(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204849
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】文書処理システム及び取付支持部
(51)【国際特許分類】
B65H 5/02 20060101AFI20170914BHJP
B41J 11/02 20060101ALI20170914BHJP
B65H 5/00 20060101ALI20170914BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
B65H5/02 F
B41J11/02
B65H5/00 D
B41J2/01 305
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-32666(P2014-32666)
(22)【出願日】2014年2月24日
(65)【公開番号】特開2014-181134(P2014-181134A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2017年2月24日
(31)【優先権主張番号】13/840,506
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・エヌ・エム・ディヤング
(72)【発明者】
【氏名】バリー・ピー・マンデル
【審査官】
大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−221060(JP,A)
【文献】
米国特許第05145123(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/02
B41J 2/01
B41J 11/02
B41J 13/00−13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙経路アライメントを改良した文書処理システムであって、
第1のローラおよび第2のローラを備えて、さらに前記第1のローラおよび前記第2のローラの周りに付着ベルトが係合する第1のベルトモジュールと、
第3のローラおよび第4のローラを備えて、さらに前記第3のローラおよび前記第4のローラの周りに媒体搬送ベルトが係合する第2のベルトモジュールと、
前記第1のベルトモジュールを支持して係合する前記第1のベルトモジュールに対する取付支持部とを備え、前記取付支持部は、3つの軸に沿った動きにより、前記第1のベルトモジュールが前記第2のベルトモジュールと整列することを可能にすることができる、文書処理システム。
【請求項2】
前記第1のベルトモジュールおよび前記第2のベルトモジュールが、媒体基材上の実効電荷を最小にし、それにより、印刷領域内の電場の影響を最小にするよう構成される、請求項1に記載の文書処理システム。
【請求項3】
前記第1のベルトモジュールに対する前記取付支持部が球面軸受を備える、請求項1に記載の文書処理システム。
【請求項4】
前記第1のベルトモジュールの下流端が、前記第2のベルトモジュールの上流端と合流する、請求項3に記載の文書処理システム。
【請求項5】
前記文書処理システムを通過する媒体基材は、印刷領域内に噴射されたインクの相互作用を最小にする結果をもたらす実効電荷を有する、請求項1に記載の文書処理システム。
【請求項6】
圧力ブレードをさらに備える、請求項1に記載の文書処理システム。
【請求項7】
プリンタ内のベルトモジュールに対する取付支持部であって、
少なくとも第1のローラおよび第2のローラを含むベルトモジュールと、
取付支持部と、
前記ベルトモジュールを支持して係合するブラケットに取り付けられた球面軸受とを備え、
前記取付支持部は、前記ベルトモジュールに対して3つの回転自由度により、前記ベルトモジュールに適切な用紙経路アライメントを保証することを可能にすることができる、取付支持部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、直接マーキング押さえ搬送システム内の2つのベルト搬送部間での競合を防ぐことによって、用紙経路アライメントを改善するためのシステムおよび方法に関する。本明細書に記載するシステムおよび方法は、一方の搬送部の他方に対する自己アライメントを可能にする取付ブラケットを使用する。
【背景技術】
【0002】
