(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の駆動セグメントを有する集積液晶ディスプレイタッチスクリーンを動作させる方法であって、各駆動セグメントは1つ以上のディスプレイ行と重なっており、ディスプレイの更新は、タッチスキャンと同時に行うことが可能であり
各フレームの間に予め定められたリフレッシュレイトで前記ディスプレイの一部を更新するステップと、
前記ディスプレイの一部の前記更新と同時に、各フレームの間に予め定められたスキャンレイトで前記複数の駆動セグメントを刺激するステップと、
現在更新されているディスプレイ行と重なる駆動セグメントを同時に刺激することを防止しつつ、同時の更新及び刺激を可能にするように、前記複数の駆動セグメントを刺激するシーケンスを、第1のシーケンスから、前記第1のシーケンスとは異なる第2のシーケンスへ変更するステップと、を含み、
第1のシーケンス及び第2のシーケンスにおける前記複数の駆動セグメントの刺激は、各フレームの間に行われる、方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、添付図面と併せて以下の説明を参照することで理解が最も深まるであろう。
【0023】
以下の説明は、当業者が本発明を整備し使用できるようにするために提示しており、特定の用途並びにその要件と関連付けて提供している。開示した実施形態に対する様々な修正は、当業者には自明のことであり、ここで定義した一般原則は、本発明の精神と範囲から逸脱すること無く、他の実施形態及び用途に適用することができる。而して、本発明は、ここに示す実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と矛盾しない最大の範囲まで許容されるものとする。
【0024】
1.LCDとタッチ感知の背景
ここでは、タッチ感知技術を液晶ディスプレイに一体化する技法を開示する。
当業者には既知であるが、LCDは、複数の層、最も基本的には上ガラスと液晶と下ガラス、を含んでいる。上下各ガラスは、特定のディスプレイ・ピクセルの液晶を保有する各セルの境界を与えるため、パターン形成される。上下各ガラスは、更に、導電材料と薄膜トランジスタの様々な層でパターン形成され、各液晶セルを横断する電圧を変化させて液晶の向きを操作し、それによってピクセルの色と明度を制御することができるようになっている。
【0025】
参考文献として援用している各出願に記載されているように、タッチ面、具体的には、マルチタッチ可能透明タッチ面は、一連の層で形成される。一連の層には、少なくとも1つの基板、例えば、ガラスが含まれ、その上に複数のタッチ感応電極が配置される。例えば、相互容量配列なら、非導電層、即ち、ガラスによって分離された複数の駆動電極と複数の感知電極を含んでいる。駆動電極と感知電極の間の容量性結合は、導電性物体(例えば、ユーザーの指)を近づけることで影響を受ける。容量性結合のこの変化を利用して、特定のタッチの場所、形状、大きさ、動き、同一性など、が判定される。それらパラメータは、次に、コンピュータ又は他の電子機器のオペレーションを制御するため、翻訳される。下で説明されている自己容量配列も、当業者には既知のことである。
【0026】
LCDとタッチ・センサの積層構造を一体化することにより、様々な便益を実現することができる。この一体化には、上記積層構造を組み合わせること又は差し挟むことが含まれる。一体化には、更に、冗長的な構造を無くすこと、及び/又は特定の層又は構造に対して二重の目的(例えば、1つの目的はタッチ機能、もう1つの目的はディスプレイ機能)を見い出すこと、が含まれる。これにより、幾つかの層を無くすことができるようになり、タッチ・スクリーンLCDのコストと厚さを削減すると共に製造を簡素化できるようになる。多種多様な配列が可能であり、ここで、その内の幾つかを更に詳しく論じる。
【0027】
具体的には、一体化されたタッチ・スクリーンLCDの様々な実施形態を下に論じる。但し、当業者には理解頂けるように、それら各図に関してここに提示している詳細な説明は、一例であり網羅的なものではなく、それら実施形態に対して多くの変更を施すことができる。更に、開示している実施形態の多くは、マルチタッチ可能配列に関するものであるが、教示事項の多くは、シングルタッチ・ディスプレイにも適用することができる。
【0028】
1.1.マルチタッチ感知
同時多発又はほぼ同時多発のタッチ・イベントの認知は、
図1に示すマルチタッチ感知配列を使って行われる。マルチタッチ感知配列100は、同時に、ほぼ同時に、異なる時期に、又は或る期間に亘って、タッチ感応面101に亘る複数のタッチ属性(例えば、識別、位置、速度、大きさ、形状、及び強さを含む)を検知し監視することができる。タッチ感応面101は、実質的に互いに独立的に機能し且つタッチ感応面上の異なる各点を表している複数のセンサ点、座標、又はノード102を提供することができる。感知点102は、グリッド又はピクセルアレイに配置され、それぞれの感知点は、信号を同時に生成することができる。感知点102は、タッチ感応面101を、座標システム、例えば、デカルト又は極座標システムへマッピングしたものと考えることができる。
【0029】
タッチ感応面は、例えば、タブレット又はタッチ・スクリーンの形態をしていてもよい。タッチ・スクリーンを製造するには、容量感知点と他の関係付けられた電気構造物を、インジウムスズ酸化物(ITO)の様な実質的に透明な導電性媒体を使って形成する。感知点102の個数と構成は変えることもできる。感知点102の個数は、一般に、所望の解像度及び感受性によって決まる。タッチ・スクリーン用途において、感知点102の個数は、タッチ・スクリーンの所望の透明度によって決まることもある。
【0030】
下で詳しく説明しているものの様なマルチタッチ感知配列を使用すると、マルチタッチ・センサ101の各ノード102で生成された信号を使用して、特定の時点の各タッチのイメージを作成することができる。例えば、タッチ感応面101に接触しているか近接しているそれぞれの物体(例えば、指、スタイレット、その他)は、
図2に示すように、接点パッチ・エリア201を作り出す。各接点パッチ・エリア201は、数個のノード102を範囲に含んでいる。範囲に含まれた各ノード202は物体を検知するが、一方、残りの各ノード102は検知しない。その結果、タッチ面平面のピクセル化イメージ(これを、タッチ・イメージ、マルチタッチ・イメージ、又は近接イメージと呼ぶことにする)が形成される。各接点パッチ・エリア201の信号はまとめてグループ分けされる。各接点パッチ・エリア201は、各点におけるタッチの量に基づき、より高い点とより低い点を含んでいる。イメージ内の接点パッチ・エリア201の形状、並びに高い点と低い点を使用して、互いに密に接している接点パッチ・エリア201が差別化される。更に、現在のイメージを以前のイメージと比較し、物体が時間経過に伴い、どの様に移動したかと、その結果ホスト機器では、どの様な対応動作が行われたかが判定される。
【0031】
それら感知配列と組合せて、抵抗性、容量性、光学性、その他を含む、多種多様な感知技法が使用できる。容量ベースの感知配列では、物体がタッチ感応面101に近づくと、この物体と当該物体に近接している各感知点102の間に僅かな容量が形成される。この僅かな容量によって生じた感知点102のそれぞれの容量の変化を検知し、それら感知点の位置を観察することによって、感知回路103は、複数のタッチを検知し監視することができる。各容量感知ノードは、自己容量に基づくものでも又は相互容量に基づくものでもよい。
【0032】
自己容量システムでは、感知点の「自己」容量が、何らかの基準、例えば、接地、と比較して測定される。感知点102は、空間的に分離されている電極であってもよい。それら電極は、駆動回路104と感知回路103に、導電トレース105a(駆動ライン)と105b(感知ライン)によって結合されている。幾つかの自己容量式実施形態では、各電極に対する1つの導電トレースを、駆動ラインと感知ラインの両方として使用することができる。
【0033】
相互容量システムでは、第1電極と第2電極の間の「相互」容量が測定される。相互容量感知配列では、感知点は、空間的に分離された各ラインを形成している、パターン形成された導電体の交差部により形成される。例えば、駆動ラインと感知ラインが各感知点102で互いに交わる、即ち「交差する」ように、駆動ライン105aは第1層上に、感知ライン105bは第2層105b上に、形成される。異なる層は、異なる基板であってもよいし、同じ基板の異なる面であってもよいし、何らかの誘電分離を施した基板の同じ面であってもよい。駆動ラインと感知ラインの間の分離により、各「交差部」に容量性結合が生じる。
【0034】
駆動ラインと感知ラインの配列は様々である。例えば、(図示の)デカルト座標システムでは、駆動ラインは横方向の行として形成され、一方、感知ラインは縦方向の列として形成され(又は、その逆であり)、而して、明確に区別できるxとy座標を有していると考えることができる複数のノードを形成する。或いは、極座標システムでは、感知ラインは複数の同心円であって、駆動ラインは半径方向に伸びているラインであり(又は、その逆であり)、而して、明確に区別できる半径及び角座標を有していると考えることができる複数のノードを形成する。何れの場合も、駆動ライン105aは駆動回路104に接続され、感知ライン105bは感知回路103に接続される。
【0035】
作動時、駆動信号(例えば、周期的電圧)が、各駆動ライン105aに印加される。駆動されると、駆動ライン105aに印加された電荷は、各ノード102を介して、交差している各感知ライン105bに容量的に結合される。これは、検知可能測定可能な電流及び/又は電圧を、感知ライン105bに発生させる。駆動信号と感知ライン105bに現れる信号の間の関係は、駆動ラインと感知ラインを結合する容量の関数となり、これは、上で指摘したように、ノード102に近接している物体によって影響を受ける。容量感知回路(又は各回路)103は、下で更に詳しく説明するように、感知ライン105bを感知し、各ノードにおける容量を確定する。
【0036】
上で論じたように、駆動ライン105aは、一度に1つずつ駆動され、その間、他の駆動ラインは接地されている。この処理は、全ての駆動ラインが駆動されるまで、それぞれの駆動ライン105aについて繰り返され、(容量に基づく)タッチ・イメージが、感知結果から構築される。全てのライン105aが駆動されてしまうと、上記シーケンスが繰り返されて、一連のタッチ・イメージが構築される。但し、本発明の幾つかの実施形態では、2007年1月3日出願の米国特許出願第11/619,466号「同時発生感知配列」に記載されているように、複数の駆動ラインが実質的に同時又はほぼ同時に駆動される。
【0037】
図3は、上記配列に対応する相互容量回路300の簡略配線図を示している。相互容量回路300は、駆動ライン105aと感知ライン105bを含んでいて、両ラインは空間的に分離されているので、容量性結合ノード102が形成される。駆動ライン105aは、電圧ソース301に代表される駆動回路104に電気的に(即ち、導電的に)結合されていてもよい。感知ライン105bは、容量感知回路803に電気的に結合されていてもよい。中には、駆動ライン105aと感知ライン105bが共に何らかの寄生容量302を含んでいる事例もある。
【0038】
上で指摘したように、駆動ライン105aと感知ライン105の交差部に近接して、導電性物体が存在していなければ、ノード102の容量性結合は、極めて一定に保たれる。しかしながら、電気伝導性物体(例えば、ユーザーの指、スタイレット、その他)がノード102に近接して来ると、容量性結合(即ち、ローカルシステムの容量)が変化する。容量性結合が変化すると、感知ライン105bによって搬送される電流(及び/又は電圧)が変化する。容量感知回路103は、容量の変化とノード102の位置を観察し、この情報を何らかの形式でプロセッサ106(
図1)に報告する。
【0039】
図1を参照すると、感知回路103は、タッチ面101からのデータを捕捉し、捕捉されたデータをプロセッサ106に供給する。幾つかの実施形態では、感知回路103は、生データ(例えば、それぞれの感知点102に対応する容量値のアレイ)をプロセッサ106に送ることができるように構成されている。他の実施形態では、感知回路103は、生データ自体を処理して、処理済みのタッチデータをプロセッサ106に送達することができるように構成されている。何れの場合も、次に、プロセッサは、自身が受け取ったそのデータを使用して、コンピュータ・システム107及び/又は同コンピュータ上で実行されている1つ又は複数のアプリケーションのオペレーションを制御する。上に挙げたものの他にも、上で参照した各出願には様々な実施例が記載されており、それらには、タッチパッド及びタッチ・スクリーンを有する各種コンピュータ・システムが含まれている。
【0040】
幾つかの実施形態では、感知回路103は、1つ又はそれ以上のマイクロ・コントローラを含んでおり、それらコントローラのそれぞれは、1つ又は複数の感知点102を監視する。各マイクロ・コントローラは、タッチ感応面101からの信号を監視し、監視された信号を処理し、その情報をプロセッサ106に報告するように、ファームウェアで機能する特定用途向け集積回路(ASIC)でもよい。各マイクロ・コントローラは、携帯情報端末(PDS)でもよい。幾つかの実施形態では、感知回路103は、各感知ライン105bの容量を測定し、測定された値をコンピュータ・システム107のプロセッサ106又はホストコントローラ(図示せず)に報告する、1つ又は複数のセンサICを含んでいる。どの様な数のセンサICを使用してもよい。例えば、全ラインに対し1つのセンサICを使用してもよいし、或いは、1つのライン又はライン群に対し複数のセンサICを使用してもよい。
【0041】
図4は、上に述べた様なマルチタッチ感知配列を操作するためのハイレベルのプロセス400を示している。このプロセスは、複数の感知点102が駆動されるブロック401で開始される。ブロック401に続き、プロセスフローはブロック402に進み、そこで、感知点102からの出力が読み込まれる。例えば、各感知点102毎の容量値が入手される。ブロック402に続き、プロセスはブロック403に進み、そこで、或る1つの瞬間のタッチのイメージ又は他のデータ形式(例えば、信号又は各信号)が作成され、その後、分析されて、タッチ・センサにタッチしているか近接している物体がどこに位置しているかが判定される。ブロック403に続き、プロセスはブロック404に進み、そこで、現在のイメージ又は信号が、1つ又は複数の過去のイメージ又は信号と比較され、それぞれの物体の、形状、大きさ、場所、方向、速度、加速度、圧力、その他の内の1つ又はそれ以上における変化が判定される。この情報は、引き続き、ポインタ又はカーソルの移動から複雑なジェスチャベースの対話まで多岐に亘る、コンピュータ・システム107内での動作を実行するのに使用される(ステップ405)。
【0042】
1.2.トランスフレクティブLCD
タッチ感知技法とトランスフレクティブLCDの一体化を更に深く理解するためには、トランスフレクティブLCDを簡単に紹介することが助けになろう。以下は、低温ポリシリコン(LTPS)トランスフレクティブLCDの典型的なサブピクセルセルの概括である。
