特許第6204815号(P6204815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204815
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】ポリフェニレンエーテルを含む混合液
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/12 20060101AFI20170914BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20170914BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C08L71/12
   C08J5/24CEZ
   H05K1/03 610T
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-260615(P2013-260615)
(22)【出願日】2013年12月17日
(65)【公開番号】特開2015-117285(P2015-117285A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】杉村 昌治
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正朗
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−194137(JP,A)
【文献】 特開2001−339130(JP,A)
【文献】 特開2002−265777(JP,A)
【文献】 特開平11−021507(JP,A)
【文献】 特開2005−281615(JP,A)
【文献】 特開平06−207096(JP,A)
【文献】 特開2004−099681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C08L 71/12
C08J 5/24
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテルと溶剤とを含む混合液であって、
(1)前記ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が5000〜40000であり、
(2)前記溶剤は、
前記ポリフェニレンエーテルの溶剤保持量が100質量%以上である化合物から選択される1種以上である化合物(A)と、
前記ポリフェニレンエーテルの溶剤保持量が300質量%以上1500質量%未満であり、かつ分子内に5員環又は6員環の環構造を有し、かつケトン類又はアルケン類である化合物から選択される1種以上である化合物(B)と
の混合物である、混合液。
【請求項2】
前記化合物(A)の前記溶剤全体に占める割合は、10質量%以上90質量%以下である、請求項1に記載の混合液。
【請求項3】
前記化合物(B)の沸点は、前記化合物(A)の沸点よりも高い、請求項1又は2に記載の混合液。
【請求項4】
前記化合物(B)の沸点は、前記化合物(A)の沸点よりも18℃以上高い、請求項3に記載の混合液。
【請求項5】
前記化合物(B)は、シクロヘキサノン、シクロペンタノン及びシクロヘキセンからなる群から選択される1種以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載の混合液。
【請求項6】
架橋型硬化性樹脂及び開始剤をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の混合液。
【請求項7】
前記架橋型硬化性樹脂が、分子内に2個以上のビニル基を持つモノマーである、請求項に記載の混合液。
【請求項8】
前記架橋型硬化性樹脂が、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)である、請求項に記載の混合液。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の混合液を含む、樹脂ワニス。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の混合液を含む樹脂ワニスを基材に塗布し、次いで前記基材から溶剤を除去することによって得られる、プリプレグ。
【請求項11】
請求項10に記載のプリプレグを構成成分として作製された、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子基板材料として好適な、ポリフェニレンエーテル(以下、PPEともいう)を含む混合液、該混合液を含む樹脂ワニスと、基材とを含むプリプレグ、並びに、該プリプレグを用いて形成される電気、電子部品用の積層板、及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報ネットワーク技術の著しい進歩、情報ネットワークを活用したサービスの拡大により、電子機器には情報量の大容量化、処理速度の高速化求められている。デジタル信号を大容量かつ高速に伝達するためには信号の波長を短くするのが有効であり、信号の高周波化が進んでいる。ところが、高周波領域の電気信号は配線回路で減衰されやすいため、伝送特性の良いプリント配線板が必要とされる。
【0003】
PPEは、誘電率、誘電正接が低く、高周波特性、すなわち、誘電特性に優れるため、高周波数帯を利用する電子機器のプリント配線板用の材料として好適である。
【0004】
一方、PPEは、有機溶剤への溶解性に欠けるため、プリント配線板製造に必要なプリプレグを製造する際、クロロホルムのようなハロゲン系溶剤に溶解させてワニスを製造する、或いは、50℃以上に加熱したトルエン、キシレン等の芳香族有機溶剤に溶解させてワニスを製造する必要があった。
【0005】
また、このようなワニスでプリプレグを製造すると、PPEが溶剤を保持しやすく、樹脂層が厚くなるにつれ、乾燥による樹脂層のひび割れ等が発生しやすいという問題もあった。
【0006】
かかる問題を解決すべく、特許文献1には、低分子量のPPEを用いることにより、常温での芳香族有機溶剤への溶解性に優れ、且つ、溶融樹脂の流動性が良好で多層化が可能なPPE樹脂組成物が記載されている。また、特許文献2には、低分子量PPEの末端水酸基を反応性官能基化し、溶剤への溶解性を高めるとともに耐熱性を向上させる技術が報告されている。
【0007】
また、特許文献3、4には、PPEとスチレンブタジエンコポリマー等の架橋性樹脂とトリアシルイソシアヌレート等の架橋助剤を含む樹脂組成物を含むトルエン樹脂液を、一旦35℃に加熱した後冷却し、PPEと架橋性樹脂と架橋助剤を含む樹脂組成物の粒子が分散している不透明な分散液とする方法が記載されている。
【0008】
さらに、特許文献5には、平均粒径10〜50μmのPPE樹脂粉末をメチルエチルケトン等の溶剤に分散させる方法が、そして特許文献6には、106μm以下のPPE粒子を水系に分散させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−265777号公報
【特許文献2】特表2009−509312号公報
【特許文献3】特開平7−292126号公報
【特許文献4】特開平9−290481号公報
【特許文献5】特開2008−50526号公報
