(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、プロセスや装置を煩雑にすることがなく、微粒子による詰まりが生じるのを防止できるとともに、微粒子の再凝集を抑制してエアロゾルを安定且つ効率良く生成させることが可能な粉体供給器、及び、この粉体供給器を備えた成膜装置、並びに、それらを用いた成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、粉体供給器であって、原料物を収容する収容部と、前記原料物を解砕して微粒子を調製する解砕部と、前記微粒子をエアロゾル化するエアロゾル生成部と、を有してなり、前記収容部、前記解砕部及び前記エアロゾル生成部が、同一の生成容器内において、該生成容器内の下部側から上部側に向かってこの順で備えられており、
前記解砕部は、平面視長方形状で板状の羽根を有する回転体からなるとともに、前記羽根が、当該解砕部の長手方向の両側において、それぞれ逆面側に折り曲げられた形状とされ、前記生成容器内の前記エアロゾル生成部に向けて上昇する旋回流を発生させる構造とされており、前記原料物が、前記収容部から前記解砕部に向けて連続的に供給されるとともに、前記微粒子が、
前記旋回流により、前記解砕部から前記エアロゾル生成部に向けて連続的に供給され、該エアロゾル生成部で連続的に生成された前記エアロゾルを外部に向けて順次送出することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の粉体供給器であって、前記解砕部が、前記長手方向の両側にそれぞれ配置された2枚羽根を有する回転体からなることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、収容部、解砕部及びエアロゾル生成部が同一の生成容器内に備えられている構成なので、原料解砕とエアロゾル化が、同一工程でほぼ同時に連続して進行するため、プロセスが簡便になる。また、解砕部とエアロゾル生成部が同一の生成容器内に備えられることで、装置構造も簡便になる。さらに、原料物を解砕した直後に連続的に微粒子をエアロゾル化できる構成なので、微粒子を搬送する手段を省略することができ、搬送経路において微粒子の詰まりが生じるのを抑制することができるとともに、エアロゾル化前の微粒子の滞留時間を短縮し、微粒子が再凝集するのを抑制できる。従って、プロセスや装置を煩雑にすることがなく、微粒子による詰まりが生じるのを防止できるとともに、微粒子の再凝集を抑制してエアロゾルを安定且つ効率良く生成させることが可能となる。
【0009】
また、本発明によれば、回転体からなる解砕部により、原料物を安定した粒度分布で解砕して微粒子化することができるので、エアロゾルをより安定して効率良く生成させることが可能となる。
【0010】
さらに、本発明によれば、
上記構成の解砕部が回転することで、エアロゾル生成部に向けて上昇旋回流となる気流を発生させる構造なので、解砕部によって調製された微粒子を直ちに生成容器内で浮上させることができ、微粒子が再凝集するのを効果的に抑制することが可能となる。
【0011】
請求項
3に記載の発明は、請求項
1又は請求項
2に記載の粉体供給器であって、前記解砕部が、前記回転体の回転数が1000〜30000rpmの範囲であることを特徴とする。
本発明によれば、回転体の回転数を適正範囲にすることで、まず、原料物を効率良く解砕して微粒子として調製できるとともに、調整後の微粒子を直ちに生成容器内で浮上させることができるので、微粒子が再凝集するのをさらに効果的に抑制しながら、エアロゾルを安定して効率良く生成させることが可能となる。
【0012】
請求項
4に記載の発明は、成膜装置であって、請求項1〜請求項
3の何れか一項に記載の粉体供給器を少なくとも一以上備え、成膜対象となる基板を収容する成膜室と、前記粉体供給器から前記成膜室に導入されたエアロゾルを前記基板に向けて噴射させる噴射部と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、上記の本発明に係る粉体供給器を備えた構成なので、装置内において微粒子の詰まりや再凝集等が生じるのが抑制され、基板上に、特性に優れた薄膜を生産性良く成膜することが可能となる。
【0013】
請求項
5に記載の発明は、請求項
4に記載の成膜装置であって、前記粉体供給器を複数備え、該複数の粉体供給器において、それぞれ異なる粒度分布を有するエアロゾルが生成され、前記成膜室に導入されることを特徴とする。
