【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アクリル共重合体100重量部と、軟化点が130℃以下のテルペンフェノール樹脂20〜30重量部とを含有する粘着剤層を有し、前記アクリル共重合体は、(a)2−エチルヘキシルアクリレート26.7〜56.98重量%、(b)ブチルアクリレート30〜50重量%、(c)メチルアクリレート11〜18重量%、(d)アクリル酸1〜5重量%、及び、(e)水酸基を有する(メタ)アクリレート0.02〜0.3重量%を含有する混合モノマーを共重合して得られ、重量平均分子量(Mw)が40万〜100万である電子機器用粘着シートである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者は、特定のアクリル共重合体と特定のテルペンフェノール樹脂とを含有する粘着剤層を有する電子機器用粘着シートは、発泡体等の緩衝性のある基材ではなく、PETフィルム等の緩衝性の小さい基材を有する場合であっても高い耐衝撃接着性を発現することができ、また、発泡体を用いる必要がないため打ち抜き加工性にも優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の電子機器用粘着シートは、アクリル共重合体100重量部と、軟化点が130℃以下のテルペンフェノール樹脂20〜30重量部とを含有する粘着剤層を有する。
上記アクリル共重合体は、(a)2−エチルヘキシルアクリレート26.7〜56.98重量%、(b)ブチルアクリレート30〜50重量%、(c)メチルアクリレート11〜18重量%、(d)アクリル酸1〜5重量%、及び、(e)水酸基を有する(メタ)アクリレート0.02〜0.3重量%を含有する混合モノマーを共重合して得られる。
【0010】
上記(a)の2−エチルヘキシルアクリレートが26.7重量%未満であると、上記粘着剤層の粘着力が低下し、耐衝撃接着性が低下する。上記(a)の2−エチルヘキシルアクリレートが56.98重量%を超えると、上記粘着剤層の打ち抜き加工性が低下する。上記(a)の2−エチルヘキシルアクリレートの含有量の好ましい下限は27.7重量%、好ましい上限は45.7重量%である。
【0011】
上記(b)のブチルアクリレートが30重量%未満であると、上記粘着剤層が柔らかくなりすぎて、打ち抜き加工性が低下する。上記(b)のブチルアクリレートが50重量%を超えると、上記粘着剤層が硬くなりすぎて、耐衝撃接着性が低下する。上記(b)のブチルアクリレートの含有量の好ましい下限は39重量%、好ましい上限は40重量%である。
【0012】
耐衝撃接着性が高く、打ち抜き加工性にも優れた粘着剤層とするためには、(c)のメチルアクリレートの含有量を11〜18重量%に調整することが特に重要である。上記(c)のメチルアクリレートが11重量%未満であると、上記粘着剤層の耐衝撃接着性が低下する。上記(c)のメチルアクリレートを11重量%以上共重合することで、上記アクリル共重合体の側鎖が小さくなることで分子鎖のリニア性が向上して、分子鎖の絡み合いが増大すると推定される。このため、上記粘着剤層が衝撃を受けて変形する際には、分子鎖の絡み合いのズレによるエネルギー吸収が増大し、耐衝撃接着性が向上すると推定される。
なお、分子鎖の架橋構造は、弾性変形を主体として変形するので、衝撃応力を流動変形のエネルギーに変換しにくく、吸収分散しにくい。このため、衝撃応力を弾性エネルギーとして架橋構造の内部にため込み、被着体との界面における応力分散性が低下して、耐衝撃接着性が低下する。これに対して、分子鎖の絡み合い構造は架橋構造とは異なり、塑性変形が可能であり、衝撃応力を流動変形のエネルギーに変換して吸収分散することができる。このため、ある程度の絡み合いの増大は、耐衝撃接着性の向上をもたらすと考えられる。
上記(c)のメチルアクリレートが18重量%を超えると、ガラス転移温度(Tg)の上昇により上記粘着剤層が硬くなりすぎて、耐衝撃接着性が低下する。上記(c)のメチルアクリレートの含有量の好ましい上限は15重量%である。
【0013】
上記(d)のアクリル酸が1重量%未満であると、上記粘着剤層の粘着力が低下したり、上記粘着剤層が柔らかくなりすぎて、打ち抜き加工性が低下したりする。上記(d)のアクリル酸が5重量%を超えると、ガラス転移温度(Tg)の上昇により上記粘着剤層が硬くなりすぎて、耐衝撃接着性が低下する。上記(d)のアクリル酸の含有量の好ましい上限は3重量%である。
【0014】
上記(e)の水酸基を有する(メタ)アクリレートは、後述するイソシアネート系架橋剤等により架橋される成分である。上記(e)の水酸基を有する(メタ)アクリレートを0.02〜0.3重量%共重合することで、耐衝撃接着性が高く、打ち抜き加工性にも優れた粘着剤層とすることができる。
