特許第6205044号(P6205044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6205044-酸化物触媒の製造方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205044
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】酸化物触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/08 20060101AFI20170914BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20170914BHJP
   B01J 23/887 20060101ALI20170914BHJP
   C07C 47/22 20060101ALI20170914BHJP
   C07C 45/35 20060101ALI20170914BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
   B01J37/08
   B01J37/04 102
   B01J23/887 Z
   C07C47/22 A
   C07C45/35
   !C07B61/00 300
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-208012(P2016-208012)
(22)【出願日】2016年10月24日
(62)【分割の表示】特願2012-247831(P2012-247831)の分割
【原出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2017-24009(P2017-24009A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 淳
(72)【発明者】
【氏名】山口 辰男
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−212779(JP,A)
【文献】 特開2001−187771(JP,A)
【文献】 米国特許第04192776(US,A)
【文献】 特開2002−301373(JP,A)
【文献】 特表2010−516441(JP,A)
【文献】 特開昭55−047144(JP,A)
【文献】 特開平01−265067(JP,A)
【文献】 特表2007−514538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
C07B31/00−63/04
C07C1/00−409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物触媒の製造方法であって、
前記酸化物触媒が、
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト及びセリウムを含有し、
下記組成式(1)で表される組成を有する金属酸化物;
Mo12BiaFebCocCedefg (1)
(式中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Feは鉄、Coはコバルト、Ceはセリウム、Aはカリウム、セシウム及びルビジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bはニッケル、マンガン、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、鉛、ランタン、プラセオジウム、ネオジム及びユウロピウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、a〜fは、Mo12原子に対する各元素の原子比を示し、1.5≦a≦6、2≦b≦6、2≦c≦8、0.5≦d≦6、0.01≦e≦2、0≦f<2であり、gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)を含み、
プロピレン、イソブチレン、イソブタノール及びt−ブチルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種を気相接触酸化することにより不飽和アルデヒドを製造する際に用いる酸化物触媒であり、
触媒を構成する原料を混合して原料スラリーを得る工程と、
得られた原料スラリーを乾燥して乾燥体を得る工程と、
得られた乾燥体を室温から200℃〜300℃まで1h〜10hかけて昇温し、200℃〜300℃の範囲の温度で保持して第1焼成体を得る工程と、
前記第1焼成体を400〜460℃まで1h〜5hかけて昇温し、400℃〜460℃の範囲の温度で保持して第2焼成体を得る工程と、
前記第2焼成体を460℃〜700℃の範囲の温度で保持して酸化物触媒を得る工程と、
を含む製造方法。
【請求項2】
前記原料スラリーのpHが2.0〜7.0である、請求項1記載の酸化物触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン及び/又はアルコールから不飽和アルデヒドを製造する際に用いられる酸化物触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン、イソブチレン、イソブタノール、及びt−ブチルアルコールから選ばれる少なくとも1種を原料とし、不飽和アルデヒドを中間体として、酸化的エステル化反応によって、アクリル酸メチル、又はメタクリル酸メチルを製造する方法は、直メタ法と呼ばれる2つの反応工程からなる方法と、直酸法と呼ばれる3つの反応工程からなる方法とが知られている。「石油化学プロセス」(石油学会編、第172〜176頁、講談社サイエンティフィク)によると、直酸法は3つの工程でアクリル酸メチル、又はメタクリル酸メチルを製造するプロセスであり、第1酸化工程はプロピレン、イソブチレン及びt−ブチルアルコールから選ばれる少なくとも一つの出発物質を、触媒の存在下で分子状酸素と気相接触酸化反応させて、アクロレイン、又はメタクロレインを製造する工程である。第2酸化工程は、第1酸化工程で得られたアクロレイン、又はメタクロレインを触媒の存在下で分子状酸素と気相接触酸化反応させて、アクリル酸、又はメタクリル酸を製造する工程である。エステル化工程は、第2酸化工程で得られたアクリル酸、又はメタクリル酸をさらにエステル化して、その際にアルコールとしてメタノールを用いた場合には、アクリル酸メチル、又はメタクリル酸メチルを得る工程である。
これに対し、直メタ法は、プロピレン、イソブチレン、イソブタノール、及びt−ブチルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種を原料とし、分子状酸素含有ガスを用いて気相接触酸化反応させて、アクロレイン、又はメタクロレインを製造する第1反応工程と、得られたアクロレイン、又はメタクロレインと、例えばアルコールとしてメタノールと分子状酸素とを反応させて、一挙にアクリル酸メチル、又はメタクリル酸メチルを製造する第2反応工程の2つの触媒反応工程からなる方法である。
【0003】
不飽和アルデヒドを主成分として製造する際に用いられる触媒として、これまでに数多くの報告があり、古くはソハイオ社によって見出された、必須成分としてMo、Biを含む複合酸化物触媒が数多く報告されている。
