特許第6204930号(P6204930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーシティ オブ メリーランド,ボルチモアの特許一覧

特許6204930多価ワクチンによる黄色ブドウ球菌感染症からの保護
<>
  • 特許6204930-多価ワクチンによる黄色ブドウ球菌感染症からの保護 図000013
  • 特許6204930-多価ワクチンによる黄色ブドウ球菌感染症からの保護 図000014
  • 特許6204930-多価ワクチンによる黄色ブドウ球菌感染症からの保護 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6204930
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】多価ワクチンによる黄色ブドウ球菌感染症からの保護
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/085 20060101AFI20170914BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170914BHJP
   C07K 14/31 20060101ALI20170914BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
   A61K39/085ZNA
   A61P37/04
   A61P31/04
   A61K45/00
   C07K14/31
   !C12N15/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-561022(P2014-561022)
(86)(22)【出願日】2013年3月5日
(65)【公表番号】特表2015-510883(P2015-510883A)
(43)【公表日】2015年4月13日
(86)【国際出願番号】US2013029053
(87)【国際公開番号】WO2013134225
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2016年3月1日
(31)【優先権主張番号】61/606,750
(32)【優先日】2012年3月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511298990
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ メリーランド,ボルチモア
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャートリフ マーク
(72)【発明者】
【氏名】ハロ ジャネット
(72)【発明者】
【氏名】リード ジェフリー
【審査官】 菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0177111(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/113222(WO,A1)
【文献】 INFECTION AND IMMUNITY, 2011, Vol.79, No.4, p.1797-1803
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/085
A61K 45/00
A61P 31/04
A61P 37/04
C07K 14/31
C12N 15/09
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクチン配合物であって、
(a)以下の5種の黄色ブドウ球菌ポリペプチドと、
(i)配列番号13に記載の黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0037、又はその変異体であって、該変異体がその完全長ポリペプチドと少なくとも約95%の配列同一性を有する、
(ii)配列番号14に記載の黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0119、
(iii)配列番号15に記載の黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0486、又はその変異体であって、該変異体がその完全長ポリペプチドと少なくとも約95%の配列同一性を有する、
(iv)配列番号16に記載の黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0688、又はその変異体であって、該変異体がその完全長ポリペプチドと少なくとも約95%の配列同一性を有する、及び
(v)配列番号17に記載の黄色ブドウ球菌グルコサミニダーゼ、又はその変異体であって、該変異体がその完全長ポリペプチドと少なくとも約95%の配列同一性を有する、
(b)薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と、
を含む、ワクチン配合物。
【請求項2】
前記5種の黄色ブドウ球菌ポリペプチドの完全長バージョンを含む、請求項1に記載のワクチン配合物。
【請求項3】
ワクチン配合物であって、
(a)配列番号13に記載の黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0037、(ii)配列番号14に記載の黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0119、(iii)配列番号15に記載の黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0486、(iv)配列番号16に記載の黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0688、及び(v)配列番号17に記載の黄色ブドウ球菌グルコサミニダーゼと、
(b)薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と、
からなる、ワクチン配合物。
【請求項4】
免疫応答を生じさせるための請求項1〜のいずれか一項に記載のワクチン配合物。
【請求項5】
防御免疫応答を生じさせるための請求項1〜のいずれか一項に記載のワクチン配合物。
【請求項6】
黄色ブドウ球菌感染症を阻害するための請求項1〜のいずれか一項に記載のワクチン配合物。
【請求項7】
黄色ブドウ球菌感染症を治療するための請求項1〜のいずれか一項に記載のワクチン配合物。
【請求項8】
抗菌剤の投与と同時に、それに先だって又はその後に投与される、請求項又はに記載のワクチン配合物。
【請求項9】
前記抗菌剤がアミノグリコシド、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、グリコペプチド、マクロライド、モノバクタム、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、マクロビッド、プラテンシマイシン、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、リファンピン及びリファンピシンからなる群から選択される、請求項に記載のワクチン配合物。
【請求項10】
前記黄色ブドウ球菌感染症が黄色ブドウ球菌バイオフィルム感染症である、請求項のいずれか一項に記載のワクチン配合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオフィルム型及びプランクトン(浮遊)型の両方の細菌感染症を含む黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対して効果的な多価ワクチン配合物、並びに該配合物を被験体における黄色ブドウ球菌(S. aureus)感染症の治療及び予防に使用する方法に関する。
【0002】
[政府支援の陳述]
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された助成金番号AI069568による政府の支援を受けてなされたものである。合衆国政府は本発明における一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
米国の医療制度の最も一般的なコスト的な問題の1つは院内感染であり(26)、黄色ブドウ球菌がかかる感染の2番目に多い原因となっている(4)。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が全ての院内感染型黄色ブドウ球菌感染症の40%〜60%に関与し、現在、この耐性株が病院内に特有であるとみなされている(36)。市中感染型黄色ブドウ球菌株もメチシリン耐性を獲得する場合があり(CA−MRSA)、現代のかかる株の出現は多大な関心を集めている(24、31、64)。
【0004】
近年の研究から、黄色ブドウ球菌が歯科用インプラント感染症の主要なメディエーターでもあることが示されている(1、54)。黄色ブドウ球菌の異物関連感染への関与の増大、この生物による複数の抗生物質に対する耐性の急速な発現、並びにこの感染が急性感染から持続、慢性及び反復性の感染へと変化する傾向から、この生物は再び大きな注目を集めるようになった。
