(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の炭化水素油の沸点範囲が470℃以上520℃未満であり、前記第2の炭化水素油の沸点範囲が330℃以上470℃未満である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好適な実施形態について以下に説明する。
【0021】
本実施形態に係る潤滑油基油の製造方法は、所定の沸点範囲を有する潤滑油基油を製造する方法であって、上記沸点範囲に沸点を有する第1の炭化水素油と、上記沸点範囲より低い沸点を有する第2の炭化水素油とを含有する原料油を、水素の存在下、水素化異性化触媒に接触させる第1の工程を備える。
【0022】
本実施形態において、水素化異性化触媒は、10員環一次元状細孔構造を有するゼオライト、及びバインダーを含む担体と、該担体に担持された白金及び/又はパラジウムと、を含有する。また、水素化異性化触媒のカーボン量は0.4〜3.5質量%であり、水素化異性化触媒の単位質量当たりのミクロ細孔容積は0.02〜0.12cc/gである。また、上記ゼオライトは、有機テンプレートを含有し10員環一次元状細孔構造を有する有機テンプレート含有ゼオライトを、アンモニウムイオン及び/又はプロトンを含む溶液中でイオン交換して得られるイオン交換ゼオライトに由来するものであり、上記触媒に含有されるゼオライトの単位質量当りのミクロ細孔容積は0.01〜0.12cc/gである。水素化異性化触媒中のカーボン量は、酸素気流中燃焼−赤外線吸収法により測定される。具体的には、酸素気流中での当該触媒の燃焼により二酸化炭素ガスを発生させ、この二酸化炭素ガスの赤外線吸収量に基づき、炭素量が定量される。この測定には、炭素・硫黄分析装置(例えば、株式会社堀場製作所製 EMIA−920V)を用いればよい。
【0023】
本明細書において、水素化異性化触媒の単位質量当たりのミクロ細孔容積は、窒素吸着測定と呼ばれる方法にて算出される。すなわち、触媒について、液体窒素温度(−196℃)で測定した窒素の物理吸着脱離等温線を解析、具体的には、液体窒素温度(−196℃)で測定した窒素の吸着等温線をt−plot法により解析することにより、触媒の単位質量当たりのミクロ細孔容積が算出される。また、触媒に含有されるゼオライトの単位質量当りのミクロ細孔容積についても、上記の窒素吸着測定により算出される。
【0024】
本明細書においてミクロ細孔とは、国際純正・応用化学連合IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)で定義されている「直径が2nm以下の細孔」を指す。
【0025】
本実施形態においては、このような水素化異性化触媒を用い、且つ、目的留分である第1の炭化水素油を第2の炭化水素油と分離することなく異性化脱蝋処理に供することによって、第1の炭化水素油を分留して第1の炭化水素油単独で異性化脱蝋処理を行う場合と比較して、より高収率で潤滑油基油を得ることができる。すなわち、本実施形態に係る製造方法によれば、留分ごとに単独で異性化脱蝋処理する場合よりも収率を改善することができ、更に設備面、運用面でのコスト削減を実現することができる。
【0026】
<水素化異性化触媒>
本実施形態の水素化異性化触媒は、特定の方法によって製造されることでその特徴を付与できる。以下、水素化異性化触媒について、その好ましい製造の態様に沿って説明する。
【0027】
本実施形態の水素化異性化触媒の製造方法は、有機テンプレートを含有し10員環一次元状細孔構造を有する有機テンプレート含有ゼオライトを、アンモニウムイオン及び/又はプロトンを含む溶液中でイオン交換して得られるイオン交換ゼオライトと、バインダーと、が含まれる混合物を、N
2雰囲気下、250〜350℃の温度で加熱して担体前駆体を得る第1工程と、担体前駆体に白金塩及び/又はパラジウム塩を含ませた触媒前駆体を、分子状酸素を含む雰囲気下、350〜400℃の温度で焼成して、ゼオライトを含む担体に白金及び/又はパラジウムが担持された水素化異性化触媒を得る第2工程とを備える。
【0028】
本実施形態で用いられる有機テンプレート含有ゼオライトは、ノルマルパラフィンの水素化異性化反応における高い異性化活性と抑制された分解活性とを高水準で両立する観点から、10員環からなる一次元状細孔構造を有する。このようなゼオライトとしては、AEL、EUO、FER、HEU、MEL、MFI、NES、TON、MTT、WEI、
*MRE及びSSZ−32などが挙げられる。なお、上記の各アルファベット三文字は、分類分けされたモレキュラーシーブ型ゼオライトの各構造に対して、国際ゼオライト協会構造委員会(The Structure Commission of The International Zeolite Association)が与えている骨格構造コードを意味する。また、同一のトポロジーを有するゼオライトは包括的に同一のコードで呼称される。
【0029】
上記有機テンプレート含有ゼオライトとしては、上記の10員環一次元状細孔構造を有するゼオライトの中でも、高異性化活性及び低分解活性の点で、TON、MTT構造を有するゼオライト、
*MRE構造を有するゼオライトであるZSM−48ゼオライト、及びSSZ−32ゼオライトが好ましい。TON構造を有するゼオライトとしては、ZSM−22ゼオライトがより好ましく、また、MTT構造を有するゼオライトとしては、ZSM−23ゼオライトがより好ましい。
【0030】
有機テンプレート含有ゼオライトは、シリカ源、アルミナ源及び上記所定の細孔構造を構築するために添加する有機テンプレートから、公知の方法によって水熱合成される。
【0031】
