特許第6205052号(P6205052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6205052水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセル、その製造方法及びこれを用いた化粧品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205052
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセル、その製造方法及びこれを用いた化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/11 20060101AFI20170914BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 9/52 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20170914BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20170914BHJP
   A61K 8/97 20170101ALI20170914BHJP
【FI】
   A61K8/11
   A61K8/73
   A61K9/48
   A61K9/52
   A61K8/25
   A61K8/42
   A61K8/63
   A61K8/36
   A61K8/37
   A61K8/55
   A61Q19/00
   A61K8/67
   A61K8/97
【請求項の数】20
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-523618(P2016-523618)
(86)(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公表番号】特表2016-523896(P2016-523896A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】KR2014000510
(87)【国際公開番号】WO2015020286
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2015年12月24日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0094275
(32)【優先日】2013年8月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515358458
【氏名又は名称】バイオジェニックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ソン,テ−フン
(72)【発明者】
【氏名】コ,テ−ソン
(72)【発明者】
【氏名】シン,チャン−ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ソン−ユン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ヨン−ヒ
(72)【発明者】
【氏名】メン,ソン−ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドン−ソン
【審査官】 駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−075826(JP,A)
【文献】 特開2011−256131(JP,A)
【文献】 特表2010−509404(JP,A)
【文献】 特開2010−116373(JP,A)
【文献】 特開2010−202596(JP,A)
【文献】 特開平08−217629(JP,A)
【文献】 特開昭63−185914(JP,A)
【文献】 特開2008−100991(JP,A)
【文献】 特開昭63−000285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 9/00− 9/72
A61K47/00−47/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定化剤が含有された水難溶性物質を担持し、且つ、カプセル化させた中空状シリカからなる単一層カプセルと、
前記単一層カプセルの外縁をハイドロゲル高分子ブレンドで取り囲んでいる形状の二重層カプセルと、
前記二重層カプセルの外縁を疎水性が与えられた高分子で取り囲んでいる形状の三重層カプセルであって、前記三重層カプセルの内部には多数の前記二重層カプセルが内蔵されている、三重層カプセルと、
を備えることを特徴とする水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセル。
【請求項2】
前記水難溶性物質は、カロチノイド、セラマイド液晶、油溶性ビタミン、油溶性エキス及び油溶性色素よりなる群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセル。
【請求項3】