【0005】
歯科用インプラント感染症の治療は複雑なプロセスであり、多数のブドウ球菌の防御機構が、この難しさ及び黄色ブドウ球菌が宿主免疫応答による排除を回避する能力に関与し得る。黄色ブドウ球菌が宿主免疫応答を妨害し、持続感染へと進展するのに利用する最も重要な機構の1つは、高度に発達したバイオフィルムの形成によるものである。バイオフィルムは、細菌細胞が含水表面に付着し、多糖マトリックスに埋め込まれる微生物由来の群集として定義されている(13)。バイオフィルム中の細菌はその生育、遺伝子発現及びタンパク質産生における表現型の変化を示し(17)、補綴用医療機器が細菌付着、コロニー形成及びバイオフィルム形成の好適な培養基となるため、慢性感染部位であることが多い。歯科用インプラント感染における黄色ブドウ球菌によるバイオフィルム形成は、一つにはプランクトン型と比較した、バイオフィルム中の細菌の宿主防御(21)及び抗生物質(46、51)に対する耐性の劇的な増大のために、この細菌の根絶を極めて困難にする。
【0006】
以前のワクチン研究によって細菌多糖類、例えば多糖類莢膜、エキソ多糖類及びペプチドグリカン(10、20、38、41)、並びに組換えタンパク質サブユニットワクチン(2、8、9、27、29、30、33、57、65)の黄色ブドウ球菌感染症に対する有効性が評価されているが、いずれも実験動物モデルにおける黄色ブドウ球菌の完全な根絶を示しておらず(2、8、9、27、29、30、33、57、65)、又は厳しい第III相臨床試験を通過していない(56、59)。これまでに評価されている大抵のワクチンは黄色ブドウ球菌毒性因子の生物学的な冗長性、異なる生育様式(指数関数的生育対静止)又は感染タイプ(プランクトン型対バイオフィルム型)における差次的タンパク質発現、及び関連臨床分離株間の抗原保存の欠如を説明するものではない。実際に、緑膿菌エクソトキソイドAに結合する黄色ブドウ球菌の莢膜多糖5型(CP5)及び莢膜多糖8型(CP8)を用いて開発された多糖類ワクチン(StaphVAX)は、第III相臨床試験において1804人及び3600人の血液透析患者の2つの異なるコホートで黄色ブドウ球菌媒介性菌血症に対する保護をもたらすことができなかった(59)。この失敗に寄与する因子は無莢膜株の存在であり(分離株の75%〜80%を占めるCP5株及びCP8株)(12)、in vitroデータから推定される差次的発現が、莢膜多糖類の発現が静止型の生育及び内皮細胞に結合する黄色ブドウ球菌のCP5発現の非存在に限定されることを示す(48)。したがって、StaphVAXワクチンの有効性はプランクトン型感染に限定され、黄色ブドウ球菌バイオフィルムに対する体液性応答を標的とする際には効果がない。
【0007】
CP5/CP8ワクチンによる所見と同様に(20)、クランピング因子A(ClfA)(2、27)、クランピング因子B(ClfB)(57)、フィブロネクチン結合タンパク質(FnBP)(65)、α溶血素(9、29)、パントンバレンタイン型ロイコシジン(PVL)(8)及び鉄調節表面決定因子(IsdB)(30、33)に対して開発されたサブユニットワクチンは実験動物モデルにおける部分的保護を仲立ちする。これらのサブユニットワクチンは、候補タンパク質がin vivoで高度に免疫原性であり(25、33、57)、得られる抗体が黄色ブドウ球菌のオプソニン殺菌(opsonic killing)を促進する(65)にもかかわらず、完全な保護をもたらさなかった。これらのアプローチの欠陥の1つは、病原体に対する保護の促進が一価ワクチンに依存することであった。黄色ブドウ球菌は70個近くの毒性因子を有し、これらの因子間の機能的冗長性は或る因子を中和する効果を打ち消す可能性がある。ほぼ間違いなく、黄色ブドウ球菌は複数の鉄獲得系を発現する:受容体HtsA及びSirAに対するシデロフォアスタフィロフェリンA及びスタフィロフェリンB輸送トランスフェリン(14、43)、Fe3+ヒドロキサメートを輸送するABC輸送体Fhu(58)、並びにヘモグロビン/ハプトグロビン複合体と結合する鉄調節表面決定因子(Isd)B及びIsdH受容体(18、62)。したがってIsdB媒介性ヘモグロビン結合を阻止する抗IsdB抗体の全体的有効性は、鉄取込み及び生物病原性に対して僅かな効果でしかない可能性がある(30)。この議論の妥当性は、有望な免疫原性及び第二相試験によるオプソニン殺菌データ(25、52)にもかかわらず、完全な保護をもたらすことができなかったMerckのIsdBワクチン(V710)の第III相臨床試験の中止によって裏付けられる(16)。
【0008】
一価ワクチンの有効性は、感染過程での標的タンパク質の差次的発現によっても損なわれ得る。黄色ブドウ球菌は、フィブロネクチン結合タンパク質(FnBP)を含む微生物表面成分認識接着性マトリックス分子(MSCRAMM:Microbial Surface Components Recognizing Adhesive Matrix Molecule)と呼ばれるそのアドヘジンタンパク質を使って宿主の細胞外リガンドに結合することによってコロニー形成を開始し、これらの因子は大抵は固着細菌が細胞外多糖マトリックス又はバイオフィルムに被嚢される際に下方制御される(44、55)。したがって、MSCRAMMを標的とするように設計されたワクチンは、細菌がバイオフィルム表現型に移行した後は排除に効果がない。MSCRAMM FnBPワクチンの評価によって、それが敗血症のマウスモデルにおいて黄色ブドウ球菌に対する部分的保護をもたらすことが実証されたが、この研究では血液及び/又は腎臓中の細菌を計数し、細菌排除を検証することができなかった。黄色ブドウ球菌はFnBPに対する液性応答を妨害し、固着バイオフィルムを形成し、FnBPを下方制御し、完全に宿主応答に抵抗することができるようである。
【0009】
タンパク質冗長性、差次的タンパク質発現又は分離株特異的な遺伝的多様性に起因する一価ワクチンの不完全な保護を回避するワクチン戦略は、多価サブユニットワクチンを用いた多因子攻撃(multifactorial assault)の生成である。Stranger-Jones et al.は、表面露出タンパク質:鉄調節表面決定因子A(IsdA)、IsdB、及びセリンアスパラギン酸反復タンパク質D(SdrD)及びSdrEから構成される四価ワクチンが、各々の一価変異体によって得られる保護と比較して黄色ブドウ球菌媒介性致死的病原体接種に対する生存率を増大させることを実証した(61)。著者らは致死的病原体接種後の生存率を強調しているが、腎臓における黄色ブドウ球菌の計数及び感染後7日を超える生存率をデータ分析から省いている。これらの省略のために、完全な細菌排除を促進し、バイオフィルム形成による黄色ブドウ球菌の残留に起因する将来的な合併症を予防するワクチンの能力を結論付けることができない。総合すると、多価ワクチンは有効性が限定され、試験した5つの臨床黄色ブドウ球菌分離株のうち2つしか完全な保護をもたらさない(61)。加えて、複数の黄色ブドウ球菌ゲノムの比較分析から、SdrD及びSdrEを含む一部の表面タンパク質間の保存の喪失が見出され(39)、IsdA/IsdB/SdrD/SdrEワクチン配合物の有効性の限定は、Stranger-Jonesによって試験された臨床分離株よりも拡大し得ることが示される。
【0010】
ワクチン研究は、主に敗血症(20、27、33、38、41、61、65)又は肺炎(9)を試験することによってプランクトン型介在性感染症に対する保護に焦点を合わせるものであったが、幾つかの研究から、実験的心内膜炎(2)、皮膚(8、22、29)、又は膿瘍モデル(20、61)を用いたバイオフィルム感染に対する一般的なワクチン候補によって仲立ちされる保護が偶然に評価されている。以前の黄色ブドウ球菌ワクチン戦略から逸脱するものとして、Brady et al.は免疫原性であるバイオフィルムによって上方制御されるタンパク質の同定に焦点を合わせ(4)、多価バイオフィルムベースのワクチンがバンコマイシン処理と併用することで、抗生物質治療又は免疫応答によって従来排除が困難であったバイオフィルム感染症を根絶し得ることを立証した(5)。とりわけポリ−N−アセチル−β−1,6−グルコサミン(PNAG)から構成されるブドウ球菌性細胞間接着(PIA)に対するバイオフィルム表現型を標的とする以前の試み(38、40、41)は、細胞壁関連タンパク質に対する細菌を被包するバイオフィルムマトリックスに対するものであった。多糖PNAGワクチンは細菌数を低減する応答を誘発したが(40)、多糖は弱い免疫原であり、低いオプソニン殺菌活性を有する抗体を誘導する傾向がある。加えて、PNAG分子は細菌表面と弱く結合する傾向があり、アセチル化PNAG形態が懸濁液へと放出される(11)。PNAGワクチンの有効性を改善する試みにより、細胞表面上に保持され、ジフテリアトキソイドに結合し得るPNAGの脱アセチル化形態(dPNAG)、又は破傷風トキソイドに結合するβ−(1→6)−D−グルコサミン(GlcNH)の合成9量体が評価されたが、免疫原性の改善にかかわらず複数の黄色ブドウ球菌株に対する部分的保護が観察された(22、38)。PIAは、icaABDC遺伝子座にコードされる酵素によって生成するが(28)、icaABDC遺伝子座の存在はin vitroでのバイオフィルム形成に直接の相互関係はなく(32)、黄色ブドウ球菌のicaABDC遺伝子座は、バイオフィルム媒介性感染症として特定されるin vivo整形外科用プロテーゼ関連感染症及びカテーテル関連感染症の一部には不必要である(53)。黄色ブドウ球菌バイオフィルムに対するPNAGワクチンの有効性は更なる評価を必要とするが、臨床感染症から単離された一部の黄色ブドウ球菌株においてicaABDC遺伝子座が不必要であることから、PNAGワクチンが黄色ブドウ球菌バイオフィルム感染症に対して限定された保護をもたらし得ることが示唆される。
