【文献】
Magoulas, George E. et al.,Syntheses, antiproliferative activity and theoretical characterization of acitretin-type retinoids w,European Journal of Medicinal Chemistry,2010年12月14日,vol.46 no.2,pp.721-737
【文献】
Mata, Ernesto G. et al.,Development of a synthesis of lankacidins: an investigation into 17-membered ring formation,Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1,1995年,no.7,pp.785-799
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一般式(1)で表わされる化合物として亜りん酸トリエチルを、一般式(2)で表される化合物として4−ブロモ−3−メチルクロトン酸エチルを、それぞれ使用し、一般式(3)で表わされる化合物としてトリエチル−3−メチル−4−ホスホノクロトネートを製造する、請求項1又は2に記載の製造方法。
一般式(3)で表わされる化合物としてトリエチル−3−メチル−4−ホスホノクロトネートを、カルボニル化合物としてファルネサールを、それぞれ使用し、3−メチルペンタ−2,4−ジエン酸残基を有する化合物として(2E,4E,6E,10E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2,4,6,10,14−ペンタエン酸を製造する、請求項2に記載の製造方法。
一般式(3)で表わされる化合物としてトリエチル−3−メチル−4−ホスホノクロトネートを、カルボニル化合物としてβ−イオニリデンアセトアルデヒドを、それぞれ使用し、3−メチルペンタ−2,4−ジエン酸残基を有する化合物として(2E,4E,6E,8E)−3,7−ジメチル−9−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)ノナ−2,4,6,8−テトラエン酸を製造する、請求項2に記載の製造方法。
一般式(3)で表わされる化合物としてトリエチル−3−メチル−4−ホスホノクロトネートを、カルボニル化合物として(2E,4E)−5−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)−3−メチルペンタ−2,4−ジエナールを、それぞれ使用し、3−メチルペンタ−2,4−ジエン酸残基を有する化合物として(2E,4E,6E,8E)−9−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)−3,7−ジメチルノナ−2,4,6,8−テトラエン酸エチルを製造する、請求項2に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で使用する用語の定義は以下の通りである。
【0025】
本明細書中で使用するとき、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を意味する。好ましくは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、より好ましくは、臭素原子である。
【0026】
本明細書中で使用するとき、「直鎖又は分岐鎖のアルキル基」とは、脂肪族飽和炭化水素から水素原子1個を除いた一価の基であり、直鎖状及び分岐鎖状の基が包含される。炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基又は2−エチルブチル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はネオペンチル基が好ましく、より好ましくは、エチル基又はイソプロピル基である。
【0027】
本明細書中で使用するとき、「直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基」とは、アルキル鎖上のいずれか1カ所以上に炭素−炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖のアルケニル基を意味する。炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基としては、具体的には、例えば、エテニル基(ビニル基)、プロパ−1−エン−1−イル基、プロパ−2−エン−1−イル基、プロパ−1−エン−2−イル基、ブタ−1−エン−1−イル基、ブタ−2−エン−1−イル基、ブタ−3−エン−1−イル基、ブタ−1−エン−2−イル基、ブタ−3−エン−2−イル基、ペンタ−1−エン−1−イル基、ペンタ−2−エン−1−イル基、ペンタ−3−エン−1−イル基、ペンタ−4−エン−1−イル基、ペンタ−1−エン−2−イル基、ペンタ−4−エン−2−イル基、3−メチルブタ−1−エン−1−イル基、3−メチルブタ−2−エン−1−イル基、3−メチルブタ−3−エン−1−イル基、ヘキサ−1−エン−1−イル基、ヘキサ−5−エン−1−イル基又は4−メチルペンタ−3−エン−1−イル基等が挙げられ、好ましくは、エテニル基、プロパ−2−エン−1−イル基、ブタ−2−エン−1−イル基、3−メチルブタ−3−エン−1−イル基である。
【0028】
本明細書中で使用するとき、「直鎖若しくは分岐鎖のアルキニル基」とは、アルキル鎖上のいずれか1カ所以上に炭素−炭素三重結合を有する直鎖又は分岐鎖のアルキニル基を意味する。炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキニル基としては、具体的には、例えば、エチニル基、プロパ−1−イン−1−イル基、プロパ−2−イン−1−イル基、ブタ−1−イン−1−イル基、ブタ−3−イン−1−イル基、1−メチルプロパ−2−イン−1−イル基、ペンタ−1−イン−1−イル基、ペンタ−4−イン−1−イル基、ヘキサ−1−イン−1−イル基又はヘキサ−5−イン−1−イル基等が挙げられ、好ましくはプロパ−2−イン−1−イル基である。
【0029】