【0043】
1.2.1.回路の基本原則
図5は、LTPSトランスフレクティブ・サブピクセル500の代表的なレイアウトを示している。所望のグレイレベルを表している電圧がデータバス501に印加され、選択ライン502がアサートされると、ディスプレイ情報は、サブピクセルのコンデンサーC
STとC
LC(図示せず)に転送される。選択ライン502のアサーションレベルは、ゲート駆動正供給電圧に近くなっている。選択ライン502がアサートされている間、V
CST(及び、図示していないV
COM)の電圧は一定である。
図5に示している全ての回路要素は、金属、ポリ、アクティブ、酸化物、及びITOを含んでおり、それらは、LCDの下ガラス側に製作することができる。
【0044】
図6は、低温ポリシリコン(LTPS)LCD600の簡略化モデルを示しており、上面
図601と側面
図602を含んでいる。上面
図601は、ディスプレイ・エリア604と非ディスプレイ・エリア605、両エリア内の、下ガラス608側のV
CST経路603の透視図を示している。側面
図602は、ディスプレイの断面を示している。
【0045】
各ディスプレイ行は、V
CST606と選択(図示せず)の横トレースを含んでいる。選択トレースは、同じく図示していないポリシリコン薄膜トランジスタ(p−Si TFT)で構成されているゲート駆動回路に接続されている。各V
CSTトレース606は、ディスプレイの縁から縁まで走っており、例えば、左手に示す様に一体に接続されている。V
CSTトレースは、導電ドット607を介して、上ガラス610側のITO面609にも接続されている。通常、V
COM面をV
COMDrive611に接続するのに、それぞれの隅に1つずつ、4つの導電ドットが使用される。
図6は、分かり易くするために、1つのドット607しか示していない。V
CSTと上ガラスITO609の電圧は、V
COMDriveによって設定され、このV
COMDriveは、LCDドライバIC(図示せず)によって提供することができる。V
CSTは、V
COMDrive611以外の別の駆動ソースに接続されていてもよい。
【0046】
図7は、サブピクセルの回路
図700を示しており、そのガラス基板上に、各種構成要素が製作されていることを示している。下ガラス701は、全てのTFTピクセル回路703を一体化するための基板である。これは、選択ライン・ドライバと制御論理を含んでいる。下ガラスは、LCDドライバ(図示せず)の様なチップ・オン・ガラス(COG)構成要素のための基板の役目も果たしている。コンデンサーC
LCの上側電極304は、上ガラス702側に配置されている。電極704は、ディスプレイ・エリアの全域を覆い、C
LCを構成している下側電極705に対する対極を形成する、ITIO面とすることができる。上側電極704は、例えば、4つの隅に設置された導電ドット706(1つだけを図示)を介して、下ガラス701側のV
COMDrive707にも接続されている。
【0047】
1.2.2.V
COM
液晶(LC)を横切る電圧のDC成分を最小化又は無くせば、幾つかの望ましくないイメージアーチファクトを低減又は無くすことができる。従って、LCを横切る電界は、2つの電界方向の間で全体的な均衡を保ちながら周期的に反転される。完璧な電界均衡を得ることは困難であり、その結果、僅かなDCオフセットが生じて、好ましくないイメージアーチファクトが生まれる恐れがある。DCオフセットに起因するちらつきを覆い隠すために、当業者には既知の幾つかの反転理論体系の内の1つ、例えば、ドット反転、を採用することができきる。
【0048】
1.2.3.V
COMの変調
幾つかの実施形態では、データ・ドライバの電圧範囲を縮小するのが望ましい場合もある。従って、V
COMITO面とV
CSTトレースを、接地から供給レールに変調し、LCを横切るAC電圧を作り出してもよい。但し、これは、利用可能な転換方法をフレームタイプとラインタイプのみに限定することになる。
【0049】
V
COMDriveの要件は、極めて単純であり、即ち、その電圧が、或るピクセル行について電荷移動が完了し、而してそれらのグレイレベルが設定されるまで、一定に留まる、というものである。一旦、ディスプレイ・ピクセルが設定されてしまえば、V
COMDriveは、サブピクセルに出入りする寄生経路が小さいままであることを前提に、LC状態に顕著な影響を及ぼすこと無く変化することができる。
【0050】
1.2.4.定V
COM
V
COM変調は、タッチ感知とLCDとの一体化を複雑化する恐れがある。それら複雑化を克服するための各種技法を下に論じる。液晶を横切る電圧のDC成分を最小化する代わりの方法を採用してもよい。その様な代わりの方法の1つが、J.HectorとP.Buchschacherによる“Low Power Driving Options for an AMLCD Mobile Display Chipset”,SID 02 Digest,pp.695−697に開示されており、同文献を参考文献としてここに援用する。この代わりの方法は、V
COMを定電圧に留めることができるようにするので、広電圧範囲データ・ドライバは不要となり、電力消費を下げることができる。
定V
COMを利用することの様々な利点を下に説明する。
【0051】
1.3.LCD製造
LCDパネルの製造は、マザーガラスと呼ばれる大きなガラス片にバッチ工程を採用して行われる。マザーガラスは、カラーフィルタ、ブラック・マトリクス、及びC
LCの上側電極の基板となる上マザーガラスと、アクティブ・マトリクスTFTアレイと駆動回路の基板となる下マザーガラス、の2片が使用される。
【0052】
LCD製造の基本的なプロセスフローを
図8に示している。2枚の大きなマザーガラス・シートが、LCDの上部分用に1枚と下部分用に1枚として、別々の加工工程801と802を通された後、整列され(ブロック803)、一体にプレスされて、熱処理を施され(ブロック804)、上ガラスと下ガラスの間のシールを硬化させ、これにより、安定したパネル構造が作り出される。次いで、大型パネルは、所望の寸法の、より小型のモジュールに罫書かれ、切断される(ブロック805)。個々のモジュールは、縁部を研磨した(ブロック806)後に、液晶が充填される(ブロック807)。充填後、モジュールはシールされる(ブロック808)。ポラライザーと電気的構成要素が取り付けられる(ブロック809)。フレキシブルプリント回路(FPC)が、加工工程の終了又は終了間際に、それぞれの基板に取り付けられる(ブロック810)。
【0053】
完成したLCDモジュール900を
図9に示している。図示のLCDモジュールは、下ガラス902に取り付けられたチップ・オン・ガラス(COG)LCDドライバ901を含んでおり、更に、下ガラス902に取り付けられたフレックス・オン・ガラス(FOG)フレキシブルプリント回路(FPC)903を含んでいる。両構成要素は、下ガラスパッドに電気的に接続され、異方性導電性接着剤(ACA)を使って所定の位置に保持されている。下ガラス902は、上ガラス904からはみ出していて、COG LCDドライバ901、FPC903、及び他の支援構成要素を搭載するための棚905を提供している。ハンドヘルド機器では、データを管理しLCDを制御するシステム・プロセッサ・ボードは、バックライト906の下方に設置される。
【0054】
タッチ感知を支援するのに使用される追加の各構成要素(例えば、FPC)を、棚905に取り付けることもできる。他の各取り付け位置も可能である。詳細は、下で説明している関連の実施形態と併せて説明する。
【0055】
1.4.LCDとタッチ感知を組み合わせる
ここで論じる積層構成図は、
図10と
図11のブロック図に関連付けると更に深く理解されるであろう。一番上から始めて、タッチ感知電極1001、1101が、LCD上ガラス1002、1102の一番上(ユーザー側)に配置されている。タッチ駆動電極1003、1103は、上ガラス1002、1102の底面にパターン形成されている。導電ドット1004、1104が、駆動電極1003、1103を、同じく下ガラス1006、1106に設置されているドライバ1005、1105に接続している。下ガラス1006、1106側の棚1007、1107は、LCDドライバ・チップ1008、1108と、タッチ・センサ・ドライバ・チップ1009を収容しており、LCDドライバ・チップとタッチ・センサ・ドライバ・チップは、互いにインターフェースしていてもよいし(
図10)、又は1つの構成要素に一体化されていてもよい(
図11)。最後に、同じく棚に接合されているFPC1010、1110が、ホスト機器1011、1111に接続されている。
【0056】
2.一体化オプション
一体型タッチ感知を備えたLCDの幾つかの実施形態は、上ガラスと下ガラスを含んでいる。2つのガラス層の間の液晶の層を通過する光の量に影響を及ぼすため、ディスプレイ制御回路を、それらガラス層の一方及び/又は両方に形成することができる。上ガラスと下ガラスの外部縁の間の空間は、ここでは液晶モジュール(LCM)と呼ばれている。
【0057】
代表的なLCD積層構成1200は、通常、
図12に示す様に、追加の層を含んでいる。
図12では、ハードコートされたPMMA層1201が、LCDポラライザー1202と上ガラス1203を保護しており、第2ポラライザー1205は、下ガラス1204とバックライト1206の間に含まれている。
【0058】
タッチ感知技術をLCDへの一体化するのは、各種技法を使用して実現することができる。例えば、異なるタッチ感知要素及び/又は層を、LCDディスプレイに組み込むことができ、実施形態が違えば、ディスプレイ及び/又は製造のコスト、ディスプレイの大きさ、ディスプレイの複雑性、ディスプレイの耐久性、ディスプレイの機能性、イメージ表示品質の様な要素が変動することになる。幾つかの実施形態では、タッチ感知能力は、タッチ感知要素をLCMの外部のLCDディスプレイ上に一体化することにより、LCDの中に含ませることができる。他の実施形態では、タッチ感知要素は、LCM内部(例えば、2つのガラス層の間)のみならずLCMの外部にも追加されている。更に他の実施形態では、タッチ感知要素のセットが、LCM内部(例えば、2つのガラス層の間)だけに追加されている。以下の節では、上記実施形態のそれぞれに合わせた複数のコンセプトを説明する。
【0059】
2.1.液晶モジュールの外部のタッチ感知
LCMの外部にタッチ感知要素を追加すれば、代表的なLCDの製造慣行に殆ど又は全く影響を与えずに、LCDディスプレイにタッチ感知能力を追加できるようになる。例えば、タッチ感知システムとLCDディスプレイシステムを別々に製作し、最終工程で一体化して、タッチ感知能力を有するLCDを形成してもよい。LCMの外部にタッチ感知要素を設ければ、ユーザーがタッチするエリアの近くにタッチ感知要素を設置できるようになり、ディスプレイとタッチ構成要素の間の電気的干渉を小さくできる可能性がある。
【0060】
コンセプトCとコンセプトNとして識別されている以下の2つの実施形態では、その様な外部タッチ感知要素を組み込むことができる。
【0061】
2.1.1.コンセプトC
本発明の1つの実施形態であるコンセプトCは、タッチ機能をLCDから切り離せるようにした、
図13に示す積層構成を採用している。コンセプトCでは、2つの追加のインジウム−スズ酸化物(ITO)層(ITO1 1301とITO2 302)が、カラーフィルタ(CF)プレート(例えば、上ガラス層)の上にパターン形成されている。これらの層は、タッチ・センサ、例えば、相互容量タッチ・センサ、のタッチ感知及びタッチ駆動各要素に使用することができる。それらITO層は、列及び/又は行にパターン形成され(
図1と
図2に示し、先のマルチタッチ感知についての記述で説明)、ガラス基板か薄い(例えば、5〜12mm)SiO
2層の様な誘電体1305で分離される。
【0062】
幾つかの実施形態では、タッチ要素に使用される電極パターンは、目に見えるアーチファクトを低減するよう最適化される。例えば、
図14は、目に見えるアーチファクトを低減することができるダイヤモンド電極パターンを示している。
【0063】
コンセプトCでは、タッチ感知データを搬送するFPCは、上ガラス1303の表面に取り付けられる。
【0064】
2.1.2.コンセプトN
本発明の1つの実施形態であるコンセプトNは、自己容量感知を利用して、カラーフィルタ(CF)プレートの外部面に容量感知を実装することができる。コンセプトNは、タッチ感知構成要素をCFプレート1501(上ガラス)の上に設置した、
図15に示す積層構成を使用している。コンセプトNに基づくLCDは、標準的LCD製作工程を変更すること無しに、例えば、従来のTFTプレート1504で使用されるものと同じLTPS工程を利用して、CF面1501上に2層の金属層とパターン形成されたITO1500でTFT1503を形成することにより構築することができる。タッチITO層1500は、複数のタッチ・ピクセル1612にパターン形成されている(
図16)。タッチITO層1500は、プラスチックカバー1702(
図17に図示)によって保護され、ユーザーにタッチされる面としても機能する。
【0065】
図16は、コンセプトNの自己容量タッチ・ピクセル回路を示している。各ITOタッチ・ピクセル1612は、2つのTFT、例えば、入力TFT1604と出力TFT1608に接続されている。入力TFT1604は、ITOタッチ・ピクセル1612を帯電させ、一方、出力TFT1608は、ITOタッチ・ピクセル1612を放電させる。移動する電荷の量は、指を近づけることで変化するITOタッチ・ピクセル1612の容量によって決まる。自己容量タッチ感知の更なる詳細は、上で説明しており、また、2002年11月27日発行の米国特許第6,323,846号「手動入力を一体化するための方法と装置」に記載されており、その全内容を参考文献としてここに援用する。
【0066】
1つの実施形態では、
図16と
図18の出力列1610‘C0’と出力ゲート1601‘R3’に示すように、出力列1610は、縦方向に各タッチ・ピクセルに共有されており、出力ゲート1606は、横方向に各タッチ・ピクセルに共有されている。
図19は、タッチ・ピクセルの詳細なレイアウトを示している。
【0067】
2.2.部分的に一体化されたタッチ感知
タッチ感知要素をLCM内部に一体化することは、様々な利点をもたらす。例えば、タッチ感知要素をLCM内部に追加すれば、ディスプレイ機能にしか使用することができなかったITO層又は他の構造を「再使用」して、タッチ感知の機能性をも提供することができるようになる。タッチ感知特性を既存のディスプレイ層に組み込むことで、合計層数を減らすことができ、これにより、ディスプレイの厚さが薄くなり、製造行程を簡素化することができる。
【0068】
以下の実施形態では、タッチ感知要素をLCM内部と外部に含ませることができる。タッチ感知要素をLCM内に一体化することは、結果的に、2つの機能の間にノイズと干渉を生じさせるので、以下の設計には、両者の間の電気的干渉によって引き起こされるディスプレイ及び/又はタッチ感知出力に対するあらゆる悪影響を低減又は排除しながら、各要素を共有できるようにする、技法も含まれている。
【0069】
2.2.1.コンセプトA