【特許文献6】特開2003−34731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の低分子量PPEを用いて溶剤への溶解性を高める方法は、得られる積層板の耐熱性が低下するという問題、及びPPEの末端水酸基の数が増加するために誘電率及び誘電正接が大きくなるという問題を招来するため、プリント配線板に用いるには十分なものではなかった。
【0011】
また、特許文献2に記載の低分子量・反応性官能化PPEを用い溶剤への溶解性を高める方法は、低分子量化に伴う耐熱性低下の問題は改善されるものの、末端の水酸基を封止していることに起因すると推測される問題を有していた。すなわち、このようなPPEは、ガラスクロス等の基材又は銅箔等との接着性が十分でなく、積層板の場合の層間の剥離強度、又は該PPEと銅箔等との剥離強度が低い、或いは耐吸水性及びはんだ耐熱性が十分でないという問題があった。
【0012】
特許文献3、4に記載の方法は、PPEと架橋性樹脂と架橋助剤を含む樹脂組成物の粒子の分散液が非常に高粘度になるため、基材への塗工に必要な流動性が得られ難い点、基材への含浸に劣る点で、十分ではなかった。実際に、特許文献3の実施例1、実施例2に開示されている方法を忠実にトレースしてみると、分散液はグリース状になり、塗工に供すことができないか、辛うじて塗工できても基材への含浸が悪く基材と樹脂組成物の接着性に劣るものしか得られなかった。上述のようにPPEと加工性樹脂と架橋性樹脂とが混在した高濃度、高粘度の条件で温度下降させると、PPE等の結晶化が成長せず、非常に小さいが溶剤を内部に取り込み膨潤している結晶が多く発生し、これらの結晶粒子が凝集してグリース状になってしまったと考えられる。
【0013】
特許文献5に記載の方法は、ポリフェニレンーテルを貧溶剤に分散させるため、分散液の分散安定性に欠けPPEが沈降しやすく、均一な塗工性及び連続塗工性に欠ける点で十分でなかった。また、ガラスクロス等の基材に含浸させる際、分散溶剤とPPEの基材への移動速度が大きく異なるため、PPEのみ含浸ロール等に堆積してしまうという問題もあった。
【0014】
特許文献6に記載の方法は、界面活性剤を利用して水系溶媒に安定に分散させているが、PPEの粒子が106μm以下と非常に大きいため、例えば、該特許文献6に記載されているTAICを硬化性モノマーとして硬化性樹脂組成物とした際、通常の加熱加圧成型条件の過程ではPPEとTAICとを完全に相溶させることができず、得られる基板の均一性に欠けるため、はんだ耐熱性や、ドリル加工性に劣る欠点を有していた。
以上のように、PPEが本来有する低い誘電率及び誘電正接を有する硬化物を与え、優れた耐熱性及び接着性を有する硬化物を与え、PPEやPPEを含む樹脂組成物の分散安定性に優れ、常温での塗工によりPPEや樹脂組成物が均一な層を形成しているプリプレグを得られる混合液に関する技術は見出されておらず、前記の特性を有するような混合液が強く望まれていた。
【0015】
前記の状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、PPEが本来有する低い誘電率及び誘電正接を有する硬化物を与え、優れた耐熱性及び接着性(例えば、多層板における層間の剥離強度、又は硬化性樹脂組成物の硬化物と銅箔等の金属箔との剥離強度)を有する硬化物を与え、常温塗工可能であり、PPEやPPEを含む硬化性樹脂組成物の分散安定性に優れ、プリプレグ製造時に均一なPPEやPPEを含む硬化性樹脂組成物の層を形成できる混合液を提供することである。本発明の課題は更に、特定の態様において、PPE又はPPEと架橋型硬化性樹脂とを含む硬化性樹脂組成物と、溶剤とを含む混合液、該硬化性樹脂組成物と基材とを含むプリント配線板用プリプレグ、及び該硬化性樹脂組成物の硬化物と基材とを含むプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、後述するような、特定の分子量を有するPPEと、PPEの特定の溶剤保持量を有する化合物(A)と、PPEの特定の溶剤保持量を有しかつ分子内に環構造を有する化合物(B)との混合物である溶剤を用いることで、PPE及び溶剤を含む混合液、より具体的にはPPEを含む硬化性樹脂組成物を含む混合液の流動性、分散安定性が高められるため、該混合液を含むワニスの常温での塗工が可能となることを見出した。更に、本発明者らは、溶剤保持量が互いに異なる2つの化合物群から選択される、化合物(A)及び化合物(B)の組合せを用いることにより、得られるプリプレグにおいて、PPEを含む硬化性樹脂組成物の均一な層を形成しやすくなることを見出した。更に、本発明者らは、上記プリプレグから例えば加熱加圧成型により製造される、PPEを含む硬化性樹脂組成物の硬化物と基材との接着性が良好であることを見出した。本発明者らはかかる知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
【0018】
[1] ポリフェニレンエーテルと溶剤とを含む混合液であって、
(1)前記ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が5000〜40000であり、
(2)前記溶剤は、
前記ポリフェニレンエーテルの溶剤保持量が1500質量%以上である化合物から選択される1種以上である化合物(A)と、
前記ポリフェニレンエーテルの溶剤保持量が300質量%以上1500質量%未満であり、かつ分子内に環構造を有する化合物から選択される1種以上である化合物(B)と
の混合物である、混合液。
[2] 前記化合物(A)の前記溶剤全体に占める割合は、10質量%以上90質量%以下である、上記[1]に記載の混合液。
[3] 前記化合物(B)の沸点は、前記化合物(A)の沸点よりも高い、上記[1]又は[2]に記載の混合液。
[4] 前記化合物(B)の沸点は、前記化合物(A)の沸点よりも18℃以上高い、上記[3]に記載の混合液。
[5] 前記化合物(B)の前記環構造は、4員環から8員環である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の混合液。
[6] 前記化合物(B)は、ケトン化合物又はアルケン化合物である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の混合液。
[7] 架橋型硬化性樹脂及び開始剤をさらに含む、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の混合液。
[8] 前記架橋型硬化性樹脂が、分子内に2個以上のビニル基を持つモノマーである、上記[7]に記載の混合液。
[9] 前記架橋型硬化性樹脂が、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)である、上記[8]に記載の混合液。
[10] 上記[1]〜[9]のいずれかに記載の混合液を含む、樹脂ワニス。
[11] 上記[1]〜[9]のいずれかに記載の混合液を含む樹脂ワニスを基材に塗布し、次いで前記基材から溶剤を除去することによって得られる、プリプレグ。