非特許文献1には、モリブデン−ビスマス系の複合酸化物であって、触媒活性はMo/Bi比が1/2から3/2の範囲でのみ発現する3種の複合酸化物が存在することが記載されている。具体的には、以下の表1に示すように、カチオン空孔をもった欠陥シーライト構造を有するBi2(MoO43(α相)、準安定な斜方晶系の層状構造を有するBi2Mo29(β相)、及びMo八面体と酸化ビスマスの層で構成される層状構造(コクリナイト構造)を有するBi2MoO6(γ相)の3種の結晶相を形成することが記載されている。
【0004】
【表1】
【0005】
特許文献1には、触媒収率を向上させる目的で、触媒を構成する金属として、Mo、Bi、Ce、K、Fe、Co、Mg、Cs、Rbに着目した触媒について記載されている。
特許文献2には、α相の結晶構造に着目し、主成分として、β―CoMoO4、Fe2(MoO42を有し、第2成分としてBi2(MoO42を含有することを特徴とする触媒について記載されている。また、モリブデンとビスマス系の複合酸化物は、α相として存在することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】触媒 VOl45、No1 2003 23−25
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開95/35273号パンフレット
【特許文献2】特開2000−169149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
直酸法においては、最終酸化生成物が不飽和カルボン酸であるため、中間体の不飽和アルデヒドを得る工程においてメタクリル酸を減らすことのメリットは小さく、メタクロレインとメタクリル酸の合計収率が高いほど望ましい触媒といえる。これに対し、直メタ法においては、第1反応工程で不飽和アルデヒドを生成させた後、第2反応工程で不飽和カルボン酸エステルを生成させるので、不飽和カルボン酸を目的化合物とする工程が存在しない。従って、直メタ法の第一反応工程においては、不飽和アルデヒドのみが生成するのが好ましく、不飽和カルボン酸の生成は好ましいものではない。すなわち、不飽和アルデヒドの収率が高く、且つ、不飽和カルボン酸の収率は低い触媒が、直メタ法の第一反応工程においては望ましいことになる。ところが、不飽和アルデヒドの生産性を向上させるべく、高いイソブチレン濃度・高い反応温度の条件で反応を行うと、不飽和カルボン酸が生成するため、不飽和アルデヒドの収率が下がるという問題がある。従って、従来知られている触媒では、高いイソブチレン濃度・高い反応温度の条件で反応させることができず、直メタ法の第一反応工程における不飽和アルデヒドの生産性を向上させる上で大きな課題となっている。
【0009】
上述の観点から、当分野で利用されているビスモリ系(Bi−Mo)や、特許文献1及び2に記載されているような不飽和アルデヒド製造用触媒を検討した結果、当該触媒中にα相が存在していることがX線回折等から分かってきた。更に、α相は比較的酸化力が強いために、不飽和アルデヒドを更に酸化させて不飽和カルボン酸を生成させてしまい、不飽和アルデヒドの選択率を下げてしまうことがわかった。
ビスモリ系(Bi−Mo)触媒と呼ばれるように、BiはMoと共に活性種の形成のための必須元素であるため、活性と選択率の観点から多く含まれていることが有利であるが、Bi含有量を多くすると触媒が不均質になる。例えば、従来、工業的に使用されているBi原料である硝酸Biは難水溶解性物質であり、硝酸Biを溶解させるためには大量の硝酸を必要とし、その結果、焼成後の触媒組成が不均質になり、α相のような不飽和アルデヒドの生成に不利な結晶構造が生成していると推測できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、触媒の酸化力を適切にすべく本発明者らが鋭意検討した結果、MoとBiの複合酸化物がβ相を含むと、安定に酸化力を保持することが可能になり、不飽和カルボン酸の生成が抑えられ、不飽和アルデヒドの選択率が向上することを発見した。同時に、β相を選択的に合成する手段も発見し、本発明に到達した。
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
プロピレン、イソブチレン、イソブタノール及びt−ブチルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種を気相接触酸化することにより不飽和アルデヒドを製造する際に用いる酸化物触媒であって、
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト及びセリウムを含有し、
CuKα線をX線源として得られるX線回折パターンにおいて、2θ=26.5±0.3°の位置に現れるCoMoO4の回折ピーク(h)の強度Phに対する、2θ=27.76±0.3°に現れるβ−Bi2Mo29の回折ピーク(i)の強度Piの比Ri=Pi/Phが0.4≦Ri≦2.0である、酸化物触媒。
[2]
CuKα線をX線源として得られるX線回折図における回折角(2θ)が、少なくとも14.88 °±0.3°、27.76°±0.3°、31.82°±0.3°、33.11°±0.3°、46.58°±0.3°、54.28°±0.3°の範囲に回折ピークを有する、上記[1]記載の酸化物触媒。
[3]
下記組成式(1)で表される組成を有する金属酸化物を含む、上記[1]又は[2]記載の酸化物触媒。
Mo12BiaFebCocCedefg (1)
(式中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Feは鉄、Coはコバルト、Ceはセリウム、Aはカリウム、セシウム及びルビジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bはニッケル、マンガン、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、鉛、ランタン、プラセオジウム、ネオジム及びユウロピウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、a〜fは、Mo12原子に対する各元素の原子比を示し、1.5≦a≦6、2≦b≦6、2≦c≦8、0.5≦d≦6、0.01≦e≦2、0≦f<2であり、gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)
[4]
酸化物触媒の製造方法であって、
触媒を構成する原料を混合して原料スラリーを得る工程と、
得られた原料スラリーを乾燥して乾燥体を得る工程と、
得られた乾燥体を室温から200℃〜300℃まで徐々に昇温し、200℃〜300℃の範囲の温度で保持して第1焼成体を得る工程と、
前記第1焼成体を400〜460℃まで徐々に昇温し、400℃〜460℃の範囲の温度で保持して第2焼成体を得る工程と、
前記第2焼成体を460℃〜700℃の範囲の温度で保持して酸化物触媒を得る工程と、を含む製造方法。
[5]
前記原料スラリーのpHが2.0〜7.0である、上記[4]記載の酸化物触媒の製造方法。
[6]
上記[1]〜[3]のいずれか記載の酸化物触媒を用いて、プロピレン、イソブチレン、イソブタノール及びt−ブチルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を酸化する工程を含む、不飽和アルデヒドの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の酸化物触媒は、プロピレン、イソブチレン、イソブタノール及びt−ブチルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種を気相接触酸化反応させる際に用いることにより、不飽和アルデヒドを高選択率及び高収率で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1と比較例1のXRDの結果を示す。