コンセプトAは、マルチタッチ可能(“MT”)ITO感知層(ITO1)2001が、上ガラス2002のユーザー側、上ガラスとポラライザー2003の間に配置されている、
図20に示す基本的積層構成2000を使用することができる。一番上から始めて、タッチ感知層は、ITO1 2001(N個の感知(又は駆動)ラインにパターン形成することができるITO層)と、ITO2 2004(M個の駆動(又は感知)ラインにパターン形成することができるITO層)を含んでいる。ITO2 2004は、LCDのV
COM電極の役目も果たす。
【0070】
2.2.1.1.コンセプトA:タッチ・センサ電極
タッチ・センサ電極アレイは、
図21(左側)に示している、パターン形成された2つのITO層を含んでいる。
図21は、タッチ・センサ電極の1つの可能な実装の簡略図である。視聴者に近接している層、即ちITO 2101が、タッチ出力層となり、この層は感知層又は感知ラインとも呼ばれる。タッチ駆動層2102は、層ITO2側に在る。ITO2は、コンデンサーC
LC(
図7参照)の上側電極も形成している。
図21(右側)は、更に、3つの感知ピクセル2103a、2103b、及び2103cの詳細を、関係付けられたコンデンサーと共に示している。感知ラインと駆動ラインは、共に、ピッチが5mmで10乃至30ミクロンのギャップを設けている。ギャップは、裸眼で見えない程度に小さく、但し、単純な近接マスクで容易にエッチングできる程度に大きければよい。
(図のギャップはかなり誇張されている。)
【0071】
図22は、コンセプトAの1つの可能な物理的実装を、ケーブル配線とサブシステム配置の上面
図2201と側面
図2202で示している。上面
図2201は、FPC2203(下で更に詳しく論じる)の折り畳まれていない状態の大まかな位置を示している。
図14は、個別のタッチレベルシフター/デコーダCOGを使用した唯1つの物理的実装を表している。個別のタッチ構成要素の個数を最小化した代わりのアーキテクチャを、下で論じる。機械的安定性を得るために、FPCは、側面
図2201に示すように曲げることができるので、T−タブ2204とB−タブ2205の結合部に掛る応力は最小化される。
図23は、主要な下ガラス構成要素とタッチ感知に使用される上ガラス側のセグメント化されたITO2層2301の1つの可能なアーキテクチャ2300を示しているハイレベル・ブロック図である。上ガラス側のITO2の各セグメント2302は、それぞれ、導電ドット2303を介して、下ガラス側の対応するパッドに接続されている。下ガラス側のパッドは、それぞれ、下で論じているタッチ・ドライバに接続されている。
【0072】
2.2.1.2.コンセプトA:導電ドット
LCDの隅に設置されている導電ドットは、V
COM電極を駆動回路に接続するのに使用されている。タッチ駆動ラインをタッチ−駆動回路に接続するのに、追加の導電ドットが使用されている。各ドットは、タッチ駆動信号(下で詳しく論じる)に大きな位相遅延を追加することのないように、抵抗が十分に低くなっている。これには、導電ドットの抵抗を10オーム又はそれ未満に制限することが含まれる。必要な収容面積を減らすために、導電ドットの大きさにも制限を課してもよい。
【0073】
図24に示すように、ドット抵抗と収容面積要件の両方を減らすために、細長い導電ドット2401が使用される。タッチ駆動セグメント2402は幅が約5mmで、ドット抵抗を下げるため、大きな面積を提供している。
【0074】
2.2.1.3.コンセプトA:フレックス回路とタッチ/LCDドライバIC
従来のディスプレイ(例えば、
図9)は、LCDドライバ集積回路(IC)901を有していて、ディスプレイのローレベル・オペレーションを制御することができるようになっている。システムのホスト・プロセッサは、コマンドとディスプレイデータをLCDドライバ901に送ることによって、ディスプレイに対してハイレベル制御を実行する。マルチタッチ・システムは、更に、1つ又は複数のドライバICを有している。援用している参考文献に記載されている1つの一例的なマルチタッチ可能システムは、3つのIC、即ち、マルチタッチ・コントローラと、外部レベルシフター/デコーダと、ARMプロセッサの様なコントローラと、を含んでいる。ARMプロセッサは、マルチタッチ・コントローラに対してローレベル制御を実行し、このマルチタッチ・コントローラが、次に、レベルシフター/デコーダを制御する。システムのホスト・プロセッサは、ARMプロセッサに対してハイレベル制御を実行し、同プロセッサからタッチデータを受け取る。幾つかの実施形態では、それら各ドライバは、単一のICに集積されている。
【0075】
図25は、タッチ/LCD駆動集積回路2501の一例的なハイレベル・ブロック図を示している。ICには、2つの主要機能、即ち、1)LCD制御と更新、及び2)タッチ走査とデータ処理、がある。これら2つの機能は、LCD制御に使用されるLCDドライバ部分2502と、タッチ走査と処理に使用されるARMプロセッサ2503及びマルチタッチ・コントローラ2504と、によって一体化することができる。各タッチ回路は、一方が他方に干渉することを防ぐために、LCD走査と同期化される。ホストと、LCDドライバ又はARMプロセッサの何れかとの間の通信は、ホスト・データ及び制御バス2505を介することになる。より一体性を高めたタッチ/LCDドライバを下で論じる。
【0076】
図26に示すように、様々なタッチ及びディスプレイ層の信号をまとめて運ぶFPC2601は、3つのコネクタタブ、即ち、T−タブ2602、B−タブ2603、及びホスト・タブ2604を有している。T−タブは、上ガラス側の感知ラインパッドに接続されている。T−タブ・トレース2605は、B−タブ2603上の対応するパッドに接続されており、B−タブは下ガラスにも取り付けられている。B−タブ2603は、更に、ホストをタッチ/LCDドライバICに接続できるようにする、ホスト・タブ2604からの通り抜け経路2606を提供している。FPC2601は、タッチ及びLCDオペレーションを支援している各種構成要素2607の基板にもなっていて、2つのパッド2608を介してバックライトFPCにも接続されている。
【0077】
FPC2601は、上ガラスと下ガラスの両方に接合されているタブでもよい。或いは、他の接合方法を採用してもよい。
【0078】
2.2.1.4.コンセプトA:下ガラス側に一体化させたタッチ駆動
レベルシフター/デコーダ・チップは、別体の電圧ブースタ(例えば、3V乃至18Vブースタ)と共に、タッチ感知のための高電圧駆動回路を提供する。1つの実施形態では、タッチ/LCDドライバICは、レベルシフター/デコーダ・チップを制御することができる。或いは、電圧ブースタ及び/又はレベルシフター/デコーダは、タッチ/LCDドライバICに一体化してもよい。例えば、その様な一体化は、高圧(18V)LTPS加工を利用して実現することができる。これにより、レベルシフター/デコーダ・チップと電圧ブースタを下ガラスの周辺に一体化することができるようになる。レベルシフター/デコーダは、更に、下で論じるV
COM変調とタッチ駆動のための電圧も提供する。
【0079】
2.2.1.5.コンセプトA:タッチ駆動をLCD V
COMと共有
上で論じたように、コンセプトAは、標準的なLCD積層構成に1層のITO層を追加し、それをタッチ感知ラインとして機能させている。タッチ駆動層は、ITO2とも表わされるLCD V
COM面と共有される。ディスプレイ・オペレーションでは、標準的なビデオ・リフレッシュ・レート(例えば、60fps)が使用される。タッチ感知では、少なくとも毎秒120回というレートが使用される。しかしながら、タッチ走査レートは、ディスプレイ・リフレッシュ・レートに一致する毎秒60走査の様な低速に落としてもよい。幾つかの実施形態では、ディスプレイ・リフレッシュ又はタッチ走査の何れかを中断させないことが望ましい場合がある。従って、ディスプレイ・リフレッシュ又はタッチ走査(同じレート又は異なるレートで行われている)を低速化又は中断させること無く、ITO2層を共有化できるようにする案をこれより説明する。
【0080】
同時に起こるディスプレイ更新とタッチ走査を
図27に示している。この実施例には、5つのマルチタッチ駆動セグメント2700、2701、2702、2703、2704が示されている。各タッチ駆動セグメントは、M個のディスプレイ行に重なっている。ディスプレイは、毎秒60フレームで走査され、一方、マルチタッチ・センサ・アレイは毎秒120回走査される。図は、1ディスプレイ・フレームの時間展開が16.67msec持続することを示している。現在更新中のディスプレイのエリアは、アクティブなタッチ駆動セグメントと重ならないのが望ましい。
【0081】
パッチ2705は、各ディスプレイ行が更新中であることを表している。パッチ2706は、アクティブなタッチ駆動セグメントを表している。
図27の左上隅の、ディスプレイ・フレームの開始地点で、1番目のM/2個のディスプレイ・ラインがリフレッシュされる。同時に、タッチ駆動セグメント1 2701は、タッチ感知を目的として駆動される。フレーム内を右に移動して、時間t=1.67msの時点で、次の絵は、次のM/2個のディスプレイ行がリフレッシュ中であり、同時に、タッチ駆動セグメント2 2702が駆動されることを示している。このパターンの約8.3msec後(2番目の行の開始点)には、各タッチ駆動セグメントは既に一度駆動されており、ディスプレイの半分がこれからリフレッシュされることになる。次の8.3msecでは、タッチ・アレイ全体が、再度走査されることになり、而して、走査レートは120fpsとなり、その間、ディスプレイの他方の半分が更新される。
【0082】
ディスプレイ走査は、通常、ライン順に進むので、各タッチ駆動セグメントは、ディスプレイとタッチ活動が重なるのを回避するために、順番通りに駆動されない。
図27に示している実施例では、タッチ駆動の順番は、1番目の8.3msec中は1、2、3、4、0であり、2番目の8.3msec期間中は1、2、4、3、0であった。実際の順番設定は、タッチ駆動セグメントの個数とディスプレイ行の個数によって決まる。従って、一般には、タッチ駆動利用の順番をプログラムする能力があることが望ましい。但し、或る特別の場合には、固定された逐時的順番設定で十分である。
【0083】
アクティブなタッチ駆動セグメントを、更新中のディスプレイのエリアから更に遠くに切り離すことが(イメージ品質の理由から)望ましい場合もある。これは
図27には示していないが、十分な個数のタッチ駆動セグメント(例えば、6個又はそれ以上のセグメント)が与えられれば、簡単に行うことができる。
【0084】
そのような技法には、高周波ディスプレイ駆動要素を支援するための多重回路を必要とすること無しに、ディスプレイとタッチ感知の要素毎に異なるリフレッシュ・レートを可能にする効果がある。
【0085】
2.2.1.6.コンセプトA:V
CST駆動オプション
図6に示すように、V
CSTとV
COMはひとまとめに接続され、而して一体にモジュール化されて、LCを横切る所望のAC波形を実現する。これは、V
COM変調を利用する際、適切なディスプレイ・リフレッシュを実現するのに役立つ。V
COMがタッチ駆動に使用される時、V
CSTまで変調する必要はない。これは、下で説明しているように、開回路V
CSTオプション(Open V
CST Option)と考えることができる。但し、V
CSTがV
STMで変調されると、タッチ駆動信号に対する容量性負荷V
STMが減少し、タッチ信号に僅かな位相遅延が生じる恐れがある。これは、下で説明しているDrive V
CSTオプション(Drive V
CST Option)と考えることができる。
【0086】
図28は、開回路V
CSTオプションを示している。下の
図2802は、1つのタッチ駆動セグメント2803が、どの様に、M個のディスプレイ行2804に重なるかを示している。上ガラス側に在る各タッチ駆動セグメント2803は、導電ドット2805を介して下ガラス側の各回路に電気的に接続されている。タッチ駆動セグメント下方のM行のM個のV
CSTラインは、ディスプレイ2806の縁にひとまとめに接続されている。上の
図2801は、自身の別体の蓄積コンデンサーC
STを有する、サブピクセルの基本的な回路を示している。上側の図中のエリア2807は、1つのタッチ駆動セグメントによってカバーされているM個の連続したサブピクセル行を表している。特定のタッチ駆動/ディスプレイ群のディスプレイ・オペレーションとタッチ感知は、上で論じたように、異なる時期に起こる。ディスプレイ・ドライバが、M個の行内の各サブピクセルの状態を設定する用意ができた時、各スイッチ2808、2809は、V
COMDrive2810を、M個のV
CSTライン2804と、タッチ駆動セグメント(V
COM)に接続する。V
COMDrive電圧は、LCDドライバにより、反転の位相次第で接地か供給レールの何れかに設定される。その後、このタッチ駆動/ディスプレイ群がタッチ用に利用可能となった時、スイッチ2808、2809は、タッチ駆動セグメントをV
STM2811に接続し、V
CSTをV
COMDrive2810から外し、而して、それを開状態2812に置く。
【0087】
図29は、Drive V
CSTオプションを示している。下の
図2902は、1つのタッチ駆動セグメント2903が、どの様に、M個のディスプレイ行2904に重なるかを示している。上ガラス側に在る各タッチ駆動セグメント2903は、導電ドット2905を介して下ガラス上の各回路に電気的に接続されている。或る特定のタッチ駆動セグメント下方の各行のM個のV
CSTラインは、ディスプレイ2906の縁にひとまとめに接続されている。上の
図2901は、別体の蓄積コンデンサーC
STを有する、サブピクセルの基本的な回路を示している。上側の図中のエリア2907は、1つのタッチ駆動セグメントによってカバーされているM個の連続したサブピクセル行を表している。ディスプレイ・オペレーションとタッチ感知は、異なる時期に起こる。ディスプレイ・ドライバが、M個の行内の各サブピクセルの状態を設定する用意ができた時、スイッチ2908は、V
COMDrive2910を、M個のV
CSTライン2904と、タッチ駆動セグメント(V
COM)に接続する。V
COMDrive2910電圧は、LCDドライバにより、通常は、反転の位相次第で接地か供給レールの何れかに設定される。その後、このタッチ駆動/ディスプレイ群がタッチ用に利用可能となった時、スイッチ2908は、V
CSTとタッチ駆動セグメント(V
COM)をV
STM2911に接続する。
【0088】
2.2.1.7.コンセプトA:MT−Drive容量性負荷
コンセプトAのタッチ駆動ラインに対する容量性負荷は、例えば、タッチ駆動層と下ガラスの間のギャップが狭く(例えば、〜4μm)、金属ルートとピクセルITOのメッシュで覆うことができるので、高くなっている。液晶は、かなり高い最大誘電定数(例えば、10程度)を有する場合もある。
【0089】
タッチ駆動セグメントの容量は、刺激タッチパルスV
STMの位相遅延に影響を及ぼす。容量が高すぎ、従って位相遅延が過大であれば、得られるタッチ信号に悪意影響が出る。本発明の発明人が行なった分析の結果は、ITO2シートの抵抗を約30オーム/平方以下に維持すれば、位相遅延を最適限界内に維持できることを示している。
