【実施例】
【0031】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0032】
<実施例1>
先ず白色チタン粒子(TiO
2)をアンモニアガス(還元ガス)により還元して黒色チタン粒子を得た。この黒色チタン粒子は、化学式:TiN
XO
Y(但し、X=0.4,Y=0.8)で表される。この黒色チタン粒子0.1モルに対して水を15モル添加して、黒色チタン粒子を水に分散させ、ビーズミルにより湿式粉砕して、平均一次粒径62nmの黒色チタン粒子の分散液を得た。次いで上記黒色チタン粒子の分散液に、濃度調整のためのアルコールとしてエタノールを12.4モル添加した後、シリカ膜を形成するためのシリカ源としてオルトけい酸テトラエチル(TEOS)を2.0×10
-2モル添加した。次にオルトけい酸テトラエチル(TEOS)が添加された黒色チタン粒子の分散液にアルカリ源(反応開始剤)として水酸化ナトリウムを9.0×10
-3モル添加して分散液での反応を開始した。更にこの分散液を洗浄し乾燥した後に焼成することにより、黒色チタンコアシェル粒子を得た。但し、上記分散液の洗浄は、この分散液から不純物を除去するために、分散液を遠心分離器にかけた後に、分散液をイオン交換樹脂製のフィルタに通すことにより行った。また上記焼成は、窒素ガス雰囲気中で350℃に5時間保持する処理であった。この黒色チタンコアシェル粒子を実施例1とした。
【0033】
<実施例2>
オルトけい酸テトラエチル(TEOS)の添加量を3.0×10
-2モルとしたこと以外は、実施例1と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を実施例2とした。
【0034】
<比較例1>
オルトけい酸テトラエチル(TEOS)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を比較例1とした。
【0035】
<比較例2>
オルトけい酸テトラエチル(TEOS)の添加量を1.0×10
-2モルとしたこと以外は、実施例1と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を比較例2とした。
【0036】
<比較例3>
シリカのみからなる平均一次粒径20nmのシリカ粒子を比較例3とした。
【0037】
<比較試験1及び評価>
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の黒色チタンコアシェル粒子と、比較例3のシリカ粒子とを水に分散させて、この分散液のpHを変化させたときのゼータ電位の変化をそれぞれ測定した。その結果を
図3に示す。
【0038】
図3から明らかなように、比較例1及び2では、ゼータ電位がゼロになる等電点がそれぞれ4.4及び4.1と大きかったのに対し、実施例1及び2では、ゼータ電位がゼロになる等電点がそれぞれ3.2及び2.4と設定範囲内(2.0〜3.7)であった。このことから、シリカ源(オルトけい酸テトラエチル(TEOS))の添加量によって黒色チタンコアシェル粒子(黒色顔料)の等電点を適切な範囲内に変更できることが分かった。なお、比較例3のシリカ粒子では、ゼータ電位がゼロになる等電点が2.0と設定範囲内(2.0〜3.7)であったけれども、シリカ粒子は無色透明であるため、黒色顔料として使用することはできない。
【0039】
<実施例3>
先ず白色チタン粒子(TiO
2)をアンモニアガス(還元ガス)により還元して黒色チタン粒子を得た。この黒色チタン粒子は、化学式:TiN
XO
Y(但し、X=0.5,Y=0.7)で表される。この黒色チタン粒子0.1モルに対して水を15モル添加して、黒色チタン粒子を水に分散させ、ビーズミルにより湿式粉砕して、平均一次粒径70nmの黒色チタン粒子の分散液を得た。次いで上記黒色チタン粒子の分散液に、濃度調整のためのアルコールとしてエタノールを12.4モル添加した後、シリカ膜を形成するためのシリカ源としてオルトけい酸テトラエチル(TEOS)を2.0×10
-2モル添加した。次にオルトけい酸テトラエチル(TEOS)が添加された黒色チタン粒子の分散液にアルカリ源(反応開始剤)として水酸化ナトリウムを1.2×10
-3モル添加して分散液での反応を開始した。更にこの分散液を洗浄し乾燥した後に焼成することにより、黒色チタンコアシェル粒子を得た。なお、上記分散液の洗浄は、この分散液から不純物を除去するために、分散液を遠心分離器にかけた後に、分散液をイオン交換樹脂製のフィルタに通すことにより行った。また上記焼成は、窒素ガス雰囲気中で350℃に5時間保持する処理であった。この黒色チタンコアシェル粒子を実施例3とした。
【0040】
<実施例4>
オルトけい酸テトラエチル(TEOS)の添加量を3.0×10
-2モルとしたこと以外は、実施例3と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を実施例4とした。
【0041】
<実施例5>
オルトけい酸テトラエチル(TEOS)の添加量を4.0×10