[12] 上記[11]に記載のプリプレグを構成成分として作製された、プリント配線板。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、PPEが本来有する低い誘電率及び誘電正接を有する硬化物を与え、優れた耐熱性及び接着性(例えば、多層板における層間の剥離強度、又は硬化性樹脂組成物の硬化物と銅箔等の金属箔との剥離強度)を有する硬化物を与え、常温塗工可能であり、PPEやPPEを含む硬化性樹脂組成物の分散安定性に優れ、プリプレグ製造時に均一なPPEやPPEを含む硬化性樹脂組成物の層を形成できる混合液を得ることができる。更に、本発明の特定の態様によれば、硬化性樹脂組成物と基材とを含むプリント配線板用プリプレグ、及び該硬化性樹脂組成物の硬化物と基材とを含むプリント配線板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施態様を詳細に説明するが、本発明がこれらの態様に限定されることは意図されない。
【0021】
<混合液>
本発明の一態様は、PPEと溶剤とを含む混合液である。典型的には、該混合液は、PPE、架橋型硬化性樹脂、及び溶剤を含む。典型的には、PPEの少なくとも一部は、粒子の形態で混合液中に分散している。
【0022】
本態様の混合液が含むPPEは、好ましくは、下記一般式(1):
【化1】
{式中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアミノ基、ニトロ基又はカルボキシル基を表す。}で表される繰返し構造単位を含む。
【0023】
PPEの具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等、更に、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノール、2−メチル−6−ブチルフェノール等)との共重合体、及び、2,6−ジメチルフェノールとビフェノール類又はビスフェノール類とをカップリングさせて得られるポリフェニレンエーテル共重合体、等が挙げられる。誘電率及び誘電正接の観点から好ましい例は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である。
【0024】
尚、本開示において、ポリフェニレンエーテル、すなわちPPEとは、置換又は非置換のフェニレンエーテル単位構造から構成されるポリマーを意味するが、本発明の作用効果を損なわない範囲で他の共重合成分を含んでもよい。
【0025】
混合液に含まれるPPEの数平均分子量は、5,000以上40,000以下である。PPEの数平均分子量の好ましい範囲は、8,500以上30,000以下であり、更に好ましい範囲は9,000以上25,000以下である。
【0026】
PPEの数平均分子量が5,000以上であれば、プリント配線板等において所望される、硬化物の耐吸水性、はんだ耐熱性、及び接着性(例えば、多層板における層間の剥離強度、又は硬化性樹脂組成物の硬化物と銅箔等との剥離強度)が良好である。また、PPEの数平均分子量が40,000以下であれば、成形時の硬化性樹脂組成物の溶融粘度が小さく、良好な成形性が得られる。
【0027】
ここで、PPEの数平均分子量は、以下の測定によって求めた値とする。PPEと溶剤とを含む混合液から、該溶剤の沸点(この場合の沸点とは、含まれる化合物の中で最も高い沸点を有する化合物の沸点を指す)以下の温度にて溶剤を乾燥除去して、溶剤含有量が1質量%以下の生成物を得る。次いで、この生成物1.5gに、23℃±3℃の、質量比95:5のトルエンとメタノールとの混合溶剤を20g加える。23℃±2℃の恒温室で、5分毎に激しく振とうしながら、1時間経過させる。次いで、同恒温室内で24時間静置させる。次いで、上澄み液を取り除き、質量比95:5のトルエンとメタノールとの混合溶剤を5g加え、激しく振とうした後、同恒温室内で24時間静置させる。次いで上澄み液を取り除き、質量比95:5のトルエンとメタノールとの混合溶剤を5g加える。次いで、溶剤の実質的に全てを乾燥除去した後に、乾燥物をクロロホルム中に展開し、不溶分をろ別して除去し、抽出物を得る(以下、この抽出物を「抽出物(A)」という。)。
【0028】
該抽出物(A)を測定試料とし、カラムにShodex LF−804×2(昭和電工株式会社製)、溶離液に50℃のクロロホルム、検出器にRI(屈折率計)を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定を行い、同条件で測定した標準ポリスチレン試料の分子量と溶出時間との関係式から、標準ポリスチレン換算で測定される値をPPEの数平均分子量とする。
【0029】
また、使用するPPEの分子量の分布により、PPEの少なくとも一部が溶剤に溶解している場合、溶解しているPPEの数平均分子量は、以下の測定によって求めた値とする。上述の手順に従って、抽出物(A)を得る過程で得られた上澄み液を全て回収する。この上澄み液から、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで可溶成分を分離し、PPEの分離液を得る。次いで、PPE分離液に含まれるPPEの分子量を、上記抽出物(A)に関するPPEの数平均分子量の測定と同じ方法によるGPC測定及び標準ポリスチレン換算にて求める。得られた値を溶剤に溶解しているPPEの数平均分子量とする。
【0030】
後述する複合体における基材と硬化性樹脂組成物の硬化物との接着性に関し、プリプレグから硬化物複合体を作製する際に、プリプレグの通常の加熱加圧成型条件において、通常PPEは、PPE以外の熱硬化性樹脂成分よりも溶融速度が遅い。よって、PPEを存在させることにより、PPE以外の熱硬化性樹脂成分がまず溶融して基材の表面を覆い、これに、PPEが遅れて溶融し、PPE及びPPE以外の熱硬化性樹脂成分が互いに相溶した状態で硬化することとなるため、良好な接着性が実現されると考えられる。
【0031】
本態様におけるPPEは、後述する溶剤中に、溶解又は、溶剤を吸収して膨潤した状態で存在している。本態様の混合液に用いる溶剤は、後述するPPEの溶剤保持量の特性を有する化合物から選択される1種以上である化合物(A)と、後述するPPEの溶剤保持量の特性を有しかつ分子内に環構造を有する化合物から選択される1種以上である化合物(B)との混合物である。
【0032】
化合物(A)に対するPPEの溶剤保持量は1500質量%以上である。また、化合物(B)に対するPPEの溶剤保持量は300質量%以上1500質量%未満である。
【0033】
本開示で、PPEの各化合物に対する溶剤保持量とは、以下の方法で求められる値である。本発明において所望に応じて選択されたPPE、W0(g)(但し5±0.1gとする)に23℃±2℃の測定対象溶剤である化合物を約80g加え、23℃±2℃の恒温室内で、マグネチックスターラーで2時間以上撹拌し、混合液を得る。得られた混合液を、100cm3の沈降管に移し、混合液を軽く均一に撹拌した後、23℃±2℃の恒温室に24時間静置する。混合液は上下2層に相分離する。上澄み液を取り除き、下層(これにはPPEとPPEが保持する溶剤とが含まれる)の質量Wを測定する。
【0034】
上記のPPEの質量W0と、PPEとPPEが保持する溶剤との合計である質量Wとから、下式:
溶剤保持量(%)=100×(W−W0)/W0
により溶剤保持量を求める。
【0035】
また、上記24時間静置の後に、上下2層に分かれず、均一な溶液又は混合液であった場合は、溶剤保持量1600質量%以上とする。