図2】実施例1と比較例1のXRDの2θ=25〜35°の範囲の拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0014】
本実施形態における酸化物触媒は、
プロピレン、イソブチレン、イソブタノール及びt−ブチルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種を気相接触酸化することにより不飽和アルデヒドを製造する際に用いる酸化物触媒であって、
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト及びセリウムを含有し、
CuKα線をX線源として得られるX線回折パターンにおいて、2θ=26.5±0.3°の位置に現れるCoMoO4の回折ピーク(h)の強度Phに対する、2θ=27.76±0.3°に現れるβ−Bi2Mo29の回折ピーク(i)の強度Piの比Ri=Pi/Phが0.4≦Ri≦2.0である。
【0015】
[酸化物触媒]
(1)組成
本実施形態における酸化物触媒において、Mo、Bi、Fe、Co、Ceは必須である。BiとMoは、β−Bi2Mo29の複合酸化物を形成させるために必須であり、Mo12原子に対して、Biの原子比aは、好ましくは1.5≦a≦6となるようにする。目的生成物の選択率をより高める観点で、より好ましくは2≦a≦5であり、さらに好ましくは2≦a≦4である。Ceは、上記MoとBiの複合酸化物の構造安定化に寄与すると考えられており、必須の元素である。耐熱性を高める観点で、Ceの原子比dは、好ましくは0.5≦d≦6であり、より好ましくは1≦d≦5、さらに好ましくは1.5≦d≦3である。
【0016】
目的生成物の選択率を低下させることなく触媒活性を高める観点から、FeはMo、Biと同様に、工業的に目的生成物を合成する上で必須の元素である。Feは、Fe2Mo312などの複合酸化物を形成し、気相から酸素を触媒の構造内に取り込み、反応で消費される格子酸素を補い、触媒が過還元されて劣化するのを抑制する働きがある。本実施形態における酸化物触媒のMo12原子に対するFeの原子比bは、好ましくは2≦b≦6であり、より好ましくは2.5≦b≦5、さらに好ましくは3≦b≦4である。
【0017】
本実施形態における酸化物触媒において、Coは、Mo、Bi、Feと同様に工業的に目的生成物を合成する上で必須の元素である。Coは、複合酸化物CoMoO4を形成し、Bi−Mo−O等の活性種を高分散させるための担体としての役割と、気相から酸素を取り込み、Bi−Mo−O等に供給する役割を果たしている。不飽和アルデヒドを高収率で得るには、CoをMoと複合化させ、複合酸化物CoMoO4を形成させる必要がある。Co34やCoO等の単独酸化物の形成を少なくする観点から、Coの原子比cは、好ましくは2≦c≦8であり、より好ましくは2.5≦c≦6、さらに好ましくは3≦c≦5である。
【0018】
(2)結晶構造
本実施形態における酸化物触媒は、CuKα線をX線源としてX線回折(XRD)でX線回折角2θ=5°〜60°の範囲を測定すると、2θ=26.5±0.3°の位置に現れるCoMoO4の回折ピーク(h)の強度Phに対する、2θ=27.76±0.3°に現れるβ−Bi2Mo29の回折ピーク(i)の強度Piの比Ri=Pi/Phが0.4≦Ri≦2.0の範囲となる。CuKα線をX線源として得られるX線回折パターンにおいて、2θ=26.5±0.3°の位置に現れる回折ピークはCoMoO4の(002)に相当し、2θ=27.76°±0.3°の位置に現れる回折ピークはβ−Bi2Mo29の(320)に相当する。
【0019】
本実施形態における酸化物触媒において、β−Bi2Mo29の結晶が生成したことは、本焼成の後にX線回折を測定することによって確認できる。触媒のX線回折で2θ=5°〜60°の範囲を測定すると、14.88°±0.3°、27.76°±0.3°、31.82°±0.3°、33.11°±0.3°、46.58°±0.3°、54.28°±0.3°の範囲に回折ピークを示す。しかしながら、酸化物触媒にはβ−Bi2Mo29以外にも様々な結晶構造が含まれるため、XRDの回折ピークは極めて複雑になり、必ずしも全てのピークを検出できるとは限らない。この点について、本発明者らが鋭意検討したところ、2θ=27.76±0.3°の位置に検出される回折ピークは、β−Bi2Mo29に固有のものであり、β−Bi2Mo29の結晶構造の生成の指標とみなせることがわかった。従って、2θ=26.5±0.3°の位置に現れるCoMoO4の回折ピーク(h)の強度Phに対する、2θ=27.76±0.3°に現れるβ−Bi2Mo29の回折ピーク(i)の強度Piの比Ri=Pi/Phが0.4以上であれば、β−Bi2Mo29の結晶構造が充分に生成したと判断することができる。
【0020】
本実施形態における酸化物触媒において、Riは0.4≦Ri≦2.0の範囲にある。Riの値が0.4未満であると、β−Bi2Mo29の結晶量が少なく、触媒として使用した場合に不飽和カルボン酸の収率が高くなる。一方、Riの値が2.0を超えると、相対的に気相酸素を取り込む役割とされているCoMoO4の量が減るため、活性が低下する。高活性、かつ、高収率で目的生成物を得る観点から、Riは、好ましくは0.6≦Ri≦1.5であり、より好ましくは0.8≦Ri≦1.2である。
【0021】
本実施形態における酸化物触媒は、好ましくは、下記組成式(1)で表される組成を有する金属酸化物を含む。
Mo12BiaFebCocCedefg (1)
(式中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Feは鉄、Coはコバルト、Ceはセリウム、Aはカリウム、セシウム及びルビジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、Bはニッケル、マンガン、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、鉛、ランタン、プラセオジウム、ネオジム及びユウロピウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、a〜fは、Mo12原子に対する各元素の原子比を示し、1.5≦a≦6、2≦b≦6、2≦c≦8、0.5≦d≦6、0.01≦e≦2、0≦f<2であり、gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)
【0022】
上記組成式(1)において、Aはカリウム、セシウム及び/又はルビジウムを示し、酸化物触媒において、触媒で複合化されなかったMoO3等の酸点を中和する役割を示すと考えられる。カリウム、セシウム及び/又はルビジウムを含有するか否かは、後述するβ−Bi2Mo29の結晶構造には影響しない。Mo12原子に対する元素Aの原子比は、触媒活性の観点から、好ましくは0.01≦e≦2である。Aの原子比eをこの範囲に調整することにより、触媒が塩基性となるのを防ぎ、原料であるオレフィンやアルコールが触媒へ適度に吸着されるため、充分な触媒活性を発現する傾向にある。
【0023】
