(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記内燃機関の作動時における前記インジェクタの被熱量の総量がしきい値よりも小さい場合に、前記インジェクタが前記使用初期状態であると判定する、請求項1に記載の内燃機関。
前記制御装置は、前記補正量の学習時において、前記複数のサイクルの各々において同量の前記燃料を噴射するように前記インジェクタを制御する、請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関。
前記制御装置は、前記補正量の学習時において、前記最初のサイクルにおける前記燃料の噴射量が前記他のサイクルにおける前記燃料の噴射量よりも少なくなるように前記インジェクタを制御する、請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関。
前記制御装置は、前記学習指令に基づく前記燃料の噴射時における前記内燃機関の出力軸の回転速度の変動量に基づいて前記実噴射量を推定するものであり、前記回転速度の変動量は前記他のサイクルにおける燃料噴射による回転速度の変動量と前記最初のサイクルにおける燃料噴射による回転速度の変動量との差分により算出される、請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関。
前記制御装置は、前記インジェクタが前記使用初期状態でない場合であって、かつ、前記燃料噴射の停止が要求されている場合に、所定のサイクル毎に前記学習指令に基づいて前記燃料を単発的に噴射するように前記インジェクタを制御するとともに、前記所定のサイクルにおける前記噴射量差に基づいて前記補正量を学習する、請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インジェクタの使用初期状態においては、インジェクタの構成部品間の接触部位の摺り合わせが十分でない箇所があるため、インジェクタの作動応答性が低下し、燃料の噴射量が低下する場合がある。そのため、インジェクタからの燃料噴射量の学習を精度高く実施できない場合がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、インジェクタからの噴射量の学習を精度高く実施する内燃機関を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のある局面に係る内燃機関は、気筒と、気筒内に供給される燃料を噴射するインジェクタと、燃料噴射の停止が要求されている場合に、学習指令に基づいて燃料を噴射するようにインジェクタを制御するとともに、燃料の実噴射量と学習指令に基づく燃料の指令噴射量との噴射量差に基づいて燃料の噴射量の補正量を学習する制御装置とを備える。制御装置は、インジェクタが使用初期状態である場合には、連続する複数のサイクルの各々において燃料を噴射し、複数のサイクルのうちの最初のサイクル以外の他のサイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習する。
【0007】
このようにすると、複数のサイクルのうちの最初のサイクル以外の他のサイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習するので、最初のサイクルにおける噴射量差が補正量の学習に用いられないようにすることができる。最初のサイクルの燃料噴射は、直前のサイクルにおいて燃料噴射が停止していたため、インジェクタの構成部品間の接触部位の摺り合わせが十分でない箇所から燃料が漏れるなどしてインジェクタの作動応答性が低下している可能性が高い。そのため、他のサイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習することにより、最初のサイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習するよりも精度高くインジェクタからの噴射量の学習を実施できる。
【0008】
好ましくは、制御装置は、内燃機関の作動時におけるインジェクタの被熱量の総量がしきい値よりも小さい場合に、インジェクタが使用初期状態であると判定する。
【0009】
このようにすると、インジェクタの被熱量の総量がしきい値よりも小さい場合に、インジェクタが使用初期状態であると判定されるので、インジェクタが使用初期状態であるか否かを精度高く判定することができる。
【0010】
さらに好ましくは、インジェクタは、棒状のニードルと、ニードルを長手方向に沿って移動可能に収納するボディとを含む。ボディには、ニードルの先端部がボディに接触する所定位置まで移動したときに先端部によって開口部分が塞がれる凹部と、ニードルの先端部が所定位置から離隔する方向に移動したときに燃料が噴射される噴孔とが形成される。
【0011】
