(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6205011
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】浮上式浮遊物移送装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/40 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
C02F1/40 F
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-93812(P2016-93812)
(22)【出願日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】391001044
【氏名又は名称】株式会社ワールドケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100173668
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 吉之助
(72)【発明者】
【氏名】森 洋二
(72)【発明者】
【氏名】森 渉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 満
(72)【発明者】
【氏名】中島 利佳
【審査官】
菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−148753(JP,A)
【文献】
実開昭54−082461(JP,U)
【文献】
特開2002−079992(JP,A)
【文献】
特開昭53−071495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/40
E02B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面に浮設され、フレームによって連結された少なくとも2つのフロートと、
前記フレームに支持された水中ポンプと、
この水中ポンプの水吐出口に接続された垂直パイプと、この垂直パイプに接続されたノズルクランプと、このノズルクランプに支持された水平パイプと、この水平パイプに設けられた複数のノズルとを有しており、
前記水中ポンプによって吸入された水が、前記水吐出口から前記垂直パイプ、前記ノズルクランプ及び前記水平パイプを介して前記ノズルに供給され、このノズルから水が噴射される構成であり、前記水平パイプが、左側水平パイプと右側水平パイプによって構成され、それぞれの水平パイプが、ノズルクランプに伸縮自由に支持されていることを特徴とする浮上式浮遊物移送装置。
【請求項2】
垂直パイプが、上側垂直パイプと下側垂直パイプによって構成され、伸縮自由であることを特徴とする請求項1に記載の浮上式浮遊物移送装置。
【請求項3】
ノズルが、水平パイプに対して角度を変更可能な構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の浮上式浮遊物移送装置。
【請求項4】
水平パイプが、ノズルクランプに対し回動自由であり、左右の水平パイプをそれぞれ回動させることによって、ノズルからの水噴射方向及び角度を調整可能な構成であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の浮上式浮遊物移送装置。
【請求項5】
操作部材を連結する止着部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の浮上式浮遊物移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮上式浮遊物移送装置に関し、詳しくは、海、河川、貯水池又は貯水槽等において、液面又は水中に浮遊するスカム等浮遊物を所定の方向に寄せ集めるための浮上式浮遊物移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、塗装工場・食品工場・鉄鋼所・火力発電所・水産加工場・機械類工場等における種々処理槽や、海又は河川の液面に浮上するスカム・油等の液面浮遊物を回収するための装置として、液面浮遊物回収装置が知られている。この液面浮遊物回収装置としては、液面付近に浮上保持させたゲート部から液面浮遊物を流入させ、このゲート部に接続した回収管を介して処理槽外に配設した分離装置に、回収した液面浮遊物を移送して分離する構成のものが知られている。
【0003】
しかし、この液面浮遊物回収装置を利用した海面浮遊物の回収作業では、装置の近辺に浮遊するスカムを回収することはできるが、距離のあるスカムを回収することができないという問題があった。特に、浮遊するスカムが、高粘度の油等の場合は流動性が乏しく、このスカムを連続的に回収することができないという問題があった。