-2モルとしたこと以外は、実施例3と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を実施例5とした。
【0042】
<実施例6>
オルトけい酸テトラエチル(TEOS)の添加量を6.0×10
-2モルとしたこと以外は、実施例3と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を実施例6とした。
【0043】
<実施例7>
オルトけい酸テトラエチル(TEOS)の添加量を9.0×10
-2モルとしたこと以外は、実施例3と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を実施例7とした。
【0044】
<実施例8>
黒色チタン粒子の平均一次粒径を15nmとし、オルトけい酸テトラエチル(TEOS)の添加量を6.0×10
-2モルとしたこと以外は、実施例3と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を実施例8とした。
【0045】
<実施例9>
オルトけい酸テトラエチル(TEOS)の添加量を3.0×10
-2モルとし、アルカリ源(反応開始剤)としての水酸化ナトリウムをアンモニア水に替えたこと以外は、実施例3と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を実施例9とした。
【0046】
<実施例10>
黒色チタン粒子の平均一次粒径を100nmとし、オルトけい酸テトラエチル(TEOS)の添加量を3.0×10
-2モルとし、アルカリ源(反応開始剤)としての水酸化ナトリウムをアンモニア水に替えたこと以外は、実施例3と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を実施例10とした。
【0047】
<実施例11>
オルトけい酸テトラエチル(TEOS)の添加量を3.0×10
-2モルとし、アルカリ源(反応開始剤)としての水酸化ナトリウムを水酸化カリウムに替えたこと以外は、実施例3と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を実施例11とした。
【0048】
<実施例12>
黒色チタン粒子の平均一次粒径を60nmとし、オルトけい酸テトラエチル(TEOS)の添加量を1.5×10
-2モルとしたこと以外は、実施例3と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を実施例12とした。
【0049】
<実施例13>
アルカリ源(反応開始剤)として水酸化ナトリム0.6×10
-3モルと濃度25%のアンモニア水1.0×10
-3モルとをそれぞれ添加したこと以外は、実施例2と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を実施例13とした。
【0050】
<実施例14>
シリカ源としてオルトけい酸テトラエチル(TEOS)の代わりにオルトけい酸テトラメチルを添加したこと以外は、実施例2と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を実施例14とした。
【0051】
<比較例4>
オルトけい酸テトラエチル(TEOS)を添加しなかったこと以外は、実施例3と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を比較例4とした。
【0052】
<比較例5>
オルトけい酸テトラエチル(TEOS)の添加量を1.0×10
-2モルとしたこと以外は、実施例3と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を比較例5とした。
【0053】
<比較例6>
オルトけい酸テトラエチル(TEOS)の添加量を1.0×10
-2モルとし、アルカリ源(反応開始剤)としての水酸化ナトリウムを添加しなかったこと以外は、実施例3と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を比較例6とした。
【0054】
<比較例7>
オルトけい酸テトラエチル(TEOS)の添加量を10×10
-2モルとしたこと以外は、実施例3と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を比較例7とした。
【0055】
<比較例8>
実施例3において白色チタン粒子(TiO
2)をアンモニアガスにより還元して黒色チタン粒子を作製するときの反応時間を実施例3の半分とすることにより、白色チタン粒子(TiO
2)の還元率の低い黒色チタン粒子を作製したこと以外は、実施例6と同様にして黒色チタンコアシェル粒子を得た。この黒色チタンコアシェル粒子を比較例8とした。ここで、実施例3の黒色チタンコアシェル粒子の還元率を100%としたとき、比較例8の黒色チタンコアシェル粒子の還元率は50%であった。
【0056】
<比較試験2及び評価>
実施例1〜14、比較例2及び比較例5〜7の黒色チタンコアシェル粒子と、比較例1及び4の黒色チタン粒子について、シリカ膜の厚さ、体積抵抗率、L