本明細書中で使用するとき、「アリール基」とは、芳香族炭化水素基を意味する。炭素数6〜10のアリール基としては、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基又はアズレニル基が挙げられ、好ましくは、フェニル基である。その他、ここに定義のない基については、通常の定義に従う。
【0030】
本明細書中で使用するとき、「ピロりん酸エステルを実質的に含有しない」とは、後掲の実施例に記載の分析条件においてピロりん酸エステルの残存率が5%未満、好ましくは4%未満であることをいう。「TEPP」についても同様である。
【0031】
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、下記のスキーム2に示すことができる。
【0033】
(スキーム2中、R
a及びR
bは相互に独立に水素原子又は有機基を示し、R
1、R
2、R
3及びXは前記と同義であり、複数個のR
1は同一又は異なっていてもよい。但し、R
a及びR
bが同時に水素原子である場合を除く。)
【0034】
R
a及びR
bにおける有機基としては、炭化水素基を挙げることができる。炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、アリール基等が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、脂環式炭化水素基等が挙げられ、該フェニル基及び脂環式炭化水素基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよい。なお、置換基の位置及び数は任意であり、置換基を2以上有する場合、当該置換基は同一でも異なっていてもよい。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。これらのうち、メトキシ基、エトキシ基が好ましい。また、炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖でも分岐鎖でもよく、具体例としては、前述と同様のものを挙げることができる。
【0035】
脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。これら脂肪族炭化水素基の炭素数は、1〜32が好ましく、1〜30がより好ましく、1〜20が更に好ましい。また、これら脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
アルキル基としては、炭素数1〜30、更に1〜25、更に1〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、前述の具体例の他、デシル基、ウンデシル基、1−メチルデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等を挙げることができる。
また、アルケニル基としては、炭素数2〜32、更に5〜30のアルケニル基が好ましく、具体的には、前述の具体例の他、オクタ−2−エン−1−イル基、デカ−2−エン−1−イル基、2−メチルブタ−1,3−ジエニル基、6−メチレンオクタ−2,7−ジエン−2−イル基、6−メチルオクタ−2,5,7−トリエン−2−イル基、6,10,15,19,23−ペンタメチルテトラコサ−2,6,10,14,18,22−ヘキサエン−2−イル、2,6,10−トリメチルウンデカ−1,5,9−トリエニル基等を挙げることができる。当該アルケニル基は、アリール基又は後述する脂環式炭化水素基で置換されていてもよく、例えば、アリール置換アルケニル基として、4−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)−2−メチルブタ−1,3−ジエニル基等を、また脂環式炭化水素置換アルケニル基として、4−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセニル)−2−メチルブタ−1,3−ジエニル基等を、それぞれ挙げることができる。
更に、アルキニル基としては、炭素数2〜30、更に2〜25、更に2〜20のアルキニル基が好ましく、具体的には、前述の具体例の他、オクタ−2−イン−1−イル基、デカ−2−イン−1−イル基等を挙げることができる。
【0036】
脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、縮合多環炭化水素基、橋かけ環炭化水素基、環状テルペン炭化水素基等を挙げることができる。これら脂環式炭化水素基の炭素数は、3〜30が好ましく、3〜25がより好ましく、3〜20が更に好ましい。シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。また、シクロアルケニル基の具体例としては、1−シクロヘキセニル基等が挙げられる。縮合多環炭化水素基の具体例としては、トリシクロデカニル基、アダマンチル基等が挙げられる。橋かけ環炭化水素基としては、ペンタシクロペンタデカニル基、イソボニル基トリシクロペンテニル基等が挙げられる。環状テルペン炭化水素基としては、m−メンタン、m−メンテン、ツジャン、カラン、ピナン、ボルナン、ノルカラン、ノルピナン、ノルボルナン等から水素原子を1つ除いた1価の基等を挙げることができる。
アリール基としては、炭素数6〜20、更に6〜10のアリール基がより好ましい。具体例としては、前述と同様のものを挙げることができる。
【0037】
中でも、R
aとしては、置換若しくは非置換の脂肪族炭化水素基が好ましく、置換若しくは非置換のアルケニル基がより好ましい。また、R
bとしては、水素原子又は置換若しくは非置換の脂肪族炭化水素基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0038】
以下、各ステップについて説明する。
スキーム2において、ステップ1は一般式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」とも称する)と、一般式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」とも称する)とを反応させる工程であるが、化合物(1)による化合物(2)へのSN2反応により、一般式(3)で表される化合物(ホスホノクロトン酸誘導体)を得るものである。
【0039】
この反応は、従来公知のArbuzov反応の条件に準じて行うことができる。例えば、Russ. Phys. Chem. Soc. 1906, 38, 687、あるいはRuss. Phys. Chem. Soc. 1910, 42, 395などに記載されている条件を適用することができるが、これらに限定されない。
