【文献】
J Surg Res. 2007 Dec;143(2):281-5
【文献】
Am J Respir Crit Care Med. 2009 Dec 1;180(11):1122-30
【文献】
BONFIELD TRACEY L,ADULT MESENCHYMAL STEM CELLS: AN INNOVATIVE THERAPEUTIC FOR LUNG DISEASES,DISCOVERY MEDICINE [ONLINE],2010年 4月15日,URL,http://www.discoverymedicine.com/Tracey-L-Bonfield/2010/04/15/adult-mesenchymal-stem-cells-an-innovative-therapeutic-for-lung-diseases/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】BM-MSCからの分泌因子は抗炎症性である。低酸素により誘導される肺におけるマクロファージの浸潤に対するBM-MSC-CMの効果(A)。ビヒクルまたはBM-MSC-CMまたはMLF-CMのいずれかを注射されたマウス(n>8)を、低酸素(8.5%のO
2)に48時間暴露し、低酸素のマウスならびに週齢が一致する正常酸素圧の対照マウスからのBALFを回収した。BALF中の肺胞マクロファージの数を、Kimura染色により計数した。低酸素マウスおよび正常酸素圧の対照マウスからのセルフリーBALF中のタンパク質の比較イムノブロット分析(B)。同群(n>8)中の個々のマウスからのセルフリーBALFの等容積をプールして、プールされたBALFの等容積からのタンパク質を、MCP-1(上)およびHIMF/FIZZ1(下)について特異的な抗体を用いるウェスタンブロットにより分析した。MCP-1およびHIMFの相対的強度を、同じブロットからのIgAシグナルに対する正規化により表わした。
【0017】
【
図2】セルフリーのBM-MSC-条件培地からのエキソソームの単離。BM-MSC-CMまたはMLF-CM中のエキソソームを、限外濾過および分子ふるい(size-exclusion)クロマトグラフィーにより単離した。BM-MSC-CM中のタンパク質の1.6%(w/w)は、エキソソームに関連し、分子ふるいクロマトグラフィーからの画分中のエキソソームを、電子顕微鏡法により可視化した(A−D)。BM-MSC-CMからのエキソソームの単離を検証するために、カラムのボイド容量(v
e=v
o)における画分(A)、およびボイド容量と全容量との間の画分(v
o,<v
e<v
t)(B)を、30,000倍の拡大率におけるネガティブ染色電子顕微鏡法により分析した。BM-MSC-CM(C)またはMLF-CM(D)から単離されたエキソソームの形態およびサイズ分布は同一であった。エキソソームに関連するタンパク質のウェスタンブロット分析(E−F)。各サンプル中の3μgのタンパク質を、CD63、14-3-3s、モエシン、マクロファージコロニー刺激因子(mCSF)、オステオポンチン(OPN)およびダイサーに対する抗体を用いるウェスタンブロットにおいてアッセイした。陽性対照のために、BM-MSCのホールセルライセートの35ugのタンパク質を用いた。
【0018】
【
図3】MEXは、低酸素により誘導される急性肺炎症を抑制する。ビヒクルまたはMEX、またはBM-MSC-CMもしくはFEXのエキソソームフリー画分のいずれかを注射されたマウス(n>7)を、低酸素(8.5%のO
2)に48時間暴露し、低酸素のマウスおよび週齢が一致する正常酸素圧のマウスのBALFを回収した。各マウスからのBALF中の肺胞マクロファージの数を、Kimura染色により計数した(A)。低酸素マウスおよび正常酸素圧の対照マウスからのセルフリーBALF中のタンパク質の比較イムノブロット分析(B)。同群(n>7)中の個々のマウスからのセルフリーBALFの等容積をプールして、プールされたBALFの等容積からのタンパク質を、MCP-1(上)およびHIMF/FIZZ1(下)について特異的な抗体を用いるウェスタンブロットにより分析した。MCP-1およびHIMFの相対的レベルを、同じブロットからのIgAシグナルに対する正規化により表わす。
【0019】
【
図4】MEXの単回および複数回投与による低酸素誘導性肺炎症に対する時間経過的効果。第0日においてビヒクル(A)またはMEX(B)のいずれかを注射されたマウスを、示される期間にわたり、低酸素(8.5%のO
2)に暴露した。複数回注射実験について、第0日においてMEXを投与したマウスを、低酸素に対して4日間暴露した。第4日における同じ用量のMEXの2回目の注射の後で、示される日数にわたり低酸素へさらに暴露した(C)。低酸素条件付けの選択される時間においてBALFを回収し、個々のマウスからのBALF中の肺胞マクロファージの数を計数した。同群(n>7)中の個々のマウスからのセルフリーBALFの等容積をプールして、プールされたBALFの10%(v/v)からのタンパク質を、MCP-1およびHIMFについて特異的な抗体を用いるウェスタンブロットにより分析した(D)。
【0020】
【
図5】MEXは、低酸素により誘導されるPAHを抑制する。マウス(n>7)に、ビヒクル(第0日および第4日において)またはMEX(第0日および/または第4日において)、またはFEX(第0日および第4日において)のいずれかを、1回または2回注射し、低酸素(8.5%のO
2)に3週間の期間暴露した(A)。低酸素および正常酸素圧の対照マウスのRVSP(B)およびフルトン係数(C)を実験期間の終了時に測定した。各々の群において無作為に選択されたマウス(n=4)からのパラフィン包埋肺切片を、α-SMAについて免疫染色して肺細動脈壁を強調した(D)。画像についての元の拡大率:400×。各群からの直径20〜30μmの小さい肺細動脈を選択して、血管壁の厚みを測定し、これを全血管面積のパーセンテージとして表わした。データを、平均値±SEM(n=40〜50細動脈/群)として表わした。
【0021】
【
図6】MSC由来エキソソームの精製。エキソソームを、セファクリルS-400ゲル濾過カラムクロマトグラフィーにより精製した。負に荷電した蛍光の50nmナノ粒子を、S-400カラムに適用し、エキソソーム精製と同一の条件により溶出した(A)。エキソソーム精製から、各分画の同等の容積を、10%の変性ポリアクリルアミドゲル(B)および1.2%アガロースゲル電気泳動(C)の両方において分離した。アガロースゲルについてのブロットを、抗CD81抗体で染色した(D)。
【0022】
【
図7】MSC由来エキソソームおよびエキソソームフリー画分の比較生化学分析。エキソソーム画分(M)およびエキソソームフリー画分(MF)の両方のプールにおける同等のタンパク質量を、変性1.2%ポリアクリルアミドゲル上で分離した(A)。エキソソーム画分およびエキソソームフリー画分の両方のプールにおける同等のタンパク質量ならびに50nmナノ粒子を0.5%SDSの不在(左、B)または存在(右、B)下においてロードした1.2%アガロースゲルを、コロイダルブルーで染色した。エキソソーム画分およびエキソソームフリー画分の両方のプールにおける同等のタンパク質量をロードした1.2%アガロースゲルを、核酸については臭化エチジウムで(左、C)、タンパク質についてはコロイダルブルーで(右、C)染色した。エキソソーム画分およびエキソソームフリー画分の両方のプールにおける同等のタンパク質量をロードして1.2%アガロースゲルおよび12%変性ポリアクリルアミドゲルの両方において分離したゲルについてのブロットを、抗CD81および抗SPP-1抗体で免疫染色した(D)。M、エキソソーム画分のプール;MF、エキソソームフリー画分のプール;N、負に荷電した蛍光の50nmナノ粒子。
【0023】
【
図8】低酸素により誘導される肺におけるHIMF/FIZZ-1/Retnlαの分泌。マウスを、示された期間にわたり常圧の低酸素(8.5%のO
2)に暴露した。同群中の各々の個々のマウスからの容積(A)および量(B)により正規化されたBAL中のタンパク質をプールし、14%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。HIMF、リゾチームおよびIgAのレベルを、特異的抗体を用いるウェスタンブロット分析により評価した。
【0024】
【
図9】MSC由来エキソソームは、低酸素により誘導される肺におけるHIMF/FIZZ-1/Retnlαの分泌を抑制する。10μgのMEX(M)またはビヒクル(V)のいずれかを尾静脈から注射されたマウスを、示された期間にわたり常圧の低酸素(8.5%のO
2)に暴露した。同群中の各々の個々のマウスからの容積(A)および量(B)により正規化されたBAL中のタンパク質をプールし、14%ポリアクリルアミドゲル電気泳動において分離した。HIMF、リゾチームおよびIgAのレベルを、特異的抗体を用いるウェスタンブロット分析により評価した。
【0025】
【
図10】MSC由来エキソソームは、低酸素により誘導される肺におけるHIMF/FIZZ-1/Retnlαの分泌を抑制する。10μgのMEX(M)またはビヒクル(V)のいずれかを尾静脈から注射されたマウスを、示された期間にわたり常圧の低酸素(8.5%のO
2)に暴露した。各々の個々のマウスからの10μgのBALタンパク質を、14%ポリアクリルアミドゲル電気泳動において分離した(A、B)。同群中の各々の個々のマウスからの量により正規化されたBAL中のタンパク質をプールし、14%ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離した(C)。HIMF、リゾチームおよびIgAのレベルを、特異的抗体を用いるウェスタンブロット分析により評価した。
【0026】
【
図11】MSC由来エキソソームは、低酸素により誘導される肺組織におけるHIF2αの上方調節を抑制する。10μgのMEXまたはビヒクルのいずれかを尾静脈から注射されたマウスを、示された期間にわたり常圧の低酸素(8.5%のO
2)に暴露した。個々の肺組織ホモジェネートからの等量のタンパク質を、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動において分離した。HIF2αおよびアクチンのレベルを、特異的抗体を用いるウェスタンブロット分析により検出した。(A、B)。HIF2α/アクチンについての相対的強度を、濃度測定分析により評価した(C)。**,正常酸素圧に対してp<0.01(n=4±SD、One-way ANOVA);##,ビヒクルに対してp<0.01(低酸素、2日間)(n=4±SD、One-way ANOVA)。
【0027】
【
図12】MSC由来エキソソームは、低酸素により誘導される肺組織におけるNFkB p65の活性化を抑制する。10μgのMEXまたはビヒクルのいずれかを尾静脈から注射されたマウスを、示された期間にわたり常圧の低酸素(8.5%のO
2)に暴露した。個々の肺組織ホモジェネートからの等量のタンパク質を、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動において分離した。p65、リン酸化p65(S536)、およびアクチンのレベルを、特異的抗体を用いるウェスタンブロット分析により検出した。(A、B)。P-p65/アクチンについての相対的強度を、濃度測定分析により評価した(C)。*,正常酸素圧に対してp<0.05(n=4±SD、One-way ANOVA);##,ビヒクルに対してp<0.001(低酸素、2日間)(n=4±SD、One-way ANOVA)。
【0028】
【
図13】MSC由来エキソソームは、低酸素により誘導される肺組織におけるSTAT3の活性化を抑制する。10μgのMEXまたはビヒクルのいずれかを尾静脈から注射されたマウスを、常圧の低酸素(8.5%のO
2)に2日間暴露した。個々の肺組織ホモジェネートからの等量のタンパク質を、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動において分離した。STAT3、リン酸化STAT3(Y705)およびアクチンのレベルを、特異的抗体を用いるウェスタンブロット分析により検出した(A)。P-STAT3/STAT3についての相対的強度を、濃度測定分析により評価した(B)。**,正常酸素圧に対してp<0.01(n=4±SD、One-way ANOVA);##,ビヒクルに対してp<0.001(n=4±SD、One-way ANOVA)。
