特許第6204906号(P6204906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6204906多層薄膜薬物送達デバイスとその作製方法および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204906
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】多層薄膜薬物送達デバイスとその作製方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/00 20060101AFI20170914BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20170914BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 31/5575 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   A61K9/00
   A61K47/34
   A61K47/36
   A61K31/436
   A61K31/5575
   A61K39/395 N
   A61P27/02
   A61P27/06
【請求項の数】15
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2014-505290(P2014-505290)
(86)(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公表番号】特表2014-510792(P2014-510792A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】US2012033366
(87)【国際公開番号】WO2012142318
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2015年4月3日
(31)【優先権主張番号】61/475,373
(32)【優先日】2011年4月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】デサイ,テジャル エイ.
(72)【発明者】
【氏名】スティードマン,マーク ローリー
(72)【発明者】
【氏名】ビシットクル,ロバート ビー.
(72)【発明者】
【氏名】バーナーズ,ダニエル エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ランス,ケビン ディー.
【審査官】 中尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−086015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/34
A61K 47/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層薄膜医療デバイスであって、
第1の多孔質または非多孔質の層と、
第2の多孔質または非多孔質の層と、
前記第1の層と前記第2の層との間に位置付けられる生物活性剤と、
を備え、
前記第1の層および前記第2の層は、前記多層薄膜医療デバイスの端部で互いに接触し、それによって前記多層薄膜医療デバイス内に生物活性剤を密封しており、
前記多層薄膜医療デバイスは1mm〜100mmの面積を有し、かつ、10μm〜500μmの厚さを有する、多層薄膜医療デバイス。
【請求項2】
前記第1の層が非多孔質層であり、前記第2の層が非多孔質層である、請求項1に記載の多層薄膜医療デバイス。
【請求項3】
前記第1の層が多孔質層であり、前記第2の層が非多孔質層である、請求項1に記載の多層薄膜医療デバイス。
【請求項4】
前記第1および/または第2の層が、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)を含む、請求項1に記載の多層薄膜医療デバイス。
【請求項5】
前記第1および/または第2の層がポリマーを含み、前記ポリマーが、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ(DL−ラクチド−コ−ε−カプロラクトン)(PLCL)、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の多層薄膜医療デバイス。
【請求項6】
前記生物活性剤は、凍結乾燥形態で存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の多層薄膜医療デバイス。
【請求項7】
前記デバイスが、捲回構造または展開構造を含む、請求項1に記載の多層薄膜医療デバイス。
【請求項8】
前記捲回構造が、実質的に円筒形または円錐台形であり、前記展開構造が、実質的に円形の周縁部を備える、請求項7に記載の多層薄膜医療デバイス。
【請求項9】
前記第1の層と前記生物活性剤との間に位置付けられた第3の層をさらに備え、前記第3の層がナノ構造多孔質層であり、前記第1の層がマイクロ多孔質層である、請求項1に記載の多層薄膜医療デバイス。
【請求項10】
前記第3の層が、約1nm〜約100nmの平均細孔径を有する、請求項9に記載の多層薄膜医療デバイス。
【請求項11】
前記第1の層が多孔質層であり、前記第1の層の多孔率が約20%〜約0.01%であるか、または前記第1の多孔質層が30μm以下の平均細孔径を有する、請求項1に記載の多層薄膜医療デバイス。
【請求項12】
前記デバイスが円形であり、mm〜10mmの直径を有する、請求項1に記載の多層薄膜医療デバイス。
【請求項13】
前記生物活性剤が、前記第2の層の一方の表面全体に位置する複数の貯蔵部内に配置される、請求項1に記載の多層薄膜医療デバイス。
【請求項14】
前記第2の層が、前記第2の層の一方の表面全体に位置する複数の貯蔵部を備え、前記複数の貯蔵部のうちの第1の貯蔵部が前記生物活性剤を含み、前記複数の貯蔵部のうちの第2の貯蔵部が別の生物活性剤を含む、請求項1に記載の多層薄膜医療デバイス。
【請求項15】
前記生物活性剤が、タンパク質治療薬、小分子薬、大分子薬またはアプタマーであり、前記生物活性剤がタンパク質治療薬である場合に、ラニビズマブ、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、ゲムツズマブ オゾガマイシン、およびセツキシマブから選択され、前記生物活性剤が小分子薬である場合に、ステロイド、ラパマイシン、またはプロスタグランジンから選択される、請求項1に記載の多層薄膜医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先の出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に従って、2011年4月14日に出願された米国仮特許出願第61/475,373号に対する優先権を主張するものであり、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
慢性疾患は、定期的な通院または来院を余儀なくされる注射および他の手技等の従来の薬物送達方法に依存する長期治療計画を必要とすることが多い。制御された長期薬物送達は、これらの従来方法よりも優れた多くの利点を有する。臨床的に意義のある治療域の薬物濃度を維持することにより、過剰投与および薬物の浪費を最小限に抑え、より少ない副作用をもたらし、患者コンプライアンスおよび薬物有効性を高める。化学療法薬の送達のための移植可能な輸液ポンプ、糖尿病の治療のためのインスリンポンプ、腰痛の治療のための脊髄薬物投与システムを含む、これらの長期薬物送達の原則を用いるいくつかの技術が開発されている。
【0003】
長期薬物送達システムにおける最近の発展として、特定の器官を標的とするための小型化が挙げられる。例えば、眼が、そのサイズが小さいこと、ならびにブドウ膜炎、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、緑内障、および加齢黄斑変性(AMD)を含む、そこに発症する疾患の多くの慢性的な性質に起因して、長期制御薬物送達の対象である。
【0004】
タンパク質治療薬は、多くの疾患に有効な治療薬である。例えば、血管新生AMDは、ラニビズマブ(Lucentis、Genentech,Inc.)およびベバシズマブ(Avastin、Genentech,Inc.)等の抗血管内皮増殖因子(VEGF)剤を用いて効果的に治療される。これらの治療薬は、毎月、硝子体腔内に直接注射されるが、それは副作用として眼内炎、眼圧上昇、白内障、および網膜剥離を含み得る侵襲的手技である。特にAMDの場合、抗VEGF薬ならびに他の巨大タンパク質および抗体ベースの薬剤の生物学的安定性が不良であるため、長期薬物送達が制約される。これらの抗VEGF薬は、標準的な硝子体内注射の後、数日の半減期で眼から除去されるため、治療有効期間を延長するために、毎月、閾値を越えるボーラス投与を余儀なくされる。
【0005】
治療に必要な眼内注射の数を最小限に抑え、眼内の治療的薬物濃度を維持しながら、眼の前部および/または後部セグメントにタンパク質治療薬を含む薬物を送達することができる持続性および徐放性の薬物送達デバイスに関心が寄せられている。
【発明の概要】
【0006】
対象に投与されると周囲組織に溶出する生物活性剤を含む多層薄膜医療デバイスが提供される。また、対象の組織への生物活性剤の局所送達のための方法およびキット、ならびに主題のデバイスを調製する方法も提供される。多層薄膜医療デバイスは、第1の層、生物活性剤、および第2の層を含む。第1および第2の層は、多孔質または非多孔質であってもよい。デバイスは、針またはカテーテルを介した対象への投与に好適な捲回構造を有する。
【0007】
対象に投与されると周囲組織に溶出する生物活性剤を含む多層薄膜デバイスが提供される。このデバイスは、薬物送達のための医療デバイスとして有用であり、生物活性タンパク質および小分子の送達のための眼球デバイスを含む。また、対象の組織への生物活性剤の局所送達の方法、および主題の多層薄膜医療デバイスを調製する方法も提供される。
【0008】
特定の実施形態において、多層薄膜医療デバイスは、第1の薄膜層、生物活性剤、および第2の薄膜層を含み、生物活性剤は、第1の薄膜層と第2の薄膜層との間に位置付けられる。第1の層は、ポリマーおよび細孔形成剤を含んでもよい。第2の層は、多孔質または非多孔質であってもよい。第1および第2の層は、生分解性または非生分解性であってもよい。対象への投与後、細孔形成剤が溶解して多孔質の第1の層を生成し、生物活性剤(例えば、タンパク質治療薬)を周囲組織に溶出させる。いくつかの実施形態において、デバイスは、第1の層と生物活性剤の貯蔵部との間に位置付けられた第3のナノ構造多孔質層をさらに含む。
【0009】
特定の実施形態において、多層薄膜医療デバイスは、第1の非多孔質薄膜層、生物活性剤、および第2の非多孔質薄膜層を含み、生物活性剤は、第1の層と第2の層との間に位置付けられる。
【0010】
特定の実施形態において、デバイスは捲回構造を有し、該構造は、水和液の存在下においてインビボで展開する。特定の場合、捲回構造を有するデバイスは、標的組織への注射によって対象に投与されてもよい。
【0011】
これらのデバイスおよび方法は、対象への生物活性剤の送達が所望される様々な用途に使用される。
【0012】
本開示に記載される実施形態は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読むと最もよく理解される。一般的な慣行に従って、図面に示される様々な特徴が縮尺通りではないことを強調しておく。反対に、分かりやすくするために、様々な特徴の寸法が任意に拡大または縮小されている。図面には以下の図が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】A〜Fは、PBS中で5日間インキュベーションした後のポリカプロラクトン(PCL)/ゼラチン薄膜の走査電子顕微鏡(SEM)画像、および対応する細孔径ヒストグラムを示す。
図2】A〜Bは、PBS中でインキュベーションした後のPCL/ゼラチン薄膜の多孔性および質量損失のグラフを示す。
図3】A〜Cは、多層薄膜デバイスの製造を示す。(A)製造、(B)直径約2mmの完成デバイス、および(C)デバイスのエッジプロファイル。
図4】A〜Bは、PCL/ゼラチンおよびPCL単独薄膜デバイスからのタンパク質((A)BSA、(B)IgG)の画分溶出プロファイルを示す。
図5】PCL/ゼラチン薄膜デバイスからのBSAおよびIgGの溶出速度の比較を示す。
図6】Aは、ELISAおよびBCAアッセイによって判定されるように、PCL/ゼラチン薄膜デバイスから溶出したIgGの生物活性が経時的に維持されることを示す。Bは、投与後6週間のPCL/ゼラチン薄膜デバイスから溶出したIgGのインビボ活性を示す。