【0040】
ステップ1で使用する化合物(1)は、例えば、三塩化りんとアルコールとの反応により得ることが可能である。また、化合物(2)は、例えば、クロトン酸エステル化合物をN−ハロコハク酸イミド等のハロゲン化剤でハロゲン化することにより得ることができる。化合物(1)及び化合物(2)は、市販品を使用してもよい。アルコールとしては、炭素数1〜6のアルコールが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどを挙げることができる。これらのうち、メタノール、エタノールが好ましい。
【0041】
本発明においては、化合物(1)と化合物(2)とを反応させてホスホノクロトン酸誘導体を製造する際に、酸又は塩基を用いる処理工程を含むことを特徴とする。
当該処理工程は、具体的には、以下の(A)及び(B)のいずれか1以上であるのが好ましい。
(A)酸又は塩基の存在下、化合物(1)と化合物(2)とを反応させる工程。
(B)化合物(1)と化合物(2)の反応後、酸又は塩基を用いた処理を行う工程。
これにより、TEPPに代表される上記一般式(4)で表わされる化合物(ピロりん酸エステル)の含有量を低減することができる。
【0042】
処理工程は、少なくとも化合物(1)と化合物(2)との反応時、あるいは反応後において酸又は塩基を用いて接触処理を行えば、その処理方法は特に限定されない。例えば、工程(A)の場合、酸又は塩基を反応系内に添加すればよく、また工程(B)の場合、例えば、反応後の反応液、反応後に分液した有機層の溶液、あるいは蒸留等で単離したホスホノクロトン酸誘導体を有機溶媒に再度溶解した溶液等に酸又は塩基を添加して接触させればよい。接触処理は、1又は2以上行うことが可能である。なお、有機溶媒としては、例えば、炭化水素(例えば、ヘプタン、ヘキサン、トルエン、ベンゼン、キシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン)を挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0043】
本発明の処理工程で用いる酸は、有機酸及び無機酸のいずれを使用してもよく、1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。無機酸としては、例えば、塩酸(pKa=−7)、硫酸(pKa=−3)、硝酸(pKa=−1.4)、リン酸(pKa=2.12)、亜硝酸(3.15)などが挙げられる。有機酸としては、例えば、トリフルオロ酢酸(pKa=0.3)、シュウ酸(pKa=1.27)、ギ酸(pKa=3.54)、アセチル酢酸(pKa=3.57)、乳酸(pKa=3.64)、コハク酸(pKa=3.99)、安息香酸(pKa=4.00)、アジピン酸(pKa=4.26)、酢酸(pKa=4.76)、プロピオン酸(pKa=4.87)などが挙げられる。
処理工程で使用する酸としては、pKaが5未満の酸が好ましく、−5以上5未満の酸がより好ましく、−5以上3未満の酸が更に好ましい。中でも、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸が好ましく、硫酸が更に好ましい。ここで、本明細書において「pKa」とは25℃における酸解離定数をいい、多価の酸の場合は第1酸解離定数である。なお、酸のpKa値は、文献等に記載の数値を参照することができる。
本発明においては、酸として固体酸を使用してもよく、例えば、酸型イオン交換樹脂、活性白土、シリカ−アルミナ等が挙げられる。酸型イオン交換樹脂として、Dowex(ダウ・ケミカル社製)、Nafion(デュポン社製)、DIAION(三菱化学社製)等の市販品を使用することができる。
また、酸は、水溶液を始めとする溶液として使用してもよい。溶液として使用する場合の酸溶液の濃度は、上限が100質量%未満、更に90質量%未満、更に60質量%未満が好ましく、他方下限は、1質量%、更に3質量%、更に5質量%が好ましい。酸溶液の濃度範囲としては、1質量%以上100質量%未満が好ましく、3質量%以上90質量%未満がより好ましく、5質量%以上60質量%未満が更に好ましい。本発明の処理工程に用いる酸の水溶液のpH(25℃)は、特に限定されないが、pH1〜5が好ましく、pH1〜3がより好ましい。
【0044】
本発明の処理工程で用いる塩基としては、無機塩基、有機塩基、金属アルコキシド及びアルキル金属のいずれをも使用することが可能であり、1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア(pKb=4.64)、水酸化アルカリ金属、水素化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属、炭酸水素アルカリ金属、リン酸水素アルカリ金属、アルカリ金属を用いることができる。水酸化アルカリ金属としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが好ましい。水素化アルカリ金属としては、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム(pKb=0.2)、水素化カリウムなどが好ましい。炭酸アルカリ金属としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム(pKb=3.67)、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどが好ましい。炭酸水素アルカリ金属としては、例えば、炭酸水素ナトリウム(pKb=3.67)、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウムなどが好ましい。リン酸水素アルカリ金属としては、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム(pKb=1.60)、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウムなどが好ましい。アルカリ金属としては、例えば、金属リチウム、金属ナトリウム、金属カリウムなどが好ましい。
【0045】
