特許第6204910号(P6204910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6204910ポリマー層かさ密度が高い気相重合のための改良された方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204910
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】ポリマー層かさ密度が高い気相重合のための改良された方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/06 20060101AFI20170914BHJP
   C08F 2/34 20060101ALI20170914BHJP
   C08F 2/01 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C08F10/06
   C08F2/34
   C08F2/01
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-518615(P2014-518615)
(86)(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公表番号】特表2014-522892(P2014-522892A)
(43)【公表日】2014年9月8日
(86)【国際出願番号】US2012042459
(87)【国際公開番号】WO2013003062
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年6月11日
(31)【優先権主張番号】13/172,969
(32)【優先日】2011年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399016927
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレイス・アンド・カンパニー−コネチカット
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カイ,ピン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン エグモンド,ジャン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】フェデック,マシュー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ゴード,ジェフリー ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ブラッディ,ロバート シー.
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リンフェン
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0152424(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 10/00−10/14
C08F 2/00− 2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンまたはプロピレンコポリマー(C2からC8)を調製するための重合方法であって、
任意選択で1または複数のコモノマーと共に、流動化層かさ密度が128kg/m3より大きい流動化ポリマー層を持つ気相反応器中で、混合外部電子供与体系の存在下で、プロピレンを重合させることを含み、前記気相反応器が最少流動化速度の10倍未満の気体空塔速度および0.17より大きい固体ホールドアップを有する単一流動様式の気相反応器であり、前記混合外部電子供与体系が少なくとも1つの第一の外部電子供与体および1つの第二の外部電子供与体を含み、前記第一の外部電子供与体がカルボキシレート化合物である、方法。
【請求項2】
前記気相反応器が機械撹拌型の垂直気相反応器である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記気相反応器が浸漬管またはエダクタ管を通じて生成物を排出する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記気相反応器のベッド体積が反応器容積の35%以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記気相反応器が機械的に撹拌される水平気相反応器である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記気相反応器が別々の気体供給および液体供給を持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
