【文献】
K.K. MALLICK. et al.,Strengthening of container glasses by ion-exchange dip coating,JORNAL OF NON-CRYSTALLINE SOLIDS,米国,2005年,351巻/30−32号,p.2524−2536
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、改良された化学的および機械的耐久性を示すガラス組成物のさまざまな実施形態を詳しく参照する。このようなガラス組成物は、非限定的に医薬品包装材料としての使用を含めたさまざまな利用分野における使用に好適である。ガラス組成物は同様に、化学的に強化されて、ガラスに増大した機械的耐久性を付与してもよい。本明細書中に記載のガラス組成物は概して、ガラス組成物に対して化学的耐久性を付与する量でシリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、アルカリ土類酸化物およびアルカリ酸化物(例えばNa
2Oおよび/またはK
2O)を含む。さらにガラス組成物中に存在するアルカリ酸化物は、イオン交換によるガラス組成物の化学的強化を促す。ガラス組成物のさまざまな実施形態が本明細書中に記載されており、具体的実施例を参照してさらに例証される。
【0014】
本明細書中で使用する「軟化点」という用語は、ガラス組成物の粘度が1×10
7.6ポアズである温度を意味する。
【0015】
本明細書中で使用される「焼鈍点」という用語は、ガラス組成物の粘度が1×10
13ポアズとなる温度を意味する。
【0016】
本明細書中で使用する「CTE」という用語は、およそ室温(RT)〜約300℃までの温度範囲にわたるガラス組成物の熱膨張係数を意味する。
【0017】
本明細書中で使用される「化学的耐久性」という用語は、規定の化学的条件に曝露された場合に劣化に耐えることのできるガラス組成物の能力を意味する。具体的には、本明細書中に記載のガラス組成物の化学的耐久性は、3つの実証された材料試験規格、すなわち、「Testing of glass − Resistance to attack by a boiling aqueous solution of hydrochloric acid − Method of test and classification」という題のDIN12116;「Glass −− Resistance to attack by a boiling aqueous solution of mixed alkali −− Method of test and classification」という題のISO695:1991;および「Glass −− Hydrolytic resistance of glass grains at 121 degrees C −− Method of test and classification」という題のISO720:1985に準じて査定された。各々の規格および各規格内での分類については、本明細書中でさらに詳しく説明する。
【0018】
本明細書中に記載のガラス組成物は、概してSiO
2、Al
2O
3、少なくとも1つのアルカリ土類酸化物、少なくともNa
2OおよびK
2Oなどを含めたアルカリ土類酸化物の組合せを含みかつホウ素およびホウ素化合物を含まないアルカリ土類アルミノケイ酸ガラス組成物である。これらの構成成分の組合せは、化学的劣化に対する耐性を有し、同様にイオン交換による化学的強化にも好適であるガラス組成物を可能にする。一部の実施形態において、ガラス組成物はさらに少量の1つ以上の追加の酸化物、例えばSnO
2、ZrO
2、ZnOなどを含み得る。これらの構成成分は、清澄剤としておよび/またはガラス組成物の化学的耐久性をさらに増強するために添加されてもよい。
【0019】