【0004】
上記のような問題を解決するために、特許文献1(特許第3341135号)に開示された技術が知られている。
特許文献1に記載の技術は、
『圧力流体のスプレーを噴出させてスカムを移送するスカム移送装置、移送されたスカムを吸引管の吸込口に寄せ集めるスカム収集装置および収集したスカムを圧力流体により作動するジェットポンプを用い吸引管と排出管を通して吸引排出しスカム貯留槽に送るスカム排出装置からなるスカム除去装置と、貯留したスカムに加圧空気溶解水を作用させて加圧浮上分離する加圧浮上装置および濃縮されたスカムを脱水する脱水装置からなるスカム処理装置を備えるスカム除去・処理設備」である。
即ち、「圧力流体スプレー」を噴射させて、スカムの如き浮遊物を移送する技術である。
【0005】
しかし、この技術は、
図5、6又は9等に示されるように、水面上方にスプレーノズルを配置し、このスプレーノズルを水面に近い位置で特定方向へ移動させ、スカムの如き浮遊物を特定方向へ移送する装置であり、浮遊物が浮遊している水面が波打ち、液面変動がある環境下では、移送ができない又は移送効率が悪いという問題がある。
また、このスプレーノズルは、スカム貯溜槽の両側に横断して取り付けられる構成であるため、そのスカム貯溜槽でしか使用できず、更には、所定の位置にしか移動することができないため、浮遊物の浮遊する位置によっては、これを移送することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3341135号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、スカムの移送効率を著しく高めることができ、いかなる場所でも使用することができ、更には、移送方向を自由に変更することができる浮上式浮遊物
移送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記本発明の課題は、下記の手段により達成される。
1.水面に浮設され、フレームによって連結された少なくとも2つのフロートと、
前記フレームに支持された水中ポンプと、
この水中ポンプの水吐出口に接続された垂直パイプと、この垂直パイプに接続されたノズルクランプと、このノズルクランプに支持された水平パイプと、この水平パイプに設けられた複数のノズルとを有しており、
前記水中ポンプによって吸入された水が、前記水吐出口から前記垂直パイプ、前記ノズルクランプ及び前記水平パイプを介して前記ノズルに供給され、このノズルから水が噴射される構成で
あり、前記水平パイプが、左側水平パイプと右側水平パイプによって構成され、それぞれの水平パイプが、ノズルクランプに伸縮自由に支持されていることを特徴とする浮上式浮遊物移送装置。
【0010】
2.垂直パイプが、上側垂直パイプと下側垂直パイプによって構成され、伸縮自由であることを特徴とする請求項
1に記載の浮上式浮遊物移送装置。
【0011】
3.ノズルが、水平パイプに対して角度を変更可能な構成であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の浮上式浮遊物移送装置。
【0012】
4.水平パイプが、ノズルクランプに対し回動自由であり、左右の水平パイプをそれぞれ回動させることによって、ノズルからの水噴射方向及び角度を調整可能な構成であることを特徴とする請求項1〜
3のいずれかに記載の浮上式浮遊物移送装置。
【0013】
5.操作部材を連結する止着部を有することを特徴とする請求項1〜
4のいずれかに記載の浮上式浮遊物移送装置。
【発明の効果】
【0014】
前記1に示す発明によれば、装置全体がフロートによって水面に浮上しており、波打つ等して水面が変動する環境であっても、水面とノズルの距離は一定に保たれるので、移送効率を維持することができ、従来の技術に比して、移送効率を著しく高めることができる。
【0015】
また、前記1に示す発明によれば、装置自体が水面に浮上する構成であるため、水面の他に装置を設置する場所が不要であり、持ち運びも容易であることから、いかなる場所でも使用することができる。
更にまた、装置自体が水面に浮上し、水面を自在に移動することができるため、浮遊物の移送方向を自由に変更することができる。
【0016】
前記2に示す発明によれば、水平パイプが伸縮可能であるため、使用する場所が狭い場合には、この水平パイプを縮めて使用することができ、使用する場所が広い場合には、この水平パイプを伸ばして、スカム等の浮遊物を移送する範囲を広げることができる。
【0017】
前記3に示す発明によれば、垂直パイプが伸縮可能であり、この垂直パイプの伸縮により、水平パイプに設けられたノズルの高さ位置を変更することができる。これにより、水面とノズルの位置が調整可能であり、スカム等浮遊物の種類、量や特性に応じて、ノズルからの水噴射位置を最適化することができる。
【0018】
