(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
鉄やアルミなどの金属材料からなる工業用部品を非破壊で検査する代表的な方法として、超音波探傷法が知られている。例えば溶接部を擁する工業構造物においては、母材に比べ脆弱となり易い溶接部の健全性の担保が、構造物の信頼性に直結する。そのため、非破壊検査は重要なプロセスと位置付けられている。
【0003】
溶接部やその近傍に発生する欠陥には様々な種類がある。溶接時に発生する融合不良、スラグ巻込み、凝固割れ、ブローホールなどの他に、経年損傷の一種である応力腐食割れが知られている。応力腐食割れとは、材料の性質、材料に加わる応力、及び材料の使用環境が重なって発生する割れである。例えば原子力発電プラントの原子炉圧力容器に付随する機器や配管の溶接部に応力腐食割れが発生する事例があり、割れが進展するとプラントの健全性に大きく影響する。そのため、応力腐食割れの検出や寸法評価は非常に重要である。
【0004】
溶接部検査には、一般的に、単一の圧電振動素子を内蔵し一定方向に超音波を発振する固定角センサを用いた斜角探傷法や、複数の圧電振動素子を配列したアレイセンサを用いたフェーズドアレイ法が適用される。近年は、検査対象内部を高精度に短時間で画像化して検査することが可能なフェーズドアレイ法の適用が拡大している。
【0005】
フェーズドアレイ法は、各圧電振動素子から送信される超音波の波面が干渉して合成波面を形成しつつビーム状に伝播していくという原理に基づいている。各圧電振動素子の超音波送信タイミング(遅延時間)を制御することで、超音波ビームの入射角度や集束位置を、センサを動かさずに制御することができる。超音波ビームを圧電振動素子の並び方向に平行移動させる(言い換えれば、超音波ビームの入射角を固定する)リニアスキャン方式や、入射点を頂点として超音波ビームを扇状に変化させる(言い換えれば、超音波ビームの入射角を変化させる)セクタスキャン方式が代表的である。
【0006】
原子力発電プラントの原子炉圧力容器に付随する機器や配管は、大型構造物であるため、検査対象となる溶接部の面積も広い。そのため、手動でセンサを動かしながら受信超音波の波形データを収録するのではなく、走査装置でセンサを動かしながら受信超音波の波形データを自動的に収録する方法が一般的である。これには検査対象部を漏れなく走査した記録を残す意味合いもある。自動探傷の走査方法についてはJIS Z 3070:1998「鋼溶接部の超音波自動探傷方法」に規定されており、一般的に溶接線に対して前後走査と左右走査を組み合わせた矩形走査を一定のピッチでセンサを動かしながら行われる。フェーズドアレイ法の場合は、例えば各センサ位置にてセクタスキャンを行う。
【0007】
このようにして収録された波形データに基づき、超音波の反射強度分布を示す探傷画像が生成される。代表的な二次元探傷画像として、検査対象の断面にて超音波の反射強度分布を示すBスコープ、検査対象の探傷面にて超音波の反射強度分布を示すCスコープ、またBスコープと直交する断面にて超音波の反射強度分布を示すDスコープがある。検査者は、複数の二次元探傷画像を波形データと共に順次見比べ、欠陥の有無や位置などを評価する。
【0008】
最近は、三次元領域における超音波の反射強度分布を示す三次元探傷画像を生成する超音波探傷装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。この超音波探傷装置は、波形データの間に内挿処理を施して三次元格子状データ(ボクセルデータ)を作成し、これをボリュームレンダリングやサーフェスレンダリングといった方法で画像表示する。そして、三次元探傷画像を、マウス等の操作に応じて任意の視点で表示したり、任意の断面で表示したりする。これにより、検査者は、複数の二次元探傷画像を順次見比べる必要がなく、効率良く短時間で欠陥の有無や位置を評価することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1は、本実施形態における超音波検査装置の構成を表す概略図である。
図2は、本実施形態における走査装置の構成を表す概略図である。
【0019】