本発明によれば、粒度分布の異なるエアロゾルを複数種で成膜室に導入する構成なので、それぞれのエアロゾルの分率を調整することにより、基板上に成膜された薄膜中の粒度分布を任意に調整することが可能となる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、成膜方法であって、請求項1〜請求項
3の何れか一項に記載の粉体供給器、あるいは、請求項
4又は請求項
5に記載の成膜装置を用いて、基板上に薄膜を成膜することを特徴とする。
本発明によれば、上述した粉体供給器あるいは成膜装置を用いて基板上に薄膜を形成する方法なので、特性に優れた薄膜を生産性良く成膜することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る粉体供給器、及び、この粉体供給器を備えた成膜装置、並びに、それらを用いた成膜方法によれば、上記した解決手段によって以下の効果を奏する。
即ち、本発明に係る粉体供給器によれば、収容部、解砕部及びエアロゾル生成部が同一の生成容器内に備えられている構成なので、原料解砕とエアロゾル化が、同一工程でほぼ同時に連続して進行するため、プロセス及び装置構造が簡便になる。さらに、原料物を解砕した直後に連続的に微粒子をエアロゾル化できる構成なので、微粒子を搬送する手段を省略でき、搬送経路において微粒子の詰まりが生じるのを抑制できるとともに、エアロゾル化前の微粒子を保管する時間を短縮し、微粒子が再凝集するのを抑制できる。
従って、プロセスや装置を煩雑にすることがなく、微粒子による詰まりが生じるのを防止できるとともに、微粒子の再凝集を抑制してエアロゾルを安定且つ効率良く生成させることが可能になるという効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る成膜装置によれば、上記の粉体供給器を備えた構成なので、装置内において微粒子の詰まりや再凝集等が生じるのが抑制され、基板上に、特性に優れた薄膜を生産性良く成膜することが可能になるという効果を奏する。
【0017】
また、本発明に係る成膜方法よれば、上記の粉体供給器あるいは成膜装置を用いて基板上に薄膜を形成する方法なので、特性に優れた薄膜を生産性良く成膜することが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明に係る粉体供給器、及び、この粉体供給器を備えた成膜装置、並びに、それらを用いた成膜方法の一実施形態について、
図1〜
図3を適宜参照しながらその構成を説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合がある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0020】
[粉体供給器]
図1は、本発明の一実施形態である粉体供給器1を示す模式断面図であり、
図2は、粉体供給器1に用いられる解砕部3である回転体を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の粉体供給器1は、原料物6を収容する収容部2と、原料物6を解砕して微粒子61を調製する解砕部(回転体)3と、微粒子61をエアロゾル化することでエアロゾル62を生成させるエアロゾル生成部4とを有してなる。粉体供給器1は、収容部2、解砕部3及びエアロゾル生成部4が、同一の生成容器5内において、下部側から上部側に向かってこの順で備えられ、概略構成されている。そして、粉体供給器1は、原料物6が、収容部2から解砕部3に向けて連続的に供給されるとともに、微粒子61が、解砕部3からエアロゾル生成部4に向けて連続的に供給され、このエアロゾル生成部4で連続的に生成されたエアロゾル62を外部に向けて順次送出するものである。
【0021】
本実施形態の粉体供給器1の筐体となる生成容器5は、上記のように、収容部2、解砕部3及びエアロゾル生成部4の各々を同一空間内に備え、エアロゾル62を連続的に生成して外部に送出する容器状部材であり、例えば、微粒子61をエアロゾル化する際の容器内における気流の安定化を考慮し、略筒状に形成される。
また、
図1に示す例では、生成容器5には、2箇所の粉体輸送ガスの導入口、具体的には、下部導入口51及び上部導入口52が設けられており、さらに、容器最上部に、生成されたエアロゾル62を外部に送出する送出口53が設けられている。
【0022】