【0029】
【
図14】MSC由来エキソソームは、低酸素により誘導される肺組織におけるSTAT3の活性化を抑制する。10μgのMEXまたはビヒクルのいずれかを注射されたマウスを、示された期間にわたり、常圧の低酸素(8.5%のO
2)に暴露した。個々の肺組織ホモジェネートからの等量のタンパク質を、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動において分離した。リン酸化STAT3(Y705)およびアクチンのレベルを、特異的抗体を用いるウェスタンブロット分析により検出した(A、B)。P-STAT3/アクチンについての相対的強度を、濃度測定分析により評価した(C)。***,正常酸素圧もしくはビヒクル(低酸素、7日間)、またはMEX(低酸素、2および7日間)に対して、p<0.001(n=4±SD、One-way ANOVA);###,ビヒクルに対してp<0.001(低酸素、2日間)(n=4±SD、One-way ANOVA);正常酸素圧・対・MEX(低酸素、2日間)の間に有意差なし(n=4±SD、One-way ANOVA)。
【0030】
【
図15】MSC由来エキソソームは、低酸素により誘導される肺組織におけるHIMFの上方調節を抑制する。10μgのMEXまたはビヒクルのいずれかを注射されたマウスを、常圧の低酸素(8.5%のO
2)に7日間暴露した。個々の肺組織ホモジェネートからの等量のタンパク質を、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動において分離した。HIMFおよびアクチンのレベルを、特異的抗体を用いるウェスタンブロット分析により検出した(A)。HIMF/アクチンについての相対的強度を、濃度測定分析により評価した(B)。**,正常酸素圧に対してp<0.01(n=4±SD、One-way ANOVA);#,ビヒクルに対してp<0.05(n=4±SD、One-way ANOVA);MEX・対・正常酸素圧の間に統計学的有意差なし(n=4±SD、One-way ANOVA)。
【0031】
【
図16】MSC由来エキソソームは、低酸素により誘導される肺組織におけるHIMFの上方調節を抑制する。10μgのMEXまたはビヒクルのいずれかを注射されたマウスを、示された期間にわたり常圧の低酸素(8.5%のO
2)に暴露した。個々の肺組織ホモジェネートからの等量のタンパク質を、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動において分離した。HIMFおよびアクチンのレベルを、特異的抗体を用いるウェスタンブロット分析により検出した。(A、B)。HIMF/アクチンについての相対的強度を、濃度測定分析により評価した(C、D)。***,正常酸素圧に対してp<0.001(n=4±SD、One-way ANOVA);**,正常酸素圧に対してp<0.01(n=4±SD、One-way ANOVA);#,ビヒクルに対してp<0.05(n=4±SD、One-way ANOVA)。
【0032】
【
図17】MSC由来エキソソームは、慢性低酸素により誘導される右心肥大を保護する。示された期間において10μgのMEXまたはビヒクルのいずれかを注射されたマウスを、常圧の低酸素(8.5%のO
2)に週間暴露した(A)。個々のマウスからの心臓を処理して、RV/(LV+S)の比を測定した(B)。***,正常酸素圧に対してp<0.001(n=9、One-way ANOVA);###,ビヒクルに対してp<0.001(n=11、One-way ANOVA);MEXと正常酸素圧の間に統計学的有意差なし(One-way ANOVA)。
【0033】
【
図18】FPLC(高速タンパク質液体クロマトグラフィー)によるMSCエキソソーム精製の高解像度プロフィール。上パネル:MSCエキソソーム精製の高速タンパク質液体クロマトグラフィー。マトリックス:HiPrep Sephracyl S-400。移動相:リン酸緩衝化食塩水、300mM。流速:0.5ml/分。濃縮した条件培地をカラムに適用し、溶出したタンパク質をA280によりモニタリングした。単離されたMSCエキソソーム(MEX)は、65.5mlにおいて溶出した。直径50nmのナノ粒子の分子サイズ標準物をMSCエキソソームと共に溶出させた。下パネル:溶出物の画分を、未変性ポリアクリルアミド電気泳動ゲルに適用し、その後、全タンパク質について染色した。MEX画分は、高MW形態として移動し、これは条件培地中のタンパク質総体から区別し得た。
【0034】
【
図19】マウスまたはヒトのいずれかに由来するMEXは、低酸素によるSTAT3の活性化を抑制する。(A)10μgのMEX調製物で処置した、個々の動物の肺からの全タンパク質抽出物。右パネル:2日間にわたる低酸素暴露は、マウス肺におけるTyr-705(pY-STAT3)におけるリン酸化を通したSTAT3の活性化をもたらし、これは、マウス由来のMEXによる処置により予防された。右パネル:STAT3活性化の定量化。全群について、n=4、One-way ANOVA:**,正常酸素圧に対してp<0.01。**,PBSに対してp<0.01。(B)低酸素(1%O
2、5時間)に暴露されたヒト肺動脈内皮細胞(hPAEC)は、強力なSTAT3の活性化を示し、これは、ヒト臍帯間質からのMSC(hUC-MEX)により分泌されるMEXの存在下において効率的に抑制される。hUC-MSC(hUC-ExD-CM)により条件づけられた培地の微小胞枯渇画分は、STAT3活性化に対して何ら効果を有さない。
【0035】
【
図20】MEX処置は、肺において、低酸素によるmiR-17 microRNAスーパーファミリーの誘導を抑制し、増殖抑制性miR-204のレベルを増大させる。10μgのMEX調製物により処置された動物からの全マウス肺におけるmicroRNAのレベル。7日間の低酸素暴露におけるqPCRによりmiRレベルを評価し、正常酸素圧群の平均値に相対的に表わした。(A)miR-17〜92、miR-106b〜25およびmiR-106a〜363のクラスターを表わすmiRを選択する。(B)低酸素シグナリングに関与すると報告されているmiRを選択する。(C)MEX処置による肺細動脈特異的miR-204の基底レベルの上方調節。ドットは、個々の動物における発現レベルを表わす。NRX:正常酸素圧;HPX:低酸素。全ての群について、n=4、One-way ANOVA:**,p<0.01;¶,正常酸素圧に対してp<0.001。§,PBSに対して、p<0.001。
【0036】
【
図21】本発明研究の結果を総合する1つの非限定的な仮説のスキーム。低酸素は、肺における免疫モジュレーターのTh1/Th2バランスをシフトさせ、結果として代替活性肺胞マクロファージ(alternative activated alveolar macrophage:AA-AMΦ)をもたらし、および、初期においては、肺上皮におけるHIMFの発現を誘導する。脈管構造に対するHIMFの分裂促進的作用は、IL-4などのTh2サイトカインを必要とする。増殖へ向かうシフトの結果は、低酸素によるSTAT3シグナリングの活性化、およびmiR-17ファミリーのmicroRNAの上方調節を含む。MEXによる処置は、肺における初期の低酸素シグナルを妨害し、炎症およびHIMF転写の上方調節の両方を抑制する。さらに、MEX処置は、miR-204のレベルを直接的に上方調節し、したがって、STAT3-miR-204-STAT3のフィードフォワードループを破壊し、バランスを抗増殖性の状態へとシフトさせる。
【0037】
【
図22】ヒトワトソン膠様質(WJ)MSCからのエキソソームに対して特異的なマーカー。以下のソースからの50nm画分(E1)のウェスタンブロット分析:UC:条件付けされていないMSC増殖培地。MPD UC:微小粒子枯渇増殖培地。増殖培地中のエキソソームマーカーを、ポリエチレングリコール沈澱により取り除いた。hMEX:WJ MSCからのエキソソーム。hFEX:ヒト皮膚線維芽細胞からのエキソソーム。テトラスパニンCD9およびCD81は、エキソソーム画分において濃縮される。
【0038】
【
図23】mMEXは、マウス肺線維芽細胞における低酸素によるHIF1aの上方調節およびSTAT3のリン酸化を抑制する。マウス肺線維芽細胞を、示されるとおり、マウス骨髄MSC由来エキソソーム(mMEX) の存在下または不在下において、低酸素に暴露した。低酸素誘導性因子(HIF)の安定化およびリン酸化によるSTAT3の活性化(P-STAT3)を、ウェスタンブロットにより決定した。
【0039】
【
図24】マウス骨髄由来MSCからのエキソソーム(mMEX、ug/ml)またはマウス肺線維芽細胞からのエキソソーム(mFEX、1ug/ml)で処理されたhPAECを、1%O
2に6時間暴露した。低酸素によるSTAT3(P-STAT3)の活性化、全STAT3およびHIF2aの安定化を、ウェスタンブロットにより決定した。NRX:正常酸素圧。PBS:低酸素対照。
【0040】
【
図25】ワトソン膠様質MSCからのエキソソーム(hMEX、1ug/ml)またはヒト皮膚線維芽細胞からのエキソソーム(hFEX、1ug/ml)で処理されたヒトPAECを、1%O
2に6時間暴露した。Stat=3の活性化(P-STAT3)および全STAT3を、ウェスタンブロットにより決定した。NRX:正常酸素圧。PBS:低酸素対照。
【発明を実施するための形態】
【0041】
発明の詳細な説明
本発明は、部分的に、間葉系幹細胞に由来するエキソソームが、炎症性肺疾患を非限定的に含む特定の肺疾患に対して治療効果を提供するという驚くべき発見に基づく。
本発明は、広範に、間葉系幹細胞エキソソームまたはMSCエキソソームとしても交換可能に言及される間葉系幹細胞(MSC)由来のエキソソームの組成物、ならびに、炎症性肺疾患を非限定的に含む特定の肺疾患の処置および/または予防におけるそれらの使用に関する。
【0042】
エキソソームおよびエキソソーム調製物
本発明のエキソソームは、間葉系幹細胞から放出される膜(すなわち脂質二重層)小胞である。これらは、約30nm〜100nmの範囲の直径を有する。電子顕微鏡によると、エキソソームは、カップ型の形態を有するものとして観察される。それらは約100,000×gにおいて沈澱し、約1.10〜約1.21g/mlのショ糖中の浮遊密度を有する。エキソソームは、微小胞またはナノ小胞として言及される場合がある。
【0043】
エキソソームは、多数のタンパク質、および/またはmiRNAなどのRNA種を含む核酸を含み得る。エキソソームにおいて発現し得るタンパク質として、Alix、TSG101、CD63、CD9、CD81、モエシン、HSP70、ダイサー、M-CSF、オステオポンチン、および表1中に列記されるタンパク質の1または2以上(上に列記されるタンパク質のいずれかと共に、これらのタンパク質のうちの2、3、4、5、6、7または8の組合せを含む)が挙げられる。一部の態様において、以下に議論される合成エキソソームを含むエキソソームは、miRNA、ダイサー、M-CSF、オステオポンチン、および表1のタンパク質の1または2以上(表1のタンパク質の全てを含む)を含む。
【0044】
本発明の幾つかの側面は、単離されたエキソソームに言及する。本明細書において用いられる場合、単離されたエキソソームは、その天然の環境から物理的に分離されたものである。単離されたエキソソームは、全体においてまたは部分的に、間葉系幹細胞を含むそれが共に天然に存在する組織または細胞から、物理的に分離することができる。本発明の一部の態様において、単離されたエキソソームの組成物は、間葉系幹細胞などの細胞を含まなくともよく、または、条件培地を含まないかこれを実質的に含まなくともよい。一部の態様において、単離されたエキソソームは、未操作の条件培地において存在するエキソソームよりも高い濃度において提供されてもよい。
【0045】