図7】A〜Cは、薄型形態因子(C)を有する捲回した薄膜デバイス(A)および展開したデバイス(B)を示す。
図8】A〜Eは、薄膜の製造工程を示す。F〜Gは、典型的なナノ構造PCL膜の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図9】A〜Cは、例示的な多層薄膜デバイス(A)の略図と、マイクロ多孔質(B)およびナノ多孔質薄膜層(C)の側面プロファイルSEM画像を示す。D〜Gは、例示的な多層薄膜デバイスのさらなる構成を示す。Dは、中に生物活性剤が存在する貯蔵部を含む中央に位置する層を含む多層薄膜デバイスの略図を示す。貯蔵部内の生物活性剤は、貯蔵部を含む層を挟むナノ多孔質薄膜層を介して溶出することができる。ナノ多孔質層の各々は、マイクロ多孔質層によって覆われている。Eは、中に2つの異なる生物活性剤が存在する貯蔵部を備える中央層を含む多層薄膜デバイスの略図を提供する。貯蔵部内の生物活性剤は、貯蔵部を含む層を挟むナノ多孔質薄膜層を介して溶出することができる。ナノ多孔質層の各々は、マイクロ多孔質層によって覆われている。Fは、生物活性剤を含む別の貯蔵部が加えられた、図9Aに示されるものと同様の多層薄膜デバイスを示す。2つの貯蔵部は、異なる生物活性試薬を含む(図9G)。
図10】Aは、FITC−IgGタンパク質で充填された非多孔質PCL薄膜のウェルを示す。Bは、例示的な多層薄膜デバイスの寸法を示す。
図11】A〜Cは、本明細書に開示される多層薄膜を製造するために使用できる例示的な装置を示す。
図12】本明細書に開示されるような多層薄膜デバイスからのタンパク質の放出を示す。
図13】ナノ多孔質薄膜デバイス(実線の円形)、非多孔質デバイス(実線の四角形)、および薬物がポリマー膜中に混合されたPCL薄膜(実線の三角形)からの小分子(ラパマイシン、分子量914.172Da)の放出動態を示す。ナノ多孔質薄膜デバイスは、支持されたナノ構造膜(ナノ構造細孔20〜40nm、支持層細孔1〜3ミクロン)からなっていた。非多孔質膜は、中央貯蔵部にラパマイシンを含んでいた。PCL薄膜の場合、小分子は、貯蔵部に含まれるのではなく、ポリマー自体の中に混合される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上に要約したように、対象に投与されると周囲組織に溶出する生物活性剤を含む多層薄膜が提供される。主題のデバイスは、第1の層、生物活性剤、および第2の層を含み、生物活性剤は、第1の層と第2の層との間に位置付けられる。1つ以上の生物活性剤が第1の層と第2の層との間に含まれてもよい。第1および第2の層は、非多孔質であってもよい。第1の層は、生分解性ポリマーおよび細孔形成剤を含んでもよい。対象への投与後、細孔形成剤が溶解して多孔質の第1の層を生成し、生物活性剤(例えば、タンパク質治療薬)を周囲組織に溶出させる。細孔形成剤が存在しない場合、第1の層は非多孔質であり得る。第2の層は、非多孔質または多孔質であってもよい。いくつかの実施形態において、一部または全部の層が非生分解性であってもよい。他の実施形態において、第1の層および/または第2の層が生分解性であってもよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、デバイスは、第1の層と生物活性剤との間に位置付けられた第3のナノ構造多孔質層をさらに含む。特定の実施形態において、主題のデバイスは捲回構造を有する。捲回構造は、注射によるまたはカテーテルを介した対象へのデバイスの投与に好適である。一旦、対象内に設置されると、該構造は、水和液(水和液は対象の体液であってもよい)の存在下においてインビボで展開する。いくつかの実施形態において、デバイスは、生分解性または非生分解性のいずれかである2つの非多孔質膜を含み、これらの膜の間に生物活性剤が位置付けられる。
【0016】
主題のデバイスは、対象内にデバイスが設置された後で周囲組織に局所送達される生物活性剤の貯蔵部を含む。いくつかの実施形態において、長期間にわたってデバイスから生物活性剤が溶出される。さらに、主題のデバイスからの薬物または生物学的薬剤の放出または溶出は、限定されないが、薄膜層のサイズ、多孔性、厚さ、および組成等のパラメータによって制御することができる。長期間にわたって持続性および実質的に一定の薬物の放出を達成するように、特定の薬物の放出動態が制御される。主題のデバイスのための例示的な医療デバイスとして、限定されないが、心血管デバイス、神経学的デバイス、神経血管デバイス、消化器系デバイス、筋肉デバイス、眼球デバイス等が挙げられる。いくつかの実施形態において、多層薄膜は、関節腔、神経、肝臓、腎臓、消化器、膵臓、前立腺、結腸等の軟組織への生物活性剤の局所送達のために使用することができる。
【0017】
いくつかの実施形態において、デバイスは、第1の膜層と第2の膜層との間に位置付けられた1つより多くの貯蔵部を含み、各貯蔵部は、単一の生物活性剤または2つ以上の異なる生物活性剤を含む。主題のデバイスは、標的組織内に注射されてもよいか、または標的組織に外科的に移植されてもよいか、または経口投与されてもよい。
【0018】
特定の実施形態についてより詳細に記載する前に、本開示は、当然変化し得るものであるため、特定の実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。また、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態について説明することのみを目的とするのであって、限定的であることを意図するものではないことを理解されたい。
【0019】
値の範囲が提供される場合、文脈によって別途明確に指示されない限り、下限の単位の10分の1まで、その範囲の上限と下限との間にある各介在値も具体的に開示されることを理解されたい。任意の規定値または規定範囲内の介在値とその規定範囲内の他の任意の規定値または介在値との間のより小さな各範囲は、本開示内に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して該範囲内に包含されてもよいか、または該範囲から除外されてもよく、制限値のいずれかがより小さい範囲内に含まれる場合、制限値のどちらもより小さい範囲内に含まれない場合、または両方の制限値がより小さい範囲内に含まれる場合、各範囲もまた本開示に包含され、規定範囲内の任意の具体的に除外される制限値に制約される。規定範囲が制限値の一方または両方を含む場合、それらの包含される制限値のいずれかまたは両方を除外する範囲もまた本開示に含まれる。
【0020】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有するものとする。本明細書に記載されるものと類似するかまたは均等であるいずれの方法および材料も、本明細書に記載される実施形態の実施または試験に使用することができるが、いくつかの考えられる好ましい方法および材料を次に記載する。本明細書において言及される全ての刊行物は、引用される刊行物に関連して方法および/または材料を開示および記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。本開示は、矛盾が存在する程度まで、組み込まれた刊行物のいずれの開示にも優先することを理解されたい。
【0021】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」「an」および「the」は、文脈によって別途明確に指示されない限り、複数の指示対象も含むことに留意するべきである。よって、例えば、「a cell(細胞)」に対する言及は複数のそのような細胞を含むべきであり、「the compound(化合物)」に対する言及は、1つ以上の化合物および当業者に既知であるその均等物に対する言及を含む等である。
【0022】
本明細書において議論される刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示に関してのみ提供される。本明細書中のいかなる記載も、本開示が、先行発明を理由として、そのような刊行物に先行する資格がないということを認めるものであると解釈されるべきではない。さらに、提示される刊行日は、実際の刊行日とは異なる場合があり、別個に確認する必要があるかもしれない。
【0023】
多層薄膜
生物活性剤を、それを必要とする対象の組織に局所送達することにおいて使用するための複数の薄膜層および生物活性剤を含む多層薄膜医療デバイスが提供される。いくつかの実施形態において、主題のデバイスの少なくとも1つの薄膜、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の薄膜は、生分解性または非分解性ポリマーと細孔形成剤とを含む。いくつかの実施形態において、主題のデバイスの少なくとも1つの薄膜、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の薄膜は、多孔質薄膜(例えば、マイクロ多孔質薄膜またはナノ多孔質薄膜)である。いくつかの実施形態において、複数の薄膜層は、非多孔質であり、2つの非多孔質薄膜層の間に生物活性剤を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、多層薄膜医療デバイスは、生分解性または非分解性ポリマーおよび細孔形成剤を含む第1の層と、生物活性剤と、生物活性剤と接触する第2の層とを含み、生物活性剤は、第1の層と第2の層との間に位置付けられる。
【0025】
いくつかの実施形態において、第2の層は、非多孔質層(例えば、バッキング層)である。いくつかの実施形態において、第2の層は、多孔質層(例えば、マイクロ多孔質層またはナノ多孔質層)である。第2の層は、生分解性または非分解性ポリマーおよび細孔形成剤を含んでもよい。特定の実施形態において、第2の層は、ナノ構造多孔質層である。
【0026】
いくつかの実施形態において、多層薄膜医療デバイスは、2つの多孔質層の間に位置付けられた生物活性剤を含む。いくつかの場合において、該層の一方または両方は、ナノ構造多孔質層である。いくつかの場合において、該層の一方または両方は、マイクロ多孔質層である。いくつかの実施形態において、多層薄膜医療デバイスは、2つの層の間に位置付けられた生物活性剤の貯蔵部を含み、該層の一方または両方は、生分解性または非分解性ポリマーおよび細孔形成剤を含む。特定の実施形態において、主題のデバイスは、第1の層および/または第2の層と生物活性剤の貯蔵部との間に位置付けられた1つ以上のさらなるナノ構造多孔質層をさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、多層薄膜医療デバイスは、生分解性または非分解性ポリマーおよび細孔形成剤を含む第1の層と、生物活性剤と、生物活性剤と接触する第2の非多孔質層とを含み、生物活性剤は、第1の層と第2の層との間に位置付けられる。
【0028】
いくつかの実施形態において、多層薄膜医療デバイスは、生分解性または非分解性ポリマーを含む第1の多孔質層と、生物活性剤と、生物活性剤と接触する第2の非多孔質層とを含み、生物活性剤は、第1の層と第2の層との間に位置付けられる。
【0029】
特定の実施形態において、主題のデバイスは捲回構造(例えば、実質的に円筒形、実質的に円錐形、または実質的に円錐台形の構造)を含む。特定の実施形態において、主題のデバイスは展開構造を含み、該構造は、実質的に円形の周縁部を有してもよい。
【0030】
特定の実施形態において、主題のデバイスは、第1の層と生物活性剤の貯蔵部との間に位置付けられた第3のナノ構造多孔質層をさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、多層薄膜医療デバイスは、生分解性または非分解性ポリマーを含む第1の非多孔質層と、生物活性剤と、生物活性剤と接触する第2の非多孔質層とを含み、生物活性剤は、第1の層と第2の層との間に位置付けられる。
【0032】
特定の実施形態において、主題のデバイス内で、第1の非多孔質層および第2の非多孔質層が多層薄膜の端部で互いに接触し、それによって多層薄膜内に生物活性薬を密封する。特定の実施形態において、非多孔質層のいずれかまたは両方が生分解性である。他の実施形態において、非多孔質層のいずれかまたは両方が非生分解性である。
【0033】
特定の実施形態において、主題のデバイス内で、生物活性剤は、凍結乾燥材料の薄いペレットとして存在する。特定の実施形態において、主題のデバイス内で、生物活性剤は、第2の非多孔質層の一方の表面全体に位置する複数の貯蔵部内に堆積される。他の実施形態において、2つ以上の生物活性剤が、複数の貯蔵部内、例えば、同じ貯蔵部内または異なる貯蔵部内に堆積される。
【0034】
特定の実施形態において、第1の生物活性剤は、第2の非多孔質層の一方の表面全体に位置する複数の貯蔵部のうちの第1の貯蔵部内に堆積され、第2の生物活性剤は、複数の貯蔵部のうちの第2の貯蔵部内に堆積される。
【0035】
他の実施形態において、複数の生物活性剤が多層薄膜デバイス内に存在する。例えば、2つ以上の生物活性剤が、第1の薄膜層と第2の薄膜層との間に存在してもよい。