【0011】
ワクチン開発の別の問題は、宿主環境に応じて変化した結果を有し得る、宿主免疫系によって誘発される応答のタイプ及び免疫回避因子を用いて免疫メディエーターを妨げる病原体の能力である。in vitroで黄色ブドウ球菌又はその毒性因子、具体的にはブドウ球菌エンテロトキシンA又はエンテロトキシンB及びアルファトキシンに対して誘発される免疫応答は、炎症誘発性Th1応答である(3、7、15、42)。実際に、異なる遺伝的背景を有するマウスにおける黄色ブドウ球菌菌血症の結果の比較から、Th1バイアスC57BL/6Jマウスが抵抗性であり、Th2バイアスBALB/cマウスがこの急性型の黄色ブドウ球菌感染症の影響を受けやすいことが見出された(63)。対照的に、強いTh−1応答がC57BL/6Jマウスにおいて黄色ブドウ球菌インプラント感染症に対して誘発されたが、このマウスは感受性であり、感染の49日後に10CFU/脛骨で慢性感染症を発症した(45)。黄色ブドウ球菌バイオフィルムは、黄色ブドウ球菌が定着する失活部位を生じる感染症部位で宿主組織を損傷する炎症誘発性応答が困難であるようである。その後の評価により、Th−2バイアスBALB/cマウスが黄色ブドウ球菌インプラント感染症に抵抗性を示し、インターロイキン−4の消耗又はTreg細胞の枯渇がBALB/cマウスにおいて黄色ブドウ球菌に対する保護を抑止することが見出された(46)。細菌感染症に対するTh2介在性耐性が黄色ブドウ球菌による皮下感染についても明らかとなり、BALB/cマウスと比較してより高い細菌負荷がC57BL/6Jマウスにおいて観察された(45)。C57BL/6JマウスにおけるCXCL−2発現の増大は皮下感染に対する感受性と相関し(45)、黄色ブドウ球菌の流入及び内部移行後に多形核好中球(PMN)の殺菌活性を停止させ得る(23)。急性感染(敗血症)に対して慢性感染(インプラント又は皮下)で観察されたこの黄色ブドウ球菌に対する差次的免疫応答から、マウス系統の選択がワクチン研究の結果に影響を与える可能性があることが示される。ほとんどのワクチン研究は、BALB/cマウスで開発された実験モデルを用いて黄色ブドウ球菌に対する保護を試験しているが(2、8、33、61、65)、幾つかの研究でC57BL/6Jマウスにおけるワクチンの有効性が評価されている(9、29)。黄色ブドウ球菌ワクチンを評価するBALB/c実験モデルを重要視することにより、急性感染又はプランクトン型感染に対する有効性の洞察を得ることができるが、これらのモデルは慢性のバイオフィルム感染の不十分な評価因子であり、ヒトにおける免疫応答バイアスを示すものではない。
【0012】
付加的なワクチン配合物を、黄色ブドウ球菌感染症の治療及び/又は予防に使用される有利な手段に付加する。
【発明の概要】
【0013】
黄色ブドウ球菌は主要なヒト病原体として再浮上しており、現在のところ黄色ブドウ球菌感染症に対して一貫した長期の保護をもたらすワクチンは存在しない。感染、特にMRSA感染は多くの場合、院内から生じるが、この微生物種と関連する市中感染は流行病のレベルに達している。黄色ブドウ球菌が宿主内に残留し、免疫系又は抗菌剤による排除が困難なままとなり得る形態の1つは、バイオフィルム型の生育によるものである。したがって、黄色ブドウ球菌によるバイオフィルム媒介性慢性感染症の確立を予防し得る効果的なワクチン及び/又は治療モダリティーが必要とされている。
【0014】
本発明は、多成分ワクチンを単独で又は後続の抗菌剤療法と組み合わせて使用することによるバイオフィルム関連黄色ブドウ球菌感染症に対する保護を実証するものである。完全な保護が、黄色ブドウ球菌の100%の排除としてバイオフィルム型及びプランクトン型に特異的な五価ワクチンを用いたマウス脛骨インプラントモデルにおいて実証された。
【0015】
本発明のワクチン配合物は、黄色ブドウ球菌バイオフィルム感染症の危険因子が特定された人に相当有望である。黄色ブドウ球菌感染症にかかった患者であっても、抗バイオフィルムワクチンは、これらの以前では治療不可能な感染症を外科的処置の必要なしに停止又は治癒させることが可能であり得る。したがって、本発明は、慢性疾患の発現の予防に役立ち得る黄色ブドウ球菌バイオフィルム感染症を制限及び根絶する新たな手段を提供し、患者を相当の罹患率及び死亡率から救うものである。
【0016】
本発明は、ワクチン配合物の以下の実施の形態に関する。
【0017】
第1の実施の形態では、本発明は、ワクチン配合物であって、黄色ブドウ球菌株の5種の異なるポリペプチド(黄色ブドウ球菌株の第1、第2、第3、第4及び第5のポリペプチド)、又はその一部分、又はその変異体、又はそれらの組合せと、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む、ワクチン配合物に関する。黄色ブドウ球菌株は黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性株又はメチシリン感受性株であり得る。
【0018】
一態様では、黄色ブドウ球菌ポリペプチドの少なくとも1つがプランクトン型の細菌によって発現されるポリペプチドであり、黄色ブドウ球菌ポリペプチドの少なくとも1つがバイオフィルム型の細菌によって発現されるポリペプチドである。関連の態様では、黄色ブドウ球菌ポリペプチドのうち1つがプランクトン型の細菌によって発現されるポリペプチドであり、黄色ブドウ球菌ポリペプチドのうち4つがバイオフィルム型の細菌によって発現されるポリペプチドである。
【0019】
別の態様では、第1、第2、第3、第4及び第5のポリペプチドは、配列番号13に記載の黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0037、配列番号14に記載の黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0119、配列番号15に記載の黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0486、配列番号16に記載の黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0688、及び配列番号17に記載の黄色ブドウ球菌グルコサミニダーゼである。
【0020】
更なる態様では、ワクチン配合物は1つ又は複数の黄色ブドウ球菌ポリペプチドの1つ又は複数の部分を含み、該部分が個別に完全長ポリペプチドの少なくとも約20連続アミノ酸を含む。同じ態様では、ワクチン配合物は、1つ又は複数の黄色ブドウ球菌ポリペプチド又はその一部分の1つ又は複数の変異体を含み、該変異体が個別に黄色ブドウ球菌ポリペプチド又はその一部分と少なくとも約95%の同一性を有する。
【0021】
特定の態様では、本発明は、黄色ブドウ球菌株の5種の異なる完全長ポリペプチドを含むワクチン配合物に関する。一例では、5種のポリペプチドは、配列番号13に記載の黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0037、配列番号14に記載の黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0119、配列番号15に記載の黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0486、配列番号16に記載の黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0688、及び配列番号17に記載の黄色ブドウ球菌グルコサミニダーゼである。
【0022】
本発明は、本発明のワクチン配合物を使用する方法の以下の実施の形態にも関する。したがって、第2の実施の形態では、本発明は、被験体において免疫応答を生じさせる方法であって、被験体において免疫応答を生じさせるために免疫学的に有効な量の本発明のワクチン配合物を被験体に投与することを含む、方法に関する。一態様では、免疫応答は防御免疫応答である。
【0023】
第3の実施の形態では、本発明は、被験体において黄色ブドウ球菌感染症を治療する方法であって、被験体において黄色ブドウ球菌感染症を治療するために、治療的に有効な量の本発明のワクチン配合物を、黄色ブドウ球菌感染症を有する被験体に投与することを含む、方法に関する。
【0024】
第4の実施の形態では、本発明は、被験体において黄色ブドウ球菌感染症を阻害する方法であって、被験体において黄色ブドウ球菌感染症を阻害するために、治療的に有効な量の本発明のワクチン配合物を、黄色ブドウ球菌感染症を発症するリスクを有する被験体に投与することを含む、方法に関する。
