(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のコアキャッチャの実施の形態を図面を用いて説明する。
[第1の実施の形態]
図1乃至
図4は本発明のコアキャッチの第1の実施の形態の構成を示すもので、
図1は本発明のコアキャッチの第1の実施の形態を適用した原子炉格納容器を示す縦断面図、
図2は本発明のコアキャッチの第1の実施の形態を原子炉格納容器の一部と共に示す断面図、
図3は
図2のIII−III矢視から本発明のコアキャッチの第1の実施の形態における外周部の一部を見た図、
図4は
図2の符号Aで示す本発明のコアキャッチの第1の実施の形態における外周部の一部を拡大した断面図である。
【0016】
図1において、改良型沸騰水型原子炉(ABWR)の原子炉建屋1内部には、原子炉格納容器2が設置されている。原子炉格納容器2は、鋼製ライナを内張りした鉄筋コンクリート製で、放射性物質の漏出を防ぐために気密性及び耐圧性を有している。
【0017】
原子炉格納容器2内には、炉心3を収容した原子炉圧力容器4が格納されている。原子炉圧力容器4は、原子炉格納容器2の底部2a上に立設した略円筒状のペデスタル5によって支持されている。原子炉格納容器2の側壁2bとペデスタル5の間には、鉄筋コンクリート製のダイヤフラムフロア6が架け渡されている。
【0018】
原子炉格納容器2の内部は、原子炉圧力容器4を取り囲む上部ドライウェル7と、ペデスタル5の内側で原子炉圧力容器4の下方に形成された下部ドライウェル8と、ペデスタル5の外周面を取り囲み、水を貯留するサプレッションチャンバ9とで構成されている。上部ドライウェル7、下部ドライウェル8とサプレッションチャンバ9とは、ダイヤフラムフロア6により区画されている。上部ドライウェル7とサプレッションチャンバ9は、ベント管10を介して相互に連通されている。上部ドライウェル7には、冷却材としての冷却水を貯留した水源としての冷却水タンク11が設置されている。
【0019】
改良型沸騰水型原子炉は、非常用炉心冷却系(図示せず)、格納容器スプレー系(図示せず)、及び静的格納容器冷却系(図示せず)を備えている。非常用炉心冷却系及び格納容器スプレー系は、冷却材喪失事故(LOCA)が発生した場合に、復水貯蔵タンク(図示せず)やサプレッションチャンバ9を水源とし、非常用ディーゼルポンプ(図示せず)により給水するように構成されている。静的格納容器冷却系は、原子炉格納容器2内に漏出した蒸気を原子炉格納容器2外部に設置した冷却プール(図示せず)の中に設けた熱交換器(図示せず)に通すことで凝縮させて冷却水タンク11に放出するように構成されている。静的格納容器冷却系は、漏出蒸気により圧力上昇した上部ドライウェル7、下部ドライウェル8と冷却水タンク11との圧力差を駆動力として、ポンプ等の動的機器を必要とせずに作動する。
【0020】
原子炉圧力容器4の下方の原子炉格納容器2の底部2a上には、コアキャッチャ20が設置されている。コアキャッチャ20には、冷却水タンク11が供給配管12(後述の
図2参照)を介して接続されている。コアキャッチャ20は、炉心3の溶融する過酷事故が発生した場合に、原子炉圧力容器4から下部ドライウェル8へ落下した炉心溶融物を受け止めて冷却するものである。
【0021】
次に、本発明のコアキャッチャの第1の実施の形態の構成を
図2乃至
図4を用いて説明する。
図2及び
図3中、炉心溶融物Dを二点鎖線で、冷却水の流れを矢印で示している。
図4は落下した炉心溶融物が犠牲層の上面全体に拡がった状態を示している。なお、
図2乃至
図4において、
図1に示す符号と同符合のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図2において、コアキャッチャ20は、原子炉圧力容器4の下方に設置され、過酷事故時に原子炉圧力容器4から落下した炉心溶融物Dを受け止める犠牲層21と、犠牲層21の下部の略全面に設けられ、原子炉格納容器2の底部2a上に設置された架台17に支持された冷却機構としての配管群25とを備えている。
【0022】
犠牲層21は、例えば、
図2及び