【0036】
PPEの溶剤保持量が1500質量%以上の化合物(A)と、PPEの溶剤保持量が300質量%以上1500質量%未満かつ分子内に環構造を有する化合物(B)との混合質量比(A):(B)は、分散安定性、塗工性、保存安定性の観点から、好ましくは90:10から10:90の範囲内、より好ましくは30:70から70:30の範囲内、さらに好ましくは40:60から60:40の範囲内である。
【0037】
溶剤中に化合物(A)が存在する(好ましくは上記所定割合以上で)ことにより、PPEが溶剤を粒子内に取り込み膨潤するため、粘度が増加し、分散安定性が増加し、基材への塗工量(樹脂含量)も増える。また、溶剤に溶けているPPEと、膨潤したPPEとは親和性が良いため、PPEの基材への浸漬性が安定して、均一な塗工ができる。PPEの膨潤性が足りないと、ワニス含浸工程でPPEが基材/ガラスクロス/織物構造に濾されて、含浸ロールに堆積してしまうという問題もある。溶剤中の化合物(A)が上記所定割合以下で存在するとき、PPEの膨潤によるゲル化・固化を抑制し、塗工が可能となり、経時的な膨潤・ゲル化も抑制でき、保存安定性が良好である。
【0038】
また、PPEの溶剤保持量が300質量%以上1500質量%未満の分子内に環構造を有する化合物(B)が存在する(好ましくは上記所定割合以上で)ことにより、プリプレグの製造時に、その乾燥工程で、樹脂膜中に溶剤が残留するのを抑制できるため、塗工膜厚を厚くした場合にも、樹脂膜がひび割れしにくくなり、塗工性の観点から好ましい。また、PPEが溶解若しくは、膨潤しているPPEの粒子表面の分子鎖がほぐれているためと推測されるが、PPEの粒子の接着性が向上するため、本態様の混合液を用いて作製したプリプレグ、及び該プリプレグを加熱加圧成型して作製した硬化物の、基材と樹脂成分との接着性が良好となる。また、溶剤中の化合物(B)が上記所定割合以下で存在するとき、上記化合物(A)が上記所定割合以上で存在する場合の利点が得られる。化合物(B)は、これは後述する理由により、PPEを溶解若しくは、膨潤させる観点から、分子内に環構造を有する。環構造は例えば芳香環及び脂環式環であることができる。化合物(B)に対するPPEの溶剤保持量は、300質量%〜1500質量%未満、好ましくは300質量%〜1000質量%である。
【0039】
化合物(A)を上記所定割合を超えて多量に使用する場合、混合液中のPPEの溶剤保持量が高くなり、プリプレグの製造時の乾燥工程において樹脂膜中で溶剤を保持する特性が強くなる。これにより、樹脂膜内部の乾燥が進みにくく、その結果、ひび割れを起こす可能性が高くなる傾向がある。また、樹脂膜厚を厚くする場合には、ひび割れはさらに顕著になりやすいため、樹脂膜の厚みも制限される傾向がある。また、化合物(B)を上記所定割合を超えて多量に使用する場合、混合液中のPPEの溶剤保持量が低下し、塗工中にPPEが沈殿する等、分散安定性が低下する傾向がある。
【0040】
ここで、PPEの溶剤保持量が1500質量%以上となる化合物(A)は、特に限定はないが、環構造として芳香環を有する有機溶剤等は、PPEの種類や分子量によらず溶剤保持量1500質量%以上となりやすいため、好ましく用いられる。好ましい例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等を単独で用いることもでき、2種類以上を混合して用いることもできる。また、その他の一例としてはクロロホルム等を用いることができる。
【0041】
また、PPEの溶剤保持量が300質量%以上1500質量%未満となる分子内に環構造を有する化合物(B)は、特に限定はしないが、化合物(A)よりも沸点が高いことが好ましく、更には、化合物(A)よりも沸点が18℃以上高いことがより好ましく、化合物(A)よりも沸点が25℃以上高いことがより好ましい。このような沸点の差を設けることで、プリプレグの製造時に、その乾燥工程で、PPEの溶剤保持量の高い化合物(A)が、化合物(B)よりも早く揮発しやすくなる。従って、プリプレグの製造時、乾燥工程で樹脂膜中にPPEに保持されやすい化合物(A)の残存量を低減できるため、より塗工性に優れた混合液を得ることができる。また、化合物(A)と化合物(B)との沸点の差が18℃以上あれば、より成膜性を向上できる。一方、化合物(A)と化合物(B)の沸点の差が大きすぎる場合、化合物(B)のプリプレグ中への残留を抑制しつつ、化合物(A)が急激の揮発による成膜品質(樹脂膜表面への凹凸の発生)の低下を抑制するというバランスがとりにくくなるため、化合物(B)は、化合物(A)よりも沸点が好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下で高い。なお、化合物(A)が2種以上の化合物を含む場合には、化合物(A)中の各化合物の含有比率にそれぞれの沸点を乗じた値に基づいて算出される数平均値を化合物(A)の沸点とする。化合物(B)に関しても同様である。
【0042】
化合物(B)が有する環構造は、4員環から8員環までであることが好ましく、この中でも特に好ましくはケトン類、アルケン類等である。これらは、分子内に環構造及び二重結合を有するため、分子構造がPPEの分子構造と近い。よってこれらの化合物によるPPEの膨潤性若しくは溶解性は比較的高く、これらの化合物に対するPPEの溶剤保持量が大きくなると推測される。好ましい例としては、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘキセン等を単独で用いることもでき、2種類以上を混合して用いることもできる。
【0043】
本態様の混合液は、例えば、架橋型硬化性樹脂、追加の樹脂、各種添加剤等を含むことができる。
【0044】
本態様の混合液は、好ましくは架橋型硬化性樹脂を更に含み、より好ましくは架橋型硬化性樹脂及び開始剤を更に含む。架橋型硬化性樹脂の含有量は、PPEと該架橋型硬化性樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは5〜95質量部、より好ましくは10〜80質量部、更に好ましくは10〜70質量部、更に好ましくは20〜70質量部である。上記含有量が5質量部以上である場合、成形性が良好である点で好ましく、95質量部以下である場合、誘電率及び誘電正接が低い硬化物を形成できる点で好ましい。
【0045】
架橋型硬化性樹脂としては、分子内に2個以上のビニル基を持つモノマーが好適であり、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート、トリアリルアミン、トリアリルメセート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニル等が挙げられるが、その中でもポリフェニレンエーテルとの相溶性が良好なTAICが好ましい。
【0046】
開始剤としては、ビニルモノマーの重合反応を促進する能力を有する任意の開始剤を使用でき、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物が挙げられる。また、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等のラジカル発生剤も反応開始剤として使用できる。中でも、得られる耐熱性及び機械特性に優れ、更に低い誘電率及び誘電正接を有する硬化物を与えることができる観点から、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
