうちのどの入力電圧レンジに含まれているのかを検出し、その検出結果を表す入力電圧レンジ検出信号を出力するものである。
本実施形態の場合、入力電圧レンジ検出回路24は、差動入力信号INP,INNの電圧が第2または第4の入力電圧レンジに含まれているか否かを検出した結果を表す第1の入力電圧レンジ検出信号と、差動入力信号INP,INNの電圧が第1または第5の入力電圧レンジに含まれているか否かを検出した結果を表す第2の入力電圧レンジ検出信号を出力する。
【0043】
図2に示すように、第1の入力電圧レンジは、差動入力信号INP,INNの電圧が第2の基準高電圧VREFH_Limitよりも高い領域である。
以下順に、第2の入力電圧レンジは、差動入力信号INP,INNの電圧が第2の基準高電圧VREFH_Limitよりも低く、第1の基準高電圧VREFHよりも高い領域である。
第3の入力電圧レンジは、差動入力信号INP,INNの電圧が第1の基準高電圧VREFHよりも低く、第1の基準低電圧VREFLよりも高い領域である。
第4の入力電圧レンジは、差動入力信号INP,INNの電圧が第1の基準低電圧VREFLよりも低く、第2の基準低電圧VREFL_Limitよりも高い領域である。
第5の入力電圧レンジは、差動入力信号INP,INNの電圧が第2の基準低電圧VREFL_Limitよりも低い領域である。
【0045】
本実施形態の場合、表2に示すように、第1の電圧比較信号AがHの場合、第2〜第4の電圧比較信号B,C,Dの状態に関係なく、差動入力信号INP,INNの電圧は第1の入力電圧レンジに含まれている。
以下順に、第1の電圧比較信号AがLで、かつ、第2〜第4の電圧比較信号B,C,DがHの場合、差動入力信号INP,INNの電圧は、第2の入力電圧レンジに含まれている。
第1および第2の電圧比較信号A,BがLで、かつ、第3および第4の電圧比較信号C,DがHの場合、差動入力信号INP,INNの電圧は、第3の入力電圧レンジに含まれている。
第1〜第3の電圧比較信号A,B,CがLで、かつ、第4の電圧比較信号DがHの場合、差動入力信号INP,INNの電圧は、第4の入力電圧レンジに含まれている。
第4の電圧比較信号DがLの場合、第1〜第3の電圧比較信号A,B,Cに関係なく、差動入力信号INP,INNの電圧は、第5の入力電圧レンジに含まれている。
【0046】
また、表2に示すように、第1の入力電圧レンジ検出信号は、差動入力信号INP,INNの電圧が、第3の入力電圧レンジに含まれている場合にLになり、それ以外の第1、第2、第4または第5の入力電圧レンジに含まれている場合にHになる。
また、第2の入力電圧レンジ検出信号は、差動入力信号INP,INNの電圧が第1または第5の入力電圧レンジに含まれている場合にHになり、それ以外の第2〜第4の入力電圧レンジに含まれている場合にLになる。
【0047】
続いて、フェイルフラグ発生回路26には、第1および第2の入力電圧レンジ検出信号が入力されている。
フェイルフラグ発生回路26は、第1および第2の入力電圧レンジ検出信号に基づいて、差動入力信号INP,INNの電圧が、正常な入力電圧レンジに含まれているのか異常な入力電圧レンジに含まれているのかを表すフェイルフラグを発生するものである。
本実施形態の場合、フェイルフラグがLの場合、差動入力信号INP,INNの電圧が正常な入力電圧レンジに含まれていることを表し、フェイルフラグがHの場合、差動入力信号INP,INNの電圧が異常な入力電圧レンジに含まれていることを表す。
本実施形態のフェイルフラグ発生回路26は、OSC(クロック発振回路)28と、カウンタ30と、OR回路32と、フェイルフラグ出力回路34とを備えている。
【0048】
カウンタ30のリセット入力端子RESETには第1の入力電圧レンジ検出信号が入力され、クロック入力端子CLKにはOSC28からクロックが入力されている。カウンタ30のデータ出力端子Qからはカウント終了信号が出力されている。
カウンタ30は、第1の入力電圧レンジ検出信号がLの場合にリセットされて、カウント終了信号はLとなる。