【0025】
関連の実施の形態では、黄色ブドウ球菌感染症を治療又は阻害する方法は、1つ又は複数の抗菌剤を、黄色ブドウ球菌感染症を有するか又は黄色ブドウ球菌感染症を発症するリスクを有する被験体に投与し、該抗菌剤をワクチン配合物に先だって、それと同時、又はその後に投与ことを更に含んでいてもよい。これらの実施の形態において、抗菌剤(複数の場合もあり)は、アミノグリコシド、例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン又はパロモマイシン;カルバセフェム、例えば、ロラカルベフ;カルバペネム、例えば、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン又はメロペネム;セファロスポリン、例えば、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン、セファクロル、セファマンドール、セホキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム又はセフトビプロール;グリコペプチド、例えば、テイコプラニン又はバンコマイシン;マクロライド、例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、エリスロペド、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン又はスペクチノマイシン;モノバクタム、例えば、アズトレオナム;ペニシリン、例えば、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン又はチカルシリン;ポリペプチド、例えば、バシトラシン、コリスチン又はポリミキシンB;キノロン、例えば、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン又はトロバフロキサシン;スルホンアミド、例えば、マフェニド、プロントジル(初期型)、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルアミド(初期型)、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリム又はトリメトプリム−スルファメトキサゾール(コトリモキサゾール)(TMP−SMX);テトラサイクリン、例えば、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン又はテトラサイクリン;及びクロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、マクロビッド、プラテンシマイシン、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、リファンピン又はリファンピシンを含む群から選択され得るが、これらに限定されない。
【0026】
治療及び阻害の方法に関する実施の形態において、黄色ブドウ球菌感染症は、例えば、黄色ブドウ球菌バイオフィルム感染症、プランクトン型黄色ブドウ球菌感染症、黄色ブドウ球菌骨髄炎感染症、バイオフィルム関連黄色ブドウ球菌骨髄炎感染症、黄色ブドウ球菌留置医療機器感染症、黄色ブドウ球菌心内膜炎感染症、黄色ブドウ球菌糖尿病性創傷又は潰瘍感染症、黄色ブドウ球菌慢性副鼻腔炎感染症、黄色ブドウ球菌人工呼吸器関連肺炎感染症、黄色ブドウ球菌静脈内カテーテル関連感染症、黄色ブドウ球菌皮膚感染症、黄色ブドウ球菌壊死性筋膜炎、黄色ブドウ球菌角膜炎、黄色ブドウ球菌眼内炎、黄色ブドウ球菌膿気胸、黄色ブドウ球菌膿胸及び黄色ブドウ球菌敗血症の1つ又は複数を含む、任意の被験体の黄色ブドウ球菌感染症であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】(A)抗菌療法が困難な慢性のバイオフィルム介在性感染症の発症。経時的なCFU/g(骨)は慢性感染症の発症を示す。感染マウス及び非感染マウスの脛骨を感染後4日、7日、14日、21日、28日及び49日に切除した。CFUは非感染マウスでは見られなかった。骨ホモジネートの段階希釈物を血液寒天プレートにプレーティングした。CFU/g(骨)を算出し、時間に対してプロットした(n=1群当たり5匹〜8匹のマウス、実験は3回行った、はフィッシャーの正確確率検定により対照と比較してp<0.05を表す)。バーはSDを表す。(B〜D)(B)移植21日後に取り出された非感染ピン、並びに(C)移植7日後及び(D)移植21日後に取り出された黄色ブドウ球菌を感染させたピンの共焦点レーザー顕微鏡画像。ピンをFITC標識PNA−FISHプローブを用いて標識した。バイオフィルム形成は感染マウスから取り出されたピンで明らかである。
図2】黄色ブドウ球菌骨髄炎バイオフィルム感染症のウサギモデルにおける四価ワクチンでのワクチン接種及び補助バンコマイシン処理。(A)PBSのみ(1)、PBS及びその後のバンコマイシン処理(2)、四価ワクチンのみ(3)、又はワクチン+バンコマイシン(4)によってワクチン接種した動物。CFU/g(骨)の平均±SEMを各群について示す。=群1のPBS対照との有意差(P<0.05、スチューデントt検定)。(B)感染が完全に排除された各群の動物。=群1のPBS対照との有意差(P<0.05、フィッシャーの正確確率検定)。
図3】黄色ブドウ球菌インプラント感染症のマウスモデルにおける四価バイオフィルムワクチン、プランクトン型ワクチン又は五価二重表現型ワクチンでのワクチン接種。対照マウスは処理を行わないか(カラム1)又はアラム単独によりワクチン未接種とした(カラム2)。実験用マウスにバイオフィルム指向性四価ワクチン(カラム3)、プランクトン型特異的な一価ワクチン(SA0119;カラム4)、又は五価ワクチンにおける抗原の組合せ(カラム5)を与えた。
【発明を実施するための形態】
【0028】
バイオフィルムに包埋された細菌は、自由浮動性のプランクトン型と比較して著しく異なる表現型特性及び抗原特性を有する。これらの差異は、両タイプの細菌感染症の治療及び予防に使用されるワクチン配合物を設計する際に大変な課題となっている。バイオフィルム生育の個々の段階(初期の付着段階から成熟段階及び完全に成熟した段階まで)は、バイオフィルムとプランクトン型細菌との違いよりも互いに抗原的に異なることが示されている(66)。
【0029】
許容可能なワクチン候補への広範な研究によって、本発明者らは、バイオフィルム及びプランクトン型の生育において独特に発現/生成される遺伝子をプロテオミクス技法及びトランスクリプトミクス技法により同定した。特に、本発明者らは、全てのバイオフィルム段階において上方制御された持続発現を有する細胞壁抗原及び全てのプランクトン型生育段階において上方制御された持続発現を有する細胞壁抗原を見出すために、バイオフィルム生育の複数の段階(初期の付着段階から成熟段階及び完全に成熟した段階まで)とプランクトン型生育の複数の段階(初期対数増殖期、後期対数増殖期、静止期及び静止後期)とを比較する必要があることを見出した。膜上又は細胞壁上で発現されるバイオフィルム抗原及びプランクトン型抗原を多価ワクチンへと組み合わせることによって、特定の微生物種による微生物学的病原体接種に対する宿主の保護を誘発することができる。この保護は、宿主中の細菌が感染症においてプランクトン型及びバイオフィルム型の生育という抗原的に異なる型で存在するために促進することができ、結果として、両方の表現型に対する二重免疫応答を宿主において生成する必要がある。
【0030】
本発明のワクチン配合物は、脱離した自由浮動性の細菌集団とバイオフィルム型の感染を生じる細菌との両方を排除する宿主免疫応答を抗原刺激する際に効果的な抗原を含む。この作用は、同じ微生物によって引き起こされる異なるタイプの感染におけるタンパク質発現の差異を認識及び克服し、細菌集団の顕著な低減だけでなく黄色ブドウ球菌動物の感染モデルにおける完全な排除を(実施例に示されるように)実証するのに最も重要である。
【0031】
上記及び本明細書中で論考されるように、本発明は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)及びメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)を含む黄色ブドウ球菌に対して効果的なワクチン配合物、並びに被験体における黄色ブドウ球菌感染症の治療及び予防にワクチンを使用する方法に関する。
【0032】
I.ワクチン成分−タンパク質
本発明のワクチン配合物は、黄色ブドウ球菌株の5種の異なるポリペプチドの各々の少なくとも一部分と、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む。ワクチン配合物は、プランクトン型の細菌によって発現される少なくとも1つの黄色ブドウ球菌ポリペプチドと、バイオフィルム型の細菌によって発現される少なくとも1つの黄色ブドウ球菌ポリペプチドとを含むことを特徴とする。このため、本発明のワクチン配合物は、プランクトン型の細菌によって発現される1種、2種、3種又は4種の黄色ブドウ球菌ポリペプチドと、バイオフィルム型の細菌によって発現される1種、2種、3種又は4種の黄色ブドウ球菌ポリペプチドとを含み得る。一態様では、ワクチン配合物は、プランクトン型の細菌によって発現される1種の黄色ブドウ球菌ポリペプチドと、バイオフィルム型の細菌によって発現される4種の黄色ブドウ球菌ポリペプチドとを含む。