【0047】
PPEと架橋型硬化性樹脂との合計100質量部に対して、開始剤の含有量は、反応率を高くできる観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、得られる硬化物の誘電率及び誘電正接を低く抑えることができる観点から、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。
【0048】
好ましい態様においては、PPEと架橋型硬化性樹脂との合計100質量部に対して、架橋型硬化性樹脂の含有量が10質量部以上70質量部以下、及び開始剤の含有量が1質量部以上10質量部以下である。
【0049】
本態様の混合液には、追加の樹脂(例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等)を更に含有させることもできる。熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ジビニルベンゼン、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、塩化ビニル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、四フッ化エチレン等のビニル化合物の単独重合体及び2種以上のビニル化合物の共重合体、並びに、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレングリコール等を例として挙げることができる。これらの中でもスチレンの単独重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、及びスチレン−エチレン−ブタジエン共重合体が、溶剤への溶解性及び成形性の観点から好ましく用いることができる。硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、及びシアネートエステル類を例として挙げることができる。上記熱可塑性樹脂及び硬化性樹脂は、酸無水物、エポキシ化合物、アミン等の官能化化合物で変成されたものでもよい。このような追加の樹脂の使用量は、PPEと架橋型硬化性樹脂との合計100質量部に対して、好ましくは10〜90質量部、より好ましくは20〜70質量部である。
【0050】
混合液は目的に応じ適当な添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、界面活性剤、滑剤、充填剤、ポリマー添加剤等が挙げられる。
【0051】
特に、混合液が更に難燃剤を含む場合、成形性、耐吸水性、はんだ耐熱性、及び接着性(例えば、多層板における層間の剥離強度、又は硬化物と銅箔等との剥離強度)に優れるプリント配線板等が得られる利点に加え、難燃性を付与できる点で好適である。
【0052】
難燃剤としては、燃焼のメカニズムを阻害する機能を有するものであれば特に制限されず、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ほう酸亜鉛等の無機難燃剤、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジェフェニルエタン、4,4−ジフブロモフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等の芳香族臭素化合物、等が挙げられる。中でも、得られる硬化物の誘電率及び誘電正接を低く抑えられる観点からデカブロモジェフェニルエタン等が好ましい。
【0053】
難燃剤の使用量は、使用する難燃剤によって異なり、特に限定するものでないが、UL規格94V−0レベルの難燃性を維持する観点から、PPEと架橋型硬化性樹脂との合計100質量部に対して好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。また、得られる硬化物の誘電率及び誘電正接を小さく維持できる観点から、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
【0054】
[PPEと溶剤とを含む混合液の製造]
混合液の製造方法は、混合液中に含まれるPPEが本発明の要件を満たせば特に限定されるものではないが、例えば、PPEを溶剤中に分散し、又は、PPEを溶剤中で粉砕し、所定の粒度のPPEが分散した状態とする方法(以下、「破砕分散法」ともいう。)を挙げることができる。
【0055】
混合液中に存在するPPEの粒径、混合液中のPPE含有割合、PPE分子量、は、例えば、後述の「破砕分散法」において、溶剤に加えるPPEを予め調整しておくことで調整可能であるし、溶剤中での破砕強度や用いる溶剤を変えることによって調整することもできる。
【0056】
[破砕分散法]
PPEを溶剤中に分散し、又は、PPEを溶剤中で粉砕し、所定の粒度のPPEが分散した状態を形成する方法としては、以下の2つを挙げることができる。
(1)粒度を調整したPPEを溶剤中に分散させる方法
粒度の調整方法としては湿式又は乾式での粉砕や篩い分けが挙げられる。これらの方法を組み合わせてもよい。
□使用する溶剤としては特に限定はないが、前述の化合物(A)と化合物(B)とを、その質量比(A):(B)が90:10〜10:90となる混合比で用いることが好ましい。この場合、PPEの流動性と分散安定性を確保しながら、且つ、基材への塗工性に優れ、基材と、PPE粒子を含む硬化性樹脂組成物との接着性に優れるプリプレグが得られるため好ましい。化合物(A)の中でも、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族有機溶剤が好ましく、これらを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、化合物(B)の中でも、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類、シクロヘキセン等のアルケン類が好ましく、これらを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これら溶剤を、使用するPPEに応じて適時選択して用いることができる。
【0057】
(2)PPEを溶剤中で破砕し、PPEが溶剤に分散した状態の混合液を作製する方法
□使用する溶剤としては特に限定はないが、上記化合物(A)と化合物(B)とを、その質量比(A):(B)が90:10〜10:90となる混合比で用いることが好ましい。この場合、PPEの流動性と分散安定性を確保しながら、且つ、基材への塗工性に優れ、基材と、PPEを含む硬化性樹脂組成物の接着性に優れるプリプレグが得られるため好ましい。化合物(A)の中でも、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族有機溶剤が好ましく、これらを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、化合物(B)の中でも、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン類、シクロヘキセン等のアルケン類が好ましく、これらを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これら溶剤を、使用するPPEに応じて適時選択して用いることができる。