有機テンプレートは、アミノ基、アンモニウム基等を有する有機化合物であり、合成するゼオライトの構造に応じて選択されるものであるが、アミン誘導体であることが好ましい。具体的には、アルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルトリアミン、アルキルテトラミン、ピロリジン、ピペラジン、アミノピペラジン、アルキルペンタミン、アルキルヘキサミン及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも一種であることがより好ましい。上記アルキルの炭素数は、4〜10が挙げられ、好ましくは6〜8である。なお、代表的なアルキルジアミンとしては、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−ジアミノオクタン等を例示できる。
【0032】
10員環一次元状細孔構造を有する有機テンプレート含有ゼオライトを構成する珪素とアルミニウム元素とのモル比([Si]/[Al])(以下、「Si/Al比」という。)は、10〜400であることが好ましく、20〜350であることがより好ましい。Si/Al比が10未満の場合には、ノルマルパラフィンの転換に対する活性は高くなるが、イソパラフィンへの異性化選択性が低下し、また反応温度の上昇に伴う分解反応の増加が急激となる傾向にあることから好ましくない。一方、Si/Al比が400を超える場合には、ノルマルパラフィンの転換に必要な触媒活性が得られにくくなり好ましくない。
【0033】
合成され、好ましくは洗浄、乾燥された上記有機テンプレート含有ゼオライトは、対カチオンとして通常アルカリ金属カチオンを有し、また有機テンプレートが細孔構造内に包含される。水素化異性化触媒を製造する際に用いる有機テンプレートを含むゼオライトとは、このような、合成された状態のもの、すなわち、ゼオライト内に包含される有機テンプレートを除去するための焼成処理がなされていないものであることが好ましい。
【0034】
上記有機テンプレート含有ゼオライトは、次に、アンモニウムイオン及び/又はプロトンを含む溶液中でイオン交換される。イオン交換処理により、有機テンプレート含有ゼオライト中に含まれる対カチオンは、アンモニウムイオン及び/又はプロトンに交換される。またそれと同時に、有機テンプレート含有ゼオライト中に包含される有機テンプレートの一部が除去される。
【0035】
上記イオン交換処理に使用する溶液は、水を少なくとも50容量%含有する溶媒を用いた溶液であることが好ましく、水溶液であることがより好ましい。また、アンモニウムイオンを溶液中に供給する化合物としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の無機及び有機の各種のアンモニウム塩が挙げられる。一方、プロトンを溶液中に供給する化合物としては、通常、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸が利用される。有機テンプレート含有ゼオライトをアンモニウムイオンの存在下でイオン交換することにより得られるイオン交換ゼオライト(ここでは、アンモニウム型ゼオライト)は、後の焼成の際にアンモニアを放出し、対カチオンがプロトンとなってブレンステッド酸点となる。イオン交換に用いるカチオン種としてはアンモニウムイオンが好ましい。溶液中に含まれるアンモニウムイオン及び/又はプロトンの含有量は、使用する有機テンプレート含有ゼオライトに含まれる対カチオン及び有機テンプレートの合計量に対して10〜1000当量となるように設定されることが好ましい。
【0036】
上記イオン交換処理は、粉末状の有機テンプレート含有ゼオライト担体に対して行ってもよく、またイオン交換処理に先立って、有機テンプレート含有ゼオライトにバインダーである無機酸化物を配合し、成型を行い、得られる成型体に対して行ってもよい。但し、上記の成型体を焼成することなくイオン交換処理に供すると、当該成型体が崩壊、粉化する問題が生じやすくなることから、粉末状の有機テンプレート含有ゼオライトをイオン交換処理に供することが好ましい。
【0037】
イオン交換処理は、定法、すなわち、アンモニウムイオン及び/又はプロトンを含む溶液、好ましくは水溶液に有機テンプレートを含むゼオライトを浸漬し、これを攪拌又は流動する方法によって行うことが好ましい。また、上記の撹拌又は流動は、イオン交換の効率を高めるために加熱下に行うことが好ましい。本実施形態においては、上記水溶液を加熱し、沸騰、還流下でイオン交換する方法が特に好ましい。
【0038】
更に、イオン交換の効率を高める点から、溶液によってゼオライトをイオン交換する間に、溶液を一回又は二回以上新しいものに交換することが好ましく、溶液を一回又は二回新しいものに交換することがより好ましい。溶液を一回交換する場合、例えば、有機テンプレート含有ゼオライトをアンモニウムイオン及び/又はプロトンを含む溶液に浸漬し、これを1〜6時間加熱還流し、次いで、溶液を新しいもの交換した後、更に6〜12時間加熱還流することにより、イオン交換効率を高めることが可能となる。
【0039】
イオン交換処理により、ゼオライト中のアルカリ金属等の対カチオンのほぼ全てをアンモニウムイオン及び/又はプロトンに交換することが可能である。一方、ゼオライト内に包含される有機テンプレートについては、上記のイオン交換処理によりその一部が除去されるが、同処理を繰り返し行っても、その全てを除去することは一般に困難であり、その一部がゼオライト内部に残留する。
【0040】
本実施形態では、イオン交換ゼオライトとバインダーとが含まれる混合物を窒素雰囲気下、250〜350℃の温度で加熱して担体前駆体を得る。
【0041】