収容部2は、上述のように、粉体供給器1の筐体でもある生成容器5の最下部に備えられ、微粒子の原料となる原料物6を収容するものであり、図示例では、回転体からなる解砕部3の下方において、生成容器5の底部に配置されている。
本実施形態の収容部2は、図示例のように、生成容器5の内部において、その上方に配置される解砕部3及びエアロゾル生成部4と同一空間で連通するように構成されている。
【0023】
収容部2に原料物6を装填する手段としては、特に限定されず、詳細な図示を省略するが、例えば、生成容器5の上部に蓋体を設けるか、あるいは、生成容器5を、その高さ方向の何れかの位置で上下に分割して開閉可能な構成とすることで、収容部2に原料物6を装填することができる。
【0024】
解砕部3は、原料物6を解砕して微粒子61を調製する解砕機構からなり、本実施形態で説明する例では、
図2に示すような回転体から構成されている。
図2に示す解砕部3は、平面視略長方形状で板状の2枚羽根を有する回転体として構成されている。解砕部3は、長手方向の略中心付近に、
図1中に示した回転軸3Aに解砕部3を取り付けるための取付孔3aが形成されている。また、解砕部3の長手方向で取付孔3aを挟んだ両側には、原料物6を解砕するための羽根31、32が形成されている。また、図示例においては、羽根31と羽根32とが、板状とされた解砕部3において、それぞれ逆面側に折り曲げられるように、略くの字状に形成されている。
図1中に示す回転軸3Aは、生成容器5の外部に設けられる図示略のモータによって回転することにより、解砕部3を回転させるものである。
【0025】
回転体からなる解砕部3は、原料物6を粉体に解砕するものであることから、ミル等において使用される形状を有するものであることが好ましく、具体的には、
図2に例示するような形状を有していることが好ましい。
【0026】
また、解砕部3は、上記形状とされることで、原料物6を解砕するとともに、上方に向けた旋回流で気流を発生させ、解砕後の微粒子61を気流に乗せて浮上させることが可能な回転体である、いわゆるヘンシェルミキサー(登録商標)として構成されている。このように、本実施形態では、解砕部3が回転体として構成されることで、生成容器5内の上部側、即ち、エアロゾル生成部4側へ向けての上昇旋回流となる気流を発生させる構造を採用することが好ましい。これにより、解砕部3によって調製された微粒子61を直ちに生成容器5におけるエアロゾル生成部4側に浮上させることができ、微粒子61が再凝集するのを効果的に抑制することが可能となる。
【0027】
また、解砕部3の近傍には、生成容器5の側面の一部に開口するように、粉体輸送ガスが取り入れられる下部導入口51が配置されている。解砕部3で調製された微粒子61は、下部導入口51から導入された粉体輸送ガスによる気流と、上述したような、解砕部3の回転に伴う上昇旋回流とにより、エアロゾル生成部4側へ向けて浮上させられる。
【0028】
本実施形態の解砕部3は、上記構成の回転体からなる解砕部3により、原料物6を安定した粒度分布で解砕して微粒子61とすることができるので、後述のエアロゾル生成部4において、エアロゾルをより安定して効率良く生成させることが可能となる。
【0029】
なお、本実施形態で用いる解砕部3は、
図2に示す形状のものには限定されず、例えば、プロペラ状の回転体で、プロペラ枚数が2〜4枚程度であるものを用いることが、原料物6の解砕効率や粒度分布の安定性、さらには、解砕後の微粒子61をエアロゾル生成部4に向けて連続的に浮上させることができる点から、さらに好ましい。
【0030】
また、解砕部3は、原料物6よりも高い硬度の材料からなることが好ましく、例えば、モース硬度が6以上であることがより好ましい。このような硬度を有する材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)、チタン、タングステン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム等の各種金属材料が挙げられ、これらの金属材料を、解砕部3に何ら制限無く用いることができる。
【0031】
また、原料物6を解砕して微粒子61を調製する際の解砕部3の回転数は、特に限定されないが、例えば、1000〜30000rpmの範囲とすることが好ましい。このように、回転体からなる解砕部3の回転数を適正範囲にすることで、原料物6を効率良く解砕して微粒子61として調製できるとともに、調整後の微粒子61を直ちに生成容器5内のエアロゾル生成部4に向けて浮上させることができる。これにより、微粒子61が再凝集するのをさらに効果的に抑制しながら、後述のエアロゾル生成部4において、エアロゾル62をより安定して効率良く生成させることが可能となる。