本実施形態の超音波検査装置は、アレイ型の超音波センサ1、走査装置2、送受信部3、計算機4(データ処理部)、表示部5、マウス6、及びキーボード7を備えている。本実施形態では、周方向の溶接部101を有する配管100を検査対象としているが、配管以外のものでもかまわない。なお、配管100は、原子力発電プラント等で用いられる金属製配管であれば、その直径が大きいもので約600mmである。
【0020】
走査装置2は、大別して、超音波センサ1を配管100の表面に沿って機械走査する走査機構8と、この走査機構8を制御する走査制御装置9とで構成されている。走査機構8は、配管100の外周側に取付けられた周方向ガイドレール10と、この周方向ガイドレール10に沿って(すなわち、配管100の周方向に)台車11を移動させる周方向移動機構(詳細には、図示しないモータ等で構成されたもの)と、この台車11に設けられた軸方向ガイドレール12と、この軸方向ガイドレール12に沿って(すなわち、配管100の軸方向に)スライダ(図示せず)を移動させる軸方向移動機構(詳細には、図示しないモータ等で構成されたもの)とを有している。スライダは、バネ等を介して超音波センサ1を支持しており、超音波センサ1を配管100の表面に押付けるようになっている。
【0021】
走査制御装置9は、計算機4からの指令に応じて周方向移動機構及び軸方向移動機構を制御し、超音波センサ1の位置を制御するようするになっている。配管100の表面上のセンサ位置として(配管100の軸方向の座標Xs,配管100の周方向の座標Ys)を用い、超音波センサ1の移動手順を説明する。例えば
図3で示すように、まず、開始位置(Xstart,Ystart)から配管軸方向(
図3中右側)にピッチΔXsずつ移動して位置(Xend,Ystart)に到達する。その後、配管周方向(
図3中下側)にピッチΔYsだけ移動して位置(Xstart,Ystart+ΔYs)に移ってから、配管軸方向にピッチΔXsずつ移動して位置(Xend,Ystart+ΔYs)に到達する。これを終了位置(Xend,Yend)に到達するまで繰返す(但し、Xend>Xstart,Yend>Ystart)。ピッチΔXs,ΔYsは、例えば1〜5mm程度の値が用いられる。
【0022】
超音波センサ1は、配管100の軸方向(
図1中左右方向)に配列された複数の圧電振動素子13を有している。各圧電振動素子13は、送受信部3から入力された駆動信号に応じて超音波を発生しており、それらが合成されて縦波超音波ビーム102を形成するようになっている。そして、縦波超音波ビーム102を配管100の内部に伝播させ、これにより現れる反射波を圧電振動素子13で受信し、その受信信号を送受信部3へ入力するようになっている。なお、
図1では、圧電振動素子13を配管100に直接接触させる場合を例にとって示しているが、くさび(詳細には、超音波が透過する材質で形成され、縦波超音波ビーム102の入射角103を変えるためのもの)を介して接触させるように構成してもよい。
【0023】
送受信部3は、超音波センサ1による超音波の送信と受信を制御するものである。送受信部3は、パルサー14、レシーバ15、遅延時間制御部16、及びデータ収録部17を有している。パルサー14は、各圧電振動素子13に駆動信号を出力し、レシーバ15は、各圧電振動素子
13から入力した受信信号を処理するようになっている。遅延時間制御部16は、計算機4からの指令に応じて、パルサー14から各圧電振動素子13への駆動信号の出力タイミング(遅延時間)と各圧電振動素子13からレシーバ15への受信信号の入力タイミング(遅延時間)の双方を制御する。これにより、セクタスキャン方式(セクタ電子走査方式)による超音波センサ1の動作が得られるようにする。詳細には、縦波超音波ビーム102の入射角103を制御して、縦波超音波ビーム102を扇状に動かす。そして、レシーバ15で処理された各圧電振動素子13の受信信号は、データ収録部17に収録されるとともに、計算機4に出力される。
【0024】
計算機4は、CPU18、ROM19、及びRAM20を有している。CPU18は、ROM19に書込まれたプログラムに従い、走査装置2及び送受信部3へ指令を出力して、走査装置2及び送受信部3を連動させるようになっている。すなわち、例えば上述の