【0090】
2.2.1.8.コンセプトA:電気モデルとV
COM−誘導ノイズ
ITO2は、タッチ駆動とLCD V
COMの両方で同時に使用されることから、V
COMの変調はタッチ信号にノイズを加えることになる。
【0091】
例えば、或るタッチ駆動セグメントが、別のタッチ駆動セグメントがタッチ感知に使用されているのと同じ時期に、V
COMで変調されると、ノイズ成分がタッチ信号に加わることがある。加わるノイズの量は、V
STMに関するV
COM変調の位相、振幅、及び周波数によって異なる。V
COMの振幅と周波数は、LCDで使用される反転方法によって異なる。
【0092】
図30は、タッチ駆動3001がタッチ感知とLCD V
COM変調の両方に使用される状況に合わせた電気モデルを示している。モデルは、V
COM変調が電荷増幅器3002の入力にノイズを加える恐れのある入力経路を示している。
【0093】
幾つかの実施形態では、電荷増幅器3002は、V
COM3003によって誘導されるノイズに対応するための追加的ヘッドルームを必要とする。更に、続くフィルタリング回路(例えば、図示していないが、同期復調器)は、V
COM変調に起因するノイズ信号を取り去る必要がある。
【0094】
2.2.1.9.コンセプトA:V
STM効果
或る特定の条件下でのV
STM変調は、変調されるタッチ駆動セグメント下方のサブピクセルの電圧に悪影響をもたらす恐れがある。サブピクセルRMS電圧が判別できるほど変化した場合、ディスプレイ・アーチファクトが生じることがある。結果的に起こる恐れのあるディスプレイの歪を最小限にするために、以下の技法の1つ又はそれ以上を採用することができる。
【0095】
両面からのタッチ駆動は、LCピクセル電圧の歪を低減することができる。
図31に示すように、両面からのタッチ駆動は、下ガラス側に既存の低抵抗C
STルート3101を採用し、V
STMを両面のC
STに導電ドット3102を介して接続することによって実現することができる。或いは、シングルエンド型タッチ駆動なら、全ピクセルにとって均一になるピクセルオフセット電圧を発生させるが、これはデータ駆動レベルを調整することによって低減するか又は無くすことができる。また、ITOシート抵抗を下げることも、ディスプレイ・アーチファクトの低減に役立つ。最後に、V
STMの位相と周波数をV
COMの位相と周波数に結びつけて、タッチ信号のノイズ量を減らすこともできる。
【0096】
2.2.1.10.コンセプトA:製造への影響
コンセプトAの製造プロセスは、典型的なLCD製造プロセスと比べ、追加の工程を含んでいる。幾つかは全く新しい工程であり、また幾つかは既存の工程に修正を加えたものである。
図32は、コンセプトAの製造プロセスフローを示している。従来のLCD製造プロセス(例えば、
図8のもの)と比べて、ブロック3201、3202、及び3204は、新しい工程を表しており、ブロック3205、3206、及び3207は修正を加えた工程を表している。
【0097】
ITO1の貼付とパターン形成(ブロック3201、3202)は、既知の各方法を使用して行うことができる。ITOは、LCD加工の残りの工程中は保護されている。除去可能な保護被膜を設けるのにフォトレジストを使用してもよい。或いは、シリコン二酸化物なら永久的な保護被覆となる。ITO2は、貼り付けられパターン形成されて(ブロック3204)、同じ様にタッチ駆動セグメントが形成される。
【0098】
位相遅延の或る分析では、ITO1とITO2のシート抵抗は、何れかの面での容量性負荷が小さければ、小型ディスプレイ(対角線で<=4インチ)では400オーム/平方と高くてもよいことが示されている。上で論じたように、コンセプトAを使用した場合の容量性負荷は、ITO2の最大シート抵抗を約30オーム/平方以下に制限するのが望ましいような大きさである。
【0099】
2.2.2.コンセプトA60
コンセプトA60は、物理的にはコンセプトAに似ているが、ディスプレイ更新とタッチ走査を同期化するという問題に対しては異なる対処法を提供している。これは、V
COMの1行反転をタッチ信号に対する刺激(即ち、V
STM)として使用することにより達成することができる。これは、
図33に示されており、図では、或る1つのタッチ駆動セグメント3301が、他のタッチ駆動セグメンを定電圧に保ちながら、どの様にして変調されるかを示している。この対処法を使用すれば、迷惑なV
COM誘導ノイズをタッチ信号から除去するという問題は解消することができる。更に、ディスプレイ更新とタッチ・センサ操作を空間的に分離する必要はない。但し、この対処法を使用すれば、復調は、ここに参考文献として援用している、2006年5月2日出願の米国特許出願第11/381,313号「マルチポイント・タッチ・スクリーン・コントローラ」に記載されている多周波変調とは逆で、単一周波(即ち、V
COM変調周波数、例えば、〜14.4kHz)で行われることになる。更に、この対処法を使用すれば、タッチ・センサ走査レートは、ビデオ・リフレッシュ・レート(例えば、毎秒60)に固定することができる。
【0100】
2.2.3.コンセプトB
図34に示すコンセプトBは、コンセプトAに似ていて、多くの同じ電気的、ケーブル配線的、及び構造的態様を共有している。但し、コンセプトBでは、タッチ駆動層をV
COM層に一体化している。コンセプトBは、従って、LCDとタッチ感知に使用されるITO層の個数と積層位置が異なる。類似性により、コンセプトBについては、コンセプトAとBの相違点に焦点を当てて説明する。
【0101】
コンセプトBでは、コンセプトAの共有型ITO2層を2つのITO層に分割し、1層をタッチ感知(ITO2)3402に使用し、1層をLCD V
COM(ITO3)3403に使用する。一番上から始めて、タッチ感知に使用される層は、N個のタッチ感知ラインにパターン形成されるITO層であるITO1 3401と、M個のタッチ駆動ラインにパターン形成されるITO層であるITO2 3402と、LCDのV
COM電極の役目を果たすITO層であるITO3 3403を含んでいる。タッチ駆動層(ITO2)3402は、上ガラス3404の下表面の、カラーフィルタ3405の上方に堆積されている。
【0102】
V
COMをタッチ駆動要素から切り離すことで、干渉を低減することができる。
【0103】
2.2.3.1.コンセプトB:タッチ・センサ電極
コンセプトBは、上でコンセプトAについて説明したものと実質的に似ているタッチ・センサ電極を含んでいる。
【0104】
2.2.3.2.コンセプトB:導電ドット
コンセプトAと同様に、コンセプトBでは、タッチ駆動セグメントを専用回路に接続するのに、LCDの各隅に設置された追加の導電ドット3406を使用している。V
COMをタッチ感知と共有する必要がないため、コンセプトBは、V
COMを自分の駆動回路に接続する隅のドットを留保しておくことができる。更に(下で論じているように)、コンセプトBは、V
COM用に更により多くの導電ドットを追加してもよい。
【0105】
2.2.3.3.コンセプトB:フレックス回路及びタッチ/LCDドライバIC
コンセプトBでは、コンセプトAで説明したものと実質的に似ているFPC及びタッチ/LCDドライバICを使用している。
【0106】
2.2.3.4.コンセプトB:LCD走査との同期化
コンセプトBでは、V
COM層をタッチ駆動層から分離することができるが、アクティブなタッチ駆動を更新中のディスプレイ・エリアから物理的に切り離すために、タッチ走査をLCD更新と同期化するのがなお望ましい。先にコンセプトAで説明した同期化案は、コンセプトBでも使用できる。
【0107】
2.2.3.5.コンセプトB:MT−Drive容量性負荷
コンセプトAと同様に、コンセプトBのタッチ駆動ラインに対する容量性負荷は大きくてもよい。大容量は、タッチ駆動(ITO2)3402とV
COM面(ITO3)3403の間の誘電体が薄い(例えば、〜5μm)せいである。タッチ刺激信号の望ましくない位相遅延を低減する1つのやり方は、並列金属トレースの追加によってITOライン抵抗を下げることである。位相遅延は、レベルシフター/デコーダの出力抵抗を落とすことによっても低減される。
【0108】
2.2.3.6.コンセプトB:電気モデルとV
COM−誘導ノイズ
V
COM面全体がタッチ駆動層に結合されているため、マルチタッチ電荷増幅器のオペレーションは、V
COM変調により誘導されたノイズで妨害される場合がある。それらの効果を軽減するために、コンセプトBは、定V
COM電圧を有している。
【0109】
反対に、ITO2 3402とITO3 3403(V
COMとタッチ駆動)の間の結合は、V
COM電圧との干渉を引き起こし、これにより、間違ったデータ電圧がLCピクセルに蓄積される事態を引き起こすことになりかねない。V
STMによるV
COMの変調を低減するために、V
COMを下ガラスに接続している導電ドットの個数を増やすことができる。例えば、ビューイング・エリアのそれぞれの隅のV
COMドットに加えて、それぞれの縁の真ん中に導電ドットを設置してもよい。
【0110】
V
COM−V
STM結合により生じる歪は、V
STMとV
COMを同期化し、ピクセルTFTを正に適切な時点でオフにすることにより、更に低減することができる。例えば、ライン周波数が28.8kHzであって、タッチ駆動周波数がこの数倍(例えば、172.8、230.4、及び288kHz)であるとすると、V
COM歪は、全ピクセルにつき、同じ位相関係を有することになり、これによりV
COM歪の目に見える度合いが低減されるか無くなる。更に、歪がほぼ減衰した時にピクセルTFTの各ゲートがオフになれば、LCピクセル電圧エラーは減少する。コンセプトAと同様に、タッチ信号のノイズ量を減少させるために、V
STMの位相と周波数を、V
COMの位相と周波数に結び付けることもできる。
【0111】
2.2.3.7.コンセプトB:製造への影響
コンセプトAと同様に、コンセプトBでも、LCD製造プロセスに工程が追加されている。
図35は、コンセプトBの製造プロセスを示しており、ここでは、従来のLCD製造プロセス(例えば、
図8に示しているもの)と比較して、ブロック3501、3502、3503、及び3504は新しい工程を表しており、ブロック3506、3507、3508、及び3509は既存の工程(例えば、同様に
図8に比して)に対する修正を表している。
【0112】
コンセプトAと同様に、既知の方法を使用して、ITO1が貼り付けられ(ブロック3501)、パターン形成される(ブロック3502)。ITO1とITO2のシート抵抗も、コンセプトAで説明したものと実質的に似ている。コンセプトBでは、ITO2層の堆積(ブロック3503)は、これがガラスに直接貼り付けられることから、ルーチンとなっている。タッチ駆動セグメントに接続されている導電ドットに関する、ITO2層と下ガラスの間の電気的アクセスは、シャドーマスクを使ったエッチング(ブロック3504)により容易に達成することができる。
【0113】
シート抵抗が30から100オーム/平方の間にあるITO3(例えば、LCDのV
COM層)も、従来の方法を使用して貼り付けることができる(ブロック3505)。但し、上で論じたように、V
COM電圧歪は、ITO3層の抵抗を小さくすることにより低減される。必要であれば、タッチ駆動セグメントに平行に走る金属トレースを加えることによって、ITO3により低い有効抵抗を実現することができる。金属トレースは、ピクセル開口部に干渉しないように、ブラック・マトリクスと整列される。金属トレースの密度は、V
COM層の所望の抵抗が得られるように、(1ディスプレイ行毎から約32ディスプレイ行毎の間で)調整される。
【0114】
2.2.4.コンセプトB’
コンセプトB’は、ITO2駆動層を無くして、代わりに、導電ブラック・マトリクス(例えば、上ガラス下方のCrO
2の層)をタッチ駆動層として使用した、コンセプトBの変型であると理解して頂きたい。或いは、金属駆動ラインを、ブラック・マトリクスの裏に隠すこともでき、このブラック・マトリクスは、ポリマーのブラック・マトリクスでもよい。これは、(1)ITO層が不要になる、(2)V
COM層に対するV
STMの効果が小さくなる、及び(3)製造プロセスが簡素化される、を含め幾つかの便益をもたらす。製造プロセスは、タッチ駆動にブラック・マトリクスを使用すると、カラーフィルタ上のITO層をパターン形成する必要が無くなるので、簡素化される。
【0115】
図36は、コンセプトB’の側面
図3601と上面
図3602を示している。図から分かるように、側面
図3601は、ITO3603の最上層がタッチ感知に使用されていることを除けば、標準的なLCD積層構成に非常によく似ている。
図36の下の図は、ブラック・マトリクス3604が別々のタッチ駆動セグメントにどの様に分割されるかを示している。メッシュパターンは、それぞれの駆動セグメントが他のセグメントから電気的に絶縁されていることを除けば、従来のブラック・マトリクスのパターンに従っている。ブラック・マトリクス・メッシュをタッチ駆動に使用したことで発生するタッチ信号の強度低下を補償するために、電荷アンプ利得を上げてもよい(例えば、約4X)。
【0116】
タッチ感知層は、V
COM層から遮蔽しなくてもよいので、V
COM変調がタッチ信号に干渉する場合がある。更に、タッチ駆動が、依然としてV
COM電圧に干渉する場合がある。これらの問題は共に、コンセプトAで説明したようにV
COMをセグメント化すること、及び/又は、上述ようにディスプレイ更新とタッチ感知を空間的に切り離すことにより解決される。それらの問題を解決するのに、定V
COM電圧を使用することもできる。
【0117】
2.2.5.コンセプトK
コンセプトKを、
図37(回路図)と
図38(積層構成図)に示す。コンセプトKは、C
ST・オン・ゲート構成を使用した場合、TFT LCDの選択パルスが部分的にピクセルITOに送られる、という事実を利用している。
【0118】
図38のディスプレイ積層構成に示すように、視聴者は、CFプレート3802ではなくアクティブなアレイ・プレート3801に面している。アクティブなアレイ上のITOピクセル3803は、タッチ・センサのV
STMを提供し、各ディスプレイ行は、V
STMパルス用とディスプレイアドレス指定用に交互に使用されることになる。プラスチック・ポラライザー3805上のITO感知層3804は、アレイ・プレート3801の背面に重ねられ、タッチ感知層を提供している。薄いガラス層(例えば、0.2mm)は、信号対ノイズ比の改善に役立つ。
【0119】
ディスプレイ更新中、各行は、ピクセル・データの更新に個別に選択される(
図39に図示)。タッチ感知のためのV
STMを発生させる場合、複数の行4001が同時に選択され、一方で、高いデータ電圧4003が列ライン4002に印加されTFTをオフ状態に保つ(
図40に図示)。列ドライバは、タッチ駆動の間隔に対応するため、ディスプレイメモリからのデータ信号のタイミングを調節する。
【0120】
1つの実施形態では、タッチ・パルス・シーケンスは、タッチ走査間隔の間、約30行4001に同時にパルスを送る。
図41は、LCDのサブピクセル電圧に対するタッチ駆動パルス(V
STM)の影響を示している。V
STMパルスから追加される電圧は、V