前記カロチノイドは、アスタキサンチン、α-カロチン、β-カロチン、ゼアキサンチン、ルテイン、リコピン、カプサンチン、β-クリプトキサンチン及びカンタキサンチンよりなる群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項2に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセル。
【請求項4】
前記セラマイド液晶は、セラマイド、コレステロール、ステアリン酸、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル及びレシチンよりなることを特徴とする請求項2に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセル。
【請求項5】
前記油溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK及びユビキノンよりなる群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項2に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセル。
【請求項6】
前記油溶性エキスは、緑茶、甘草、紫草、ローズマリー、ローズヒップ、マツヨイグサ、チョウマメ、アルガン、アボカド、オリーブ、タマヌ、小麥胚芽、ひまわり、アーモンド、マカダミア、ボリジ、カレンデュラ、ティーツリー、アルニカ、ベニバナ、菜の花、杏仁、ブドウ種子、大豆油及び椿油よりなる群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項2に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセル。
【請求項7】
前記油溶性色素は、天然抽出又は合成により得られるもののうちのいずれか一つ以上であることを特徴とする請求項2に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセル。
【請求項8】
前記安定化剤は、二重結合が単独又はそれ以上からなる化合物から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセル。
【請求項9】
前記中空状シリカは、吸油量が80ml/100g〜300ml/100gの範囲であるものよりなる群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセル。
【請求項10】
前記ハイドロゲル高分子ブレンドは、ヒアルロン酸、ゲランガム、澱粉及び澱粉誘導体、アルギン酸ナトリウム、寒天、ペクチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアーガム及び水溶性セルロース誘導体よりなる群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセル。
【請求項11】
前記疎水性高分子は、ゼイン、水不溶性セルロース誘導体、4級アンモニウム基を有するアクリレート及びメタクリレートのコポリマー、及びシェラックよりなる群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセル。
【請求項12】
前記三重層カプセルは、50μm〜3,000μmの平均粒径を有することを特徴とする請求項1に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセル。
【請求項13】
水難溶性物質、安定化剤及び中空状シリカをメチルアルコール、エチルアルコール及びイソプロピルアルコールよりなる群から選ばれるいずれか一種の第1の溶媒に混合して、前記安定化剤が含有された前記水難溶性物質を前記中空状シリカに均質に担持させた後に乾燥させて単一層カプセルを製造するステップと、
前記単一層カプセルをハイドロゲル高分子ブレンドが溶解された水及び含水エタノールよりなる群から選ばれる第2の溶媒に均質に分散させた後に乾燥させて二重層カプセルを製造するステップと、
前記二重層カプセルを疎水性を有する高分子が溶解されたエチルアルコール及び含水エタノールよりなる群から選ばれる第3の溶媒に均質に分散させた後に乾燥させて三重層カプセルを製造するステップ、又は疎水性を有する高分子が溶解された第3の溶媒に更に隠蔽力を有している機能性顔料を分散させ、前記二重層カプセルを投入して均質に分散させた後に乾燥させて三重層カプセルを製造するステップと、
を含み、
前記三重層カプセルの内部には多数の前記二重層カプセルが内蔵されている、
水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセルの製造方法。
【請求項14】
前記三重層カプセルを製造するステップは、疎水性を有する高分子が溶解された第3の溶媒に隠蔽力を有している機能性顔料を分散させ、前記二重層カプセルを投入して均質に分散させた後に乾燥させるステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセルの製造方法。
【請求項15】
前記機能性顔料は、二酸化チタン、マイカ、合成マイカ、窒化ホウ素、タルク、酸化鉄、タール色素、レーキ顔料及びパールよりなる群から選ばれるいずれか一種以上であることを特徴とする請求項14に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセルの製造方法。
【請求項16】