エキソソームは、間葉系幹細胞の培養物からの条件培地から単離することができる。間葉系幹細胞からのエキソソームの収集のための方法は、例において提供される。簡単に述べると、かかる方法は、第1に、間葉系幹細胞を、それらが約70%コンフルエンシーに達するまで標準的な条件下において培養すること、および次いで細胞を無血清培地中で24時間培養すること、およびその後に条件培地を回収して、細胞および細胞デブリを除去するために400×gで10分間および12000×gで10分間、分画遠心法に供することを含む。清澄化された条件培地を、次いで、100kDaのMWCOフィルター(Millipore)を用いる限外濾過により濃縮し、次いで、再度12000×gで10分間遠心分離する。次いで、分子ふるいクロマトグラフィーを用いて、濃縮条件培地をPBS平衡化Chroma S-200カラム(Clontech)にロードし、PBSで溶出させ、350〜550マイクロリットルの画分を収集することにより、エキソソームを単離する。エキソソームを含有する画分を同定して、プールしてもよい。タンパク質濃度を、標準的なブラッドフォードアッセイ(Bio-Rad)を用いて測定する。濃縮されたエキソソーム調製物のアリコートは、−80℃で保存することができる。
【0046】
エキソソームはまた、100,000×gにおける清澄化条件培地の超遠心分離により精製してもよい。それらはまた、ショ糖クッション中への超遠心分離法により精製してもよい。樹状細胞からのエキソソーム精製のためのGMP法は、J Immunol Methods. 2002;270:211-226において記載されている。
【0047】
エキソソームはまた、規定の孔サイズのナイロン膜フィルターを通しての分別濾過(differential filtration)により精製してもよい。大きな孔サイズを通す第1の濾過は、細胞のフラグメントおよびデブリを保持する。その後のより小さい孔サイズを通しての濾過により、エキソソームが保持され、それらをより小さなサイズの混入物から精製する。
【0048】
本発明はまた、本明細書において記載される単離されたMSCエキソソームの特徴の一部または全てを有する合成エキソソームの使用を企図する。これらの合成エキソソームは、(MSCまたはMSC-CMから誘導および単離するよりもむしろ)in vitroで合成する。それらは、表1または
図22において列記されるタンパク質の1または2以上(2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くを含む)を有する合成のリポソームであってもよい。それらは、これらのタンパク質の1または2以上(2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くを含む)をコードする核酸を含んでも含まなくともよい。リポソーム合成は、当該分野において公知であり、リポソームは、市販のソースから購入することができる。MSCまたはMSC-CMから誘導および単離されるエキソソームに関する本明細書において記載される多様な組成物、処方物、方法および使用はまた、合成エキソソームの文脈においても企図されることが理解されるべきである。
【0049】
本発明は、エキソソームの即時使用、または代替的にエキソソームの短期および/または長期保存、例えば使用前に凍結保存状態にあることを企図する。長期保存の間のエキソソームの完全性を提供するので、凍結用溶媒中にプロテイナーゼ阻害剤を典型的に含める。−20℃における保存は、エキソソームの活性の喪失の増大と関連するので、好ましくない。−80℃における急速凍結は、活性を保存するので、より好ましい(例えば、Kidney International (2006) 69, 1471-1476を参照)。エキソソームの生物学的活性の保存を増強するために、凍結用溶媒への添加物を用いてもよい。かかる添加物は、完全な細胞の凍結保存のために用いられるものと同様であり、限定されないが、DMSO、グリセロールおよびポリエチレングリコールを含み得る。
【0051】
間葉系幹細胞
間葉系幹細胞は、神経細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、筋細胞、心臓組織、ならびに他の内皮および上皮細胞へ分化する能力を有する前駆細胞である(例えば、Wang, Stem Cells 2004;22(7);1330-7; McElreavey;1991 Biochem Soc Trans (1);29s; Takechi, Placenta 1993 March/April; 14 (2); 235-45; Takechi, 1993; Kobayashi; Early Human Development;1998; July 10; 51 (3); 223-33; Yen; Stem Cells; 2005; 23 (1) 3-9.を参照)。これらの細胞は、遺伝子またはタンパク質発現により表現型により定義することができる。これらの細胞は、以下の1または2以上を発現する(およびしたがってそれについて陽性である)ことが特徴づけられている:CD13、CD29、CD44、CD49a、b、c、e、f、CD51、CD54、CD58、CD71、CD73、CD90、CD102、CD105、CD106、CDw119、CD120a、CD120b、CD123、CD124、CD126、CD127、CD140a、CD166、P75、TGF-bIR、TGF-bIIR、HLA-A、B、C、SSEA-3、SSEA-4、D7およびPD-L1。これらの細胞はまた、以下を発現しない(およびしたがってそれについて陰性である)ことが特徴づけられている:CD3、CD5、CD6、CD9、CD10、CD11a、CD14、CD15、CD18、CD21、CD25、CD31、CD34、CD36、CD38、CD45、CD49d、CD50、CD62E、L、S、CD80、CD86、CD95、CD117、CD133、SSEA-1およびABO。したがって、間葉系幹細胞は、その分化能力により、表現型および/または機能的に特徴づけることができる。
【0052】
間葉系幹細胞は、限定されないが骨髄、血液、骨膜、真皮、臍帯の血液および/またはマトリックス(例えばワトソン膠様質)ならびに胎盤を含む多数のソースから収集することができる。間葉系幹細胞の収集のための方法は、例においてより詳細に記載される。本発明において用いることができる他の収集方法については、米国特許第5486359号を参照してもよい。
【0053】
本発明の方法における使用について企図される間葉系幹細胞、したがってエキソソームは、処置されるべき同じ対象に由来しても(したがって対象にとって自家性であるとして言及されても)、またはそれらは、好ましくは同種の別の対象に由来しても(したがって対象にとって同種のものであるとして言及されても)よい。
【0054】
本明細書において用いられる場合、本発明の側面および態様は、他に示されない限り、細胞ならびに細胞集団に関することが理解されるべきである。したがって、細胞が引用される場合、他に示されない限り、細胞集団もまた企図されることが理解されるべきである。
【0055】
本明細書において用いられる場合、単離された間葉系幹細胞は、その天然の環境から物理的に分離された(その天然の環境の1または2以上の成分からの物理的分離を含む)間葉系幹細胞である。したがって、単離された細胞または細胞集団は、in vitroまたはex vivoで操作された細胞または細胞集団を包含する。例として、単離された間葉系幹細胞は、当該間葉系幹細胞が収集される組織中の細胞の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、およびさらにより好ましくは少なくとも80%から物理的に分離された間葉系幹細胞であってよい。幾つかの例において、単離された間葉系幹細胞は、本明細書において表現型および/または機能的に定義されるものとして、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の間葉系幹細胞である集団において存在する。好ましくは、他の細胞に対する間葉系幹細胞の比は、細胞の出発集団と比較して、単離された調製物において増大する。
【0056】
間葉系幹細胞は、例えば骨髄単核細胞、臍帯血、脂肪組織、胎盤組織から、組織培養プラスチックに対するそれらの粘着性に基づいて、当該分野において公知の方法を用いて単離することができる。例えば、間葉系幹細胞は、市販の骨髄吸引液から単離することができる。細胞の集団内での間葉系幹細胞の濃縮は、限定されないがFACSを含む当該分野において公知の方法を用いて達成することができる。
【0057】
間葉系幹細胞の増殖、培養および維持のために、市販の培地を用いることができる。かかる培地として、限定されないが、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)が挙げられる。間葉系幹細胞の増殖、培養および維持のために有用であるかかる培地中の成分として、限定されないが、以下が挙げられる:アミノ酸、ビタミン、炭素源(天然および非天然)、塩、糖、植物由来加水分解物、ピルビン酸ナトリウム、サーファクタント、アンモニア、脂質、ホルモンまたは増殖因子、緩衝化剤、非天然のアミノ酸、糖前駆体、指示薬、ヌクレオシドおよび/またはヌクレオチド、酪酸または有機物、DMSO、動物由来生成物、遺伝子誘導剤、非天然の糖、細胞内pHの調節剤、ベタインまたは浸透圧保護剤、微量元素、鉱物、非天然のビタミン。市販の組織培養培地を補うために用いることができるさらなる成分として、例えば、動物血清(例えば、ウシ胎児血清(FBS)、ウシ胎児血清(FCS)、ウマ血清(HS))、抗生物質(例えば、限定されないがペニシリン、ストレプトマイシン、ネオマイシン硫酸塩、アンホテリシンB、ブラストサイジン、クロラムフェニコール、アモキシシリン、バシトラシン、ブレオマイシン、セファロスポリン、クロルテトラサイクリン、ゼオシンおよびピューロマイシンが挙げられる)、ならびにグルタミン(例えば、L−グルタミン)が挙げられる。間葉系幹細胞の生存および増殖はまた、適切な好気的環境、pHおよび気温の維持に依存する。間葉系幹細胞は、当該分野において公知の方法を用いて維持することができる(例えば、Pittenger et al., Science, 284:143-147 (1999)を参照)。
【0058】
対象
本発明の方法は、それから利益を引き出す可能性がある任意の対象において実施することができ、これは、ヒト対象、農業用家畜(例えばウシ、ブタなど)、珍重される動物(例えばウマ)、愛玩動物(例えばイヌ、ネコなど)などを含む。本発明の多様な側面において、ヒト対象が好ましい。一部の側面において、ヒト対象およびヒトMSCエキソソームが用いられる。
【0059】
対象は、本発明のエキソソームを用いる処置を受け入れることができる肺疾患(または状態)を有する対象であっても、またはかかる疾患(または状態)を発症する危険性がある対象であってもよい。かかる対象は、新生児、および特に短い在胎期間で出生した新生児を含む。本明細書において用いられる場合、ヒト新生児とは、出生の時点から約4週齢までのヒトを指す。本明細書において用いられる場合、ヒト乳児とは、約4週齢から約3歳までのヒトを指す。本明細書において用いられる場合、短い在胎期間とは、所与の種についての正常な在胎期間よりも前に起こる出生(または出産)を指す。ヒトにおいては、完全な在胎期間は約40週間であり、37週間から40週間より長い範囲であり得る。短い在胎期間とは、ヒトにおいては、早産と類似し、妊娠37週より前に起きる出生として定義される。本発明は、したがって、妊娠37週より前(さらにより短い在胎期間(例えば、妊娠36週より前、35週より前、34週より前、33週より前、32週より前、31週より前、30週より前、29週より前、28週より前、27週より前、26週より前または25週より前)を含む)に出生した対象の予防および/または処置を企図する。典型的には、かかる早産児は、新生児として処置されるが、しかし、本発明は、新生児を越えて小児および/または成人期までものそれらの処置を企図する。特定の対象は、例えば肺高血圧症などの特定の形態の肺疾患に対する遺伝的素因を有する場合があり、これらの対象もまた、本発明により処置することができる。
【0060】
疾患を予防および処置する方法
本発明は、特定の肺疾患を予防および処置することを企図する。疾患を予防するとは、疾患が顕在化する可能性を低減すること、および/または疾患の発症を遅延させることを意味する。疾患を処置するとは、疾患の症状を低減または除去することを意味する。
【0061】