イオン交換ゼオライトとバインダーとが含まれる混合物は、上記の方法にて得られたイオン交換ゼオライトに、バインダーである無機酸化物を配合し、得られる組成物を成型したものが好ましい。無機酸化物をイオン交換ゼオライトに配合する目的は、成型体の焼成によって得られる担体(特には、粒子状の担体)の機械的強度を、実用に耐えられる程度に向上することにあるが、本発明者は、無機酸化物種の選択が水素化異性化触媒の異性化選択性に影響を与えることを見出している。このような観点から、上記無機酸化物として、アルミナ、シリカ、チタニア、ボリア、ジルコニア、マグネシア、セリア、酸化亜鉛及び酸化リン並びにこれらの2種以上の組み合わせからなる複合酸化物から選択される少なくとも一種の無機酸化物が用いられる。中でも、水素化異性化触媒の異性化選択性が更に向上するとの観点から、シリカ、アルミナが好ましく、アルミナがより好ましい。また、上記「これらの2種以上の組み合わせからなる複合酸化物」とは、アルミナ、シリカ、チタニア、ボリア、ジルコニア、マグネシア、セリア、酸化亜鉛、及び酸化リンのうちの少なくとも2種の成分からなる複合酸化物であるが、複合酸化物を基準として50質量%以上のアルミナ成分を含有するアルミナを主成分とする複合酸化物が好ましく、中でもアルミナ−シリカがより好ましい。
【0042】
上記組成物におけるイオン交換ゼオライトと無機酸化物との配合比率は、イオン交換ゼオライトの質量:無機酸化物の質量の比として、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは30:70〜85:15である。この比が10:90よりも小さい場合には、水素化異性化触媒の活性が充分ではなくなる傾向にあるため好ましくない。一方、上記比が90:10を超える場合には、組成物を成型及び焼成して得られる担体の機械的強度が充分ではなくなる傾向にあるため好ましくない。
【0043】
イオン交換ゼオライトに上記の無機酸化物を配合する方法は特に限定されないが、例えば両者の粉末に適量の水等の液体を添加して粘ちょうな流体とし、これをニーダー等により混練する等の通常行われる方法を採用することができる。
【0044】
上記イオン交換ゼオライトと上記無機酸化物とを含む組成物或いはそれを含む粘ちょうな流体は、押出成型等の方法により成型され、好ましくは乾燥されて粒子状の成型体となる。成型体の形状としては特に限定されないが、例えば、円筒状、ペレット状、球状、三つ葉・四つ葉形の断面を有する異形筒状等が挙げられる。成型体の大きさは特に限定されないが、取り扱いの容易さ、反応器への充填密度等の観点から、例えば長軸が1〜30mm、短軸が1〜20mm程度であることが好ましい。
【0045】
本実施形態においては、上記のようにして得られた成型された成型体を、N
2雰囲気下、250〜350℃の温度で加熱して担体前駆体とすることが好ましい。加熱時間については、0.5〜10時間が好ましく、1〜5時間がより好ましい。
【0046】
本実施形態において、上記加熱温度が250℃より低い場合は、有機テンプレートが多量に残留し、残留したテンプレートによってゼオライト細孔が閉塞する。異性化活性点は細孔ポアマウス付近に存在すると考えられており、上記の場合、細孔閉塞によって反応基質が細孔内へ拡散できなくなり、活性点が被覆されて異性化反応が進行しにくくなり、ノルマルパラフィンの転化率が充分に得られにくくなる傾向にある。一方、加熱温度が350℃を超える場合には、得られる水素化異性化触媒の異性化選択性が充分に向上しない。
【0047】
成型体を加熱して担体前駆体とするときの下限温度は280℃以上が好ましい。また、上限温度は330℃以下が好ましい。
【0048】
本実施形態では、上記成型体に含まれる有機テンプレートの一部が残留するように上記混合物を加熱することが好ましい。具体的には、後述の金属担持後の焼成を経て得られる水素化異性化触媒のカーボン量が0.4〜3.5質量%(好ましくは0.4〜3.0質量%、より好ましくは0.4〜2.5質量%)となり、当該触媒の単位質量当りのミクロ細孔容積が0.02〜0.12cc/gとなり、当該触媒に含有されるゼオライトの単位質量当りのミクロ細孔容積が0.01〜0.12cc/gとなるように加熱条件を設定することが好ましい。
【0049】
次に、上記担体前駆体に白金塩及び/又はパラジウム塩を含ませた触媒前駆体を、分子状酸素を含む雰囲気下、350〜400℃、好ましくは380〜400℃、より好ましくは400℃の温度で焼成して、ゼオライトを含む担体に白金及び/又はパラジウムが担持された水素化異性化触媒を得る。なお、「分子状酸素を含む雰囲気下」とは、酸素ガスを含む気体、中でも好ましくは空気と接触することを意味する。焼成の時間は、0.5〜10時間であることが好ましく、1〜5時間であることがより好ましい。
【0050】
白金塩としては、例えば、塩化白金酸、テトラアンミンジニトロ白金、ジニトロアミノ白金、テトラアンミンジクロロ白金などが挙げられる。塩化物塩は反応時に塩酸が発生して装置腐食の恐れがあるため、塩化物塩以外で白金が高分散する白金塩であるテトラアンミンジニトロ白金が好ましい。
【0051】
パラジウム塩としては、例えば、塩化パラジウム、テトラアンミンパラジウム硝酸塩、ジアミノパラジウム硝酸塩などが挙げられる。塩化物塩は反応時に塩酸が発生して装置腐食の恐れがあるため、塩化物塩以外でパラジウムが高分散するパラジウム塩であるテトラアンミンパラジウム硝酸塩が好ましい。
【0052】
本実施形態に係るゼオライトを含む担体における活性金属の担持量は、担体の質量を基準として、0.001〜20質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。担持量が0.001質量%未満の場合には、所定の水素化/脱水素機能を付与することが困難となる。一方、担持量が20質量%を超える場合には、当該活性金属上での炭化水素の分解による軽質化が進行しやすくなり、目的とする留分の収率が低下する傾向にあり、さらには触媒コストの上昇を招く傾向にあるため好ましくない。
【0053】
また、本実施形態に係る水素化異性化触媒が含イオウ化合物及び/又は含窒素化合物を多く含む炭化水素油の水素化異性化に用いられる場合、触媒活性の持続性の観点から、活性金属として、ニッケル−コバルト、ニッケル−モリブデン、コバルト−モリブデン、ニッケル−モリブデン−コバルト、ニッケル−タングステン−コバルト等の組み合わせを含むことが好ましい。これらの金属の担持量は、担体の質量を基準として、0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜30質量%がより好ましい。