前記4に示す発明によれば、水平パイプに対して、これに設けられたノズルの角度を変更可能な構成であり、これにより、ノズルからスカム等浮遊物への水噴射角度を調整することができる。
【0019】
前記5に示す発明によれば、水平パイプがノズルクランプに対し回動自由であることから、ノズルの方向を装置の正面側又は背面側に変更することができる。しかも、左右の水平パイプは個別に回動させることができるので、一方の水平パイプのノズルは、装置の正面側を向け、他方の水平パイプのノズルは、装置の背面側を向けるといった設定が可能である。即ち、全ノズルからの水噴射方向を、装置の正面側又は背面側の一方向とすることができるし、左右の水平パイプで、ノズルからの水噴射方向を反対にすることもできる。
【0020】
前記6に示す発明によれば、装置に、ロープ等の操作部材を連結するための止着部を設け、この操作部材によって、装置を固定することもできるし、任意の方法に移動させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る浮上式浮遊物移送装置の一実施例を表す斜視図
【
図2】本発明に係る浮上式浮遊物移送装置の一実施例を表す正面図
【
図3】本発明に係る浮上式浮遊物移送装置の一実施例を表す平面図
【
図4】本発明に係る浮上式浮遊物移送装置の一実施例を表す右側面図
【
図5】本発明に係る浮上式浮遊物移送装置の使用状況を表す概略説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る浮上式浮遊物移送装置1は、工業排水を貯水する貯水槽又は貯水池における浮遊した不純物や汚れ、海難事故等によって海に流出した浮遊した石油、その他、海、河川又は池等における浮遊した汚染物(浮遊物)等を、液面浮遊物回収装置(スカム回収装置)で回収する作業の際に、スカム等の浮遊物を回収装置の方向へ移送するための装置である。換言すれば、液面浮遊物回収装置(スカム回収装置)は、スカム等を回収する「ちりとり」の役割を担うのに対して、本発明に係る浮上式浮遊物移送装置は、スカム等を寄せ集める「ほうき」の役割を担うものである。
【0023】
以下、添付の図面に従って本発明を詳細に説明する。
図1に、本発明に係る浮上式浮遊物移送装置(以下、単に「浮上式浮遊物移送装置」ともいう。)1の一実施例を表す斜視図を示す。
図2〜4には、本発明に係る浮上式浮遊物移送装置1の一実施例を表す正面図、平面図及び右側面図を示す。
図5には、本発明に係る浮上式浮遊物移送装置1の使用状況を表す概略説明図を示す。
【0024】
図1〜4に示されるように、浮上式浮遊物移送装置1は、フロート2、フレーム3、水中ポンプ4、垂直パイプ5、ノズルクランプ6、水平パイプ7及びノズル8から構成される。
【0025】
フロート2は、浮上式浮遊物移送装置1を、液面(水面)に浮上させるための「浮き」である。
フロート2は、少なくとも2つが設けられる。これは、フロート2によって浮上式浮遊物移送装置1が水面に浮かべられた際、その姿勢を安定させるためである。
図1〜4では、左側フロート21と右側フロート22とが左右に並列された構成であるが、この配置に限定されるものではない。また、フロート2を3つ設け、各フロート2を三角形の頂点に配置することも例示でき、更に、フロート2を4つ以上設けた構成とすることもできる。
【0026】
フロート2の形態や材質に限定はなく、浮上式浮遊物移送装置1を液面に浮上させることができるだけの浮力を得られればよい。フロート2の形態を例示すれば、
図1〜4に示されるように、合成樹脂等の軽量素材で成型された円盤形状であって、中空又は内部にウレタン等が詰められたものを挙げることができる。また、他の例を挙げれば、浮き輪の如き内部に空気が封止された輪形体や、水泳用ビート板の如き軽量合成樹脂等で形成された板状体を例示することができる。
【0027】
フレーム3は、少なくとも2つ設けられたフロート2を、連結するための部材であると共に、水中ポンプ4を支持するための部材でもある。
図1〜4に示される実施例は、フレーム3が、上部フレーム31及び下部フレーム32によって構成される。上部フレーム31は、フロート2の上方に位置し、左側フロート21と右側フロート22とを上方から連結し保持する構成である。一方、下部フレーム32は、フロート2の下方に位置し、左側フロート21と右側フロート22とを下方から連結し保持する構成である。即ち、上部フレーム31と下部フレーム32によって、左側フロート21と右側フロート22とが、挟持される構成である。
【0028】
前述のとおり、フレーム3は、水中ポンプ4と結合・固定されることによって、これを支持する構成である。
図1〜4に示される実施例では、浮上式浮遊物移送装置1を平面視(
図3)した場合に、左側フロート21と右側フロート22の間に水中ポンプ4が配置された構成であり、この場合、フレーム3は、部材の中心部分で水中ポンプ4を支持する構成である。また、フレーム3は、上部フレーム31及び下部フレーム32の2つの部材から構成されているので、これら2つのフレーム31・32によって、水中ポンプ4を支持する構成である。