このようにすると、インジェクタが使用初期状態である場合には、ニードルが所定位置まで移動したときにニードルの先端部と凹部との間に摺り合わせが十分でない箇所が生じる場合がある。そのため、凹部内の燃料に混入した気泡が膨張することにより凹部から燃料が漏れた状態になる場合がある。そのため、燃料噴射時においては、ニードルが所定位置から離隔する方向に移動する際に、凹部内に燃料が充填された後にニードルの先端部に接触する燃料の圧力よってニードルが所定位置から離隔する方向にさらに力が作用することになるため、凹部内に燃料が残留している場合よりもインジェクタの作動応答性が低下する場合がある。そのため、最初のサイクルよりも凹部内に燃料が残留している可能性が高い他のサイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習することにより、インジェクタからの噴射量を精度高く学習することができる。
【0012】
さらに好ましくは、制御装置は、補正量の学習時において、複数のサイクルの各々において同量の燃料を噴射するようにインジェクタを制御する。
【0013】
このようにすると、補正量の学習時において、複数のサイクルの各々において同量の燃料を噴射するので、最初のサイクルにおける燃料噴射によってインジェクタの構成部品間の接触部位の摺り合わせが十分でない箇所から燃料が漏れた状態を改善させることができる。そのため他のサイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習することにより精度高くインジェクタからの噴射量の学習を実施できる。
【0014】
さらに好ましくは、制御装置は、補正量の学習時において、最初のサイクルにおける燃料の噴射量が他のサイクルにおける燃料の噴射量よりも少なくなるようにインジェクタを制御する。
【0015】
このようにすると、補正量の学習時において、最初のサイクルにおける燃料の噴射量が他のサイクルにおける燃料噴射量よりも少なくなるようにインジェクタが制御されるので、最初のサイクルにおける燃料噴射によってインジェクタの構成部品間の接触部位の摺り合わせが十分でない箇所から燃料が漏れた状態を改善させることができる。そのため、他のサイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習することにより精度高くインジェクタからの噴射量の学習を実施できる。さらに、複数のサイクルの各々において同量の燃料を噴射する場合と比較して燃料の消費量を低減することができる。
【0016】
さらに好ましくは、制御装置は、学習指令に基づく燃料の噴射時における内燃機関の出力軸の回転速度の変動量に基づいて実噴射量を推定するものであり、回転速度の変動量は他のサイクルにおける燃料噴射による回転速度の変動量と最初のサイクルにおける燃料噴射による回転速度の変動量との差分により算出される。
【0017】
このようにすると、他のサイクルにおける燃料噴射による回転速度の変動量と最初のサイクルにおける燃料噴射による回転速度の変動量との差分により算出される内燃機関の回転速度の変動量に基づいて実噴射量を推定するので、噴射量差を精度高く算出することができる。
【0018】
さらに好ましくは、制御装置は、インジェクタが使用初期状態でない場合であって、かつ、燃料噴射の停止が要求されている場合に、所定のサイクル毎に学習指令に基づいて燃料を単発的に噴射するようにインジェクタを制御するとともに、所定のサイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習する。
【0019】
このようにすると、インジェクタが使用初期状態でない場合には、複数のサイクルにわたる燃料噴射が抑制されるため、複数のサイクルにわたって燃料噴射を実行する場合と比較して噴射量学習時の燃料の消費量を低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、複数のサイクルのうちの最初のサイクル以外の他のサイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習するので、最初のサイクルにおける噴射量差が補正量の学習に用いられないようにすることができる。最初のサイクルの燃料噴射は、直前のサイクルにおいて燃料噴射が停止していたため、インジェクタの構成部品間の接触部位の摺り合わせが十分でない箇所から燃料が漏れるなどしてインジェクタの作動応答性が低下している可能性が高い。そのため、他のサイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習することにより、最初のサイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習するよりも精度高くインジェクタからの噴射量の学習を実施できる。したがって、インジェクタからの噴射量の学習を精度高く実施する内燃機関を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返されない。
【0023】
図1は、本実施の形態に係る内燃機関であるエンジン10の概略構成を示す。本実施の形態において、エンジン10は、駆動源として車両に搭載されるディーゼルエンジンである。なお、エンジン10は、発電源として車両に搭載されるものであってもよい。
【0024】
図1に示すように、エンジン10は、複数(たとえば4つ)の気筒11と、吸気通路8と、排気通路7とを含む。