【0032】
エアロゾル生成部4は、解砕部3で調製された微粒子61を、生成容器5内に導入される粉体輸送ガスによってエアロゾル化することで、エアロゾル62を生成させる。具体的には、解砕部3の回転力及び下部導入口51から導入された粉体輸送ガスによる気流に乗り、エアロゾル生成部4に浮上した微粒子61を、下部導入口51から導入された粉体輸送ガス、及び、生成容器5の上部導入口52から導入された粉体輸送ガス中に分散させてエアロゾル化する。
【0033】
エアロゾル生成部4において微粒子61をエアロゾル化してエアロゾル62とするにあたり、その生成効率は、エアロゾル生成部4に導入される粉体輸送ガスの流量等にも依存する。
図1に示す粉体供給器1においては、まず、生成容器5の下部に設けられた下部導入口51から、比較的流量の小さな粉体輸送ガスを導入し、解砕部3の回転によって発生した気流に、さらに、粉体輸送ガスによる気流を加えることで、微粒子61をエアロゾル生成部4の位置まで浮上させる。
さらに、生成容器5の上部に設けられた上部導入口52から、流量の大きな粉体輸送ガスを導入することで、エアロゾル生成部4において微粒子61をエアロゾル化するとともに、生成されたエアロゾル62を外部に送出する。より具体的には、生成容器5の最上部に設けられた送出口53から、
図3に示すような成膜装置10の成膜室11内に設置された噴射部19に向けて、エアロゾル62を搬送する。
【0034】
なお、
図1(及び
図3)に示す例の粉体供給器1では、粉体搬送ガスの導入口として、上記の下部導入口51と上部導入口52の2つで設けているが、これには限定されない。例えば、装置設計の都合上、粉体輸送ガスの導入口を生成容器の上部に設けることが必要な場合には、解砕後の微粒子を確実に浮上させる観点から、生成容器の上部及び下部の2箇所に導入口を設けることが好ましいが、生成容器における導入口の配置を適正化することで、導入口が1箇所のみとされた構成であってもよい。
【0035】
また、送出口53は、生成されたエアロゾル62を効率的に外部に送出するため、エアロゾル生成部4の近傍であって、生成容器5において可能な限り上部側に設けられることが好ましい。
【0036】
以下に、上記構成の粉体供給器1を用いてエアロゾル62を生成する工程の概略について説明する。なお、本実施形態の粉体供給器1を、
図3に示す成膜装置10に適用した場合の、エアロゾル62の生成を含む各工程については、後述の成膜装置及び成膜方法の説明において詳述する。
【0037】
粉体供給器1には、外部に備えられたガスボンベ(
図3中のガスボンベ16を参照)から、下部導入口51及び上部導入口52に、例えば、窒素等からなる粉体輸送ガスが導入される。また、粉体供給器1を稼働させる前に、予め、収容部2に原料物6を装填する。
収容部2に装填された原料物6は、収容部2の直上に配置された解砕部3の回転作動により、解砕されて微粒子61に調製される。この際、原料物6は、解砕部3に向けて連続的に供給されるとともに、解砕部3は、連続的に微粒子61を調製する。
【0038】
解砕部3で調製された微粒子61は、下部導入口51から導入された粉体輸送ガスの気流、及び、解砕部3の回転に伴う上昇旋回流によってエアロゾル生成部4まで浮上する。
エアロゾル生成部4には、上部導入口52から粉体輸送ガスが導入されており、微粒子61が、下部導入口51及び上部導入口52から導入された粉体輸送ガス中に分散されることでエアロゾル化され、エアロゾル62が生成される。
エアロゾル62は、エアロゾル生成部4の近傍であって生成容器5の最上部に配置された送出口53から外部に向けて送出され、具体的には、
図3中に示す成膜装置10の成膜室11内に備えられる噴射部19に向けて送出される。
【0039】
なお、本実施形態では、解砕部3で調製された微粒子61を、エアロゾル生成部4に向けて効果的に浮上させるためには、上昇気流を適正に制御することが好ましい。このように、生成容器5の内部における気流を制御する手段としては、例えば、「生成容器5の高さ寸法」と、「粉体輸送ガスの流量」、「解砕部3の回転数」の各々を制御因子として適正に調整することが挙げられる
【0040】