【0058】
PPEが分散した状態の混合液を得る方法は、得られる混合液中に含まれるPPEが本発明の要件を満たせば特に限定されるものではないが、PPEと溶剤とを混合した後、他の成分を添加して混合液を得る方法や、他の成分を溶剤中で先に混合した後に、PPEを添加して混合液を得る方法が挙げられる。
【0059】
<樹脂ワニス>
本発明の別の態様は、上述した本発明の一態様に係る混合液を含む、樹脂ワニスを提供する。樹脂ワニスは、典型的には上記混合液であってよく、又は、混合液に他の成分を更に添加したものであってもよい。例えば、PPE及び溶剤のみを含む混合液を調製した後、他の成分を添加して樹脂ワニスを調製してもよい。この場合の他の成分として、混合液の成分として前述した架橋型硬化性樹脂、追加の樹脂、各種添加剤等の少なくとも1つが含まれてもよい。
【0060】
<プリプレグ>
本発明の別の態様は、上述した本発明の一態様に係る混合液を含む樹脂ワニスを基材に塗布し、次いで、例えば熱布乾燥機等によって該基材から溶剤を除去することによって得られるプリプレグを提供する。
【0061】
基材としては、ロービングクロス、クロス、チョップドマット、サーフェシングマット等の各種ガラス布;アスベスト布、金属繊維布、及びその他合成若しくは天然の無機繊維布;全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリベンゾオキサゾール繊維等の液晶繊維から得られる織布又は不織布;綿布、麻布、フェルト等の天然繊維布;カーボン繊維布、クラフト紙、コットン紙、紙−ガラス混繊糸から得られる布等の天然セルロース系基材;ポリテトラフルオロエチレン多孔質フィルム;等を単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0062】
樹脂ワニス中の固形分がプリプレグ中に占める割合(以下、樹脂含有量ともいう。)は、プリプレグ全量100質量%に対して、30〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜70質量%である。上記樹脂含有量が30質量%以上である場合、プリプレグを、例えば、電子基板形成用として使用した際に優れた絶縁信頼性が得られ、80質量%以下である場合、例えば、得られる電子基板が曲げ弾性率等の機械特性に優れる。
【0063】
<積層板>
本発明の一態様に係る混合液を用い、硬化物複合体と金属箔とが積層されている積層板を形成できる。硬化物積層体は、該樹脂ワニスから溶剤を除去して得られる硬化性樹脂組成物の硬化物と基材とを含む。積層板は、好ましくは、上記硬化物複合体と金属箔とが重なって密着しているもので、電子基板の材料として好適に用いられる。金属箔としては、例えば、アルミ箔及び銅箔を用いることができ、中でも銅箔は電気抵抗が低いため好ましい。金属箔と組合せる硬化物複合体は1枚でも複数枚でもよく、用途に応じて硬化物複合体の片面又は両面に金属箔を重ねて積層板に加工する。積層板の製造方法としては、例えば、硬化性樹脂組成物と基材とから構成される複合体(例えば、前述のプリプレグ)を形成し、これを金属箔と重ねた後、硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、硬化物積層体と金属箔とが積層されている積層板を得る方法が挙げられる。積層板の特に好ましい用途の1つはプリント配線板である。
【0064】
<プリント配線板>
本発明の別の態様は、上述した本発明の一態様に係るプリプレグを構成成分として作製された、プリント配線板を提供する。本態様のプリント配線板は、典型的には、上述した本発明の一態様に係るプリプレグを用いて、加圧加熱成型によって形成できる。基材としてはプリプレグに関して前述したのと同様のものが挙げられる。本態様のプリント配線板は、上述したようなプリプレグを用いて形成されていることにより、優れた絶縁信頼性及び機械特性を有することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により、本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0066】
以下の実施例、比較例及び試験例中の各物性は、以下の方法によって測定した。
(1)PPEの数平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析(GPC)を用い、分子量既知の標準ポリスチレンの溶出時間との比較で数平均分子量を求めた。
測定装置にはHLC−8220GPC(東ソー株式会社製)を用い、カラム:Shodex LF−804×2(昭和電工株式会社製)、溶離液:50℃のクロロホルム、検出器:RI、の条件で測定を行った。
【0067】
(2)PPEの溶剤保持量
PPE(S203A、旭化成ケミカルズ製、数平均分子量10,000)及び(S202A、旭化成ケミカルズ製、数平均分子量18,000)、(S203A、旭化成ケミカルズ製、数平均分子量10,000:粒径250μm以下に粉砕)各5gを下記の各化合物80gに添加し、スターラーにて2時間撹拌後、23℃にて1日静置した。混合液が上澄み液と沈降物に分離したものは、上澄み液を除去し、沈降物の質量を測定し、各溶剤に対するPPEの溶剤保持量を測定した。溶剤として用いた化合物は、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘキセン、メチルエチルケトン、メタノールであった。
【0068】
(3)混合液の粘度
B型粘度計、ローターNo.3を用い、23℃、30rpm、30秒の条件で粘度を測定した。
(4)混合液の分散安定性
ガラス製の50mlサンプル管に混合液35gを入れ、23℃の恒温室に3日間静置した。PPEの沈降等による分離がなく、また、流動性を保持したものを「〇」とした。また、PPEの沈降等による分離が生じたものを「×」、流動性がないものを「ゲル化」と評した。
【0069】
(5)プリプレグの成膜性(ひび割れ)
プリプレグの外観を目視で確認し、樹脂組成物の層にひび割れ等が無いものを「〇」、ひび割れがあるものを「×」と評した。
(6)プリプレグの成膜性(粉落ち)
プリプレグを180°に折り曲げた際に、樹脂粉落ち、あるいは樹脂剥離が生じるかを調べ、評価した。まず、プリプレグを200mm×300mmの大きさにカッター刃を用いて切り出した。次いで、長方形の長辺側2辺が重なるようにプリプレグを180°に折り曲げた後、元に戻した。次いで、長方形の短辺側2辺が重なるようにプリプレグを180°に折り曲げた後、元に戻した。上述の一連のプリプレグの取り扱いにおいて、樹脂粉落ちに問題がなかったものは「〇」、取扱いに大きな問題ではないものの、樹脂粉落ちが若干確認されたものは「△」と評した。一方、粉落ちが激しかったものは「×」と評した。
【0070】
(7)積層板の誘電率、誘電正接
積層板の1GHzにおける誘電率及び誘電正接を、インピーダンスアナライザーを用いて測定した。
測定装置としてインピーダンスアナライザー(4291B op.002 with 16453A,16454A、AgilentTechnologies社製)を用い、試験片厚さ:約2mm、電圧:100mV、周波数:1mmHz〜1.8GHzの条件で測定し、掃引回数100回の平均値として求めた。