【0025】
吸気通路8は、一方端の入口から取り込まれた空気を他方端側へ流通する。吸気通路8の他方端側は分岐して各気筒11に接続される。そのため、吸気通路8の入口から取り込まれた新気(空気)は、各気筒11に供給される。吸気通路8にはエアフローメータ2が設けられる。エアフローメータ2は、吸気通路8の入口から取り込まれる新気の流量(吸入空気量)を検出し、検出された吸入空気量を示す検出信号をECU(Electronic Control Unit)6に送信する。
【0026】
吸気通路8におけるエアフローメータ2よりも下流であって各気筒11への分岐点よりも上流の位置に吸気絞り弁16が設けられる。吸気絞り弁16には、絞り弁センサ17が設けられる。絞り弁センサ17は、吸気絞り弁16の開度を検出し、検出した吸気絞り弁16の開度を示す信号をECU6に送信する。ECU6は、車両の状態(たとえば、アクセルペダルの踏み込み量)に基づいて吸気絞り弁16の開度を制御する。
【0027】
気筒11は、シリンダ11aと、シリンダ11a内を移動するピストン11bとを含む。気筒11には、インジェクタ13が設けられる。各気筒11の各インジェクタ13は、コモンレール15に接続されており、コモンレール15に貯留された高圧燃料が各インジェクタ13に供給される。コモンレール15は、燃料ポンプ14に接続されており、燃料ポンプ14によって燃料タンク12から汲み上げられた燃料は、コモンレール15に供給される。燃料ポンプ14は、ECU6からの制御信号に応じて作動する。また、インジェクタ13は、ECU6からの制御信号によって作動し、気筒11内の燃焼室に燃料を供給する。
【0028】
エンジン10には、EGR(排気ガス再循環)システムが設けられる。EGRシステムは、EGR管18とEGR弁19とを含む。EGR管18は、排気通路7と吸気通路8を各気筒11を経由せずに連通して、排気通路7に排出された排気ガスの一部を吸気通路8に戻す。EGR弁19は、ECU6によって開度が制御されて、EGR管18を流通する排気ガスの流量を調整する。ECU6は、エアフローメータ2による吸入空気量の検出結果やEGR弁19の開度により気筒11に供給される空気の流量を算出する。
【0029】
ECU6は、プログラムとデータを記憶するROM(Read Only Memory)と、各種処理を行うCPU(Central Processing Unit)と、CPUの処理結果等を記憶するRAM(Random Access Memory)と、外部との情報のやり取りを行うための、入力ポートおよび出力ポートとを含む。入力ポートにエンジン回転速度センサ20とアクセルセンサ21と絞り弁センサ17等の各種センサが接続される。
【0030】
エンジン回転速度センサ20は、エンジン10の出力軸であるクランクシャフトの近傍に設けられてクランクシャフトの回転速度(以下の説明において、エンジン回転速度と記載する)NEを検出する。エンジン回転速度センサ20は、エンジン回転速度NEを示す信号をECU6に送信する。
【0031】
アクセルセンサ21は、アクセルペダルの近傍に設けられて、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量を検出する。アクセルセンサ21は、検出したアクセルペダルの踏み込み量を示す信号をECU6に送信する。
【0032】
ECU6は、入力ポートに接続された各機器から信号を受信し、受信した信号に基づいて出力ポートに接続されたインジェクタ13、燃料ポンプ14、吸気絞り弁16、EGR弁19等を制御する。
【0033】
次に、本実施の形態におけるインジェクタ13の詳細な構造について
図2を用いて説明する。なお、
図2において説明するインジェクタ13の構造は、一例であって、インジェクタ13の構造としては、
図2に示す構造に特に限定されるものではない。
【0034】
図2に示すように、インジェクタ13は、ノズルボディ40と、ノズルニードル42と、制御弁50とを含む。
【0035】
ノズルニードル42は、棒状に形成され、ノズルボディ40の内部に
図2の上下方向に摺動可能に収納される。
図2に示すノズルニードル42の位置は、燃料噴射を停止している場合の位置(以下の説明においては、閉弁位置と記載する)である。ノズルニードル42は、上部に設けられる第1ピストン42aと、下部に設けられ、第1ピストン42aと断面形状が同じ第2ピストン42bとを含む。
【0036】
ノズルボディ40の内部にはノズルニードル42を収納する空間が形成される。ノズルボディ40の下端部には、噴孔52,54が
図2において左右対称の位置に形成される。
【0037】
ノズルボディ40の上部であって、ノズルニードル42よりも上方には、制御弁50に連通する第1制御室44が形成される。ノズルボディ40の下部には、第2ピストン42bに燃料圧力を作用させるための第2制御室46が形成される。ノズルボディ40の内部には、さらに、コモンレール15から供給される燃料を第1制御室44と第2制御室46とに供給するための燃料通路48が形成される。さらに、ノズルボディ40の内部には、ノズルニードル42が閉弁位置である場合に、ノズルニードル42の下端部分によって開口部が塞がれる凹形状のノズルサック56が形成される。なお、特に図示しないが、第1制御室44と燃料通路48との間や、第2制御室46と燃料通路48との間には、燃料の流量を調整するオリフィス等が設けられてもよい。