有機塩基としては、特に限定されないが、例えば、含窒素複素環化合物や有機アミンを用いることができる。含窒素複素環化合物としては、例えば、ピリジン(pKb=8.33)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(pKb=4.80)、ルチジン(pKb=7.04)、コリジンなどが好ましく、有機アミンとしては、例えば、トリメチルアミン(pKb=4.24)、ジメチルアミン(pKb=2.98)、トリエチルアミン(pKb=3.32)、ジエチルアミン(pKb=2.98)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジイソプロピルペンチルアミン、モルホリン(pKb=5.64)、ピペリジン(pKb=2.76)、ピロリジン(pKb=2.6)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)(pKb=2.00)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ [2.2.2]オクタン(DABCO)などが好ましい。
【0046】
金属アルコキシドとしては、特に限定されないが、例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、t−ブトキシナトリウム、t−ブトキシカリウムなどが好ましい。
【0047】
アルキル金属としては、特に限定されないが、例えば
、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムなどが好ましい。
【0048】
処理工程で使用する塩基としては、pKbが0〜6のものが好ましく、2〜5のものがより好ましい。具体的には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ナトリウムメトキシドが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。ここで、本明細書において「pKb」とは25℃における塩基解離定数をいい、多価の塩基の場合は第1酸解離定数である。なお、塩基のpKb値は、文献等に記載の数値を参照することができる。
【0049】
また、塩基は、水溶液を始めとする溶液として使用してもよい。溶液として使用する場合の塩基溶液の濃度は、上限が100質量%未満、更に80質量%未満、更に50質量%未満、更に30質量%未満、更に10質量%が好ましく、他方下限は1質量%が好ましい。塩基溶液の濃度範囲としては、1質量%以上50質量%未満が好ましく、1質量%以上30質量%未満がより好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。本発明の処理工程に用いる塩基の水溶液のpH(25℃)は、特に限定されないが、pH8〜14が好ましく、pH11〜12がより好ましい。
【0050】
本発明の処理工程で用いる酸又は塩基の添加量は、特に限定されないが、例えば、工程(B)の場合、反応後の反応液、反応後の有機層の溶液、または単離後有機溶媒に再度溶解した溶液に対して1〜50質量%が好ましく、5〜20質量%が更に好ましい。工程(A)においても、上記と同様の添加量を採用することができる。
【0051】
本発明の処理工程における温度は、特に限定されないが、0〜100℃が好ましく、1〜90℃がより好ましく、20〜80℃が更に好ましく、40〜70℃が更に好ましい。本発明の処理工程における時間は、特に限定されないが、好ましくは1〜15時間であり、より好ましくは3〜15時間、更に好ましくは3〜10時間、更に好ましくは3〜5時間である。
【0052】
本発明の処理工程は、さらにアルコールの存在下で行ってもよい。アルコールを添加することで、有機層と水層が均一となるので好ましい。使用できるアルコールとしては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等が好ましく、メタノール、エタノールが更に好ましい。
【0053】
使用するアルコールの量は、特に制限はないが、反応後の反応液、反応後の有機層の溶液、または単離後有機溶媒に再度溶解した溶液に対して1〜50質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましく、8〜15質量%が更に好ましい。
【0054】
処理工程後、必要により遠心分離、分液、洗浄、濃縮、乾燥、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製手段に供することにより、不純物であるTEPPを始めとするピロりん酸エステルを除去又は低減した、ホスホノクロトン酸誘導体を単離することができる。
【0055】
次に、ステップ2について説明する。
スキーム2において、ステップ2は、ホスホノクロトン酸誘導体と一般式(5)で表される化合物(カルボニル化合物)とを反応させる工程であるが、ホスホノクロトン酸誘導体とカルボニル化合物とのホーナー−エモンズ反応(Horner−Emmons反応)により、一般式(6)で表される化合物(3−メチルペンタ−2,4−ジエン酸残基を有する化合物)を得るものである。なお、一般式(5)で表わされる化合物は、Horner−Emmons反応が可能なカルボニル化合物であれば、特に限定されないが、例えば、ファルネサール、β−イオニリデンアセトアルデヒド、(2E,4E)−5−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)−3−メチルペンタ−2,4−ジエナール等を挙げることができる。
【0056】
この反応は、従来公知のHorner−Emmons反応の条件に準じて行うことができる。例えば、Chemical Reviews 1974, 74, 87-99などに記載されている条件を適用することができるが、これらに限定されない。また、ホスホノクロトン酸誘導体とカルボニル化合物とのHorner−Emmons反応において生成する一般式(6)で表される化合物がエステル化合物である場合、それを加水分解することにより、エステル基がカルボキシル基に変換された3−メチルペンタ−2,4−ジエン酸残基を有する化合物を得ることができる。なお、加水分解は、従来公知の方法を適用することができる。そして、3−メチルペンタ−2,4−ジエン酸残基を有する化合物は、遠心分離、分液、洗浄、濃縮、乾燥、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー、又はこれらの組み合わせにより、単離精製することができる。