また、本実施形態では、原料物6の収容部2への装填に関し、生成容器5の上部に蓋体を設けるか、あるいは、生成容器5を上下に分割して開閉可能な構成とすることを例に挙げて説明しており、この場合、収容部2内の原料物6を使い切る毎に、生成容器5の開閉及び原料物6の充填を行う必要がある。このため、本実施形態では、収容部2に原料物6を装填するための構成として、例えば、生成容器5における収容部2の高さ方向寸法を大きく構成するとともに、解砕部3を生成容器5内における高さ方向で移動可能に構成し、原料物6が解砕されるにつれて解砕部3の高さ位置を低くできる構成を採用することができる。このような構成とした場合、収容部2における原料物6の装填可能量が増大するので、原料物6の装填が必要となる周期を長くすることが可能となる。
【0041】
ここで、上述のように、原料物6の解砕とほぼ同時に微粒子61を浮上させた場合、粒径の大きな粒子と小さな粒子とが同時にエアロゾル生成部4まで浮上し、生成されるエアロゾル62の粒度分布に幅が生じる可能性もある。本実施形態では、例えば、生成容器5の高さを適正に調整することで、微粒子61の粒径の大小による浮上高さの差を利用して分級機能を持たせることや、後述の製造装置の構成として説明するように、粉体供給器1の後段に分級部を設けることで、エアロゾル62の粒度分布を適正範囲に抑制する手段を採用できる。
【0042】
本実施形態の粉体供給器1によれば、上記構成により、原料物6の解砕とエアロゾル化が同一工程でほぼ同時に連続的進行するため、プロセス及び装置構造が簡便になる。
さらに、原料物6を解砕した直後に微粒子61をエアロゾル化できるので、従来のような微粒子61の搬送機構を省略でき、搬送経路において、特に粒径が比較的大きな微粒子61による詰まりが生じるのを抑制できる。また、エアロゾル化前の微粒子61の滞留時間を短縮し、微粒子61が再凝集するのを抑制できる。さらに、粉体輸送ガスの気流、及び、解砕部3で発生する上昇旋回流により、装置内における微粒子の付着が防止できる。
これにより、微粒子61の再凝集を抑制しながら、エアロゾル62を安定且つ効率良く生成させることが可能となる。
【0043】
[成膜装置及び成膜方法]
図3は、本実施形態で説明した粉体供給器1を適用した、エアロゾルデポジション法(AD法)を採用した成膜装置10を説明する概略構成図である。
本実施形態の成膜装置10は、上記構成の粉体供給器1を少なくとも一以上備え、成膜対象となる基板41を収容し、その一方の面41aに図示略の薄膜を形成するための成膜室11と、粉体供給器1から成膜室に導入されたエアロゾル62を基板41に向けて噴射させる噴射部19と、を備えている。
【0044】
成膜室11内には、基板41を配置するための配置面12aを有するステージ12が設けられている。ステージ12は、基板41を配置した状態で水平方向に移動可能となっている。
また、成膜室11には、真空ポンプ13が接続されており、この真空ポンプ13の吸引により、成膜室11内が陰圧にされる。
また、成膜室11内には、上述した噴射部19が配設されている。噴射部19は、その吐出口19aの開口部がステージ12の配置面12a、即ち、ステージ12の配置面12a上に配置された基板41の一方の面41aと対向するように配設されている。
【0045】
噴射部19は、輸送管15を介して、ガスボンベ16と接続されている。
上記の輸送管15の経路には、ガスボンベ16側から順に、マスフロー制御器17、粉体供給器1が設けられている。また、図示例においては、粉体供給器1と噴射部19との間に分級器18が設けられている。これら、輸送管15、ガスボンベ16、マスフロー制御器17、粉体供給器1、及び分級器18によって粉体輸送機構が構成される。
【0046】
成膜装置10においては、例えば、輸送ガスである窒素を、ガスボンベ16から輸送管15へ供給し、その窒素の流速をマスフロー制御器17で調整する。マスフロー制御器17で調整された窒素は、2本の輸送管15によって粉体供給器1に導入される。この際、粉体供給器1に導入される窒素の流量は、特に制限されず、成膜室11内における噴射部19からの噴射速度等を勘案しながら決定することができる。本実施形態においては、粉体供給器1の下部導入口51には、微粒子61を巻き上げられるだけの気流を発生させる程度の流量、例えば、0.5(L/min)程度で窒素を導入するとともに、上部導入口52からは、粉体輸送ガス中に効果的に微粒子61を分散させてエアロゾル化し、高速で送出口53から送出できる流量、例えば、5(L/min)程度で窒素を導入する条件とすることができる。