【0036】
細孔形成剤
細孔形成剤は、第1の薄膜層から溶解または腐食して、残ったポリマーの多孔質の第1の薄膜を生成することができる。好適な条件の適用、例えば、インビボでの水性液体との接触により、細孔形成剤が溶解する。例示的な条件を以下に記載する。例えば、対象の眼内にデバイスを設置したときに、細孔形成剤が硝子体液と接触して溶解し、その結果、薄膜に形成された細孔を通して生物活性剤の経時的放出を提供する。特定の実施形態において、細孔形成剤の溶解は急速であり、例えば、生物活性剤の溶出は、投与後約60分以内、例えば、投与後約30分以内、約15分以内、約10分以内、約5分以内、または約2分以内に開始する。
【0037】
いくつかの実施形態において、細孔形成剤の溶解後に形成される多孔質薄膜はマイクロ多孔質であり、例えば、該薄膜は、約1μm〜約100μm、例えば、約1μm〜約30μm、約1μm〜約20μm、または約1μm〜約10μmの細孔径を有する多孔質構造を含む。特定の実施形態において、多孔質薄膜は、約1μm〜約30μm、例えば、約1μm〜約15μm、約1μm〜約10μm、または約1μm〜約5μmの平均細孔径を有する。特定の実施形態において、多孔質薄膜は、約20%〜約0.01%、例えば、約10%〜約0.1%、約5%〜約0.1%、または約2%〜約0.1%(約0.1%〜約0.4%、約0.4%〜約1%、および約1%〜約2%を含む)の多孔率を有する。特定の実施形態において、マイクロ多孔質薄膜は、0.1%、0.5%、または1.8%の多孔率を有する。
【0038】
いくつかの場合において、細孔形成剤は、生体適合性および/または生分解性であり、対象に投与されると溶解することができる。好適な細孔形成剤は、特定の生物活性剤および薄膜の組成、ならびに所望の溶出プロファイルまたは放出速度を考慮して選択することができる。いずれの好適な水溶性ポリマーまたはハイドロゲルが細孔形成剤として使用されてもよい。細孔形成剤は、天然に存在する薬剤もしくはポリマー、または合成薬剤もしくはポリマーであってもよい。いくつかの実施形態において、細孔形成剤は、第4級アンモニウム基、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ヒアルロナン、またはポリビニルピロリドンを含む、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンコポリマー、アクリレートポリマー、アクリレート−アクリル酸コポリマー、ポリアクリル酸、アクリレートコポリマー等の水溶性ポリマーである。
【0039】
いくつかの実施形態において、細孔形成剤は、炭水化物、タンパク質、またはタンパク質誘導体等である。例示的な細孔形成試薬として、限定されないが、ゼラチン、ポリエチレングリコール(PEG)、キトサン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、またはアガロースが挙げられる。いずれの好適なPEGが細孔形成剤として選択されてもよい。
【0040】
特定の実施形態において、主題のデバイスの少なくとも1つの薄膜は、約1:2〜99:1、例えば、約1:2、1:5、または約7:3〜9:1(例えば、約7:3、約8:2、または約9:1)の範囲の、細孔形成剤に対する生分解性または非生分解性ポリマーの質量比を含む。
【0041】
生分解性ポリマー
いくつかの実施形態において、主題のデバイスは生分解性である。いくつかの実施形態において、主題のデバイスの複数の薄膜は、各々、独立して生分解性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、第2の非多孔質薄膜層は、生分解性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、1つ以上のナノ多孔質薄膜層は、生分解性ポリマーを含む。主題のデバイスの薄膜は、様々な好適な材料から製造することができる。例示的な生分解性ポリマーとして、限定されないが、生分解性または生体内分解性ポリマー、例えば、ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ(DL−ラクチド−コ−ε−カプロラクトン)(DLPLCL)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、またはそれらの組み合わせもしくはコポリマー、および天然の生分解性ポリマー、例えば、コラーゲン等が挙げられる。PLGAは、ポリラクチド(PLA)およびポリグリコリド(PGA)のバルク侵食性コポリマーである。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、PLA、PGA、PCL、PLGA、またはPLCLを含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、ポリカプロラクトン(PCL)を含む。PCLは、インビボで生体適合性および生分解性であり、デバイスの存在および分解の期間を通して良好な耐用性を示す、例示的なポリマーである[例えば、Sun et al.,The in vivo degradation,absorption and excretion of PCL−based device.Biomaterials 27(9)(2006)1735−1740、Beeley et al.,Fabrication,implantation,elution,and retrieval of a steroid−loaded polycaprolactone subretinal device.J.Biomed.Mater.Res.A,73(4)(2005)437−444、Giavaresi et al.New polymers for drug delivery systems in orthopaedics:in vivo biocompatibility evaluation.Biomedicine&Pharmacotherapy 58(8)(2004)411−417を参照のこと]。
【0043】
いくつかの場合において、生分解性ポリマーは、生理的条件下で、2段階の分解を生じさせるランダムな鎖切断により分解する。最初、分子量が減少しても、物理的構造は顕著な影響を受けない。分解は、ポリマー材料全体にわたって起こり、分解産物が可溶化されるのに十分小さくなったときに臨界分子量に達するまで進行する。この時点で、構造は、著しくより多孔質になって水和され始める。例えば、吸収の早いPGAと吸収の遅いPLAとのある組み合わせにより、PLGAコポリマーは約6週間の吸収速度を有することが可能となる。
【0044】
いくつかの場合において、生分解性ポリマーは、約80kDa以上の分子量を有し、対象の組織内で1年後またはそれ以降まで分解しない。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマー(例えば、PCL)の巨視的分解は、約8kDaで起こり得る。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーの分子量は、インビボでの材料の分解時間を調節するように選択される。例えば、約15〜約20kDaのPCLポリマーは、4ヵ月後に構造的に崩壊し始め、6ヶ月までには機械的完全性を損失する可能性がある。
【0045】
いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、約10kDa以上、例えば、約15kDa以上、約20kDa以上、約30kDa以上、約40kDa以上、約50kDa以上、約60kDa以上、約70kDa以上、約80kDa以上、約90kDa以上、または約100kDa以上の分子量を有するポリマーを含む。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーはポリマーのブレンドを含み、その場合、ポリマーは、同じかまたは異なる種類のポリマーであってもよく、各ポリマーが異なる分子量であってもよい。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーは、高分子量ポリマーと低分子量ポリマーとのブレンドを含む。高分子量ポリマーは、約25kDa以上、例えば、約30kDa以上、約40kDa以上、約50kDa以上、約60kDa以上、約70kDa以上、約80kDa以上、約90kDa以上、または約100kDa以上であってもよい。低分子量ポリマーは、約20kDa以下、例えば、約15kDa以下、約10kDa以下、約8kDa以下、約6kDa以下、または約4kDa以下であってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、ポリマーブレンド中の低分子量ポリマーに対する高分子量ポリマーの質量比は、約1:9〜約9:1、例えば、約2:8〜約8:2、約2:8〜約6:4、または約2:8〜約1:1である。特定の実施形態において、低分子量ポリマーに対する高分子量ポリマーの質量比は、約3:17、約2:8、約1:3、約3:7、約7:13、約2:3、約9:11、約1:1、約11:9、または約3:2である。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーの組成は、約50℃〜約70℃、例えば、約58℃〜約63℃の融解温度(T)を提供するように選択される。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマーの組成は、約−50℃〜約−80℃、例えば、約−60℃〜約−65℃のガラス転移温度(T)を提供するように選択される。
【0047】
いくつかの実施形態において、生分解性ポリマー層の厚さは、約1ミクロン〜約100ミクロンの範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、生分解性ポリマー層の厚さは、約100nm〜約990nmの範囲であってもよい。例えば、生分解性ポリマー層の厚さは、約100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、または990nmであってもよい。
【0048】
生物活性剤の貯蔵部
主題のデバイスは、1つ以上の生物学的製剤の貯蔵部を含む。貯蔵部は、生物活性剤が投与されると、次いで1つ以上の多孔質薄膜層を通ってデバイスから対象の周囲組織内に溶出されるように、主題のデバイス内に含まれる。
【0049】
いくつかの実施形態において、主題のデバイスは、デバイス内に詰められ、投与後に周囲組織内に放出するようにその後インサイツで再可溶化される、凍結乾燥形態の生物活性剤を用いる。例えば、凍結乾燥生物活性剤は、眼に挿入された後、デバイス内で隔離され、貯蔵部内で眼環境への侵入を制限され、数ヶ月の間生物活性を維持し、工学的細孔を介して(例えば、ナノ多孔質薄膜および/またはマイクロ多孔質薄膜において)再水和および放出が制御される。そのような実施形態において、貯蔵部内の生物活性剤の安定性および生物活性は、投与後長期間維持される。
【0050】
いくつかの実施形態において、貯蔵部は、生物活性剤を含む組成物の連続層によって画定される。例えば、図3に示されるような凍結乾燥材料の層である。そのような実施形態において、生物活性剤の貯蔵部は、第1の薄膜層と第2の薄膜(例えば、非多孔質薄膜)との間に位置付けられ、第1の層は、生分解性もしくは非生分解性ポリマーおよび細孔形成剤を含む薄膜、または細孔形成剤が溶解したマイクロ多孔質薄膜であってもよい。特定の実施形態において、第3のナノ多孔質薄膜層は、第1の層と生物活性剤の貯蔵部との間に位置付けられる。
【0051】
いくつかの実施形態において、貯蔵部は、限定されないが、薄膜の表面を通っておよび/または横切って位置するウェル、細孔、チャンバ、またはチャネル等の薄膜層の複数の構造によって画定され、該構造的空隙は、生物活性剤を含む組成物で充填される。例えば、貯蔵部は、図10に示されるように生物活性剤で充填された非多孔質薄膜の複数のウェルによって画定されてもよい。そのような実施形態において、複数の構造によって画定される貯蔵部は、生物活性剤が投与されるとそこを通って拡散できる多孔質層を提供するさらなる薄膜(例えば、ナノ多孔質薄膜、マイクロ多孔質薄膜、もしくはその前駆体、またはそれらの組み合わせ)で覆われていてもよい。そのような場合、複数の構造によって画定されるこの貯蔵部は、第1の薄膜層と第2の薄膜層との間に位置付けられると表現することができる。いくつかの場合において、貯蔵部は、複数の生物活性剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、複数の貯蔵部のうちの第1の貯蔵部は、第1の生物活性剤を含んでもよく、複数の貯蔵部のうちの第2の貯蔵部は、第2の生物活性剤を含んでもよい。いくつかの実施形態において、複数の異なる生物活性剤が異なる貯蔵部に存在してもよい。いくつかの実施形態において、貯蔵部は、複数の薄膜層(例えば、約10μm以下の厚さの複数の層)によって画定され、各層は、生物活性薬を隔離することができ、また各層は、その上の層によって水和液(例えば、対象の周囲組織からの液体)への暴露から保護され得る。そのような場合、投与後、生物活性薬は、長期間にわたって貯蔵部の各層から連続的に溶出される。貯蔵部の各層は、細孔、チャネル、またはウェルのナノ構造等の構造を含む生分解性ポリマーをさらに含んでもよい。