1または複数の付加的な反応器をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記反応器が並行に配置される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応器が直列に配置される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記反応器が並行反応器および直列反応器を組み合わせて配置される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合外部電子供与体系が少なくとも1つの選択性制御剤および少なくとも1つの活性制限剤を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記活性制限剤がカルボン酸エステル、ジエーテル、ポリ(アルケングリコール)、ジオールエステルおよびこれらの組み合わせであることができる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記活性制限剤がベンゾエートおよびC4−C30脂肪族酸エステルから選択される、請
求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記活性制限剤がラウレート、ミリステート、パルミテート、ステアレートおよびオレエートから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第二の外部電子供与体選択性制御剤が、アルコキシシラン、アミン、エーテル、カルボキシレート、ケトン、アミド、カルバメート、ホスフィン、ホスフェート、ホスファイト、スルホネート、スルホンおよびスルホキシドよりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記選択性制御剤がSiRm(OR')4−mから選択され、式中、RはC3−C12シクロアルキル、C3−C12分岐型アルキル、またはC3−C12環式もしくは非環式のアミノ基であり、R'はC1−4アルキルであり、mは0、1または2である、請求項11に記載
の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー層かさ密度(polymer bed bulk densities)が比較的高い気相オレフィン重合法のための改良に関する。この改良は、混合外部電子供与体系の使用を伴う。
【背景技術】
【0002】
高性能のポリプロピレンホモポリマー製品およびコポリマー製品への需要は、固有の特徴を持つ高度な製造プロセスをもたらした。気相重合プロセスは、ポリプロピレンホモポリマー、ランダムコポリマーおよびインパクトコポリマーの製造に最も経済的であると認められている。かかるプロセスにおいて、重合反応器は、ポリマー粒子の固体相ならびにプロピレンモノマー、コモノマーおよび水素を含む気相の混合物を含有する。スラリー相重合プロセスと違い、気相プロセスは、固−液分離または生成物−触媒分離を必要としない。この特徴は、気相プロセスをより動作しやすく、より経済的にしている。
【0003】
プロセスが適切に制御されない場合、動作上の課題が気相重合反応器中で生じることがある。例えば、ポリマー凝集体、またはさらにポリマー塊が形成されることがあり、および/または容器表面がふさがれることもある。これらの課題は、典型的に、不適切な熱除去および/または強い静電引力により引き起こされる。反応の熱が迅速に除去されない場合、ポリマー粒子は、ポリマー軟化温度より高い、またはさらにポリマーの溶融温度より高い表面温度に至るまで加熱される。かかる動作上の問題は、洗浄のために反応器を停止させ得るものであり、これにより重大な金銭的ペナルティがもたらされる。
【0004】
ポリマー層かさ密度が比較的高い反応器中では、通常、単位ベッド体積中の活性触媒部位(重合反応が起こる部位)がより多く、単位ベッド体積中の生み出される反応熱がより多い。そのうえ、比較的高いポリマー層かさ密度は、しばしば、比較的低い気体速度、およびその結果としての気相による比較的低い熱除去能力に関連し、またはこれらにより引き起こされる。このことは、粒子凝集の可能性をさらに増大させる。用語「層かさ密度」とは、反応器中の気−固層の単位体積中の固体重量を指す。この用語は、気相反応器が流動層反応器である場合、「流動化かさ密度(「FBD」としても公知である)」としばしば等価である。本発明の目的のため、本発明中の非流動化気相反応器、例えば気体速度が最小流動化速度より低い、機械的にかき混ぜられる撹拌型のポリマー層気相反応器などにこの概念を拡張した場合、いずれの専門用語も、気−固系の単位体積あたりの固体重量を意味するのになお用いられ得る。
【0005】