【0029】
フレーム3と水中ポンプ4との固定手段に限定はない。例えば、フレーム3と水中ポンプ4に予めボルト孔を設けておき、これを用いてボルト固定する手段を挙げることができる。また、溶接等の手段を用いてもよい。
【0030】
水中ポンプ4は、貯水槽等の水中から水を吸引し、これを水吐出口41から吐出する装置である。水中ポンプ4の構成に限定はなく、水中から水を吸引し、これを吐出することができる構成であればよく、公知公用の水中ポンプを特別の制限なく採用することができる。使用する水中ポンプ4として、動力が400W、流量が100L/分のものや、動力が150W、流量が60L/分のものを例示することができる。
【0031】
垂直パイプ5は、水中ポンプ4の水吐出口41に接続され、上方に水を送出する管である。垂直パイプ5の形態や材質に限定はなく、水や液体を通すパイプとして公知公用のものを特別の制限無く採用することができる。
【0032】
垂直パイプ5は、上側垂直パイプ51と下側垂直パイプ52の2つのパイプによって構成され、この2つのパイプによって伸縮自由な構成であることが好ましい。この構成のより、ノズル8の高さ位置を変更することができ、水面とノズル8の高さ位置が調整可能であり、スカム等浮遊物の種類、量や特性に応じて、ノズル8からの水噴射位置を最適化することができる。
【0033】
上側垂直パイプ51と下側垂直パイプ52とを、伸縮自由とするための構成に限定はなく、公知公用の技術を特別の制限無く採用することができる。例えば、
図1〜4に示されるように、上側垂直パイプ51を下側垂直パイプ52より小径とし、上側垂直パイプ51が下側垂直パイプ52に挿通可能な構成、即ち摺動可能な構成とし、これをロックナット(垂直ロックナット53)を用いて、垂直方向への摺動の停止又は解除をする構成を挙げることができる。なお、ロックナットとは、これを締める又は緩めることによって、2本
のパイプを伸縮操作することができる部材であり、本発明における垂直ロックナット53は、公知公用のロックナットを特別の制限無く採用することができる。
【0034】
ノズルクランプ6は、垂直パイプ5と水平パイプ7とを接続し、水等の液体を通過させることができる接続具である。
図1〜4に示されるノズルクランプ6は、略T字形状であり、下部で垂直パイプ5と接続され、左右側部で水平パイプ7と接続された構成である。
【0035】
水平パイプ7は、ノズルクランプ6の左右側部に接続され、水平方向に水を送出する管である。水平パイプ7の形態や材質に限定はなく、水や液体を通すパイプとして公知公用のものを特別の制限無く採用することができる。
【0036】
水平パイプ7は、左側水平パイプ71と左側水平パイプ72の2つのパイプによって構成され、それぞれのパイプが水平方向に伸縮自由な構成であることが好ましい。この構成のより、水平パイプ7の長さや、ノズル8の水平方向の位置を変更することができ、使用する場所が狭い場合には、この水平パイプ7を縮めて使用することができ、使用する場所が広い場合には、この水平パイプ7を伸ばして、スカム等の浮遊物を移送する範囲を広げることができる。
【0037】
左側水平パイプ71と右側水平パイプ72とを伸縮自由とするための構成に限定はなく、公知公用の技術を特別の制限無く採用することができる。例えば、
図1〜4に示されるように、左側水平パイプ71と右側水平パイプ72をそれぞれ、径の異なる2本から構成し、小径のパイプを大径のパイプに挿通・摺動可能な構成とし、これをロックナット(水平ロックナット73)を用いて摺動の停止又は解除をする構成を挙げることができる。
【0038】
また、ノズルクランプ6に対して、左側水平パイプ71と右側水平パイプ72を挿通可能な構成、即ち水平方向に摺動可能な構成とし、ノズルクランプ6側に、水平ロックナット73を設ければ、このロックナット(水平ロックナット73)を用いて、水平方向へのの摺動の停止又は解除をすることができる。
なお、水平ロックナット73は、前述した垂直ロックナット53と同様の構成であり、本発明における水平ロックナット73は、公知公用のロックナットを特別の制限無く採用することができる。
【0039】
ノズル8は、水平パイプ7に設けられる。水中ポンプ4によって吸入された水が、水吐出口41から垂直パイプ5、ノズルクランプ6及び水平パイプ7を介してノズル8に供給され、このノズル8から水が噴射される構成である。
【0040】
図1〜4に示されるように、ノズル8は、複数個が設けられ、その数量は、2以上であれば他の限定はない。また、左側水平パイプ71と右側水平パイプ72に、それぞれ少なくとも1つのノズル8が設けられ、それぞれ2つ以上のノズル8が設けられることが好ましい。
【0041】
ノズル8は、水平パイプ7に対して角度を変更可能な構成であり、水の噴射方向を任意に変更できることが好ましい。これにより、ノズルからスカム等浮遊物への水噴射角度を調整することができる。