図3に示すように、平面視で略円形状で所定の厚さを有する本体部22と、本体部22の上面における外周部からペデスタル5の内周面に対向するように直立する円筒状の側面部23とで構成されている。すなわち、上方が開口した構造物である。本体部22の上面は、略水平となるように形成されている。本体部22の底部は、その外周部が中心部より高くなるように形成されている。犠牲層21は、過酷事故時に炉心溶融物Dの落下の衝撃及び炉心溶融物Dからの直接加熱による配管群25の損傷を防止するように構成されている。
【0023】
配管群25は、例えば、
図2及び
図3に示すように、犠牲層21の底部の中心部を通る分配配管26と、分配配管26から略直交方向に分岐し、分配配管26の延びる方向に隙間なく並んだ複数の冷却水配管27とで構成されている。
【0024】
分配配管26は、供給配管12を介して冷却水タンク11(
図1参照)に接続されている。供給配管12は、冷却水タンク11から原子炉格納容器2の底部2aに延伸する下降配管13と、下降配管13から分配配管26に延伸する給水配管14とで構成されている。下降配管13には、注水弁15が設けられている。分配配管26には、過酷事故時に注水弁15を開放することにより冷却水タンク11からの冷却水が下降配管13及び給水配管14を介して供給される。分配配管26は、各冷却水配管27に冷却水を分配するヘッダとしての機能を有している。
【0025】
各冷却水配管27は、犠牲層21の底部に沿って設けられ、分配配管26から犠牲層21の外周部に向かって上り勾配の傾斜管部28と、傾斜管部28のペデスタル5側の端部から鉛直方向に立ち上がった直立管部29とで構成されている。各直立管部29は、その外側がペデスタル5の内周面に接し、その内側が犠牲層21の側面部23に接している。直立管部29には、
図4に示すように、犠牲層21の本体部22の上面より上方で犠牲層21の側面部23の上端より下方において配管出口29aが設けられている。直立管部29の配管出口29aの上方における犠牲層21の側面部23とペデスタル5とで囲まれた空間は、円環状の桶部40として形成されている。桶部40は、分配配管26から各冷却水配管27に分配された冷却水を集合させる機能を有している。
【0026】
このように、配管群25は、分配配管26と複数の冷却水配管27とで上方に開口した椀形状を成しており、犠牲層21で受け止めた炉心溶融物Dを下面及び側面から冷却するものである。
【0027】
分配配管26、下降配管13、及び給水配管14には、冷却水配管27に比して径の大きな配管が用いられている。このことにより、大量の冷却水を早急に複数の冷却水配管27に導入することができる。
【0028】
次に、本発明のコアキャッチャの第1の実施の形態を構成する犠牲層の構造の詳細を
図5を用いて説明する。
図5は、
図2に示す本発明のコアキャッチの第1の実施の形態を構成する犠牲層及び配管群の一部を模式的に示す断面斜視図である。
図5において、
図1乃至
図4に示す符号と同符合のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図5において、コアキャッチャ20の犠牲層21は、多層構造であり、例えば、高熱伝導率かつ高融点の材料で形成され、配管群25上に設けた耐熱熱拡散層31と、低熱伝導率かつ高融点の材料で形成され、耐熱熱拡散層31上に設けた溶融物拡散耐熱層32とを有する。
【0029】
耐熱熱拡散層31は、配管群25の直上層として設けられている。耐熱熱拡散層31は、炉心溶融物Dの崩壊熱を均一に拡散させるために、鉄の熱伝導率(83.5W/m・K)以上の高熱伝導率の材料で形成する必要がある。また、炉心溶融物Dの崩壊熱を間接的に受けることから、ステンレス鋼の融点(1400℃)以上の高融点の材料で形成する必要がある。そこで、耐熱熱拡散層31は、例えば、熱伝導率が鉄の熱伝導率以上であるセラミックスや金属等を主成分とした材料によって形成されている。このような特性を有する材料として、例えば、タングステン、モリブデン、ベリリア、炭化珪素、窒化アルミ、グラファイトを主成分とするものが挙げられる。
【0030】