【0054】
本実施形態では、上記担体前駆体に残留させた有機テンプレートが残留するように上記触媒前駆体を焼成することが好ましい。具体的には、得られる水素化異性化触媒のカーボン量が0.4〜3.5質量%(好ましくは0.4〜3.0質量%、より好ましくは0.4〜2.5質量%)となり、当該触媒の単位質量当りのミクロ細孔容積が0.02〜0.12cc/gとなり、当該触媒に含有されるゼオライトの単位質量当りのミクロ細孔容積が0.01〜0.12cc/gとなるように加熱条件を設定することが好ましい。水素化異性化触媒中のカーボン量は、酸素気流中燃焼−赤外線吸収法により測定される。具体的には、酸素気流中での当該触媒の燃焼により二酸化炭素ガスを発生させ、この二酸化炭素ガスの赤外線吸収量に基づき、炭素量が定量される。この測定には、炭素・硫黄分析装置(例えば、株式会社堀場製作所製 EMIA−920V)を用いればよい。
【0055】
水素化異性化触媒の単位質量当りのミクロ細孔容積は、窒素吸着測定と呼ばれる方法にて算出される。すなわち、触媒について、液体窒素温度(−196℃)で測定した窒素の物理吸着脱離等温線を解析、具体的には、液体窒素温度(−196℃)で測定した窒素の吸着等温線をt−plot法により解析することにより、触媒の単位質量当りのミクロ細孔容積が算出される。また、触媒に含有されるゼオライトの単位質量当りのミクロ細孔容積についても、上記の窒素吸着測定により算出される。
【0056】
触媒に含有されるゼオライトの単位質量当りのミクロ細孔容積V
Zは、例えば、バインダーがミクロ細孔容積を有していない場合、水素化異性化触媒の単位質量当りのミクロ細孔容積の値V
cと、触媒におけるゼオライトの含有割合M
z(質量%)から下記式に従って算出することができる。
V
Z=V
c/M
z×100
【0057】
水素化異性化触媒は、上記の焼成処理に続いて、好ましくは水素化異性化の反応を行う反応器に充填後に還元処理されたものであることが好ましい。具体的には、分子状水素を含む雰囲気下、好ましくは水素ガス流通下、好ましくは250〜500℃、より好ましくは300〜400℃にて、0.5〜5時間程度の還元処理が施されたものであることが好ましい。このような工程により、炭化水素油の脱蝋に対する高い活性をより確実に触媒に付与することができる。
【0058】
水素化異性化触媒は、その一態様において、10員環一次元状細孔構造を有するゼオライト、及びバインダーを含む担体と、該担体に担持された白金及び/又はパラジウムと、を含有し、当該触媒のカーボン量が0.4〜3.5質量%であり、当該触媒の単位質量当りのミクロ細孔容積が0.02〜0.12cc/gである水素化異性化触媒であって、上記ゼオライトは、有機テンプレートを含有し10員環一次元状細孔構造を有する有機テンプレート含有ゼオライトを、アンモニウムイオン及び/又はプロトンを含む溶液中でイオン交換して得られるイオン交換ゼオライトに由来するものであり、触媒に含有されるゼオライトの単位質量当りのミクロ細孔容積が0.01〜0.12cc/gである。
【0059】
上記の水素化異性化触媒は、上述した方法により製造することができる。触媒の単位質量当りのミクロ細孔容積及び触媒に含有されるゼオライトの単位質量当りのミクロ細孔容積は、イオン交換ゼオライトとバインダーとが含まれる混合物におけるイオン交換ゼオライトの配合量、当該混合物のN
2雰囲気下での加熱条件、触媒前駆体の分子状酸素を含む雰囲気下での加熱条件を適宜調整することより上記範囲内にすることができる。
【0060】
<潤滑油基油の製造方法>
本実施形態に係る潤滑油基油の製造方法は、所定の沸点範囲を有する潤滑油基油を製造する方法であって、上記沸点範囲に沸点を有する第1の炭化水素油と、上記沸点範囲より低い沸点を有する第2の炭化水素油とを含有する原料油を、水素の存在下、上記水素化異性化触媒に接触させる第1の工程(以下、場合により「脱蝋工程」という。)を備える。第1の工程では、水素化異性化触媒との接触により、原料油の異性化脱蝋が行われる。
【0061】
なお、本明細書中「沸点範囲がX
1℃以上」とは、初留点及び終点がいずれもX
1℃以上であることを示し、「沸点範囲がX
2℃以上X
3℃未満」とは、初留点及び終点がいずれもX
2℃以上X
3℃未満の範囲内にあることを示す。
【0062】
第1の炭化水素油は、所望の潤滑油基油の沸点範囲に沸点を有する炭化水素油であり、該沸点範囲に沸点を有するノルマルパラフィンを含有する。第1の炭化水素油は、沸点範囲が、所望の潤滑油基油の沸点範囲と同じである留分ということができる。
【0063】
原料油中の第1の炭化水素油の含有量は、原料油の全量基準で5〜60容量%であることが好ましく、5〜45容量%であることがより好ましく、10〜40容量%であることがさらに好ましい。
【0064】
第2の炭化水素油は、所望の潤滑油基油の沸点範囲より低い沸点を有する炭化水素油であり、該沸点範囲より低い沸点を有するノルマルパラフィンを含有する。第2の炭化水素油は、沸点範囲の上限が、所望の潤滑油基油の沸点範囲より低い留分ということができる。第2の炭化水素油の沸点範囲の下限は特に制限されないが、例えば、330℃とすることができる。
【0065】
原料油中の第2の炭化水素油の含有量は、原料油の全量基準で40〜95容量%であることが好ましく、55〜95容量%であることがより好ましく、60〜90容量%であることがさらに好ましい。
【0066】
原料油は、所望の潤滑油基油の沸点範囲が上限を有するとき、当該上限を超える沸点を有する第3の炭化水素油を含有していてもよい。第3の炭化水素油の含有量は、例えば、5〜30容量%であってよく、10〜40容量%であってもよい。