COMのDCオフセット及び/又はディスプレイ・データ・グレイレベルのガンマ補正によって補償される。
【0121】
コンセプトKは、多くの利点をもたらす。各ディスプレイ・ピクセルと各タッチ・センサは駆動回路を共有するので、レベルシフター/デコーダが不要になる。その上、従来のCFプレートが使用できる。更に、上ガラスと下ガラスの間に余分な導電ドットが必要無くなる。バスライン反射により、ディスプレイの各部分の反射率(R)が高まるため、バスライン下方にRを下げる余分な膜(例えば、Crの下にCrO)を使用する必要が生じる。
【0122】
2.2.6.コンセプトX’
コンセプトX’を、
図42(回路図)と
図43(積層構成図)に示す。コンセプトX’は、V
STMパルスがTFTピクセル・スイッチのゲートパルスに似ているという事実(例えば、15乃至18Vスイング)を利用している。コンセプトX’では、各タッチ駆動セグメント4301は、LTPSアクティブ・アレイの一部であり、ピクセル蓄積コンデンサーC
STの対極を形成している。C
STは、2つのITO層4301と4302の間に形成されている。この実施形態では、カラーフィルタ・プレート4303ではなく、アクティブ・アレイ・プレート4303が、ディスプレイのユーザー側に配置されている。
【0123】
図42に示すように、V
STMの3つの異なる周波数4201を有するパルスシーケンスが、3行のピクセル行4202に、これらの行を選択するために共有されている。各ITOタッチ駆動セグメント4203は、アドレス指定された行に隣接する行のセットの下方にパターン形成されている。各タッチ駆動セグメント4203は、V
STMに接続されていない時、各TFT4204によってGNDに接続されている。
【0124】
コンセプトX’を構成するための加工工程に加える変更には以下の事項が含まれる。第1に、パターン形成された感知ITOを、アレイ基板の外部に追加する。第2に、LTPS加工中に、SiO
2保護を感知ITO上に追加する。保護レジストを使用してもよい。第3に、LTPSアレイのために(代表的なLTPSプロセスに見られる)SiO
2バリア層の下にタッチ駆動ITOを堆積させパターン形成する。最後に、バリアSiO
2にビアをパターン形成して、タッチ駆動ITO層に接触させる。この工程は、その後のプロセス工程と組み合わせてもよい。
【0125】
コンセプトX’は、多くの利点をもたらす。例えば、ディスプレイ及びタッチ・センサが駆動回路を共有するので、レベルシフター/デコーダ・チップを無くすことができる。その上、CFプレートへの電荷は一切必要としないので、従来のカラーフィルタ加工が使用できる。更に、蓄積コンデンサーC
STは、2つのITO層の間に設置されるので、高い透過率を実現できる。別の利点は、アレイ・プレート4303とCFプレート4304の間の余分な導電ドットを無くすことができることである。
【0126】
2.3.完全に一体化されたタッチ感知
本発明の実施形態の3番目のセットは、タッチ感知要素をLCM内部に完全に一体化している。部分的に一体化されたタッチ感知と同様に、LCM内の既存の層は、二重の業務を果たして、タッチ感知機能性を提供するので、これにより、ディスプレイを薄型化し、製造を簡素化することができる。完全に一体化されたタッチ感知層も、両ガラス層の間で保護されている。
【0127】
幾つかの実施形態では、完全に一体化されたLCDは、これまでの各実施形態で説明したものと似ているV
COM層を含んでいる。他の実施形態では、完全に一体化されたタッチ感知LCDは、面内切り替え(IPS)LCD構造を含んでおり、それらについて以下の節で更に詳しく説明する。
【0128】
2.3.1.完全に一体化されたV
COMベースのLCD
2.3.1.1.コンセプトA’
コンセプトA’は、タッチ感知層として使用される(上ガラス下の)導電ブラック・マトリクス層にとって都合のよいようにITO感知層(
図20のITO1 2001)を無くした、コンセプトAの変型と考えることができる。或いは、金属の感知ラインは、ポリマーのブラック・マトリクスとすることができるブラック・マトリクスの裏に隠すこともできる。その結果、コンセプトA’では、FPC上のT−タブと、上ガラスへの対応する接合作業を無くすことができる。各タッチ感知ラインは、導電ドットを介して下ガラスに経路決めされ、タッチ/LCDドライバ・チップに直接接続される。更に、FPCは標準的なLCD FPCであればよい。製造工程及び構成要素を無くすことは、コンセプトAとBに比べコストを削減することに繋がる。
【0129】
図44は、導電ブラック・マトリクスをタッチ感知層に置き換える1つのやり方を示している。
図41は、そのブラック・マトリクス4403が各主要カラー区間4404の間を走っている、或る1つのピクセルの上側部分の側面
図4401を含んでいる。タッチ駆動セグメント4405は、誘電層4406を平坦化することにより、ブラック・マトリクス4403から切り離されている。
図44は、ブラック・マトリクス・ライン4403が縦方向に走っているディスプレイの上面図も示している。大凡96本のブラック・マトリクス・ライン(例えば、32画素相当)は、ひとまとめに電荷増幅器4907の負端子に接続されている。各タッチ駆動セグメント4405は、上に述べたように駆動される。上ガラス4408に指を近づけると、縦の各ブラック・マトリクス・ライン4403とタッチ駆動セグメント4405の間の電界に摂動が起きる。この摂動は電荷増幅器4407によって増幅され、本明細書の別の個所で説明しているように更に処理される。
【0130】
ディスプレイ内の各タッチ感知ライン4403の深さのために、指又はタッチ物体と各感知ライン4403の間の最小距離が制限される。これにより、タッチ信号の強度が低下する。これは、タッチ感知層の上方の各層の厚さを薄くして、指又は他のタッチ物体が各感知ラインに一層接近することができるようにすることによって、解決される。
【0131】
2.3.1.2.コンセプトX
コンセプトXを、
図45と
図46に示す。
図45に示すコンセプトXの積層構成は、基本的には、標準的なLCDのものと同じである。タッチ感知層4501は、V
COM層(ITO2)内に埋め込まれており、V
COM電圧面を提供することとタッチ・センサの出力の役目を果たすことの二重の目的を果たす。タッチ駆動層は、既存のLCD層内に埋め込むこともできる。例えば、タッチ駆動は、下ガラス4503側に設置し、LCD選択ライン回路の一部としてもよい(
図5参照)。選択回路は、而して、サブピクセルTFTのゲート信号とタッチ駆動信号V
STMを提供するという二重の目的を果たす。
図46は、その浮動ピクセル4601がV
COM層に埋め込まれたタッチ感知層の1つの可能な配列を示している、コンセプトXの上面図である。
【0132】
2.3.1.3.コンセプトH
コンセプトHを、
図47から
図50に示す。コンセプトHは、上ガラス又はディスプレイのプラスチック層外部に一切ITOを含んでいる必要はない。その結果、製造プロセスは、既存のディスプレイ製造プロセスに非常に似たものとなる。
【0133】
図47に示すように、スクリーンのタッチ感知部は、透明な抵抗性シート4701、例えば、パターン形成されていないITOの層を上に堆積させたガラス又はプラスチック基板とすることができる。ディスプレイのV
COM層をこのタッチ感知部に使用してもよい。
この層は、パターン形成する必要がないため、上で論じた幾つかの実施形態と比較して、フォトリソグラフィ工程を製造プロセスから無くすことができる。説明し易くするため、各側面を、図に示す様に、北、南、東、及び、西と呼ぶことにする。
【0134】
複数のスイッチ4702が、抵抗性シートの周囲周りに配置されている。それらスイッチは、ガラス上にTFTとして実装されている。各スイッチの場所に、複数の導電ドット4703が示されており、ディスプレイの境界領域で、V
COM(上ガラス側)を下ガラス側のTFT層に接続している。スイッチ4702は、まとめて2つのバスに接続されており、例えば、北と東のスイッチは1つのバス4704に接続され、南と西のスイッチは第2バス4705に接続されている。
【0135】
タッチ感知では、各スイッチ4702は、以下のように作動する。北と南のスイッチは、Y方向の容量を測定するのに使用される。左と右側のスイッチは、X方向の容量を測定するのに使用される。北東と南西の隅のスイッチは、XとY両方の測定に使用される。容量は、
図49に示すように、抵抗性シート4701を変調波形V
MODで刺激することによって測定される。シートを所望電圧まで駆動するのに必要とされる電流(即ち、電荷)が測定され、タッチの場所を求めるのに使用される。
【0136】
具体的には、
図49の波形に示すように、タッチが無い場合、基線容量4902は、シート4701をV
MOD電圧まで刺激するのに要する電流(電荷)を表している。タッチがあると、指の容量のために、より高い電流4903(電荷)が必要となる。このより高い電流は、下側の波形群に示されている。次に、タッチの場所が、
図49に示す基線と信号波形の単純な数学的組合せにより求められる。
【0137】
X方向(即ち、東−西)測定中のタッチ・スクリーンの等価回路を
図48に示す。C_PARA4801は、シートの分布寄生抵抗であり、C_FINGER4802は、例えば、東側へ大凡75%進んだ位置のタッチの容量である。ブロック図は、プレートがどの様にV
MODまで駆動されるかと、電荷がどの様に測定され、組み合わされ、処理されて、ホストに送られるかを表している。
【0138】
図50は、コンセプトHがどの様にLCDに一体化されるかを示している。具体的には、導電ドット5001は、TFTに接続されており、抵抗性シート5002(V
COM)をディスプレイ・オペレーションに合わせて変調できるようになる。例えば、16msのLCD更新期間に相当する60Hzのスクリーン・リフレッシュ・レートを想定すると、この時間の一部は、LCDへの情報の書き込みに使用され、別の一部はタッチ感知に使用される。LCD更新中、V
MODは、LCD駆動回路からのV
COMとなる。タッチ感知中は、所望のSNR、寄生容量などの様なタッチシステムの厳密な詳細に基づいて、異なる周波数と振幅を有する各波形が使用される。なお、ブロック図の形式で示しているこの実施形態のタッチ感知回路は、LCDドライバに一体化してもよいし、別の回路としてもよいことに留意されたい。
【0139】
2.3.1.4.コンセプトJ
コンセプトJは、コンセプトH同様、ディスプレイの上ガラス又はプラスチック層外部にITOを一切含んでいる必要がない。コンセプトJの物理的構成を
図51に示す。タッチ感知は、コンセプトHの様な抵抗性シート5101でもよいが、多数の行ストリップ5102にパターン形成されている。パターン形成は、フォトリソグラフィ、レーザー消去、又は他の既知のパターン形成技法により行うことができる。抵抗性シート5101を複数のストリップ5102にパターン形成することによって、上と下(北と南)に沿った各スイッチを無くすことができ、東と西の各スイッチ5103は行ストリップに接続されたまま残る。各行5102は、例えば、
図52に示すV
MOD波形を使用して順に刺激される。各行5102を変調電圧まで駆動するのに要する電流(電荷)は、所与の行の寄生容量(C_PARA5301、
図53)と指又は他のタッチ物体(C_FINGER5302、
図53)の容量の組合せである、行の容量の関数となる。
【0140】
図52に示すように、タッチ5202が存在する場合の信号は、基線信号5203と数学的に組み合わされ、タッチの座標が計算される。Y出力は、各行毎にZ出力の重心によって求められる。X出力は、各行毎にX出力の加重平均によって求められる。
【0141】
図54は、コンセプトJタッチ・センサが、どの様にLCDと一体化されるかを示している。各導電ドット5401は、上ガラス側のV
COMを下ガラス側のTFT層に接続している。タッチ及びディスプレイ各オペレーションは、時分割多重化される必要がない。そうではなくて、ディスプレイの一部が更新されている間、別の部分ではタッチの走査が行われる。それを行うための様々な技法は、他の実施形態に関連させて上で論じている。タッチ感知は、異なる周波数と振幅を使用してもよいが、LCD行反転と位相同期化させてもよい。各スイッチ5402は、ガラス上にTFTとして実装してもよい。測定回路は、LCDコントローラと一体化するか別体の構成要素とするか、何れでもよい。
【0142】
2.3.1.5.コンセプトL
コンセプトLでは、カラーフィルタ・ガラスにアクティブTFT層が追加され、セグメント化されたITO層が、LCDディスプレイの異なる領域に亘って同時に複数の機能を提供することができるようになっている。コンセプトLの積層構成図を
図55に示す。コンセプトLは、標準的なLCDディスプレイと同数のITO層を保有している。但し、下ガラス5511側のITO1 5509と他の構造5507、5508は標準のままであるが、カラーフィルタ・ガラス5505側のアクティブTFT層5501は、ITO2 5504の或る領域(例えば、横方向行)が、V
COM、タッチ駆動、又はタッチ感知の各役割の間で切り替えられるようにしている。
【0143】
図56は、横方向にセグメント化されたITO2層5504を有するコンセプトLのディスプレイを示している。ディスプレイの異なる領域は、同時に、V
COM変調を施され(領域5601)及び/又は書き込まれ(領域5602)、タッチ刺激を提供し(領域5603)、測定されてタッチ感知を提供し(領域5604)、そして保持状態を維持している(領域5605)。アクティブTFT層5501の各トランジスタは、それぞれの横方向行の信号を、特定の時間間隔の間、所望の機能に切り替えることができる。各領域は、実質的に非均一性を無くすために、同じシーケンスでそれぞれの状態に等しく曝される。タッチ刺激を提供すると、LCを横切る電圧に外乱を加えることもあるので、LCDピクセル書き込みは、外乱の期間を短縮するため、タッチ刺激段階の直後に行われる。或る領域のLCDピクセル書き込みはV
COM変調中に起こり、その間、隣接するセグメントは、ピクセル書き込み中の均一的境界条件を維持するため、V
COM変調が施される。
【0144】
カラーフィルタ・プレートは、アクティブ・アレイに使用されるプロセスに似たプロセスを使って形成することができる。追加のTFT層の形成には、追加の工程が関与するが、2つの基板の最終段階の加工は標準的なLCDの場合と実質的に同じままである。それらの技法は、低抵抗率ITOを使用すること無しに、その様なディスプレイを大きな寸法のパネルにスケーリングできるようにする。
【0145】
2.3.1.6.コンセプトM1とM2
図57と
図58は、それぞれ、コンセプトM1とM2積層構成図を示している。コンセプトM1とM2では、パターン形成されたITOと金属の層を、タッチ感知のためにカラーフィルタ・ガラスに追加している。コンセプトM1とM2は類似しているが、1つの相違点は、ITO1層とITO2層の異なる使い方に関係している。コンセプトM1は、ITO1 5701をタッチ感知に使用し、ITO2 5702をV
COM(LCDピクセル電圧設定時/保持時)とタッチ駆動(書き込みピクセル電圧でない時)の両方に使用する。コンセプトM2は、ITO1 5801をタッチ駆動に使用し、ITO2 5802をV