単一層カプセルの製造に際しての水難溶性物質:安定化剤:中空状シリカの重量比は、それぞれ1〜10:0.1〜1:2〜20であることを特徴とする請求項13に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセルの製造方法。
【請求項17】
二重層カプセルの製造に際して、単一層カプセル及びハイドロゲル高分子ブレンドは、二重層カプセルの合計の固形分に対してそれぞれ10〜80重量%、20〜90重量%用いられることを特徴とする請求項13に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセルの製造方法。
【請求項18】
三重層カプセルの製造に際して、二重層カプセル及び疎水性高分子は、三重層カプセルの合計の固形分に対して二重層カプセルは50〜90重量%、疎水性高分子は10〜50重量%用いられることを特徴とする請求項13に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセルの製造方法。
【請求項19】
三重層カプセルの製造に際して、二重層カプセルと、疎水性高分子及び機能性顔料は、合計の固形分に対して二重層カプセルは10〜60重量%、疎水性高分子は10〜50重量%、機能性顔料は10〜80重量%用いられることを特徴とする請求項14に記載の水難溶性物質を用いた安定化した三重層カプセルの製造方法。
【請求項20】
請求項1に記載の三重層カプセルを備える化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水難溶性物質を外部の有害環境から保護するために、中空状シリカと、ハイドロゲル高分子及び疎水性を有する高分子を用いて製造する安定化した三重層カプセル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品に用いられる水難溶性物質、代表例として、カロチノイド、セラマイド液晶、油溶性ビタミン、油溶性エキス及び色素などの物質は、様々な環境が求められる化粧品に適用するときにこれらが有する不安定な性質、色相又は油分感により低下された効能、色相の混濁化、又は使用感の低下などの欠点を有する。これらの欠点は、化粧品剤形内に含まれている原料、特に、酸素、水、油、界面活性剤類又は剤形の製造に際して生じる熱により更に激しくなるという不都合があり、これは、使い勝手の悪さにつながる。これらの問題を解消すべく、リポソーム化、エマルジョン化、カプセル化など種々の方法が講じられてきたが、実質的な解決方法は提示されていないのが現状である。
【0003】
これらの問題を克服するために、例えば、大韓民国特許公開第10−2009−0070161号においては、カロチノイドを安定化させるためにコアセルベーション法を用いて、カチオン性及びアニオン性の高分子を用いた二重層構造の高分子カプセルを製造する。また、大韓民国特許公開第10−2009−0122666号においては、油溶性物質としてのレシチンを含有するカプセルを低温冷却工法を用いて製造する。
【0004】
これらに加えて、様々な方法を適用したカプセルが提案されているが、これらの従来の方法は、実際に化粧品剤形に適用するときに消費者が希望する素材の安定性、色相、使用感に大きく寄与しておらず、化粧品の適用に限界があった。この理由から、これらの問題が改善された製品及び技術を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、疎水性−親水性−疎水性の三重層構造を有するユニークな性質が与えられた形態を示し、このような構造により様々な環境に完璧に適用される水難溶性物質を含有する三重層カプセル及びその製造方法を提供することである。
【0006】
本発明の他の課題は、前記カプセルを含有する様々な化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水難溶性物質を含有する安定化した三重層カプセルは、水難溶性物質と、安定化剤及び中空状シリカからなる単一層カプセルと、前記単一層カプセルの外縁をハイドロゲル高分子ブレンドで取り囲んでいる形状の二重層カプセルと、前記二重層カプセルの外縁を適切な疎水性が与えられた高分子で取り囲んでいる形状の三重層カプセルと、を備えることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、三重層カプセルは、50μm〜3,000μmの平均粒径を有する。
【0009】
また、本発明の水難溶性物質を含有する安定化した三重層カプセルの製造方法は、
水難溶性物質と、安定化剤及び中空状シリカをメチルアルコール、エチルアルコール及びイソプロピルアルコールよりなる群から選ばれるいずれか一種の第1の溶媒に混合して均質に担持した後に乾燥させて単一層カプセルを製造するステップと、前記単一層カプセルをハイドロゲル高分子ブレンドが溶解された水及び含水エタノールよりなる群から選ばれる第2の溶媒に均質に分散させた後に乾燥させて二重層カプセルを製造するステップと、前記二重層カプセルを疎水性を有する高分子が溶解されたエチルアルコール及び含水エタノールよりなる群から選ばれる第3の溶媒に均質に分散させた後に乾燥させて三重層カプセルを製造するステップ、又は疎水性を有する高分子が溶解された第3の溶媒に更に隠蔽力を有している機能性顔料を分散させ、前記二重層カプセルを投入して均質に分散させた後に乾燥させて三重層カプセルを製造するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水難溶性物質を含有する安定化した三重層カプセルは、不安定な構造により物理化学的な変化が生じる素材を様々な環境において安定化した形態として用いることができ、特に、酸敗による含量の低下、変色、変臭などの物性的な悪影響と、原料固有の色相による化粧料組成物の外観の変質などの欠点を解消することができる。