【0033】
本発明のワクチン配合物に含めることができる種々の黄色ブドウ球菌タンパク質の同一性、数及びサイズが変わり得ることが当業者には理解される。例えば、配合物は完全長バージョンのポリペプチドのみを含み得る。代替的に、配合物は完全長ポリペプチドの一部分のみを含み得る。代替的には、配合物は一部分及び完全長ポリペプチドの組合せを含み得る。さらに、組合せは同じ黄色ブドウ球菌ポリペプチドの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ又はそれ以上の異なる部分を、他のポリペプチドの1つ又は複数の部分及び/又は完全長ポリペプチド、及び/又は同じポリペプチドの一部分及び完全長バージョンの両方と組み合わせて有する配合物を含む。ただし、各々の配合物は、黄色ブドウ球菌株の5種の異なるポリペプチドの各々の少なくとも一部分を含む。
【0034】
本発明のワクチン配合物に含まれるプランクトン型及びバイオフィルム型で発現されるポリペプチドの同一性は特に限定されないが、各々黄色ブドウ球菌株に由来するポリペプチドである。しかしながら、ワクチン配合物の主要な目的はワクチン配合物を受ける被験体の免疫系を刺激及び活性化することであるため、細菌の表面に露出するポリペプチドの使用が特に好ましい。例えば、ポリペプチドは黄色ブドウ球菌の細胞壁ポリペプチド及び細胞壁関連ポリペプチドであり得る。かかるポリペプチドの例としては、黄色ブドウ球菌ポリペプチドSA0037(配列番号13)、SA0119(配列番号14)、SA0486(配列番号15)、SA0688(配列番号16)及びグルコサミニダーゼ(配列番号17)が挙げられる。
【0035】
本発明のワクチン配合物に使用することができる付加的な黄色ブドウ球菌ポリペプチドは、表1のポリペプチドを含む。
【0036】
【表1】
【0037】
ポリペプチドの一部分(複数の場合もあり)のみをワクチン配合物に使用する場合、ペプチドのサイズは、ワクチンを投与する被験体の免疫系に認識される得ることのみによって限定される。一般的には、配合物に含まれるペプチドは、完全長タンパク質の約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25又はそれ以上の連続アミノ酸であるものとする。ペプチドの好ましいサイズは、約20アミノ酸〜3000アミノ酸長、より好ましくは約40アミノ酸〜1500アミノ酸長、更により好ましくは約150アミノ酸〜1300アミノ酸長である。他の態様では、ペプチドは完全長タンパク質のサイズの5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%であり得る。
【0038】
上記で示したように、本発明の配合物に使用するポリペプチド及びその一部分は黄色ブドウ球菌株に由来する。使用され得る種々の黄色ブドウ球菌株については限定されない。ほんの一例として、医学的に重要な黄色ブドウ球菌株、例えばメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(市中感染型株又は院内感染型株)及びメチシリン感受性黄色ブドウ球菌を、本発明のワクチン配合物を構成するのに使用することができる。したがって、本発明のワクチン配合物は、本明細書中で規定され、全長にわたって黄色ブドウ球菌ポリペプチド及びその一部分に対して少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する黄色ブドウ球菌ポリペプチド及びその一部分の変異体の使用を含む。配列同一性は、2つのペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列をアラインメントし、アラインメントの全長にわたるアミノ酸差異の数を算出することによって決定される。米国国立バイオテクノロジー情報センターのウェブサイトを含む多数の市販の配列操作プログラムがかかる算出を行うのに使用されることが当業者には理解される。
【0039】
ワクチン配合物に使用されるポリペプチド、その一部分及び変異体(「タンパク質」と総称される)は、多くの十分に確立された当該技術分野で既知の手段のいずれかによって得ることができる。タンパク質が、対応する黄色ブドウ球菌株によって生じるような天然のポリペプチドのグリコシル化を有していても、又はかかるグリコシル化を欠いていても、又は変化したグリコシル化を有していてもよいことが当業者には理解される。
【0040】
II.ワクチン成分−担体及び添加剤
ワクチン配合物に含まれる薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は添加剤は、配合物中のタンパク質の同一性、配合物の投与に使用する手段、投与部位及び使用する投与計画によって変化する。担体及び希釈剤の好適な例は当業者に既知であり、注射用水、生理食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、プロピレングリコール、ポリソルベート80(Tween−80(商標))、ポリ(エチレン)グリコール300及びポリ(エチレン)グリコール400(PEG300及びPEG400)、PEG化ヒマシ油(例えばCremophor EL)、poloxamer 407及びpoloxamer 188、親水性及び疎水性の担体、並びにそれらの組合せが挙げられる。疎水性の担体としては、例えば脂肪エマルション、脂質、PEG化リン脂質、ポリマーマトリックス、生体適合性ポリマー、リポスフィア、ベシクル、粒子及びリポソームが挙げられる。この用語は特に細胞培養培地を除外するものである。付加的な担体としては、コーンスターチ、ゼラチン、ラクトース、スクロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、リン酸二カルシウム、塩化ナトリウム、アルギン酸、クロスカルメロースナトリウム及びデンプングリコール酸ナトリウムが挙げられる。
【0041】
配合物に含まれる添加剤は、例えばワクチン配合物の性質及び投与形態に応じて種々の目的を有する。一般に使用される添加剤の例としては、安定剤、可溶化剤及び界面活性剤、緩衝剤、酸化防止剤及び保存料、等張化剤、増量剤、潤滑剤、乳化剤、懸濁化剤又は粘性剤、不活性希釈剤、充填剤、崩壊剤、結合剤、湿潤剤、潤滑剤、抗菌剤、キレート剤、甘味料、芳香剤、着香料、着色料、投与助剤並びにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
具体的な例としては、注射用水、0.9%生理食塩水又は5%グルコース溶液等の薬学的に許容可能な希釈剤中で筋肉内調製物を調製し、投与することができる。
【0043】
本発明の一実施形態では、ワクチン配合物は吸入による送達用の噴霧分散液として存在する。ワクチン配合物の噴霧分散液は典型的には、当業者に既知の緩衝食塩水及び/又は他の化合物等の噴霧分散液又はエアロゾル化分散液に一般的な担体を含有する。吸入によるワクチン配合物の送達は、ワクチン配合物が広範囲の粘膜組織に急速に分散し、循環血液に急速に吸収されるという効果を有する。噴霧分散液を調製する方法の一例は、「向上した分散性を有する粉末型薬理組成物(Powdered Pharmaceutical Formulations Having Improved Dispersibility)」と題された米国特許第6,187,344号(その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載されている。
【0044】
更に、ワクチン及びワクチン配合物は液体形態で投与してもよい。液体は経口投薬、滴剤としての点眼投薬若しくは経鼻投薬用であっても、又は浣腸剤若しくは潅注液として使用されるものであってもよい。ワクチン配合物は液体として配合され、液体はワクチン配合物の溶液又は懸濁液であり得る。使用目的に応じて当業者に既知のワクチン配合物の溶液又は懸濁液用の様々な好適な配合物が存在する。水又は他の水性媒体中で調製される経口投与用の液体配合物は、メチルセルロース、アルギン酸塩、トラガカント、ペクチン、ケルギン(kelgin)、カラギーナン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン及びポリビニルアルコール等の様々な懸濁化剤を含有し得る。液体配合物は、活性化合物(複数の場合もあり)とともに湿潤剤、甘味料、並びに着色料及び香味剤を含有する溶液、エマルション、シロップ及びエリキシルを含み得る。様々な液体配合物及び粉末配合物を、治療対象の哺乳動物の肺への吸入のための従来の方法によって調製することができる。
【0045】