【0042】
水平パイプ7は、ノズルクランプ6に対して回動自由であることが好ましい。これにより、左右の水平パイプ7をそれぞれ回動させることによって、ノズル8からの水噴射方向及び水噴射角度が調整可能となる。
この構成によれば、ノズル8の水噴射方向を、装置の正面側又は背面側に任意に変更することができる。しかも、左右の水平パイプ71・72は、個別に回動させることができ
るので、一方の水平パイプのノズル8は、装置の正面側を向け、他方の水平パイプのノズル8は、装置の背面側を向けるといった設定が可能である。即ち、全てのノズル8からの水噴射方向を、装置の正面側又は背面側の一方向とすることができるし、左右の水平パイプ71・72で、ノズル8からの水噴射方向を反対にすることもできる。
【0043】
ノズル8は、
図1〜4に示されるように、ノズルクランプ6に設けることもできる。
図1〜4では、ノズル8が装置の後方に向けて取り付けられているが、取り付ける方向に限定はなく、前方に向けて取り付けてもよい。また、ノズル8を、前方及び後方の両方に取り付けてもよく、この場合、ノズル8を開栓又は閉栓できる構成とし、必要に応じて、一方の方向のみに水を噴射することが好ましい。
【0044】
浮上式浮遊物移送装置1には、ロープ等の操作部材を連結するための止着部9が設けられることが好ましい。このロープ等操作部材によって、浮上式浮遊物移送装置1を固定することもできるし、任意の方法に移動させることもできる。
止着部9の取り付け位置や形態等に限定はないが、例えば、
図1等に示されるように、フレーム3に対するフロート2の取り付け位置に設けたアイナットを用いることができる。
【0045】
浮上式浮遊物移送装置1の使用状態について、
図5に従って説明する。
図5は、貯水槽等の液層において、浮上式浮遊物移送装置1を使用した状態を表す概略説明図である。
【0046】
図5では、浮上式浮遊物移送装置1が、水面Wに浮上した状態である。浮上式浮遊物移送装置1は、水中ポンプ4によって吸引された水等の液体を、ノズル8から噴射させる構成である。この噴射された水Jの噴射方向を、矢印で示す。この噴射水Jは、水面Wに浮遊するスカム等の浮遊物Sに対して噴射される。
【0047】
このように、ノズル8から、スカム等の浮遊物Sに対して噴射水Jを噴射することで、その水流によって、所定の方向へスカム等の浮遊物Sを移送することができる。
図5では、浮遊物回収装置Cに向かって、スカム等の浮遊物Sを移送するように、浮上式浮遊物移送装置1を浮設し、噴射水Jを噴射している。スカム等の浮遊物Sが、浮遊物回収装置Cの近辺に寄せ集められれば、浮遊物回収装置Cによるスカム等の浮遊物Sの回収効率を高めることができる。
【0048】
また、表面が乾燥した浮遊物Sに対して、強い水流(噴射水J)を噴射することによって、この浮遊物Sを粉砕されるので、更に、浮遊物回収装置Cによる浮遊物Sの回収効率を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
浮上式浮遊物移送装置1を用いれば、海、河川、湖又は池等における流出油や藻などによる水面に浮遊する汚染物、工場等における工業排水の貯水槽等に浮遊するスカムなど、液面に浮遊する浮遊物を所定の方向へ移送することができ、これらの回収作業を補助し、回収効率を高めるために利用可能である。
なお、本発明に係る浮上式浮遊物移送装置1の使用分野は限定されず、例えば、湖沼等における浮遊物移送にも利用でき、無線装置の積載等により、遠隔操作をすることも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 浮上式浮遊物移送装置
2 フロート
21 左側フロート
22 右側フロート
3 フレーム
31 上部フレーム
32 下部フレーム
4 水中ポンプ
41 水吐出口
5 垂直パイプ
51 上側垂直パイプ
52 下側垂直パイプ
53 垂直ロックナット
6 ノズルクランプ
7 水平パイプ
71 左側水平パイプ
72 右側水平パイプ
73 水平ロックナット
8 ノズル
9 止着部
J 噴射水
W 水面
S 浮遊物
C 浮遊物回収装置
【要約】 (修正有)
【課題】スカムの移送効率を著しく高めることができ、いかなる場所でも使用することができ、更には、移送方向を自由に変更することができる浮上式浮遊物移送装置の提供。
【解決手段】水面に浮設され、フレーム3によって連結された少なくとも2つのフロート2と、フレーム2に支持された水中ポンプ4と、水中ポンプ4の水吐出口41に接続された垂直パイプ5と、垂直パイプ5に接続されたノズルクランプ6と、ノズルクランプ6に支持された水平パイプ7と、水平パイプ7に設けられた複数のノズル8とを有しており、水中ポンプ4によって吸入された水が、水吐出口41から垂直パイプ5、ノズルクランプ6及び水平パイプ7を介して複数のノズル8に供給され、ノズル8から水が噴射される構成の浮上式浮遊物移送装置1。
【選択図】
図1