図3で示すように超音波センサ1を移動させながら、各センサ位置にてセクタスキャンを行わせる。そして、超音波センサ1の位置及び縦波超音波ビーム102の入射角103とそれらに関連付けられた各圧電振動素子13の受信信号を、データ収録部17に収録させるようになっている。
【0025】
また、CPU18は、ROM19に書込まれたプログラムに従い、データ収録部17から必要なデータを読込み、RAM20との間でデータの授受を行いながら演算処理する。詳細には、超音波センサ1の位置及び縦波超音波ビーム102の入射角103毎に、各圧電振動素子13の受信信号を遅延時間に応じて合成処理して、波形データを作成する。そして、超音波センサ1の位置(言い換えれば、縦波超音波ビーム102の入射位置)及び縦波超音波ビーム102の入射角103とそれらに関連付けられた波形データからなる探傷データを作成し、この探傷データをデータ収録部17に収録させるようになっている。
【0026】
表示部5は、波形表示画面21、二次元表示画面22、及び三次元表示画面23を有している。なお、本実施形態では、波形表示画面21、二次元表示画面22、及び三次元表示画面23を有する1つの表示部5を備えているが、波形表示画面21、二次元表示画面22、及び三次元表示画面23をそれぞれ有する複数の表示部5を備えていてもよい。
【0027】
計算機4のCPU18は、マウス6やキーボード7の操作で入力されたセンサ位置及び入射角に対応する波形データをデータ収録部17から読込み、表示部5の波形表示画面21に表示させるようになっている(
図4参照)。
【0028】
また、計算機4のCPU18は、入射角毎の波形データの間に内挿処理を施して、二次元格子状データ(ピクセルデータ)を作成する。これにより、セクタ電子走査領域(詳細には、入射点を頂点として縦波超音波ビーム102を扇状に変化させる領域)における超音波の反射強度分布を示す二次元探傷画像(セクタ画像)を生成する。そして、マウス6やキーボード7の操作で入力されたセンサ位置に対応する二次元探傷画像を、表示部5の二次元表示画面22に表示させるようになっている。
【0029】
図5(a)及び
図5(b)は、本実施形態における二次元表示画面22の表示例を表す図であり、
図5(a)は配管100にき裂がない場合を示し、
図5(b)は配管100にき裂がある場合を示している。
図6は、
図5(a)及び
図5(b)で示された底面エコーと
図5(b)で示された直接エコーを配管100の軸方向断面に投影した図である。
図7は、
図5(b)で示された二次エコーを配管100の軸方向断面に投影した図である。
【0030】
図5(a)及び
図5(b)で示すように、き裂の有無にかかわらず、二次元探傷画像104A,104Bには底面エコー105が現れる。この底面エコー105は、
図6で示すように、超音波センサ1の真下方向に送信された縦波超音波ビーム102Aが配管100の内面106で反射した反射波である。この縦波超音波ビーム102Aの入射角は、0〜20度程度の範囲に及ぶことがある。これは、一般的に、超音波ビームが有限の太さをもつためである。
【0031】
図5(b)で示すように、き裂がある場合、二次元探傷画像104Bには直接エコー107及び二次エコー108が現れる。直接エコー107は、縦波超音波ビームがき裂で直接的に反射した反射波であり、一般的に端部エコー107Aとコーナーエコー107Bに分かれる。端部エコー107Aは、
図6で示すように、縦波超音波ビーム102Bがき裂109の先端で回析した縦波超音波成分に起因する反射波である。コーナーエコー107Bは、
図6で示すように、縦波超音波ビーム102Cがき裂109の開口部で多重反射した反射波である。なお、き裂109が短い場合や複雑な形状をしていると、端部エコー107Aとコーナーエコー107Bに分かれない場合もある。また、端部エコー107Aの強度がコーナーエコー107Bの強度より小さいため、コーナーエコー107Bのみが現れる場合もある。
【0032】
二次エコー108は、縦波超音波ビームがモード変換して二次的に発生した超音波(本実施形態では、二次クリーピング波)がき裂109で反射した反射波である。詳しく説明すると、