本発明のワクチン配合物はアジュバントも含んでいてもよい。好適なアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント及び不完全フロイントアジュバント、Titermax、水中油型アジュバント、並びに抗原、通常はタンパク質を水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウムの水和不溶性塩で物理的に沈殿させたアルミニウム化合物が挙げられる。他のアジュバントとしては、ワクチン候補を含有し、それを急速分解から保護する水性コンパートメントを形成し、持続放出のデポー効果をもたらすリン脂質二重層を有する球状物を含むリポソーム型アジュバントが挙げられる。表面活性剤をアジュバントとして使用してもよく、グラム陽性生物のリポタイコ酸、リピドA及びTDMが挙げられる。Quil A及びQS−21(サポニン型アジュバント)、モノホスホリルリピドA及び脂溶性MDP誘導体が、その表面活性特性が生じる親水性及び疎水性のドメインを有する好適なアジュバントである。ビタミンA及びビタミンE、並びにリゾレシチン等の通常体内に見られる化合物を表面活性剤として使用することもできる。他の種類のアジュバントとしては、グリカン類似体、コエンザイムQ、アムホテリシンB、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)、レバミゾール及びベンズイミダゾール化合物が挙げられる。表面活性剤によってもたらされる免疫賦活は、コレラ毒素、外毒素A、又は大腸菌(E. coli)に由来する易熱性毒素の非活性部分を有する融合タンパク質を生じさせることによっても達成することができる。抗IL−17、抗IFN−γ、抗IL−12、IL−2、IL−10又はIL−4の使用による免疫賦活を用いて、ワクチン配合物に対する強いTh2又は抗体媒介応答を促進することもできる。
【0046】
III.免疫応答を生成する方法
本発明は、被験体において本発明のワクチン配合物に対する免疫応答を生成する方法にも関する。一実施形態では、本発明は、被験体において免疫応答を生じさせる方法であって、被験体において免疫応答を生じさせるために、免疫学的に有効な量の本発明のワクチン配合物を被験体に投与することを含む、方法に関する。本発明の免疫応答を生じさせる方法の各々において、免疫応答は好ましくは防御免疫応答である。
【0047】
ワクチン配合物の「免疫学的に有効な量」は、ワクチン配合物を投与した被験体においてワクチン成分に対する免疫応答を誘導するのに十分な量である。「防御免疫応答」は、ワクチン配合物を投与した被験体に黄色ブドウ球菌に対する防御免疫を与える免疫応答である。防御免疫は部分的又は完全な免疫であり得る。
【0048】
IV.治療及び予防の方法
本発明は、本発明のワクチン配合物を用いて被験体において黄色ブドウ球菌感染症を治療する方法にも関する。一実施形態では、本発明は、被験体において黄色ブドウ球菌感染症を治療する方法であって、被験体において黄色ブドウ球菌感染症を治療するために、治療的に有効な量の本発明のワクチン配合物を、黄色ブドウ球菌感染症を有する被験体に投与することを含む、方法に関する。或る特定の態様では、この方法は、ワクチン配合物の投与と併せて黄色ブドウ球菌感染症を有する被験体に抗菌剤を投与することを更に含む。
【0049】
本発明のワクチン配合物は、被験体において黄色ブドウ球菌感染症を阻害する方法に使用することもできる。かかる方法は、被験体において黄色ブドウ球菌感染症を阻害するために、治療的に有効な量の本発明のワクチン配合物を、黄色ブドウ球菌感染症を発症するリスクを有する被験体に投与することを含む。或る特定の態様では、この方法は、ワクチン配合物の投与と併せて黄色ブドウ球菌感染症を発症するリスクを有する被験体に抗菌剤を投与することを更に含む。
【0050】
ワクチン配合物の「治療的に有効な量」は、ワクチン配合物を投与した被験体において黄色ブドウ球菌感染症の症状の少なくとも幾らかの軽減をもたらすのに十分な量、又はこの方法の目的を達成するのに十分な量である。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「治療する(treating)」及び「治療(treatment)」という用語は、その通常及び慣例の意味を有し、被験体における黄色ブドウ球菌の生育の停止、減少又は阻害としての被験体における黄色ブドウ球菌感染症の症状の改善、被験体における黄色ブドウ球菌感染症の症状の再発の阻止又は改善、被験体における黄色ブドウ球菌感染症の症状のような重症度及び/又は頻度の減少の1つ又は複数を含む。治療とは、本発明のワクチン配合物を投与しなかった(付加的な抗菌剤の投与の有無を問わない)被験体に対して約1%〜約100%改善、阻止、低減、減少又は阻害することを意味する。改善、阻止、低減、減少又は阻害は100%、99%、98%、97%、96%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%又は1%であるのが好ましい。治療は感染症の臨床症状の出現に先だって、それと同時又はその後に開始することができる。治療の結果は、黄色ブドウ球菌感染症が被験体から完全に排除されるような永続的なものであっても、又は数日間(例えば1日、2日、3日、4日、5日、6日又は7日)、数週間(例えば1週間、2週間、3週間又は4週間)若しくは数ヶ月間(例えば1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月又はそれ以上)にわたるものであってもよい。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「阻害する(inhibit)」、「阻害する(inhibiting)」及び「阻害(inhibition)」という用語はその通常及び慣例の意味を有し、黄色ブドウ球菌のコロニー形成の阻害、黄色ブドウ球菌(プランクトン型及びバイオフィルム型を含む全ての形態)の生育の阻害、及び黄色ブドウ球菌の増殖の阻害の1つ又は複数を含む。かかる阻害は、本発明のワクチン配合物を投与しなかった(付加的な抗菌剤の投与の有無を問わない)被験体に対して約1%〜約100%の阻害である。阻害は100%、99%、98%、97%、96%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%又は1%の阻害であるのが好ましい。本明細書中で使用される場合、阻害は投与計画の完了まで少なくとも数日間、数週間、数ヶ月間又は数年間持続する。阻害は被験体の生涯にわたるのが好ましい。
【0053】
黄色ブドウ球菌感染症を治療又は阻害する方法は、1つ又は複数の抗菌剤を、黄色ブドウ球菌感染症を有する被験体又は黄色ブドウ球菌感染症を発症するリスクを有する被験体に投与することを更に含み得る。抗菌剤が本発明の方法に含まれる場合、抗菌剤はワクチン配合物を被験体に投与することに先だって、それと同時又はその後に投与することができる。抗菌剤をワクチン配合物に先だって又は後に投与する場合、抗菌剤及びワクチン配合物を投与する間隔は、数時間(例えば6時間、12時間、18時間又は24時間)、数日間(例えば1日、2日、3日、4日、5日、6日又は7日)、数週間(例えば1週間、2週間、3週間又は4週間)又は数ヶ月間(例えば1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月又はそれ以上)であり得る。抗菌剤は、黄色ブドウ球菌感染症の治療に有効ないずれの抗菌剤でもよく、例としては、アミノグリコシド、例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン又はパロモマイシン;カルバセフェム、例えば、ロラカルベフ;カルバペネム、例えば、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン又はメロペネム;セファロスポリン、例えば、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン、セファクロル、セファマンドール、セホキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム又はセフトビプロール;グリコペプチド、例えば、テイコプラニン又はバンコマイシン;マクロライド、例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、エリスロペド、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン又はスペクチノマイシン;モノバクタム、例えば、アズトレオナム;ペニシリン、例えば、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン又はチカルシリン;ポリペプチド、例えば、バシトラシン、コリスチン又はポリミキシンB;キノロン、例えば、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン又はトロバフロキサシン;スルホンアミド、例えば、マフェニド、プロントジル(初期型)、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニルアミド(初期型)、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリム又はトリメトプリム−スルファメトキサゾール(コトリモキサゾール)(TMP−SMX);テトラサイクリン、例えば、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン又はテトラサイクリン;及びクロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、マクロビッド、プラテンシマイシン、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、リファンピン又はリファンピシンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0054】