【0067】
例えば、沸点範囲が520℃以上の潤滑油基油を主目的の基油とするとき、第1の炭化水素油の沸点範囲は、520℃以上であり、第2の炭化水素油の沸点範囲は、330℃以上520℃未満とすることができる。
【0068】
また、例えば、沸点範囲が470℃以上520℃未満の潤滑油基油を主目的の基油とするとき、第1の炭化水素油の沸点範囲は、470℃以上520℃未満であり、第2の炭化水素油の沸点範囲は、330℃以上470℃未満とすることができる。
【0069】
本発明で上記効果が奏される理由の一つは、原料油が第2の炭化水素油を含有するため、原料油の動粘度が、第1の炭化水素油単独の動粘度より低くなり、原料油の偏流等が防止されるためと考えられる。
【0070】
原料油の100℃における動粘度は、10.0mm
2/s未満であることが好ましく、8.0mm
2/s以下であることがより好ましい。原料油の動粘度は、第1の炭化水素油及び第2の炭化水素油の含有量比によって調整することができる。
【0071】
脱蝋工程においては、原料油に含まれるノルマルパラフィンの一部又は全部が、水素化異性化反応によりイソパラフィンに転化される。
【0072】
脱蝋工程では、原料油と水素化異性化触媒とを、下記式(I)で定義されるノルマルパラフィンの転化率が実質的に100質量%となる条件で接触させることが好ましい。
【0073】
【数1】
式(I)中、Cnは、接触前の炭化水素油(原料油)中に含まれる炭素数10以上のノルマルパラフィンのうちで最小の炭素数を示す。
【0074】
ここで、「転化率が実質的に100質量%」とは、接触後の炭化水素油中に含まれるノルマルパラフィンの含有量が0.1質量%以下であることを意味する。
【0075】
原料油としては、常圧換算の沸点が330℃を超える留分である石油留分、合成油・ワックスなどが好適である。原料油の具体例としては、常圧残油、重質軽油、減圧残油、減圧軽油、潤滑油ラフィネート、ブライトストック、スラックワックス(粗蝋)、蝋下油、脱油蝋、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、合成油、FT合成油、FT合成ワックス、高流動点ポリオレフィン、直鎖αオレフィンワックスなどが挙げられる。特に、常圧残油、減圧軽油、減圧残油、スラックワックス、FT合成油、FT合成ワックスを用いることが好ましい。これらは、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、これらの原料油は、水素化処理又は軽度の水素化分解を施されたものであることが好ましい。これらの処理により、含硫黄化合物、含窒素化合物等の水素化異性化触媒の活性低下をもたらす物質、及び芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素等の潤滑油基油の粘度指数を低下する物質を低減あるいは除去することができる。
【0076】
このような原料油を、水素存在下、上記水素化異性化触媒と接触させることにより、原料油中に含まれるノルマルパラフィンの異性化、すなわち原料油の脱蝋反応を、軽質化を十分に抑制しつつ進行させることができる。また、本実施形態の脱蝋工程によれば、分岐鎖構造を有する異性体を多く含む基油を得ることができる。特に、高品質の潤滑油基油に対しては、ノルマルパラフィン含有量が0.1質量%以下であること要求されるが、本実施形態に係る製造方法によれば、この要求レベルを満たす潤滑油基油を高収率で得ることができる。
【0077】
脱蝋工程における水素化異性化反応の反応温度は、200〜450℃が好ましく、220〜400℃がより好ましい。反応温度が200℃を下回る場合、原料油中に含まれるノルマルパラフィンの異性化が進行しにくくなり、ワックス成分の低減、除去が不十分になる傾向にある。一方、反応温度が450℃を超える場合、炭化水素油の分解が顕著となり、目的とする炭化水素の収率が低下する傾向にある。
【0078】
水素化異性化反応の反応圧力は、0.1〜20MPaが好ましく、0.5〜15MPaが寄り好ましい。反応圧力が0.1MPaを下回る場合、コーク生成による触媒の劣化が早まる傾向にある。一方、反応圧力が20MPaを超える場合、装置建設コストが高くなるため経済的なプロセスを実現しにくくなる傾向にある。
【0079】
原料油の触媒に対する液空間速度は、0.01〜100h
−1が好ましく、0.1〜50h
−1がより好ましい。液空間速度が0.01h
−1未満の場合、原料油の分解が過度に進行しやすくなり、目的とする潤滑油基油の生産効率が低下する傾向にある。一方、液空間速度が100h
−1を超える場合、原料油中に含まれるノルマルパラフィンの異性化が進行しにくくなり、ワックス成分の低減、除去が不十分になる傾向にある。
【0080】
水素と原料油との供給比率は、100〜1000Nm
3/m
3が好ましく、200〜800Nm
3/m
3がより好ましい。供給比率が100Nm
3/m
3未満の場合、例えば原料油が硫黄、窒素化合物を含む場合、異性化反応と併発する脱硫、脱窒素反応により発生する硫化水素、アンモニアガスが触媒上の活性金属を吸着被毒するため、所定の触媒性能が得られにくくなる傾向にある。一方、供給比率が1000Nm
3/m
3を超える場合、大きな能力の水素供給設備を必要とするため経済的なプロセスを実現しにくくなる傾向にある。
【0081】