COMとタッチ感知に使用する。コンセプトM1とM2共に、上ガラス5703、5803は、トランジスタ又は他のアクティブな構成要素を一切含んでいる必要がない。
【0146】
コンセプトM1又はM2の何れでも、V
COMは、ディスプレイの1つの領域がディスプレイ更新中に一定のV
COMを維持しながら、別の領域では独立してタッチの走査を行うことができるようにするように、セグメント化されている。これにより、タッチ感知とディスプレイの両機能の間の干渉を低減することができる。
【0147】
図59と
図60と
図61は、3つの領域(5901、5902、5903、
図59)にセグメント化された一例的なディスプレイ(コンセプトM2に対応)を示しており、2つの領域(例えば、5901、5902)は同時にタッチ走査を行うことができ、その間、第3の領域(例えば、領域5903)のディスプレイ・ピクセルは更新することができるようになっている。
図61の左側では、ITO1とM1(金属1)の層の27本の縦駆動ラインは、それぞれ9つのタッチ列を有する3つの異なる領域を提供している。各駆動ライン(タッチ列当たり3本)は、下にアレイ・ガラスまで続く導電ドット(図示せず)を有していて、ドライバASICに経路指定されている。
【0148】
図61の右側は、ITO2層のセグメント化された横方向行に可能なモードを示しており、第1セットの交番行6102のV
COMとV
EHOLD、及び第2セットの交番行6103のV
COM、V
HOLD、及びV
SENSEが含まれている。各ITO2行は、導電ドット(図示せず)を介して下にアレイ・ガラスまで接続されており、そこから、行のモードは、LTPS TFTスイッチを使用して切り替えることができる。
図61の右側は、21行の感知行を示しており、その内、14行は常時感知される(行数はそれより多くてもよい)。
【0149】
図62は、
図59と
図60と
図61に示す一例的なディスプレイ内のタッチ感知の回路図を示している。V
STMドライバ6200が、R
metcolの抵抗とC
drvの寄生容量を有する金属駆動列6202を通して信号を送る。タッチ容量C
sigは、R
ito2rowの抵抗とC
ito2rowの容量を有するITO行に亘って測定される。タッチ感知電荷は、電荷増幅6204に至る前に2つの追加抵抗R
sw1とR
borderによる影響を受ける。
【0150】
60fpsというディスプレイ・フレーム更新レートは、120fpsのタッチ走査レートに相当する。必要に応じて(例えば、小型マルチタッチ・ディスプレイでは)、設計者は、タッチ走査レートを(例えば、60fpsまで)引き下げることを選択して、パワーを節約し、恐らくは複雑性を下げることもできる。その結果、ディスプレイの幾つかの領域は、当該領域でディスプレイ更新もタッチ走査も起こっていないときは「保持状態」に置かれる。
【0151】
図63は、ディスプレイ領域が、(
図60での様に)縦方向ではなく横方向に走査され更新されるディスプレイを示している。タッチ駆動及びタッチ感知の領域は、タッチ駆動行6301に加えられる刺激が、感知フィールド・ライン6305で表わされている2つの感知行6302と6303から同時に感知されるようにインターリーブされる。
【0152】
ITO層の各金属ワイヤ及び/又は各ギャップを隠すためにブラック・マスク層を使用してもよい。例えば、金属駆動ライン、ITO2のエッチングされたギャップ、及びITO1のエッチングされたギャップは、ブラック・マスク(
図64に図示)の裏に全体的又は部分的に隠すことができる。これにより、ディスプレイのユーザにそれら項目が与える視覚的影響を低減するか無くすことができる。
【0153】
2.3.1.7.コンセプトM3
図65に示すように、コンセプトM3は、コンセプトM1とM2に類似しているが、タッチ駆動とタッチ感知が、単一のセグメント化されたITO層6501に一体化されている。上記の様々な実施形態は、駆動電極と感知電極を別々の層に含んでいたが、コンセプトM3は、駆動電極と感知電極を同じ面内に含んでいる。他の電界及び/又は電気的効果からタッチ感知要素を遮蔽するために、誘電層6502が追加されている。
【0154】
図66と
図67は、3つの領域6601、6602、6603にセグメント化されたコンセプトM3のディスプレイを示しており、各領域は、ディスプレイ・フレームの各サイクル更新の間に、タッチ刺激/感知相、LCDピクセル書き込み相、及び保持相が交互に入れ替わる。
図68は、ディスプレイを分割できるようにする配線の詳細とレイアウト配列を示している。ITO行6801は、行の電圧をV
COMとV
HOLDの間で切り替えるTFTガラス上のLTPSスイッチに、導電ドット6802を介して接続されている。3つの感知ライン6803は、列毎に使用され(領域毎に1本の感知ライン)、アクティブ領域の信号が対応するタイムフレーム内で測定されるように、ライン多重化が施されている。或る領域のタッチ走査中、当該領域内の或る行に対応するタッチ駆動要素が活性化され、当該行の列の全ては同時に感知される。ディスプレイの1つの領域でタッチが走査されている間、別の領域ではV
COMの変調及び/又はディスプレイ・ピクセルの更新が行われている。
【0155】
ITOの抵抗を下げるために、ITOの各領域には、金属セグメント(
図68の6805)が加えられている。例えば、タッチ信号の位相遅延を低減するために、短い金属セグメントがITO1駆動電極6804に加えられている。それら金属ラインは、ブラック・マスク層の裏に隠すこともできる。
【0156】
図69に示すように、タッチ及び感知電極の間のフィールドラインを遮って、指又は他のタッチ物体の影響を受けるガラスまで通り抜けないようにするために、ガード・トレース6903が使用されている。これは、ノイズを低減し、ディスプレイに対する各タッチの実測効果を高めることができる。
図70は、ガード・トレース無しのディスプレイの上面
図7001と断面
図7002を示しており、そこでは、狭いギャップが、タッチ感知要素の各行、例えば、各駆動電極7003と各感知電極7004を隔てている。タッチ感知がアクティブである時にITO2層6905(V
COM)を接地しておくことで、タッチ感知機能とディスプレイ機能を互いから遮蔽することができる。
図69は、ITO1上のタッチ感知要素の各行、例えば、駆動電極6904と感知電極6905の間に、接地されたガード・トレース6903を含んでいる、ディスプレイの上面
図1101と断面
図6902を示している。
【0157】
2.3.1.8.コンセプトP1とP2
コンセプトP1とP2は、コンセプトM3と同様に、同一面内にタッチ駆動電極とタッチ感知電極が設けられている。但し、コンセプトP1とP2は、
図71に示すように、個別にアドレス指定可能なタッチ・ピクセルという更なる便益をもたらす。各タッチ・ピクセルは、駆動電極7102、感知電極7103、及びディスプレイの境界上のバスに個別に経路決めされ接続される対応する駆動ライン7104と感知ライン7105を含んでいる。それら各ラインは、導電ブラック・マスクを使って形成されていて、それにより、ディスプレイ内に既に存在するブラック・マスク・エリアが、タッチ感知のための追加のサービスを提供することができるようにしている。或いは、各ラインは、ブラック・マトリクスの裏に配置された金属ラインでもよく、このブラック・マトリクスは、ポリマー・ブラック・マトリクスでもよい。
【0158】
図72は、コンセプトP1の積層構成図を示している。コンセプトP1は、様々な点で標準的なLCDプロセスとは異なっている。例えば、標準的なポリマー・ブラック・マスクの一部が、低抵抗金属バッキングを有するブラック・クロムに代わっている。それら導電ラインは、そこで、タッチ・ピクセルを出入りする信号を経路決めするのに使用される。パターン形成されたITOの層7202が、追加のマスク工程で、ブラック・マスクの裏に加えられる。それぞれのタッチ・ピクセルの駆動及び感知信号をLTPS TFTプレートに経路決めするのに、STNスタイルの導電ドット7203が加えられる(例えば、タッチ・ピクセル毎に2つのドットを使用)。カラーフィルタ層と境界用平坦化層7204も厚さを増し、タッチ駆動とV
COMの間の容量が小さくなるようにしている。
【0159】
図73は、コンセプトP2の積層構成図を示している。コンセプトP1について上で説明した4つの変更を組み込むことに加えて、コンセプトP2は、セグメント化されたV
COMを作成するのに使用することのできるパターン形成されたITO層7301も含んでいる。V
COMのセグメント化は、タッチ駆動とディスプレイ・オペレーションを切り離すことができるので、信号対ノイズ比が改善される可能性がある。
図74は、コンセプトP2のV
COM信号結合に焦点を当てた回路図を示している。帰線電流用に独立したバス(Vholdbus1とVholdbus2)を確保しておくことにより、結合電荷を小さくすることができる。更に、半数のタッチ・ピクセルに相補的駆動を使用することで、Vholdbus1の帰線電流を小さくすることができる。
【0160】
図71と
図75は、感知及び駆動ピクセルに出入りするタッチ感知及びタッチ駆動ラインの一例的な経路指定を示している。駆動及び感知ラインのセットは、ディスプレイの両側のバスライン7501、7502から横方向にそれぞれ個別のタッチ・ピクセル7101まで経路指定される。それら各ラインは、ブラック・マスク層の裏に隠してもよいし、又は、導電ブラック・マスク層に組み込んでもよい。この経路指定は、単一層上とすることもできる。個々のタッチ・ピクセルの信号は、LTPS TFTを使用し、バスラインを介してアドレス指定され多重化される。
【0161】
全行ではなく個々のピクセルを駆動する能力は、寄生容量を下げるのに使用される。個別にアドレス指定可能なタッチ・ピクセルは、タッチ・アレイを行毎ではなく「ランダムアクセス」モードで走査できるようにする。これにより、タッチ感知とディスプレイ更新をインターレースする際の柔軟性が高まる。例えば、
図76は或る可能な走査パターンを示している。システムは、タッチ・ピクセルを何れの所望のパターンでも走査することができるので、走査パターンを、隣接する行及び隣接するピクセルが絶対に同時に駆動されることのないように設計して、信号損失又は信号対ノイズ比の低下を招くフリンジ・フィールド相互作用を回避することができる。
図76では、方形7601と7602は、それぞれ、1つの駆動電極と1つの感知電極を備えている。方形7601は、同位相駆動に対応し、方形7602は180度位相外れ駆動信号に対応している。図中、2つの行(合計20ピクセル)は、5つのシーケンスでカバーされており、同時に4つのピクセルが走査される。
【0162】
2.3.1.9.コンセプトD
別の実施形態であるコンセプトDは、2層のセグメント化されたITO層とタッチ・ピクセル毎の追加のトランジスタを使用したマルチタッチ感知を支援している。
図77は、コンセプトDの回路図を示している。ディスプレイ更新中、回路は、標準的なLCDディスプレイの場合と同様に機能する。ゲート駆動7700は2つのトランジスタ(Q1 7702とQ2 7704)を駆動して、V
COMバス7706とデータライン7708からの信号が、電荷を、LCを制御しているコンデンサーのセット(C
ST7710、C
LC17712、及びC
LC27714)に搬送できるようにしている。トランジスタQ2 7704がオフになると、V
COM7706はC
ST7710から切り離され、V
COMライン7706はタッチ感知に使用できるようになる。具体的には、V
COMライン7706は、電荷を、C
IN7716とC
OUT7718を経由し、データライン7708(タッチ感知ラインの役目を果たしている)を経由して、電荷増幅器7720に送るのに使用される。導電性物体(例えば、ユーザーの指、スタイレット、その他)がディスプレイに近づくと、システムの容量に、電荷増幅器7720で測定できるやり方で、摂動が起こる。
【0163】
図78と
図79は、コンセプトDをベースにしたディスプレイのサブピクセルの積層構成図を示している。
図78では、ITO1層は、2つのプレート、A7722とC7726にセグメント化されている。ITO2層は、サブピクセルを覆って配置され、ITO1層内のプレートに対する対極の役目を果たす、アイランド(例えば、B7724)にセグメント化されている。ディスプレイ更新時、アイランド7724とプレート(A7722、C7726)の間の電圧差は、液晶7804の制御に使用される。タッチ感知時、サブピクセル全体(例えば、
図129のC1、C2、Cin、Cout、及びCst)に亘る容量に対する摂動が測定され、導電性物体の近接が判定される。
【0164】
図80は、コンセプトDの配線と積層構成を組み合わせた線図を示している。
図81は、コンセプトDの1つの実施形態での物理的具現化を示している。
【0165】
2.3.2.完全に一体化されたIPSベースのLCD
図82に概略的に示している面内切り替え(IPS)は、より広い視角を有するLCDディスプレイを作成するのに使用される。(ねじれネマチックLCDの様な)幾つかのLCDは、縦方向に配列された電極対(例えば、
図20に図示)を採用しているが、IPS LCDでは、液晶8203の向きの制御に使用される両電極8201、8202は、同一層内(例えば、単一面内)で互いに平行になっている。各電極をこの様に配向することにより、液晶を貫く横方向の電界8200を発生させることができ、これにより視角が大きくなる。IPSディスプレイ内の液晶分子は、上方又は下方の各層に錨着されているわけではなく(例えば、
図82に示すように)、互いに、そしてディスプレイ電極の面に対して平行を維持しながら、電界8200と整列するように自由に回転することができる。
図83は、面内切り替えを使用するディスプレイ内の電極の交差指型対8301、8302のより写実的な配列を示している。
【0166】
IPSディスプレイは、タッチ駆動又はタッチ感知に使用することもできるV
COM層を欠いているので、本発明の幾つかの実施形態は、ディスプレイ更新に使用されるのと同じ電極をタッチ感知でも使用できるようにすることによって、タッチ感知能力を提供している。これらの電極は、追加の回路で補完される。上で論じた幾つかの実施形態では、タッチ・ピクセルは、多数のディスプレイ・ピクセルと重なり合っている。対照的に、下で論じるIPS実施形態は、ディスプレイ制御とタッチ感知に使用されるのと同じ電極を使用しているので、追加費用が発生しても僅かか、追加費用を一切発生させずに、更に高いタッチ解像度を得ることができる。或いは、多数のタッチ・ピクセルをグループ化して、より低い解像度と組み合わせたタッチ信号を生成してもよい。
【0167】
2.3.2.1.コンセプトE
1つのIPS実施形態、即ち、コンセプトE、を
図84に示す。上に述べたように、IPSをベースにしたタッチ感知ディスプレイの電極は、同一面内に在って交差指型構造を有している(
図84に図示の通り)。電極A8400と電極B8402は、ディスプレイ更新中に液晶の向きを定めるのに使用されると共に、一方では、同じ各電極がタッチ感知を実現するのにも(追加の要素と組み合わせて)使用される。例えば、コンセプトEは、ピクセルがディスプレイ更新中かタッチ感知中かに基づいて信号ラインのセットの駆動を変更するため、追加のスイッチ8404を使用することができる。コンセプトEは、容量(CIN_A8406、COUT_A8404、CIN_B8410、及びCOUT_B8412)、並びに、何時電極をディスプレイ更新又はタッチ感知に使用すべきかを制御する2つのトランジスタ(トランジスタQ1 8414とトランジスタQ2 8416)も含んでいる。