溶融物拡散耐熱層32は、落下した炉心溶融物Dが最初に接触する最上層として設けられている。溶融物拡散耐熱層32は、落下した炉心溶融物Dの崩壊熱の移動を抑制するために、ステンレス鋼の熱伝導率(20.0W/m・K)以下の低熱伝導率の材料で形成する必要がある。また、高温の炉心溶融物Dと接触することから、ステンレス鋼の融点(1400℃)以上の高融点で、耐熱衝撃特性が高い材料で形成する必要がある。また、炉心溶融物Dによりある程度溶融侵食される可能性があることから、溶融侵食の際に発生する非凝縮性ガスの発生量が少ない材料で形成する必要がある。そこで、溶融物拡散耐熱層32は、例えば、熱伝導率がステンレス鋼の熱伝導率以下であるセラミックスを主成分とした材料によって形成されている。このような特性を有する材料として、例えば、ジルコニア、アルミナ、マグネシア、カルシア、ハフニア、チタニア、ジルコン、ムライト、窒化ホウ素、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ジルコニウム、酸化珪素、炭化チタン、炭化タンタル、及び炭化ジルコニウムを主成分とするものが挙げられる。
【0031】
溶融物拡散耐熱層32の厚みは、過酷事故時に何らかの原因によりコアキャッチャ20への注水開始の遅れを想定した場合に、注水遅れの許容時間に応じて決定される。すなわち、溶融物拡散耐熱層32の厚みを増加させることにより、コアキャッチャ20への注水開始が遅れて冷却水が供給されない場合であっても配管群25の過熱損傷に至る時間を遅らせることが可能である。
【0032】
次に、本発明のコアキャッチャの第1の実施の形態の過酷事故時における作用を
図1乃至
図5を用いて説明する。
先ず、本発明のコアキャッチャの第1の実施の形態の過酷事故時における一般的な作用を説明する。
何らかの原因により
図1に示す原子炉圧力容器4に接続された冷却系配管類(図示せず)の一部が損傷して上部ドライウェル7内に蒸気が漏出した場合、上部ドライウェル7内の蒸気はベント管10を介してサプレッションチャンバ9に導かれる。この蒸気はサプレッションチャンバ9に貯留された水により凝縮し、原子炉格納容器2内の圧力上昇が抑制される。同時に、非常用炉心冷却系(図示せず)の起動により原子炉圧力容器4内に冷却材を供給して炉心3を冷却する。
【0033】
しかし、極めて低い確率であるが、非常用炉心冷却系の起動失敗等に起因して炉心3の冷却が不十分となり、崩壊熱により炉心3が溶融することが想定され得る。この場合、溶融した炉心3は、
図2に示すように、原子炉圧力容器4を貫通して、炉心溶融物Dとして下部ドライウェル8内に落下する可能性がある。
【0034】
このような過酷事故が発生した場合、コアキャッチャ20の犠牲層21は、落下する高温の炉心溶融物Dを受け止め、炉心溶融物Dの落下の衝撃及び炉心溶融物Dからの直接加熱による配管群25の損傷を防止する。
【0035】
このとき、下部ドライウェル8内の雰囲気温度の上昇等により炉心溶融物Dの落下を検知して、注水弁15を開放して冷却水タンク11(
図1参照)内の冷却水を重力により下降配管13及び給水配管14を介して分配配管26に供給する。この冷却水は、
図2及び
図3に示すように、各冷却水配管27に分配される。各冷却水配管27に分配された冷却水は、
図4に示すように、各直立管部29の配管出口29aに達して、桶部40で混合する。この冷却水は桶部40から犠牲層21の側面部23に囲まれた領域に溢れ出て、犠牲層21上の炉心溶融物Dが冠水する。冷却水配管27の傾斜管部28及び直立管部29内に流通する冷却水は、犠牲層21を介して炉心溶融物Dを下面および側面から冷却し、一部が蒸気となり直立管部29の配管出口29aから排出される。また、直立管部29の配管出口29aから溢出した冷却水は、炉心溶融物Dを直接上面から冷却し、一部が蒸気となる。
【0036】
炉心溶融物Dを冷却する過程で発生した蒸気は、
図1及び
図2に示すように、静的格納容器冷却系(図示せず)で凝縮されて冷却水タンク11に戻される。冷却水タンク11に戻された冷却水は、再び重力によりコアキャッチャ20の配管群25に供給され、犠牲層21を介して炉心溶融物Dを再度冷却する。また、この蒸気は格納容器スプレー系(図示せず)で凝縮される場合もある。この凝縮水は、犠牲層21上の炉心溶融物D上に流れ込み、炉心溶融物Dを再度冷却する。このように、冷却水が循環することにより、炉心溶融物Dは継続して上面及び下面から冷却される。
【0037】
冷却水による炉心溶融物Dの上面からの除熱量が炉心溶融物Dの崩壊熱より小さい場合には、炉心溶融物Dによる犠牲層21の侵食が進展する。熱抵抗材でもある犠牲層21が侵食されて薄くなっていくと、配管群25と炉心溶融物Dとの距離が接近し、冷却水による炉心溶融物Dの下面からの除熱量が増加する。この結果、冷却水による上面及び下面からの除熱量と炉心溶融物Dの崩壊熱とが釣り合う領域で犠牲層21の侵食が停滞し、炉心溶融物Dの形状が安定する。