本明細書に記載のガラス組成物の実施形態において、SiO
2は組成物の最大の成分であり、そのため、ガラス網状組織の主要成分である。SiO
2は化学的耐久性、詳細にはガラス組成物の酸中での分解に対する耐性を増強する。したがって、高いSiO
2濃度が概して所望される。しかしながら、SiO
2含有量が過度に高い場合、SiO
2の濃度が高くなるとガラスの溶融難度が増し今度はガラスの成形性に不利な影響を及ぼすことから、ガラスの成形性は低下し得る。ただし、アルカリ酸化物の添加は、ガラスの軟化点を低下させることによってこの効果を相殺するのを助ける。本明細書中に記載の実施形態において、ガラス組成物は概して67モル%以上かつ約75モル%以下の量でSiO
2を含む。一部の実施形態において、ガラス組成物中にSiO
2は、約67モル%以上かつ約73モル%以下の量で存在する。これらの実施形態の各々において、ガラス組成物中に存在するSiO
2の量は、約70モル%以上さらには約72モル%以上であってよい。
【0020】
本明細書中に記載のガラス組成物はさらにAl
2O
3を含み得る。Al
2O
3は、Na
2Oなどのガラス組成物中に存在するアルカリ酸化物と共に、イオン交換による強化に対するガラスの感受性を改善する。その上、組成物にAl
2O
3を添加することで、アルカリ成分(例えばNaおよびK)がガラスから滲出する傾向は減少し、このため、Al
2O
3の添加は加水分解による劣化に対する組成物の耐性を高める。さらに、約10モル%を超えるAl
2O
3の添加はガラスの軟化点も同様に上昇させ、これによりガラスの成形性は削減される。したがって、本明細書中に記載されているガラス組成物は、概して、約6モル%以上約10モル%以下の量でAl
2O
3を含む。一部の実施形態では、ガラス組成物中のAl
2O
3の量は約7モル%以上かつ約10モル%以下である。
【0021】
ガラス組成物は同様に、少なくとも2種のアルカリ酸化物をも含んでいる。アルカリ酸化物は、ガラス組成物のイオン交換能を促進し、このためガラス基板の化学的強化を促す。アルカリ酸化物は同様に、ガラスの軟化点も低下させ、これによりガラス組成物中のSiO
2のより高い濃度に起因する軟化点の上昇を相殺する。アルカリ酸化物は同様に、ガラス組成物の化学的耐久性を改善する上でも一助となる。アルカリ酸化物は概して、ガラス組成物中約5モル%以上かつ約12モル%以下の量で存在する。これらの実施形態の一部において、アルカリ酸化物の量は、約5モル%以上かつ約10モル%以下であってよい。他の一部の実施形態では、アルカリ酸化物の量は約5モル%以上かつ約8モル%以下であってよい。本明細書中に記載の全てのガラス組成物において、アルカリ酸化物は少なくともNa
2OおよびK
2Oを含む。一部の実施形態において、アルカリ酸化物はさらにLi
2Oを含む。
【0022】
ガラス組成物のイオン交換能は、主として、イオン交換に先立ってガラス組成物中に当初から存在するアルカリ酸化物Na
2Oの量によりガラス組成物に対し付与される。具体的には、イオン交換による強化の時点でガラス組成物中に所望の圧縮強度および層深さを達成するため、ガラス組成物は、ガラス組成物の分子量に基づいて約2.5モル%以上かつ約10モル%以下の量でNa
2Oを含む。一部の実施形態において、ガラス組成物は約3.5モル%以上かつ約8モル%以下の量でNa
2Oを含み得る。これらの実施形態の一部において、ガラス組成物は、約6モル%以上かつ約8モル%以下の量でNa
2Oを含み得る。
【0023】
以上で指摘した通り、ガラス組成物中のアルカリ酸化物は同様にK
2Oも含んでいる。ガラス組成物中に存在するK
2Oの量も同様に、ガラス組成物のイオン交換能に関係する。具体的には、ガラス組成物中に存在するK
2Oの量が増大するにつれて、イオン交換を通して得ることのできる圧縮応力は低下する。したがって、ガラス組成物中に存在するK