本発明は、多数の肺(lung)または肺(pulmonary)疾患を予防および/または処置することを意図する。これらの疾患は、以下を含むがそれらに限定されない炎症性肺疾患を含む:肺高血圧症(PH)、別名肺動脈高血圧(PAH)、喘息、気管支肺異形成症(BDP)、アレルギー、サルコイドーシスおよび特発性肺線維症。これらの疾患はまた、炎症成分を有さない場合もある肺血管疾患を含む。本発明により処置することができるなお他の肺の状態として、敗血症または人工呼吸器に関連する急性肺傷害が挙げられる。この後者の状態の例は、急性呼吸促迫症候群であり、これは、より年長の小児および成人において起こる。
【0062】
肺高血圧症は、肺動脈における血圧が正常レベルよりもはるかに高いことにより特徴づけられる肺疾患である。症状としては、息切れ、特に身体活動中の胸部痛、脱力感、疲労感、失神、特に運動中の意識朦朧、眩暈、異常な心音および心雑音、頚静脈の怒張、腹部、脚および足首における体液の貯留、ならびに爪床が青色になることが挙げられる。
【0063】
気管支肺異形成症は、酸素を投与されているか、もしくは人工呼吸器を付けられている新生児、または未熟に出生した新生児、特に非常に未熟に出生した新生児(例えば妊娠32週より前に出生した新生児)が罹患する状態である。それはまた、新生児慢性肺疾患としても言及される。BDPの原因として、例えば、人工呼吸、例えば酸素治療の結果としての酸素中毒、および感染の結果としての、機械的傷害が挙げられる。疾患は、非炎症性から炎症性へと時間と共に進行する場合がある。症状として、青みを帯びた皮膚、慢性の咳、速い呼吸、および息切れが挙げられる。BDPを有する対象は、呼吸器多核体ウイルス感染などの感染症に対してより感受性である。BDPを有する対象は、肺高血圧症を発症する場合がある。
【0064】
急性呼吸促迫症候群(ARDS)、別名、呼吸促迫症候群(RDS)または成人呼吸促迫症候群は、肺に対する傷害または急性の疾病の結果として生じる状態である。肺に対する傷害は、人工呼吸、外傷、熱傷および/または吸引(aspiration)の結果であり得る。急性の疾病は、感染性肺炎または敗血症であり得る。それは、重篤な形態の急性肺傷害であると考えられ、しばしば致死性である。それは、肺の炎症、ガス交換の障害、および炎症メディエーターの放出、低酸素血症、および多発性臓器不全により特徴づけられる。ARDSはまた、胸部X線上での両側性の浸潤の存在下における200mmHgより低い呼気中酸素の割合(FiO
2)としての、動脈の酸素分圧(PaO
2)の比として定義することができる。両側性浸潤を伴う300mmHgより低いPaO
2/FiO
2比は、急性肺傷害を示し、これはしばしば、ARDSの前駆型である。ARDSの症状として、息切れ、頻呼吸、および低酸素レベルに起因する精神錯乱が挙げられる。
【0065】
特発性肺線維症は、既知の原因を伴わない肺の瘢痕または肥大により特徴づけられる。それは、最も頻繁には、50〜70歳の人々において起こる。その症状として、息切れ、定期的な咳(典型的には乾性咳嗽)、胸部痛、および活動レベルの低下が挙げられる。
【0066】
予防および/または処置は、一部の例において、単独または1または2以上の第2の剤と共のMSCエキソソームの使用を含む。対象はまた、外因的な酸素投与を伴うか、または伴わない人工呼吸などの機械的介入を受ける場合がある。
【0067】
新生児、および特に短い妊娠期間の新生児に関して、本発明は、生後4週間、3週間、2週間、1週間、6日間、5日間、4日間、3日間、2日間、1日間、12時間、6時間、3時間または1時間以内のMSCエキソソームの投与を企図する。いくつかの重要な例において、MSCエキソソームが、生後1時間以内に投与される。
本発明はさらに、限定されないがBDPなどの肺疾患の指標である症状の不在下においてすらの、MSCエキソソームの投与を企図する。
【0068】
本発明はまた、2回、3回、4回、5回またはそれより多くのMSCエキソソームの投与を含む、MSCエキソソームの繰り返し投与を企図する。幾つかの例において、MSCエキソソームを持続的に投与してもよい。繰り返しまたは持続的な投与は、処置されている状態の重篤度に依存して、数時間(例えば、1〜2、1〜3、1〜6、1〜12、1〜18もしくは1〜24時間)、数日間(例えば、1〜2、1〜3、1〜4、1〜5、1〜6日間もしくは1〜7日間)または数週間(例えば、1〜2週間、1〜3週間もしくは1〜4週間)の期間毎に行ってもよい。投与が繰り返されるが持続的ではない場合、投与の間の時間は、数時間(例えば、4時間、6時間もしくは12時間)、数日間(例えば、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間もしくは6日間)、または数週間(例えば、1週間、2週間、3週間もしくは4週間)であってよい。投与の間の時間は、同じであっても異なっていてもよい。例として、疾患の症状が悪化していると考えられる場合、MSCエキソソームをより頻繁に投与し、次いで、症状が安定化するかまたは減少したら、MSCエキソソームをより低い頻度で投与してもよい。
【0069】
幾つかの重要な例において、MSCエキソソームを、生後24時間以内に少なくとも1回、次いで、生後1週間以内に少なくとももう1回投与する。さらにより好ましくは、MSCエキソソームを、生後1時間以内に少なくとも1回、次いで生後3〜4日間以内に少なくとももう1回投与する。
【0070】
幾つかの例において、低用量のMSCエキソソームの繰り返しの静脈内投与を行ってもよい。本発明に従って、低用量のMSCエキソソームを静脈内でマウス対象に投与した場合、最大活性は、MSCエキソソームを2〜4日間毎に投与した場合に達成されることが見出された。これらの実験において、100ngのMSCエキソソームを、平均20グラムのマウスに投与し、これは、5マイクログラム/キログラムの体重に対応した。より高い用量(例えば、マウス20グラム毎に10マイクログラム、または1キログラム毎に0.5ミリグラム)を用いた場合、単回の静脈内投与は、長期の保護を達成するために十分であった。したがって、本発明は、低い投与量のMSCエキソソームの繰り返しの投与のみならず、高い投与量のMSCエキソソームの単回投与を企図する。低い投与量は、限定することなく、1〜50マイクログラム/キログラムの範囲であり得、一方、高い投与量は、限定することなく、51〜1000マイクログラム/キログラムの範囲であり得る。疾患の重篤度、対象の健康状態、および特には投与の経路に依存して、低いまたは高い用量のMSCエキソソームの単回のまたは繰り返しの投与が、本発明により企図される。
【0071】
投与、医薬組成物、有効量
MSCエキソソームは、薬学的に受容可能な調製物(または薬学的に受容可能な組成物)において、典型的には、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わされた場合に、用いて(例えば、投与して)もよい。かかる調製物は、慣用的に薬学的に受容可能な濃度の塩、緩衝化剤、保存剤、適合可能なキャリアを含んでもよく、任意に、他の(すなわち第2の)治療剤を含んでもよい。
【0072】
薬学的に受容可能なキャリアは、予防的または治療的に活性な剤を担持または輸送することに関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入用材料などの薬学的に受容可能な材料、組成物またはビヒクルである。各々のキャリアは、処方の他の成分と適合性であってかつ対象にとって有害でないという意味において、「受容可能」でなければならない。薬学的に受容可能なキャリアとして役立ち得る材料の幾つかの例として、乳糖、ブドウ糖およびショ糖などの糖;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝化剤;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;ならびに医薬処方物において使用される他の非毒性の適合性物質が挙げられる。
【0073】
第2の治療剤。エキソソームを、1または2以上の第2の治療剤と共に投与してもよい。本明細書において用いられる場合、治療剤とは、本明細書において議論されるもののような肺疾患の予防、処置および/または管理において用いることができる任意の剤を指す。これらとして、限定されないが、サーファクタント、吸入一酸化窒素、ビスメシル酸アルミトリン、免疫モジュレーター、および抗酸化剤が挙げられる。免疫モジュレーターの例として、メチルプレドニゾロンを含むがこれに限定されないステロイドおよび副腎皮質ステロイドが挙げられる。抗酸化剤の例として、限定されないが、スーパーオキシドジスムターゼが挙げられる。
【0074】
肺高血圧症を含むがこれに限定されない特定の肺疾患の処置または管理において用いられる特定の第2の治療剤として、酸素、ワルファリン(クマジン)などの抗凝固剤;フロセミド((Lasix(登録商標))またはスピロノラクトン(Aldactone(登録商標))などの利尿剤;カルシウムチャネル遮断剤;K-dur(登録商標)などのカリウム;ジゴキシンなどの変力剤(inotropic agent);ニフェジピン(Procardia(登録商標))またはジルチアゼム(Cardizem(登録商標))などの血管拡張剤;ボセンタン(Tracleer(登録商標))およびアンブリセンタン(Letairis(登録商標))などのエンドセリン受容体アンタゴニスト;エポプロステノール(Flolan(登録商標))、トレプロスチニルナトリウム(Remodulin(登録商標)、Tyvaso(登録商標))、およびイロプラスト(Ventavis(登録商標))などのプロスタサイクリン類縁体;ならびに、シルデナフィル(Revatio(登録商標))およびタダラフィル(Adcirca(登録商標))などのPDE-5阻害剤が挙げられる。
【0075】
サーファクタント。MSCエキソソームは、肺サーファクタントと共に投与してもよい。肺サーファクタントは、肺の気道を開いておく(例えば、肺胞壁の互いへの接着を予防することにより)上で有用なリポタンパク質混合物である。肺サーファクタントは、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ホスホチジルコリン(PC)、ホスホチジルグリセロール(PG)などのリン脂質;コレステロール;およびSP−A、B、CおよびDなどのタンパク質からなってもよい。肺サーファクタントは、ウシまたはブタ肺組織などの天然に存在するソースに由来してもよい。例として、Alveofact(商標)(ウシ肺洗浄液から)、Curosurf(商標)(刻んだブタ肺から)、Infasurf(商標)(仔ウシ肺洗浄液から)、およびSurvanta(商標)(刻んだウシ肺から;DPPC、パルミチン酸およびトリパルミチンを含む付加成分を含む)が挙げられる。肺サーファクタントはまた、合成であってもよい。例として、Exosurf(商標)(DPPCならびにヘキサデカノールおよびチロキサポールからなる)、Pumactant(商標)または人工肺拡張化合物(Artificial Lung Expanding Compound:ALEC)(DPPCおよびPGからなる)、KL-4(DPPC、パルミトイル−オレイルホスファチジルグリセロール、パルミチン酸およびSP-Bを模倣する合成ペプチドからなる)、Venticute(商標)(DPPC、PG、パルミチン酸および組換えSP-Cからなる)が挙げられる。肺サーファクタントは、商業的な供給者から入手することができる。
【0076】
有効量。本発明の調製物は、有効量において投与される。有効量とは、ある剤が単独で所望の結果を刺激する量である。絶対量は、投与のために選択される材料、投与が単回であるか複数回の投与であるか、ならびに、年齢、身体的状態、サイズ、体重および疾患のステージを含む個々の患者のパラメーターを含む、多様な要因に依存するであろう。これらの要因は、当業者に周知であり、慣用的な実験のみにより取り組むことができる。
【0077】