【0047】
また、粉体供給器1への原料物6の装填は、例えば、粉体供給器1に備えられる図示略の蓋体を開放し、生成容器5の底部に配置された収容部2に原料物6を収容することで行われる。
収容部2に装填された原料物6は、回転体からなる解砕部3によって解砕され、微粒子61として調製されるとともに、解砕部3の回転力及び下部導入口51から収容部2に導入される粉体輸送ガスの気流により、生成容器5内で上方に配置されるエアロゾル生成部4まで上昇する。
エアロゾル生成部4に導入された微粒子61は、下部導入口51及び上部導入口52からエアロゾル生成部4に導入される粉体輸送ガス中に分散されることでエアロゾル化され、エアロゾル62として送出口53から輸送管15を介して成膜室11内に設置された噴射部19に向けて搬送される。なお、
図3に示す例においては、粉体供給器1と噴射部19との間の輸送管15の経路上に分級器18が備えられている。
そして、噴射部19から、エアロゾル62(微粒子61)が亜音速〜超音速の噴射速度で、基板41の一方の面41aに向けて吐出・噴射される。
【0048】
なお、輸送ガスとしては、特に限定されないが、例えば、酸素、窒素、希ガス、空気(大気)等を用いることが好ましい。
【0049】
本実施形態の成膜装置10においては、上述した粉体供給器1が備えられた構成なので、装置内において微粒子61の詰まりや再凝集等が生じるのが抑制され、基板41上に、特性に優れた薄膜を生産性良く成膜することが可能となる。
【0050】
なお、本実施形態の成膜装置においては、詳細な図示を省略するが、例えば、粉体供給器1を複数備え、これら複数の粉体供給器1において、それぞれ異なる粒度分布を有する、即ち、平均粒子径が異なるエアロゾル62(微粒子61)を生成させ、それぞれ成膜室11に導入される構成としても良い。このように、粒度分布の異なるエアロゾル62を複数種で成膜室11に導入する構成を採用することで、例えば、それぞれのエアロゾル62の分率の調整により、基板41上に成膜された薄膜中の粒度分布を任意に調整することが可能となる。また、粒度分布を任意に調製するだけでなく、例えば、基板41に対して異なる種類の粉体(微粒子)を吹き付けることもでき、得られる薄膜のバリエーションを変化させることも可能となる。
【0051】
次に、本実施形態の粉体供給器1を適用した成膜装置10を使用した場合の成膜方法の詳細について説明する。以下においては、成膜装置10を用いて、AD法によって薄膜を成膜する一例として、色素増感太陽電池(以下、単に太陽電池と称する)の光電極を形成する方法を挙げて説明する。
【0052】
この成膜方法においては、無機物質である原料物6の微粒子61をエアロゾル化し、得られたエアロゾル62を基板41に吹き付けて、基板41と微粒子61とを接合させるとともに、微粒子61同士を接合させることによって、基板41上に無機物質の薄膜を成膜する。
【0053】
まず、成膜室11内のステージ12の配置面12aに、基板41を配置する。
基板41としては、特に制限されず、例えば、太陽電池に用いられる光電極等の各種電子部品に使用される透明基板が挙げられる。透明基板としては、例えば、ガラスやプラスチックからなる基板、又は、フィルムが挙げられる。また、基板41の材料であるガラスとしては、ソーダライムガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、バイコールガラス、無アルカリガラス、青板ガラス及び白板ガラス等の一般的なガラスが挙げられる。
【0054】
基板41の材料であるプラスチックとしては、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂及びポリアミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、特に、ポリエチレンナフタレート(PEN)は、透明耐熱フィルムとして大量に生産及び使用されている点から、入手性等の観点で好ましい。さらに、薄く、軽く、かつフレキシブルな色素増感太陽電池を製造する観点からは、基板41としてはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用することがより好ましい。
【0055】
次いで、真空ポンプ13を作動させて、成膜室11内を真空にする。
次いで、輸送管15を介して、ガスボンベ16から成膜室11内に窒素を供給し、成膜室11内を窒素雰囲気とする。