カウンタ30は、第1の入力電圧レンジ検出信号がHの場合にリセットが解除され、OSC28から入力されるクロックに同期してカウントアップする。そして、そのカウント値が、あらかじめ設定された値になると、カウント終了信号はHになる。
【0049】
なお、前述の、あらかじめ設定された値は、可変に設定可能とすることが望ましい。この設定値は何ら制限されないが、例えば、PLL回路14の特性等に応じて適宜設定することが望ましい。
また、OSC28から供給されるクロックの周波数は何ら制限されないが、本実施形態の場合、10〜100MHzのクロックが使用されている。
【0050】
OR回路32には、カウント終了信号および第2の入力電圧レンジ検出信号が入力されている。
【0051】
フェイルフラグ出力回路34は、フリップフロップ(FF)36と、インバータ38と、AND回路40とを備えている。
【0052】
インバータ38にはフェイルフラグが入力されている。AND回路40には、OR回路32の出力信号およびインバータ38の出力信号が入力されている。FF36のリセット入力端子RESETには第1の入力電圧レンジ検出信号が入力され、データ入力端子Dは電源に接続され、クロック入力端子にはAND回路40の出力信号が入力されている。FF36のデータ出力端子Qからはフェイルフラグ(信号)が出力されている。
FF36は、第1の入力電圧レンジ検出信号がLの場合にリセットされて、フェイルフラグはL、インバータ38の出力信号はHになる。
FF36は、第1の入力電圧レンジ検出信号がHの場合にリセットが解除される。この状態で、OR回路32の出力信号がLからHに変化すると、AND回路40の出力信号がLからHに変化し、FF36は電源のHを保持してフェイルフラグがHになる。
フェイルフラグがHになると、インバータ38の出力信号がL、AND回路40の出力信号がLとなり、これ以後、フェイルフラグのHは、第1の入力電圧レンジ検出信号がLとなり、FF36がリセットされるまで保持される。
【0053】
続いて、入力電圧レンジモニタ回路10の動作を説明する。
【0054】
第1および第2の比較器16,18により、一方の差動入力信号INPの電圧と、第2の基準高電圧VREFH_Limitおよび第1の基準高電圧VREFHとがそれぞれ比較され、第1および第2の電圧比較信号A,Bが出力される。
また、第3および第4の比較器20,22により、他方の差動入力信号INNの電圧と、第1の基準低電圧VREFLおよび第2の基準高電圧VREFL_Limitとがそれぞれ比較され、第3および第4の電圧比較信号C,Dが出力される。
【0055】
続いて、入力電圧レンジ検出回路24により、第1〜第4の電圧比較信号A,B,C,Dに基づいて、差動入力信号INP,INNの電圧が、第1〜第5の入力電圧レンジのうちのどの入力電圧レンジに含まれているのかが検出され、第1および第2の入力電圧レンジ検出信号が出力される。
【0056】
続いて、フェイルフラグ発生回路26により、第1および第2の入力電圧レンジ検出信号に基づいて、フェイルフラグが発生される。
【0057】
ここで、第1および第2の入力電圧レンジ検出信号がLの場合、つまり、差動入力信号INP,INNの電圧が第3の入力電圧レンジに含まれていることが検出されている場合、カウンタ30はリセットされて、カウント終了信号はLとなる。従って、OR回路32の出力信号およびAND回路40の出力信号はLになる。
また、FF36もリセットされて、フェイルフラグはL、インバータ38の出力信号はHになる。
【0058】
つまり、この場合、表3に示すように、フェイルフラグ発生回路26は、差動入力信号INP,INNの電圧が、正常な入力電圧レンジに含まれていることを表すLのフェイルフラグを出力する。
【0060】