【0011】
特に、単一層においては、熱安定性及び油溶性物質に対する担持能に優れた中空状シリカに安定化剤が含有された水難溶性物質を担持し且つカプセル化させて熱的特性及び耐化学的な安定性を図り、二重層においては、ハイドロゲル高分子ブレンドが、水溶性物質のカプセル内に対する流出・流入を浸透圧原理を用いて最大限に防ぐとともに、水溶性物質に担持されたゲル相を用いて油溶性物質を遮断し、最終的な三重層においては、疎水性を有する高分子が支持層を形成してカプセルの内部に流入する水溶性物質が急激に流入しないように調節する機能をする。
【0012】
この理由から、上述した水難溶性物質が有する本然の機能成分が三重層カプセル内において安定化した状態に保たれて肌への供給時に抗酸化効果によるしわ改善、紫外線遮断などの効能が発現される。
【0013】
これらに加えて、水難溶性物質が有する強い油分感をカプセル壁材として用いられたハイドロゲル高分子ブレンドを用いて改質することにより、否定的な使用感が制御される。
【0014】
これらのメリットを有する水難溶性物質を含有する安定化した三重層カプセルを用いて様々な形態の化粧料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例1により製造された三重層カプセル(アスタキサンチンカプセル)を走査電子顕微鏡を用いて観察した写真である。
図2図2は、比較例2により製造された二重層カプセル(アスタキサンチンカプセル)を走査電子顕微鏡を用いて観察した写真である。
図3図3は、比較例1により製造された単一層カプセル(アスタキサンチンカプセル)を走査電子顕微鏡を用いて観察した写真である。
図4図4は、図1の三重層カプセルの外壁を破損して封入した二重層カプセルを走査電子顕微鏡を用いて観察した写真である。
図5図5は、左側から実施例1〜5により製造された最終的なカプセルを観察した写真である。
図6図6は、アスタキサンチンを用いたステップ別のカプセルの製造に際しての温度安定性(4℃)の経時的な変化を示すグラフである。
図7図7は、アスタキサンチンを用いたステップ別のカプセルの製造に際しての温度安定性(25℃)の経時的な変化を示すグラフである。
図8図8は、アスタキサンチンを用いたステップ別のカプセルの製造に際しての温度安定性(50℃)の経時的な変化を示すグラフである。
図9図9は、アスタキサンチンを用いたステップ別のカプセルの製造に際しての日光安定性の経時的な変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明を実施するための最良の態様
以下、本発明を下記の実施例に基づいて詳細に説明するが、下記の実施例は単に本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらにより限定されない。
【0017】
本発明の水難溶性物質を含有する安定化した三重層構造のカプセルは、水難溶性物質と、安定化剤及び中空状シリカからなる単一層カプセルと、その上にハイドロゲル高分子ブレンドがコーティングされた二重層カプセルと、疎水性高分子単独からなるか、又は機能性顔料が追加された三重層カプセルと、を備える。
【0018】
このようにユニークな三重層構造を有するように設計された本発明のカプセル構造は、ハイドロゲル高分子ブレンド組み合わせを有する二重層と、疎水性特性を有する三重層構造の組み合わせである。一次的に、化粧品剤形の環境に直接的に接するカプセルの最外縁の疎水性高分子層が水に対する防御機序を有し、疎水性高分子層を通過した一部の水及び油がネットワーク構造を有するハイドロゲル高分子ブレンド層に最終的に閉じ込まれたり反発されたりしてそれ以上浸透し難い。次いで、カプセル内の浸透圧現象によりハイドロゲル高分子層に閉じ込まれている水は平衡を維持する。
【0019】
熱に対する防御は、前記三重層構造において次第に打ち消され、熱に対して安定的な中空状シリカの外壁において最終的に遮断される。特に、最外縁のカプセル層が疎水性高分子及び機能性顔料からなるため、熱に対する防御効果は更に増大される。
【0020】
上述した水難溶性物質の安定化を図るために三重層カプセル構造を形成し、これを行うためには、各製造ステップにおいて発生する物理化学的な環境において水難溶性物質に対する損失が極力抑えられなければならない。このために、単一層カプセルの製造に際して安定化剤を投入して最終的な三重層カプセルの製造前ステップまでの安定性を図り、結果的に、水難溶性物質の安定化に寄与した。
【0021】
以下、各ステップ別の製造方法の詳細について説明する。
【0022】
(1)単一層カプセルの製造
本発明の単一層カプセルは、水難溶性物質と、安定化剤及び中空状シリカを第1の溶媒に混合して均質に担持した後に乾燥させて製造する。このようにして製造された単一層は、熱安定性及び油溶性物質に対する担持能に優れた中空状シリカに安定化剤入り水難溶性物質を担持し且つカプセル化させるため、熱的特性及び耐化学的な安定性が図られる。
【0023】