上記組成式(1)において、Bは、ニッケル、マンガン、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、鉛、ランタン、プラセオジウム、ネオジム、及びユウロピウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。ニッケル、マンガン、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、鉛は酸化物中で一部のコバルトに置換し、触媒中のCoMoO4の結晶構造を安定化させる傾向があり、ランタン、プラセオジウム、ネオジム、ユウロピウムはモリブデンと複合酸化物を形成し、活性を向上させる傾向がある。触媒性能を示すβ−Bi2Mo29結晶の生成とのバランスを保つ観点で、Bの原子比fの上限は、f<2であることが好ましい。Bで示される元素は、触媒中のCoMoO4の結晶構造を安定化させるもの、又は触媒の活性を向上させるものであるため、β−Bi2Mo29の結晶構造には影響せず、含有量がゼロ(f=0)でもよい任意成分として位置づけられる。
【0024】
A及びBで示される元素は、触媒中に含まれていても含まれていなくても、β−Bi2Mo29の結晶構造とは別に結晶構造を形成するため、β−Bi2Mo29の結晶構造には影響を及ぼさない。
【0025】
(3)金属酸化物以外の成分
本実施形態における不飽和アルデヒド製造用の酸化物触媒は、金属酸化物を担持するための担体を含有してもよい。担体を含む触媒は金属酸化物の高分散化及び担持された金属酸化物に、高い耐摩耗性を与えるという点で好ましいが、固定床反応器で不飽和アルデヒドを製造する際に、打錠成型した触媒を用いる場合には担体を含まなくてよい。押し出し成型法により触媒を成型する場合には、担体成分を含むことが好ましい。担体としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアが挙げられる。一般的にシリカは、他の担体に比べそれ自身不活性であり、目的生成物に対する選択性を低下させることなく、金属酸化物に対して良好なバインド作用を有する点で好ましい担体である。さらに、シリカ担体は、担持された金属酸化物に、高い耐摩耗性を与え易いという点でも好ましい。押し出し成型法により触媒を成型する場合、触媒全体に対する担体の含有量は5〜10質量%であることが好ましい。
【0026】
触媒を流動床反応器で用いる場合も、上記と同様の観点から、シリカを担体として用いることが好ましい。β−Bi2Mo29の結晶構造への影響と、見掛比重を適切にして流動性を良好にする観点から、触媒中の担体の含有量は、触媒の全質量に対して80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。流動床反応用触媒のような強度を要する場合には、実用上十分な耐破砕正や耐摩耗性等を有する観点から、担体の含有量は、触媒の全質量に対して20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。
【0027】
[2]酸化物触媒の製造方法
上述のように、本発明者らは、β−Bi2Mo29の結晶を得ることに着目し、その組成比や調製方法、焼成方法を総合的に検討した。
【0028】
本発明者らはβ相を選択的に合成するため、試行錯誤を重ねたところ、特定の焼成方法の要件を満たした新たな触媒製造技術によって、α相やγ相の生成を抑制し、β−Bi2Mo29の結晶が選択的に形成されることを初めて見出した。
【0029】
本実施態様における酸化物触媒は、例えば、原料スラリーを調製する第1の工程、原料スラリーを乾燥する第2の工程、第2の工程で得られた乾燥体を焼成する第3の工程を包含する方法によって得ることができる。以下、第1〜第3の工程を有する酸化物触媒の製造方法の好ましい態様について説明する。
【0030】
(1)原料スラリーの調製
第1の工程では、触媒を構成する各金属元素の触媒原料を混合して原料スラリーを得る。モリブデン、ビスマス、セリウム、鉄、コバルト、カリウム、ルビジウム、セシウム、ニッケル、マンガン、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、鉛、ランタン、プラセオジウム、ネオジム、ユウロピウムの各元素源としては、水又は硝酸に可溶なアンモニウム塩、硝酸塩、塩酸塩、有機酸塩を挙げることができ、酸化物や水酸化物、炭酸塩等でもよい。酸化物の場合は、水又は有機溶媒に分散された分散液が好ましく、より好ましくは水に分散された酸化物であり、水に分散されている場合、酸化物を分散させるために高分子等の分散安定剤が含まれていてもよい。酸化物の粒子径は、好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜80nmである。シリカ担体を含有する触媒を製造する場合は、原料スラリーにシリカ原料としてシリカゾルを添加するのが好ましい。
【0031】
原料スラリー中には、スラリーを均一に分散化させる観点から、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどの水溶性ポリマーや、アミン類、アミノカルボン酸類、しゅう酸、マロン酸、コハク酸などの多価カルボン酸、グリコール酸、りんご酸、酒石酸、クエン酸などの有機酸を適宜添加することもできる。水溶性ポリマーや有機酸の添加量は特に限定されないが、均一性と生産量のバランスの観点から、金属酸化物に対して0〜30質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0032】
原料スラリーの調製方法は、通常用いられる方法であれば特に限定されず、例えば、モリブデンのアンモニウム塩を温水に溶解させた溶液と、ビスマス、セリウム、鉄、コバルト、アルカリ金属を硝酸塩として水又は硝酸水溶液に溶解させた溶液を混合することにより調製することができる。混合後の原料スラリー中の金属元素濃度は、均一性と生産量のバランスの観点から、通常1〜50質量%であり、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは20〜40質量%である。
【0033】
アンモニウム塩と硝酸塩を混合すると沈殿を生じ、スラリーとなる。スラリーのpHを調整する前に、ホモジナイザー等を使用してスラリー中の固形分を粉砕するのが好ましい。上述したとおり、Bi含有量の多い組成にすると、スラリー中の硝酸含有量も高くなる傾向にあり、分散性が低くなり易いことから、ホモジナイザー処理が特に有効である。固形分をより小さく粉砕し、各元素を複合化させ易くする観点から、ホモジナイザーの回転数は、5000〜30000rpmであることが好ましく、10000〜20000rpmであることがより好ましく、15000〜20000rpmであることがさらに好ましい。ホモジナイザー処理の時間は、回転数や固形分量にもよるが、一般的には5分〜2時間とするのが好ましい。ホモジナイザー処理をしない場合、単純酸化物が生成し易くなる。
【0034】
原料スラリーが均質でない場合、焼成後の触媒組成が不均質になり、均質に複合化された結晶構造は形成され難くなるため、得られた酸化物の複合化が十分でない場合に、スラリーの調製工程の適正化を試みるのは好ましい態様である。なお、上述の原料スラリーの調製工程は一例であって限定的なものではなく、各元素源の添加の順序を変えてもよく、また、硝酸濃度を調整したり、アンモニア水をスラリー中に添加することによりスラリーのpHや粘度を改質させてもよい。より多くのβ−Bi2Mo29の結晶構造を形成させるには、均質なスラリーにすることが重要であり、この観点から、原料スラリーのpHは8.0以下に調整することが好ましい。原料スラリーのpHは、より好ましくは2.0〜7.0であり、さらに好ましくは3.0〜6.0である。原料スラリーのpHが8.0を超えると、ビスマス化合物の沈殿や単純酸化物が生成し、β−Bi2Mo29の結晶構造の生成が妨げられる傾向にあり、2.0未満の場合はα相やγが生成され易くなる傾向にある。