投与経路。MSCエキソソームは、肺への送達をもたらす任意の経路により送達することができる。静脈内ボーラス注射または持続注入などの全身投与経路が好適である。鼻内投与、気管内投与(例えば挿管を介して)、および吸入(例えば、口腔または鼻を通すエアロゾルを介して)などのより直接的な経路もまた、本発明により企図され、迅速な作用が必要である幾つかの例においては、より適切である場合がある。本明細書において用いられる場合、エアロゾルは、気体中に小さい粒子として分散した液体の懸濁液であり、かかる粒子を含む微細な霧またはスプレーを含む。本明細書において用いられる場合、エアロゾル化は、液体懸濁液を小さい粒子または液滴へと変換させることによるエアロゾルの製造のプロセスである。このことは、加圧パックまたはネブライザーなどのエアロゾル送達系を用いて行うことができる。ネブライザーは、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適な気体などを含むがこれらに限定されない好適な噴霧剤を用いる、エア・ジェット(すなわち、含気性の)、超音波の、および振動メッシュのネブライザーを含む。ネブライザーに加えて、肺送達のための他のデバイスとして、限定されないが、定量吸入器(MDI)およびドライパウダー吸入器(DPI)が挙げられる。吸入器(inhaler)または吸入器(insufflator)における使用のための例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、凍結乾燥されたエキソソームおよび乳糖またはデンプンなどの好適な粉末基剤を含めて処方することができる。
【0078】
エキソソームは、それを全身送達することが望ましい場合、注射(ボーラス注射または持続注入によるものを含む)による非経口投与のために処方することができる。注射のための処方物は、単位投与形態において、例えば、アンプルにおいて、または複数用量容器において、添加する保存剤を含めて、または含めずに提示することができる。
【0079】
組成物は、水溶性の懸濁液、油性または水性のビヒクル中の溶液または乳液の形態をとってもよく、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの処方用の剤を含んでもよい。好適な親油性の溶媒またはビヒクルとして、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成の脂肪酸エステルが挙げられる。水溶性の注射用懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどの、懸濁液の粘性を増大させる物質を含んでもよい。任意に、懸濁液はまた、好適な安定化剤、または可溶性を増大させる剤を含んでもよい。あるいは、エキソソームは、好適なビヒクル、例えばパイロジェンフリー水による、使用の前の構成のための、凍結乾燥または他の粉末または固体の形態にあってもよい。
【0080】
本発明により処置されている対象に投与されるべき他の剤は、経口投与、鼻内投与、気管内投与、吸入、静脈内投与などの任意の好適の経路により投与することができることが理解されるべきである。当業者は、かかる第2の剤のための慣用的な投与の経路を知っているであろう。
【0081】
キット
本発明はまた、包装されてラベルされた医薬品を包含する。この製品またはキットは、ガラスバイアルまたはプラスチックのアンプルまたは機密密封される他の容器などの適切な容器(vessel)または容器(container)中の、適切な単位投与形態を含む。単位投与形態は、例えばエアロゾルによる肺送達のために好適であるべきである。好ましくは、製品またはキットはさらに、当該医薬製品を投与する方法を含む使用方法についての説明書を含む。説明書はさらに、医師、技術者または対象に、問題の疾患または状態を適切に予防または処置するための方法について助言する情報材料を含んでもよい。言い換えると、製品は、使用のための投与レジメン(実際の用量、モニタリングの手法、および他のモニタリングの情報を含むが、これらに限定されない)を指示または示唆する説明書を含む。
【0082】
任意の医薬製品について、包装用の材料および容器は、保存および輸送の間の製品の安定性を保護するように設計される。
キットは、直接用いることができる無菌の水性懸濁液中のMSCエキソソームを含んでも、静脈内投与またはネブライザーにおける使用のために通常の食塩水で希釈しても、気管内投与のためにサーファクタントにより希釈するかまたはこれと組み合わせてもよい。キットは、したがってまた、食塩水またはサーファクタントなどの希釈用の溶液または剤を含む。キットはまた、ネブライザーなどの肺送達デバイス、またはディスポーザブルの成分、すなわちマウスピース、ノーズピースもしくはマスクなどを含んでもよい。
【0083】
例
要旨
低酸素は、肺において、マクロファージの代替活性化により顕れる炎症性応答を誘導し、これは、その後の低酸素肺高血圧症(HPH)の発症のために重要である炎症促進メディエーターの増加を伴う。間葉系間質細胞(MSC)の移植は、肺の炎症、血管のリモデリングおよび右心不全を予防し、疾患の実験的モデルにおいて、HPHを阻害する。本発明研究において、本発明者らは、HPHにおいてMSCが保護的となるパラクリンの機序を検討することを目的とした。
【0084】
本発明者らは、マウスMSC条件培地を分画して、in vivoで低酸素シグナリングに影響を及ぼす生物学的に活性な成分を同定し、分泌される膜の微小胞であるエキソソームが、低酸素による肺のマクロファージの流入、ならびに、単球走化性タンパク質−1および低酸素誘導性分裂促進因子を含む炎症促進性および増殖促進性のメディエーターの誘導を抑制することを、マウスのHPHのモデルにおいて決定した。MSCエキソソーム(MEX)の静脈内送達は、血管のリモデリングおよびHPHの発症を予防する。低用量のMEXの複数回投与は、初期の低酸素による炎症応答を完全に抑制し、肺高血圧症および右心室の病態を緩和した。単回の高用量のMEXは、慢性低酸素により誘導される血管のリモデリングおよびPHの発症を予防するために十分であることが見出された。対象的に、線維芽細胞由来のエキソソームおよびMEX枯渇培地は、何らの効果も有さなかった。MEXは、シグナル伝達性転写因子(STAT3)の低酸素による活性化、およびmicroRNAクラスターのmiR-17スーパーファミリーの上方調節を抑制するが、一方で、ヒトPHにおいてその発現が低下する重要なmicroRNAであるmiR-204の肺レベルを増大させる。ヒト臍帯MSCにより産生されるMEXは、単離されたヒトPAECにおいてSTAT3のシグナリングを阻害し、低酸素によるSTAT3活性化に対するMEXの直接的効果を実証した。
【0085】
本研究は、MEXが、肺に対して多面的な保護効果を発揮すること、および、低酸素より誘導される特定のSTAT3により媒介される過剰増殖経路の抑制を介してPHを予防することができることを示す。
【0086】
材料および方法
骨髄由来間葉系幹細胞の単離。骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)を、5〜7週齢のFVB/sマウスの大腿および脛骨から、先に記載したように単離した。簡単に述べると、各脛骨および大腿の末端を、クリップ(clip)して髄を露出させ、骨を適合した遠心分離チューブ中に挿入した。チューブを、1分間400×gで遠心分離して、髄を回収した。ペレットを、21ゲージの針を通して3mlのα基礎培地(α−MEM)中に再懸濁し、その後、70μmのナイロンメッシュフィルターを通して濾過した。髄細胞を、フィコール−プラーク(Amersham)密度勾配上で層状にし、遠心分離してプレートに播いた。プラスチック接着性の細胞を、2〜3日毎に交換される培地を含む培養中に維持した。2〜3回の継代の後で、公開されているプロトコルおよび国際細胞治療学会(ISCT)のガイドライン
1により、免疫枯渇法を行った。細胞を、CD11b、CD14、CD19、CD31、CD34、CD45およびCD79α抗原について、適切な蛍光タグ抗体(BD Biosciences)を用いて、蛍光活性セルソーター(MoFlo)においてネガティブ選択し、さらに増殖させ、次いで、CD73、CD90、CD105、c-kitおよびSca-1抗原について、上記のようにポジティブ選択した。全ての試薬は、Sigmaから購入した。継代7〜12回の単離された細胞を、条件培地の生成のため、およびエキソソームの単離のために用いることができる。単離され、および/または培養された細胞はまた、条件培地またはエキソソームの生成の前に、凍結保存することができる。
【0087】
マウス肺線維芽細胞の単離。初代マウス肺線維芽細胞(MLF)培養物を、標準的な方法により誘導した。
【0088】
MSC条件培地(MSC-CM)の調製。凍結保存されたMSCを、完全培地(αMEM(Invitrogen)に10%FBS(Hyclone)、10%ウマ血清(Hyclone)、および5mMのL−グルタミン(Gibco))を補充したもの)と共にプレートに播種し、その後、標準的な培養条件下においてインキュベートした。24時間にわたり培養物から生成された無血清MSC-CMを、400×gで10分間および12,000×gで20分間における分画遠心法により清澄化した。無血清MSC-CMを、100kDaのMWCOフィルター装置(Millipore)による限外濾過により、250倍に濃縮し、その後、12,000×gで20分間の遠心分離によりさらに清澄化した。
【0089】
セファクリルS-400ゲル濾過クロマトグラフィーによるエキソソームの精製。250倍の濃度のMSC-CMを、PB2XSバッファー(20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に300mMのNaClを補充したもの)で予め平衡化したS-400カラム(14×300mm、Pharmacia)に適用し、一定の流速(0.4ml/分)で溶出させた。各画分から等容積(0.8ml)を、変性10%ポリアクリルアミドゲルまたは未変性1.2%アガロースゲル上に適用し、その後、CD81(Santa Cruz)およびSPP-1(オステオポンチン)(R&D Systems)に対する特異的抗体により免疫染色した。CD81およびSPP-1の両方について陽性で、未変性アガロースゲル中でより高度に移動する画分をプールして、エキソソーム調製物として用いた(
図1)。プールしたエキソソームは、すぐに用いても、または液体窒素中で迅速凍結して−80℃で保存してもよい。
【0090】
電子顕微鏡分析。精製されたエキソソームを、親水性に作られた炭素被覆されたグリッドに、グロー放電により吸着させる。余分な液体を取り除き、エキソソームを0.75%のギ酸ウラニルで、30秒間で染色した。余分なギ酸ウラニルを取り除いた後、グリッドを、JEOL 1200EX透過型電子顕微鏡において精査し、AMT 2k CCDカメラで記録した。
【0091】
エキソソームのプロテオミクス分析。30μgのエキソソームタンパク質を、12%変性PAGEにおいて分離し、その後、シークエンシンググレードのトリプシン(Promega)で消化した。ハーバード微量化学およびプロテオミクス分析部において、マイクロキャピラリー逆相HPLCナノエレクトロスプレータンデム質量分析(μLC/MS/MS)により、Thermo LTQ-Orbitrap質量分析器において、シークエンシング分析を行った。結果として生じたペプチドのMS/MSスペクトルを、次いで、アルゴリズムSEQUESTおよびハーバード微小化学部において開発されたプログラムを用いて種特異的配列と相関づけた。
【0092】
ウェスタンブロット分析。エキソソームを特徴づけるための実験において、エキソソーム画分またはエキソソームフリーの画分のいずれかからの3μgのタンパク質を、12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動において分離し、その後、0.45μmのPVDF膜(Millipore)にトランスファーした。5%スキムミルクによるブロッキングの後で、ポリクローナルヤギ抗CD63(Santa Cruz)、抗CD81(Santa Cruz)、抗mCSF(R & D systems)、抗オステオポンチン(R & D systems)、ポリクローナルウサギ抗モエシン(Abcam)、抗14-3-3ファミリー(Abcam)およびモノクローナル抗ダイサー(Abcam)、ならびに適切なペルオキシダーゼ共役二次抗体を用いて特異的シグナルを検出した。対照として、BM-MSC抽出物の35μgのタンパク質を並行して用いた。BALF中のタンパク質の分析のために、同じ群中の個々のマウスからのセルフリーのBALFの等容量をプールして、次いで、20%のトリクロロ酢酸(TCA)により一晩沈澱させた。1×ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)ローディングバッファー中に再懸濁したタンパク質ペレットを、次いで、変性tris−トリシンポリアクリルアミドゲル上で分離した。0.2μmのPVDF膜(Millipore)へのトランスファー後、ブロットを0.1%のtween 20(Sigma)を含むPBS中5%スキムミルクで1時間ブロッキングして、その後、1:1,000希釈のウサギポリクローナル抗単球走化性タンパク質−1(MCP-1)抗体(Abcam)、抗低酸素誘導性細胞分裂促進因子(HIMF/FIZZ1/Relmα)抗体(Abcam)、抗インターロイキン−10(Abcam)および抗インターロイキン−6(IL-6)抗体(Santa Cruz)と共に、一晩4℃でインキュベートした。ローディング対照としてマウス免疫グロブリンA(IgA)を検出するために、1:5,000希釈のヤギ抗マウスIgA抗体(Abcam)を用いた。ペルオキシダーゼ共役抗ウサギ二次抗体(Santa Cruz)を、1:50,000希釈において用いて、高感度化学発光試薬(Pierce)またはLumi-Light