図7で示すように、入射角70度程度の縦波超音波ビーム102Dが配管100内に入射している場合、入射角30度程度の横波超音波ビーム110Aも同時に配管100内に入射している。この横波超音波ビーム110Aが配管100の内面106に達すると、内面106の表面を伝わる二次クリーピング波110Bにモード変換する。この二次クリーピング波110Bがき裂109の開口部で散乱され、その散乱波110Cが超音波センサ1で受信される。ここで、二次元探傷画像は、縦波超音波ビームの入射角と音速に基づいて描画されている。そのため
、散乱波110Cの受信信号、すなわち二次エコー108は、縦波超音波ビーム102Dの入射角70度前後に現れる。なお、二次クリーピング波110Bにモード変換される横波超音波ビーム110Aの入射角が30度程度の幅を持つため、二次エコー108は、図示のように、縦波超音波ビームの入射角に広い幅を持つエコーとなる。また、二次エコー108は、一般的に、縦波超音波ビームの入射角が50度程度以上で現れ、その強度が直接エコー107より大きい。
【0033】
上述の
図1に戻り、計算機4のCPU18は、波形データの間に内挿処理を施して、三次元格子状データ(ボクセルデータ)を作成する。別の言い方をすれば、
図8で概念的に示すように、センサ位置毎の二次元探傷画像104の間に内挿処理を施して、ボクセルデータを作成する。これにより、三次元領域における超音波の反射強度分布を示す三次元探傷画像を生成する。そして、この三次元探傷画像を表示部5の三次元表示画面23に表示させるようになっている。
【0034】
三次元探傷画像の描画アルゴリズムは、例えばグラフィックス・アプリケーション向けの業界標準のグラフィックス・アプリケーション・プログラミング・インタフェース(グラフィックスAPI)であるOpenGL(登録商標)やDirectX(登録商標)というライブラリの中で実現されている。これらのグラフィックスAPIをプログラム中で用いて、表示する物体の形状や視点、表示位置などの必要な情報を与えれば、三次元表示画面
23上の任意の位置に、任意の色、透明度、大きさで三次元探傷画像を描画する。すなわち、マウス6やキーボード7の操作に応じて、三次元探傷画像を任意の視点で表示したり、任意の寸法に拡大して表示したりすることが可能である。また、マウス6やキーボード7の操作に応じて、三次元探傷画像を任意の位置で切断した画像を表示させることも可能である。また、マウス6やキーボード7の操作に応じて、表示色や透明度も変更可能である。表示色は、反射強度に応じて変えることが可能である。なお、複数の表示色パターンを予め用意し、マウス6やキーボード7の操作に応じて選択してもよい。
【0035】
ここで、本実施形態の大きな特徴は、三次元探傷画像の生成及び表示に関するものであり、以下、比較例を用いながら説明する。
【0036】
図9及び
図10は、比較例における三次元表示画面の表示例を表す図である。なお、
図9は、三次元表示画面で三次元探傷画像の全体が表示された場合を示し、
図10は、三次元表示画面で三次元探傷画像の一部(二次エコー群の周辺領域)が拡大された場合を示す。
【0037】
比較例では、配管100の全走査領域を含む三次元領域112(
図9中点線で示された複数のボクセルからなる領域。但し、便宜上、
図9で示すボクセル寸法は実際より大きめになっている)における超音波の反射強度分布を示す三次元探傷画像113を生成し、この三次元探傷画像113を三次元表示画面111で表示する。三次元探傷画像113には、円筒状の底面エコー群114(詳細には、上述の
図5(a)及び
図5(b)で示された底面エコー105が一週分つながったもの)が現れている。また、例えば配管100の溶接部の近傍に2つのき裂が生じた場合であって、2つのき裂にそれぞれ対応する2つの二次エコー群115が現れている。これにより、検査者は、欠陥の有無や位置を評価することが可能である。
【0038】
そして、さらに、欠陥を詳細に評価するため、二次エコー群115の周辺領域(若しくは、想定される欠陥の周辺領域)を拡大して直接エコー群を観察できることが好ましい。しかし、