脱蝋工程においては、通常、例えば反応温度を高めることにより、ノルマルパラフィンの転化率を上昇させることができ、得られる脱蝋油中のノルマルパラフィン含有量を低くすることができるので、炭化水素油の低温流動性を向上させることができる。しかし、反応温度を高めると、原料油及び異性化生成物の分解反応が促進されるので、ノルマルパラフィンの転化率の上昇とともに軽質留分が増加する。この軽質留分の増加は、炭化水素油の粘度指数を低下させる原因となることから、潤滑油基油としての性能を所定の範囲に収めるためには、蒸留等によりこの軽質留分を分離、除去する必要がある。特に、米国石油協会(API(American Petroleum Institute))の潤滑油グレードの分類によるグループII(粘度指数80以上120未満、かつ、飽和分90質量%以上、かつ、硫黄分含有量0.03質量%以下)、グループIII(粘度指数120以上、かつ、飽和分90質量%以上、かつ、硫黄分含有量0.03質量%以下)およびグループIII+(粘度指数140以上、かつ、飽和分90質量%以上、かつ、硫黄分含有量0.03質量%以下)等の高性能の潤滑油基油を原料油の異性化脱蝋によって製造する場合には、原料油中のノルマルパラフィン転化率を実質的に100%とする必要がある。従来の異性化脱蝋用触媒を用いた潤滑油基油の製造方法では、ノルマルパラフィン転化率を実質的に100%とする条件では、上記高性能の潤滑油基油の収率は極端に低いものとなる。これに対して、本実施形態に係る潤滑油基油の製造方法によれば、ノルマルパラフィン転化率を実質的に100%となる条件で水素化異性化を行った場合であっても、上記高性能の潤滑油基油の収率を高水準に維持することができる。
【0082】
本実施形態に係る潤滑油基油の製造方法を実施するための設備については特に限定されず、公知のものを使用することができる。反応設備としては、連続流通式、回分式、半回分式のいずれであってもよいが、生産性、効率の観点から連続流通式が好ましい。触媒層は、固定床、流動床、攪拌床のいずれであってもよいが、設備費用等の面から固定床が好ましい。反応相は気液混相であることが好ましい。
【0083】
本実施形態に係る潤滑油基油の製造方法においては、脱蝋工程の前段階として、供給原料の炭化水素油を水素化処理又は水素分解処理してもよい。その設備、触媒、反応条件は公知のものが使用される。これらの前処理を実施することにより、水素化異性化触媒の活性をより長期間に亘って維持することができ、また、生成物中の含硫黄及び含窒素化合物などの環境負荷物質を低減することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る潤滑油基油の製造方法においては、原料油を水素化異性化触媒に接触させる異性化脱蝋を経て得られる反応生成物(脱蝋油)を、例えば水素化仕上げ(hydrofinishing)によって、更に処理することができる。水素化仕上げは、一般的に、水素存在下、担持金属水素化触媒(例えば、白金および/またはパラジウムが担持されたアルミナ等)に被仕上げ物を接触させることにより実施できる。このような水素化仕上げを行うことにより、脱蝋工程で得られた反応生成物の色相、酸化安定性等が改良され、製品の品質を向上させることができる。水素化仕上げは、上記脱蝋工程とは別の反応設備において実施してもよいが、脱蝋工程を行う反応器内に設けられた水素化異性化触媒の触媒層の下流側に水素化仕上げ用の触媒層を設けて、上記脱蝋工程に続けて行ってもよい。水素化仕上げは、水素化精製とも呼ばれ、以下、水素化仕上げ工程は水素化精製工程と称する。
【0085】
本実施形態において原料油は、所望の潤滑油基油に相当する留分以外の留分を含有するため、本実施形態に係る潤滑油基油の製造方法は、所定の沸点範囲を有する基油留分を分留する蒸留工程を備えることが好ましい。
【0086】
本実施形態に係る潤滑油基油の製造方法は、脱蝋工程で得られた脱蝋油を水素化精製して水素化精製油を得る水素化精製工程と、水素化精製工程で得られた水素化精製油から、所定の沸点範囲を有する基油留分を分留する蒸留工程と、を更に備えるものであってよい。
【0087】
また、本実施形態に係る潤滑油基油の製造方法は、第1の工程で得られた脱蝋油から、所定の沸点範囲を有する基油留分を分留する蒸留工程と、蒸留工程で分留された基油留分を水素化精製する水素化精製工程と、を更に備えるものであってもよい。
【0088】
なお、通常、異性化とは炭素数(分子量)が変化することなく、分子構造のみ変化する反応をいい、分解とは炭素数(分子量)の低下を伴う反応をいう。異性化反応を利用した異性化脱蝋においては、原料の炭化水素油及び異性化生成物の分解がある程度起きても、その生成物の炭素数(分子量)が、目的とする基油を構成することが許容される所定の範囲内に収まればよく、分解生成物が基油の構成成分となっていてもよい。
【0089】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0091】
(製造例1:水素化異性化触媒A−1の調製)
<ZSM−22ゼオライトの製造>
有機テンプレートを含有し、Si/Al比が45であり、結晶性アルミノシリケートからなるZSM−22ゼオライトを、以下の手順で合成した。以下では、ZSM−22ゼオライトを「ZSM−22」と記す。
【0092】
まず、下記の4種類の水溶液を調製した。
溶液A:1.94gの水酸化カリウムを6.75mLのイオン交換水に溶解したもの。
溶液B:1.33gの硫酸アルミニウム18水塩を5mLのイオン交換水に溶解したもの。
溶液C:4.18gの1,6−ヘキサンジアミン(有機テンプレート)を32.5mLのイオン交換水にて希釈したもの。
溶液D:18gのコロイダルシリカ(Grace Davison社製Ludox AS−40)を31mLのイオン交換水にて希釈したもの。
【0093】
次に、溶液Aを溶液Bに加え、アルミニウム成分が完全に溶解するまで攪拌を行った。
この混合溶液に溶液Cを加えた後、室温にて激しく攪拌しながら、溶液A、B、Cの混合物を溶液Dに注入した。更に、ここへ結晶化を促進する「種結晶」として、別途合成され、合成後に何ら特別な処理が行われていないZSM−22の粉末を0.25g添加し、ゲル状物を得た。
【0094】
上記の操作にて得たゲル状物を、内容積120mLのステンレス鋼製オートクレーブ反応器に移し、150℃のオーブン中で60時間、約60rpmの回転速度でオートクレーブ反応器をタンブリング装置上で回転させ、水熱合成反応を行った。反応終了後、反応器を冷却後開放し、60℃の乾燥器中で一夜乾燥して、Si/Al比が45であるZSM−22を得た。