【0038】
このように、コアキャッチャ20で炉心溶融物Dを保持して冷却することができるので、原子炉格納容器2の床面の溶融貫通や炉心溶融物Dと原子炉格納容器2の床面のコンクリートとの反応により発生する非凝縮性ガスによる原子炉格納容器2の過圧破損を防止することができる。この結果、放射性物質の原子炉格納容器2外への漏出を防止することができる。
【0039】
次に、本発明のコアキャッチャの第1の実施の形態の過酷事故時における特徴的な作用を説明する。先ず、本発明のコアキャッチャの第1の実施の形態を構成する犠牲層21のうち、溶融物拡散耐熱層32の作用を説明する。
炉心溶融物Dは、その主成分が二酸化ウラン(UO2)であり、崩壊熱により二酸化ウランの融点よりも高い温度(一般的に2500℃程度)になっている。
【0040】
原子炉圧力容器4から落下したこの高温の炉心溶融物Dは、先ず
図5に示すコアキャッチャ20の犠牲層21の最上層である溶融物拡散耐熱層32に接触し、その自重により溶融物拡散耐熱層32上に拡がっていく。このとき、溶融物拡散耐熱層32の温度は炉心溶融物Dの温度よりも低いため、炉心溶融物Dから溶融物拡散耐熱層32への熱の移動が生じ、炉心溶融物Dの温度が低下する。
【0041】
この温度低下により炉心溶融物Dの温度が融点以下になった場合、炉心溶融物Dが固化する。特に、炉心溶融物Dの薄く拡がった端部で固化が生じやすい。炉心溶融物Dの端部が固化すると、その固化部分により炉心溶融物Dの犠牲層21上の拡散が堰き止められ、炉心溶融物Dが一部分の領域で固まってしまう可能性がある。
【0042】
しかし、本実施の形態においては、溶融物拡散耐熱層32を低熱伝導率の材料で形成しているので、炉心溶融物Dから溶融物拡散耐熱層32への熱の移動が抑制される。このことにより、炉心溶融物Dの落下初期における温度低下が抑制されて、炉心溶融物Dの端部の固化が抑制される。このため、溶融状態を維持した炉心溶融物Dは、
図2に示すように、犠牲層21(
図5に示す溶融物拡散耐熱層32)上を可能な限り拡がっていく。この炉心溶融物Dの拡がりにより犠牲層21下側に設けた配管群25にかかる熱負荷が均一化され、コアキャッチャ20の冷却性能が向上する。拡がった炉心溶融物Dと、各冷却水配管27の直立管部29及びペデスタル5との接触は、犠牲層21の側面部23により阻止される。
【0043】
また、上述した炉心溶融物Dの冠水による冷却時においては、炉心溶融物Dの拡がりにより、犠牲層21上に溢出した冷却水と炉心溶融物Dの上面との接触面積が増加し、炉心溶融物Dの上面からの除熱量が増加する。このため、炉心溶融物Dがより効率的に冷却される。
【0044】
また、炉心溶融物落下の検知により配管群25に冷却水を供給して炉心溶融物Dを冷却するが、安全性の観点から、何らかの原因により配管群25への注水の遅れを想定する必要がある。この場合、炉心溶融物Dの崩壊熱によりコアキャッチャ20を構成する配管群25等の一部が過熱してその機能の一部が喪失し、コアキャッチャ20の冷却性能が低下する虞がある。
【0045】
しかし、本実施の形態においては、溶融物拡散耐熱層32を低熱伝導率かつ高融点の材料で形成しているので、炉心溶融物Dから溶融物拡散耐熱層32への熱の移動及び炉心溶融物Dの熱による溶融物拡散耐熱層32の侵食が抑制される。このため、溶融物拡散耐熱層32より下側に配置された配管群25の過熱が防止され、炉心溶融物Dの落下から配管群25への注水開始までの時間的余裕を確保することができる。すなわち、配管群25への注水遅れが生じた場合でも、コアキャッチャ20は、その機能を喪失することなく、炉心溶融物Dを一定時間保持することができる。また、溶融物拡散耐熱層32の厚みをより厚くすることにより、注水遅れ時における炉心溶融物Dの保持可能な時間を延ばすことができる。
【0046】
次に、本発明のコアキャッチャの第1の実施の形態を構成する犠牲層のうち、耐熱熱拡散層31の作用を説明する。
犠牲層21上に落下した炉心溶融物Dの崩壊熱は、まず
図5に示す溶融物拡散耐熱層32に伝わり、その後溶融物拡散耐熱層32から耐熱熱拡散層31に伝わり、最終的には耐熱熱拡散層31下部の配管群25内を流通する冷却水により除熱される。
【0047】