【0168】
タッチ感知中、トランジスタQ1 8414とQ2 8418は、オフにされ、電極はディスプレイ信号から切り離されるので、電極を容量の測定に使用することができる。次いで、V
COM金属線8416がタッチ刺激信号8418に接続される。この刺激信号は、CIN_A8406とCIN_B8410を介して、電荷増幅器8422に接続されているCOUT_A8404とCOUT_B8412に送られる。CINとCOUTの間の容量C
SIG(図示せず)は、タッチを検知するのに使用される。感知ピクセルがタッチされていない時、電荷増幅器8422に送達される電荷は、主に、2対のCINとCOUTコンデンサーの間の容量に依存している。物体(例えば、指など)が各電極に近づくと、C
SIG容量に摂動が生じ(例えば、低下し)、電荷増幅器8422により、移動した電荷の量の変化として測定される。CINとCOUTの値は、電荷増幅器8422がタッチ信号強度を最適化するのに必要な入力範囲に一致するように選択される。
【0169】
電極は、タッチ感知時、光周波数信号を使用することによって、ディスプレイ状態に悪影響を及ぼすこと無くタッチ感知を行うのに使用される。LC分子は大きくて無極性なので、タッチは、LCを横切るRMS電圧に関しDC成分を変化させるか又はこれを課すことのない高周波界を使用することで、ディスプレイ状態を変化させること無しに検知される。
【0170】
図85は、コンセプトEの積層構成図を示している。説明した様に、全てのタッチ要素がTFTプレート8501上に形成されている。
【0171】
2.3.2.2.コンセプトQ
IPSをベースにしたタッチ感知ディスプレイの別の実施形態であるコンセプトQも、LCDのTFTガラス要素(例えば、金属製経路指定ライン、電極など)を、ディスプレイとタッチ感知の両機能に使用できるようにしている。その様な実施形態に見込める利点は、ディスプレイの工場設備に何ら変更を加える必要がないことである。従来のLCD製作に唯一追加すべきことには、タッチ感知電極の追加が含まれる。
【0172】
コンセプトQは、
図105と
図106に示している、2つのタイプのピクセルを含んでいる。ピクセル・タイプAを
図105に示す。各ピクセル10501は、3つの端子、即ち、選択端子10502とデータ端子10503と共通端子10504を含んでいる。Aタイプピクセルのそれぞれでは、それらの共通端子が列10505に沿って接続され、タッチ感知列を形成している。ピクセル・タイプBを
図106に示す。各ピクセル10601は、同様に、3つの端子、即ち、選択10602とデータ10603と共通10604を含んでいる。Bタイプピクセルのそれぞれでは、それらの共通端子が行10605に沿って接続され、タッチ感知行を形成している。ピクセルは、複数のタッチ感知行10702と複数のタッチ感知列10703が
図107に示すように配列されている。駆動刺激及び感知回路を含んでいるタッチ感知チップ10701が、各行と各列に接続されている。
【0173】
タッチ感知チップは以下のように作動する。第1期間中、LCDが更新されている間、全ての行と列は接地に保持されている。幾つかの実施形態では、これは約12msの期間である。次の期間中、Aタイプピクセル、即ち、タッチ列は、刺激波形で駆動され、その間、Bタイプピクセル、即ち、タッチ行それぞれにおける容量が感知される。次の期間中、Bタイプピクセル、即ち、タッチ行は刺激波形で駆動され、その間、Aタイプピクセル、即ち、タッチ列それぞれにおける容量が感知される。その後、このプロセスは繰り返される。2つのタッチ−感知期間は約2msである。刺激波形は様々な形態を取ることができる。幾つかの実施形態では、それは、ピーク・ツー・ピークが約5VでDCオフセットがゼロの正弦波である。他の期間と波形を使用することもできる。
【0174】
2.3.2.3.コンセプトG
IPSをベースにしたタッチ感知ディスプレイに生じ得る1つの問題は、タッチとLCの間に遮蔽手段を欠いていることは、指(又は他のタッチ物体)がディスプレイ出力に影響を及ぼすことを意味するということである。例えば、指でスクリーンをタッチすると、LCを制御するのに使用されている場に影響を及ぼし、ディスプレイを歪めてしまう恐れがある。この問題に対する1つの解決策は、ユーザーとディスプレイ・サブピクセルの間に遮蔽物(例えば、透明なITO層)を置くことである。但し、その様な遮蔽物は、タッチ感知に使用される電界を遮断し、タッチ感知を妨げることにもなりかねない。
【0175】
1つの実施形態、即ち、コンセプトGは、
図86の積層構成図に示しているように、ディスプレイの層をひっくり返すことによりこの問題を克服した。これにより、LC860は、ユーザーから見てTFTプレート8602の反対の側に置かれる。その結果、LC8600を制御するのに使用されるフィールドラインは、LCDのタッチ側から概ね遠くを向くことになる。これにより、今度はタッチ物体とLC8600の間に置かれているデータ線、ゲート線、及び電極の様な金属エリアが、LCに対する部分的又は全面的な遮蔽物となる。
【0176】
2.3.2.4.コンセプトF
別の実施形態であるコンセプトF(
図87に図示)は、LCDデータバスに(非タッチIPSディスプレイとの関係で)変更を加えず、且つ追加のITO層を必要とすること無しに、又は各層の整列を更に難しくすること無しに、ディスプレイの摂動を低減することができる。(コンセプトEとGでのように)共有のデータラインを使用する代わりに、コンセプトFでは、金属層(M1)内に、出力感知ラインの役目を果たす、経路指定された金属ラインのセットを追加することによって、潜在的なディスプレイの摂動を低減することができる。それら出力感知ライン8700は、
図87、並びに
図134に示しているコンセプトFサブピクセルの積層構成図に示すように、ディスプレイの全エリアに亘ってディスプレイ回路の下方に縦方向に走っている。出力感知用に別の金属層を使用することによって、コンセプトFは、コンセプトE(
図84)で示したトランジスタの内の一方88を取り除けるようにしている。更に、コンセプトFは、ディスプレイの層をひっくり返して、上でコンセプトGについて説明した潜在的なディスプレイの摂動を更に低減していることに留意されたい。
【0177】
3.実現技術
上記実施形態の多くには、様々な態様を適用することができる。それらの数例を以下に説明する。
【0178】
3.1.DITO
多くの実施形態では、ITOは、基板の両面に堆積されパターン形成される。これを行うための各種技法は、2007年1月3日出願の米国特許出願第11/650,049号「ITO金属電極を有する両面式タッチ感応パネル」に記載されており、同出願を参考文献としてここに援用する。
【0179】
3.2.パターン形成されたITOを金属に置き換える
様々な実施形態では、タッチ感知電極を形成しているパターン形成されたITO層を無くして、この層を、例えば、上ガラス側の層の内の1つの層上に配置した非常に細い金属線に置き換えることができる。これには、ITO加工工程を無くすことができることを含め、多くの利点がある。更に、感知ライン電極を相当薄くすることができる(例えば、10ミクロン程度)ため、それらはディスプレイの視覚認知に干渉しない。ラインの厚さの削減により、寄生容量も削減されるので、上記のように、タッチ・スクリーンのオペレーションの各種態様が強化されることになる。最後に、ディスプレイからの光は、ITOで実質的に覆われている層を通過しないので、色彩と透過率が向上する。
【0180】
3.3.タッチ感知基板へのプラスチックの使用
上記各種実施形態は、ガラス基板と関連付けて説明してきた。但し、幾つかの実施形態では、それら基板の1つ又はそれ以上をプラスチックに置き換えることで、コストの節約と薄型化を実現することができる。
図89と
図90では、
図89に示すガラスをベースにしたシステムと
図90に示すプラスチックをベースにしたシステムの幾つかの相違点を示している。1つの特定の実施形態に関連付けて示してはいるが、プラスチック基板置換の原理は、上記コンセプトの何れにも適用することができる。
【0181】
図89は、ガラスをベースにしたシステムの積層構成を示している。図示の各寸法は現行技術を使用した場合の一例的なものであり、当業者には理解頂けるように、他の厚さを使用してもよく、特に各種製作技法が進歩すれば他の厚さを使用できる。一番上から始めて、一例的な厚さ約0.8mmを有するカバー8901が、屈折率整合層8902(例えば、大凡0.18mmの厚さ)の上に在る。屈折率整合層の下には、上ポラライザー8903が設けられている。上ポラライザー8903は、厚さが大凡0.2mmである。次の層は、それぞれの面にパターン形成されたITOを有するガラス層8904(例えば、約0.5mm厚)である。感知電極は、例えば、表面側にパターン形成されており、これは、FPC8905に接合されていてもよい。各駆動電極とLCDのV
COM層は、ガラス層8905の底面にパターン形成されている。この下には、一例的な厚さ約0.3mmを有する別のガラス層8906が設けられていて、その上に、ディスプレイの各TFT層が形成されている。このガラス層の表面は、ディスプレイとタッチ感知回路8908の両方に接続されているFPC8907にも接合されている。この下に、下ポラライザーが在り、その下には、ディスプレイ・バックライト8910が在る。
【0182】
表面から底面までの全体の厚さは、大凡2.0mmである。各種ASICと個別の各回路構成要素は、ガラス上に配置されていてもよいし、FPCを介して接続されていてもよい。パターン形成されたITOは、別のプラスチック層、例えば、表面カバーその他の底面に設置されていてもよい。
【0183】
図90は、タッチ感知層9002をプラスチック・ポラライザー9003に動かすことにより、中間ガラス層9001の厚さを削減した、類似の配列を示している。タッチ感知層9002をプラスチック・ポラライザー9003上にパターン形成することは、様々な既知の方法により行うことができる。厚さの削減は、ガラスの両側にパターン形成する必要がないので、達成することができた。取り扱いの問題のため、LCD加工に使用されるガラスは、例えば、約0.5mmの厚さに加工され、次いで、加工後に、例えば、約0.3mmまで研磨される。両側に回路要素があれば、ガラスの研磨は不可能になる。但し、
図90の実施形態では、中間ガラス9001は一方の面にしか電極がパターン形成されていないので、研磨して、約0.2mmの全体的な厚さ削減を行うことができる。この配列は、ポラライザーに対する追加のFPC接続9004を含んでいてもよく、低温接合加工を使用して接合することができる。プラスチック基板を利用することの更なる利点は、異なる誘電定数を有する各材料を使用することができる点にあり、柔軟性が生まれ、容量性感知回路のオペレーションが強化される。
【0184】
プラスチック基板実施形態の或る変型を
図91に示す。各電極9101(例えば、駆動又は感知各ライン)は、複数のプラスチック基板9102、9103上にパターン形成され、その後それら基板は一体に接着される。各プラスチック基板はより薄い(例えば、ガラス基板の大凡半分の厚さ)ので、その様な技法は、更に薄型化したタッチ・スクリーンを可能にすることができる。
【0185】
図92に示す別の変型では、ポリエステル基板9201は、両面に電極9202がパターン形成されている。この実施形態は、両面の間を接続するために、基板9201を貫通するアクセス孔9203を含んでいる。ポリエステル基板921は、ハンドヘルド・コンピュータの様な機器のカバー9204内に配置することができる。更に別の変型を
図93に示しており、本図は、ITO電極9302が表面にパターン形成されたポリエステル層9301を示しており、基板9301を貫通して第2ガラス基板9304までアクセス孔が伸びていて、更にITO電極9305が表面にパターン形成されている。
【0186】
図94は、機器、例えば、ハンドヘルド・コンピュータ9401の上下逆にした図を示している。上下逆というのは、機器のユーザー面が底面(図示せず)になるという意味である。各ITOタッチ感知電極9402は、ユーザー面の裏にパターン形成されており、対向面に配置されたITOを有する積層構成9403が、機器組み立て中に、その中に配置される。このコンセプトの更なる変型を
図95に示しており、本図は、ここで論じた各種実施形態の1つに基づき、成形されたプラスチックカバー6702の内側と積層構成9503の上とにパターン形成されたITO電極9501を示している。
図95の図では、機器のユーザー面は、表面9504である。
【0187】
図96と
図97と
図98は、ここで説明しているタッチ感知に適している、ITO電極のパターンが上に配置されたポリエステル基板を製造する場合の工程のシーケンスを示している。
図96は、分離された方形のITOのグリッド9602にパターン形成されることになるパターン形成用ポリエステルシート9601を示している。ITOの抵抗率は約200オーム以下である。個々の電極は、大凡1mmx1mmで、その間のギャップは30ミクロンである。図示の実施形態では、シート9601は、大凡50mmx80mmであり、これは、ハンドヘルド・コンピュータ、マルチメディア・プレーヤー、携帯電話、又は同種の機器にとって適した大きさであるが、当業者には他の様々な大きさ及び/又は用途が想起されるであろう。図示のように、断面図では、シートは厚さが25ミクロンと薄いが、25乃至200ミクロンの寸法も使用することができる。これは、機器の厚さの面でかなり有利であることは明らかである。
【0188】
図97では、FPC9701は、パターン形成された基板9702に接合されている。
図98では、例えば、大凡0.8mmの厚さのPMMAの層とすることができるカバー9801、は、光学的に透明な接着剤を使用してPET基板9802に接着される。
【0189】
3.4.レベルシフター/デコーダとLCDコントローラの一体化
幾つかの実施形態では、V
STM信号のタッチ駆動セグメントへの送達を支援するのに、追加の回路(アクティブ、パッシブ、又は両方)が、LCD(
図6参照)の周辺エリアに設置されている。周辺エリア回路の詳細とその設計規則は、特定の製造プロセスの詳細と、どのTFT技術(即ち、PMOS、NMOS、又はCMOS)が使用されるかによって決まる。以下の4つの節では、異なる駆動回路一体化配列の観点で、周辺タッチ駆動回路を具現化するための対処法を論じる。
【0190】
3.4.1.個別のレベルシフター/デコーダ・チップ
1つの対処法では、個別のレベルシフター/デコーダCOGが、下ガラス(
図22参照)に取り付けられている。この配列では、周辺エリアには金属トレースが必要になる。トレースの個数は、タッチ駆動セグメントの個数によって異なり、小型ディスプレイでは20個未満であるかもしれない。この対処法の設計目的には、容量性結合を小さくすることが含まれ、これは、タッチ駆動トレース同士の間の間隔、並びに、各タッチ駆動トレースと周辺エリア内の他のLCD各回路の間の間隔、の影響を受ける。低トレース・インピーダンスも、隣接するタッチ駆動トレース同士の間の容量性結合を小さくするのに役立つ。
【0191】