上述の凝集問題を解決するための以前の試みとして、例えば、垂直方向(例えば、米国特許第3,639,377号)または水平方向(例えば、米国特許第4,101,289号)のいずれかに機械的撹拌器を備えた撹拌型ポリマー層気相反応器が挙げられる。しかしながら、機械的にかき混ぜられる撹拌型ポリマー層は、凝集問題を常に解決するものではなく、機械的撹拌器それ自体がファウリング(fouling)のためのさらなる表面を提供し得る。機械的にかき混ぜられる撹拌型ポリマー層気相反応器中の「塊」の形成はよく報告されており、例えば中国特許出願公開第101241023号およびCISEC Journal, Vol. 60, No.3, pp. 585-592などがある。後者の文献中では、「水平撹拌型−層ポリプロピレン反応器中では、チャンキング(chunking)は、反応器の長期間の安定な動作および生成物の品質に対する重大な脅威である」と述べられている。著者はさらに、Ineos’ Innovene Polypropyrene ProcessおよびChisso/JPP’s Horizone Polypropyrene Processの撹拌型ポリマー層気相反応器を提示している。これらは、比較的高い速度を用いて動作させる気相流動層反応器、例えばUNIPOL(商標)Polypropyrene Processの反応器などと比べ、ポリマー層かさ密度が比較的高い反応器と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,639,377号明細書
【特許文献2】米国特許第4,101,289号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第101241023号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】CISEC Journal, Vol. 60, No.3, pp. 585-592
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、ポリマー層かさ密度(polymer bed bulk densities;ポリマーベッドかさ密度)が高い気相重合反応器中の粒子凝集は、特有の動作上の懸念であり得るものであり、問題に対する解決策を開発することへのニーズがある。本発明は、容易に適用することができ、比較的コストが低く、動作上の複雑さが少ない、この問題への解決策を、処理装置または動作条件を著しく変える必要なく提供するものである。本発明は、ポリマー層かさ密度が128kg/mより大きい気相重合法のための改良である。この改良は、少なくとも1つの活性制限剤(activity limiting agent)および少なくとも1つの選択性制御剤(selectivity control agent)を含む混合外部電子供与体系の使用を伴う。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書中の元素周期表への全ての参照は、CRC Press,Inc.が2003年に発行し、著作権を有する「元素周期表」を参照するものとする。また、族(複数可)への参照はいずれも、族を番号付けるためのIUPACシステムを用いてこの元素周期表中に示される族(複数可)への参照であるものとする。反対のことが述べられたり、文脈から暗黙的であったり、または当分野において慣例的である場合を除いて、全ての部およびパーセントは重量に基づく。米国特許実務の目的のため、本明細書中で参照されるあらゆる特許、特許出願または刊行物の内容、特に合成技術、定義(本明細書中で提供されるいずれの定義とも矛盾しない程度に)および当分野における一般的知識に関する内容は、参照によりそれらの全体が本明細書中に組み込まれる(または、それらの同等な米国対応物が参照によってそのように組み込まれる)。
【0010】
用語「含む」およびその派生形は、何らかのさらなる成分、工程または手順の存在を除外することを意図するものではなく、このことは同じものが本明細書中で開示されているか否かにかかわらない。あらゆる疑念を避けるため、用語「含む」の使用を通じて本明細書中で主張される全ての組成物は、反対のことが述べられない限り、ポリマーであるかそうでないかにかかわらず、任意のさらなる添加剤、補助剤または化合物を包含することができる。対照的に、用語「から本質的になる」は、あらゆる後続の列挙の範囲から、あらゆる他の成分、工程または手順を、操作性に必須でないものを除いて、除外する。用語「からなる」は、具体的に記述または列挙されていない、あらゆる成分、工程または手順を除外する。用語「または」は、特に述べられない限り、列挙された要素を個々に指し、同様に任意に組み合わせたものを指す。
【0011】
本発明は、プロ触媒(pro-catalyst)組成物、共触媒および混合外部電子供与体(M−EED)系を含む触媒組成物の使用を伴うものであり、ここで混合外部電子供与体系は、少なくとも1つの活性制限剤(ALA)および少なくとも1つの選択性制御剤(SCA)を包含する。本触媒組成物のプロ触媒組成物は、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物であることができる。任意の従来のチーグラー・ナッタプロ触媒を、本触媒組成物中で、当分野で一般に公知であるように用いることができる。一実施形態において、チーグラー・ナッタプロ触媒組成物は、チタンクロライド、マグネシウムクロライドおよび任意選択で内部電子供与体を含有する。
【0012】