図10で示すように二次エコー群115の周辺領域を拡大しても、三次元探傷画像113の解像度が比較的低いため、二次エコー群115を確認できでも、直接エコー群を確認することが困難である。なお、三次元探傷画像113の解像度が低いのは、三次元探傷画像113のボクセル数を抑えて、三次元探傷画像113の生成時間を抑えるためである。また、必要とされる計算機のメモリを抑えるためである。
【0039】
そこで、本実施形態では、計算機4のCPU18は、データ収録部17で収録された探傷データに基づき、少なくとも直接エコー群を含み(言い換えれば、配管100の欠陥による超音波の反射位置を含み)かつ三次元領域
112(以降、低解像度領域という)より小さくなるような三次元領域(以降、高解像度領域という)を自動的に設定する。そして、高解像度領域における超音波の反射強度分布を、三次元探傷画像
113(以降、低解像度画像という)より高解像度で示す(言い換えれば、ボクセル寸法が小さい)三次元探傷画像(以降、高解像度画像という)を生成する。そして、表示部5の三次元表示画面23に、低解像度画像
113及び高解像度画像を表示させるようになっている。
【0040】
図11は、本実施形態における超音波探傷装置の処理内容を表すフローチャートである。
図12及び
図13は、
図11中のステップS210の高解像度領域の設定の処理内容を表すフローチャートである。
【0041】
ステップS200にて、計算機4のCPU18は、走査装置2及び送受信部3へ指令を出力して、走査装置2及び送受信部3を連動させる。すなわち、上述の
図3で示すように超音波センサ1を移動させながら、各センサ位置にてセクタスキャンを行わせる。そして、超音波センサ1の位置及び縦波超音波ビーム102の入射角103とそれらに関連付けられた各圧電振動素子13の受信信号を、データ収録部17に収録させる。また、超音波センサ1の位置及び縦波超音波ビーム102の入射角103毎に、各圧電振動素子13の受信信号を遅延時間に応じて合成処理して、波形データを作成する。そして、超音波センサ1の位置及び縦波超音波ビーム102の入射角103とそれらに関連付けられた波形データからなる探傷データを作成し、この探傷データをデータ収録部17に収録させる。
【0042】
その後、ステップS210に進み、計算機4のCPU18は、データ収録部17に収録された探傷データに基づき、上述した高解像度領域を設定する。なお、センサ位置の座標系(すなわち、二次元座標系)及び高解像度領域の座標系(すなわち、三次元座標系)の原点Oは、後述の
図15で示すように、配管100の径方向断面(言い換えれば、配管100の軸方向に垂直な断面)における最上点とする。
【0043】
この高解像度領域の設定では、まず、ステップS211にて、高解像度領域のX方向(配管100の軸方向)の最小値変数Xmin及び最大値変数Xmaxを、Xmin=Xstart、Xmax=Xend+ΔXに設定する。なお、ΔXは、配管100の軸方向におけるセクタ電子走査領域の寸法より大きくなるように予め設定された値である。
【0044】
そして、ステップS212に進み、センサ位置の座標変数Xs,Ysを、Xs=Xstart、Ys=Ystartに初期化する。また、ステップS213に進み、高解像度領域のY方向(配管100の一半径方向であって、本実施形態では水平方向)の最小値変数Ymin及び最大値変数Ymaxを、Ymin=R、Ymax=−Rに初期化する(ここで、Rは配管の半径)。また、高解像度領域のZ方向(Y方向と直交する配管100の他の半径方向であって、本実施形態では鉛直方向)の最小値変数Zmin及び最大値変数Zmaxを、
Zmin=2R、
Zmax=0に初期化する。
【0045】
そして、ステップS214に進み、センサ位置(Xs,Ys)における波形データをデータ収録部17から読込む(言い換えれば、センサ位置(Xs,Ys)に対応する二次元探傷画像に相当する波形データを読込む)。最初は、Xs=Xstart、Ys=Ystartであるから、センサ位置(Xstart,Ystart)における波形データを読込む。
【0046】
その後、ステップS215に進み、読込んだ波形データから、セクタ電子走査領域のうちの予め設定された注目領域116に該当する波形データを選択し、選択した波形データにおける全ての波形強度(又は最大となる波形強度)を抽出する。注目領域116は、例えば