例えば、最長トレース、レベルシフター/デコーダ出力抵抗、導電ドット、及びITO駆動セグメントを組み合わせた抵抗は、約450オームまでに制限される。タッチ駆動ITOの抵抗は、(ITOシート抵抗が30オーム/平方で11平方として)約330オームになり、他の構成要素分用に120オーム残る。以下の表は、タッチ駆動回路内のそれぞれの構成要素に対するこの抵抗の1つの割り当てを示している。
【0192】
所望のトレース抵抗を得るのに、より幅広のトレース及び/又はより低いシート抵抗を使用してもよい。例えば、100オームのトレース抵抗の場合、シート抵抗が200mオーム/平方なら、トレース幅は0.18mm以上が望ましい。
【0193】
無論、最も長いタッチ駆動トレースだけが最大幅を必要とする。相応に短尺である他のタッチ駆動トレースは、相応に幅が狭くなっている。例えば、最短トレースは5mmであるが、その場合その幅は約0.01mmとすることができるであろう。
【0194】
図99は、コンセプトAのレベルシフター/デコーダCOG9901の簡略図を示している。(コンセプトBでは、トランジスタQ1とENB_LCD[x]デコーダは無くすことができる。)登録されたデコーダブロック9902は、3つの別々の登録されたデコーダから構成されており、それらは一度に1つずつロードされる。3つのデコーダの内の1つが、タッチ/LCDドライバからの2つの信号によって選択され、5ビットデータを使ってプログラムされる。デコーダの出力は、レベルシフター/デコーダの各出力区間に関係付けられた3つのトランジスタQ1、Q2、Q3を制御する。各出力区間は、3つの状態、即ち、1)LCD(Q1がオン、Q2とQ3はオフ)、2)タッチ(Q2はオン、Q1とQ3はオフ)、又は3)GND(Q3はオン、Q1とQ2はオフ)、の内の1つの状態にある。上に述べたように、Q2の出力抵抗は、V
STM位相遅延を低減するために、大凡10オーム又はそれ未満にされる。コンセプトBでは、LCDデコーダとQ1は無くすことができる。
【0195】
3.4.2.周辺エリアに完全に一体化されたレベルシフター/デコーダ
レベルシフター/デコーダ機能(
図99)は、下ガラスの周辺エリアに完全に一体化することもできる。この対処法では、TFT技術のタイプが、電力消費量に関係することになる。CMOS TFT技術は電力消費量を低く抑えるが、NMOS又はPMOSよりも高価である。しかしながら、具体的な設計定数次第で、どの様な技術を使用してもよい。
【0196】
タッチ駆動抵抗を更に小さくするため、トランジスタ幅を拡大して、相対的に低いLTPS TFTの移動度(例えば、〜50cm
2/V*秒)を補償してもよい。
【0197】
3.4.3.タッチ/LCDドライバに部分的に一体化されたレベルシフター/デコーダ 幾つかの実施形態では、レベルシフター/デコーダ機能は、タッチ/LCDドライバに部分的に一体化し、周辺エリアに部分的に一体化することができる。この対処法には、例えば、周辺エリアのCMOSを無くすことができてコストが下がること、及び、周辺エリアの論理を無くすことができて電力消費が減ること、を含め、幾つかの便益がある。
図100はこの取り組みで使用することができる、修正を加えたタッチ/LCDドライバ10001と周辺トランジスタ回路10002を示している。レベルシフター及びブースト回路10003は、下ガラス側に一体化され、各セグメント・ドライバとタッチ/LCDチップの間に配置されている。タッチ・ドライブ・セグメント毎に1つのセグメント・ドライバが在る。それぞれのタッチ・ドライブ・セグメントは、3つの状態、即ち、GND状態、V
STMによって変調された状態、及びV
COMによって変調された状態、の内の1つの状態にある。この配列では、低電圧タッチ/LCDチップがトランジスタ・スイッチを制御できるようにするのに、下ガラス側にレベルシフター回路が必要である。
【0198】
3.4.4.タッチ/LCDドライバに完全に一体化されたレベルシフター/デコーダ
幾つかの実施形態では、レベルシフター/デコーダ機能は、タッチ/LCDドライバに完全に一体化することができる。レベルシフター/デコーダ機能をタッチ/LCDドライバに移すことにより、別体のレベルシフター/デコーダCOGは無くすことができる。更に、CMOSと論理を周辺エリアから無くすことが実現できる。
【0199】
図101は、V
STMを発生させるためにブースト回路10102を含んでいる、完全に一体化されたタッチ/LCDドライバ10101の簡略化されたブロック図を示している。(例えば、コンデンサー、ダイオード、及び、インダクタの様な)パッシブ構成要素も必要になるが、他の全ての対処法と同様に、分かり易くするために図示していない。
【0200】
4.使用法、形状因子、その他
ここに記載している一体化されたタッチ・スクリーンLCDの一例的な用途を、以下に説明する。PDA、マルチメディア・プレーヤー、携帯電話、GPS機器などの様な機器を含め、ハンドヘルド・コンピュータは、1つの有益な用途である。更に、タッチ・スクリーンは、タブレット・コンピュータ、ノートブック・コンピュータ、デスクトップ・コンピュータ、案内所、などに、用途を見出すことができよう。
【0201】
図102は、本発明の1つの実施形態による、タッチ・スクリーン10201の或る用途の斜視図である。タッチ・スクリーン10201は、多分、ポインタ又はカーソルを含むグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)並びにユーザーに対する他の情報を表示するように構成することができる。一例として、タッチ・スクリーンは、ユーザーが、ディスプレイ10202上のGUIを単に指すことによって、入力ポインタを動かし、又はグラフィカル・ユーザー・インターフェース上で選択を行えるようにする。
【0202】
一般に、タッチ・スクリーンは、タッチ・スクリーンの表面10204へのタッチ・イベントを認識し、その後、この情報をホスト機器に出力することができる。ホスト機器は、例えば、デスクトップ、ラップトップ、ハンドヘルド、又はタブレット・コンピュータの様なコンピュータに対応している。ホスト機器は、タッチ・イベントを翻訳することができ、タッチ・イベントに基づいて動作を行うことができる。
図102に示すタッチ・スクリーンは、タッチ・スクリーンのタッチ感応表面10204の異なる場所で同時に起こる複数のタッチ・イベントを認識することができるように構成されている。図示のように、タッチ・スクリーンは、例えば、タッチ・スクリーンの表面に所与の時刻に起こるそれぞれのタッチ点T1〜T4に対し別々の追跡信号S1〜S4を生成することができる。
【0203】
マルチタッチ・イベントは、別々に又はまとめて使用されて、ホスト機器内で単一の又は複数の動作が行われる。別々に使用される場合、第1のタッチ・イベントは第1の動作を行うために使用され、第2のタッチ・イベントは第1の動作とは異なる第2の動作を行うために使用される。動作には、例えば、カーソル又はポインタの様なオブジェクトを動かすこと、スクロール又はパニングを行うこと、制御設定を調整すること、ファイル又は文書を開くこと、メニューを閲覧すること、選択を行うこと、インストラクションを実行すること、ホスト機器に接続されている周辺機器を操作すること、などが含まれる。まとめて使用される場合、第1と第2のタッチ・イベントは、1つの特定の動作を行うために使用される。特定の動作には、例えば、コンピュータ又はコンピュータ・ネットワークへのロギングを行うこと、権限が与えられた個人のコンピュータ又はコンピュータ・ネットワークの制限エリアへのアクセスを許可すること、コンピュータ・デスクトップのユーザーの好みの配列に関係付けられたユーザー・プロファイルのローディングを行うこと、ウェブ・コンテンツへのアクセスを許可すること、特定のプログラムを起動すること、メッセージの暗号化又は解読を行うこと、及び/又は同種の動作が含まれる。
【0204】
図102に戻るが、タッチ・スクリーン10201は、独立ユニットとしてもよいし、又は他の機器と一体化してもよい。独立させた場合、タッチ・スクリーン10201は、自身のハウジングを含んでいる周辺機器(例えば、モニター)の様に動作する。独立ディスプレイ配列は、有線又は無線接続を介してホスト機器に連結してもよい。一体化された場合、タッチ・スクリーン10201は、ハウジングを共有し、ホスト機器の中に配線で接続されて組み込まれ、これにより単一ユニットが形成される。一例として、タッチ・スクリーン10201は、限定するわけではないが、デスクトップ、ラップトップ、又はタブレット・コンピュータの様な汎用コンピュータ、PDAの様なハンドヘルド機器、音楽プレーヤーの様なメディア・プレーヤー、又はカメラ、プリンタ、携帯電話、及び/又は同種の機器の様な周辺機器を含め、各種ホスト機器内部に配置してもよい。
【0205】
図103は、本発明の1つの実施形態による、コンピュータ・システム10301のブロック図である。コンピュータ・システム10301は、デスクトップ、ラップトップ、タブレット、又はハンドヘルドの様なパーソナルコンピュータ・システムに対応している。一例として、コンピュータ・システムは、どの様なApple又はPCベースのコンピュータ・システムに対応していてもよい。コンピュータ・システムは、更に、案内所、現金自動預け払い機(ATM)、店舗販売時点情報管理機(POS)、産業機械、ゲーム機、ゲームセンター用機械、自動販売機、電子航空券端末、レストラン予約端末、顧客サービスステーション、図書館端末、学習機器、及び同種のもの、の様な公共のコンピュータ・システムに対応していてもよい。
【0206】
図示のように、コンピュータ・システム10301は、コンピュータ・システム10301に関係付けられたインストラクションを実行しオペレーション10302を遂行するように構成されたプロセッサ56を含んでいてもよい。例えば、メモリから取り出されたインストラクションを使用して、プロセッサ10302は、コンピューティング・システムの各構成要素間の入力及び出力データの受信と操作を制御してもよい。プロセッサ10302は、シングルチップ・プロセッサでもよいし、複数の構成要素を使用して構築してもよい。
【0207】
殆どの場合、プロセッサ10302は、オペレーティング・システムと共に作動して、コンピュータ・コードを実行し、データを作成及び使用する。コンピュータ・コードとデータは、プロセッサ10302に作動可能に連結されたプログラム記憶ブロック10303内に置かれている。プログラム記憶ブロック10303は、コンピュータ・システム10301によって使用されているデータを保持するための場所を提供することができる。一例として、プログラム記憶ブロックには、読み出し専用メモリ(ROM)10304、ランダムアクセス・メモリ(RAM)10305、ハードディスク・ドライブ10306、及び/又は同種のものが含まれる。コンピュータ・コードとデータは、取り外し可能記憶媒体上にも置かれ、必要な時に、コンピュータ・システム上にローディングされるかインストールされてもよい。取り外し可能記憶媒体には、例えば、CD−ROM、PC−CARD、フロッピィディスク、磁気テープ、及びネットワーク構成要素が含まれる。
【0208】
コンピュータ・システム10301は、更に、プロセッサ10302に作動可能に連結されている入力/出力(I/O)コントローラ10307を含んでいてもよい。I/Oコントローラ10307は、プロセッサ56と一体化してもよいし、又は図示のように別体の構成要素でもよい。I/Oコントローラ10307は、1つ又は複数のI/O機器との対話を制御することができるように構成されている。I/Oコントローラ66は、プロセッサと、同プロセッサとの通信を所望するI/O機器との間で、データを交換することにより作動する。I/O機器とI/Oコントローラは、データリンク10312を介して通信することができる。データリンク10312は、一方向リンクであってもよいし、又は二方向リンクであってもよい。中には、I/O機器が有線接続を介してI/Oコントローラ10307に接続されている場合もある。他に、I/O機器が、無線接続を介してI/Oコントローラ10307に接続されている場合もある。一例として、データリンク10312は、PS/2、USB、Firewire、IR、RF、Bluetooth(登録商標)、又は同種のものに対応していてもよい。
【0209】
コンピュータ・システム10301は、更に、プロセッサ10302に作動的に連結することのできるディスプレイ機器10308、例えば、ここに記載している様な一体型タッチ・スクリーンLCD、を含んでいてもよい。ディスプレイ機器10308は、別体の構成要素(周辺機器)でもよいし、プロセッサ及びプログラム記憶装置と一体化してデスクトップ・コンピュータ(オール・イン・ワン・マシン)、ラップトップ、ハンドヘルド又はタブレット、又は同種のものを形成してもよい。ディスプレイ機器10308は、例えば、ポインタ又はカーソルを含むグラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)並びにユーザーに表示される他の情報を表示することができるように構成されている。
【0210】
ディスプレイ機器10308は、プロセッサ10302に作動的に連結されている一体型タッチ・スクリーン10309(分かり易くするために別々に示しているが、実際にはディスプレイと一体化されている)を含んでいてもよい。タッチ・スクリーン10309は、ユーザーのタッチから入力を受け取り、この情報をプロセッサ10302に送ることができるように構成されている。タッチ・スクリーン10309は、その表面の各タッチと、各タッチの位置、形状、大きさ、その他を認識することができる。タッチ・スクリーン10309は、各タッチをプロセッサ10302に報告し、プロセッサ10302は、各タッチを、そのプログラミングに基づいて翻訳する。例えば、プロセッサ10302は、特定のタッチに基づいてタスクを開始することもある。
【0211】
ここに記載しているタッチ・スクリーンLCDは、参考文献としてここに援用している、2006年3月3日出願の米国特許出願第11/367、749号「多機能ハンドヘルド機器」に開示されているものの様な多機能ハンドヘルド機器に特に好都合な用途を見出すことになろう。
【0212】
例えば、ここに記載している原理は、各種電子機器及びコンピュータ・システムの入力機器を考案するのに使用することができる。それら電子機器及びコンピュータ・システムは、デスクトップ・コンピュータ10401、ノートブック・コンピュータ10405、タブレット・コンピュータ10403、ハンドヘルド・コンピュータ10404、携帯情報端末10405、メディア・プレーヤー10406、携帯電話10407、及び同種のものを含め、
図104に示す様々なタイプの内の何れであってもよい。更に、電子機器及びコンピュータ・システムは、上記タイプの組合せ、例えば、携帯情報端末とメディア・プレーヤーと携帯電話の組合せである機器であってもよい。上に述べた各実施形態のこの他の修正、置換え、及び組合せも可能である。
【0213】
更に、原理は、ここでは容量性マルチタッチ・システムと関連付けて説明しているが、タッチ又は近接感知が他の技法に依存しているシステムに適用してもよい。従って、特許請求の範囲は、上記のものの全ての修正、置換え、組合せ、及び、等価物を含んでいると解釈されるものとする。