*値、比表面積及び等電点をそれぞれ測定するとともに、実施例1〜14、比較例2及び比較例5〜7の黒色チタンコアシェル粒子と、比較例1及び4の黒色チタン粒子とを黒色顔料として用いた電子ペーパーの電気泳動素子の応答特性をそれぞれ測定した。
【0057】
黒色チタンコアシェル粒子のシリカ膜の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)により撮影した画像から測定した。また体積抵抗率は、黒色チタンコアシェル粒子を5MPaの圧力で固めた圧粉体の状態で、三菱化学社製の低抵抗率計ロレスタ-GP(型式:UV3101PC)を用いて、四端子四探針法により測定した。また黒色チタンコアシェル粒子の明度指数L
*値は、日本電色工業社製の分光色差計(型式:SE2000)を用いて求めた。また比表面積(BET比表面積)は、柴田科学社製の比表面積測定装置(型式:SA1100)を用いて、黒色チタンコアシェル粒子の表面に、吸着占有面積の分かったガス分子(例えば、窒素ガス等)を吸着させ、その吸着量から求めた。更に黒色チタンコアシェル粒子の等電点は、黒色チタンコアシェル粒子を水に分散し、この分散液に1N(1モル/リットル)のHCl又はNaOHを添加して分散液のpHを変化させ、Malvern社製のゼータ電位計(型式:ゼータサイザーナノZS90)を用いてゼータ電位の変化を測定し、ゼータ電位がゼロになったときのpHとした。
【0058】
一方、電気泳動素子の応答特性は、上記黒色チタンコアシェル粒子を黒色顔料として用いて電子ペーパーの電気泳動素子を作製し、この電気泳動素子の一対の電極に100ミリ秒毎に極性を反転させる電圧を10回印加したときの、黒色チタンコアシェル粒子(黒色顔料)及び白色チタン粒子(白色顔料)の電極への移動速度の度合いから求めた。この移動速度が10回とも安定して100ミリ秒以下であったときを応答特性が良好であるとし、移動速度が100ミリ秒を超えかつ200ミリ秒未満の間で変化したときを応答特性がやや不安定であるとし、移動速度が200ミリ秒以上の間で変化したときを応答特性が不安定であるとした。その結果を、黒色チタン粒子の平均一次粒径、シリカ源の種類、シリカ源の濃度、及びアルカリ源(反応開始剤)の種類とともに、表1に示す。なお、表1において、比較例5のシリカ膜の厚さが不明であるとは、電子顕微鏡写真での計測が不可能であることを示す。また、表1において、比較例7の応答特性が形成不良であるとは、比較例7の黒色チタンコアシェル粒子を水に分散させたときにこの分散液がゲル化してしまい、応答特性を測定できなかったことを示す。更に、表1において、シリカ源としてオルトけい酸テトラエチル(TEOS)を用いたものを「E」とし、シリカ源としてオルトけい酸テトラメチルを用いたものを「M」とした。
【0059】
【表1】
【0060】
表1から明らかなように、比較例1及び4では、黒色チタン粒子の等電点が4.4及び4.5と高かったため、この黒色チタンコアシェル粒子を黒色顔料として用いた電子ペーパーの電気泳動素子の応答特性が不安定となり、比較例2、5及び6では、黒色チタンコアシェル粒子の等電点が4.1、4.0及び4.1とやや高かったため、この黒色チタンコアシェル粒子を黒色顔料として用いた電子ペーパーの電気泳動素子の応答特性がやや不安定となったのに対し、実施例1〜14では、黒色チタンコアシェル粒子の等電点が2.0〜3.7と低かったため、この黒色チタンコアシェル粒子を黒色顔料として用いた電子ペーパーの電気泳動素子の応答特性が良好となった。ここで、比較例1及び4で、黒色チタン粒子の等電点が4.4及び4.5と高くなったのは、黒色チタン粒子がシリカ膜で被覆されておらず、黒色チタン粒子の圧粉体の状態での体積抵抗率が5.1×10
0Ω・cm(5Ω・cm)及び6.00×10
0Ω・cm(6Ω・cm)と極めて低かったためである。また比較例2、5及び6で、黒色チタンコアシェル粒子の等電点が4.1、4.0及び4.1とやや高くなったのは、黒色チタン粒子を被覆するシリカ膜の厚さが不明であるか、或いは1.23nmと薄くなり、黒色チタン粒子をシリカ膜で完全に被覆できず、黒色チタンコアシェル粒子の圧粉体の状態での体積抵抗率が9.00×10
4Ω・cm、8.00×10
4Ω・cm及び6.50×10
4Ω・cmとやや低かったためである。これらに対し、実施例1〜14で、黒色チタンコアシェル粒子の等電点が2.0〜3.7と低くなったのは、黒色チタン粒子を被覆するシリカ膜の厚さが2.50〜11.39nmと比較的厚くなり、黒色チタン粒子をシリカ膜で完全に被覆でき、黒色チタンコアシェル粒子の圧粉体の状態での体積抵抗率が1.50×10
5Ω・cm以上と高くなったためである。なお、比較例7の黒色チタンコアシェル粒子を水に分散させたときにこの分散液がゲル化してしまい、応答特性を測定できなかったのは、オルトけい酸テトラエチル(TEOS)の量が多過ぎて、黒色チタン粒子以外の箇所でもシリカが析出してしまったためである。また、比較例8では、応答特性は良好であったけれども、黒色チタンコア粒子の黒色度が不足したため、L
*値が14.5と高くなり、視認性が悪くなった。