2Oの量を制限することが望ましい。一部の実施形態において、K
2Oの量はガラス組成物の分子量で0モル%超、約2.5モル%以下である。一部の実施形態において、ガラス組成物中に存在するK
2Oの量は、ガラス組成物の分子量で約0.5モル%以下である。
【0024】
以上で指摘した通り、一部の実施形態において、ガラス組成物中のアルカリ酸化物はさらにLi
2Oを含む。ガラス組成物中にLi
2Oを含み入れることで、ガラスの軟化点はさらに低下する。アルカリ酸化物がLi
2Oを含む実施形態においては、Li
2Oは約1モル%以上かつ約3モル%以下の量で存在し得る。一部の実施形態において、Li
2Oは、ガラス組成物中に約2モル%超で約3モル%以下の量で存在し得る。
【0025】
組成物中に存在するアルカリ土類酸化物は、ガラスバッチ材料の溶融性を改善し、ガラス組成物の化学的耐久性を増大させる。ガラス組成物中のアルカリ土類酸化物の存在は同様に、ガラスが層間剥離を起こす可能性をも削減する。本明細書中に記載のガラス組成物において、ガラス組成物は概して約9モル%〜約15モル%のアルカリ土類酸化物を含む。これらの実施形態の一部において、ガラス組成物中のアルカリ土類酸化物の量は、約10モル%〜約14モル%であってよい。
【0026】
ガラス組成物中のアルカリ土類酸化物はMgO、CaO、SrO、BaOまたはその組合せを含み得る。例えば、本明細書中に記載の実施形態において、アルカリ土類酸化物はMgOを含む。MgOはガラス組成物中に、ガラス組成物の分子量で約3モル%以上かつ約7モル%以下、さらには約2モル%以上かつ約5モル%以下の量で存在し得る。
【0027】
一部の実施形態では、アルカリ土類酸化物は同様にCaOを含む。これらの実施形態において、CaOは、ガラス組成物の分子量で約3モル%から7モル%以下までの量でガラス組成物中に存在する。これらの実施形態の一部において、CaOはガラス組成物中に、約4モル%以上かつ約7モル%以下の量で存在し得る。
【0028】
本明細書中に記載の一部の実施形態において、アルカリ土類酸化物はさらにSrOおよびBaOのうちの少なくとも一方を含む。SrOを含み入れることで、ガラス組成物の液相線温度は低下し、その結果、ガラス組成物の成形性は改善される。例えば、一部の実施形態において、ガラス組成物は、約0モル%超で約5モル%以下の量でSrOを含み得る。これらの実施形態の一部において、ガラス組成物は、約1モル%〜約2モル%のSrOを含み得る。
【0029】
ガラス組成物がBaOを含む実施形態において、BaOは、約0モル%超で約2モル%未満の量で存在し得る。これらの実施形態の一部では、BaOは、約1.5モル%以下、さらには約0.5モル%以下の量でガラス組成物中に存在し得る。しかしながら、一部の他の実施形態において、ガラス組成物は、バリウムおよびバリウム化合物を含まない。
【0030】
本明細書中に記載のガラス組成物の全ての実施形態において、ガラス組成物はホウ素およびホウ素化合物、例えばB
2O
3を含まない。具体的には、ホウ素およびホウ素化合物無しのガラス組成物を形成することで、ガラス組成物の化学的耐久性は著しく増大することが確定している。さらに、ホウ素およびホウ素化合物無しでガラス組成物を形成することによって、圧縮応力および/または層深さの特定の値を達成するのに必要とされるプロセス時間および/または温度の削減を通してガラス組成物のイオン交換能が改善されることも同様に確定している。
【0031】
SiO
2、Al
2O
3、アルカリ酸化物およびアルカリ土類酸化物に加えて、本明細書中に記載のガラス組成物は、任意選択的にはさらに、1つまたは複数の清澄剤、例えばSnO
2、As
2O
3および/またはCl
−(NaClなど由来)を含み得る。清澄剤がガラス組成物中に存在する場合、清澄剤は約1モル%以下、さらには約0.5モル%以下の量で存在していてもよい。例えば一部の実施形態において、ガラス組成物は清澄剤としてSnO