【0038】
ノズルニードル42には、第1制御室44内の燃料圧力に基づく
図2の下方向(以下、閉弁方向と記載する)の力と、第2制御室46内の燃料圧力に基づく
図2の上方向(以下、開弁方向と記載する)の力とが作用して、ノズルニードル42がノズルボディ40の内部を移動する。
【0039】
ノズルニードル42は、燃料噴射の停止時においては、閉弁方向の力が開弁方向の力よりも大きくなることにより、閉弁位置において保持される。燃料噴射の停止時におけるこのような力関係は、第1制御室44内で燃料圧力が作用する第1ピストン42aの面積と、第2制御室46内で燃料圧力が作用する第2ピストン42bの面積との差に基づいて実現されてもよいし、あるいは、図示しない弾性部材等を用いて閉弁方向に弾性力を作用させることによって実現されてもよい。
【0040】
制御弁50は、第1制御室44内の燃料圧力を変化させるための開閉弁である。制御弁50は、たとえば、電磁力によって作動するソレノイドバルブを用いた開閉弁であってもよいし、ピエゾ素子を用いた開閉弁であってもよい。
【0041】
制御弁50を開弁することによって、第1制御室44内の燃料が燃料タンクに戻されるため、第1制御室44内の燃料圧力を低下させることができる。制御弁50は、ECU6からの制御信号に応じて作動する。なお、制御弁50の作動は、ECU6により直接的に行なわれてもよいし、ECU6に制御によって駆動する専用の駆動回路等を介在させて間接的に行なわれてもよい。
【0042】
ECU6は、燃料噴射を実行する場合には、開弁状態になるように制御弁50を制御する。制御弁50が開弁状態になることで上述したとおり第1制御室44内の燃料圧力が低下する。第1制御室44内の燃料圧力の低下により、ノズルニードル42に作用する開弁方向の力が閉弁方向の力よりも大きくなることにより、ノズルニードル42が閉弁位置から開弁方向に移動する。ノズルニードル42が閉弁位置から開弁方向に移動すると、ノズルニードル42の下端部分と、ノズルボディ40とが離隔するため、第2制御室46と噴孔52,54とが連通する。そのため、第2制御室46内の燃料が噴孔52、54からインジェクタ13の外部に噴射される。
【0043】
ECU6は、燃料噴射を停止する場合には、閉弁状態になるように制御弁50を制御する。制御弁50が閉弁状態になることで第1制御室44内の燃料圧力が燃料噴射の実行前の状態に復帰する。そのため、ノズルニードル42に作用する閉弁方向の力が開弁方向の力よりも大きくなることにより、ノズルニードル42が閉弁位置へと移動する。ノズルニードル42が閉弁位置まで移動すると、ノズルボディ40の噴孔52,54は、ノズルニードル42によって塞がれるため、燃料噴射が停止される。
【0044】
以上のような構成を有するエンジン10において、メイン噴射前に燃焼騒音の低減やNOxの発生の抑制を目的として少量の燃料を噴射するパイロット噴射が実施される場合がある。噴射量の指令値が小さいパイロット噴射を実施する場合には、噴射精度の向上が要求されるため、指令噴射量と実際に噴射された実噴射量とのずれを補正量として学習する必要がある。
【0045】
そのため、ECU6は、所定の条件が成立した場合に、所定の噴射量(パイロット噴射を想定した噴射量)を指令噴射量として燃料を噴射し、噴射した際のエンジン10の挙動(具体的には、エンジン回転速度NEの変動量)に基づいて実噴射量を推定し、指令噴射量と実噴射量との噴射量差に基づいて補正量を学習する(以下の説明においては、このような学習を噴射量学習と記載する)。
【0046】
所定の条件とは、エンジン10が、燃料噴射の停止が要求される状態であるという条件である。所定の条件は、たとえば、インジェクタ13に対する指令噴射量がゼロである、すなわち、エンジン10がフューエルカット状態であるという条件を含む。なお、所定の条件としては、その他、学習精度を向上させるため、変速機がニュートラル状態であるという条件や、コモンレール15において所定のレール圧が維持されているという条件等を含めるようにしてもよい。ECU6は、たとえば、車両の走行状態に基づいて(たとえば、アクセルオフ時等の惰性走行時やエンジン回転速度NEがしきい値を超えた場合等)エンジン10がフューエルカット状態であるか否かを判定する。
【0047】
以下、噴射量学習について詳細に説明する。たとえば、
図3に示すように、時間T(0)において、エンジン10がフューエルカット状態となり、所定の条件の成立に基づく学習指令により、所定の気筒11におけるインジェクタ13の噴射量学習が開始される場合を想定する。
【0048】
噴射量学習が開始される場合には、所定の条件が成立した後の所定のサイクルから指令噴射量に応じて燃料噴射が開始される。本実施の形態において、指令噴射量に応じた燃料噴射は、たとえば、5回実行されるものとする。なお、噴射量学習における燃料噴射の実行回数は5回に特に限定されるものではない。