ダイレクトツーペーパー(DTP)インクジェット印刷システムにおいて良好な印刷品質を保証するために、媒体基材は、印刷領域で極めて平らに保持されなければならない。従来の手法では、作像領域または印刷領域内のプラテンに対して平らに保持される移動搬送ベルトへの媒体の静電付着を利用する。従来の静電付着方法は、主に、付着面(搬送ベルト)と接しない媒体基材側に電荷を印加することによって付着領域を作り出す。電荷は、さまざまな非接触コロナ帯電デバイスの使用、または、バイアスローラなどのさまざまな圧力デバイスの使用を含む、当分野で既知の方法によって印加することができる。一般に、バイアスローラなどの圧力デバイスは、機械的圧力の存在が、湾曲した、もしくは皺の付いた媒体基材などの負荷のかかった媒体を付着する助けとなるために、好ましい。媒体基材の静電付着に関する望ましくない副次的効果は、媒体基材の表面と、作像ヘッド(本明細書では、印字ヘッドとも称する)との間に高電場が作り出されることである。媒体基材が印刷領域内を通る際、高静電場がインク噴射に影響を及ぼす可能性があり、印刷品質の低下をもたらす。
【0003】
静電付着力の使用に関するさらなる欠点は、複数のベルトモジュールおよび付着ベルトを印刷システムで使用する場合、各ベルトおよび/またはモジュールに印加される静電力が非常に大きく、複数のベルトシステムが完璧に整列しない場合、このことは、ベルトの交差部で大きな横方向の力をもたらす可能性がある、ということである。これにより、ベルトの位置ずれが発生し、印刷またはコピーシステムで問題を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題を解決するために、押さえつけを最大にする一方で、印刷領域における望ましくない場を最小にするよう設計されたデュアルベルトシステムが、特許出願第13/669,578号に記載され、そこでは、高付着力を維持し続けているベルト搬送部に面する媒体側面に静電荷を印加する。本手法に関する懸念の1つは、2つのベルトシステムが完璧に整列しない場合に、ベルトに大きな横向きの力がかかる可能性があることである。
【0005】
これらの取り組みにもかかわらず、位置ずれが、依然として問題となる可能性がある。媒体基材は、静電付着方法によって付着した場合、ほぼ常に電場を生成する。したがって、静電力の望まない効果を低減し、さらに、結果として、静電力をもたらす可能性のある、媒体基材処理経路のいかなる位置ずれも防ぐ、および/または補正することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本明細書では、用紙経路アライメントを改善し、および優れた媒体押さえ能力を有する一方、印刷領域内の望ましくない静電場を最小にする文書処理システムを提供する。文書処理システムは、第1のローラおよび第2のローラを含む第1のベルトモジュールを備え、第1のローラおよび第2のローラは、第1のローラおよび第2のローラの周囲に係合する付着ベルトを有する。さらに、処理システムは、第3のローラおよび第4のローラを含む第2のベルトモジュールを備え、第3のローラおよび第4のローラは、第3のローラおよび第4のローラの周囲に係合する媒体搬送ベルトを有する。本発明において、第1のベルトモジュールに対する取付支持部もまた設けられ、取付支持部は、第1のベルトモジュールが、第2の搬送部に対して自己整列することが可能となるよう設計される。
【0007】
例示的な実施形態の1つでは、第1のベルトモジュールを支持して係合するブラケットに取り付けられた球面軸受を使用する。取付支持部は、第1のベルトモジュールが、前記第2のベルトモジュールに対して回転および自己整列することを可能にする。 これは、位置ずれまたは滑りによる何らかの横方向の力が、第1の搬送部を回転させて第2のベルト搬送部と整列させようとするモーメントをもたらすキャスタ型の力のためである。取付支持部/システムは、3つの自由度を備え、第1の搬送部が3つすべての軸の周りを回転することを可能にする。これは、第2の搬送部との接線に沿う均一な負荷を保証し、上記のように、第1の搬送部が、搬送方向に自己整列することを可能にする。
【0008】
他の実施形態において、文書処理システムの第1のベルトモジュールおよび第2のベルトモジュールは、媒体基材上の実効電荷を最小にするよう構成され、それにより、プリントヘッドの下を媒体基材が通過する際に、印刷領域内の電場の影響を最小にする。他の実施形態において、文書処理システムの取付支持部は、第1のベルトモジュールに作用する付勢力が、前記第1のベルトモジュールおよび前記第2のベルトモジュールの整列を保証することができる。前記付勢力は、重力の群またはバネ機構から選択される。
【0009】
一実施形態において、第1のベルトモジュールの下流端は、前記第2のベルトモジュールの上流端と合流する。他の実施形態において、取付支持部は、3つの軸の可動範囲を有し、前記第1のベルトモジュールに作用する持ち上げ力をもたらし、それにより、前記第1の搬送部を動かして前記第2の搬送部と整列させる動きをもたらす。
【0010】
他の実施形態において、媒体搬送ベルトは、ベルト縁センサおよび能動的制御ステアリングロールを使用して追跡される。さらに他の実施形態において、付着ベルトおよび媒体搬送ベルトの少なくとも一方は、受動的追跡システムを使用して追跡される。他の実施形態において、第1のベルトモジュールは、受動追跡システムを用いて追跡される。