続いて、第1の入力電圧レンジ検出信号がH、かつ、第2の入力電圧レンジ検出信号がLの場合、つまり、一方の差動入力信号INPの電圧が第2入力電圧レンジに含まれているか、または、他方の差動入力信号INNの電圧が第4の入力電圧レンジに含まれていることが検出されている場合、カウンタ30はリセットが解除され、OSC28から入力されるクロックに同期してカウントアップする。そして、カウンタ30のカウント値が、あらかじめ設定された値になった場合に、つまり、差動入力信号INP,INNの電圧が第2または第4の入力電圧レンジに含まれている時間が、あらかじめ設定された時間継続した場合に、カウント終了信号はHになる。カウント終了信号がHになると、OR回路32の出力信号およびAND回路40の出力信号はHになる。
また、FF36もリセットが解除され、AND回路40の出力信号の立ち上がりに同期して電源のHを保持してフェイルフラグがHになる。
【0061】
図3は、上記1)の設定が為された場合に、差動入力信号の電圧がグランド側へシフトしていく様子を表す一例のタイミングチャートである。このタイミングチャートの縦軸は差動入力信号の電圧(入力電圧)、横軸は時間の経過を表す。
前述の1)に起因する状況に応じて、差動入力信号のコモンモード電圧がフローティングになっている場合、差動入力信号の電圧は、同図に示すように、最初は第3の入力電圧レンジ(正常な領域)に含まれていたとしても、差動入力信号の入力ノードから電源およびグランドに対してリーク電流が流れるため、例えば、電源に対してよりもグランドに対するリーク電流の方が大きい場合には、時間の経過とともに次第にグランド側へシフトしていき、第4の入力電圧レンジ(異常な領域)になる。
本実施形態の場合、差動入力信号INP,INNの電圧が、第3の入力電圧レンジから第4の入力電圧レンジへシフトしてから、この状態で、10μSの時間が経過した場合に、カウント終了信号がHになり、フェイルフラグがHになる。
差動入力信号の電圧が、時間の経過とともに次第に電源側へシフトしていく場合も同様である。
【0062】
つまり、この場合、表3に示すように、一方の差動入力信号INPの電圧が第2の入力電圧レンジに含まれている時間、または、他方の前記差動入力信号INNの電圧が第4の入力電圧レンジに含まれている時間が、あらかじめ設定された時間継続した場合に、フェイルフラグ発生回路26は、差動入力信号INP,INNの電圧が異常な入力電圧レンジに含まれていることを表すHのフェイルフラグを出力する。
【0063】
差動入力信号INP,INNの電圧が規格値を超えていても、差動入力バッファ12はマージンを持っているため、その実力値の範囲内であれば正常に動作することができる。
しかし、差動入力信号INP,INNの電圧が規格値を超えている時間が長い場合には、差動入力バッファ12が正常に動作することができない可能性があるため、前述の、あらかじめ設定された時間を適宜設定することが望ましい。
【0064】
続いて、第1の入力電圧レンジ検出信号がH、かつ、第2の入力電圧レンジ検出信号がHの場合、つまり、一方の差動入力信号INPの電圧が第1の入力電圧レンジに含まれているか、または、他方の差動入力信号INNの電圧が第5の入力電圧レンジに含まれていることが検出されている場合、カウンタ30およびFF36のリセットが解除され、差動入力信号INP,INNの電圧が第2または第4の入力電圧レンジに含まれている場合と同様に動作するが、カウント終了信号がLからHに変化するよりも前に、OR回路32の出力信号がLからHになり、フェイルフラグがHになる。
【0065】
つまり、この場合、表3に示すように、フェイルフラグ発生回路26は、あらかじめ設定された時間を待つことなく、直ちに、差動入力信号INP,INNの電圧が異常な入力電圧レンジに含まれていることを表すHのフェイルフラグを出力する。
【0066】
このように、フェイルフラグを出力することにより、差動入力信号INP,INNの電圧が、正常な入力電圧レンジに含まれているのか異常な入力電圧レンジに含まれているのかを特定することができるため、デバッグを容易化することができ、デバッグ時間を短縮することができる。
【0067】
次に、フェイルフラグの利用例について説明する。
【0068】
図4は、