上記(e)の水酸基を有する(メタ)アクリレートが0.02重量%未満であると、上記粘着剤層が柔らかくなりすぎて、打ち抜き加工性が低下する。上記(e)の水酸基を有する(メタ)アクリレートが0.3重量%を超えると、上記粘着剤層の架橋密度が高くなり、塑性変形性が低下して弾性変形が主体となるため、耐衝撃接着性が低下する。
上記水酸基を有する(メタ)アクリレートとして、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキブエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
上記混合モノマーは、上記(a)〜(e)のモノマーに加えて、必要に応じて、上記(a)〜(e)のモノマーと共重合可能な他のビニルモノマーを含有してもよい。
【0016】
上記混合モノマーを共重合して上記アクリル共重合体を得るには、上記混合モノマーを、重合開始剤の存在下にてラジカル反応させればよい。上記混合モノマーをラジカル反応させる方法、即ち、重合方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。なかでも、溶液沸点重合が好ましい。
上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
上記有機過酸化物として、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート等が挙げられる。上記アゾ化合物として、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
重合方法として溶液重合を用いる場合、反応溶剤として、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等が挙げられる。これらの反応溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記アクリル共重合体は、重量平均分子量(Mw)が40万〜100万である。
上記アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)が40万未満であると、上記粘着剤層のベタツキが高くなりすぎて、打ち抜き加工性が低下する。上記アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)が100万を超えると、上記粘着剤層の粘着力が低下し、耐衝撃接着性が低下する。
【0019】
重量平均分子量(Mw)は、GPC(Gel Permeation Chromatography:ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法によりポリスチレン換算分子量として測定される。具体的には、重量平均分子量(Mw)は、アクリル共重合体をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルターで濾過し、得られた濾液を用いてGPC法によりポリスチレン換算分子量として測定される。GPC法では、例えば、2690Separations Model(Water社製)等を使用できる。
【0020】
重合条件(例えば、重合開始剤の種類又は量等)を適宜調整することによって、上記アクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)を上記範囲に調整しやすくなる。
【0021】
上記軟化点が130℃以下のテルペンフェノール樹脂を、上記アクリル共重合体100重量部に対して20〜30重量部配合することで、上記粘着剤層の粘着力が高くなり、耐衝撃接着性が向上する。
上記テルペンフェノール樹脂の軟化点が130℃を超えると、上記粘着剤層が硬くなりすぎて、耐衝撃接着性が低下する。
なお、軟化点とは、JIS K2207環球法により測定した軟化点である。
【0022】
上記軟化点が130℃以下のテルペンフェノール樹脂が20重量部未満であると、上記粘着剤層の粘着力が低下し、耐衝撃接着性が低下する。上記軟化点が130℃以下のテルペンフェノール樹脂が30重量部を超えると、ガラス転移温度(Tg)の上昇により上記粘着剤層が硬くなりすぎて、耐衝撃接着性が低下する。
【0023】
上記粘着剤層は、架橋剤によりゲル分率35〜50%に架橋されていることが好ましい。