本発明は、重合の動力学的プロファイルを十分に改変し、それ故にポリマー粒子凝集または塊形成に関連し得る反応器中の「ホット」スポットを防ぎ得る新規の外部電子供与体系の使用に関する。触媒系の改変された動力学的プロファイルによって、触媒活性部位における温度がポリマーの軟化温度または溶融温度に達する前に、触媒活性は非常に低いレベルに、またはさらにゼロにまで減少する。このように、粒子の表面温度がポリマー軟化温度またはポリマー溶融温度に達する可能性は低い。それ故に、製造プロセス(重合反応器、生成物排出系、反応器ポリマー移動系、気体再利用配管、圧縮器、熱交換器など)中で、粒子凝集およびファウリングが防がれる。
【0013】
本発明は、ポリマー層かさ密度が比較的高いか、または流動化ポリマー層かさ密度(「FBD」としても公知である)が比較的高いかのいずれかである反応器系にとって有益である。本明細書中で用いられる流動化かさ密度またはFBDは、気−固系の単位体積中の固体重量である。本発明の目的のため、本発明中の非流動化気相反応器、例えば気体速度が最小流動化速度より低い、機械的にかき混ぜられる撹拌型のポリマー層気相反応器などにこの概念を拡張した場合、いずれの専門用語も、気−固系の単位体積あたりの固体重量を意味するのになお用いられ得る。ポリマー層かさ密度およびFBDは、異なる方法、例えば圧力損失測定、直接的なポリマー層重量およびポリマー層高測定(例えば、米国特許第6,460,412号)などにより決定し得る。本発明は、ポリマー層かさ密度が128kg/mもしくはそれより高い、または160kg/mもしくはそれより高い、またはさらに192kg/mもしくはそれより高い反応器系に対して具体的に適用可能である。
【0014】
本発明は、比較的高い固体ホールドアップのポリマー層を持つ反応器系にとって特に有益である。固体ホールドアップが高いと、典型的に、粒子凝集の可能性はより高くなる。用語「固体ホールドアップ」は、気−固系中の固体の体積割合(volumetric fraction)を意味する。固体ホールドアップは異なる方法で決定し得る。一般に用いられる方法の1つは、ポリマー層重量および高さを(反応器壁上の圧力タップを介した)差圧測定によって測定することである。反応器内の容積および固体ホールドアップは次いで、粒子密度情報を使用して推定され得る。いくつかの実施形態において、本発明は、0.17(すなわち17%)より大きい、好ましくは0.21(すなわち21%)より大きい、および最も好ましくは0.25(すなわち25%)より大きい固体ホールドアップを有する反応器系(しかしこれらに限定されるものではない)と共に用いられる。当業者に公知であるように、固体ホールドアップは顆粒状粒子密度に部分的に依存するものであるから、これらの典型的な値は、顆粒状粒子が可能な密度の極限にある場合、ある特定のポリマー層かさ密度について低いこともあり、また高いこともある。
【0015】
本発明は、任意の気相重合反応器系に適用することが可能であり、これらの気相重合反応器系としては、充填層(固定層)、均質流動化、バブリング流動化、乱流流動化、「高密度循環流動層」、噴流層、噴流流動層、密度相空気搬送および充填(または固定)移動層(マスフローおよびファンネルフローを包含する)の条件下で動作させるものが挙げられる。本発明は、機械的にかき混ぜられる撹拌型ポリマー層および流動化ポリマー層気相重合反応器に特に好適である。気体および固体は、並流、対向流、固体バッチなどを包含する任意の方法で接触させることが可能である。本発明の方法は、プレ重合を任意選択で包含し得るが、必須ではない。
【0016】
所定の反応器系の中で、ポリマー層かさ密度および固体ホールドアップの値を、反応器動作条件を操作することにより、ある一定の範囲内で変えることが可能である。
【0017】
同様に、本発明は、気体速度が比較的低いこれらの反応器にとってとりわけ有益であり得るが、その理由は、気体速度が低いほど、典型的に、粒子凝集の可能性が高くなるからである。いくつかの実施形態において、本発明は、気体空塔速度が最小流動化速度の10倍未満、好ましくは最小流動化速度の8倍未満、および最も好ましくは最小流動化速度の5倍未満である反応器系(しかしこれらに限定されるものではない)と共に用いられる。本発明はまた、空塔速度が最小流動化速度に近いか、またはさらに下回る場合にも、特定の適用可能性を持つと考えられる。最小流動化速度は、任意の流動化の教科書に記載されている方法で測定可能である。しかしながら、実際には、最小流動化速度を反応条件下で測定することは好都合ではなく、周知の式、例えばWenおよびYu(AIChE J., Vol. 12, p. 610, 1966)などを用いて計算される。
【0018】
本発明の別の実施形態において、本明細書中で開示される方法は、凝縮モードで、米国特許第4,543,399号、第4,588,790号、第4,994,534号、第5,352,749号、第5,462,999号および第6,489,408号、ならびに米国特許出願公開第20050137364号中で開示されている方法と同様に動作させることができる。凝縮モード法を用いて、より高い冷却能力、したがってより高い反応器生産性を達成することができる。モノマー(複数可)およびコモノマー(複数可)などの重合法自体の凝縮性流体に加えて、重合に対して不活性な他の凝縮性流体を導入して、例えば米国特許第5,436,304号中で記載されている方法などにより、凝縮モード動作を誘導することができる。
【0019】