2を含み得る。これらの実施形態において、SnO
2は、ガラス組成物中に、約0モル%以上かつ約0.30モル%以下の量で存在し得る。
【0032】
さらに、本明細書中に記載のガラス組成物は、ガラス組成物の化学的耐久性をさらに改善するため1つまたは複数の追加の金属酸化物を含み得る。例えば、ガラス組成物はさらにZnO、TiO
2またはZrO
2を含み得、その各々が化学的攻撃に対するガラス組成物の耐性をさらに改善する。これらの実施形態において、追加の金属酸化物は、約0モル%以上かつ約2モル%以下の量で存在し得る。例えば、追加の金属酸化物がZnOである場合、ZnOは約1.5モル%以下の量で存在し得る。
【0033】
第1の例示的実施形態において、ガラス組成物は、約67モル%〜約75モル%のSiO
2と、約6モル%〜約10モル%のAl
2O
3と、約5モル%〜約12モル%のアルカリ酸化物と、約9モル%〜約15モル%のアルカリ土類酸化物とを含む。アルカリ酸化物は、少なくともNa
2OとK
2Oとを含む。ガラス組成物はホウ素およびホウ素化合物を含まず、イオン交換に対する感受性を有し、これによりガラスの化学的強化を促進して機械的耐久性を改善する。
【0034】
この第1の例示的実施形態において、Na
2Oは、約6モル%〜約8モル%の量で存在し得る。K
2Oは、約0.5モル%以下の量で存在し得る。アルカリ金属酸化物はさらにLi
2Oを約2モル%〜約3モル%の量で含み得る。
【0035】
この第1の例示的実施形態において、アルカリ土類酸化物は、約10モル%〜約14モル%の量で存在し得、SrOおよびBaOのうち少なくとも一方を含み得る。アルカリ土類酸化物がSrOを含む場合、SrOは、約1モル%以上かつ約2モル%以下の量で存在し得る。これらの実施形態の一部において、ガラス組成物はバリウムおよびバリウム化合物を含まない。アルカリ土類酸化物は同様にMgOおよびCaOも含み得る。
【0036】
この第1の例示的実施形態において、Al
2O
3の濃度は、約7モル%超であってよい。ガラス組成物はさらに、約1.5モル%以下の量のZrO
2および/または約0.3モル%以下の量のSnO
2を含み得る。
【0037】
第2の例示的実施形態において、ガラス組成物は、約67モル%〜約75モル%のSiO
2と、約6モル%〜約10モル%のAl
2O
3と、約5モル%〜約12モル%のアルカリ酸化物と、約9モル%〜約15モル%のアルカリ土類酸化物とを含み得る。アルカリ土類酸化物は、SrOおよびBaOのうちの少なくとも一方を含む。ガラス組成物はホウ素およびホウ素化合物を含まず、イオン交換に対する感受性を有し、これによりガラスの化学的強化を促進して機械的耐久性を改善する。
【0038】
この第2の例示的実施形態において、アルカリ酸化物はNa
2OとK
2Oを含み得る。Na
2Oは、約6モル%〜約8モル%の量で存在し得る。K
2Oは、約0.5モル%以下の量で存在し得る。
【0039】
この第2の例示的実施形態において、アルカリ土類酸化物がSrOを含む場合、SrOは、約1モル%以上かつ約2モル%以下の量で存在し得る。これらの実施形態の一部において、ガラス組成物はバリウムおよびバリウム化合物を含まない。アルカリ土類酸化物は同様にMgOおよびCaOも含み得る。
【0040】
この第2の例示的実施形態において、Al
2O
3の濃度は、約7モル%超であってよい。ガラス組成物はさらに、約1.5モル%以下の量のZrO
2および/または約0.3モル%以下の量のSnO
2を含み得る。
【0041】
本明細書中に記載の実施形態において、ガラス組成物は概して、約1040℃未満、またはさらには約950℃未満の軟化点を有する。一部の実施形態において、ガラス組成物の軟化点は約900℃未満である。これらのより低い軟化点は、ガラス組成物の成形性の容易さを改善する。