【0052】
細孔形成剤は、生物活性剤を凍結乾燥状態でデバイス内に密封および維持することにより、生物活性剤を分解から保護することができる。特定の実施形態において、デバイスは貯蔵安定性であり、例えば、生物活性剤は、1ヶ月以上、2ヶ月以上、3ヶ月以上、6ヶ月以上、9ヶ月以上、または12ヶ月以上等の長期間、その生物活性を維持するタンパク質治療薬である。いくつかの実施形態において、デバイスが対象内に設置されると、細孔形成剤の溶解が、生物活性剤の周囲組織への溶出プロファイル(例えば、遅延溶出プロファイル、2つの溶出プロファイル、実質的にゼロ次の溶出プロファイル)を提供する。
【0053】
例示的な生物活性剤として、限定されないが、ポリペプチド、核酸(DNA、RNA、およびsiRNA等)、成長因子、ステロイド剤、抗体療法薬、抗菌剤、抗生物質、抗レトロウイルス薬、抗炎症性化合物、抗腫瘍剤、抗血管新生剤、および化学療法剤が挙げられる。特定の実施形態において、多層薄膜は、共有結合的に付着した生物活性剤を含む。いくつかの実施形態において、多層薄膜デバイスは、幹細胞、膵島または膵β細胞、網膜前駆細胞、心筋前駆細胞、骨細胞前駆細胞、神経前駆細胞等の細胞をさらに含む。
【0054】
任意の好都合な生物活性剤が、主題のデバイスに使用するために選択されてもよい。いくつかの実施形態において、生物活性剤は、小分子であるか、またはタンパク質(例えば、タンパク質生物製剤または抗体)もしくはアプタマー(例えば、一本鎖ポリヌクレオチド薬)等の大分子である。特定の場合、生物活性剤は、主題のデバイスの層の上に生物活性剤を設置する前または後に、薬学的に許容される添加剤と組み合わされてもよい。「薬学的に許容される添加剤」という用語は、活性薬剤の生物学的活性の有効性に過度に干渉せず、患者にとって十分に無毒性である、製剤分野において既知であるかまたは使用される保存剤、抗酸化剤、乳化剤、色素、および賦形剤を指す。例えば、生物活性剤は、当該技術分野で既知であるような不活性増量剤、抗刺激剤、ゲル化剤、安定剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、着色剤、保存剤、または緩衝剤と処方されてもよい。「賦形剤」という用語は、所望の使用に効果的な医薬組成物の処方に使用される担体、希釈剤、および/またはビヒクルを意味することが従来既知である。
【0055】
いくつかの実施形態において、生物活性剤は、限定されないが、抗緑内障剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、ビタミン、微量栄養素または抗酸化剤、抗菌剤(例えば、バンコマイシンもしくはセファゾリン)、抗ウイルス剤(例えば、ガンシクロビル、アシクロビル、もしくはホスカルネット)、抗真菌剤(例えば、アンホテリシンB、フルコナゾール、もしくはボリコナゾール)、あるいは抗癌剤(例えば、シクロホスファミドもしくはメルファラン)等の小分子である。特定の実施形態において、小分子は、ビタミン、微量栄養素、または抗酸化剤、例えば、限定されないが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛、銅、ルテイン、またはゼアキサンチンである。特定の実施形態において、小分子は、免疫抑制剤、例えば、限定されないが、シクロスポリン、メトトレキサート、またはアザチオプリンである。特定の実施形態において、小分子は、抗炎症剤、限定されないが、副腎皮質ステロイド(例えば、トリアムシノロンアセトニドもしくはデキサメタゾン)、または非ステロイド剤(例えば、ケトロラクもしくはジクロフェナク)である。特定の実施形態において、小分子薬は、抗緑内障剤、例えば、限定されないが、ラタナプロスト、トラバロスト、チモロール、ブリモニジンまたはドルゾラミドである。
【0056】
特定の実施形態において、小分子は、疎水性小分子であってもよい。他の実施形態において、小分子は、親水性小分子であってもよい。一般に、小分子は、タンパク質を含まない。
【0057】
いくつかの実施形態において、生物活性剤は、抗血管新生薬、抗VEGF薬、免疫抑制剤、補体阻害剤、神経筋遮断薬、造血因子(例えば、エリスロポエチン)、血栓溶解薬(例えば、組織プラスミノーゲンアクチベーター)、コラーゲン分解性薬物(例えば、ヒアルロニダーゼまたはマイクロプラスミン)である大分子薬である。特定の実施形態において、大分子薬は、免疫抑制剤、例えば、限定されないが、エタネルセプト、インフリキシマブ、またはダクリズマブである。特定の実施形態において、大分子薬は、神経筋遮断薬、例えば、限定されないが、A型ボツリヌス毒素である。特定の実施形態において、大分子薬は、補体阻害剤、例えば、限定されないが、抗C3化合物である。
【0058】
いくつかの実施形態において、生物活性剤は、タンパク質、例えば、限定されないが、抗体治療薬、例えば、ラニビズマブ(Lucentis(著作権)、Genentech,Inc.)、ベバシズマブ(Avastin(登録商標)、Genentech/Roche)、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標)、Genentech,Inc.)、リツキシマブ(Rituxan(登録商標)、Genentech,Inc.)、ゲムツズマブオゾガマイシン(Myllotarg(登録商標)、Pfizer,Inc.)、またはセツキシマブ(Erbitux(登録商標)、ImClone LLC)等;酵素、限定されないが、コラゲナーゼ、ぺプチダーゼ、またはオキシダーゼ等;タンパク質治療薬、例えば、限定されないが、インスリン、エリスロポエチン(例えば、rHuEPO−α、Epoetinα)、血液因子、インターフェロン(例えば、インターフェロンα−2b(INTRON(登録商標)A)ペグインターフェロンα−2b)等である。特定の実施形態において、生物活性剤は、治療標的、例えば、限定されないが、VEGF、GP120、RANKL、NGF、またはTNF−α等の活性を調節するタンパク質である。特定の実施形態において、生物活性剤は、抗血管新生薬(例えば、PDGF阻害剤または抗VEGF薬)である大分子薬である。特定の実施形態において、生物活性剤は、VEGF拮抗薬、例えば、限定されないが、ラニビズマブまたはベバシズマブである。
【0059】
いくつかの実施形態において、生物活性剤は、タンパク質治療薬、例えば、限定されないが、ラニビズマブ、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、またはセツキシマブである。
【0060】
生物活性剤は、精製された形態、部分的に精製された形態、組換え形態、または多層薄膜医療デバイス内に包含するのに適切な任意の他の形態であり得る。薬剤は、不純物および混入物を含まないかもしれない。多層薄膜医療デバイス内に配置される生物活性剤(複数可)は、生物活性剤(複数可)の安定性を高めるための添加剤等の安定化剤を含んでもよい。例えば、生物活性剤は、市販の安定剤等の安定剤と組み合わされてもよい。一般に、使用される安定剤は、多層薄膜デバイス内に含まれる生物活性剤(複数可)の種類に依存し得る。
【0061】
ナノ多孔質薄膜
いくつかの実施形態において、主題のデバイスの1つ以上の薄膜層、例えば、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の薄膜は、ナノ多孔質である。本明細書で使用される場合、「ナノ多孔質」という用語は、平均細孔径がマイクロメーター以下、例えば、約1nm〜約990nm、約1nm〜約100nm、約2nm〜約700nm、約2nm〜約500nm、約3nm〜約400nm、約5nm〜約200nm、または約7nm〜約50nmのナノ構造薄膜多孔質層を指す。
【0062】
いくつかの実施形態において、ナノ多孔質薄膜は、上述のような(例えば、生分解性ポリマーおよび細孔形成剤を含む)別の薄膜と生物活性剤の貯蔵部との間に位置付けられる。ナノ多孔質薄膜は、生物活性剤と接触しており、主題のデバイスからの生物活性剤の所望の溶出プロファイル(例えば、初期バーストの影響を回避する実質的にゼロ次の溶出プロファイル)を提供する。例えば、細孔径、ポリマーの厚さ、多孔質面積、および細孔密度等のナノ多孔質薄膜のパラメータを制御することにより、ナノ多孔質薄膜は、様々な生物活性剤の拡散障壁としての機能を果たすことができる。
【0063】
特定の実施形態において、生物活性剤の分子がナノ細孔を通って一列縦隊拡散(SFD)または束縛拡散によって拡散するように、ナノ多孔質薄膜の平均細孔径は、生物活性剤の溶質(例えば、タンパク質治療薬)のサイズに近い。そのような場合、フィックの法則からの実質的な偏差が発生する可能性があり、生物活性剤の濃度勾配とは独立して生物活性剤の拡散が生じ得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、ナノ多孔質薄膜は、上述のような生分解性ポリマー(例えば、PCL)を含む。いくつかの実施形態において、ナノ多孔質薄膜は、約10μm以下、例えば、約8μm以下、約6μm以下、約4μm以下、約2μm以下、または約1μm以下の厚さを有する。
【0065】
多層薄膜構造
主題のデバイスは、任意の好都合な構造、例えば、限定されないが、捲回構造もしくは展開構造、折畳み構造、管状構造、平面構造、円環構造、または円板構造を形成し得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、主題のデバイスは、捲回構造または展開構造のいずれかを形成する。本明細書で使用される場合、「捲回した」という用語は、材料の実質的に平面状の、平坦な、または「展開した」構造と比較して、材料がそれ自体の上で丸められたまたは巻かれた(例えば、該構造は、中心軸の周囲に配置された環状シートである)材料の構造を指す。「捲回する」という用語は、展開構造から捲回構造へと材料を変形させる(例えば、それにより、平坦なシートが中心軸の周囲で丸まって環状構造を形成する)プロセスを指す。「展開する」という用語は、薄膜が巻き戻される、開かれる、または広げられる、逆のプロセスを指す。主題のデバイスに好適な捲回条件または展開条件を適用することにより、それぞれ、所望の捲回構造または展開構造をもたらすための変形を引き起こすことができる。本開示の多層薄膜デバイスの構造は、好適な条件に応じて自発的に捲回または展開することができる。例えば、主題のデバイスを捲回して捲回構造をもたらすのに十分な乾燥条件である。代替として、捲回した多層薄膜構造を水和液(例えば、対象の眼の中に存在する硝子体液)との接触により、実質的に平面状である展開構造がもたらされる。いくつかの場合において、投与されて水和液と接触すると、多層薄膜医療デバイスは拡張する。「拡張する」とは、周囲の液体が膜を水和させることの結果として、薄膜のサイズまたは体積が大きくなることを意味する。
【0067】
特定の実施形態において、捲回構造は実質的に円筒形であり、例えば、平面状の膜がその上で丸められて図7に示されるような円筒形状を形成する構造である。特定の実施形態において、捲回構造は、実質的に円錐台形である。円錐台形とは、円錐台の形状、すなわち、その底面に平行な平面によって先端が切断された円錐の形状を有する構造を意味する。
【0068】
特定の実施形態において、デバイスは、実質的に円形の周縁部を含む展開構造を有する。
【0069】
いくつかの実施形態において、多層薄膜デバイスは、約1mm〜約50mm、例えば、約1mm〜約10mm、約2mm〜約8mm、約3mm〜約7mm、約4mm〜約6mmの直径を有するように製造される。いくつかの場合において、直径は、約1mm、約2mm、約3mm、約4mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、または約10mmである。いくつかの実施形態において、多層薄膜デバイスは、約1mm〜約100mm(約4mm〜約64mm、約9mm〜約49mm、約16mm〜約36mm、例えば、約16mm、約25mm、または約36mmを含む)の面積を有するように製造される。
【0070】
いくつかの実施形態において、多層薄膜は、約1μm〜約1mm、例えば、約10μm〜約500μm、約50μm〜約300μm、約100μm〜約200μm、例えば、約100μm、約125μm、約150μm、約175μm、または約200μmの厚さを有するように製造される。
【0071】
調製方法