【0095】
<有機テンプレートを含有するZSM−22のイオン交換>
上記で得られたZSM−22について、以下の操作によりアンモニウムイオンを含む水溶液でイオン交換処理を行った。
【0096】
上記にて得られたZSM−22をフラスコ中に取り、ZSM−22ゼオライト1g当り100mLの0.5N−塩化アンモニウム水溶液を加え、6時間加熱環流した。これを室温まで冷却した後、上澄み液を除去し、結晶性アルミノシリケートをイオン交換水で洗浄した。ここに、上記と同量の0.5N−塩化アンモニウム水溶液を再び加え、12時間加熱環流した。
【0097】
その後、固形分をろ過により採取し、イオン交換水で洗浄し、60℃の乾燥器中で一晩乾燥して、イオン交換されたNH
4型ZSM−22を得た。このZSM−22は、有機テンプレートを含んだ状態でイオン交換されたものである。
【0098】
<バインダー配合、成型、焼成>
上記で得たNH
4型ZSM−22と、バインダーであるアルミナとを質量比7:3にて混合し、ここに少量のイオン交換水を添加して混錬した。得られた粘ちょうな流体を押出成型機に充填、成型し、直径約1.6mm、長さ約10mmの円筒状の成型体を得た。この成型体を、N
2雰囲気下、300℃にて3時間加熱して、担体前駆体を得た。
【0099】
<白金担持、焼成>
テトラアンミンジニトロ白金[Pt(NH
3)
4](NO
3)
2を、担体前駆体のあらかじめ測定した吸水量に相当するイオン交換水に溶解して含浸溶液を得た。この溶液を、上記の担体前駆体に初期湿潤法により含浸し、ZSM−22型ゼオライトの質量に対して、0.3質量%の白金量となるように担持を行った。次に、得られた含浸物(触媒前駆体)を60℃の乾燥中で一晩乾燥した後、空気流通下、400℃で3時間焼成して、カーボン量が0.56質量%である水素化異性化触媒A−1を得た。なお、カーボン量は酸素気流中燃焼―赤外線吸収法で測定した。測定には、堀場製作所製 EMIA−920Vを使用した。
【0100】
更に、得られた水素化異性化触媒の単位質量当りのミクロ細孔容積を以下の方法で算出した。まず、水素化異性化触媒に吸着した水分を除去するため、150℃、5時間の真空排気する前処理を行った。この前処理後の水素化異性化触媒について、日本ベル(株)社製 BELSORP−maxを使用して液体窒素温度(−196℃)で窒素吸着測定を行った。そして、測定された窒素の吸着等温線をt−plot法にて解析し、水素化異性化触媒の単位質量当りのミクロ細孔容積(cc/g)を算出したところ、0.055となった。
【0101】
更に、触媒に含有されるゼオライトの単位質量当りのミクロ細孔容積V
Zを下記式に従って算出したところ0.079となった。なお、バインダーとして用いたアルミナについて上記と同様に窒素吸着測定を行ったところ、アルミナがミクロ細孔を有さないことが確認された。
V
Z=V
c/M
z×100
式中、V
cは水素化異性化触媒の単位質量当りのミクロ細孔容積を示し、M
zは触媒に含有されるゼオライトの含有割合(質量%)を示す。
【0102】
(製造例2:水素化異性化触媒A−2の調製)
製造例1におけるZSM−22を得る工程までは同様にして、その後、上記で得たZSM−22と、バインダーであるアルミナとを質量比7:3にて混合し、ここに少量のイオン交換水を添加して混錬した。得られた粘ちょうな流体を押出成型機に充填、成型し、直径約1.6mm、長さ約10mmの円筒状の成型体を得た。この成型体を、空気雰囲気下、400℃にて3時間加熱して、成形体ZSM−22を得た。
【0103】
<成形体ZSM−22のイオン交換>
上記で得られた成形体ZSM−22について、以下の操作によりアンモニウムイオンを含む水溶液でイオン交換処理を行った。
【0104】
上記にて得られたZSM−22をフラスコ中に取り、ZSM−22ゼオライト1g当り100mLの0.5N−塩化アンモニウム水溶液を加え、6時間加熱環流した。これを室温まで冷却した後、上澄み液を除去し、結晶性アルミノシリケートをイオン交換水で洗浄した。ここに、上記と同量の0.5N−塩化アンモニウム水溶液を再び加え、12時間加熱環流した。
【0105】
その後、固形分をろ過により採取し、イオン交換水で洗浄し、60℃の乾燥器中で一晩乾燥して、イオン交換されたNH
4型ZSM−22を得た。
【0106】
<白金担持、焼成>
テトラアンミンジニトロ白金[Pt(NH
3)
4](NO
3)
2を、担体前駆体のあらかじめ測定した吸水量に相当するイオン交換水に溶解して含浸溶液を得た。この溶液を、上記の担体前駆体に初期湿潤法により含浸し、ZSM−22ゼオライトの質量に対して、0.3質量%の白金量となるように担持を行った。次に、得られた含浸物(触媒前駆体)を60℃の乾燥中で一晩乾燥した後、空気流通下、400℃で3時間焼成して、カーボン量が0.24質量%である水素化異性化触媒A−2を得た。
【0107】
水素化異性化触媒A−2の単位質量当りのミクロ細孔容積、触媒に含有されるゼオライトの単位質量当りのミクロ細孔容積を水素化異性化触媒A−1と同様の方法で算出したところ、それぞれ、0.132(cc/g)、0.189(cc/g)となった。
【0108】
(実施例1)
沸点範囲520〜620℃の留分の含有率が20容量%である沸点範囲330〜620℃のスラックスワックスを、異性化反応温度322℃、水素圧15MPa、水素/油比500NL/L、液空間速度1.5h
−1の条件で異性化脱蝋した。水素化異性化触媒には、上記の水素化異性化触媒A−1を使用した。なお、反応温度は、転化率が実質的に100%になる温度である。生成油中、主目的留分である沸点範囲520〜620℃の留分の含有量は15容量%(スラックスワックスにおける該当留分に対する収率は80%)であった。
【0109】
(実施例2)