PLUS(Roche)のいずれかにより、免疫反応性のバンドを可視化した。
【0093】
動物および低酸素暴露。8週齢のFVBのオスのマウスは、チャールズリバー研究所(Wilmington, MA)から入手するか、またはボストン小児病院(Children's Hospital Boston)における動物施設において育てられた。各群におけるマウスを、プレキシガラスチャンバー(OxyCycler:BioSpherix, Redfield, NY)中で、可変の実験時間にわたり8.5%の酸素に暴露した。換気装置を、CO
2を取り除いてそれが5,000ppm(0.5%)を越えないように(平均1,000〜3,000ppm)するために調節した。換気および空気清浄機を通した活性炭濾過によりアンモニアを取り除いた。全ての動物プロトコルは、小児病院動物管理使用委員会(Children's Hospital Animal Care and Use Committee)により承認された。
【0094】
低酸素により誘導される急性肺炎症マウスモデル。マウスに、左頚静脈を通して、条件培地(40μg/kg)またはエキソソーム(4μg/kg)またはエキソソームフリーの条件培地(4μg/kg)のいずれかを注射した。対照として、50μlのPBSまたは培養培地を並行して注射した。注射の3時間後に、マウスを、記述した実験期間にわたり、常圧の低酸素(8.5%のO
2)に持続的に暴露した。時間経過実験において、MEXのさらなる注射を、右頚静脈において低酸素暴露の4日後に行った。
【0095】
低酸素により誘導されるPAHのマウスモデル。第0日および低酸素暴露の4日後にエキソソームまたは対照を注射したマウスを、3週間いっぱい低酸素に持続的に暴露し、ペントバルビタール(50mg/kg、i.p.)で麻酔した。先に記載されるように
2、閉胸アプローチおよびPowerLabシステム(ADInstruments, Colorado Springs, CO)を用いて、右心室収縮期圧(RVSP)を測定した。圧力測定の後で、肺をPBSで灌流して、4%パラホルムアルデヒドで膨張させて、肺構造物を固定した。固定した肺を、次いでパラフィン包埋し、免疫組織化学分析のために薄切した。心臓を、すぐに、右心室肥大の評価であるフルトン係数測定のために分析した(右心室重量と左心室プラス中隔の重量との間の比、RV/[LV+S])。
【0096】
気管支肺胞洗浄および肺胞マクロファージの計数。動物を、2,2,2−トリブロムエタノール(250mg/Kg、i.p.)で麻酔し、それらの気管にカニューレ処置し、平滑末端針を挿入した。気管支肺胞洗浄液(BALF)を、PBSの連続投与(0.8ml、0.8ml、0.8mlおよび0.9ml)を介して収集し、個々のBALFの約3mlを回収した。400×gで5分間の遠心分離によりBALF中の細胞を収集して、Kimura染色溶液中に再懸濁して、BALF中の全肺胞マクロファージを選択的に係数した。
【0097】
免疫組織化学分析。肺組織切片を、スライスごとにキシレン中で脱パラフィンおよび脱水した。粗h式を1時間ブロッキングした後で、1:125の希釈率のモノクローナル抗マウスα-SMA抗体(Sigma)と共に一晩4℃でインキュベートすることにより、免疫組織化学分析を行った。メタノール中3%のH
2O
2により内因性ペルオキシダーゼを不活化した後で、二次抗体およびペルオキシダーゼ染色を、製造者(Vector laboratories, Burlingame, CA)の説明書に従って行った。400倍の拡大率下で捕捉された切片内の直径30μm未満の血管におけるα-SMA染色を測定することにより、血管壁の厚みを評価した。
【0098】
ヒト臍帯ワトソン膠様質からのヒトMSCの単離。ヒト臍帯ワトソン膠様質由来MSC(hUC-MSC)を、公開された方法(Mitchell, K. E. et al., 2003, Stem Cells 21:50-60; and Penolazzi, L. et al., 2011, J Cell Physiol)に従い、僅かな改変を加え、単離した。臍帯を冷たい無菌PBSで2回リンスし、長軸方向に切断し、動脈および静脈を取り除いた。軟性のゲル状組織を掻爬し、細かく刻み(2〜3mm
2)、DMEM/F12(1:1)(Invitrogen)に10%ウシ胎児血清(Hyclone)、2mMのL−グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを補充したものと共に、100mmディッシュ上に直接播種し(15片/ディッシュ)、5日間37℃で、加湿した5%CO
2の大気中でインキュベートした。組織および培地を取り除いた後、プレートを3回PBSで洗浄し、接着した細胞を培養し、週3回新たな培地を交換した。70〜80%のコンフルエンシーにおいて、細胞を収集し、CD34(Miltenybiotec)およびCD45(Miltenybiotec)に対するPE共役抗体で染色した。抗PE−マイクロビーズ(Miltenybiotec)およびMSCカラム(Miltenybiotec)を用いて、製造者の説明書に従って、免疫枯渇法を行った。CD34およびCD45に対して陰性の集団を、さらに増殖させ、MSCマーカー(CD105、CD90、CD44およびCD73)の発現、ならびにCD11b、CD19およびHLA-DRの不在について、ヒトMSCの特徴について特異的な蛍光標識抗体のセット(BD Biosciences)を用いて、MoFloフローサイトメトリー(Beckman Coulter)を用いて選択した。
【0099】
条件培地の調製。血清由来の微小胞による混入を除外するために、細胞培養物の増殖のために用いられた血清および条件培地の収集物を、100,000×gで18時間の超遠心分離法により清澄化した。MSCを、α−MEM培地に10%(v/v)ウシ胎児血清(FBS、Hyclone)および10%(v/v)ウマ血清(Hyclone)を補充したもののにおいて培養した。MLFを、ダルベッコ基礎培地(DMEM、Invitrogen)に10%FBSおよび2mMのL−グルタミン(GIBCO)を補充したものにおいて培養した。70%コンフルエンシーの培養物を、PBSで2回洗浄して、2mMのL−グルタミンを補充した無血清培地により24時間、標準的な培養条件下においてインキュベートした。条件培地を収集して、400×gで5分間、2,000×gで10分間、および13,000×gで30分間の分画遠心法により、細胞およびデブリを取り除いた。清澄化した条件培地を、その後、0.2μmのフィルターユニットを通して濾過し、Ultracel-100K(Millipore)遠心濾過装置を用いて、0.1〜0.5mg/mlの範囲のタンパク質濃度まで濃縮した。条件培地中のタンパク質レベルを、ブラッドフォードアッセイ(Bio-Rad)により決定した。
【0100】
In vitroでの低酸素。ヒトPAECをGIBCOから購入し、LSGS(Invitrogen)を補充したM200培地中で培養した。80%コンフルエンシーにおいて、細胞を、Vivo2ワークステーション(Ruskin Technology, Bridgend, UK)中で、hUC-MSC条件培地(1μg/ml)のエキソソーム画分(1μg/ml)またはエキソソーム枯渇画分の存在下または不在下において、1%O
2に5時間暴露した。細胞を溶解させて、ホールセルライセート中のタンパク質を、8%のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動において分離し、その後、ホスホ-STAT3およびSTAT3についてウェスタンブロット分析を行った(Cell Signaling)。
【0101】
エキソソームの単離。50μlの濃縮条件培地を、20mMのリン酸ナトリウム(pH7.4)および300mMのNaClを含むバッファーで予め平衡化したCHROMA SPIN S-1000カラム(Clontech)上に適用した。各画分(0.1ml)を、次いで、重力により収集した。ラージスケール調製のために、1.5mlの清澄化および濃縮された条件培地を、AKTA精製クロマトグラフィーシステム(GE Healthcare, Piscataway, NJ)を用いて、上記のバッファー中で予め平衡化した6/60 HiprepセファクリルS-400 HRのカラム状に注入した。画分(1ml)を、0.5ml/分の流速で収集した。直径50nmのポリスチレンナノ粒子(Phosphorex, Fall River, MA)を、サイズ標準物として用い、この標準物の保持容量に対応する溶出画分をプールし、さらに分析した。
【0102】
タンパク質抽出およびイムノブロット。BALF(3ml)を、420×gで10分間遠心分離し、セルフリーのBALF上清を、タンパク質分析のために用いた。同じ群中の個々の動物からの等容積のBALF標本を、プールして(1ml)、一晩、20%トリクロロ酢酸(Sigma)により、タンパク質を沈殿させた。各タンパク質ペレットの30%と同等の画分を、1×ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)ローディングバッファー中に溶解し、変性15%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。0.2μmのPVDF膜(Millipore)へのトランスファーの後で、ブロットを、5%スキムミルクでブロッキングし、1:1,000希釈のウサギポリクローナル抗単球走化性タンパク質−1(MCP-1)抗体(Abcam)、抗低酸素誘導性細胞分裂促進因子(HIMF/FIZZ1/Relmα)抗体(Abcam)と共に、一晩4℃でインキュベートした。マウス免疫グロブリンAを検出するために、1:5,000希釈のヤギ抗マウスIgA抗体(Abcam)を用いた。ペルオキシダーゼ共役抗ウサギ二次抗体(Santa Cruz)を1:20,000希釈において用いて、高感度化学発光試薬(Pierce)またはLumi-Light
PLUS(Roche)のいずれかにより、免疫反応性のバンドを可視化した。
【0103】
全肺組織からのタンパク質の分析のために、凍結した肺組織を、2mMのフッ化フェニルメタンスルホニル(Sigma)を含む冷たいPBS中で、5秒間、ポリトロンにより細断し、3,000×gで3分間遠心分離した。細断した組織ペレットを、2mMのPMSFを含む冷たいPBSで2回洗浄し、毎回に3,000×gで3分間遠心分離し、白く洗浄された組織片を、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)およびホスファターゼ阻害剤カクテル(Thermo)を含むRIPAバッファーによる溶解に供した。40μgの肺組織抽出物を、10〜20%勾配ゲル(Invitrogen)上で分離した。イムノブロットにおいて用いられた抗体は、MCP-1、HIMF、IL-6、血管内皮増殖因子(Abcam)、全STAT3、およびホスホ-STAT3(Y705)(Cell Signaling)に対するものであった。ローディング対照のために、マウスモノクローナルβ−アクチン抗体(Sigma)を用いた。
【0104】