【0011】
他の実施形態において、文書処理システムを通過する媒体基材は、印刷領域内に噴射されたインクの相互作用を最小にする結果をもたらす実効電荷を有する。他の実施形態において、文書処理システムは、さらに、媒体基材の付着を促進する圧力ブレードを備える。
【0012】
他の実施形態において、本発明は、プリンタ内のベルトモジュールに対する取付支持部を備える。取付支持部は、ベルトモジュールを支持して係合するブラケットに取り付けられた球面軸受を備え、取付支持部は、前記ベルトモジュールに適切な用紙経路アライメントを保証することを可能にするために、前記ベルトモジュールに対して3つの軸の周りを回転することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明で使用することができる文書処理システムの一例である。
【
図2】
図2は、本発明の発明的特徴を備える印刷領域搬送エリアを示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の取付支持部の上面図である。
【
図4】
図4は、本発明の取付支持部の別方向からの図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
これらの例示的な実施形態について、図面を参照してさらに詳細に説明する。
【0015】
「文書処理デバイス」は、文書をあるフォーマットから別のフォーマットに、例えば、電子フォーマットから物理フォーマットに、またはその逆に、生成、複製、または変換する際の操作を実行するデバイスを意味する。文書処理デバイスは、これらに限定されないが、(乾式電子写真技術、インクジェット、またはオフセットなどの任意の印刷技術を使用する)プリンタ、ドキュメントスキャナもしくは小切手読取り装置などの特殊用途向け読取り装置、郵便物処理機械、布地もしくは壁紙プリンタ、または、何らかの画像を移動基板上に作り出す、ならびに/もしくは移動基板上から読み取る任意のデバイスを含むことができる。
【0016】
「媒体基材」は、例えば、用紙、トランスペアレンシー、羊皮紙、フィルム、布地、プラスチック、または、例えば、シートもしくはウェブの形式で情報を再生することができる他の基材を意味する。
【0017】
「ニップ」は、文書処理デバイス内でシートを処理方向に進める場所を意味する。ニップは、アイドラーホイールと駆動ホイールとの間に形成することができる。
【0018】
本明細書では、文書処理デバイス内の用紙経路システムおよび取付支持部の改善をもたらす。取付支持部は、ベルトモジュールを支持して係合し、それにより、ベルトモジュールは、3つの回転軸に沿って動くことが可能となり、または、その動きに3つの自由度を有する。これにより、ベルトモジュールが、対合するベルトモジュールから離れるように付勢する可能性のある静電力の影響を効果的に打ち消すことができ、適切な用紙経路アライメントを保証する。
【0019】
3つの回転自由度、または3つの回転軸に沿って動く能力は、どちらも、3次元デカルト座標系内の動きを意味することが認識される。3次元空間に対するデカルト座標系は、3つ組の線(例えば、x、y、およびz)で表され、それらのうち任意の2つは、垂直であり、各軸は、他の軸に対して垂直に配向される。文書処理システムでは、例えば、新規の取付支持部を通るベルトモジュールは、支持部45の周りの3つの軸に関して動き、以下の詳細な説明でより明確に示す。支持部45の周りには、3つの回転軸x、y、zがある。これにより、ロール49が、y(横方向)、zに動き、xの周りを回転することを可能にする。
【0020】
適切な用紙経路アライメントを提供するために、問題を解決する試みの1つは、米国特許第13/669,578号で見ることができ、米国特許第13/669,578号(参照することで本明細書に組み込まれる)は、高い付着力を維持しながらベルト搬送部に面する媒体側面に静電荷を印加することによって、押さえつけを最大にする一方で、印刷領域における望ましくない場を最小にするよう設計されたデュアルベルトシステムを含む。米国特許第13/669,578号で開示された発明は、独立して使用することができ、または、本明細書に記載する発明と相補的に使用することができる。
【0021】
図1を参照して、本明細書で使用することができる文書処理システムおよび装置10の一例を示す。媒体基材は、ニップ解除部を有する従来のニップベース見当合わせ搬送部を使用して、押さえ印刷領域搬送部26上に搬送される。媒体基材の前縁部が媒体取得領域54内の押さえ搬送部によって取得されるとすぐに、見当合わせニップが解放される。印刷領域搬送部26による媒体取得は、真空ベルト搬送部を介して実行することができる。1つまたは複数のインク24などが、媒体基材に印加され、印刷された媒体が、紫外線硬化領域30に搬送される。