【0056】
次いで、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化インジウム/酸化亜鉛(IZO)、酸化ガリウム/酸化亜鉛(GZO)などの原料粒子を用い、基板41の一方の面41aに導電材からなる透明導電層を形成する。あるいは、予め上記導電材からなる透明導電層が形成された基板41を使用しても良い。
【0057】
次いで、基板41の一方の面41aに形成された透明導電層上に、酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO
2)等の金属酸化物からなる光電変換層を形成する。光電変換層を形成するためには、まず、粉体供給器1の収容部2に、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ等の金属酸化物からなる原料物6を装填する。
次に、解砕部3によって原料物6を解砕することで微粒子61を調製するとともに、解砕部3の回転力及び下部導入口51から収容部2に導入される粉体輸送ガスの気流で、微粒子61をエアロゾル生成部4まで浮上させる。この際、微粒子61は、下部導入口51及び上部導入口52からエアロゾル生成部4に導入される粉体輸送ガス中に分散させてエアロゾル化される。その後、生成されたエアロゾル62を、送出口53から輸送管15に送出し、分級器18を介して成膜室11内に設置された噴射部19へ搬送する。
そして、噴射部19の吐出口19aから、基板41の一方の面41aに形成された透明導電層の表面(透明導電層の基板41と接している面とは反対側の面)に、エアロゾル62(微粒子61)を吹き付ける。
【0058】
ここで、基板41上に形成された透明導電層の表面に衝突した微粒子は、少なくともその一部が透明導電層の表面に食い込んで、容易には剥離しない状態となる。また、この衝突により、透明導電層の表面と微粒子表面に新生面が形成されて、主に、この新生面において透明導電層と微粒子61とが接合する。続いて、さらに吹き付けを継続することにより、透明導電層の表面に食い込んだ微粒子に対して、別の微粒子が衝突する。このような微粒子同士の衝突によって、互いの微粒子表面に新生面が形成されて、主にこの新生面において微粒子同士が接合する。この微粒子同士の衝突においては、微粒子が溶融するような温度上昇は発生し難いため、微粒子同士が接合した界面には、ガラス質からなる粒界層は実質的に存在しない。さらに、微粒子の吹き付けを継続することによって、次第に、基板41上に形成された透明導電層の表面に多数の微粒子61が接合してなる薄膜が形成される。形成された薄膜は、色素増感太陽電池の透明導電層として充分な強度を有するので、焼成による焼き締めを必要としない。
【0059】
上記例示の成膜方法によれば、基板41の一方の面41aに形成された透明導電層の表面に、TiO
2粒子を高速で吹き付けて、透明導電層とTiO
2粒子とを接合させるとともに、TiO
2粒子同士を接合させることによって、透明導電層上にTiO
2粒子からなる薄膜を形成することができる。
また、上記の手順で得られる薄膜は、いわゆる圧粉体とは異なり、圧粉体よりも強度が強く、圧粉体よりも基板から剥離し難いものとなる。
【0060】
上述した本実施形態の成膜方法は、上記の粉体供給器1あるいは成膜装置10を用いて基板41上に薄膜を形成する方法なので、特性に優れた薄膜を生産性良く成膜することが可能となる。
【0061】
[作用効果]
以上説明したように、本発明に係る粉体供給器1、及び、この粉体供給器1を備えた成膜装置10、並びに、それらを用いた成膜方法によれば、上記した構成によって以下の効果を奏する。
即ち、本発明に係る粉体供給器1によれば、収容部2、解砕部3及びエアロゾル生成部4が同一の生成容器5内に備えられている構成なので、原料解砕とエアロゾル化が、同一工程でほぼ同時に連続して進行するため、プロセス及び装置構造が簡便になる。さらに、原料物6を解砕した直後に微粒子61をエアロゾル化できる構成なので、微粒子61の搬送機構を省略でき、搬送経路において微粒子61の詰まりが生じるのを抑制できるとともに、エアロゾル化前の微粒子61の滞留時間を短縮し、微粒子61が再凝集するのを抑制できる。
従って、プロセスや装置を煩雑にすることがなく、微粒子61による詰まりが生じるのを防止できるとともに、微粒子61の再凝集を抑制してエアロゾルを安定且つ効率良く生成させることが可能になるという効果を奏する。