溶融物拡散耐熱層32を犠牲層21の最上層とすることにより溶融物拡散耐熱層32上で可能な限り拡がった炉心溶融物Dの崩壊熱は、高熱伝導率の材料で形成された耐熱熱拡散層31によりコアキャッチャ20全体に均一に拡散する。また、炉心溶融物Dが十分に拡がらず一部の領域に偏った状態である場合においても、炉心溶融物Dの崩壊熱は、耐熱熱拡散層31によりコアキャッチャ20全体に均一に拡散する。コアキャッチャ20全体が均一に加熱されることにより、炉心溶融物Dが一部の領域に偏った状態であっても配管群25にかかる熱負荷の偏りが抑制され、コアキャッチャ20の冷却効率が向上する。この結果、過酷事故時における原子炉格納容器2の健全性が維持される。
【0048】
また、炉心溶融物Dの崩壊熱により溶融物拡散耐熱層32の大部分または全体が侵食された場合を想定しても、耐熱熱拡散層31は高融点の材料で形成されているので、炉心溶融物Dの崩壊熱による耐熱熱拡散層31の損傷は抑制される。このため、炉心溶融物Dからの直接加熱による配管群25の損傷を防止することができる。
【0049】
上述したように、本発明のコアキャッチャの第1の実施の形態によれば、多層構造の犠牲層21の最上層を低熱伝導率かつ高融点の材料で形成した溶融物拡散耐熱層32とし、犠牲層21の冷却機構(配管群25)の直上層を高熱伝導率かつ高融点の材料で形成した耐熱熱拡散層31としたので、落下初期における炉心溶融物Dの固化を抑制すると共に炉心溶融物Dの崩壊熱をコアキャッチャ20全体に略均一に拡散させることができる。これにより、冷却機構(配管群25)にかかる熱負荷の偏りを抑制することができるので、コアキャッチャ20の冷却性能の向上を図ることができる。この結果、過酷事故時における原子炉格納容器2の健全性を維持することができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、犠牲層21の最上層を低熱伝導率かつ高融点の材料で形成した溶融物拡散耐熱層32としたので、配管群25への注水遅れが生じた場合でも、一定時間、配管群25の過熱による冷却機能の喪失を回避して炉心溶融物Dを保持することができる。この結果、コアキャッチャ20の冷却性能を維持することができる。
【0051】
[第2の実施の形態]
次に、本発明のコアキャッチャの第2の実施の形態を
図6を用いて説明する。
図6は本発明のコアキャッチャの第2の実施の形態を構成する犠牲層、配管群、及び熱拡散層の一部を模式的に示す断面斜視図である。なお、
図6において、
図1乃至
図5に示す符号と同符合のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図6に示す本発明のコアキャッチャの第2の実施の形態は、第1の実施の形態と大略同様に構成されるが、第1の実施の形態の配管群25の下側に熱拡散層53を設けている点が異なる。
【0052】
コアキャッチャ50の熱拡散層53は、鉄の熱伝導率(83.5W/m・K)以上の高熱伝導率の材料で形成されている。このような特性を有する材料として、例えば、上記した第1の実施の形態の耐熱熱拡散層31の材料と同様に、タングステン、モリブデン、ベリリア、炭化珪素、窒化アルミ、グラファイトを主成分とするものが挙げられる。また、上記した耐熱熱拡散層31とは異なり高温になることがないことから、鉄、銅、アルミニウム等を主成分とする金属材料を用いることができる。
【0053】
上述した本発明のコアキャッチャの第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の犠牲層21と同様の犠牲層21を備えているので、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、本実施の形態によれば、配管群25の下側に高熱伝導率の材料で形成された熱拡散層53を設けたので、配管群25の各冷却水配管27における冷却水の流量の偏り等による配管群25の除熱量の偏りがあった場合でも、熱拡散を促進し、コアキャッチャ50全体がより均一な熱分布となる。このため、配管群25にかかる熱負荷の偏りがさらに低減され、コアキャッチャ50の冷却性能のさらなる向上を図ることができる。この結果、過酷事故において原子炉格納容器2の健全性を維持することができる。
【0055】
[第3の実施の形態]
次に、本発明のコアキャッチャの第3の実施の形態を
図7を用いて説明する。
図7は本発明のコアキャッチャの第3の実施の形態を構成する犠牲層、配管群、及び熱遮断層の一部を模式的に示す断面斜視図である。なお、
図7において、