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、基材に対する密着安定性に優れるため、イソシアネート系架橋剤が好ましい。上記イソシアネート系架橋剤として、例えば、コロネートHX(日本ポリウレタン工業社製)、コロネートL(日本ポリウレタン工業社製)、マイテックNY260A(三菱化学社製)等の脂肪族イソシアネート系架橋剤等が挙げられる。
上記架橋剤の配合量は、上記アクリル共重合体100重量部に対して0.1〜6重量%が好ましく、0.3〜5重量%がより好ましい。
【0024】
上記架橋剤により上記範囲のゲル分率に架橋されている粘着剤層を得る方法としては、上記架橋剤を添加して、上記粘着剤層を構成する樹脂の主鎖間に架橋構造を形成する方法が好ましい。上記架橋剤の種類又は量を適宜調整することによって、上記粘着剤層のゲル分率を上記範囲に調整しやすくなり、耐衝撃接着性及び打ち抜き加工性をより向上させることができる。
【0025】
上記粘着剤層は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等の添加剤、ロジン系樹脂等のその他の樹脂等を含有していてもよい。
【0026】
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、50〜150μmが好ましい。上記粘着剤層の厚みが50μm未満であると、耐衝撃接着性が低下することがある。上記粘着剤層の厚みが150μmを超えると、打ち抜き加工性が低下することがある。
【0027】
本発明の電子機器用粘着シートは、基材を有さないノンサポートタイプであってもよいし、基材を有するサポートタイプであってもよい。サポートタイプの場合には、基材の両面に上記粘着剤層が形成されていることが好ましい。
本発明の電子機器用粘着シートは、上述のように特定のアクリル共重合体と特定のテルペンフェノール樹脂とを含有する粘着剤層を有することから、発泡体等の緩衝性のある基材ではなく、PETフィルム等の緩衝性の小さい基材を有する場合であっても高い耐衝撃接着性を発現することができ、また、発泡体を用いる必要がないため打ち抜き加工性にも優れる。
【0028】
上記基材は特に限定されないが、発泡体ではないことが好ましく、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルム、PETフィルム等のポリエステル系樹脂フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム等が挙げられる。なかでも、打ち抜き加工性に優れる点から、ポリエステル系樹脂フィルムが好ましい。
また、光透過防止のために黒色印刷された基材、光反射性向上のために白色印刷された基材、金属蒸着された基材等も用いることができる。
【0029】
上記基材の厚みは特に限定されないが、20〜100μmが好ましく、25〜75μmがより好ましい。上記基材の厚みが20μm未満であると、電子機器用粘着シートの打ち抜き加工性又は機械的強度が低下することがある。上記基材の厚みが100μmを超えると、電子機器用粘着シートの腰が強くなりすぎて、被着体の形状に沿って密着させて貼り合わせることが困難になることがある。
【0030】
本発明の電子機器用粘着シートの製造方法は特に限定されず、例えば、上記アクリル共重合体と、上記軟化点が130℃以下のテルペンフェノール樹脂とを、必要に応じてその他の配合成分と共に混合し、攪拌して粘着剤溶液を調製し、続いて、この粘着剤溶液を離型処理したPETフィルムに塗工し、乾燥させて粘着剤層を形成し、この粘着剤層を基材に転着させる方法等が挙げられる。更に、基材の反対の面にも同様にして粘着剤層を転着させてもよい。
【0031】
本発明の電子機器用粘着シートの用途は特に限定されないが、画像表示装置又は入力装置を搭載した電子機器(例えば、携帯電話、携帯情報端末等)の組み立てのために用いられることが好ましい。具体的には、例えば、電子機器の表面を保護するためのカバーパネルをタッチパネルモジュール又はディスプレイパネルモジュールに接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするために用いられることが好ましい。更に、本発明の電子機器用粘着シートは、タッチパネルモジュールにおいて金属薄膜付フィルムを支持体(PETフィルム等)等に接着するために用いられてもよい。
また、これらの用途における本発明の電子機器用粘着シートの形状は特に限定されず、長方形等であってもよいが、額縁状が好ましい。
【0032】
図1に、本発明の電子機器用粘着シートを用いて、カバーパネルをタッチパネルモジュールの表面に貼り合わせた電子機器を示す模式図を示す。
図1に示す電子機器1においては、額縁状に打ち抜かれた電子機器用粘着シート2により、カバーパネル3がタッチパネルモジュール4の表面に貼り合わされている。