図1に示すフェイルフラグの利用例を表す一例の回路図である。同図は、
図1に示す入力電圧レンジモニタ回路10において、さらに、記憶回路42と、コモンモード電圧設定回路44とを備えている。
【0069】
記憶回路42のクロック入力端子には、0.01Hzのクロックが入力され、データ入力端子Dataには、フェイルフラグが入力されている。
記憶回路42は、フェイルフラグを一定時間毎、
図4の例では、100秒毎に記憶するものである。
【0070】
前述のように、SerDesマクロを使用したシステムでは、例えば、1日中データ転送が行われ、その間に発生したエラーがカウントされて、エラーレートに問題があるかないかというチェックが行われる。
従って、記憶回路42を備えることにより、記憶回路42に記憶されたフェイルフラグのログを確認すれば、エラーの発生の有無はもちろん、どの時点で、差動入力信号INP,INNの電圧が異常な入力電圧レンジに変化したのかを知ることができる。
【0071】
続いて、コモンモード電圧設定回路44は、カップリングモード切替信号に応じて、ACカップリングモードとDCカップリングモードとを切り替え、ACカップリングモードの場合に、差動入力信号INP,INNのコモンモード電圧を、あらかじめ設定された所定の電圧に設定するものである。
本実施形態の場合、カップリングモード切替信号がHの場合にACカップリングモードになり、カップリングモード切替信号がLの場合にDCカップリングモードになる。
【0072】
コモンモード電圧設定回路44は、NOR回路46と、PMOS(P型MOSトランジスタ)48とを備えている。
また、100Ωの終端抵抗13は、それぞれ、50Ωの抵抗素子13a、13bに分割されている。抵抗素子13a、13bは、入力信号端子間に直列に接続されている。
NOR回路46には、フェイルフラグと、カップリングモード切替信号が入力されている。PMOS48のソースは電源に接続され、ドレインは、抵抗素子13a、13bの間のノードに接続され、ゲートには、NOR回路46の出力信号が入力されている。
【0073】
コモンモード電圧設定回路44では、カップリングモード切替信号がHの場合、つまり、ACカップリングモードの場合、NOR回路46の出力信号がLになり、PMOS48がオン状態になる。これにより、抵抗素子13a、13bの間のノードの電圧、つまり、リファレンスクロックREFCLKDのコモンモード電圧が1.1Vに設定される。
【0074】
一方、カップリングモード切替信号がLの場合、つまり、DCカップリングモードの場合、NOR回路46の出力信号は、フェイルフラグに応じて変化する。
【0075】
フェイルフラグがHの場合、NOR回路46の出力信号はLになり、前述と同様に、リファレンスクロックREFCLKDのコモンモード電圧が1.1Vに設定される。フェイルフラグがHの場合、つまり、エラーの発生時には、リファレンスクロックREFCLKDのコモンモード電圧が変動している場合が多い。従って、これにより、ACカップリングモードと同じように、差動入力信号INP,INNのコモンモード電圧を、強制的に、あらかじめ設定された1.1Vの電圧に設定することができる。
【0076】
また、フェイルフラグがLの場合、NOR回路46の出力信号はHになり、PMOS48がオフ状態になる。これにより、DCカップリングモードとなり、差動入力信号INP,INN間は、終端抵抗13により終端される。
【0077】
最後に、差動入力信号の電圧が変化する様子を検証した結果について説明する。
【0078】
図5は、差動入力信号INP,INNの電圧が変化することを検証するためのシミュレーション回路の構成を表す一例の回路図である。同図に示すシミュレーション回路50は、前述の1)に起因するリスクを具現化する状態の一例として、マクロ外部ではACカップリングモードを想定して差動入力信号INP,INNが入力されるのに対して、マクロ内部ではDCカップリングモードの設定となり、リファレンスクロックREFCLKDのコモンモード電圧がグランドに対してフローティングになる回路を模擬している。