【0057】
本発明においては、ステップ2で使用するホスホノクロトン酸誘導体がピロりん酸エステルを実質的に含有しないため、純度が高い3−メチルペンタ−2,4−ジエン酸残基を有する化合物を得ることができる。例えば、ホスホノクロトン酸誘導体としてステップ1で得られたTEMPCを、カルボニル化合物としてファルネサールを、それぞれ原料化合物として使用すると、純度が高い(2E,4E,6E,10E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2,4,6,10,14−ペンタエン酸を得ることができる。また、ホスホノクロトン酸誘導体としてステップ1で得られたTEMPCを、カルボニル化合物としてβ−イオニリデンアセトアルデヒドを、それぞれ原料化合物として使用すると、純度が高い(2E,4E,6E,8E)−3,7−ジメチル−9−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)ノナ−2,4,6,8−テトラエン酸を得ることができる。更に、ホスホノクロトン酸誘導体としてステップ1で得られたTEMPCを、カルボニル化合物として(2E,4E)−5−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)−3−メチルペンタ−2,4−ジエナールを、それぞれ原料化合物として使用すると、純度が高い(2E,4E,6E,8E)−9−(4−メトキシ2,3,6−トリメチルフェニル)−3,7−ジメチルノナ−2,4,6,8−テトラエン酸エチルを得ることができる。
こうして得られる3−メチルペンタ−2,4−ジエン酸残基を有する化合物は、不純物であるピロりん酸エステルを実質的に含有せず高純度であるため、品質的に優れている。
【0058】
したがって、ピロりん酸エステルを実質的に含有しない3−メチルペンタ−2,4−ジエン酸残基を有する化合物、特に好適には、TEPPを実質的に含有しない、(2E,4E,6E,10E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2,4,6,10,14−ペンタエン酸、(2E,4E,6E,8E)−3,7−ジメチル−9−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)ノナ−2,4,6,8−テトラエン酸、(2E,4E,6E,8E)−9−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)−3,7−ジメチルノナ−2,4,6,8−テトラエン酸エチルは医薬組成物の原料として有用である。当該医薬組成物は、不純物であるピロりん酸エステルを実質的に含有しないため、品質的に優れている。
【0059】
本発明の医薬組成物は、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法にしたがい、適宜製剤添加物を用いることにより、種々の剤形を製することができる。本発明においては、経口投与製剤、口腔内適用製剤、注射製剤等の各種製剤が挙げられる。剤形としては、特に限定されるべきものではないが、例えば、錠剤(口腔内崩壊錠、チュアブル錠、分散錠、溶解錠;トローチ剤、舌下錠、バッカル錠、付着錠、ガム剤等の口腔用錠剤も含む)、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、経口ゼリー剤、経口液剤(エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、リモナーデ剤等)、シロップ剤等が挙げられる。
【0060】
本発明の医薬組成物の投与量は、適用すべき疾患の種類、予防又は治療の目的、患者の年齢、体重、症状等の条件に応じて適宜選択可能であるが、成人の一日あたりの投与量は、例えば、経口投与において有効成分量として10〜1000mg程度である。一般的には上記の投与量を一日あたり1回から数回に分けて投与することができるが、数日ごとに投与してもよい。
例えば、本発明により得られるトレチノインを用いる場合、一日あたり60〜80mgを3回に分けて経口投与することが好ましい。また、エトレチナートを用いる場合、一日あたり10〜75mgを1〜3回に分けて経口投与することが好ましい。ペレチノインを用いる場合、一日あたり200〜1000mgを1〜3回に分けて経口投与することが好ましい。
【0061】
上述した実施形態に関し、本発明は以下の製造方法、化合物、医薬組成物を更に開示する。
<1> 下記一般式(1)で表される化合物と、下記一般式(2)で表される化合物を反応させて、下記一般式(3)で表される化合物を製造する方法であって、酸又は塩基を用いる処理工程を含む、製造方法。
【0063】
(式中、R
1は炭素数6〜10のアリール基で置換されていてもよい炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基で置換されていてもよい炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基で置換されていてもよい炭素数2〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキニル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表し、3個のR
1は同一又は異なっていてもよい。)
【0065】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、R
2は水素原子、又は炭素数6〜10のアリール基で置換されていてもよい炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、R
3は炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又はハロゲン原子を表す。)
【0067】
(式中、R
1、R
2及びR
3は前記と同義であり、2個のR
1は同一又は異なっていてもよい。)
【0068】
<2> 処理工程が、以下の(A)及び(B)のいずれか1以上である、上記<1>に記載の製造方法。
(A)酸又は塩基の存在下、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物とを反応させる工程。