(8)積層板の吸水率
積層板を吸水加速試験に供し、増加した質量から吸水率を求めた。
積層板を50mm角に切り出し試験片を作製した。該試験片を130℃で30分乾燥した後、質量を測定し、加速試験前の質量(g)とした。次いで、温度:121℃、圧力:2atm、時間:4時間、の条件で加速試験を行った後の質量を測定し、加速試験後の質量(g)とした。
加速試験前の質量(g)と加速試験後の質量(g)とを用い、下記式:
吸水率(質量%)=(加速試験前の質量―加速試験後質量)/加速試験前の質量×100
により吸水率を算出し、試験片4枚の測定値の平均値を求めた。
【0071】
(9)積層板の吸水試験後のはんだ耐熱性
上記(8)に記載の吸水率の測定後の積層板を用い、288℃でのはんだ耐熱試験を行った。吸水加速試験後の積層板を、288℃のはんだ浴に20秒間浸漬し、目視による観察を行った。はんだ浴へ浸漬しても、膨れ、剥離及び白化の何れも確認されなかった積層板については「〇」と評価した。また、はんだ浴への浸漬により、膨れ、剥離及び白化の何れか1つ以上が発生した積層板は「×」と評価した。
(10)積層板の銅箔剥離強度(剥離強度N/mm)
銅張積層板の銅箔を一定速度で引き剥がす際の応力を測定した。後述の方法で作製した、35μm銅箔(GTS−MP箔、古川電気工業株式会社製)を用いた銅張積層板を、幅15mm×長さ150mmのサイズに切り出し、オートグラフ(AG−5000D、株式会社島津製作所製)を用い、銅箔を除去面に対し90℃の角度で50mm/分の速度で引き剥がした際の荷重の平均値を測定し、5回の測定の平均値を求めた。
【0072】
(11)プリプレグの残留溶剤
プリプレグ中に残留する溶剤量をガスクロマトグラフィーにより測定した。分取したプリプレグ6gをクロロホルム50mlに加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌した。その後、1日静置し、クロロホルムで洗浄しながら、桐山漏斗にて不溶分をろ過し、200mlのサンプル抽出液を得た。該サンプル抽出液を、ガスクロマトグラフ(GC−1700、株式会社島津製作所製)を用いて、内部標準試料にヘキサデカンを、検出器に水素炎イオン化型検出器を、固定相にポリジメチルシロキサンを、キャリアガスにヘリウムを使用し、残留溶剤量を測定した。
【0073】
<製造例1>
90℃に加温されたオイルバスに10Lのフラスコを設置し、フラスコ内部に毎分30mlで窒素ガスを導入した。以降、操作は常に窒素ガス気流下で行った。ここに、PPE(S202A、旭化成ケミカルズ製、数平均分子量18,000)1000g、及びトルエン3000gを入れ、攪拌溶解させた。更に80gのビスフェノールAをメタノール350gに溶かした溶液を上記フラスコに攪拌しながら加えた。5分間攪拌を続けた後、6質量%ナフテン酸コバルトミネラルスピリット溶液3mlを注射器で加え、5分間攪拌を続けた。次いで、ベンゾイルパーオキサイド溶液375gにトルエン1125gを加えて、ベンゾイルパーオキサイド濃度が10質量%になるように希釈した溶液を滴下ロートに入れ、上記フラスコに2時間かけて滴下していった。滴下終了後、更に2時間加熱及び攪拌を続け、低分子量化PPEを含む反応液を得た。
【0074】
次に、水3000gを加えて、5分間撹拌した後、該反応液を静置し、2層分離させた後、下槽を除去した。更に水1000gを加え、撹拌した後静置し、再び2槽に分離させた後、下槽を除去した。次いで、メタノール200gを加え、同様に撹拌、静置し、2層に分離させた後、上層を除去した。更にメタノール100gを加え、同様に撹拌、静置し、2層に分離させた後、下層を回収し、これに多量のメタノールを加え、低分子量PPEを沈殿させ、ろ別後、乾燥させて低分子量PPEを得た。得られた低分子量PPEの数平均分子量は2800であった。
【0075】
<試験例1>
以下の実施例及び、比較例で溶剤を構成する各化合物について、各PPEの溶剤保持量を測定し、結果を表1に記載した。
【0076】
<実施例1>
トルエン50質量部をSUS製容器に入れ、スチレン系エラストマー(SEBS、旭化成ケミカルズ製、H1041グレード)4.5質量部を加え、溶解させた。この溶液に対して、シクロヘキサノンを50質量部、トリアリルイソシアヌレート(日本化成製)17.2質量部、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(パーブチルP、日油製)1.0質量部を加え、均一に撹拌した後、デカブロモジフェニルエタン(SAYTEX8010、アルベマールジャパン製)12.2質量部、シリカフィラー(球状シリカ、龍森製)33質量部を加え、均一に撹拌した後、75mm径十字パドル翼で1.0m/minの先端速度で撹拌を行いながら、予め粉砕することで粒度を、その粒径が250μm以下になるよう調整しておいたPPE(S203A、旭化成ケミカルズ製、数平均分子量10,000)32質量部を加え、全体が均一になるように3時間撹拌を行い、粘度が1232mPa・sであり、上述の方法にて確認した分散安定性が「〇」の混合液を得た。この混合液を塗工用ワニスとして用いた。
【0077】
ついで塗工用ワニスを、厚さ0.1mmのEガラス製ガラスクロス(2116スタイル、旭シェエーベル製)に含浸させ、スリットで余分なワニスを掻き落とした後、150℃で2分間乾燥して、樹脂含有量55質量%のプリプレグを得た。
【0078】
<実施例2>
シクロヘキサノンをシクロペンタノンに変更する以外、実施例1と同じ方法にて、粘度が1255mPa・sであり、分散安定性が「〇」の塗工用ワニスを得た。
ついで、乾燥温度130℃に変更する以外、実施例1と同じ方法にて、樹脂含有量54質量%のプリプレグを得た。
【0079】
<実施例3>
シクロヘキサノンをシクロヘキセンに変更する以外、実施例1と同じ方法にて、粘度が1260mPa・sであり、分散安定性が「〇」の塗工用ワニスを得た。
ついで、乾燥温度105℃に変更する以外、実施例1と同じ方法にて、樹脂含有量52質量%のプリプレグを得た。
【0080】
<実施例4>
トルエンをキシレンに変更する以外、実施例1と同じ方法にて、粘度が1210mPa・sであり、分散安定性が「〇」の塗工用ワニスを得た。
また、実施例1と同じ方法にて、樹脂含有量55質量%のプリプレグを得た。
【0081】
<実施例5>
PPEを(S202A、旭化成ケミカルズ製、数平均分子量18,000)に変更する以外、実施例1と同じ方法にて、粘度が1356mPa・sであり、分散安定性が「〇」の塗工用ワニスを得た。
また、実施例1と同じ方法にて、樹脂含有量56質量%のプリプレグを得た。
【0082】
<実施例6>
シクロヘキサノンをシクロペンタノンに変更し、トルエンの使用量を10質量部、シクロペンタノンの使用量を90質量部に変更する以外、実施例1と同じ方法にて、粘度が870mPa・sであり、分散安定性が「〇」の塗工用ワニスを得た。
ついで、乾燥温度130℃に変更する以外、実施例1と同じ方法にて、樹脂含有量52質量%のプリプレグを得た。
【0083】
<実施例7>
トルエンの使用量を30質量部、シクロペンタノンの使用量を70質量部に変更する以外、実施例6と同じ方法にて、粘度が978mPa・sであり、分散安定性が「〇」の塗工用ワニスを得た。