図14で示すように、セクタ電子走査領域のうちの縦波超音波の入射角が50度以上である領域であって、二次エコー108が現れかつ底面エコー105が現れない領域である。その後、ステップS216に進み、抽出した波形強度のうち予め設定された閾値以上のものがあるか否かを判定する。これにより、注目領域116に該当する波形データに二次エコー
108が含まれているか否かを判定する。なお、
図14で示すように、注目領域116には二次エコー
108だけでなく直接エコー107A(又は/及び107B)も現れる場合があるものの、かまわない。
【0047】
なお、
図14で示す入射点近傍の領域117に該当する波形データには、超音波センサ1に起因するノイズが現れやすい。そのため、注目領域116から領域117を除外することが好ましい。また、注目領域116に該当する波形データに測定系特有のノイズ等が含まれる場合は、フィルター処理等でノイズを予め取除いておくことが好ましい。また、探傷装置に由来する電気的な微小なノイズが含まれる場合は、ノイズレベルより上に設定した閾値を用いればよい。
【0048】
例えばステップS216にて抽出した波形強度のうち予め設定された閾値以上のものがある場合(言い換えれば、注目領域116に該当する波形データに二次エコー
108が含まれている場合)は、その判定が満たされ、ステップS217に移る。ステップS217では、下記の式(1)及び(2)により、二次元座標系におけるセンサ位置の配管周方向座標変数Ysを、三次元座標系におけるY方向座標変数Y1及びZ方向座標変数Z1に変換する。すなわち、
図15で示すように、配管100の径方向断面上の位置P1(Y1,Z1)を演算する。また、ステップS218に進み、下記の式(3)及び(4)により、センサ位置に対応する配管内側位置のY方向座標変数Y2及びZ方向座標変数Z2を演算する。すなわち、
図15で示すように、配管100の径方向断面上のP2(Y2,Z2)を演算する。
【0049】
Y1=R×sinθ ・・・(1)
Z1=R−R×cosθ ・・・(2)
Y2=(R−ΔR)×sinθ ・・・(3)
Z2=R−(R−ΔR)×cosθ・・・(4)
ここで、θ=Ys/R[rad]である。また、ΔRは、配管100の厚みより大きくなるように予め設定された値である。
【0050】
その後、ステップS219に進み、Y方向座標変数Y1,Y2に応じて高解像度領域のY方向の最小値変数Ymin及び最大値変数Ymaxを更新する。詳細には、Y1とYminを比較し、Y1<YminであればYminをY1に更新し、Y1≧YminであればYminを更新しない。また、Y1とYmaxを比較し、Y1>YmaxであればYmaxをY1に更新し、Y1≦YmaxであればYmaxを更新しない。同様に、Y2とYminを比較し、Y2<YminであればYminをY2に更新し、Y2≧YminであればYminを更新しない。また、Y2とYmaxを比較し、Y2>YmaxであればYmaxをY2に更新し、Y2≦YmaxであればYmaxを更新しない。
【0051】
また、ステップS220に進み、Z方向座標変数Z1,Z2に応じて高解像度領域のZ方向の最小値変数Zmin及び最大値変数Zmaxを更新する。詳細には、Z1とZminを比較し、Z1<ZminであればZminをZ1に更新し、Z1≧ZminであればZminを更新しない。また、Z1とZmaxを比較し、Z1>ZmaxであればZmaxをZ1に更新し、Z1≦ZmaxであればZmaxを更新しない。同様に、Z2とZminを比較し、Z2<ZminであればZminをZ2に更新し、Z2≧ZminであればZminを更新しない。また、Z2とZmaxを比較し、Z2>ZmaxであればZmaxをZ2に更新し、Z2≦ZmaxであればZmaxを更新しない。
【0052】
そして、ステップS221に進み、センサ位置の座標変数Xs,Ysを、Xs=Xstart、Ys=Ys+ΔYsに更新する。その後、ステップS222に進み、Ys≦Yendであるか否かを判定する。最初のうちは、ステップS222の判定が満たされるので、上述のステップS214に移る。そして、ステップS221でセンサ位置の座標変数Ysが更新されているから、ステップS214では、次のセンサ位置(Xstart,Ystart+ΔY)における波形データをデータ収録部17から読込む。