沸点範囲470〜520℃の留分の含有率が40容量%である沸点範囲330〜520℃のスラックワックスを、異性化反応温度325℃、水素圧15MPa、水素/油比500NL/L、液空間速度1.5h
−1の条件で異性化脱蝋した。水素化異性化触媒には、上記の水素化異性化触媒A−1を使用した。なお、反応温度は、転化率が実質的に100%になる温度である。生成油中、主目的留分である沸点範囲470〜520℃の収率は32容量%(スラックスワックスにおける該当留分に対する収率は80%)であった。
【0110】
(実施例3)
沸点範囲520〜620℃の留分の含有率が60容量%である沸点範囲330〜620℃のFT合成ワックスを、異性化反応温度333℃、水素圧15MPa、水素/油比500NL/L、液空間速度1.5h
−1の条件で異性化脱蝋した。水素化異性化触媒には、上記の水素化異性化触媒A−1を使用した。なお、反応温度は、転化率が実質的に100%になる温度である。生成油中、主目的留分である沸点範囲520〜620℃の収率は46容量%(FT合成ワックスにおける該当留分に対する収率は77%)であった。
【0111】
(実施例4)
沸点範囲470〜520℃の留分の含有率が15容量%である沸点範囲330〜520℃のFT合成ワックスを、異性化反応温度320℃、水素圧15MPa、水素/油比500NL/L、液空間速度1.5h
−1の条件で異性化脱蝋した。水素化異性化触媒には、上記の水素化異性化触媒A−1を使用した。なお、反応温度は、転化率が実質的に100%になる温度である。生成油中、主目的留分である沸点範囲470〜520℃の収率は12容量%(FT合成ワックスにおける該当留分に対する収率は80%)であった。
【0112】
(比較例1)
沸点範囲520〜620℃の留分の含有率が20容量%である沸点範囲330〜620℃のスラックワックスを、異性化反応温度332℃、水素圧15MPa、水素/油比500NL/L、液空間速度1.5h
−1にて異性化脱蝋した。水素化異性化触媒には、上記の水素化異性化触媒A−2を使用した。なお、反応温度は、転化率が実質的に100%になる温度である。生成油中、主目的留分である沸点範囲520〜620℃の留分の収率13容量%(スラックスワックスにおける該当留分に対する収率は65%)であった。
【0113】
(比較例2)
沸点範囲470〜520℃の留分の含有率が40容量%である沸点範囲330〜520℃のスラックワックスを、異性化反応温度334℃、水素圧15MPa、水素/油比500NL/L、液空間速度1.5h
−1にて異性化脱蝋した。水素化異性化触媒には、上記の水素化異性化触媒A−2を使用した。生成物中、主目的留分である沸点範囲470〜520℃の収率は27容量%(スラックスワックスにおける該当留分に対する収率は68%)であった。
【0114】
(比較例3)
沸点範囲520〜620℃のスラックワックスを、異性化反応温度342℃、水素圧15MPa、水素/油比500NL/L、液空間速度1.5h
−1にて異性化脱蝋した。水素化異性化触媒には、上記の水素化異性化触媒A−2を使用した。なお、反応温度は、転化率が実質的に100%になる温度である。生成油中、主目的留分である沸点範囲520〜620℃の収率は50容量%であった。
【0115】
(比較例4)
沸点範囲470〜520℃のスラックワックスを、異性化反応温度335℃、水素圧15MPa、水素/油比500NL/L、液空間速度1.5h
−1にて異性化脱蝋した。水素化異性化触媒には、上記の水素化異性化触媒A−2を使用した。なお、反応温度は、転化率が実質的に100%になる温度である。生成油中、主目的留分である沸点範囲470〜520℃の収率は52容量%であった。
【0116】
(比較例5)
沸点範囲520〜620℃の留分の含有率が60容量%である沸点範囲330〜620℃のFT合成ワックスを、異性化反応温度342℃、水素圧15MPa、水素/油比500NL/L、液空間速度1.5h
−1にて異性化脱蝋した。水素化異性化触媒には、上記の水素化異性化触媒A−2を使用した。なお、反応温度は、転化率が実質的に100%になる温度である。生成油中、主目的留分である沸点範囲520〜620℃の留分の収率38容量%(FT合成ワックスにおける該当留分に対する収率は63%)であった。
【0117】
(比較例6)
沸点範囲470〜520℃の留分の含有率が15容量%である沸点範囲330〜520℃のFT合成ワックスを、異性化反応温度328℃、水素圧15MPa、水素/油比500NL/L、液空間速度1.5h
−1にて異性化脱蝋した。水素化異性化触媒には、上記の水素化異性化触媒A−2を使用した。生成物中、主目的留分である沸点範囲470〜520℃の収率は10容量%(FT合成ワックスにおける該当留分に対する収率は67%)であった。
【0118】
(比較例7)
沸点範囲520〜620℃のFT合成ワックスを、異性化反応温度345℃、水素圧15MPa、水素/油比500NL/L、液空間速度1.5h
−1にて異性化脱蝋した。水素化異性化触媒には、上記の水素化異性化触媒A−2を使用した。なお、反応温度は、転化率が実質的に100%になる温度である。生成油中、主目的留分である沸点範囲520〜620℃の収率は48容量%であった。
【0119】
(比較例8)
沸点範囲470〜520℃のFT合成ワックスを、異性化反応温度330℃、水素圧15MPa、水素/油比500NL/L、液空間速度1.5h
−1にて異性化脱蝋した。水素化異性化触媒には、上記の水素化異性化触媒A−2を使用した。なお、反応温度は、転化率が実質的に100%になる温度である。生成油中、主目的留分である沸点範囲470〜520℃の収率は50容量%であった。
【0120】
主目的留分と主目的留分より軽質な留分を含有する炭化水素油を所定の性状を有する触媒で異性化脱蝋処理を行った実施例1〜4は、所定の触媒を用いなかった、あるいは主目的留分と軽質な留分を予め分留してそれぞれについて異性化脱蝋処理を行った比較例1〜8に比べて、主目的留分を高い収率で得られることが確認された。