より具体的には、本発明は、プロ触媒組成物;共触媒;および混合外部電子供与体(M−EED)系を含む触媒組成物の使用を伴う。M−EEDは、少なくとも1つの活性制限剤(ALA)および少なくとも1つの選択性制御剤(SCA)を含む。本明細書中で用いられるように、混合「外部電子供与体」系は、プロ触媒形成と独立して加えられる、触媒性能を改変する組成物である。本明細書中で用いられるように、「活性制限剤」は、触媒温度が閾値温度を超えた温度(例えば、約80℃、85℃または90℃より高い温度)に上昇すると触媒活性を低下させる組成物である。「選択性制御剤」は、ポリマーの立体規則性を改良する成分である。上記定義は互いに排他的なものではなく、単一の化合物が、例えば、活性制限剤および選択性制御剤の両方に分類されていてもよいことが理解されるべきである。
【0020】
本発明における使用のための混合外部電子供与体系は、好ましくは、少なくとも1つのカルボキシレート化合物を包含する。カルボキシレート化合物は、ALA成分および/またはSCA成分のいずれかであり得る。
【0021】
選択性制御剤(複数可)(SCA)は、以下のうちの1または複数から選択することができる:アルコキシシラン、アミン、エーテル、カルボキシレート、ケトン、アミド、カルバメート、ホスフィン、ホスフェート、ホスファイト、スルホネート、スルホンおよび/またはスルホキシド。
【0022】
一実施形態において、SCAはアルコキシシランを包含する。アルコキシシランは一般式:SiR(OR’)4−m(I)を持ち、式中、Rは独立して各別に水素またはヒドロカルビルまたは任意選択で1もしくは複数の14族、15族、16族もしくは17族のヘテロ原子を含有する1もしくは複数の置換基で置換されていてもよいアミノ基であり、前記Rは水素およびハロゲンを数に入れずに20個までの原子を含有し;R’はC1−4アルキル基であり;mは0、1、2または3である。ある実施形態において、RはC6−12アリールアルキルもしくはアラルキル、C3−12シクロアルキル、C3−12分岐型アルキル、またはC3−12環式もしくは非環式のアミノ基であり、R’はC1−4アルキルであり、mは1または2である。好適なシラン組成物の非限定的な例として、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン、メチルシクロヘキシルジエトキシシラン、エチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、シクロペンチルピロリジノジメトキシシラン、ビス(ピロリジノ)ジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシランおよびジメチルジメトキシシランが挙げられる。ある実施形態において、シラン組成物は、ジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPDMS)、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン(MChDMS)またはn−プロピルトリメトキシシラン(NPTMS)、およびこれらの任意の組み合わせである。
【0023】
ある実施形態において、選択性制御剤成分は、2以上のアルコキシシランの混合物であり得る。さらなる実施形態において、混合物は、ジシクロペンチルジメトキシシランおよびメチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランおよびテトラエトキシシラン、またはジシクロペンチルジメトキシシランおよびn−プロピルトリエトキシシランであり得る。
【0024】
一実施形態において、混合外部電子供与体系は、ベンゾエート、スクシネートおよび/またはジオールエステルを包含することができる。一実施形態において、混合外部電子供与体系は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンをSCAとして包含する。別の実施形態において、混合外部電子供与体系は、ジエーテルをSCAおよびALAの両方として包含する。
【0025】
混合外部電子供与体系はまた、活性制限剤(ALA)を包含する。ALAは、重合反応器の混乱を阻止またはさもなければ防止して、重合プロセスの継続性を確保する。典型的に、チーグラー・ナッタ触媒の活性は、反応器温度が上昇するにつれて向上する。チーグラー・ナッタ触媒はまた、典型的に、生産されるポリマーの溶融温度付近で高い活性を維持する。発熱性重合反応により生成した熱は、ポリマー粒子の凝集体形成を引き起こして、最終的に、ポリマー生産プロセスについての継続性の崩壊に至ることがある。ALAは、上昇した温度で触媒活性を低減させ、それによって反応器の混乱を防止し、粒子凝集を低減させ(または防止し)、重合プロセスの継続性を保証する。
【0026】
活性制限剤は、カルボン酸エステル、ジエーテル、ポリ(アルケングリコール)、ジオールエステルおよびこれらの組み合わせであることができる。カルボン酸エステルは、脂肪族または芳香族の、モノカルボン酸エステルまたはポリカルボン酸エステルであり得る。好適なモノカルボン酸エステルの非限定的な例として、エチルベンゾエートおよびメチルベンゾエート、エチルp−メトキシベンゾエート、メチルp−エトキシベンゾエート、エチルp−エトキシベンゾエート、エチルp−イソプロポキシベンゾエート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアセテート、エチルp−クロロベンゾエート、ヘキシルp−アミノベンゾエート、イソプロピルナフテネート、n−アミルトルエート、エチルシクロヘキサノエートおよびプロピルピバレートが挙げられる。