【0049】
5回の指令噴射量に応じた燃料噴射は、連続しない異なるサイクルで単発的に実行される。本実施の形態においては、指令噴射量に応じた燃料噴射が実行された場合には、所定の無噴射サイクルが終了した後のサイクルにおいて次回の指令噴射量に応じた燃料噴射が実行される。
【0050】
そのため、
図3に示すように、指令噴射量に応じた燃料噴射は、時間T(1)〜時間T(5)の各タイミングにおいて実行される。なお、
図3に示すように、各タイミングにおける指令噴射量は、異なる噴射量であるものとしてもよいが、同じ噴射量であってもよい。
【0051】
指令噴射量に応じた燃料噴射が実行された場合には、次回の指令噴射量に応じた燃料噴射が実行されるまでの間の所定の回転変動検出期間に、所定時間当たりのエンジン回転速度NEの変動量が算出される。そして、算出されたエンジン回転速度NEの変動量と、無噴射状態が継続した場合のエンジン回転速度NEの変動量の推定値との差分が算出される。算出された差分の積算値が算出され、算出された積算値と、積算値と実噴射量との関係を示すマップ等とを用いて実噴射量の推定値が算出される。あるいは、算出された差分と実噴射量との関係を示すマップ等とを用いて実噴射量の推定値が算出されてもよい。そして、指令噴射量と実噴射量の推定値との噴射量差に基づいて補正量が算出される。そして、各タイミングにおける補正量の平均値が最終的な補正量として算出される。
【0052】
しかしながら、このように実行される噴射量学習において、インジェクタ13が使用初期状態である場合には、インジェクタ13の構成部品間の接触部位の摺り合わせが十分でない箇所があるため、当該箇所から燃料が漏れるなどしてインジェクタの作動応答性が低下し、燃料の噴射量が低下する場合がある。そのため、噴射量学習を精度高く実施できない場合がある。
【0053】
このような現象は、インジェクタ13の使用初期状態において、ノズルニードル42が閉弁位置である場合に噴孔52,54を塞ぐノズルニードル42の下端部分とノズルボディ40との接触部位の摺り合わせ(なじみ)が不十分であることに起因する。
【0054】
図4(A)に示すように、ノズルニードル42が閉弁位置よりも開弁方向に移動することにより、第2制御室46と噴孔52,54とが連通状態になると噴孔52,54から燃料が噴射された状態になる。このとき、ノズルニードル42周りの燃料には噴孔52,54から進入した気泡が混ざった状態になる。
【0055】
その後に、ノズルニードル42が閉弁位置まで移動した場合、接触部位の摺り合わせが不十分な状態であるときには、
図4(B)に示すように、ノズルニードル42の先端部分とノズルサック56の開口部分との間に隙間が生じる。
【0056】
そのため、
図4(C)に示すように、エンジン10で生じる熱によりノズルサック56内部の気泡が膨張する場合には、膨張した気泡がノズルサック56内部の燃料を噴孔54側に押し出し、ノズルサック56内部の燃料が減少あるいは消失する場合がある。
【0057】
その結果、
図4(D)に示すように、次回の燃料噴射時において、燃料がノズルサック56内部を充填した後に燃料圧力がノズルニードル42の先端部分に作用することになるため、接触部位のすり合わせた十分な状態である場合よりも、ノズルニードル42の開弁方向への移動の応答性が低下するため、噴射される燃料量が少なくなる。無噴射状態からの1回目の燃料噴射では、このような現象が起こりやすくなる。
【0058】
一方、接触部位の摺り合わせが十分な状態である場合には、
図4(E)に示すように、ノズルニードル42が閉弁位置である場合には、ノズルサック56の開口部分は、ノズルニードル42の先端部分によって塞がれているため、エンジン10で生じる熱による気泡の膨張が抑制され、ノズルサック56内部の燃料は残留した状態を維持する。
【0059】
その結果、
図4(F)に示すように、次回の燃料噴射時において、燃料圧力がノズルニードル42の先端に速やかに作用する。
【0060】
このように、インジェクタ13の使用初期状態においては、ノズルニードル42とノズルサック56との接触部位の摺り合わせが不十分な状態であることにより、噴射量が少なくなる場合がある。その結果、噴射量学習を精度高く実施できない場合がある。
【0061】
そこで、本実施の形態においては、ECU6が、インジェクタ13が使用初期状態である場合には、連続する複数のサイクルの各々において燃料を噴射し、複数のサイクルのうちの最初のサイクル以外の他のサイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習する点を特徴とする。
【0062】
このようにすると、複数のサイクルのうちの最初のサイクル以外の他のサイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習するので、最初のサイクルにおける噴射量差が補正量の学習に用いられないようにすることができる。最初のサイクルの燃料噴射は、直前のサイクルにおいて燃料噴射が停止していたため、インジェクタの構成部品間の接触部位の摺り合わせが十分でない箇所から燃料が漏れるなどしてインジェクタの作動応答性が低下している可能性が高い。そのため、他のサイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習することにより、最初のサイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習するよりも精度高くインジェクタからの噴射量の学習を実施できる。