また、実施例6と同じ方法で、樹脂含有量53質量%のプリプレグを得た。
【0084】
<実施例8>
トルエンの使用量を70質量部、シクロペンタノンの使用量を30質量部に変更する以外、実施例6と同じ方法にて、粘度が1415mPa・sであり、分散安定性が「〇」の塗工用ワニスを得た。
また、実施例6と同じ方法で、樹脂含有量54質量%のプリプレグを得た。
【0085】
<実施例9>
トルエンの使用量を90質量部、シクロペンタノンの使用量を10質量部に変更する以外、実施例6と同じ方法にて、粘度が1921mPa・sであり、分散安定性が「〇」の塗工用ワニスを得た。
また、実施例6と同じ方法で、樹脂含有量55質量%のプリプレグを得た。
【0086】
<実施例10>
トルエンの使用量を95質量部、シクロペンタノンの使用量を5質量部に変更する以外、実施例6と同じ方法にて、粘度が2313mPa・sであり、分散安定性が「〇」の塗工用ワニスを得た。
また、実施例6と同じ方法で、樹脂含有量55質量%のプリプレグを得た。
【0087】
<実施例11>
トルエンの使用量を5質量部、シクロペンタノンの使用量を95質量部に変更する以外、実施例6と同じ方法にて、粘度が578mPa・sであり、分散安定性が「〇」の塗工用ワニスを得た。
また、実施例6と同じ方法で、樹脂含有量51質量%のプリプレグを得た。
【0088】
<比較例1>
シクロヘキサノンを使用せず、トルエンの使用量を100質量部使用することに変更する以外、実施例1と同じ方法にて、ワニスを調合したが、PPE添加後、撹拌中、経時で大きく増粘し、流動性を失い、「ゲル化」してしまったため、塗工に使用することのできるワニスを得られなかった。
【0089】
<比較例2>
トルエンを使用せず、シクロヘキサノンをシクロペンタノンに変更し、その使用量を100質量部使用することに変更する以外、実施例1と同じ方法にて、粘度が340mPa・sであり、分散安定性が「×」のワニスを調合した。分散安定性が悪かったためと推測されるが、プリプレグ作製中、ワニスバス内で固形分の沈殿や含浸ロールへの固形分の堆積が発生し、後の評価に使用できる品質のプリプレグを得ることができなかった。
【0090】
<比較例3>
シクロヘキサノンをメチルエチルケトンに変更する以外、実施例1と同じ方法にて、粘度が450mPa・sであり、分散安定性が「×」のワニスを調合した。分散安定性が悪かったためと推測されるが、プリプレグ作製中、ワニスバス内で固形分の沈殿や含浸ロールへの固形分の堆積が発生し、後の評価に使用できる品質のプリプレグを得ることができなかった。
【0091】
<比較例4>
トルエンの使用量を95質量部に変更し、シクロヘキサノンをメタノールに変更し、その使用量を5質量部に変更する以外、実施例1と同じ方法にて、粘度が1818mPa・sであり、分散安定性が「〇」の塗工用ワニスを得た。乾燥温度を105℃に変更する以外、実施例1と同じ方法で樹脂含有量58質量%のプリプレグを得たが、得られたプリプレグを観察すると、樹脂層に多数のひび割れが確認された。
【0092】
<比較例5>
PPEを低分子量PPE(数平均分子量2800)に変更し、シクロヘキサノンをシクロペンタノンに変更する以外、実施例1と同じ方法にて、粘度が2215mPa・sであり、分散安定性が「〇」の塗工用ワニスを得た。乾燥温度を130℃に変更する以外、実施例1と同じ方法で樹脂含有量56質量%のプリプレグを得た。
【0093】
<試験例2>
実施例1から実施例11、比較例4、比較例5から得られたプリプレグを用いて、成膜性(ひび割れ、粉落ち)の評価を行った。実施例1から実施例10、比較例5は、全ての評価で「〇」であったが、実施例11では、ひび割れの評価で「〇」であるものの、粉落ちの評価が「△」であることが確認された。一方で比較例4は、ひび割れの評価が「×」、粉落ちの評価が「〇」であった。
ただし、比較例5では、後述する残留溶剤に起因すると考えられるタック性が発生しており、保管時の取扱い性が良好ではない状態であった。
【0094】
<試験例3>
実施例1から実施例11、比較例4、比較例5から得られたプリプレグを用いて、残留溶剤量を測定した(測定結果は表2に記載)。実施例1から実施例11までは、溶剤の残留量が低く抑えられている一方、比較例5は、大量の溶剤が残留していることが確認された。
【0095】
<試験例4>
実施例1〜11で得られたプリプレグを用いて基板試料を作製し、電気特性(誘電率、誘電正接)、吸水率、吸水試験後のはんだ耐熱、銅箔剥離強度を比較評価した。
【0096】
吸水率、及び吸水試験後のはんだ耐熱性を評価するための試料は次の方法で作製した。実施例又は比較例で得たプリプレグを2枚重ね、その上下に厚み12μmの銅箔(GTS−MP箔、古川電気工業株式会社製)を重ね合わせたものを、室温から昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力5kg/cm2の条件で真空プレスを行い、130℃まで達したら昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力30kg/cm2の条件で真空プレスを行い、200℃まで達したら温度を200℃に保ったまま圧力30kg/cm2、時間60分間の条件で真空プレスを行うことによって両面銅張積層板を得た。次いで、該銅張積層板を100mm角に切り出し、銅箔をエッチングにて除去し、吸水率、及び吸水試験後のはんだ耐熱性を評価するための試料を得た。
【0097】
また、銅箔剥離強度測定用の試料は次の方法で作製した。実施例又は比較例で得たプリプレグを2枚重ね、その上下に厚み35μmの銅箔(GTS−MP箔、古川電気工業株式会社製)を重ね合わせたものを、室温から昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力5kg/cm2の条件で真空プレスを行い、130℃まで達したら昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力30kg/cm2の条件で真空プレスを行い、200℃まで達したら温度を200℃に保ったまま圧力30kg/cm2、時間60分間の条件で真空プレスを行うことによって両面銅張積層板を作製した。この両面銅張積層板を銅箔剥離強度測定用の試料として用いた。
【0098】
また、誘電率及び誘電正接の測定用試料は次の方法で作製した。実施例又は比較例で得たプリプレグを16枚重ね、室温から昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力5kg/cm2の条件で真空プレスを行い、130℃まで達したら昇温速度3℃/分で加熱しながら圧力30kg/cm2の条件で真空プレスを行い、200℃まで達したら温度を200℃に保ったまま圧力30kg/cm2、時間60分間の条件で真空プレスを行うことによって積層板を作製した。該積層板を、100mm角に切り出し、誘電率及び誘電正接の測定用試料とした。
【0099】
上記のように、プリプレグ、両面銅張積層板(銅箔:12μm及び35μmの2種)、又は積層板を用い、銅箔剥離強度、誘電率、誘電正接、吸水率、及び吸水後のはんだ耐熱性を測定した。結果を以下の表2に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、高周波数帯を利用する電子機器のプリント配線板用の材料等として好適に適用できる。