【0027】
好適なポリカルボン酸エステルの非限定的な例として、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ−n−プロピルフタレート、ジイソプロピルフタレート、ジ−n−ブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジ−tert−ブチルフタレート、ジイソアミルフタレート、ジ−tert−アミルフタレート、ジネオペンチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−2−エチルデシルフタレート、ジエチルテレフタレート、ジオクチルテレフタレートおよびビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]テレフタレートが挙げられる。
【0028】
脂肪族カルボン酸エステルは、C−C30脂肪族酸エステルであることができ、モノエステルまたはポリ(2以上の)エステルであることができ、直鎖型または分岐型であることができ、飽和または不飽和であることができ、およびこれらの任意の組み合わせであることができる。C−C30脂肪族酸エステルはまた、14族、15族または16族ヘテロ原子を含有する1または複数の置換基で置換されていてもよい。好適なC−C30脂肪族酸エステルの非限定的な例として、脂肪族C4−30モノカルボン酸のC1−20アルキルエステル、脂肪族C8−20モノカルボン酸のC1−20アルキルエステル、脂肪族C4−20モノカルボン酸およびジカルボン酸のC1−4アリルモノエステルおよびジエステル、脂肪族C8−20モノカルボン酸およびジカルボン酸のC1−4アルキルエステル、ならびにC2−100(ポリ)グリコールまたはC2−100(ポリ)グリコールエーテルのC4−20モノカルボキシレート誘導体またはポリカルボキシレート誘導体が挙げられる。さらなる実施形態において、C−C30脂肪族酸エステルは、ラウレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、オレエート、セバケート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノアセテートまたはジアセテート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノミリステートまたはジミリステート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノラウレートまたはジラウレート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノオレエートまたはジオレエート、グリセリルトリ(アセテート)、C2−40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリエステルおよびこれらの混合物であることができる。さらなる実施形態において、C−C30脂肪族エステルは、イソプロピルミリステートまたはジ−n−ブチルセバケートである。
【0029】
ある実施形態において、活性制限剤として、ジエーテルが挙げられる。ジエーテルは、以下の構造(VI)により表される1,3−ジエーテル化合物であり得る。
【化1】
式中、RからRは、互いに独立して、20個までの炭素原子を持つアルキル、アリールまたはアラルキル基であり、任意選択で14族、15族、16族または17族のヘテロ原子を含有してもよく、ならびにRおよびRは、水素原子であってもよい。ジアルキルエーテルは、直鎖型または分岐型であることができ、以下の基のうちの1または複数を包含することができる:1〜18個の炭素原子を有するアルキルラジカル、脂環式ラジカル、アリールラジカル、アルキルアリールラジカルまたはアリールアルキルラジカル、および水素。RおよびRは結合して、環状構造、例えばシクロペンタジエンまたはフルオレンなどを形成することができる。
【0030】
ある実施形態において、活性制限剤として、以下の構造(VII)を持つスクシネート組成物が挙げられる。
【化2】
式中、RおよびR’は、同じであっても異なってもよく、Rおよび/またはR’は、以下の基のうちの1または複数を包含する:水素、直鎖型または分岐型のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルキルアリール基、任意選択でヘテロ原子を含有する。2位および3位の炭素原子の一方または両方を介して、1または複数の環状構造を形成することが可能である。
【0031】
ある実施形態において、活性制限剤として、以下の構造(VIII)により表されるジオールエステルが挙げられる。
【化3】