【0063】
なお、本実施の形態においては、ECU6は、エンジン10の作動時におけるインジェクタ13の被熱量の総量がしきい値よりも小さい場合に、インジェクタ13が使用初期状態であると判定する。
【0064】
また、本実施の形態において、ECU6は、補正量の学習時において、複数のサイクルの各々において同量の燃料を噴射するようにインジェクタを制御するものとする。さらに、ECU6は、インジェクタ13が使用初期状態でない場合であって、かつ、燃料噴射の停止が要求されている場合に、
図3を用いて説明したように、学習指令に基づいて所定のサイクルに燃料を単発的に噴射するようにインジェクタを制御するとともに、所定のサイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習する。
【0065】
図5に、本実施の形態に係るエンジン10を制御するECU6の機能ブロック図を示す。ECU6は、被熱量算出部102と、初期期間判定部104と、噴射量学習部106とを含む。なお、これらの構成は、プログラム等のソフトウェアにより実現されてもよいし、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0066】
被熱量算出部102は、インジェクタ13の被熱量を算出する。インジェクタ13の被熱量は、インジェクタ13が使用初期状態であるか否かを判定するために用いられる。
【0067】
図6に示すように、インジェクタ13の被熱温度が高いほど、噴射量が安定する(すなわち、接触部位の摺り合わせが十分な状態になる)までの運転時間が短くなる傾向がある。
【0068】
図6の横軸は、運転時間を示し、
図6の縦軸は、被熱量を示す。
図6には、上から被熱温度が400℃、300℃、200℃および100℃のときの運転時間と噴射量との関係が示される。
【0069】
インジェクタ13の被熱温度が100℃である場合には、運転時間によらず、噴射量特性はほとんど変化しない。また、インジェクタ13の被熱温度が200℃である場合には、噴射量特性は変化するが、摺り合わせが完了する前に、噴射量は定常状態となる。一方、インジェクタ13の被熱温度が300℃または400℃である場合には、摺り合わせが完了して、噴射量が定常状態となる。特に、被熱温度が400℃である場合には、被熱温度が300℃である場合よりも短時間で摺り合わせが完了している。
【0070】
したがって、インジェクタ13の被熱温度やその被熱温度での運転時間(被熱量)を検出することにより、インジェクタ13が使用初期状態であるか否かを判定することができる。
【0071】
具体的には、被熱量算出部102は、エンジン回転速度NEと指令噴射量qとに基づいてインジェクタ13の被熱温度を算出する。被熱量算出部102は、たとえば、エンジン回転速度NEと指令噴射量qと被熱温度との関係を示す所定のマップを用いてインジェクタ13の被熱温度を算出する。エンジン回転速度NEと指令噴射量qと被熱温度との関係を示す所定のマップは、たとえば、実験的あるいは設計的に適合される。
【0072】
被熱量算出部102は、算出された被熱温度とエンジン10の運転時間とに基づいて被熱量を算出する。被熱量算出部102は、被熱温度とエンジン10の運転時間と被熱量との関係を示す所定のマップを用いてインジェクタ13の被熱量を算出する。被熱温度と運転時間と被熱量との関係を示す所定のマップは、たとえば、実験的あるいは設計的に適合される。
【0073】
被熱量算出部102は、前回の計算において算出された被熱量の積算値に今回の被熱量を加算して、今回の被熱量の積算値を算出する。
【0074】
初期期間判定部104は、被熱量算出部102によって算出された今回の被熱量の積算値がしきい値よりも高いか否かを判定し、判定結果に基づいてインジェクタ13が使用初期状態であるか否かを判定する。初期期間判定部104は、たとえば、今回の被熱量の積算値がしきい値よりも高い場合には、インジェクタ13が使用初期状態でないと判定する。また、初期期間判定部104は、たとえば、今回の被熱量の積算値がしきい値以下である場合には、インジェクタ13が使用初期状態であると判定する。なお、初期期間判定部104は、インジェクタ13が使用初期状態であると判定する場合には、使用初期判定フラグをオン状態にしてもよい。
【0075】
噴射量学習部106は、所定条件が成立した場合には、初期期間判定部104による判定結果に応じた噴射量学習を実行する。噴射量学習部106は、初期期間判定部104によってインジェクタ13が使用初期状態であると判定される場合には、第1噴射量学習を実行する。噴射量学習部106は、第1噴射量学習においては、連続する2サイクルの各々において燃料を噴射し、2サイクル目における噴射量差に基づいて補正量を学習する。なお、本実施の形態において、噴射量学習部106は、所定サイクルの間隔をあけつつ2サイクルの連続噴射を5回実行し、5回の連続噴射により算出される補正量の平均値を最終的な補正量として算出するものとする。