【0042】
本明細書中に記載の実施形態において、ガラス組成物は、約70×10
−7K
−1未満さらには約60×10
−7K
−1未満のCTEを有する。これらのより低いCTE値は、より高いCTEを有するガラス組成物に比べて、熱サイクルまたは熱応力条件に対するガラスの存続性を改善する。
【0043】
以上で指摘した通り、ガラス組成物中のアルカリ酸化物の存在は、イオン交換によるガラスの化学的強化を促進する。ガラス中のアルカリ酸化物の濃度、具体的にはガラス中のNa
2O濃度を変動させることにより、さまざまなイオン交換処理条件について、広範囲の圧縮応力および層深さの値が可能である。例えば、本明細書中に記載の一部のガラス組成物中では、約400℃〜約500℃の温度で約30時間未満さらには約20時間未満の時限、100%溶融KNO
3の塩浴中でガラス組成物を処理した後、約200MPa〜約850MPaの圧縮応力および約15μmから約50μmまたはそれ以上の層深さが得られ得る。
【0044】
図1にグラフで示されている通り、本明細書中に記載のガラス組成物は、イオン交換により化学的に強化することができる。例示的層深さおよび対応する圧縮応力が、
図1中にグラフで表わされている。同様に、比較を目的として、タイプ1bガラスについて得ることのできる層深さおよび圧縮応力も示されている。
図1に示されている通り、本明細書中に記載のガラス組成物は、タイプ1bガラスよりもはるかに大きい圧縮応力と層深さを達成するようにイオン交換されてもよい。
【0045】
さらに上記で指摘した通り、ガラス組成物は化学的耐久性を有し、かつDIN12116規格、ISO695規格およびISO720規格により決定される劣化に対する耐性を有する。
【0046】
具体的には、DIN12116規格は、酸性溶液中に入れられた場合のガラスの分解に対する耐性の尺度である。簡単に言うと、DIN12116規格は、公知の表面積の研磨済みガラス試料を使用し、それは計量されその後6時間比例する量の6Mの沸とう塩酸と接触状態に置かれる。試料はその後、溶液から取り出され、乾燥させられ、再び計量される。酸性溶液に対する曝露中に失われたガラス質量は、試料の酸耐久性の尺度であり、より小さい数はより大きい耐久性を表わす。試験結果は、表面積あたりの質量、具体的にはmg/dm
2の単位で報告される。DIN12116規格は個別のクラスに細分される。クラスS1は0.7mg/dm
2までの半重量損失を表し、クラスS2は、0.7mg/dm
2〜1.5mg/dm
2の半重量損失を表し、クラスS3は、1.5mg/dm
2〜15mg/dm
2の半重量損失を表し、クラスS4は、15mg/dm
2超の半重量損失を表わす。
【0047】
ISO695規格は、塩基性溶液中に入れられた場合のガラスの分解に対する耐性の尺度である。簡単に言うと、ISO695規格は、研磨済みガラス試料を使用し、それは計量されその後3時間沸とうする1MのNaOH+0.5MのNa
2CO
3中に置かれる。試料はその後、溶液から取り出され、乾燥させられ、再び計量される。塩基性溶液に対する曝露中に失われたガラス質量は、試料の塩基耐久性の尺度であり、より小さい数はより大きい耐久性を表わす。DIN12116の場合と同様、ISO695の結果は、表面積あたりの質量、具体的にはmg/dm
2の単位で報告される。ISO695規格は個別のクラスに細分される。クラスA1は75mg/dm
2までの重量損失を表し、クラスA2は、75mg/dm
2〜175mg/dm
2の重量損失を表し、クラスA3は、175mg/dm
2超の重量損失を表わす。
【0048】
ISO720規格は、精製水中での劣化に対するガラスの耐性の尺度である。簡単に言うと、ISO720規格プロトコルは、オートクレーブ条件(121℃、2atm)下で30分間18MΩ水と接触状態に置かれた粉砕ガラス粒を使用する。溶液はその後、中性pHになるまで希HClで比色滴定される。中性溶液に至るまで滴定するのに必要とされたHClの量は次に、ガラスから抽出されたNa