【0022】
図面のうち
図2を参照して、第1のベルトモジュール61を有する印刷システム50を示す。第1のベルトモジュール61は、第1のローラ52および第2のローラ54を備え、それらローラの周りに付着ベルト62が巻かれる。任意選択的に、バイアス転写ロール56などの第1の帯電デバイスもまた設置される。付着ベルト62は、絶縁体、半導体、または他の何らかの適切な材料で生成することができる。媒体基材41は、第1のローラ52およびバイアス転写ロール56との間の上流ニップに送られる。圧力ブレード64と共に上流ニップは、付着ベルト62への媒体の付着を促進する。
【0023】
印刷システム50はまた、ベルト縁センサ53、および55として示す受動追跡システムをさらに備えることができる。これらのそれぞれは、当分野では周知であり、任意の互換センサまたは追跡システムを使用することができる。各ローラは、能動、すなわち駆動ローラ、またはアイドルローラとすることができる。 各アイドラーローラは、硬質プラスチックなどの硬化材を含む外面を有してもよい。各駆動ローラは、ゴムまたはネオプレンなどの柔軟材を含む外面を備えることができる。柔軟材は、シートを把持し、駆動ロールによりシートがニップを通ることを可能にする助けとなる。各駆動ローラは、駆動シャフトの周りを回転し、ステッパモータまたはDCモータなどの駆動モータ(図示せず)によって直接駆動することができる。伝達デバイス(図示せず)は、駆動モータと駆動ロールとの間に延在し、駆動ロールに動きを伝えることができる。伝達デバイスは、タイミングベルト、歯車列、または、当業者に既知の他の伝達手段を含むことができる。
【0024】
第2のベルトモジュール40は、第3のローラ51と第4のローラ46とを備え、それらのローラの周りに係合する媒体搬送ベルト42を有するものとして示す。また、任意選択的に、ベルトを誘導するために使用するステアリングロール44を備える。 第3のローラ51および第2のローラ54は、媒体基材41が印刷領域50内に進む際に通過するニップを形成することができる。取付支持部43は、球面軸受45、および第1のベルトモジュール61を支持して係合するベルトモジュールフレーム47を備えるものとして示す。球面軸受45およびベルトモジュールフレーム47は、第1のベルトモジュール61が、3つの回転軸x、y、zに沿って動き、さらにそれらの回転軸に沿って調整されることで、用紙経路の位置ずれを引き起こす可能性のある任意の力を打ち消すことができる。そのような力には、これらに限定されないが、第1のベルトモジュール61および第2のベルトモジュール40を互いから離すように反発させる、または第1のベルトモジュール61から第2のベルトモジュール40への用紙経路送りを妨害する静電力などがある。
【0025】
さらに、取付支持部43は、第1のベルトモジュール61に作用する付勢力により、第1のベルトモジュール61および第2のベルトモジュール40が、付勢力によりモジュールを組み合わせることを可能にすることによって、用紙経路アライメントを確実に維持することを可能にする。付勢力は、これらに限定されないが、重力、または、当分野で一般的に既知である、ある種のバネ機構を含む。図面に示すように、第1のベルトモジュール61の下流端は、接合部49で、第2のベルトモジュール40の上流端と合流する。接合部49は、付着ベルト62および媒体処理ベルト42のそれぞれが、媒体基材41を押さえようとして相反する電荷をしばしば有するため、静電力が相反する領域となる可能性がある。
【0026】
媒体基材41は、x軸と平行に向けられる方向Pに沿って印刷領域50を通って搬送される。取付支持部43は、第1のベルトモジュールを任意の方向に、または、支持部45の周りの回転軸x、y、およびzにより表される軸によって表される平面における空間方位で動かすことができ、用紙経路アライメントを保証する。
【0027】
図面のうち
図3を参照して、取付支持部43の拡大図を示す。図示する球面軸受45は、ベルトモジュール61を支持するベルトモジュールフレーム47に取り付けられる。第2のベルトモジュールと第1のベルトモジュール61との間のどんな位置ずれも、回転の原因となる球面軸受45の回転軸の周りにモーメントを発生させる相対的な速度および力をもたらし、それにより、第1のベルトモジュールの横向き(y−方向)の動きをもたらす。モジュールが整列すると、滑り差異がゼロになり、モーメントが消失し、モジュール間の相対的な力がなくなり、比較的単純で正確なベルト追跡が可能となる。
【0028】
図面のうち
図4を参照すると、本発明の他の印刷システム70が示される。印刷システムは、本発明の取付支持部76を備える球面軸受72およびベルトモジュールフレーム74を備える。取付支持部76は、第1のベルトモジュール78を支持して係合し、印刷システム70は、第2のベルトモジュール80をさらに備える。