エキソソーム調製物を、12%ポリアクリルアミドゲル上で分離し、次いで、0.45μmのPVDF膜(Millipore)上にトランスファーした。ヤギポリクローナル抗CD63(1:1,000;Santa Cruz)抗体、ポリクローナルウサギ抗CD81(1:1,000;Santa Cruz)、およびモノクローナル抗ダイサー(1:1,000、Abcam)を用いた。特異的なタンパク質のバンドを可視化するために、上記のものと同じECL試薬を用いた。適切なバックグラウンドのサブトラクションの後で、濃度測定分析を通しての定量のために、NIH製のImageJプログラムを用いた。
【0105】
microRNAの定量。全肺RNAを、Chomczynski & Sacchi(1987 Anal Biochem 162:156-159)の方法により抽出し、750ngを、各標的microRNAについての特異的プライマー(TaqMan Reverse Transcription Kit, Applied Biosystems, Foster City, CA)による逆転写のための鋳型として用いた。各逆転写反応はまた、小さい核RNAであるsno202についてのプライマーを含み、これは、内部対照として用いられた。各20μlのqPCR反応について、37.5ngのcDNAを、TaqMan universal master mix II with no UNG(Applied Biosystems)と共に、示したmicroRNAおよび内部対照について特異的なプローブ(TaqMan microRNA assay, Applied Biosystems)の存在下において用いた。増幅は、StepOne Plusプラットフォーム(Applied Biosystems)において、50℃で2分間、95℃で10分間、その後、95℃で15秒間、60℃で1分間を40サイクルで行った。
【0106】
結果
低酸素により誘導される急性の炎症応答を抑制するBM-MSC分泌因子。BM-MSCの治療能力を、幾つかの肺傷害の動物モデルから観察した。本発明者らは、BM-MSCが、それらのパラクリン様式により低酸素により誘導される肺炎症に関連したことを決定した。低酸素暴露は、2日間以内の著しい肺へのマクロファージの蓄積および炎症促進性メディエーターの上昇をもたらす
2。BM-MSCのパラクリン能力をこの動物モデルにおいて試験するために、BM-MSC条件培地(BM-MSC-CM)またはビヒクルまたはMLF条件培地(MLF-CM)のいずれかを投与されたマウスを、常圧の低酸素に2日間暴露した。その結果、低酸素により誘導される急性の肺へのマクロファージの流入は、BM-MSC-CM処置により遮断されたが、ビヒクルまたはMLF-CMを注射されたマウスは、肺におけるマクロファージの著しい蓄積を示し(
図1A)、このことは、BM-MSC分泌因子が、低酸素により誘導される肺の炎症応答(これがマクロファージを肺中へ動員するシグナルを伝達する)を抑制することを示唆した。低酸素条件づけが、肺の炎症促進性メディエーターのレベルを上方調節することが観察されたため、マウスからのセルフリーBALFを、低酸素応答性の炎症促進性メディエーターであるMCP-1およびHIMF/FIZZ1についての比較分析に適用した。ビヒクルまたはMLF-CMを注射されたマウスにおいて、肺におけるMCP-1およびHIMFのレベルはいずれも、48時間にわたる低酸素暴露により有意に増大した。対照的に、低酸素によるこれらのメディエーターの上昇は、BM-MSC-CM処置マウスにおいて効果的に抑制された(
図1B)。総合すると、BM-MSCの分泌因子は、肺におけるMCP-1およびHIMF/FIZZ1の低酸素により誘導される上方調節を遮断することを介して肺へのマクロファージの動員を予防する、抗炎症剤である。
【0107】
BM-MSC分泌エキソソーム。本発明者らは、BM-MSC-CM中の小さい小胞を、限外濾過および分子ふるいクロマトグラフィーを含む手法により単離した。表2は、これらの実験において達成された濃縮の程度を示す。
図2においてまとめられるように、BM-MSC-CMの分泌タンパク質の約1.6%(w/w)は、それらのエキソソームに関連している可能性がある。MLF由来のエキソソーム(FEX)を対照として単離し、平行して分析した。電子顕微鏡分析から、エキソソームは、カラムのボイド容量中の画分においてのみ観察され、このことは、8,000kDaより小さい分子を除外するための分子ふるいクロマトグラフィーが、エキソソームを濃縮するために高度に選択的であることを示唆する(
図2B、2C)。さらに、BM-MSC-CMおよびMLF-CMの同等の画分からのエキソソームの電子顕微鏡画像により、両方の型の細胞から脱落したエキソソームが、30〜100nmの範囲の直径の不均一性および両凹型の形態医学的特徴などの典型的なエキソソームの物理的パラメーターを示したことが確認された(
図2D、2E)。BM-MSC由来エキソソーム(MEX)のタンパク質内容物に関して、ウェスタンブロット分析は、MEXは、CD63およびモエシンなどの典型的なエキソソームタンパク質について陽性であり、また、単球コロニー刺激因子(mCSF)およびオステオポンチン(OPN/SPP1)を含む免疫調節性タンパク質と高度に関連していることを示した。約30kDaの分子量を有する小さいポリペプチドであり、多数の機能的に多様なシグナルタンパク質に結合することができる、14-3-3ファミリーの幾つかのアイソフォームは、エキソソームと共精製され、このことは、14-3-3アイソフォームの特定のサブセットがMEXと関連することを示している。さらに、細胞質におけるmicroRNA成熟の重要なプロセッシング段階を触媒するダイサーは、エキソソーム画分においてのみ検出され、このことは、microRNAがエキソソームの別の構成要素であることを強力に支持している。mCSFおよびOPNならびにCD63およびモエシンはまた、精製の手順の間に、エキソソームフリー画分においても豊富に検出され、このことは、エキソソームフリー画分におけるそれらの可溶性アイソフォームの存在、またはエキソソームの表面との弱いもしくは低アフィニティーでの関連を示唆していることが興味深い(
図2F)。比較ウェスタン分析は、MEXは、FEXと比較して、CD63、ダイサー、mCSFおよびオステオポンチンが高度に濃縮されるが、CD81はFEXにおいてより豊富であることを明らかにした(
図2G)。この結果、MEXは、サイズおよび形態に関して典型的なエキソソームの物理的特徴を保存し、ダイサーおよび免疫モジュレーターがFEXと比較して高度に濃縮された。本発明者らはさらに、MEXの生理学的役割を検討するために、2つの異なる細胞型からのエキソソームの間の質量分析による比較プロテオミクス分析を行った。
【0108】
BM-MSCの抗炎症的役割は、それらの分泌エキソソームにより媒介された。本発明者らはさらに、低酸素により誘導される急性肺炎症の実験モデルにおいて、BM-MSC由来エキソソームが生理学的に機能的であるか否かを検討した。精製されたMEXを注射したマウスを、常圧の8.5%O
2の低酸素に暴露した。48時間にわたる低酸素への持続的暴露の後で、本発明者らは、低酸素により誘導される肺へのマクロファージの流入が、MEXの投与により効果的に予防されたことを観察した。対照的に、FEX、またはBM-MSC-CMのエキソソームフリーの画分は、肺へのマクロファージの流入を予防することができなかった(
図3A)。セルフリーBALFからの全タンパク質を、イムノブロット分析を用いて研究した。MCP-1およびHIMF/FIZZ-1などの分泌型の炎症促進性メディエーターの上方調節は、MEXの投与により完全に抑止されたが、これらは、ビヒクルまたはFEXの注射によっては遮断されなかった(
図3B)。興味深いことに、BM-MSC-CMのエキソソームフリーの画分は、低酸素により誘導されるこれらの炎症促進性メディエーターの上方調節を抑制することができなかった。エキソソーム画分とエキソソームフリー画分との間のタンパク質内容物には他には殆ど差異が存在せず、このことは、エキソソーム中の核酸が応答において重要であり得る可能性を示唆している。これらのデータは、エキソソームにおいて特異的に局在するBM-MSC由来分泌因子が、低酸素により誘導される炎症促進性メディエーターMCP-1およびHIMF/FIZZ1を上方調節するシグナルを遮断することにより、低酸素により誘導される肺の炎症応答を効果的に抑制することを強調する。
【0109】
MEXの投与は、低酸素により誘導される肺の炎症応答を抑止する。本発明者らは、BM-MSCがエキソソームを分泌し、これがマクロファージを肺中へ動員する低酸素シグナルを抑止することを観察し、また、低酸素暴露が、2日間以内に、肺における急性の炎症応答をもたらすことを観察した。本発明者らはさらに、肺の炎症応答に対する単回または複数回のMEXの処置の7〜11日間の低酸素暴露までの時間経過を検討した。ビヒクルを注射した群において、マウスは、2日間の低酸素暴露により、急性の肺へのマクロファージの流入、ならびにMCP-1およびHIMF/FIZZ1の両方の肺レベルの劇的な上昇を示し、7日間の低酸素暴露において炎症のピークは消散した。低下する肺胞マクロファージの数および肺のMCP-1のレベルとは異なり、高レベルのHIMF/FIZZ1が7日間の持続的低酸素暴露の間維持された。このことは、MCP-1は、主に肺へのマクロファージの流入を調節するが、HIMF/FIZZ1は、低酸素に対する応答において別個の役割を果たしている可能性があることを示唆している(
図4A、4D)。重要なことに、MEXの単回注射は、4日間より長い低酸素下における低酸素により誘導される炎症応答を抑制することができず、したがって、低酸素応答性肺炎症は、注射の4日後に開始し、7日でピークを迎え、11日で消散した(
図4B、4D)。より重要なことに、低酸素暴露の4日目におけるMEXのさらなる注射は、11日間までの低酸素下における肺炎症の遮断を維持した(
図4C)。MEXによるHIMF/FIZZ1の調節に関して、MEXの単回注射は、4日間の低酸素にわたる低酸素により誘導されるHIMF/FIZZ1の上方調節を抑制することができる。MEXのさらなる注射は、7日間の低酸素におけるHIMF/FIZZ1の上方調節を抑止することができず、このことは、他の一時的な調節経路がこの応答に関与している可能性があることを示唆している。総合すると、低酸素により誘導される急性肺炎症は、MEXの単回注射により一時的に抑制され、低酸素への肺の応答を中和することができる抗炎症効果は、連続または複数回の投与により維持された。
【0110】
低酸素により誘導されるPAHは、BM-MSC由来エキソソームにより抑制される。本発明研究において、本発明者らは、肺におけるMCP-1およびHIMFが低酸素により有意に上方調節されたこと、ならびに、低酸素により誘導される上方調節は、MEXの処置により顕著に減弱されたことを観察した。したがって、本発明者らは、MEXは、PAHの両方の重要なメディエーターを遮断することにより、低酸素により誘導されるPAHを予防する可能性があることを仮説立てた。この仮説を試験するために、マウスに、MEXまたは対照としてFEXもしくはPBSのいずれかを投与した後、低酸素に3週間暴露した。実験期間の終了時に、RVSPを測定し、心臓組織をRV肥大のために処理した。
図5Bおよび5Cは、全ての低酸素のマウスが、週齢が一致する正常酸素圧のマウスと比較して上昇したRVSPおよびフルトン係数を示した。対照的に、MEXを投与されたマウスについて、PBSまたはFEXのいずれかを注射したマウスと比較して、有意な改善を観察した。さらに、MEXの単回注射を受けたマウスと比較して、4日目にさらなるMEXの注射を受けたマウスは、慢性低酸素下において、有意に減少したRVSPおよびRV肥大を示し、このことは、MEXの繰り返し投与が、慢性低酸素への応答における、肺の動脈圧および心室壁の厚みを改善したことを示す。MEXの複数回処置が低酸素により誘導される肺の血管リモデリングを減弱することができたかを検討するために、低酸素肺の組織学的切片を、肺血管をα-SMA抗体で染色することにより形態学的に分析した(
図5D)。直径20〜30μmの範囲内の小肺細動脈の内側血管壁の厚みのパーセンテージを決定した。PBSまたはFEXのいずれかで処置されたマウスにおいて、週齢が一致する正常酸素圧の対照マウスと比較して、慢性低酸素により小肺細動脈の厚みが顕著に増大したことが観察されたが、対照とMEX処置マウスとの間には、血管壁の厚みについて有意な差異は観察されず、このことは、MEXが、低酸素により誘導される肺の血管のリモデリングのプロセスを予防することができることを示す(