2O当量に変換され、ガラスのμg数単位で報告され、より小さい値がより高い耐久性を表わす。ISO720規格は、個別のタイプに細分される。タイプHGA1は、31μgまでの抽出されたNa
2O当量を表し、タイプHGA2は、31μg超で62μgまでの抽出されたNa
2O当量を表し、タイプHGA3は、62μg超で264μgまでの抽出されたNa
2O当量を表し、タイプHGA4は、264μg超で620μgまでの抽出されたNa
2O当量を表し、タイプHGA5は、620μg超で1085μgまでの抽出されたNa
2O当量を表わす。
【0049】
本明細書中に記載のガラス組成物は、DIN12116に準じた少なくともクラスS3の耐酸性を有し、一部の実施形態は、少なくともクラスS2、またはさらにはクラスS1の耐酸性を有する。さらに、本明細書中に記載のガラス組成物は、ISO695に準じた少なくともクラスA2の耐塩基性を有し、一部の実施形態は、クラスA1の耐塩基性を有する。本明細書中に記載のガラス組成物は同様に、DIN12116タイプHGA2の耐加水分解性も有しており、一部の実施形態は、タイプHGA1の耐加水分解性を有する。
【0050】
本明細書中に記載のガラス組成物は、ガラス原料(例えばSiO
2、Al
2O
3、アルカリ炭酸塩、アルカリ土類炭酸塩などの粉末)のバッチを、それが所望の組成を有するような形で混合することによって形成される。その後、ガラス原料のバッチは加熱されて溶融ガラス組成物を形成し、この溶融ガラス組成物はその後冷却され凝固されてガラス組成物を形成する。凝固中(すなわち、ガラス組成物が可塑変形可能である間に)、ガラス組成物は、それを所望の最終的形態に成形するため標準的な成形技術を用いて成形されてもよい。あるいは、ガラス物品をストック形態、例えばシート、管などに形成し、その後再加熱し、所望の最終的形態に成形してもよい。
【0051】
本明細書中に記載のガラス組成物は、例えばシート、管などのさまざまな形態に整形されてもよい。しかしながら、ガラス組成物の化学的耐久性のため、本明細書中に記載のガラス組成物は、液体、粉末などの医薬組成物を収納するための医薬品パッケージの形成において使用するために極めて好適である。例えば、本明細書中に記載のガラス組成物は、バイアル、アンプル、カートリッジ、シリンジ本体および/または医薬組成物を保管するための他の任意のガラス容器を形成するために使用されてもよい。その上、イオン交換を通してガラス組成物を化学的に強化できることを利用して、このような医薬品包装の機械的耐久性を改善することが可能である。したがって、少なくとも1実施形態において、ガラス組成物は医薬品包装の化学的耐久性および/または機械的耐久性を改善する目的で医薬品パッケージ内に取り込まれることを理解すべきである。
【実施例】
【0052】
本発明について以下の実施例によりさらに明確に説明する。
【0053】
下表1は、比較例1〜4および本発明による実施例A〜Cの組成物を含む。各組成物の軟化点、CTEおよび化学的耐久性も同様に列挙されている。具体的には、比較例1〜4はB
2O
3を含んでいた。化学的耐久性を改善させるためにガラス組成物からB
2O
3を除去すると、結果としてガラスの軟化点が対応して望ましくない形で上昇する。この傾向に対抗するため、B
2O
3をアルカリ酸化物、SiO
2、ZrO
2またはそれらの組合せで置換した。SiO
2およびZrO
2は、ガラスの化学的耐久性を改善する。アルカリ酸化物の添加は、ガラスの軟化点pfを80℃も低下させた。しかしながら、アルカリの添加は同様に、ISO720のタイプHAG1の分類になおも適合しながら、加水分解耐久性も減少させた。
【0054】
【表1】
【0055】