図1乃至
図6に示す符号と同符合のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図7に示す本発明のコアキャッチャの第3の実施の形態は、第1の実施の形態と大略同様に構成されるが、第1の実施の形態の配管群25の下側に熱遮断層63を設けている点が異なる。
【0056】
コアキャッチャ60の熱遮断層63は、ステンレス鋼の熱伝導率(20.0W/m・K)以下の低熱伝導率の材料で形成されている。このような特性を有する材料として、例えば、上記した第1の実施の形態の溶融物拡散耐熱層32の材料と同様に、ジルコニア、アルミナ、マグネシア、カルシア、ハフニア、チタニア、ジルコン、ムライト、窒化ホウ素、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ジルコニウム、酸化珪素、炭化チタン、炭化タンタル、及び炭化ジルコニウムを主成分とするものが挙げられる。また、上記した溶融物拡散耐熱層32とは異なり高温になることがないことから、一般の断熱材を用いることもできる。熱遮断層63は、配管群25に伝わった崩壊熱が配管群25下方に位置する原子炉格納容器底部2a(
図2参照)の構造物に伝わることを抑制するものである。
【0057】
熱遮断層63を溶融物拡散耐熱層32と同様の高融点の材料で形成した場合、配管群25などの破損により冷却機能の一部を喪失したことを想定しても、熱遮断層63が炉心溶融物Dを受け止めると共に、炉心溶融物Dの崩壊熱の原子炉格納容器底部2aへの伝熱を低減する。このため、原子炉格納容器2の安全性が向上する。
【0058】
上述した本発明のコアキャッチャの第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態の犠牲層21と同様の犠牲層21を備えているので、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、配管群25の下側に低熱伝導率の材料で形成した熱遮断層63を設けたので、配管群25下方に位置する原子炉格納容器底部2aの構造物への伝熱を低減することができる。このことにより、この構造物に生じる熱応力が低減するので、原子炉格納容器2の安全性が向上する。
【0060】
[第4の実施の形態]
次に、本発明のコアキャッチャの第4の実施の形態を
図8を用いて説明する。
図8は本発明のコアキャッチャの第4の実施の形態を構成する犠牲層、配管群、熱拡散層、及び熱遮断層の一部を模式的に示す断面斜視図である。なお、
図8において、
図1乃至
図7に示す符号と同符合のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図8に示す本発明のコアキャッチャの第4の実施の形態は、第2の実施の形態と大略同様に構成されるが、第2の実施の形態の熱拡散層53の下側にさらに熱遮断層74を設けている点が異なる。
【0061】
コアキャッチャ70の熱遮断層74は、ステンレス鋼の熱伝導率(20.0W/m・K)以下の低熱伝導率の材料で形成されており、第3の実施の形態を構成する熱遮断層63と同様のものである。このような特性を有する材料として、例えば、ジルコニア、アルミナ、マグネシア、カルシア、ハフニア、チタニア、ジルコン、ムライト、窒化ホウ素、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ジルコニウム、酸化珪素、炭化チタン、炭化タンタル、及び炭化ジルコニウムを主成分とするものや一般の断熱材が挙げられる。
【0062】
上述した本発明のコアキャッチャの第4の実施の形態によれば、熱拡散層53下側に低熱伝導率の材料で形成された熱遮断層74を設けたので、コアキャッチャ70の冷却性能を向上させた上で、原子炉格納容器底部2a(
図2参照)の構造物への伝熱を低減させ、その構造物に生じる熱応力の低減を図ることができる。このことにより、原子炉格納容器2の安全性が向上する。
【0063】
[第5の実施の形態]
次に、本発明のコアキャッチャの第5の実施の形態を
図9を用いて説明する。
図9は本発明のコアキャッチャの第5の実施の形態を示す断面図である。
図9中、炉心溶融物Dを二点鎖線で示している。なお、
図9において、
図1乃至
図8に示す符号と同符合のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