【0053】
その後、ステップS215に進み、読込んだ波形データから、注目領域116に該当する波形データを選択し、選択した波形データにおける全ての波形強度を抽出する。その後、ステップS216に進み、抽出した波形強度のうち予め設定された閾値以上のものがあるか否かを判定する。
【0054】
例えばステップS216にて抽出した波形強度のうち予め設定された閾値以上のものがない場合(言い換えれば、注目領域116に該当する波形データに二次エコー
108が含まれていない場合)は、その判定が満たされず、ステップS223に移る。ステップS223では、センサ位置の配管軸方向座標変数Xsを、Xs=Xs+ΔXsに更新する。その後、ステップS224に進み、Xs≦Xendであるか否かを判定する。最初のうちは、ステップS224の判定が満たされるので、上述のステップS214に移る。そして、ステップS223でセンサ位置の座標変数Xsが更新されているから、ステップS214では、次のセンサ位置(Xstart+ΔX,Ystart+ΔY)における波形データをデータ収録部17から読込む。
【0055】
その後、ステップS215に進み、読込んだ波形データから、注目領域116に該当する波形データを選択し、選択した波形データにおける全ての波形強度を抽出する。その後、ステップS216に進み、抽出した波形強度のうち予め設定された閾値以上のものがあるか否かを判定する。
【0056】
例えばステップS216にて抽出した波形強度のうち予め設定された閾値以上のものがない場合は、その判定が満たされず、ステップS223に移る。ステップS223では、センサ位置の配管軸方向座標変数Xsを、Xs=Xs+ΔXsに更新する。その後、ステップS224に進み、Xs≦Xendであるか否かを判定する。上述したステップS214→S215→S216→S223の手順が繰返されて、Xs=Xend+ΔXに更新されると、ステップS224の判定が満たされなくなり、ステップS225に移る。
【0057】
ステップS225では、Ymin>Ymaxであるか否か(若しくは、Zmin>Zmaxであるか否か)を判定する。これにより、高解像度領域の変数Ymin、Ymax、Zmin、Zmaxが初期値であるか否か、すなわちステップS217〜S220を経由して高解像度領域の変数Ymin、Ymax、Zmin、Zmaxが更新されていないか否かを判定する。
【0058】
例えばステップS225にてYmin≦Ymax若しくはZmin≦Zmaxである場合(言い換えれば、高解像度領域の変数Ymin、Ymax、Zmin、Zmaxが更新されている場合)は、その判定が満たされず、ステップS226に移る。ステップS226では、1つの高解像度領域としてXmin,Xmax,Ymin、Ymax、Zmin、Zmaxを保存する。その後、ステップS227に移る。
【0059】
一方、例えばステップS225にてYmin>Ymax若しくはZmin>Zmaxである場合(言い換えれば、高解像度領域の変数Ymin、Ymax、Zmin、Zmaxが更新されていない場合)は、その判定が満たされ、ステップS227に移る。
【0060】
ステップS227では、センサ位置の座標変数Xs,Ysを、Xs=Xstart、Ys=Ys+ΔYsに更新する。その後、ステップS228に進み、Ys≦Yendであるか否かを判定する。Ys≦Yendであるうちは、ステップS228の判定が満たされて、ステップS214に移り、上記同様の手順を繰返す。
【0061】
そして、ステップS222又はS228にてYs>Yendとなると、その判定が満たされず、ステップS210の高解像領域の設定が終了する。なお、高解像領域の設定が終了するまでに、再度、ステップS225の判定が満たされてステップS226に進んだ場合は、他の高解像度領域としてXmin,Xmax,Ymin、Ymax、Zmin、Zmaxを保存する。
【0062】