【0035】
(2)乾燥
第2の工程では、第1の工程で得られた原料スラリーを乾燥して乾燥体を得る。乾燥方法としては、特に制限はなく一般に用いられている方法によって行うことができ、蒸発乾涸法、噴霧乾燥法、減圧乾燥法などの任意の方法で行なうことができる。噴霧乾燥法では、通常工業的に実施される遠心方式、二流体ノズル方式及び高圧ノズル方式等の方法によって行うことができ、乾燥熱源としては、スチーム、電気ヒーター等によって加熱された空気を用いることが好ましい。この際、噴霧乾燥装置の乾燥機入口の温度は、通常150〜400℃、好ましくは180〜400℃、より好ましくは200〜350℃である。
【0036】
(3)焼成
第3の工程では、第2の工程で得られた乾燥体を焼成する。焼成は、回転炉、トンネル炉、マッフル炉等の焼成炉を用いて行うことができる。乾燥体の焼成方法は、用いる原料によっても異なる。例えば、原料に硝酸イオンを含む場合には、以下の3段階焼成を行うことが好ましい。
【0037】
[1]第1焼成
第1焼成においては、乾燥体を室温から200℃〜300℃の温度範囲まで昇温し、200℃〜300℃の範囲の温度で保持することにより第1焼成体を得る。第1焼成においては、好ましくは220〜280℃、さらに好ましくは240℃〜260℃の温度範囲まで昇温する。昇温時間は、好ましくは1h〜10h、さらに好ましくは2h〜5hである。第1焼成は、乾燥体中に残存している硝酸アンモニウムや原料の金属硝酸塩由来の硝酸を徐々に燃焼させることを目的としており、200℃〜300℃の温度範囲で保持する時間は、好ましくは1〜10h、さらに好ましくは2〜5hである。第1焼成の温度が高すぎたり、時間が長すぎたりすると、第1焼成の段階で単純酸化物が成長し易くなるため、後述の第2焼成や第3焼成において、β−Bi2Mo29の結晶構造が生成し難くなってしまう。よって、第1焼成における温度及び時間の上限は、単純酸化物の生成が起こらない程度に設定するのが好ましい態様である。
【0038】
[2]第2焼成
第2焼成においては、第1焼成において得られた第1焼成体を、400℃〜460℃まで徐々に昇温し、400℃〜460℃の範囲の温度で保持して第2焼成体を得る。第2焼成においては、好ましくは1h〜10hかけて設定温度まで昇温する。昇温レートは常に一定である必要はない。昇温時間は、好ましくは1h〜5h、より好ましくは2h〜4hである。第2焼成は、β−Bi2Mo29を均一に形成し易くすることを目的としている。本発明者らの知見によると、結晶構造は焼成温度と焼成時間の積の影響を受けるため、焼成温度と焼成時間を適切に設定することが好ましい。β−Bi2Mo29の結晶を生成しやくする観点から、第2焼成における温度は、好ましくは420〜450℃、より好ましくは430℃〜450℃である。第2焼成における保持時間は、好ましくは0.5〜6h、より好ましくは0.5〜5h、さらに好ましくは0.5〜3hである。第2焼成の保持時間が長すぎる場合、後述の第3焼成において、β−Bi2Mo29の結晶構造が成長し難くなってしまう。よって、第2焼成の温度及び時間の上限は、α相やγ相の生成が起こらない程度に設定するのが好ましい態様である。
【0039】
[3]第3焼成
第3焼成においては、第2焼成において得られた第2焼成体を、460℃〜700℃の範囲の温度で保持して酸化物触媒を得る。第3焼成における温度は、好ましくは500〜600℃、より好ましくは520〜550℃である。第3焼成は、第2焼成体で得られた結晶を成長させることを目的とする。第3焼成における保持時間は、通常3〜48時間、好ましくは3〜24時間、より好ましくは3〜10時間である。600℃以上の高温の場合、表面積が小さくなりすぎて触媒の活性が下がってしまうのを防ぐ観点から、1時間以下の短時間で保持して焼成を行うことが好ましい。
以上の工程を全て行うことで、β−Bi2Mo29の結晶構造が形成される。
【0040】
第3焼成工程後に、β−Bi2Mo29の結晶構造が生成したことは、焼成の後にX線回折を測定することによって確認することができる。β−Bi2Mo29の結晶構造が充分に成長していれば、Ri=Pi/Phが0.4以上となる。
【0041】
[3]不飽和アルデヒドの製造方法
本実施形態における酸化物触媒を用い、プロピレン、イソブチレン、イソブタノール、及びt−ブチルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を酸化反応に供することにより、不飽和アルデヒドを製造することができる。以下、その具体例について説明するが、本実施形態の製造方法は、以下の具体例に限定されるものではない。
【0042】
(1)メタクロレイン又はアクロレインの製造方法
メタクロレインは、例えば、本実施形態の酸化物触媒を用いて、イソブチレン、t−ブチルアルコールの気相接触酸化反応を行うことにより得ることができる。気相接触酸化反応は、固定床反応器内の触媒層に、1〜10容量%の、イソブチレン、t−ブチルアルコール、プロピレン単独か、若しくはこれらの混合ガスに対して分子状酸素濃度が1〜20容量%になるように、分子状酸素含有ガスと希釈ガスを添加した混合ガスからなる原料ガスを導入する。イソブチレン、t−ブチルアルコール、プロピレン、若しくはこれらの混合ガスの濃度は、通常1〜10容量%、好ましくは6〜10容量%、より好ましくは7〜9容量%である。反応温度は300〜480℃、好ましくは350℃〜450℃、より好ましくは400℃〜450℃である。圧力は、常圧〜5気圧であり、空間速度400〜4000/hr[Normal temperature pressure (NTP)条件下]で原料ガスを導入することで行うことができる。酸素と、イソブチレン、t−ブチルアルコール、プロピレン単独か、若しくはこれらの混合ガスのモル比は、不飽和アルデヒドの収率を向上させるために反応器の出口酸素濃度を制御する観点から、通常1.0〜2.0であり、好ましくは1.1〜1.8、より好ましくは1.2〜1.8である。
【0043】
分子状酸素含有ガスとしては、例えば、純酸素ガス、及びN2O、空気等の酸素を含むガスが挙げられ、工業的観点から空気が好ましい。希釈ガスとしては、例えば、窒素、二酸化炭素、水蒸気及びこれらの混合ガスが挙げられる。混合ガスにおける、分子状酸素含有ガスと希釈ガスの混合比は、体積比で0.01<分子状酸素/(分子状酸素含有ガス+希釈ガス)<0.3の条件を満足することが好ましい。さらに、原料ガスにおける分子状酸素の濃度は1〜20容量%であることが好ましい。
【0044】
原料ガス中の水蒸気は、触媒へのコーキングを防ぐ観点からは必要であるが、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸等のカルボン酸の副生を抑制するために、できるだけ希釈ガス中の水蒸気濃度を下げることが好ましい。原料ガス中の水蒸気は、通常0〜30容量%の範囲で使用される。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を示して、本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。なお、酸化物触媒における酸素原子の原子比は、他の元素の原子価条件により決定されるものであり、実施例及び比較例においては、触媒の組成を表す式中、酸素原子の原子比は省略する。また、酸化物触媒における各元素の組成比は、仕込みの組成比から算出した。