本発明の方法の各々において、ワクチン配合物は薬学的に許容可能な形態及び実質的に非毒性量で投与される。ワクチン配合物は、考慮すべき因子のほんの数例を挙げると、配合物の特定の用途(例えば、黄色ブドウ球菌に接触する前又は接触後の被験体への投与)、被験体の年齢及び体格、並びに被験体の全身状態に応じて、種々の投与スケジュールを用いて被験体に投与することができる。一般的に、ワクチン配合物は投与スケジュールの全体にわたって1回又は2回、3回、4回、5回、6回又はそれ以上投与することができる。投与計画における各々の投与間の時間は数時間、6時間、12時間若しくは18時間、又は1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、30日又はそれ以上の範囲であり得る。同量の配合物中のタンパク質を投与スケジュールの各投与で投与しても、又は各投与の量を変化させてもよい。配合物中の特定のペプチド及びポリペプチドの同一性は投与計画の各投与で変化させてもよく、又は同じままであってもよい。
【0055】
本発明の方法を実施する場合の1回用量中の被験体に投与するタンパク質の量は、考慮すべき因子のほんの数例を挙げると、実施する特定の方法(例えば、黄色ブドウ球菌感染症の予防対治療)、投与の手段及び配合物、被験体の年齢及び体格、並びに被験体の全身状態に基づいて変動しうる。しかしながら、一般的に、1回用量中の被験体に投与する黄色ブドウ球菌タンパク質の量は、被験体においてワクチンの成分に対する免疫応答を誘導又は増進するのに十分である。例えば、ワクチン配合物は、ワクチン配合物の用量を投与する被験体の体重1kg当たり約1ug〜約1000ug、より好ましくは約10ug〜約200ug、更により好ましくは約15ug〜約100ugの全黄色ブドウ球菌タンパク質を含有し得る。
【0056】
適切な用量及び投与スケジュールは、過度の実験を行うことなく当業者に既知の技法によって容易に決定することができる。かかる決定は特定の用量の耐容性及び有効性に一部基づく。
【0057】
ワクチン配合物の投与は、ワクチン送達の技術分野で一般に知られる手段のいずれかによって行われ得る。かかる経路としては、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下及び皮内の投与経路、並びに吸入による経鼻適用、経眼的、経口的、経直腸的、経膣的、又はワクチン配合物と粘膜組織との接触をもたらす任意の他の方法が挙げられる。
【0058】
本明細書中で使用される場合、黄色ブドウ球菌感染症は、例えば、黄色ブドウ球菌バイオフィルム感染症、プランクトン型黄色ブドウ球菌感染症、黄色ブドウ球菌骨髄炎感染症、バイオフィルム関連黄色ブドウ球菌骨髄炎感染症、黄色ブドウ球菌留置医療機器感染症、黄色ブドウ球菌心内膜炎感染症、黄色ブドウ球菌糖尿病性創傷又は潰瘍感染症、黄色ブドウ球菌慢性副鼻腔炎感染症、黄色ブドウ球菌人工呼吸器関連肺炎感染症、黄色ブドウ球菌静脈内カテーテル関連感染症、黄色ブドウ球菌皮膚感染症、黄色ブドウ球菌壊死性筋膜炎、黄色ブドウ球菌角膜炎、黄色ブドウ球菌眼内炎、黄色ブドウ球菌膿気胸、黄色ブドウ球菌膿胸及び黄色ブドウ球菌敗血症の1つ又は複数を含む、任意の被験体の黄色ブドウ球菌感染症であり得る。
【0059】
「被験体」という用語は、鳥類、又はヒト及びイヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ及びウシのような獣医学的若しくは農業的に重要な動物を含む哺乳動物のような動物、を意味することを意図するものである。
【0060】
黄色ブドウ球菌株に対する免疫応答を誘発するワクチン配合物の必要な構成要素とその使用説明書とを含むキットも本発明の範囲内である。
【0061】
本明細書中に記載される実施例及び実施形態は例示のみを目的とし、それを踏まえた様々な賦活又は変更が当業者に提案され、それらが本願の趣旨及び範囲並びに添付の特許請求の範囲内に含まれることを理解されたい。
【実施例】
【0062】
材料及び方法
特に指定のない限り、以下の実験の詳細は、下記に説明及び論考される具体的な実施例に提示される各々の例に関連するものである。
【0063】
マウス
近交系C57BL/6(6週齢〜8週齢)をJackson Laboratories(Bar Harbor,ME)から購入した。マウスを、メリーランド大学歯学部(Baltimore,MD)の動物施設内のマイクロアイソレーター条件下で動物管理使用委員会(IACUC)によって概説及び認可されるプロトコルに従って管理した。
【0064】
細菌株及び感染性接種材料の調製
これらの実験に使用する黄色ブドウ球菌のMRSA−M2株は、テキサス大学医学部(Galveston,TX)で治療中の骨髄炎患者から得られる臨床分離株であり、先のバイオフィルム分子分析及び動物感染症モデルに使用した(5、34、37、60)(6、47、49、50)。37℃、250rpm振盪で生育させた黄色ブドウ球菌のトリプチックソイブロス(TSB)一晩培養物を、あらかじめ温めた新鮮TSBで100倍希釈し、37℃、250rpm振盪で2時間インキュベートした。細胞を遠心分離し、PBSでリンスし、Petroff Hausserカウンターによって計数し、1×10CFU/mlまで希釈した。
【0065】
タンパク質のクローニング、発現及び精製
Brady et al.(5)によって選択された候補抗原を、表2に挙げるプライマーを用いて増幅した。
【0066】
【表2】
【0067】
PCR産物を、pBAD−Thio/TOPO(SACOL0037及びSACOL0119)又はpASK−IBA14(SACOL0486、SACOL0688及びグルコサミニダーゼ)にクローニングし、TOP10大腸菌に形質転換し、塩基配列を決定した。プラスミドに関する詳細を表3に提示する。
【0068】
【表3】
【0069】
次いで、アラビノース誘導(SACOL0037及びSACOL0119)又はアンヒドロテトラサイクリン誘導(他の全て)を用いてクローンを発現させた。SACOL0037及びSACOL0119を、ProBondコバルト親和性クロマトグラフィー(Invitrogen,Life technologies,Carlsbad,CA)によって精製し、Strep−Tactin Superflowカラム(IBA,Goettingen,Germany)を用いて他の全ての抗原を精製した。各タンパク質を10%−20%SDS−PAGEで分離し純度を確認し、BCA(Pierce,Rockford IL)によって量を決定した。SACOL0486、SACOL0688及びグルコサミニダーゼについては、脱塩及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)への緩衝液交換を、30kDa分子量カットオフ(MWCO)Amicon濾過ユニット(Millipore,Billerica,MA)を用いて製造仕様書に従って行った。SACOL0119については、脱塩及びPBSへの緩衝液交換を10kDa MWCO Amicon濾過ユニット(Millipore,Billerica,MA)を用いて行った。SACOL0037のNano−pure水への脱塩は、脱塩PD−10カラム(GE Healthcare,Waukesha,WI)を用いて製造仕様書に従って達成した。続いて、Virtis凍結乾燥機(SP Scientific,Warminster,PA)を用いてSACOL0037を凍結乾燥し、タンパク質微粒子をPBS中で再構成した。タンパク質量をBCA(Pierce,Rockland,IL)によって決定し、タンパク質を10%−20%SDS−PAGEで分離することによって確認した。
【0070】
ピンの外科的移植
1実験群当たり4匹〜8匹のマウス(2回行った)を、アラムアジュバント単独でワクチン非接種とするか、又は四価バイオフィルムワクチン、単一の追加抗原(SA0119)、若しくはアラムアジュバント中12.5μg/抗原の全ての試験抗原(五価ワクチン)の組合せのいずれかとした。ワクチンを腹腔内(IP)注射によって投与した。動物に、PBSのワクチン非接種処理又は原液PBSに懸濁した上記のワクチン組成物によるワクチン接種処理で14日後に追加免疫した。追加免疫の14日後に、マウスを100mg/kgケタミン(Ketaset(登録商標)−Fort Dodge Laboratories, Inc.,Fort Dodge,Iowa)及び10mg/kgキシラジン(Rugby Laboratories, Inc.,Rockville Center,NY)の腹腔内注射によって麻酔した。以前報告された方法(35、49)に従って滅菌した0.25mm虫ピン(Fine Science Tools,Foster City,CA)の外科的移植の前に、各マウスの左脚をポビドンヨードで清拭し、70%エタノールでリンスした。移植後、上記で調製した1×10CFU/ml黄色ブドウ球菌懸濁液の1μlを、ピンインプラントに直接接種し、その後切開閉鎖を行った。100CFUの黄色ブドウ球菌は、このモデルにおける慢性感染(データ非提示)及びヒトにおける異物感染(19)を引き起こすことが可能であり、この感染用量は、感染症を引き起こすのに必要とされる用量の少なくとも10倍である。全てのマウスに屠殺までに外科手術後の任意の付加的な処置を行わなかった。全ての動物実験を、メリーランド大学医学部(Baltimore,MD)の動物管理使用委員会(IACUC)によって概説及び認可されるプロトコルに従って行った。