ステップS210の高解像領域の設定が終了すると、ステップS230に移る。ステップ230にて、計算機4のCPU18は、データ収録部17に収録された探傷データに基づき、配管100の全走査領域を含むように予め設定された低解像度領域112における反射強度分布を示す低解像度画像113を生成するとともに、ステップS210で設定された高解像度領域における反射強度分布を示す高解像度画像を生成する。その後、ステップS240に進み、計算機4のCPU18は、表示部5の三次元表示画面23に低解像度画像113を表示させるとともに、低解像度画像113上に高解像度画像を重ねるように表示させる。
【0063】
次に、本実施形態の作用効果を、
図16及び
図17を用いて説明する。
【0064】
図16及び
図17は、本実施形態における三次元表示画面23の表示例を表す図である。なお、
図16は、三次元表示画面23で低解像度画像113の全体が高解像度画像とともに表示された場合を示し、
図17は、三次元表示画面23で高解像度画像の一部(二次エコー群の周辺領域)が拡大された場合を示す。
【0065】
本実施形態では、高解像度領域118(
図16中点線で示された複数のボクセルからなる領域。但し、便宜上、
図16で示すボクセル寸法は実際より大きめになっている)における超音波の反射強度分布を示す高解像
度画像119を生成し、この高解像度画像119を低解像度画像113上に重ねて表示する。そして、
図17で示すように二次エコー群115の周辺領域(すなわち、高解像度画像119の一部)を拡大すると、高解像度画像119の解像度が高いため、二次エコー群115だけでなく、直接エコー群120も確認できる。したがって、欠陥を詳細に評価することができる。
【0066】
また、計算機4が探傷データに基づき高解像度領域118を自動的に設定するので、人為的に設定する場合と比べ、時間を短縮できる。また、高解像度領域118が比較的小さいので、高解像度画像119の生成時間や計算機4のメモリを抑えることができる。したがって、効率よく短時間で欠陥の評価を行うことができる。
【0067】
なお、上記一実施形態においては、表示部5の三次元表示画面23で低解像度画像113上に高解像度画像119を重ねて表示する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、例えば
図18で示す三次元表示画面23Aのように、低解像度画像113と高解像度画像119を別々に表示し、低解像度画像113上に高解像度領域118を表示してもよい。また、複数の高解像度領域118がある場合は、マウス6やキーボード7の操作で選択された高解像度領域118に対応して、高解像度画像119を切替えるように表示してもよいし、若しくは複数の高解像度画像119を表示してもよい。このような変形例においても、上記同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、上記一実施形態においては、注目領域116として、セクタ電子走査領域のうちの縦波超音波の入射角が50度以上である領域を設定し、この注目領域116に該当する波形データに対し、二次エコー108を含むか否かを判定する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、例えば直接エコー107(特にコーナーエコー107B)の強度が十分大きければ、図
19で示すように、直接エコー107(詳細には、端部エコー107A又はコーナーエコー107B)が現れるような注目領域116Aを設定し、この注目領域116Aに該当する波形データに対し、直接エコー107を含むか否かを判定してもよい。このような変形例においても、上記同様の効果を得ることができる。
【0069】
また、上記一実施形態においては、走査装置2は、配管100の周方向及び軸方向に超音波センサ1を機械走査する構成を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、走査装置は、セクタ電子走査方向(言い換えれば、圧電振動素子13の並び方向)に対して交差する方向に、超音波センサ1を機械走査する構成であればよい。したがって、例えば配管100の周方向のみに、超音波センサ1を機械走査する構成であってもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。