【0046】
<X線回折角度の測定>
XRDの測定は、National Institute of Standards & Technologyが標準参照物質660として定めるところのLaB6化合物の(111)面、(200)面を測定し、それぞれの値を37.441°、43.506°となるように規準化した。
XRDの装置としては、ブルカー社製:D8 ADVANCEを用いた。XRDの測定条件は、X線出力:40kV−40mA、発散スリット(DS):0.3°、Step幅:0.02°/step、計数Time:2.0sec、測定範囲:2θ=5°〜60°とした。
【0047】
実施例及び比較例において、反応成績を示すために用いた転化率、選択率、及び収率はそれぞれ次式で定義される。
転化率=(反応した原料のモル数/供給した原料のモル数)×100
選択率=(生成した化合物のモル数/反応した原料のモル数)×100
収率=(生成した化合物のモル数/供給した原料のモル数)×100
【0048】
[実施例1]
約90℃の温水206.7gにヘプタモリブデン酸アンモニウム68.9gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス37.8g、硝酸セリウム22.4g、硝酸鉄41.9g、硝酸セシウム0.56g、及び硝酸コバルト38.1gを18質量%の硝酸水溶液41.1gに溶解させ、約90℃の温水197.1gを添加した(B液)。
A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを3.6に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体(乾燥体)を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で室温から250℃まで2時間かけて昇温し、3時間保持して第1焼成体を得た。得られた第1焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、430℃まで2hかけて昇温し、2h保持することで第2焼成体を得た。第2焼成体を530℃で6時間焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表2に示し、粉末X線回折の測定結果を表3に示す。
触媒の反応評価として、触媒4.2gを直径14mmのジャケット付SUS製反応管に充填し、反応温度430℃でイソブチレン8容量%、酸素12.8容量%、水蒸気3.0容量%及び窒素容量76.2%からなる混合ガスを120mL/min(NTP)の流量で通気し、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
【0049】
[実施例2]
約90℃の温水207.7gにヘプタモリブデン酸アンモニウム69.3gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス36.4g、硝酸セリウム21.1g、硝酸鉄39.4g、硝酸セシウム0.50g、硝酸カリウム0.33g、及び硝酸コバルト43.0gを18質量%の硝酸水溶液41.2gに溶解させ、約90℃の温水196.2gを添加した(B液)。
A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを4.2に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で室温から260℃まで2時間かけて昇温し、3時間保持して第1焼成体を得た。得られた第1焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、440℃まで3hかけて昇温し、2h保持することで第2焼成体を得た。第2焼成体を530℃で5時間焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表2に示し、粉末X線回折の測定結果を表3に示す。
触媒の反応評価として、触媒4.5gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
【0050】
[実施例3]
約90℃の温水182.1gにヘプタモリブデン酸アンモニウム60.7gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス62.4g、硝酸セリウム18.5g、硝酸鉄43.8g、硝酸セシウム0.44g、及び硝酸コバルト22.6gを18質量%の硝酸水溶液41.3gに溶解させ、約90℃の温水182.1gを添加した(B液)。
A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを6.1に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で室温から250℃まで2時間かけて昇温し、3時間保持して第1焼成体を得た。得られた第1焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、430℃まで2hかけて昇温し、2h保持することで第2焼成体を得た。第2焼成体を510℃で5時間焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表2に示し、粉末X線回折の測定結果を表3に示す。
触媒の反応評価として、触媒5.5gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
【0051】
[実施例4]
約90℃の温水201.9gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.3gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス43.0g、硝酸セリウム24.6g、硝酸鉄47.3g、硝酸セシウム0.49g、及び硝酸コバルト26.0gを18質量%の硝酸水溶液41.1gに溶解させ、約90℃の温水202.8gを添加した(B液)。
A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを2.4に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で室温から250℃まで2時間かけて昇温し、3時間保持して第1焼成体を得た。得られた第1焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、450℃まで2hかけて昇温し、2h保持することで第2焼成体を得た。第2焼成体を530℃で5時間焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表2に示し、粉末X線回折の測定結果を表3に示す。
触媒の反応評価として、触媒4.9gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
【0052】
[実施例5]
約90℃の温水192.0gにヘプタモリブデン酸アンモニウム64.0gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス49.7g、硝酸セリウム28.6g、硝酸鉄36.4g、硝酸セシウム0.47g、及び硝酸コバルト26.5gを18質量%の硝酸水溶液40.9gに溶解させ、約90℃の温水212.3gを添加した(B液)。