主題の多層薄膜医療デバイスを調製する方法も提供される。いくつかの実施形態において、該方法は、生分解性または非分解性ポリマーおよび細孔形成剤を含む第1の薄膜層を製造することと;生物活性剤の層を第1の薄膜層の上に堆積させることと;多層薄膜構造を生成するために、第2の薄膜層(例えば、非多孔質または多孔質層)を生物活性剤の層の上に位置付けることと;接着剤を使用することにより、または層を融解するために熱もしくは溶媒を使用することにより、第1の薄膜層と第2の薄膜層との間に生物活性剤を密封することと;十分な期間の間多層薄膜構造を乾燥させることによって、またはデバイスを機械的に回転させることによって、多層薄膜デバイスの捲回構造を形成することとを含む。いくつかの実施形態において、単一膜の多層デバイスを形成するように、生物活性貯蔵部の周囲で単一の膜がそれ自体に対して密封されてもよい。
【0072】
薄膜層は、任意の好都合な方法を使用して製造されてもよい。例えば、上述のような生分解性または非生分解性ポリマーおよび細孔形成剤を含む第1の薄膜層は、Steedmanらによって記載される方法(Enhanced differentiation of retinal progenitor cells using microfabricated topographical cues.Biomedical Microdevices,12(3)(2010)363−369)から容易に適合される方法を使用して、生分解性ポリマー(例えば、PCL)と細孔形成剤(例えば、ゼラチン)の溶液を平坦な円形の型の上に回転成形することにより製造され得る。第2の非多孔質薄膜層も、上述の方法と同様の方法を使用して製造することができる。非多孔質の第1の薄膜層を有するデバイスも、上述の方法と同様の方法を使用して製造することができる。
【0073】
生物活性剤の貯蔵部は、例えば、生物活性剤を含む組成物の個別の層として、主題の多層薄膜において調製されてもよい。生物活性剤の層は、任意の好都合な方法を使用して調製されてもよい。例えば、生物活性剤は、凍結乾燥組成物として堆積されてもよい。例えば、生物活性剤の層は、生物活性剤を含む溶液の薄膜を塗布してから乾燥させる(例えば、蒸発、凍結乾燥)ことによって形成されてもよい。生物活性剤の層は、第1の薄膜層と第2の薄膜層との間に位置付けられる。
【0074】
特定の実施形態において、主題の方法の密封ステップは、加熱することができるアニュラス部を使用して行われる。例示的な加熱ステップは、薄膜層の製造に使用されるポリマー(例えば、PCL)の融解温度よりも高いある温度(例えば、80℃)まで加熱したアニュラス部(例えば、加熱したPDMSアニュラス部)の使用を含む。多層薄膜の一方の表面に加熱したアニュラス部を適用することにより(例えば、平坦なステンレススチールの重りを用いてアニュラス部を30秒間押圧することにより)、膜を一緒に融解および密封して、環状の外周を有する多層薄膜構造を生成する。アニュラス部のサイズおよび形状は、所望のサイズのデバイスを生成するように選択され得る。そのような場合、第1の薄膜層および第2の薄膜層が結合され、それによって多層薄膜構造の間に生物活性剤が密封される。
【0075】
特定の実施形態において、主題の方法の密封ステップは、薄膜層の画定された領域、例えば、生物活性剤が配置された領域を取り囲む円形領域を加熱するためにレーザービームを使用して行われる。特定の実施形態において、主題の方法の密封ステップは、一方または両方の薄膜層の上に接着性材料を配置することによって行われる。例えば、接着性材料は、生物活性剤が配置される領域を取り囲む領域内の第1の薄膜層および/または第2の薄膜層の上に配置されてもよい。2つの層を接触させると、接着剤が該2つの層を密封することができる。代替として、接着剤は、感熱接着剤または感圧接着剤であってもよい。これらの実施形態において、薄膜デバイスの層を密封するために、熱または圧力が印加されてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態において、捲回した多層薄膜デバイスを形成することは、例えば、多層薄膜構造に捲回構造を形成させるのに十分な条件下で、多層薄膜デバイスを乾燥させることによって行われてもよい。例示的な乾燥条件として、生物活性剤の安定性および生物活性を維持しながら、存在する水のほとんどを多層薄膜デバイスから蒸発させることができる減圧下の凍結乾燥条件が挙げられる。他の実施形態において、捲回した多層薄膜デバイスを形成することは、多層薄膜デバイスを機械的に回転させて捲回構造にすることにより行われてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態において、主題のデバイスを調製する方法は、ナノテンプレートの上に第1のナノ多孔質薄膜層を製造することと;第1のナノ多孔質薄膜層の上に生分解性ポリマーおよび細孔形成剤を含む第2の薄膜層を製造することと;ナノテンプレートから第1および第2の薄膜層を除去することと;複数の貯留ウェルを備える第3の非多孔質薄膜層を製造することと;複数の貯留ウェルに生物活性剤を堆積させることと;多層薄膜構造を生成するために、第1および第2の層の上に第3の非多孔質薄膜層を位置付けることと;第1の薄膜層を第3の薄膜層に結合させるために多層薄膜構造を密封し、それによって多層薄膜構造の間に生物活性剤を密封することと;例えば、多層薄膜構造に捲回構造を形成させるのに十分な期間の間多層薄膜デバイスを乾燥させることにより、または多層薄膜デバイスを回転させること、例えば、機械的に回転させることにより、多層薄膜デバイスを捲回することとを含む方法である。
【0078】
主題の方法は、上述の方法と同様の方法を使用して行われてもよい。第1のナノ多孔質薄膜層は、任意の好都合な方法によって製造されてもよい。例えば、主題の調製方法において使用するために容易に適合される生分解性ポリマー薄膜にナノ構造を生成するために、ナノテンプレート合成方法が使用されてもよい。整列して並べられたナノワイヤ(例えば、ZnOロッド)の無機ナノテンプレートは、任意の好都合な方法を使用して調製されてもよい。ポリマー(例えば、生分解性ポリマー)をナノテンプレート上に堆積させるために、様々な技術が使用されてもよい。例えば、ポリマーは、その融点を超えて加熱することができ、テンプレートに一致させることができる。例えば、ポリマー溶液の回転成形が使用されてもよい。いくつかの場合において、機械的耐久性を提供するために、テンプレートを除去する前に、第2の薄膜層(例えば、マイクロ多孔質薄膜層、または細孔形成剤を含む層)が第1のナノ多孔質薄膜層の上に製造される。いくつかの実施形態において、ナノ多孔質薄膜層の厚さは、テンプレートのナノロッドの長さに対応する。
【0079】
任意の好都合な方法を使用して、1つ以上の生物活性剤の貯蔵部が、対象に投与される前に多層薄膜に組み込まれてもよい。例えば、凍結乾燥材料を薄膜上に堆積させることによって、または製造中に、薬剤を含む溶液もしくは分散液にデバイスを浸漬することによってである。いくつかの実施形態において、生物活性剤を含む組成物が、上述のように複数の構造を含む薄膜上に堆積される。組成物は、これらの構造(例えば、図10Aに示されるような非多孔質薄膜の表面を横切るウェル)によって画定される構造的空隙を充填する。次いで、生物活性剤の貯蔵部が、第1の薄膜層と第2の薄膜層との間に位置付けられてもよく、その後、上述のように多層薄膜構造が密封および捲回される。
【0080】
生物活性剤の局所送達の方法
生物活性剤を組織に局所送達する方法も提供される。いくつかの実施形態において、該方法は、上述のように、多層薄膜医療デバイスを対象に投与することを含む。投与するとは、対象の体内のある場所にデバイスを位置付けることを意味する。対象内にデバイスを位置付けることは、生物活性剤の局所送達が所望される対象の任意の好適な開口部、組織、または体腔内にデバイスを設置すること(例えば、外科的に設置する、注射器による注射もしくはカテーテルによる送達、口腔内に経口的に設置する)によって実行されてもよい。例えば、デバイスは、対象の眼腔、例えば、眼の末梢硝子体腔等に注射されてもよい。例えば、デバイスは、組織腫瘤内の任意の好都合な空間に位置付けられてもよい。デバイスは、例えば、注射器による注射等の注射に好適な捲回構造を有してもよい。
【0081】
捲回した多層薄膜デバイスが対象内に位置付けられると、対象内の水和液に接触して展開し、展開した多層薄膜構造をもたらすことができる。また、水和液は、展開した多層薄膜構造の層からの細孔形成剤を溶解し、医療デバイスから生物活性剤の放出をもたらす多孔質層を生成することができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、主題のデバイスは、時間制御様式で生物活性剤を放出する。このようにして、生物活性剤の添加によって付与される治療的利点が長期間持続し得る。いくつかの実施形態において、患者内にデバイスが設置されると、主題のデバイスは、約2分〜約1日以上、例えば、2日以上、3日以上、7日以上、14日以上、21日以上、または1ヶ月以上に及ぶ期間の間、周囲組織に生物活性剤を溶出する。主題の方法の特定の実施形態において、放出デバイスは、長期間にわたって、例えば、1ヶ月以上、例えば、2ヶ月以上、3ヶ月以上、4ヶ月以上、5ヶ月以上、6ヶ月以上、9ヶ月以上、または12ヶ月以上、有効量の生物活性剤を局所的に送達する。
【0083】
主題の方法の特定の実施形態において、医療デバイスからの生物活性剤の放出は、生物活性剤の初期バーストなしに発生する制御放出である。「初期バーストなしに」とは、所定の初期期間(例えば、1週間以内、例えば、3日以内、1日以内、12時間以内、6時間以内、3時間以内、または1時間以内)の間、生物活性剤がデバイスから大量に放出しないことを意味する。生物活性剤の初期バーストの存在およびレベルは、任意の好都合な薬理学的方法を用いて当業者によって容易に決定され得る。例えば、生物活性剤の約50%未満、例えば、生物活性剤の約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、約2%未満、または約1%未満が、所定の初期期間に放出される。
【0084】
主題の方法の特定の実施形態において、医療デバイスからの生物活性剤の放出は、長期間にわたって実質的にゼロ次である。「実質的にゼロ次である」とは、実質的に一定である薬物の放出を提供するデバイスからの生物活性剤の放出プロファイル、例えば、デバイスから放出される生物活性剤の画分が、長期間にわたって時間に対して実質的に直線的である放出プロファイルを意味する。例えば、投与から10日後に、生物活性剤の約20%未満、例えば、約10%未満、または5%未満が放出される放出プロファイル。例えば、投与から20日後に、生物活性剤の約40%未満、例えば、約20%未満、または約10%未満が放出される放出プロファイル。例えば、投与から30日後に、生物活性剤の約60%未満、例えば、約30%未満、または約15%未満が放出される放出プロファイル。例えば、投与から40日後に、生物活性剤の約80%未満、例えば、約40%未満、または約20%未満が放出される放出プロファイル。例えば、投与から50日後に、生物活性剤の約80%未満、例えば、約70%未満、約60%未満、または約50%未満が放出される放出プロファイル。例えば、投与から60日後に、生物活性剤の約90%未満、例えば、約80%未満、約70%未満、約60%未満、または約50%未満が放出される放出プロファイル。例えば、長期間にわたって、約20マイクログラム/月〜約1.0mg/月の速度でデバイスからタンパク質が放出される、タンパク質である生物活性剤の実質的にゼロ次の放出プロファイル。例えば、長期間にわたる約0.5mg/日の有効量のタンパク質生物活性剤(例えば、インターフェロン)の実質的に一定の放出。
【0085】
生物活性剤の生物活性または安定性は、投与後長期間デバイス内で維持することができる。例えば、デバイスから溶出される薬剤の単位量当たりの生物活性剤(例えば、抗体治療薬)の生物活性は、長期間にわたって、例えば、1ヶ月以上、2ヶ月以上、70日以上、3ヶ月以上、6ヶ月以上、または1年以上、実質的に一定である。したがって、主題のデバイスは、同様に対象内に位置付けられるが多層薄膜デバイス内には存在しない生物活性剤の生物活性と比較して、長期間にわたって、例えば、1ヶ月以上、2ヶ月以上、70日以上、または3ヶ月以上、6ヶ月以上、または1年以上、生物活性剤の生物活性を維持する上で著しい向上を提供する。
【0086】
主題の方法の特定の実施形態において、デバイスは、対象の眼(複数可)の中に硝子体内投与され、例えば、デバイスは、硝子体内注射によって投与される。他の実施形態において、デバイスは、対象に網膜下投与される。他の実施形態において、患者の眼に主題のデバイスを投与することは、患者の眼(複数可)の前眼房、硝子体、上脈絡膜空間、結膜下空間のうちの1つ以上への投与を含む。特定の実施形態において、生物活性剤は、抗VEGF抗体等のタンパク質治療薬である。特定の実施形態において、対象内の水和液は、硝子体液である。
【0087】
主題の方法の特定の実施形態において、挿入は、眼の前眼房内である。特定の実施形態において、生物活性剤は、緑内障の治療のためのラタノプロスト等の小分子治療薬である。
【0088】