本発明のコアキャッチャの第5の実施の形態は、第1の実施の形態と大略同様に構成されるが、冷却機構として、第1の実施の形態の配管群25の代わりに犠牲層21の下部の略全面に設けたヒートパイプ85を用いる点が異なる。
【0064】
具体的には、
図9において、コアキャッチャ80の冷却機構としてのヒートパイプ85は、犠牲層21の底部に沿って配設されており、原子炉格納容器2の外部に放熱部86を有する。放熱部86は、例えば、フィン構造で空冷式である。ヒートパイプ85は、冷却材としての作動液が蒸発・凝縮することにより内部で循環流通し、炉心溶融物Dの崩壊熱を放熱部86から原子炉格納容器2の外部に放出するものである。
【0065】
上述した本発明のコアキャッチャの第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態の犠牲層21と同様の犠牲層21を備えているので、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、本実施の形態によれば、配管群25の代わりにヒートパイプ85を設けたので、配管群25を設けた場合のような注水遅れによる冷却機構(配管群25)の損傷という問題が生じることはない。
【0067】
[その他の実施の形態]
なお、上述した第1乃至第5の実施の形態においては、サプレッションチャンバ9を有する原子力格納容器2を備えた沸騰水型原子炉に本発明のコアキャッチャを適用した例を示したが、他の形式の原子炉、例えば、加圧水型原子炉(PWR)にも適用可能である。
【0068】
なお、上述した第1乃至第5の実施の形態においては、犠牲層21を、溶融物拡散耐熱層32及び耐熱熱拡散層31で構成した2層構造とした例を示したが、犠牲層を、最上層の溶融物拡散耐熱層32と配管群25の直上層の耐熱熱拡散層31との間に層を設けた三層以上の多層構造とすることも可能である。
【0069】
また、上述した第1乃至第4の実施の形態においては、犠牲層21の底部の中心部を通る分配配管26と、分配配管26から分岐し、分配配管26の延びる方向に並んだ複数の冷却水配管27とで構成した配管群25の例を示した。しかし、配管群は、犠牲層21の底部から炉心溶融物Dを冷却可能な構成であれば、様々な形状が可能である。例えば、配管群を、犠牲層21の底部の中心部に設けた給水室と、犠牲層21の底部に沿って給水室から放射状に延びる複数の配管とで構成することもできる。このような場合でも、多層構造の犠牲層21を適用することができる。
【0070】
なお、上述した第1乃至第4の実施の形態においては、コアキャッチャよりも上方に配置した冷却水タンク11から重力による静的な方法で冷却水を配管群25に供給した例を示したが、電力やタービン駆動で作動するポンプなどの動的な注水設備を用いて冷却水を配管群25に供給することもできる。また、原子炉格納容器2の外部に接続口を設け、その接続口に非常設のポンプ(例えば、消防ポンプ車)を接続することで冷却水を配管群25に供給することも可能である。
【0071】
また、上述した第1乃至第4の実施の形態においては、コアキャッチャの冷却材の水源として、コアキャッチャよりも上方に配置した冷却水タンク11を用いた例を示したが、冷却材としての水を貯留したサプレッションチャンバ9を用いることもできる。この場合、配管群25の配管出口29aをサプレッションチャンバ9の水面よりも下方に設けることで、上記の冷却水タンク11と同様に、動的機器を用いることなく配管群25への注水が可能となる。
【0072】
なお、上述した第1乃至第4の実施の形態においては、冷却水タンク11と分配配管26とを接続する供給配管12を1系統とした例を示したが、供給配管12を複数系統とすることもできる。
【0073】
また、上述した第1乃至第4の実施の形態においては、犠牲層21の側面部23の位置を配管群25の配管出口29aよりも高い位置とした例を示したが、犠牲層21の側面部23の位置を配管出口29aよりも低い位置とすることも可能である。
【0074】
なお、上述した第5の実施の形態においては、放熱部86を空気で冷却する例を示したが、放熱部86を、作動流体により熱交換する熱交換器で冷却することもできる。
【0075】
また、本発明は上述した第1乃至第5の実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。