A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを1.2に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で室温から250℃まで2時間かけて昇温し、3時間保持して第1焼成体を得た。得られた第1焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、450℃まで1hかけて昇温し、2h保持することで第2焼成体を得た。第2焼成体を530℃で5時間焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表2に示し、粉末X線回折の測定結果を表3に示す。
触媒の反応評価として、触媒5.3gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
【0053】
[実施例6]
約90℃の温水200.5gにヘプタモリブデン酸アンモニウム66.8gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス45.8g、硝酸セリウム13.6g、硝酸ランタン9.5g、硝酸鉄43.1g、硝酸セシウム0.55g、及び硝酸コバルト27.7gを18質量%の硝酸水溶液41.0gに溶解させ、約90℃の温水203.2gを添加した(B液)。
A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを3.5に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で室温から250℃まで2時間かけて昇温し、3時間保持して第1焼成体を得た。得られた第1焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、450℃まで2hかけて昇温し、2h保持することで第2焼成体を得た。第2焼成体を540℃で3時間焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表2に示し、粉末X線回折の測定結果を表3に示す。
触媒の反応評価として、触媒5.0gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
【0054】
[実施例7]
約90℃の温水186.8gにヘプタモリブデン酸アンモニウム62.3gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス48.4g、硝酸セリウム27.8g、硝酸鉄43.7g、硝酸ルビジウム1.28g、硝酸ニッケル8.6g、硝酸マグネシウム3.8g及び硝酸コバルト17.2gを18質量%の硝酸水溶液41.5gに溶解させ、約90℃の温水220.4gを添加した(B液)。
A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを3.4に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で室温から250℃まで2時間かけて昇温し、3時間保持して第1焼成体を得た。得られた第1焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、460℃まで0.5hかけて昇温し、2h保持することで第2焼成体を得た。第2焼成体を530℃で5時間焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表2に示し、粉末X線回折の測定結果を表3に示す。
触媒の反応評価として、触媒5.8gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
【0055】
[実施例8]
約90℃の温水210.0gにヘプタモリブデン酸アンモニウム70.0gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス36.8g、硝酸セリウム21.3g、硝酸鉄41.2g、硝酸セシウム0.89g、及び硝酸コバルト37.6gを18質量%の硝酸水溶液40.9gに溶解させ、約90℃の温水192.1gを添加した(B液)。
A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを3.4に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で室温から250℃まで2時間かけて昇温し、3時間保持して第1焼成体を得た。得られた第1焼成体を空気中で、440℃まで2hかけて昇温し、2h保持することで第2焼成体を得た。第2焼成体を560℃で5時間焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表2に示し、粉末X線回折の測定結果を表3に示す。
触媒の反応評価として、触媒5.6gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
【0056】
[比較例1]
約90℃の温水221.4gにヘプタモリブデン酸アンモニウム73.8gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス27.0g、硝酸セリウム6.0g、硝酸鉄14.0g、硝酸セシウム2.68g、硝酸カリウム0.70g、及び硝酸コバルト81.4gを18質量%の硝酸水溶液40.4gに溶解させ、約90℃の温水175.3gを添加した(B液)。
A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを3.2に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で室温から260℃まで2時間かけて昇温し、3時間保持して第1焼成体を得た。得られた第1焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、440℃まで3hかけて昇温し、2h保持することで第2焼成体を得た。第2焼成体を520℃で5時間焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表2に示し、粉末X線回折の測定結果を表3に示す。
また、図1に実施例1と比較例1のXRDの結果を示し、図2に実施例1と比較例1のXRDの2θ=25〜35°の範囲の拡大図を示す。
CuKα線をX線源として得られるX線回折パターンにおいて、実施例1の触媒では、2θ=26.42°の位置に現れるCoMoO4の回折ピーク(h)の強度Phに対する、2θ=27.75°に現れるβ−Bi2Mo29の回折ピーク(i)の強度Piの比Ri=Pi/Ph=1.1であり、α−Bi2Mo39の回折ピークが観察されなかった。
これに対して、比較例1の触媒では、2θ=26.39°の位置に現れるCoMoO4の回折ピーク(h)の強度Phに対する、2θ=27.81°に現れるβ−Bi2Mo29の回折ピーク(i)の強度Piの比Ri=Pi/Ph=0.1であり、29.14°にはα−Bi2Mo39の回折ピークが観察された。
触媒の反応評価として、触媒4.8gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
【0057】
[比較例2]
約95℃の温水226.3gと、ヘプタモリブデン酸アンモニウム73.8g、酸化アンチモン4.4gの混合液に30%の過酸化水素水17.0gを滴下し、溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス9.5g、硝酸セリウム2.3g、硝酸鉄32.9g、硝酸セシウム2.74g、硝酸カリウム0.36g、及び硝酸コバルト83.2gを18質量%の硝酸水溶液40.6gに溶解させ、約90℃の温水135.4gを添加した(B液)。