【0079】
同図に示すシミュレーション回路50において、差動入力バッファ12には、それぞれ、ACカップリング容量52a、52bを介して、リファレンスクロックREFCLKDの差動入力信号INP,INNが入力され、差動入力信号INP,INNの間には終端抵抗13が接続されている。
また、シミュレーション回路50には、差動入力信号INP,INNのノードにおけるグランドに対するリーク電流を模擬するための抵抗素子54a、54bが、差動入力信号INP,INNのノードとグランドとの間にそれぞれ接続されている。
【0080】
実際の回路では、ACカップリング容量52a、52bの容量値は100nF程度が主流であり、抵抗素子54a、54bの抵抗値は、デザインに依存して10MΩ〜1000MΩ程度である。また、終端抵抗13の抵抗値は100Ωである。
これに対し、シミュレーション回路50では、SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)シミュレーションによるシミュレーション時間を短縮するために、ACカップリング容量52a、52bの容量値C_ac_couplingを1nF、抵抗素子54a、54bの抵抗値R_leakを1kΩとしている。
従って、時定数、つまり、シミュレーション時間は、R_leak*C_ac_coupling=1μSになり、実際から10
6〜10
7倍の加速を行う設定となる。
【0081】
図6は、
図5に示すシミュレーション回路における差動入力信号INP,INNの電圧の経時変化を表すタイミングチャートである。
SPICEシミュレーションでは、電圧が0.95V〜1.35Vの範囲で変化する、振幅400mVの差動入力信号INP,INNを入力した。
差動入力信号INP,INNは、実際は、振幅を保ちつつ上下に発振しているが、
図6では、便宜的にその変化範囲を斜線で示している。
このタイミングチャートに示すように、差動入力信号INP,INNの電圧は、最初は、0.95V〜1.35Vの範囲で変化するが、上記の時定数のオーダーで、時間の経過とともに次第に低下していくことが分かる。本シミュレーションの加速条件を鑑みると、この結果は、実際の現象としては同様の変動が数秒のオーダーで起こりうることを示しており、本発明による継続的な入力電圧レンジモニタの有用性を示している。
【0082】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、第1および第2の入力電圧レンジ検出信号に基づいて、一方の差動入力信号INPの電圧が第2の入力電圧レンジに含まれているか、または、他方の差動入力信号INNの電圧が第4の入力電圧レンジに含まれていることが検出されている場合に、フェイルフラグ発生回路26は、一方の差動入力信号INPの電圧が第2の入力電圧レンジに含まれている時間と、他方の差動入力信号INNの電圧が第4の入力電圧レンジに含まれている時間との累積時間があらかじめ設定された時間に到達した場合に、差動入力信号の電圧が異常な入力電圧レンジに含まれていることを表すHのフェイルフラグを発生してもよい。
これにより、差動入力信号INP,INNが電源とグランドとの間でふらついている場合にも、差動入力信号INP,INNの電圧が不安定であることを特定することができる。
【0083】
また、入力電圧レンジ検出信号を一定時間毎に記憶する記憶回路を備えていてもよい。
これにより、差動入力信号INP,INNの電圧が、どの時点で、どの入力電圧レンジでエラーとなったのかを知ることができる。
【0084】
本発明は、上記実施形態として示す各構成要素の具体的な構成に限定されず、同様の機能を果たす各種構成の回路を使用して実現することが可能である。
また、本発明は、SerDesマクロが備えるPLL回路で使用されるリファレンスクロックREFCLKDに限らず、各種の差動入力信号に対しても同様に適用可能である。
【0085】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。