(B)一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物の反応後、酸又は塩基で処理する工程。
<3> 一般式(1)で表わされる化合物として亜りん酸トリエチルを、一般式(2)で表される化合物として4−ブロモ−3−メチルクロトン酸エチルを、それぞれ使用し、一般式(3)で表わされる化合物としてトリエチル−3−メチル−4−ホスホノクロトネートを製造する、上記<1>又は<2>に記載の製造方法。
【0069】
<4> 上記<1>ないし<3>のいずれか一に記載の製造方法により得られる一般式(3)で表わされる化合物を、カルボニル化合物と反応させる、3−メチルペンタ−2,4−ジエン酸残基を有する化合物の製造方法。
<5> 一般式(3)で表わされる化合物としてトリエチル−3−メチル−4−ホスホノクロトネートを、カルボニル化合物としてファルネサールを、それぞれ使用し、3−メチルペンタ−2,4−ジエン酸残基を有する化合物として(2E,4E,6E,10E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2,4,6,10,14−ペンタエン酸を製造する、上記<4>に記載の製造方法。
<6> 一般式(3)で表わされる化合物としてトリエチル−3−メチル−4−ホスホノクロトネートを、カルボニル化合物としてβ−イオニリデンアセトアルデヒドを、それぞれ使用し、3−メチルペンタ−2,4−ジエン酸残基を有する化合物として(2E,4E,6E,8E)−3,7−ジメチル−9−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)ノナ−2,4,6,8−テトラエン酸を製造する、上記<4>に記載の製造方法。
<7> 一般式(3)で表わされる化合物としてトリエチル−3−メチル−4−ホスホノクロトネートを、カルボニル化合物として(2E,4E)−5−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)−3−メチルペンタ−2,4−ジエナールを、それぞれ使用し、3−メチルペンタ−2,4−ジエン酸残基を有する化合物として(2E,4E,6E,8E)−9−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)−3,7−ジメチルノナ−2,4,6,8−テトラエン酸エチルを製造する、上記<4>に記載の製造方法。
【0070】
<8> 上記一般式(1)で表される化合物と、上記一般式(2)で表される化合物との反応時、又は反応後において酸又は塩基を用いた処理を行うことにより、上記一般式(3)で表される化合物を得、次いで該化合物を、カルボニル化合物と反応させる、3−メチルペンタ−2,4−ジエン酸残基を有する化合物の製造方法。
【0071】
<9> 酸は、pKaが好ましくは5未満の酸、より好ましくは−5以上5未満の酸、更に好ましくは−5以上3未満の酸である、上記<1>ないし<8>のいずれか一に記載の製造方法。
<10>酸を溶液として使用し、酸溶液の濃度が、好ましくは100質量%未満、より好ましくは90質量%未満、更に好ましくは60質量%未満であって、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である、上記<1>ないし<9>のいずれか一に記載の製造方法。
<11>酸は、水溶液のpHが、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3である、上記<1>ないし<10>のいずれか一に記載の製造方法。
<12>酸が無機酸である、上記<1>ないし<11>のいずれか一に記載の製造方法。
<13>無機酸が硫酸又はリン酸である、上記<12>に記載の製造方法。
<14>酸が有機酸である、上記<1>ないし<11>のいずれか一に記載の製造方法。
<15>有機酸が酢酸である、上記<14>に記載の製造方法。
【0072】
<16>塩基は、pKbが好ましくは0〜6の塩基、より好ましくは2〜5の塩基である、上記<1>ないし<8>のいずれか一に記載の製造方法。
<17>塩基を溶液として使用し、塩基溶液の濃度が、好ましくは100質量%未満、より好ましくは80質量%未満、更に好ましくは50質量%未満、更に好ましくは30質量%未満、更に好ましくは10質量%以下であって、好ましくは1質量%以上である、上記<1>ないし<8>、<16>のいずれか一に記載の製造方法。
<18>塩基は、水溶液のpHが、好ましくは8〜14、より好ましくは11〜12である、上記<1>ないし<8>、<16>、<17>のいずれか一に記載の製造方法。
<19>塩基が無機塩基である、上記<1>ないし<8>、<16>ないし<18>のいずれか一に記載の製造方法。
<20>無機塩基が炭酸アルカリ金属である、上記<19>に記載の製造方法。
<21>炭酸アルカリ金属が炭酸ナトリウムである、上記<20>に記載の製造方法。
<22>無機塩基が炭酸水素アルカリ金属である、上記<19>に記載の製造方法。
<23>炭酸水素アルカリ金属が炭酸水素ナトリウムである、上記<22>に記載の製造方法。
<24>無機塩基が水酸化アルカリ金属である、上記<19>に記載の製造方法。
<25>水酸化アルカリ金属が水酸化ナトリウムである、上記<24>に記載の製造方法。
<26>無機塩基がリン酸水素アルカリ金属である、上記<19>に記載の製造方法。
<27>リン酸水素アルカリ金属がリン酸水素二ナトリウムである、上記<26>に記載の製造方法。
<28>塩基が有機塩基である、上記<1>ないし<8>、<16>ないし<18>のいずれか一に記載の製造方法。
<29>有機塩基がトリエチルアミン又は4−ジメチルアミノピリジンである、上記<28>に記載の製造方法。
<30>塩基が金属アルコキシドである、上記<1>ないし<8>、<16>ないし<18>のいずれか一に記載の製造方法。
<31>金属アルコキシドがナトリウムメトキシド又はナトリウムエトキシドである、上記<30>に記載の製造方法。
<32>塩基がアルキル金属である、上記<1>ないし<8>、<16>ないし<18>のいずれか一に記載の製造方法。
【0073】
<33>処理工程をアルコールの存在下で行なう、上記<1>ないし<32>のいずれか一に記載の製造方法。
<34>アルコールがメタノール又はエタノールである、上記<33>に記載の製造方法。