主題の方法の特定の実施形態において、多層薄膜医療デバイスは、第1の層と生物活性剤の貯蔵部との間に位置付けられた第3のナノ構造多孔質層をさらに備え、第3のナノ構造多孔質層は、生分解性ポリマー(例えば、PCL)を含む。特定の実施形態において、第3のナノ構造多孔質層は、約2nm〜約50nmの平均細孔径を有する。
【0089】
主題の方法の特定の実施形態において、第2の非多孔質層は生分解性である。特定の実施形態において、第2の非多孔質層はPCLを含む。
【0090】
医療デバイスを選択するステップを含む、薬物送達のための医療デバイスを必要とする患者を治療する方法も提供される。例示的なデバイスとして、心血管デバイス、神経学的デバイス、神経血管デバイス、消化器系デバイス、筋肉デバイス、眼球デバイス等が挙げられる。この実施形態において、「選択する」という用語は、デバイスを調製するよりもむしろ、例えば、デバイスを購入する、選ぶ、または提供することを意味する。
【0091】
本明細書に開示される方法およびデバイスは、ヒト臨床医学および獣医学的用途の両方に使用することができる。よって、デバイスが投与される対象または患者は、ヒトであってもよいか、または獣医学的用途の場合、実験動物、家畜、ペット、または野生動物であってもよい。主題のデバイスおよび方法は、限定されないが、ヒト、サルおよびチンパンジー等の実験動物、イヌおよびネコ等のペット、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等の家畜、クマ、パンダ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、シマウマ、キリン、ゴリラ、イルカ、およびクジラ等の捕獲された野生動物を含む動物に適用することができる。
【0092】
いくつかの実施形態において、主題のデバイスから溶出される1つ以上の生物活性剤の放出動態が、治療的に意義のある投与量の生物活性剤の実質的に一定な局所送達を提供する。特定の実施形態において、生物活性剤の放出動態は、長期間にわたって実質的にゼロ次である。いくつかの実施形態において、主題のデバイスの組成は、2つの溶出プロファイル、例えば、第1の層からの生物活性剤の第1の早期溶出、および第2の層からの生物活性剤の第2の後期溶出を提供するように設計されてもよい。いくつかの実施形態において、生物活性剤は、長期間にわたって主題のデバイス内で安定である。特定の実施形態において、貯蔵部内の生物活性剤の活性は、投与後インビボで維持される。例えば、貯蔵部内の生物活性剤の活性は、約30日以上、例えば、約60日以上、70日以上、3ヶ月以上、約4ヶ月以上、約5ヶ月以上、約6ヶ月以上、約8ヶ月以上、約10ヶ月以上、または約12ヶ月以上の期間にわたって維持される。
【0093】
キット
主題のデバイスに関連して使用するためのキットおよび方法も提供される。対象内に設置されると周囲組織に溶出する1つ以上の生物活性剤を含む上述の多層薄膜デバイスは、上述のように方法を実行するための好適な指示とともにキット内に提供されてもよい。特定の実施形態において、キットは、捲回構造を有する主題のデバイスを含む。いくつかの実施形態において、デバイスは展開構造を有し、キットは、デバイスが注射器によって対象内に位置付けられ得るようにデバイスを捲回するための指示を含む。
【0094】
主題のキットはまた、例えば、捲回構造を有するデバイスを含む担体液の注射によって、対象にデバイスを送達することができる注射器も含み得る。注射器は、デバイスのインビボ注射に好適なゲージ(例えば、20ゲージ)を有する。いくつかの実施形態において、注射器は、デバイスを含む担体液で予め充填され、デバイスは、担体液中で捲回構造に維持される。他の実施形態において、キットは、注射器の充填および対象への投与前にデバイスを保存するための容器を含み、デバイスは、捲回または展開構造を有する状態で保存することができる。特定の実施形態において、デバイスが展開した状態で容器内に保存される場合、キットは、投与前に、例えば、減圧下で乾燥させることによって、デバイスを捲回するための指示、を含んでもよい。容器は、任意選択的に、主題のデバイスの保存および/またはデバイスの投与に好適な担体液を含んでもよい。
【0095】
いくつかの実施形態において、キットは、多層薄膜を製造するために必要な材料を別の容器内に含む。キットはまた、対象にデバイスを投与するための材料も含み得る。方法を実行するための指示(例えば、書面、テープ、VCR、CD−ROM等)がキット内に含まれてもよい。またキットは、具体的な方法に依存して、他の包装試薬および材料(すなわち、緩衝液等)も含むことができる。指示は、一般的に、好適な記録媒体に記録される。例えば、指示は、紙またはプラスチック等の基板に印刷されてもよい。そのため、指示は、キットまたはその構成要素(例えば、パッケージまたはサブパッケージに関連する)の容器の表示中の添付文書としてキット内に存在してもよい。他の実施形態において、指示は、プログラムが存在するのと同じ媒体を含む好適なコンピュータ可読記憶媒体、例えば、CD−ROM、ディスケット等に存在する電子記憶データファイルとして存在する。
【0096】
さらに他の実施形態において、指示自体はキット内に存在しないが、例えば、インターネットを介して、リモートソースから指示を得るための手段が提供される。この実施形態の一例は、指示を閲覧することができるか、または指示をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。
【0097】
さらに、キットは、インターネットまたはワールドワイドウェブのようなリモートソースから得られた指示がダウンロードされるものであってもよい。いくつかの形態のアクセス保護または認証プロトコルが、主題のキットを使用する資格を有する人々に対してアクセスを制限するために使用されてもよい。指示の場合と同じように、指示を得るおよび/またはプログラムするための手段は、一般に、好適な記録媒体に記録される。
【実施例】
【0098】
以下の実施例は、完全な開示、ならびに本開示の実施形態をどのように作製および使用するかの説明を当業者に提供するために記載されるのであって、発明者がその発明と見なすものの範囲を限定することを意図するものではなく、また以下の実験が、行われる全てのもしくは唯一の実験であることを示すことを意図するものでもない。使用される数値(例えば、量、温度等)に関して正確性を期すよう努力がなされてはいるが、ある程度の実験誤差および偏差は考慮されるべきである。別途指示のない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはその付近である。
【0099】
方法および材料
以下の実施例において以下の方法および材料を使用した。
【0100】
マイクロ多孔質薄膜の製造
薄膜の可撓性およびPCL/ゼラチン薄膜の繊細さのために、平坦な円形のポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)(Sylgard184、Dow Corning、Midland,MI)型の上に薄膜を回転成形した。PDMS型を製造するために、基剤と硬化剤を10:1の比率で混合し、真空下で脱ガスし、3インチ(約8センチメートル)のシリコンウエハ上に注ぎ、65℃で2時間焼成した。硬化した時点でシリコンマスターからPDMSを剥離し、直径35mmの円に切断した。ポリカプロラクトン(PCL)(分子量80,000、Sigma−Aldrich、St.Louis,MO)およびゼラチン(ブタ皮膚由来、Sigma−Aldrich)の別個の溶液が0.1g mL−1の2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)(Sigma−Aldrich)に溶解するまで80℃のホットプレート上で絶えず撹拌した。次いで、PCLおよびゼラチンの溶液を以下の体積比で遠心分離管内で合わせた:7:3、8:2、9:1、および10:0(PCL:ゼラチン)。PCLとゼラチンを一緒に混合するために、溶液を30秒間ボルテックスし、2回反転させた。キャストする直前に、このプロセスを溶液当たり少なくとも5分間繰り返した。以前に記載されているように[Steedman et al.,Enhanced differentiation of retinal progenitor cells using microfabricated topographical cues.Biomedical Microdevices 12(3)(2010)363−369]、P6700 Series Spincoater(Specialty Coating Systems、Indianapolis,IN)を1500RPMで1分間使用してPCL/ゼラチンの溶液を回転成形した。回転成形後、鉗子を使用してPDMS型から薄膜を慎重に剥離した。
【0101】
ナノ多孔質薄膜の製造
ナノ多孔質PCL製造のための全ての化学物質は、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)から得た。技術を用いて酸化亜鉛ナノロッドテンプレートを使用してナノ多孔質PCL膜を製造した。硫酸と過酸化水素(3:1)の溶液で使用前に洗浄したガラスまたはシリコン基板上で、酸化亜鉛ロッドを30分間成長させ、続いて、脱イオン水ですすぎ、窒素で乾燥させた。酢酸亜鉛(ZnAc)シード層を回転成形する前に、基板を酸素プラズマ(200W、0.5mTorr)に5分間暴露した。このために、2−メトキシエタノール中の0.75M ZnAcとエタノールアミンの溶液を、1000rpmで60秒間、清浄なガラスまたはシリコン基板上にキャストした。400℃のホットプレート上で30分間基板をアニーリングし、ZnAcをZnOに変換した。次いで、85〜90℃の5mM ZnAc水溶液中に4時間基板を入れ(成長槽を1回交換)、ZnOナノロッドを成長させた。2,2,2−トリフルオロエタノール中300mg/mlのPCL溶液を上述のように調製し、500rpmで30秒間、その後1500rpmで30秒間、ZnOテンプレート上にZnOテンプレートを覆うのに十分な厚さでキャストした。これらの基板をホットプレート上で130℃まで加熱し、あらゆる余分な溶媒を除去し、PCLをテンプレートと密接に接触させた。次いで、テンプレートが除去されてPCL膜が自然に浮いてくるまで、ZnOテンプレートを10mM HSOでエッチングした。
【0102】
薄膜の分解解析
絶えず撹拌しながら、PBS中に5日間薄膜を保存した。撮像前に、サンプルを脱イオン水ですすぎ、真空オーブン内で脱水した。1kVの加速電圧でmySEM走査電子顕微鏡(NovelX、Lafayette,CA)を使用してサンプルを撮像した。細孔面積および多孔性を算出するため、それぞれのPCL:ゼラチン比の3つの薄膜を撮像した。各薄膜につき、薄膜1つ当たり10ヶ所のランダムな領域を撮像してまとめた。ImageJ(National Institutes of Health、Bethesda,MD)を使用して細孔面積を算出した。
【0103】
多層薄膜デバイスの製造
図3に示されるように、非多孔質PCL下層と、PCL/ゼラチンが9:1のマイクロ多孔質上層の2つの薄膜からデバイスを製造した。PCL下層は、PCLの濃縮溶液(TFE中0.2gmL−1)を用いて、1500RPMで2分間シリコンウエハ上に回転成形して製造した。凍結乾燥タンパク質(1〜4mg)を2つのデバイス層の間に設置し、シリコンウエハ上に固定した。PDMSのアニュラス形状部品を80℃に加熱し、次いで2つの薄膜の上に設置した。平坦なステンレススチールの重り(170g)を使用してPDMSアニュラス部を30秒間押圧し、2つの膜を一緒に融解および密封した。小さな平坦な重りを使用して均一な密封を確実なものにした。薄膜デバイスからのBSAおよびIgGの溶出を10週間監視し、非多孔質PCL単独デバイスからの溶出と比較した。各種類の3つのデバイスを製造し、実験ごとに分析した。
【0104】
プロフィロメトリー
Ambios Technology XP−2 Stylus Profiler(Santa Cruz,CA)を使用してデバイスの厚さを特徴付けた。走査速度0.01mm秒−1、長さ1.5mm、および針圧0.2mgでプロフィロメトリーを行った。
【0105】
マイクロビシンコニン酸アッセイ
マイクロビシンコニン酸アッセイ(Thermo Scientific Pierce、Rockford,IL)を行ってPCL薄膜デバイスからのタンパク質の溶出を定量化した。凍結乾燥BSA(Sigma−Aldrich)またはIgG(ウシ血清から単離、Sigma−Aldrich)を負荷した多層薄膜を遠心分離管内の5mLのPBS中に入れ、室温で10週間連続的に振盪した。サンプリング中に1mLの溶液を除去し、新しいPBSと交換した。SpectraMax 190マイクロプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale,CA)上で562nmでサンプルを読み取った。Excel(Microsoft、Redmond,WA)にてデータおよび直線回帰分析を行った。
【0106】
ウシIgG酵素結合免疫測定法(ELISA)