【0062】
また、本発明に係る成膜装置10によれば、上記の粉体供給器1を備えた構成なので、装置内において微粒子61の詰まりや再凝集等が生じるのが抑制され、基板41上に、特性に優れた薄膜を生産性良く成膜することが可能になるという効果を奏する。
【0063】
また、本発明に係る成膜方法よれば、上記の粉体供給器1あるいは成膜装置10を用いて基板上に薄膜を形成する方法なので、特性に優れた薄膜を生産性良く成膜することが可能になるという効果を奏する。
【実施例】
【0064】
次に、本発明を以下の実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0065】
[実施例]
本実施例では、まず、
図1に示すような、原料物6を収容する収容部2と、原料物6を解砕して微粒子61を調製する回転体からなる解砕部3と、微粒子61をエアロゾル化することでエアロゾル62を生成させるエアロゾル生成部4とが同一の生成容器5内に備えられた構成の粉体供給器1を準備した。ここで、解砕部3としては、
図2に示すような、ミルとして用いられる形状であるとともに、旋回流を発生させることが可能な形状であり、平面視長方形状で長さが100mm、最大幅が10mmの回転体を用いた。
【0066】
次に、原料物6として、収容部2、即ち、生成容器5の底部に、酸化チタン(TiO
2)の粉体を0.02kg装填した。
次に、粉体輸送ガスとして窒素を用い、生成容器5に設けられた下部導入口51から0.5(L/min)、上部導入口52から5(L/min)で窒素を導入しながら、解砕部3を20000rpmで回転させた。これにより、原料物6を連続的に解砕して微粒子61を調製しながら、連続的に、エアロゾル生成部4において、微粒子61を粉体輸送ガス中に分散させてエアロゾル化した。
【0067】
[比較例]
比較例では、まず、
図4(a)に示すように、ミル棒101を用いて、図示略の乳鉢内で酸化チタンの粉体からなる原料物6を解砕し、微粒子61を調製した。
次に、
図4(b)に示すような、生成容器102の内部にガス導入管103及び送出管104が導入されてなる従来の構成の粉体供給器を用い、乳鉢で解砕して得られた微粒子61を生成容器102の底部に装填した。
そして、生成容器102の内部に、ガス導入管103から、粉体輸送ガスとして窒素を5(L/min)で導入し、エアロゾル化してエアロゾル62を生成した。
【0068】
[評価項目及び評価方法]
(エアロゾルの粒度分布の評価)
上記手順の実施例及び比較例で各々得られたエアロゾルについて、その粒度分布を測定した。この際、粒度分布は、エアロゾル化後の粉体(微粒子)を採集し、エタノール中に分散させた状態で、レーザー回折式粒度分布測定装置にて測定した。
【0069】
(吐出・吹き付けによる成膜性の評価)
上記手順の実施例及び比較例で各々得られたエアロゾルを、
図2に示すような成膜装置10の成膜室11に備えられた噴射部19に導入し、以下に示す条件のエアロゾルデポジション法(AD法)により、基板41に対して吐出・吹き付けを行うことで、実際に薄膜を成膜し、その成膜性を評価した。
この際、噴射部19から基板41までの距離を10mmとし、基板41の一方の面41aにエアロゾル62を吹き付け、薄膜を成膜した。
【0070】
より具体的には、成膜室11内の気圧:100Pa、粉体輸送ガス(窒素)の供給量:5L/min、基板41の掃引速度:30cm/minの各条件で、基板41に対するエアロゾル62の吹き付けを行い、成膜処理を1回実施し、成膜性の評価を行った。この際、成膜性の評価は、成膜された薄膜の膜厚測定、及び、光学顕微鏡による外観観察により行った。
【0071】
[評価結果]
上記のような評価試験の結果、実施例と比較例とでは、下記表1に示すように、生成されたエアロゾルの粒度分布がほぼ同様であるとともに、何れも良好な成膜性を示すことが確認された。
【0072】
【表1】
【0073】
さらに、本発明に係る実施例においては、原料物6を解砕して、直ちに微粒子61をエアロゾル化することで、収容部内及び配管内における粉体の詰まりがなく、生産性にも優れていることが確認できた。
【0074】
以上で説明した各実施形態及び実施例における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態及び実施例によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。