<35>アルコールの使用量が、反応後の反応液、反応後の有機層の溶液、又は単離後有機溶媒に再度溶解した溶液に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜20質量%、更に好ましくは8〜15質量%である、上記<33>又は<34>に記載の製造方法。
<36>処理工程で用いる酸又は塩基の添加量が、反応後の反応液、反応後の有機層の溶液、又は単離後有機溶媒に再度溶解した溶液に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜20質量%である、上記<1>ないし<35>のいずれか一に記載の製造方法。
<37>処理工程における温度が、好ましくは0〜100℃、より好ましくは1〜90℃、更に好ましくは20〜80℃、更に好ましくは40〜70℃である、上記<1>ないし<36>のいずれか一に記載の製造方法。
<38>処理工程における時間が、好ましくは1〜15時間、より好ましくは3〜15時間、更に好ましくは3〜10時間、更に好ましくは3〜5時間である、上記<1>ないし<37>のいずれか一に記載の製造方法。
【0074】
<39>カルボニル化合物が下記式(5)で表わされる化合物である、上記<4>、<8>ないし<38>のいずれか一に記載の製造方法。
【0076】
(式中、R
a及びR
bは、相互に独立に、水素原子又は有機基を示す。但し、R
a及びR
bが同時に水素原子である場合を除く。)
【0077】
<40>R
aが置換若しくは非置換の脂肪族炭化水素基であり、R
bが水素原子又は置換若しくは非置換の脂肪族炭化水素基である、上記<39>に記載の製造方法。
<41>R
aが置換若しくは非置換のアルケニル基であり、R
bが水素原子である、上記<39>又は<40>に記載の製造方法。
<42>アルケニル基の炭素数が、好ましくは2〜32、より好ましくは5〜30である、上記<41>に記載の製造方法。
<43>R
aが、2−メチルブタ−1,3−ジエニル基、6−メチレンオクタ−2,7−ジエン−2−イル基、6−メチルオクタ−2,5,7−トリエン−2−イル基、6,10,15,19,23−ペンタメチルテトラコサ−2,6,10,14,18,22−ヘキサエン−2−イル基、2,6,10−トリメチルウンデカ−1,5,9−トリエニル基、4−(4−メトキシ−2,3,6−トリメチルフェニル)−2−メチルブタ−1,3−ジエニル基、又は4−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセニル)−2−メチルブタ−1,3−ジエニル基である、上記<39>ないし<42>のいずれか一に記載の製造方法。
【0078】
<44>実質的にピロりん酸テトラエチルを含有しない、(2E,4E,6E,10E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2,4,6,10,14−ペンタエン酸。
<45>上記<44>に記載の(2E,4E,6E,10E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2,4,6,10,14−ペンタエン酸を含有する、医薬組成物。
<46>剤形が錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、経口ゼリー剤、経口液剤又はシロップ剤である、上記<45>に記載の医薬組成物。
【実施例】
【0079】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。なお、実施例中の分析条件は、以下の通りである。
【0080】
<分析条件>
TEMPC及びTEPP純度、TEMPC含有量はガスクロマトグラフィーを用い、以下の条件によって測定した。条件は以下の通りである。
装置 :島津製作所製GC−2010
検出器:水素化イオン化検出器
カラム:Agilent製Ultra1(25m×0.32mmI.D. df=0.52μL)
カラム温度:150℃から毎分10℃で280℃まで昇温し、280℃で2分間保持
注入口温度:300℃に設定
検出器温度:300℃に設定
【0081】
TEMPC及びTEPP純度測定法
TEMPC/モノクロロベンゼン溶液を試料溶液とする。試料溶液0.2μLにつき上記の条件で分析を行い、TEMPC及びTEPPのピーク面積を自動積分法により測定し、面積百分率法により求めた。
【0082】
TEMPC含有量測定法
TEMPC/モノクロロベンゼン溶液1.0gを精密に量り、モノクロロベンゼンを加えて正確に10mLとし、試料溶液とした。TEMPC(和光純薬工業(株)社製試薬)0.1g、0.3g、0.5gを精密に量り、モノクロロベンゼンを加えて正確に20mLとし、標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液各々1μLにつき上記の条件で分析を行い、TEMPCのピーク面積を自動積分法により測定し、外部標準法により求めた。
【0083】
TEPP含有量算出法
TEPP含有量は以下の式により算出した。
TEPP含有量(g)=TEMPC含有量(g)×TEPP純度(%)
【0084】
合成例1
(TEMPCの合成)
温度計及び冷却管を備えた3000mLの四つ口フラスコに亜りん酸トリエチル440gを入れ、オイルバスを用いて内温110℃まで加熱した。ここに4−ブロモ−3−メチルクロトン酸エチル/モノクロロベンゼン溶液1500g(GC純度90%)を100分かけて滴下した。滴下終了後、内温110〜120℃で3時間反応させることにより、TEMPC/モノクロロベンゼン溶液1700gをGC純度81%で得た。
【0085】
実施例1
合成例1により得られたTEMPC/モノクロロベンゼン溶液50g(TEMPC含有量:13g、TEPP含有量0.083g)に対して硫酸の5%水溶液を2.5g(5重量%)加え、25℃で3時間撹拌を行った。得られた溶液をガスクロマトグラフィーにて分析し、TEMPC及びTEPPの含有量を測定した。処理前後での各含有量より算出したTEMPC分解率及びTEPP除去率を表1に示す。
【0086】
実施例2〜29
酸又は塩基の種類、濃度及び処理温度を表1〜2に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、得られた溶液について分析を行った。その結果を実施例1と併せて表1又は2に示す。
【0087】
参考例1
酸又は塩基の代わりに水を用いて処理したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、得られた溶液について分析を行った。その結果を表2に示す。