【0076】
なお、本実施の形態において、2サイクルの連続噴射を実行する場合には、1サイクル目の指令噴射量と2サイクル目の指令噴射量とは同じであるものとする。
【0077】
噴射量学習部106は、所定の回転変動検出期間に、2サイクル目の燃料噴射によるエンジン回転速度NEの変動量ΔNE2と1サイクル目の燃料噴射によるエンジン回転速度NEの変動量ΔNE1との差分(ΔNE2−ΔNE1)に基づいて2サイクル目の燃料噴射の実噴射量を推定する。所定の回転変動検出期間は、今回の指令噴射量に応じて燃料噴射が実行されてから次回の指令噴射量に応じた燃料噴射が実行されるまでの間の一部または全部の期間である。
【0078】
噴射量学習部106は、1サイクル目の燃料噴射により生じるエンジン回転速度NEの変動量ΔNE1と、2サイクル目の燃料噴射により生じるエンジン回転速度NEの変動量ΔNE2とを算出する。噴射量学習部106は、たとえば、1サイクル目の燃料噴射から1サイクル目の燃料噴射による回転変動が生じる第1時間経過した後の所定期間におけるエンジン回転速度NEの変動量をΔNE1として算出してもよい。また、噴射量学習部106は、2サイクル目の燃料噴射から2サイクル目の燃料噴射により回転変動が生じる第2時間が経過した後の所定期間におけるエンジン回転速度NEの変動量をΔNE2として算出してもよい。
【0079】
噴射量学習部106は、ΔNE2の変動が生じる期間における差分(ΔNE2−ΔNE1)の積算値を算出し、算出した積算値と、積算値と実噴射量との関係を示すマップ等とを用いて実噴射量の推定値を算出する。噴射量学習部106は、指令噴射量と実噴射量の推定値との噴射量差に基づいて補正量を算出する。なお、噴射量学習部106は、たとえば、噴射量差を補正量としてもよいし、噴射量差に所定の係数を乗算した値を補正量としてもよい。噴射量学習部106は、各回の補正量の平均値を最終的な補正量として算出する。なお、噴射量学習部106は、算出された補正量が噴射量学習を実行する前の補正量を基準として所定値を超えて変化する場合には、変化量を所定値に制限して補正量を算出してもよい。
【0080】
また、噴射量学習部106は、初期期間判定部104によってインジェクタ13が使用初期状態でないと判定される場合には、第2噴射量学習を実行する。噴射量学習部106は、第2噴射量学習においては、所定のサイクルにおいて燃料を単発的に噴射し、当該サイクルにおける噴射量差に基づいて補正量を学習する。第2噴射量学習の詳細については、
図3を用いて説明したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0081】
図7を参照して、本実施の形態に係るエンジン10を制御するECU6で実行される制御処理について説明する。
【0082】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU6は、被熱温度を算出する。S102にて、ECU6は、今回の被熱量を算出する。S104にて、ECU6は、今回の被熱量の積算値を算出する。被熱温度、被熱量および積算値の算出については、被熱量算出部102の動作として説明したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0083】
S106にて、ECU6は、インジェクタ13が使用初期状態であるか否かを判定する。インジェクタ13が使用初期状態である場合(S106にてYES)、処理はS108に移される。もしそうでない場合(S106にてNO)、処理はS110に移される。
【0084】
S108にて、ECU6は、第1噴射量学習を実行する。S110にて、ECU6は、第2噴射量学習を実行する。第1噴射量学習および第2噴射量学習の詳細については、噴射量学習部106の動作として説明したとおりであるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0085】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係るエンジン10を制御するECU6の動作について
図8を参照しつつ説明する。
【0086】
たとえば、エンジン10がフューエルカット状態となり、所定の条件の成立に基づく学習指令により、所定の気筒11におけるインジェクタ13の噴射量学習が開始される場合を想定する。
【0087】
図8の上から1段目のグラフに示すように、エンジン10がフューエルカット状態となることにより、エンジン回転速度NEは、時間の経過とともに減少していく。
【0088】
被熱温度が算出され(S100)、今回の被熱量が算出され(S102)、今回の被熱量の積算値が算出され(S104)、算出された被熱量の積算値がしきい値以下である場合には、インジェクタ13は使用初期状態であると判定され(S106にてYES)、第1噴射量学習が実行される(S108)。
【0089】