ウシIgG酵素結合免疫測定法(ELISA)(Bethyl Laboratories,Inc.、Montgomery,TX)を行ってPCL/ゼラチンデバイスから溶出したIgGの活性を確認した。最初に、マイクロビシンコニン酸アッセイにより総タンパク質サンプルの濃度を測定し、次いで、ELISAアッセイのダイナミックレンジ内に収まるように1/100に希釈した。次いで、これらのサンプルをアッセイし、得られた濃度値を以前のビシンコニン酸アッセイの結果と比較した。デバイスを構築した後、1〜70日の間に4つの時点にわたって2つの濃度値の比を計算した。
【0107】
ラパマイシンを負荷したPCL膜
200mg/mLのPCL溶液が2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)(Sigma−Aldrich)に溶解するまで70℃のホットプレート上で撹拌することにより、ラパマイシンを負荷したPCL膜を調製した。次いで、ラパマイシンを5mg/mLの濃度で溶液に加え、溶解するまで撹拌した。次いで、3インチ(約8センチメートル)のシリコンウエハ上に1000rpmで30秒間、その後2000rpmで30秒間、溶液を回転成形した。直径16mmの膜の円形部を切断し、PBS中37℃でインキュベートした。薬物放出をサンプリングするために、サンプリング中に1mLの溶液を除去し、新しいPBSと交換した。SpectraMax 190マイクロプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale,CA)上で260nmでラパマイシン濃度を読み取った。Excel(Microsoft、Redmond,WA)にてデータおよび直線回帰分析を行った。
【0108】
実施例1
マイクロ多孔質薄膜の製造および分解
PCLおよびゼラチンの溶液を、それぞれ以下の体積比で合わせた:7:3、8:2、9:1、および10:0。激しく撹拌した後、合わせた溶液を可撓性ポリマー薄膜内に回転成形した。最初、非多孔質である薄膜をPBSに5日間暴露し、薄膜の易溶性ゼラチン成分を排除した。PBS中で5日間分解した後、走査電子顕微鏡法(図1)を使用して薄膜を撮像した。ゼラチンを含む全ての薄膜に微小孔が見られたのに対し、PCL単独の薄膜は、分解または多孔質構造の徴候を示さなかった。個々の細孔面積を定量化したものを図1に示す。
【0109】
図1A〜Fは、PBS中で5日間分解した後のPCL/ゼラチン薄膜の走査電子顕微鏡写真の画像および対応する細孔径ヒストグラムを示す。薄膜は、7:3(AおよびB)、8:2(CおよびD)、ならびに9:1(EおよびF)の比率でPCLとゼラチンの混合物から作製した。PCLのみから作製した薄膜は、細孔を全く含まなかった。
【0110】
最も高いゼラチン濃度(7:3)で製造された薄膜は、最小で2μm未満の直径、最大で30μmを超える直径といった幅広い範囲の細孔径を含んでいた(図1Aおよび1B)。中程度のゼラチン濃度(8:2)の薄膜も幅広い範囲の細孔径を含んでいたが、これらの膜に見られた最大の細孔は7:3のゼラチン薄膜よりも小さく、最大で直径28μmに達したに過ぎなかった(図1Cおよび1D)。ゼラチン濃度が最も低い(9:1)薄膜は、はるかに小さな細孔を含んでおり、それらの95%は10μmよりも小さい直径であった(図1Eおよび1F)。ゼラチンを含めずに(10:0)作製された薄膜は、回転成形した薄膜表面全体にわたって非多孔質であった。
【0111】
多孔率、すなわち各薄膜の合計面積で除した細孔面積を定量化したものを図2Aに示す。ゼラチンはPBS中で急速に溶解するため、薄膜中のゼラチンの量を増加させると分解後の多孔性がより高くなった。7:3の膜が最も多孔質であり、その後に8:2の膜、次いで9:1の膜が続いた。10:0の膜はゼラチンを含まなかったため、分解、ひいては多孔性は観察されなかった。
【0112】
図2A〜Bは、PBS中でインキュベーションした後のPCL/ゼラチン薄膜の多孔性および質量損失を示す。A:異なるゼラチン濃度のPCL/ゼラチン薄膜を5日間PBSに浸漬した後の多孔率。ゼラチンの濃度に伴って全体的な多孔性が増加する。B:ゼラチンの溶解から生じる多孔性は、質量の低下をもたらす。PCLの膨張および塩吸収は、ゼラチンを含まない薄膜の質量に全体的にわずかな増加をもたらす。スチューデント・ニューマン・クールズの検定で*p<0.05。エラーバーは、3つの独立した実験の偏差を示す。
【0113】
薄膜に見られる多孔性は、PCLとゼラチンの不完全な混合によるものである。どちらの種もTFE中で溶解するが、2つの溶液を合わせると、絶えず混合する必要があるか、さもなければ2つの溶液が2つの非混和性液に分離する、異種エマルションが生じる。溶解した溶液の粘性が高いことから、一貫した混合を維持するには、回転成形前にほぼ一定のボルテックスが必要であると経験的に判断した。増加する量のゼラチンを添加することにより、PCL/ゼラチン混合物において、9:1の薄膜には見られなかったゼラチンの凝集が生じた。
【0114】
また、PBSに5日間浸漬した後の質量損失量を用いた分解の定量化も行った。初期質量はPBS浸漬の前に測定し、分解後の質量は、PBSに5日間浸漬した後、およびその後真空オーブン内で薄膜を脱水した後に測定した。結果は、細孔面積および多孔率と一致しており、7:3の薄膜が最も多くの質量(初期質量の約25%)を損失し、8:2の膜は平均して10%未満を損失したのみであった。9:1の薄膜は5%未満を損失し、ゼラチンを含まない膜は、PBSに浸漬していたことに起因して質量がわずかに増加した(図2B)。これは、PBSに浸漬中に、水および塩を吸収してPCL領域が膨張したことによる可能性が高い。
【0115】
多層薄膜デバイスの製造および薬物の溶出
図3に示されるように、PCL下層と、PCL/ゼラチンが9:1のマイクロ多孔質上層からPCL薄膜デバイスを構築した。デバイスの多孔性を最小限に抑えることによってタンパク質の溶出を制限するために、全てのタンパク質負荷実験用デバイスのマイクロ多孔質上層は、9:1のPCL/ゼラチン薄膜のみを使用して作製した。凍結乾燥タンパク質を2つの薄膜層の間に堆積させ、次いで、PDMSアニュラス部を使用して一緒に融解した。デバイスを室温でPBSに浸漬し、10週間の期間にわたってPCL/ゼラチン薄膜デバイスからのBSAおよびIgGの溶出を定量化した。2つのPCL単独の薄膜から作製した非多孔質デバイスも構築し、対照として使用した。
【0116】
図3A〜Cは、多層ポリマー薄膜デバイスの製造を示す。A:凍結乾燥タンパク質は、非多孔質PCL薄膜下層とマイクロ多孔質PCL/ゼラチン薄膜との間に含まれた。B:直径約2mmの完成デバイス。C:PCL/ゼラチンデバイスのエッジプロファイル。
【0117】
多孔質PCL/ゼラチン薄膜デバイスおよび非多孔質PCL単独薄膜デバイスからのBSAの溶出を図4Aに示す。BSAは、最初の7週間の間にゼロ次動態でPCL/ゼラチンデバイスから溶出し、これは各デバイスに負荷された約3mgのBSAの60%よりも若干多い量に相当する。同様に、IgGの溶出を図4Bに示す。9:1のPCL/ゼラチンデバイスからのIgGのゼロ次溶出も、最初の7週間の間に達成された。
【0118】
図4A〜Bは、PCL/ゼラチン薄膜デバイスからのタンパク質の溶出を示す。
A:9:1のPCL/ゼラチン薄膜デバイスおよびPCL単独薄膜デバイスからのBSAの画分溶出。PCL/ゼラチンデバイスにおいて、最初の7週間の間にゼロ次溶出が観察され、その後、デバイス不良によりバースト放出段階が生じた。PCL単独デバイスは、8週間後に漏出し始めた。B:9:1のPCL/ゼラチン薄膜デバイスからのIgGの画分溶出。ほぼ10週間全ての間に、PCL/ゼラチンデバイスからのIgGのゼロ次溶出が観察された。エラーバーは、3つの独立した実験の偏差を示す。
【0119】
BSAを負荷した1つのPCL/ゼラチン薄膜デバイスおよびIgGを負荷した1つのPCL/ゼラチン薄膜デバイスからのタンパク質の溶出を図5において直接比較する。7週間の溶出が示され、これは、それぞれ0.99および0.94のR値を伴うBSAおよびIgGのゼロ次放出動態に相当する。BSAが36μg/日の速度で溶出したのに対し、IgGは20μg/日というより遅い速度で溶出した。IgGのより遅い溶出速度は、その分子量がより大きいことに起因する可能性が高い(150kDa対BSAの66kDa)。
【0120】
図5は、PCL/ゼラチン薄膜デバイスからのBSAおよびIgGの溶出速度の比較を示す。分子量がより大きいIgG(150kDa)は、BSA(66kDa)よりも遅い速度で溶出した。直線回帰分析により、BSA(R=0.99)で0.36μg/日、IgG(R=0.94)で0.20μg/日の溶出速度を得た。
【0121】
実験の過程を通してタンパク質の活性を確認するために、2つの異なるアッセイを用いてIgG濃度を定量化した。図6Aは、ELISAおよびBCAアッセイによって測定された、溶出したIgGの濃度比の比較を示す。溶出1、28、56、および70日目に濃度を比較した。エラーバーは、3つの独立した実験の偏差を示す。これら2つの濃度の比を、溶出1〜70日目の4つの時点についてプロットした。BCAアッセイは総タンパク質濃度を定量化するのに対し、ELISAはより特異的であり、結合したIgGのみを定量化する。比率1は、2つのアッセイ間でIgGの濃度が等しいことを表し、PCL/ゼラチン薄膜デバイスから放出されたIgGが溶出後70日間活性であることを示している。4つのデータポイント間の相違が有意ではなく、標準偏差が全て比率1の範囲内に収まることから、これらの結果は、実験の過程にわたってIgGが分解しなかったことを示している。
【0122】
図6Bは、IgGを含む薄膜デバイスの投与後に眼の中に溶出したIgGの活性を示す。IgGのインビボ活性は、投与後6週間、眼の中で検出可能であった。
【0123】
実施例2
ナノ構造の薄膜
テンプレート合成方法を使用して、生分解性ポリマー薄膜にナノ構造を生成する。この手法は、後に所望のナノ構造を有する「軟性」バイオポリマー薄膜を作製するためのテンプレートとして無機ナノ構造表面(例えば、酸化亜鉛ZnO材料の十分に特徴付けられたロッド構造)を使用することを伴うテンプレーティングに基づいている。ZnOナノロッドの成長には、ナノ構造シード層を堆積させること、および該シード層からロッドを熱水的に成長させることの2段階の手順が用いられる。様々なシード層堆積および熱水的成長条件を通して、ランダムから十分に配向されたロッドまで様々な形態がもたらされる。処理条件の制御により、幅広い範囲の直径、長さ、およびロッド間空間のナノロッドの製造が可能になる。
【0124】
標的ポリマーをZnOテンプレート上に堆積させるために様々な技術が使用される。
一例において、ポリマーは、それらの融点を超えて加熱され、テンプレートに一致させることができる。代替として、再現性のある厚さを有する薄膜を生成するために、ポリマー溶液の回転成形が使用される。ポリカプロラクトンは、眼の中で優れた生体適合性および完全性を示してきたため、出発材料として選択された。生理的条件下において、PCLは、2段階の分解を生じさせるランダムな鎖切断により分解する。産生されたポリマー鎖は十分に可溶性ではないため、最初、分子量が減少しても、物理的構造は影響を受けないが、長期の分解後にはモノマー分解産物の産生量が増加し、その結果、著しい物理的分解が起こる。
【0125】
80kDaのPCL膜は、眼の中で1年後まで分解せず、また巨視的分解のおよその分子量(8kDa)に基づいて、分子量15〜20kDaのPCLデバイスは、4ヵ月後に構造的に崩壊し始め、6ヶ月までには機械的完全性を損失すると推定された。したがって、2つの例示的な異なる比率(20:80および45:55)の80kDa:10kDaのPCL(T=58〜63℃、T=−65〜−60℃)を用いて膜を作製した。また、他の分解性ポリマーも組み入れることができる。さらに、分解速度を調節するために、25/75ポリ(DL−ラクチド−コ−ε−カプロラクトン)(25/75DLPLCL)(非晶質、T=20℃)または80/20ポリ(DL−ラクチド−コ−ε−カプロラクトン)(80/20DLPLCL)(非晶質、T=20℃)のコポリマー等の他の膜が作製されてもよい。最後に、酸性または強塩基性のいずれかの溶液中で溶解させることにより、ZnOテンプレートを除去する。転写時にテンプレート構造を反転させると、その後のポリマー薄膜は、薬物溶出および制御放出のためのナノチャネルを呈する。この手法を用いて、23±7nmの平均ロッド直径および約1010ロッド/cmの密度を有するZnOロッドにより、21±7nmの細孔径および5×l0細孔/cmの細孔密度のPCL膜を生じさせることができる。膜の厚さは成長させたナノロッドの長さに対応し、例えば、約1ミクロンである。したがって、機械的耐久性をさらに向上させるために、テンプレートを除去する前にさらなる多孔質層を堆積させることにより、ナノ多孔質領域およびマイクロ多孔質領域の両方を備える膜が生じる(図9A〜9C)。例えば、これは、ポリエチレングリコール(PEG)およびPCL等の自然に多孔質ネットワークを形成するポリマー混合物をキャストすることによって達成され、PEGは、テンプレートの除去と同時に容易に溶解する。