【0088】
比較例1
合成例1により得られたTEMPC/モノクロロベンゼン溶液195g(TEMPC含有量:53g、TEPP含有量0.1g)を単蒸留して精製した(温度:145℃、圧力:0.01kPa)。精製したTEMPCについて分析を行った結果、TEPP除去率は10%であった。また、TEMPCの回収率は43%であった。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
実施例30
〔(2E,4E,6E,10E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2,4,6,10,14−ペンタエン酸エチルの合成〕
窒素雰囲気下、N,N−ジメチルホルムアミド(35mL)にナトリウムエトキシド(4.2g)を入れ、−20℃に冷却したのちに、上記実施例6の条件で処理して製造したTEMPC(16.5g)のN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)溶液を徐々に加え、−20℃で20分撹拌した。これにファルネサール(11.5g)のN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)溶液を加え、同温で10分間撹拌した。反応後、反応液を0℃に冷却した10%塩化アンモニウム溶液(50mL)に滴下し、n−ヘプタンで抽出した。有機層をメタノール10mL/水3mL、メタノール10mL/水3mLで洗浄し、さらに、10質量%食塩水(15mL)で2回洗浄した。有機層を減圧濃縮し、(2E,4E,6E,10E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2,4,6,10,14−ペンタエン酸エチル17.0gを得た。
【0092】
実施例31
〔(2E,4E,6E,10E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2,4,6,10,14−ペンタエン酸の合成〕
窒素雰囲気下、2−プロパノール(40mL)に水酸化カリウム(4.30g)を溶解し、70℃に昇温して(2E,4E,6E,10E)−3,7,11,15−テトラメチル−2,4,6,10,14−ヘキサデカペンタエン酸エチル(17.0g)/2−プロパノール(30mL)を滴下した。15分後、反応液を0℃まで冷却し、冷水(70mL)に注入した。n−ヘプタン(40mLと25mL)で順次洗浄し、水層を希塩酸(26mL)でpHを調整したのち、トルエン(50mL)を加えて抽出し、有機層を5質量%食塩水(50mL×2回)で洗浄し、減圧濃縮した。トルエンの留出が収まったらメタノール(20mL)を加えて減圧濃縮、さらにメタノール(25mL)を加えて溶解し、冷却して結晶化した。一旦、内温を56℃まで昇温したのち、再度0℃まで冷却して結晶化し、ろ取して(2E,4E,6E,10E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2,4,6,10,14−ペンタエン酸のWet粗晶(9.07g,Dry換算8.80g)を得た。
【0093】
窒素雰囲気下、メタノール(50mL)に(2E,4E,6E,10E)−3,7,11,15−テトラメチル−2,4,6,10,14−ヘキサデカペンタエン酸(Wet粗晶9.04g)を加え、60℃に加熱して溶解させた。これをろ過後、冷却して結晶化した。析出した結晶をろ取して(2E,4E,6E,10E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2,4,6,10,14−ペンタエン酸(Wet晶8.15g)を得た。これを減圧乾燥して(2E,4E,6E,10E)−3,7,11,15−テトラメチルヘキサデカ−2,4,6,10,14−ペンタエン酸の精製品(7.70g)を得た。このものにおいて、TEPPの残存は認められなかった。
【0094】
1H-NMR(CD
3OD) δ(ppm); 1.59(3H, s), 1.61(3H, s), 1.66(3H, d, J=0.7Hz), 1.85(3H, d, J=0.6Hz), 1.97 (2H, m), 2.06 (2H, m), 2.16 (2H, m), 2.16 (2H, m), 2.29 (3H, d, J=1.0Hz), 5.08 (1H, m), 5.11 (1H, m), 5.74 (1H, s), 5.98(1H, d, J=11.0Hz), 6.22(1H, d, J=15.2Hz), 6.91(1H, dd, J=11.0, 15.2Hz).
【0095】
実施例32
軟カプセル剤(1)
実施例30及び31に準じて得られるペレチノインを、国際公開WO2004/017958号パンフレットに記載の方法によって、ペレチノイン75〜150mgを含有する軟カプセル剤を製することができる。
【0096】
実施例33
軟カプセル剤(2)
実施例30及び31に準じて得られるトレチノインを、実施例32に準じた方法により、トレチノイン10mg、ミツロウ、硬化油及びダイズ油を内容充填物とし、剤皮として、ゼラチン、グリセリン、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、D−ソルビトール、D−マンニトール、水素添加オリゴ糖を用いて、トレチノイン10mgを含有する軟カプセル剤を製することができる。
【0097】
実施例34
硬カプセル剤(1)
実施例30及び31に準じて得られるエトレチナート10mgと、結晶セルロース、トコフェロール、ゼラチン及びデキストリンと混合して得る混合物を、4号カプセルに充填することにより、エトレチナート10mgを含有するカプセル剤を製することができる。
【0098】
実施例35
硬カプセル剤(2)
実施例30及び31に準じて得られるエトレチナート25mgと、結晶セルロース、ポビドン、トコフェロール、ゼラチン及びデキストリンと混合して得る混合物を、2号カプセルに充填することにより、エトレチナート25mgを含有するカプセル剤を製することができる。
【0099】
本発明の製造方法により、不純物であるピロりん酸テトラエチルの含有量を低減したトリエチル−3−メチル−4−ホスホノクロトネートを製造することができる。さらに、本製造方法により製造されたトリエチル−3−メチル−4−ホスホノクロトネートを用いて品質的に優れた医薬、農薬及び工業製品を製造することができる。