一方、算出された被熱量の積算値がしきい値よりも大きい場合には、インジェクタ13は使用初期状態でないと判定され(S106にてNO)、第2噴射量学習が実行される(S110)。
【0090】
第2噴射量学習が開始される場合には、
図3で説明したように、5回の指令噴射量に応じた燃料噴射が単発的に実行される。そのため、
図8の上から2段目のグラフに示すように、時間T(1)〜時間T(5)の各タイミングにおいて指令噴射量に応じた燃料噴射が実行される。
【0091】
これに対して、第1噴射量学習が開始される場合には、
図8の下から2段目のグラフに示すように、時間T(1)〜時間T(5)の各タイミングにおいて、指令噴射量に応じた燃料噴射が2サイクル連続で実行される。
【0092】
そのため、
図8の下から1段目のグラフに示すように、時間T(1)〜時間T(2)の期間に、時間T(1)における1サイクル目の燃料噴射によって回転変動量ΔNE1が生じた後に、2サイクル目の燃料噴射によってさらに大きな回転変動量ΔNE2が生じることにより二段階に増加する回転変動が生じる。時間T(2)〜時間T(3)の期間、時間T(3)〜時間T(4)の期間、時間T(4)〜時間T(5)の期間および時間T(5)以降の期間にそれぞれ同様に二段階に増加する回転変動が生じる。各回における差分ΔNE2−ΔNE1に基づいて各回における実噴射量の推定値が算出され、指令噴射量と算出された実噴射量の推定値とに基づいて各回の補正量が算出される。そして、算出された各回の補正量の平均値が最終的な補正量として算出されることとなる。
【0093】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両によると、2サイクルのうち2サイクル目の指令噴射量と実噴射量の推定値との噴射量差に基づいて補正量を学習するので、1サイクル目における噴射量差が補正量の学習に用いられないようにすることができる。1サイクル目の燃料噴射は、他のサイクルの燃料噴射と比較して、直前のサイクルにおける燃料噴射が停止しているため、ノズルニードル42との接触部位の摺り合わせが十分でないノズルサック56から燃料が漏れた状態で実施された可能性が高い。すなわち、1サイクル目の燃料噴射においては、ノズルニードル42の開弁方向への移動の応答性の低下により2サイクル目よりも噴射量が少なくなっている可能性が高い。そのため、2サイクル目における噴射量差に基づいて補正量を学習することにより、1サイクル目における噴射量差に基づいて補正量を学習するよりも精度高くインジェクタからの噴射量の学習を実施できる。したがって、インジェクタからの噴射量の学習を精度高く実施する内燃機関を提供することができる。
【0094】
また、インジェクタ13の被熱量の総量である被熱量の積算値がしきい値よりも小さい場合に、インジェクタ13が使用初期状態であると判定されるので、インジェクタ13が使用初期状態であるか否かを精度高く判定することができる。
【0095】
補正量の学習時において、連続する2サイクルの各々において同量の燃料を噴射するので、最初のサイクルでの燃料噴射によってノズルサック56内に燃料を残留させることができる。そのため、2サイクル目の燃料噴射において噴射量の低下を抑制することができる。
【0096】
また、学習指令に基づく燃料の噴射時における内燃機関の回転速度の変動量に基づいて実噴射量を推定することによって、実噴射量を精度高く推定することができる。
【0097】
以下、変形例について説明する。本実施の形態においては、インジェクタ13が使用初期状態である場合に、2サイクルの連続噴射を伴う噴射量学習を実行する旨を説明したが、たとえば、3サイクル以上の複数サイクルにわたる連続噴射を伴う噴射量学習を実行してもよい。この場合においては、最初のサイクル以外の他のサイクルにおける噴射量差に基づいて噴射量学習が実行されることが望ましい。
【0098】
さらに、本実施の形態においては、第1噴射量学習を実行する場合には、最初のサイクルにおける燃料噴射量と他のサイクルにおける燃料噴射量とが同じであるものとして説明したが、たとえば、最初のサイクルにおける燃料噴射量が他のサイクルにおける燃料噴射量よりも少なくなるようにしてもよい。ただし、最初のサイクルにおける燃料噴射量は、他のサイクルにおける燃料噴射時においてノズルサック56に適量の(ノズルニードル42の開弁方向の移動の応答性が確保できる量の)燃料が残留することが可能な量であることが望ましい。このようにすると、複数のサイクルの各々において同量の燃料を噴射する場合と比較して燃料の消費量を低減することができる。
【0099】
さらに本実施の形態においては、第1噴射量学習の実行時に、差分(ΔNE2−ΔNE1)の積算値が算出され、差分(ΔNE2−ΔNE1)の積算値と実噴射量との関係を示すマップ等を用いて実噴射量の推定値が算出されるものとして説明したが、たとえば、差分(ΔNE2−ΔNE1)が算出され、差分(ΔNE2−ΔNE1)と実噴射量との関係を示すマップ等を用いて実噴射量の推定値が算出されてもよい。なお、上記した変形例は、その全部または一部を組み合わせて実施してもよい。
【0100】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。