A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを3.2に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で室温から260℃まで2時間かけて昇温し、3時間保持して第1焼成体を得た。得られた第1焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、440℃まで3hかけて昇温し、2h保持することで第2焼成体を得た。第2焼成体を520℃で5時間焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表2に示し、粉末X線回折の測定結果を表3に示す。
触媒の反応評価として、触媒5.6gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
【0058】
[比較例3]
約90℃の温水159.1gにヘプタモリブデン酸アンモニウム53.0gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス76.3g、硝酸セリウム32.3g、硝酸鉄30.2g、硝酸セシウム0.39g、及び硝酸コバルト11.0gを18質量%の硝酸水溶液41.0gに溶解させ、約90℃の温水249.5gを添加した(B液)。
A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを6.1に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で室温から250℃まで2時間かけて昇温し、3時間保持して第1焼成体を得た。得られた第1焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、430℃まで2hかけて昇温し、2h保持することで第2焼成体を得た。第2焼成体を510℃で5時間焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表2に示し、粉末X線回折の測定結果を表3に示す。
触媒の反応評価として、触媒6.7gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
【0059】
[比較例4]
実施例1と同じ方法により酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で室温から250℃まで2時間かけて昇温し、3時間保持して第1焼成体を得た。得られた第1焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、530℃で6時間焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表2に示し、粉末X線回折の測定結果を表3に示す。
触媒の反応評価として、触媒4.5gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
【0060】
[実施例9]
約90℃の温水207.3gにヘプタモリブデン酸アンモニウム69.1gを溶解させた(A液)。また、硝酸ビスマス37.9g、硝酸セリウム22.5g、硝酸鉄42.0g、硝酸セシウム0.19g、及び硝酸コバルト38.1gを18質量%の硝酸水溶液41.1gに溶解させ、約90℃の温水196.6gを添加した(B液)。
A液とB液の両液を混合し、アンモニア水を添加し、pHを3.4に調整し、約55℃で約4時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度250℃、出口温度約140℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で室温から250℃まで2時間かけて昇温し、3時間保持して第1焼成体を得た。得られた第1焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、440℃まで2hかけて昇温し、2h保持することで第2焼成体を得た。第2焼成体を530℃で5時間焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表2に示し、粉末X線回折の測定結果を表3に示す。
触媒の反応評価として、触媒4.8gを直径14mmのジャケット付SUS製反応管に充填し、反応温度430℃でプロピレン8容量%、酸素12.8容量%、水蒸気3.0容量%及び窒素容量76.2%からなる混合ガスを120mL/min(NTP)の流量で通気し、アクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表5に示す。
【0061】
[比較例5]
実施例9と同じ方法により酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で室温から250℃まで2時間かけて昇温し、3時間保持して第1焼成体を得た。得られた第1焼成体を直径5mm高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、第1焼成体を530℃で5時間焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表2に示し、粉末X線回折の測定結果を表3に示す。
触媒の反応評価として、触媒5.5gを反応管に充填し、実施例8と同じ条件で、アクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表5に示す。
【0062】
[比較例6]
約90℃の温水218.0gに、ヘプタモリブデン酸アンモニウム72.7g、酸化アンチモン3.9g、パラタングステンアンモニウム3.4g、硝酸セシウム3.30g、酸化ビスマス10.0g、を溶解させた(A液)。また硝酸鉛4.6g、硝酸鉄30.3g、硝酸ニッケル11.0g、リン酸0.67g及び硝酸コバルト66.1gを18質量%の硝酸水溶液38.4gに溶解させ、約90℃の温水126.2gを添加した(B液)。
A液とB液の両液を混合し、95℃にて3時間程度撹拌混合して原料スラリーを得た。この原料スラリーを、噴霧乾燥器に送り、入り口温度220℃、出口温度約170℃で噴霧乾燥し、酸化物触媒前駆体を得た。得られた酸化物触媒前駆体を、空気中で室温から300℃まで1時間かけて昇温し、1時間保持して第1焼成体を得た。得られた第1焼成体を直径5mm、高さ4mm、内径2mmのリング状に打錠成型し、空気中で、500℃で6時間焼成し、触媒を得た。触媒の組成を表2に示し、粉末X線回折の測定結果を表3に示す。
触媒の反応評価として、触媒5.8gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
表4及び5に示された結果から、本実施形態における酸化物触媒は、プロピレン、イソブチレン、イソブタノール及びt−ブチルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種を気相接触酸化反応させる際に用いることにより、不飽和アルデヒドを高選択率及び高収率で得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、オレフィン及び/又はアルコールから不飽和アルデヒドを製造する際に用いられる酸化物触媒としての産業上利用可能性を有する。
図1
図2