【0071】
骨培養
動物モデルの有効性を実証するために、移植の4日、7日、14日、21日、28日及び49日後に、感染マウス及び非感染マウスを安楽死させ、左脛骨を切除し、全ての軟部組織を骨から取り除いた。滅菌したハサミを用いて脛骨を小片に切断し、骨100μgにつき300μlの滅菌0.85%生理食塩水中に入れた。Polytron PT 1200手持ち型ホモジナイザー(Kinematica,Bohemia,NY)を用いて骨をホモジナイズし、骨ホモジネートの段階10倍希釈物を、骨1g当たりの生きた黄色ブドウ球菌を計数するためにトリプチックソイ血液寒天プレートにプレーティングし、一種細菌性黄色ブドウ球菌感染症を検証するためにCHROMagar MRSAプレート(CHROMagar,Paris,France)にプレーティングした。加えて、ワクチン非接種マウス(アラム単独)、及び四価ワクチン、単一追加抗原SA0119又は全ての抗原の組合せを接種したマウスを感染の21日後に安楽死させ、脛骨のコロニー形成単位(CFU)を上記のように決定した。腎臓をホモジナイズし、ホモジネートを上記のようにプレーティングすることによって、黄色ブドウ球菌感染症の播種をモニタリングした。
【0072】
外植ピンでのPNA−FISHバイオフィルム検出
マウスの脛骨における感染ピン上のバイオフィルムを実証するために、感染マウス及び非感染マウスのピンを脛骨から慎重に取り出し、移植の7日後及び21日後にバイオフィルム質量の摂動を防止した。ピンを2%パラホルムアルデヒド−PBSで固定した後、FITC標識黄色ブドウ球菌プローブ及びローダミン標識汎用真核細胞プローブによるPNA−FISHハイブリダイゼーションを製造仕様書(Advandx,Woburn,MA)に従って行った。次いで、各々のピンを、Zeiss LSM 510共焦点レーザー走査顕微鏡(Carl Zeiss,Thornwood,NY)でFITC/テキサスレッド二重バンドフィルター及び63×対物レンズを用いて緑色及び赤色の蛍光の両方について検査した。
【0073】
統計分析
平均及びSDをスチューデントt検定を用いて0.05未満のP値で算出及び分析し、統計的有意性を決定した。バンコマイシン処理又はPBS処理後に依然として感染しているマウスの割合を決定する実験を、フィッシャーの正確確率検定を用いて0.05未満のp値で統計的有意性について分析した。
【0074】
結果
黄色ブドウ球菌インプラント感染は慢性感染をもたらす
黄色ブドウ球菌を感染させたピンを有するマウスの脛骨及び非感染ピンを有する対照脛骨を、移植の4日、7日、14日、21日、28日及び49日後に回収し、処理した。ホモジナイズした骨のCFUを計数し、慢性感染の発症及び脛骨における細菌負荷を決定した。結果から、生きた黄色ブドウ球菌が感染の49日後を超えるような試験した全ての時点で黄色ブドウ球菌感染ピン及び周囲の骨から培養されることが実証される(図1)。細菌容量は、初めに感染用量のlog3超から10CFU/脛骨超まで増大するが、続いて感染の4日〜7日後に減少する。しかしながら、7日の時点以降では、細菌容量は一定であった。バイオフィルム形成は、共焦点レーザー走査顕微鏡検査によると感染マウス(図1Bを参照されたい)のインプラントしたピンでは明らかであったが、非感染マウス(図1C図1D)では明らかでなかった。
【0075】
抗生物質療法と組み合わせたバイオフィルムで上方制御される抗原のワクチン接種は、黄色ブドウ球菌骨髄炎感染の排除を促進する
以前の研究では、Brady et al.が、バイオフィルム型の生育において上方制御され、ウサギにおいて高免疫原性の候補タンパク質を同定し、黄色ブドウ球菌バイオフィルム媒介性感染症に対する多価ワクチンを配合した(4)。最初のワクチン接種試験において、SACOL0486、SACOL0688、SACOL0037及びグルコサミニダーゼ(1つの組換えタンパク質当たり10μg)から構成される四価ワクチンを、黄色ブドウ球菌脛骨骨髄炎感染を用いた病原体接種の20日前及び10日前にウサギに注射した。ワクチン接種したウサギは、感染の14日後に対照動物と比較して細菌容量の僅かな低減を有していたが、細菌排除は達成されなかった(データ非提示/Brady 2011)。四価ワクチンは黄色ブドウ球菌バイオフィルムを標的とするが、その成分は黄色ブドウ球菌プランクトン型細胞に対する効果的な液性応答を活性化せず、これらの細菌は免疫回避因子の発現のために感染の14日後に残存する。したがって、ワクチン接種戦略を、病原体接種の14日後に開始する10日間のバンコマイシン処理過程を加えることによって改変させ、バイオフィルムから分散した抗生物質感受性のプランクトン型細菌を根絶させた。二重療法の有効性を評価するために、二重療法群のウサギにおける黄色ブドウ球菌計数(図2A)及び排除率(図2B)を、ワクチン未接種の未処理群、ワクチン未接種の処理群及びワクチン接種した未処理群と比較した。細菌数及び感染率の両方の有意な低減が二重療法によって観察され(カラム4)、黄色ブドウ球菌のプランクトン型表現型の標的化がバイオフィルム介在性感染症の根絶にとって不可欠であることが立証された。全体としては、対照動物と比較して細菌集団の99.9%の低減がワクチン接種した動物において観察された。
【0076】
バイオフィルムによって上方制御される抗原、及びプランクトン型特異的な抗原から構成される五価ワクチンのワクチン接種は、黄色ブドウ球菌脛骨インプラント感染症の排除を促進する
ウサギ脛骨骨髄炎モデルにおけるワクチン研究の延長として、プランクトン型特異的な抗原SACOL0119をバイオフィルム指向性四価ワクチン(SACOL0486、SACOL0688、SACOL0037及びググルコサミニダーゼ)に加えることによって、プランクトン型表現型の黄色ブドウ球菌感染症を標的とした。黄色ブドウ球菌感染症に対するこの五価ワクチンの有効性を、骨髄炎に加えて別のバイオフィルム介在性感染症に対するワクチンの決定的な評価であるマウス脛骨インプラントモデルを用いて評価した。12.5μgの各々の組換え抗原から構成される五価ワクチンを、脛骨インプラントモデルを用いた黄色ブドウ球菌病原体接種の28日前及び14日前に投与した。病原体接種の21日後に、五価ワクチンでワクチン接種したマウスの脛骨におけるCFUを計数し、四価ワクチン又は一価SACOL0119ワクチンでワクチン接種したマウス及びワクチン未接種マウスによる計数値と比較した。腎臓ホモジネートも細菌数について検査した。任意の対照又は実験動物の腎臓においては黄色ブドウ球菌は観察されず、感染症が局所的であり、脛骨から播種しないことが確認された。ワクチン未接種マウスにおいては、100%の感染率が観察され(図3)、インプラント挿入部位の周辺に被膜の発生が観察された(データは示さない)。四価ワクチン及びSACOL0119ワクチンは、黄色ブドウ球菌感染症に対する部分的保護をもたらし、それぞれ50%及び40%の動物において細菌排除が観察された(図3)。四価ワクチン及びSACOL0119ワクチンを接種したマウスにおいて、脛骨上の被膜の存在はインプラント部位の黄色ブドウ球菌の存在に対応していた。バイオフィルムによって上方制御される抗原又はプランクトン型特異的な抗原単独によるワクチン接種は、ほぼ同等の保護をもたらすことから、抗原の組合せが相乗効果を有し、脛骨インプラントモデルにおける黄色ブドウ球菌の完全な排除をもたらし得ることが推測された。本発明者らの研究室によって以前に実証されたように、このプランクトン型抗原の追加は、残留する黄色ブドウ球菌を根絶する補助抗生物質療法の使用の代わりとなり得る。実際に、五価ワクチンは、このワクチン部分群の全てのマウスにおける100%の排除という黄色ブドウ球菌に対する完全な保護をもたらした(図3)。加えて、五価ワクチンを接種したマウスの脛骨は、感染の兆候を有しない非感染脛骨と同様であった。したがって、多価バイオフィルム指向性ワクチンへの単一プランクトン型抗原の組み入れは、ワクチンの有効性をC57BL/6Jマウスにおけるバイオフィルム媒介性インプラント感染症の予防を50%から100%にまで増大させた。ここに、本発明者らは、プランクトン型表現型及びバイオフィルム表現型の両方の病原体を標的とするワクチン接種戦略を用いて、臨床試験にまで進められたものを含む他のワクチン配合物では達し得なかった業績である黄色ブドウ球菌の完全な細菌排除を達成した。
【0077】
参考文献
本明細書において参照される全ての文献、論文及び出版物には、書籍、学術論文、取扱説明書、特許出願、公開特許出願及び特許が含まれ、その全体が引用することにより本明細書の一部に明確に組み込まれる。
【0078】
【表4】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]