表2は、本発明による実施例D〜Jの組成および特性を示す。具体的には、本発明による実施例D〜Jの組成を使用して、ガラスの化学的耐久性ならびにイオン交換性能に対するアルカリ酸化物(Na
2O、K
2O、Li
2O)のさらなる添加の効能を査定した。表2に示されている通り、酸耐久性を維持するためにSiO
2含有量をわずかに増加させて、11.5モル%という高いアルカリ酸化物添加を検査した。これらのガラス組成物の軟化点は、アルカリ酸化物含有量の増大に起因して、870℃にまで低下した。さらに、酸、塩基または加水分解に対するこれらのガラス組成物の耐性のいずれも、アルカリレベルの上昇により不利な影響を受けず、全てのガラスがDIN12116分類でS2またはS3のいずれか、ISO695分類でA1そしてISO720分類でHGA1に入った。
【0056】
【表2】
【0057】
本発明による実施例E〜Jのイオン交換能も同様に調査した。具体的には、本発明による実施例E〜Jのガラス組成物の試料を、430℃、475℃および440℃の温度で15時間、100%KNO
3の溶融塩浴中でイオン交換した。その後、表面圧縮と層深さを決定した。試料の化学的耐久性も、イオン交換後に決定した。結果は、下表3に報告されている。
【0058】
表3は、ガラス組成物のイオン交換能が、組成物中のアルカリ酸化物の量に大きく左右されることを示している。5モル%〜6モル%のアルカリ酸化物レベルを有するガラス組成物中で、200〜350MPaの圧縮応力値が達成された。8.5モル%〜11.5モル%のアルカリ酸化物レベルを有するガラス組成物中で、700〜825MPaの圧縮応力値が達成された。実施例Hは、440℃で15時間イオン交換した後、48マイクロメートルの層深さで817MPaの圧縮応力を有し、この値は、市販のイオン交換された耐損傷ガラスに匹敵するものである。
【0059】
表3は同様に、より高い圧縮応力値を有するいくつかのガラスの酸耐久性を除いて、イオン交換処理が化学的耐久性に及ぼす効果は最小限であることも示している。これらの事例において、試験後に失われたガラス質量は、対応するイオン交換を受けていないガラス組成物に比べて20〜200倍増大した。理論による束縛は望まないものの、この結果は、イオン交換による実際の耐化学性の低下というよりもむしろ高い圧縮応力に起因する試験中のガラス縁部のチッピングの出現の結果である場合もある。
【0060】
【表3】
【0061】
表4は、中間量のアルカリ酸化物(すなわち約5モル%〜約10.5モル%)を伴うアルカリ土類アルミノケイ酸塩ガラス組成物の複数の本発明による実施例の組成および特性を含む。各試料は、DIN12116規格に準じて少なくともクラスS3の耐酸性を示した。各試料は同様に、ISO695規格に準じてクラスA1の耐塩基性を示した。ISO720規格についての試験データは入手不能であった。これらのガラス組成物の軟化点は、830〜940℃の範囲内であった。
【0062】
さらに、本発明による実施例K〜Rのガラス組成物は、350〜600MPaの範囲内の圧縮応力値と、最高約50μmの層深さを有していた。
【0063】
【表4】
【0064】
ここで、本明細書中に記載のガラス組成物が、イオン交換の後、化学的耐久性ならびに機械的耐久性を示すことも理解すべきである。これらの特性はガラス組成物を、非限定的に医薬品包装材料を含めたさまざまな利用分野で使用するために充分好適なものにする。
【0065】
当業者にとっては、請求対象の主題の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載の実施形態に対してさまざまな修正および変更を加えることができるということは明白である。したがって、本明細書は、その修正および変更が添付のクレームおよびその等価物の範囲内に入ることを条件として、本明細書中に記載のさまざまな実施形態の修正および変更を網羅するものであることが意図されている。