式中、nは1から5の整数である。RおよびRは、同じであっても異なってもよく、各々、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、アリル、フェニルまたはハロフェニル基から選択することができる。R、R、R、R、RおよびRは、同じであっても異なってもよく、各々、水素、ハロゲン、1から20個の炭素原子を持つ置換された、または置換されていないヒドロカルビルから選択することができる。R−R基は、任意選択で、炭素、水素または両方を置換する1または複数のヘテロ原子を含有してもよく、このヘテロ原子は窒素、酸素、硫黄、シリコン、リンおよびハロゲンから選択される。RおよびRは、同じであっても異なってもよく、いずれかのフェニル環の2位、3位、4位、5位および6位の任意の炭素原子に結合していてもよい。
【0032】
混合外部電子供与体系の個々の成分は、反応器中に別々に加えることが可能であり、または2以上の成分を予め混ぜ合わせ、その後に混合物として反応器中に加えることも可能である。混合外部電子供与体系中では、1より多い選択性制御剤または1より多い活性制限剤が用いられ得る。混合外部電子供与体系の例は、ジシクロペンチルジメトキシシランおよびイソプロピルミリステート、ジイソプロピルジメトキシシランおよびイソプロピルミリステート、ジシクロペンチルジメトキシシランおよびポリ(エチレングリコール)ラウレート、ジシクロペンチルジメトキシシランおよびイソプロピルミリステートおよびポリ(エチレングリコール)ジオレエート、メチルシクロヘキシルジメトキシシランおよびイソプロピルミリステート、n−プロピルトリメトキシシランおよびイソプロピルミリステート、ジメチルジメトキシシランおよびメチルシクロヘキシルジメトキシシランおよびイソプロピルミリステート、ジシクロペンチルジメトキシシランおよびn−プロピルトリエトキシシランおよびイソプロピルミリステート、ジイソプロピルジメトキシシランおよびn−プロピルトリエトキシシランおよびイソプロピルミリステート、ならびにジシクロペンチルジメトキシシランおよびテトラエトキシシランおよびイソプロピルミリステート、ジシクロペンチルジメトキシシランおよびジイソプロピルジメトキシシランおよびn−プロピルトリエトキシシランおよびイソプロピルミリステート、ならびにこれらの組み合わせである。
【0033】
M−EED系は、別々に、または予め混合して加える場合のいずれであっても、反応器中の任意の個所に加えることができるが、ALAは、凝集のリスクが最も高いと考えられる領域、例えば固体ホールドアップが最も高く、FBDが最も高く、および/または気体速度が最も低い領域などに存在させるべきである。
【0034】
本触媒組成物は、共触媒を包含する。前記チーグラー・ナッタプロ触媒組成物と共に用いるための共触媒は、アルミニウム含有組成物であることができる。好適なアルミニウム含有組成物の非限定的な例として、有機アルミニウム化合物、例えば各々のアルキル基またはアルコキシド基中に1〜10個の、または1〜6個の炭素原子を含有するトリアルキルアルミニウム化合物、ジアルキルアルミニウムヒドリド化合物、アルキルアルミニウムジヒドリド化合物、ジアルキルアルミニウムハライド化合物、アルキルアルミニウムジハライド化合物、ジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物およびアルキルアルミニウムジアルコキシド化合物などが挙げられる。ある実施形態において、共触媒は、C1−4トリアルキルアルミニウム化合物、例えばトリエチルアルミニウム(TEA)などである。触媒組成物は、0.5〜25:1、または1.0〜20:1、または1.5〜15:1、または約6.0未満、または約5未満、または4.5未満のAl対(SCA(複数可)+ALA(複数可))のモル比を包含する。ある実施形態において、Al:(SCA(複数可)+ALA(複数可))のモル比は、0.5〜4.0:1である。全SCA対ALAのモル比は0.01〜20:1、0.10〜5.00:1、0.43〜2.33:1、または0.54〜1.85:1、または0.67〜1.5:1である。
【実施例】
【0035】
本発明の有効性を実証するため、以下の重合反応を行うことが可能である。
【表1】

比較例1および2
【0036】
定常動作に達した後、撹拌器に機械的問題があり、撹拌器は運動を停止する。反応停止気体(kill gas)を反応器中に速やかに導入して重合反応を終了させても、ポリマー凝集はなお形成される。撹拌器の問題を修復した後、ポリマー凝集体(いわゆる「塊」)の大きなかけらが撹拌器を妨げるため、反応器は正常な動作に戻ることができない。生成物排出ラインにもまた、「塊」が詰まる。正常な動作に復帰させる前に、反応器を洗浄のために停止させなければならない。
実施例3および4
【0037】
外部電子供与体を本発明の混合外部電子供与体系(詳細な供与体組成物については上の表を参照のこと)により置き換えることを除いて、全ては比較例と同じである。比較例1および2と同じ撹拌器の問題に直面する。触媒および共触媒の供給を直ちに止め、反応停止気体を反応器中に導入し、次いで反応器を「待機状態」にする。撹拌器の問題を修復した後、反応器を動作に戻す。反応は何らの動作上の課題なく再開し、ポリマー凝集体は撹拌器の運動を妨げない。