図5E)。
【0111】
MEXは、多様な免疫調節因子を含む。本発明者らは、慢性低酸素による低酸素誘導型急性肺炎症および肺動脈高血圧の両方に対するMEXの劇的な効果を観察した。それらの分子機構を検討するために、本発明者らは、高速液体クロマトグラフィー質量分析(HPLC−MS/MS)により、MEXおよびFEXの両方の網羅的なプロテオミクスプロファイリングを行った。MEXにおいて全273のタンパク質を高い信頼度で同定し、タンパク質の35%はまたFEXにおいても検出された。MEXに関連する考慮すべきタンパク質をプロファイリングするために高い信頼度を達成するために、本発明者らは、MS/MSスペクトルの数が高く(>25)、シークエンスカバー度(sequence coverage)においてMEX/FEXの比が高い(>3)タンパク質を同定した。この基準に適合した8個のタンパク質を表1において列記する。これらのタンパク質の中で、3つはユニークであり、5つはMEXにおいて高度に濃縮されていた。MEXにおいてユニークなタンパク質の一つであるガレクチン−3結合タンパク質(LGALS3BP/MAC2BP)は、喘息の特徴であるTH2サイトカインの転写を阻害することによる免疫調節活性を有することが示されている分泌タンパク質である
34。それは、レクチンファミリー、インテグリン、ラミニンおよびフィブロネクチンを含む細胞表面およびマトリックス上の多様なタンパク質と相互作用することができる。相互作用は、腫瘍細胞の細胞外タンパク質への接着を調節することに関連づけられているため
35、MEXの表面上のGAL3BPは、注入されたMEXをリガンド特異的な様式においてレシピエント細胞の表面へと標的化する、重要な役割を果たす可能性がある。MEXの別のユニークなタンパク質であるトロンボスポンジン−2は、腫瘍増殖および血管新生の強力な内因性阻害剤として作用すること
36、ならびに炎症促進性サイトカインであるIFN-γおよびTNF-αの産生を抑制すること
37が知られている。樹状細胞由来エキソソームの主要な成分であるラクトアドヘリン(MFGE8)
38は、細胞死およびアポトーシスにおいてある役割を果たすことが報告されている。細胞死およびアポトーシスにおいて、ラクトアドヘリンは、アポトーシス細胞上に露出したホスファチジルコリンを特異的に認識し、インテグリン
αVおよびインテグリンp
β3を発現する細胞に結合することにより
39、40、アポトーシス細胞の貪色によるクリアランスを促進する。MEXの表面において、ラクトアドヘリンは、MEXをそれらのレシピエント細胞型へ標的化することに関与する。さらに、ラクトアドヘリンはまた、アルツハイマー病において蓄積される老人斑の主要な成分であるアミロイドベータペプチド(Abeta)の鈍食によるクリアランスにおいて、直接的なタンパク質−タンパク質相互作用により関与することが報告されている。エキソソーム画分においてAbetaが豊富であることは、ラクトアドヘリンとAbetaとの間の直接的相互作用に起因する可能性がある。脂肪細胞エンハンサー結合タンパク質1(AEBP1)、別名大動脈カルボキシペプチダーゼ様タンパク質(ACLP)は、創傷治癒およびエネルギー恒常性において重要な生理学的役割を果たす。エクソン7〜16を欠失するマウスは、不十分な創傷治癒を示し、AEBP1ヌルマウスは、食餌誘発性の肥満に対して耐性である
41。表1および
図22は、マウスおよびヒトMEXにおいて同定された多様なメディエーターを記載する。
【0112】
マウスまたはヒトのいずれかに由来するMEXは、低酸素によるSTAT3活性化の抑制を媒介する。初期の低酸素は、マウス肺において、STAT3タンパク質の合計レベルに対して何ら影響することなく、Tyr-705におけるリン酸化を通してのSTAT3の活性化をもたらした。この活性化は、MEX処置により効率的に抑制された(
図19A)。STAT3は、多くのサイトカインおよび増殖因子のシグナル伝達経路に不可欠の転写因子であり、STAT3活性化は、呼吸器上皮の炎症応答において重要な役割を果たす。重要なことに、持続的なex vivoのSTAT3活性化は、特発性の肺動脈高血圧(IPAH)を有する患者からのPAEC(Masri, F.A. et al., 2007, Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 293:L548-554)および肺動脈平滑筋細胞(PASMC)(Paulin, R. et al., 2011, Circulation 123:1205-1215)において観察される過剰増殖性およびアポトーシス耐性の表現型に関連付けられている。したがって、低酸素によるSTAT3活性化の抑制は、MEX処置の多面的な保護効果の要因となり得る。
【0113】
この低酸素シグナリングの抑制がマウス由来のMEXに特異的な特徴ではないことを検証するために、ヒト臍帯間質からのMSC(hUC-MSC)(Mitchell, K. E. et al. and Penolazzi, L. et al.)を単離し、エキソソームを濃縮された(hUC-MEX)およびエキソソームが枯渇した(hUC-ExD-CM)画分を、本明細書において記載されるように、分子ふるいクロマトグラフィーを通してhUC-MSC条件培地から調製した。
図19Bにおいて表わされるとおり、hPAECの低酸素への暴露は、Tyr-705のリン酸化による強力なSTAT3の活性化をもたらす。hUC-MEXによる処置は、この応答を完全に抑止したが、一方、微小胞を枯渇した画分は、何らの効果も有さなかった。STAT3活性化の抑制が、ヒトおよびマウスの両方に由来するMEXにより共有される特徴であることを実証することに加えて、これらの結果は、肺の血管細胞における低酸素シグナリングの直接的な抑制が、MEX処置により与えられる保護の根底にある主要な機能であることを、強力に示唆する。
【0114】
MEX処置は、肺において、低酸素によるmiR-17 microRNAスーパーファミリーの誘導を抑制し、増殖抑制性miR-204のレベルを増大させる。STAT3(VEGFまたはIL-6のいずれかにより活性化される)は、PAECにおいてmiR-17〜92クラスターのmicroRNAの転写を直接的に調節し、その結果、miR-17の標的である骨形成タンパク質受容体−2(BMPR2)のレベルを低下させることが報告されている(Brock, M. et al., 2009, Circ Res 104:1184-1191)。したがって、本発明者らは、miR-17〜92クラスターのmicroRNA、ならびに、その保存パラログクラスターであるmiR-106b〜25およびmiR-106a〜363に対する、低酸素およびMEX処置の効果を評価した。これらのmicroRNAクラスターは、増殖促進性であり、G1/S期の移行に関与する遺伝子の集団を標的とすると推測されており(Cloonan, N. et al., 2008, Genome Biol 9:R127)、胚の肺形成において中心的な役割を果たすことが報告されている(Carraro, G., 2009, Dev Biol 333:238-250)。本発明者らは、miR-17スーパーファミリーの3つ全てのクラスターを表わす選択されたmicroRNAは、肺において低酸素により上方調節され、この転写活性は、MEX処置により効果的に抑制されたことを見出した(
図20A)。興味深いことに、真菌細胞においてHIF1αを安定化することが報告されているmicroRNAであるmiR-199a〜5p(Rane, S. et al., 2009, Circ Res 104:879-886)、miR-199と同じ宿主遺伝子を共有するmiR-214(Watanabe, T. et al., 2008, Dev Dyn 237:3738-3748)、または直接的なHIF1α調節下のhypoxamirであるmiR-210(Chan, S.Y. et al., 2010, Cell Cycle 9:1072-1083)などの、低酸素シグナリングネットワークに関与するmicroRNAのレベルは、MEX処置により影響を受けず(
図20B)、特異的な低酸素により調節されるシグナル伝達経路に対して標的化されたMEXの効果を示している。
【0115】
重要なことに、本発明者らは、MEX処置が、miR-204(これは、遠位の肺動脈において濃縮されるmicroRNAであって、STAT3により転写が抑制されるが、またフィードフォワード型の調節ループにおいてSTAT3の活性化を阻害する(Courboulin, A. et al., 2011, J Exp Med 208:535-548))の肺でのレベルの増大をもたらすこと(
図20C)を観察した。IPAHを有する患者から単離されたPASMCの増殖性および抗アポトーシス性の表現型は、miR-204のレベルに逆に関連し、PHを有する動物の肺への外因性miR-204の送達が、確立した疾患を緩和した。したがって、本発明者らは、これらの結果を、MEX処置が、低酸素暴露の初期段階においてSTAT3活性化を抑制することにより、肺血管における増殖促進性のmiR-17スーパーファミリーの低酸素による誘導を予防し、遠位の肺血管においてSTAT3-miR-204-STAT3フィードフォワードループを遮断することの指標として解釈する。このことは、胚の血管におけるバランスを増殖抑制状態へシフトさせ、慢性低酸素下における血管のリモデリングを予防する。
図21は、MEXにより調節される、PHの発症において作用することが提案されている低酸素シグナル伝達経路の模式的表現である。
【0116】
まとめると、MSC条件培地を、分子ふるいクロマトグラフィーを通して分画して、低酸素により誘導される肺炎症およびHPHに対して保護する生物学的に活性な成分を同定した。MEXはMSCの作用の重要なベクターであることが見出された:MEXは、低酸素による肺へのマクロファージの流入を効率的に抑制し、低酸素の肺におけるMCP-1、IL-6および低酸素誘導性細胞分裂促進因子(HIMF;FIZZ1/RELM-α/RETNLA)などの炎症促進性および分裂促進性メディエーターの上方調節を遮断した。低酸素の肺において活性化される炎症促進経路はまた、MEX処置により遮断され、このことは、シグナル伝達性転写因子(STAT3)の抑制により証明された。このことは、遠位の肺細動脈において濃縮されるmicroRNAであって、ヒトPHおよび疾患の実験モデルの両方において下方調節される(Courboulin, A. et al.)、miR-204の肺レベルの増大をもたらした。また、低酸素は、肺組織において、STAT3の調節的制御下にあることが示されているmicroRNAであるmiR-17ファミリーのmicroRNAクラスターのメンバーを上方調節すること、および、MEX処置は、この炎症促進性シグナルを効率的に抑制することが見出された。ヒト臍帯由来MSCの培養培地から単離されたMEXは、低酸素による増殖性シグナル伝達経路に対して、マウスMEXと同様の阻害効果を有した。ヒトMEXは、培養されたhPAEC中の低酸素によるSTAT3の活性化を、有意に阻害した。対照的に、エキソソーム枯渇MSC培養培地は、in vivoでも、in vitroで培養細胞に対しても、何らの生理学的効果も有さず、このことは、MEXがMSCのパラクリン機能の重要なエフェクターであるとして示す。
【0119】
均等物
本発明は、その適用において、以下の明細書において記載されるまたは図面において説明される成分の構成および配置の詳細に限定されない。本発明は、他の態様、および多様な方法において実施されることまたは実行されることが可能である。また、本明細書において用いられる表現および用語は、説明を目的とするものであり、限定的なものとしてみなされるべきではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」およびこれらの変化形の使用は、その後に列記される項目およびそれらの均等物ならびにさらなる項目を包含することを意図する。
【0120】
このようにして、本発明の少なくとも1つの態様の幾つかの側面を記載することにより、多様な改変、修飾および改善が、当業者には容易に想起されるであろう。かかる改変、修飾および改善は、本開示の一部であるものと意図され、本発明の精神および範囲の内にあることが意図される。したがって、前述の明細書および図面は、単に例示的なものである。