【0126】
薄膜製造の例示的なプロセスを図8A〜8Eに示す。清浄なシリコン基板(図8A)を酸化亜鉛シード層を用いて回転成形し、ナノロッドを熱水的に成長させる(図8B)。ZnOテンプレート上にPCLを回転成形し(図8C)、その後PCLおよびPEG溶液を回転成形する(図8D)。脱イオン水ですすぐことにより支持層からPEG相を洗い流し、10mMのHSOでZnOテンプレートをエッチングして、支持されたナノ構造PCL薄膜を残す(図8E)。図8Fは、典型的なナノ構造PCL膜の電子顕微鏡写真を示す。図8Gは、支持膜上のナノ構造の薄膜を示す。
【0127】
テンプレートの形態およびポリマー膜への転写の忠実度を確認するために走査電子顕微鏡法(SEM)を用いる。電子分散X線分光法(EDX)またはX線光電子分光法(XPS)によるさらなる特徴付けを用いて、化学組成を決定し、ZnOテンプレートの効果的な除去を実証する。次いで、薬物貯蔵部を含む不透過性キャッピング膜にナノ構造膜を加熱密封する(図10A)。
【0128】
一例として、整列して並べられたナノワイヤの無機テンプレートを使用して、上述のようなナノ多孔質ポリマー膜を生成し、分子量80kDaのポリカプロラクトンから、乾燥した状態では丸まり、水性環境において展開する例示的な薄膜を作製した(図7)。この薄膜デバイスは、本明細書に記載される低侵襲性の薬物送達用途に好適な物理的寸法(100ミクロン未満)および機械的特性(捲回性)の両方を有するように製造した。
【0129】
薄膜デバイスの物理的特性
標的組織への低侵襲性の挿入を可能にするために、捲回性に特に着目して、可撓性の軟性材料を操作した。厚さ約100ミクロン、5×5mmのポリカプロラクトン薄膜デバイスは、6ヶ月間の抗VEGF送達の間、十分な薬物を保持することができ、さらに標準的な注射によって送達されることができる。例示的なデバイス(サイズおよび材料組成は同じだが分子量が異なる)の広範囲にわたる評価を行って、それらの眼内投与に対する適合性を判定した。動物実験データにより、膜組成45/55の80kDa:10kDaのPCLは、5ヶ月目でなおも変化の見られない状態であるが、20/80の80kDa:10kDaのPCLは2ヶ月目で分解の徴候を示すことが示された。パラメータをさらに調整することにより、ゼロ次放出のためのデバイスの分解プロファイルの最適化がもたらされるであろう。
【0130】
薬物負荷手法および薬物ペイロード
ナノ多孔質膜の製造は薬物負荷と無関係であるため、治療薬のペイロードを組み入れるためにいくつかの方法が用いられる。1つの手法では、より大きな薬物貯蔵部を含む下層膜に膜を連結させる。この構成により、大量の薬物を担持する能力およびペイロード剤の多用途性が可能となる一方で、ナノ多孔質膜は、貯蔵部構造からの薬物の溶出を制御するのに役立つ。
【0131】
さらなるマイクロ多孔質支持層を用いることにより、デバイスの中立的な機械的平面の付近にナノチャネルが設置され、回転/展開するときにナノ細孔にかかる歪みが最小限に抑えられる。フォトリソグラフィーおよびソフトリソグラフィー法を用いてデバイスの貯蔵部構成要素を製造する:フォトリソグラフィーは、光硬化性エポキシ(SU−8)をパターニングすることにより、最終的な貯蔵部の形状を決定するマスター型をシリコンウエハ上に形成するために使用される。正確なマスターパターンは、CADを使用して設計され、クロムマスク上にパターニングされ、光パターニング用のステンシルとして機能する。次いで、ソフトリソグラフィーを用いて、反転したマスター型をエラストマーであるポリジメチルシロキサン(PDMS)にキャストする。対象となるポリマーをPDMS型に対してキャストすることにより、薬物が負荷された貯蔵部の形状が、例えば、図10Aに示されるように、所望のポリマーに直接転写される。デバイス全体は、平坦で、薄く(例えば、約100μm以下)、複数の治療薬貯蔵部を含み、これにより、膜の局所的な破裂または不良が起こったときに、治療薬のバースト放出を最小限に抑えながら、薬物ペイロードを提供する。
【0132】
薄膜デバイスのモジュール性のために、多層状バイオポリマーデバイスの構築中に複数の方法で貯蔵部を充填することが可能である。1つの手法は、デバイス内で直接凍結乾燥される薬物の溶液中に浸漬することにより、組み立てられたデバイスの貯蔵部および関連するナノチャネルを充填することである。第2の手法は、凍結乾燥した薬物の貯蔵部膜への直接的な堆積、およびそれに続く膜の積層化、完全なデバイスを作製するための膜の加熱密封を用いる。凍結乾燥した薬物は、デバイスの貯蔵部内に直接堆積されるか、生分解性ポリマーもしくはゲルマトリクス内に組み入れられる。薬物負荷および貯蔵部のパターニングは蛍光標識(FITC)した標的薬物を使用して確認され、蛍光顕微鏡法を用いて可視化される(図10A)。
【0133】
ペイロードの算出および安全性の検討
少なくとも4ヶ月の間、眼の後部で濃度を維持するゼロ次放出プロファイルに基づいて、デバイスの負荷要件を分析する。例えば、空隙空間50%で20nmの細孔を有する5mm×5mmの薄膜に基づいて、このデバイスにおける最大薬物負荷は、膜実験に基づく2μg/日/mmの高い放出速度で凍結乾燥薬物1.3mgである。所望の放出速度は、薬物親和性、硝子体半減期、および標的硝子体の濃度に依存する。臨床的投与量に基づいて、持続送達デバイスは、例えば、例示的なデバイスの場合、ラニビズマブの治療濃度を維持するために4μg/日、(50μg/眼球の持続濃度)、または480μgの全薬物を必要とすると推定される。6ヶ月を超える送達のために設計されたデバイスの全用量の放出は、故障時に、VEGFを50%阻害すると考えられる閾値である11〜27ng/mlを十分に下回る、3.4ng/ml未満の全身薬物濃度をもたらす。さらに、複数チャンバのある貯蔵部(図10)は、全ての薬物ペイロードが不注意に放出され得るリスクを最小限に抑える。Lucentis(著作権)の硝子体液中での半減期の保守的な推定値に基づいて、約800μgの薬物を負荷されたデバイスは、6ヶ月以上の期間、治療レベルを維持すると推定される。
【0134】
眼球生体適合性試験
マイクロ構造およびナノ構造のバイオポリマーの構造的完全性および眼耐性を評価するために、成獣ウサギの眼においてインビボ安全性試験を行った。標準的な顕微鏡手術の技術を用いて、麻酔下にあるニュージーランド白ウサギ(N=15)の眼にポリ(カプロラクトン)(PCL)から製造したデバイスを投与した。針による注射(20ゲージ)を用いて、捲回したバイオポリマー膜を硝子体に挿入した。眼耐性を調査するために、1〜6ヶ月の範囲の追跡調査期間にわたって定期的な眼科検診(細隙灯検査、眼圧測定、および間接的な眼底検査)を行った。摘出した死後眼について数日から数ヶ月の間隔で組織学的検査を行い、あらゆる形態異常またはデバイス/組織反応を評価した。走査電子顕微鏡法(SEM)により評価するために眼からPCL膜を取り出し、デバイスの耐久性および構造的完全性を判定した。PCL膜は、眼の中に投与されると、前眼房および硝子体領域の両方において耐用性を示し、構造的に安定していた。インビボ眼科試験の結果は、炎症、慢性感染症、白内障、および眼圧に関して眼耐性の有害な徴候を示さなかった。6ヵ月後にもデバイスの移動は観察されなかった。組織の組織学的検査により、網膜、線維柱帯網、および投与後にデバイスが解剖学的に滞留する特定の部位を含む眼の部位に細胞の炎症または形態異常が見られないことが明らかになった。線維症、神経膠症、または出血等のデバイス/組織応答は見られなかった。
【0135】
多層薄膜デバイス製造装置
本明細書に開示される多層薄膜を製造するために使用可能な例示的な装置を図11A〜11Cに示す。
【0136】
図11A 薄膜デバイスは、平坦なPCL膜、薬物ペレット、および加圧重りを使用して支持構造の間に挟んだナノ構造PCL膜を含んでもよい。連続的なデバイス層を含む装置は、PCL膜を溶解するためのホットプレート上に設置される。底面支持部はアニュラスであるため、デバイスの中心部は大幅に低い加熱を受ける。
【0137】
図11B 下から上に向かって、デバイスは、平坦なPCL膜、薬物ペレット、および加圧重りを使用して支持構造の間に挟んだナノ構造PCL膜からなる。装置の基部は、デバイスを端部から内側に密封する抵抗加熱要素を含む。加熱要素に供給される電力および加熱時間を制御することにより、密封を制御することができる。
【0138】
図11C 下から上に向かって、デバイスは、平坦なPCL膜、薬物ペレット、および加圧重りを使用して支持構造の間に挟んだナノ構造PCL膜からなる。装置の基部は、デバイスを端部から内側に密封する抵抗加熱要素を含む。デバイスの中心部への加熱を最小限に抑えるために、基部の中心および上支持部が除去される。加熱要素に供給される電力および加熱時間を制御することにより、密封を制御することができる。
【0139】
タンパク質の制御放出のための多層薄膜デバイス
20mn〜40nmの範囲の細孔径を有する多層薄膜デバイスを上述のように製造した。
【0140】
図12は、210日間の期間にわたって、20〜40nmの細孔径のナノ構造PCLデバイス(n=3)から1μg/日の放出速度でFITC−BSAタンパク質が放出されたことを示す。
【0141】
小分子の制御放出のための多層薄膜デバイス
小分子ラパマイシン(分子量914Da)を含む生物活性薬貯蔵部を備えるナノ多孔質多層薄膜デバイスを製造した。このナノ多孔質多層薄膜デバイスからのラパマイシンの放出動態を、非多孔質デバイスからおよびラパマイシンがポリマー膜に混合されたPCL薄膜からのラパマイシンの放出動態と比較した。
【0142】
図13は、ナノ多孔質薄膜デバイス(実線の円形)、非多孔質デバイス(実線の四角形)、および薬物がポリマー膜中に混合されたPCL薄膜(実線の三角形)からの小分子(ラパマイシン、分子量914.172Da)の放出動態を示す。
【0143】
ナノ多孔質薄膜デバイスは、上述のように生成された、支持されたナノ構造膜(ナノ構造細孔20〜40nm、支持層細孔1〜3ミクロン)の第1の層と、第2の非多孔質層とからなっていた。ラパマイシンを、第1の層のナノ多孔質側と合わせて第2の層の上に設置した。ナノ多孔質の第1の薄膜層を、ナノ多孔質層と非多孔質層との間にラパマイシンを封入する非多孔質膜上に設置した。
【0144】
非多孔質デバイスは、非多孔質膜の第1の層を含む。ラパマイシンを第1の層の表面上に堆積させた。第2の非多孔質層を第1の層の上に設置した。2つの非多孔質層を一緒に密封して、非多孔質層の間にラパマイシンを封入した。
【0145】
PCL薄膜の場合、小分子は、2つの層の間に含まれるのではなく、ポリマー自体の中に混合された。
【0146】
ナノ多孔質および非多孔質PCLデバイスからの小分子薬ラパマイシン(シロリムス)の放出動態を、薬物を含むPCL膜からの同じ分子の放出動態と比較した。図13は、ナノ多孔質PCLデバイス(ナノ構造細孔20〜40nm、支持層細孔1〜3ミクロン)および非多孔質PCLデバイスが、長期間にわたって小分子のゼロ次放出を提供することを示す。対照的に、シロリムスを含むPCL薄膜は、短期間にわたって一次放出動態で小分子を放出する。
【0147】
前述の発明は、理解を明確にする目的で例示および実施例によってある程度詳細に記載されてきたが、当業者には、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の主旨または範囲から逸脱することなく、特定の変更および修正がなされてもよいことが明らかであろう。
【0148】
したがって、上記は、本発明の原理を示しているに過ぎない。当業者は、本明細書には明示的に記載または示されていないが、本発明の原理を具体化し、かつその主旨および範囲内に含まれる種々の構成を創案することができることを理解されたい。さらに、本明細書に列挙される全ての実施例および条件付き言語は、主として、読者が本発明の原理および発明者によって当該技術の増進に寄与される概念を理解する補助となることを意図するものであって、そのように具体的に列挙される実施例および条件に限定されないものとして解釈されるべきである。さらに、本発明の主旨、態様、および実施形態、ならびにそれらの特定の実施例を列挙する本明細書の全ての記述は、その構造的および機能的な均等物の両方を包含することが意図される。また、そのような均等物は、現在既知である均等物、および、将来的に開発される均等物、すなわち、開発される任意の要素であって、構造にかかわらず同じ機能を行う、任意の要素の両方を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示されるおよび記載される例示的な実施形態に限定されることを意図するものではない。むしろ、本発明の範囲および主旨は、添付の特許請求の範囲によって具現化される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A-C】
図9D-E】
図9F-G】
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13