水難溶性物質としては、カロチノイド、セラマイド液晶、油溶性ビタミン、油溶性エキス、油溶性色素などのように水に溶解されず、油に溶解される特性を有する物質を用いる。このとき、カロチノイドとしては、アスタキサンチン、α-カロチン、β-カロチン、ゼアキサンチン、ルテイン、リコピン、カプサンチン、β-クリプトキサンチン及びカンタキサンチンよりなる群から選ばれるいずれか一種以上を用い、セラマイド液晶は、セラマイド、コレステロール、ステアリン酸、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル及びレシチンよりなり、前記油溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK及びユビキノンよりなる群から選ばれるいずれか一種以上であり、油溶性エキスは、緑茶、甘草、紫草、ローズマリー、ローズヒップ、マツヨイグサ、チョウマメ、アルガン、アボカド、オリーブ、タマヌ、小麥胚芽、ひまわり、アーモンド、マカダミア、ボリジ、カレンデュラ、ティーツリー、アルニカ、ベニバナ、菜の花、杏仁、ブドウ種子、大豆油及び椿油よりなる群から選ばれるいずれか一種以上であり、油溶性色素としては、天然抽出又は合成により得られるもののうちのいずれか一種以上を用いることが好ましい。
【0024】
これらの水難溶性物質を最終的に安定化した形態にする前に製造工程中に発生し得る損失を最大限に低減させるために、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールのように沸騰点が水に比べて相対的に低い第1の溶媒に溶解した後にさらに安定化剤を投入することが好ましい。低い沸騰点を有する第1の溶媒を用いると、溶媒下に水難溶性物質及び安定化剤を中空状シリカに担持した後に最終的に溶媒を蒸発させるが、このとき、溶媒の沸騰点が低ければ低いほど、熱に対する水難溶性物質の被害が極力抑えられる。
【0025】
安定化剤は油溶性を有し、二重結合や二重結合が共鳴構造になっている一つ以上の分子構造を有する化合物からなる。特に、安定化剤としては、トコフェロール、又はその誘導体、又はこれらの塩、没食子酸プロピル、ルチン、ビタミンC誘導体、γ-オリザノール、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒロドキシアニソール、セサモール又はその誘導体、コレステロール又はその誘導体、レシチン又はその誘導体、マグノリアエキス、緑茶エキスなどが用いられる。
【0026】
水難溶性物質及び安定化剤が担持された中空状シリカは、吸油量及び熱安定性に優れた物質であり、本発明において用いられた中空状シリカの吸油量は、80ml/100g〜300ml/100gの範囲を有する。さらに好ましくは、吸油量が300ml/100gの特性を有する中空状シリカを用いる。これは、相対的に最終的なカプセルに含まれている水難溶性物質に対する担持量を高め、逆に、中空状シリカの使用量を最小化させてカプセルの外壁の含量を決定する上で選択の幅を広げる効果を与える。
【0027】
本発明において用いられる好適な担持方法は、下記のステップを含む。
【0028】
単一層カプセルの製造に際して、水難溶性物質:安定化剤:中空状シリカはそれぞれ1〜10:0.1〜1:2〜20の重量比で用いられる。
【0029】
まず、水難溶性物質及び安定化剤を第1の溶媒に攪拌して完全に溶解させた後に中空状シリカを投入して均一に分散する。また、均一に分散された第1の溶液から回転式蒸発濃縮器を用いて適当な温度と圧力及び回転速度で溶媒を除去する。溶媒を除去した後に残留した水難溶性物質が担持された粉末を高性能液体クロマトグラフィ分析器を用いて残留溶媒量を測定する。残留溶媒の検出に当たって、前記同じ製造工程を行い続けて残留溶媒を除去し、残留溶媒が検出されないときに粉末を回収する。
【0030】
(2)二重層カプセルの製造
二重層カプセルの製造に際して、単一層カプセル及びハイドロゲル高分子ブレンドは、二重層カプセルの合計の固形分に対してそれぞれ10〜80重量%、20〜90重量%で用いられる。
【0031】
このような二重層カプセルは、単一層カプセルをコアとして用い、ハイドロゲル高分子ブレンドがシェル状を呈する。すなわち、ハイドロゲル高分子ブレンドが溶解された第2の溶媒に単一層カプセルを均質に分散させた後に乾燥させて二重層カプセルを製造する。好適な方法としては、噴霧乾燥工程が挙げられる。このとき、二重層カプセルの物性及び形状は、ハイドロゲル高分子ブレンドの種類及び割合、コア及びシェルの割合、固形分の含量、噴霧乾燥温度条件により異なるため、求められるカプセルの物性を確保するためには、上述した影響因子を十分に考慮して製造せねばならない。このようにして形成された二重層カプセルは、ハイドロゲル高分子ブレンドが水溶性物質のカプセルに対する流出入を浸透圧原理を用いて最大限に防ぎ、且つ、水溶性物質により担持されたゲル相を用いて油溶性物質を遮断する。
【0032】
ハイドロゲル高分子ブレンドは、ヒアルロン酸、ゲランガム、澱粉及び澱粉誘導体、アルギン酸ナトリウム、寒天、ペクチン、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアーガム及び水溶性セルロース誘導体よりなる群から選ばれる2種類以上を適切な割合で混合して用いる。このとき、考慮すべき事項としては、生成される粘度、膨潤性、水に対する抵抗性、使用感が挙げられ、さらに詳しくは、生成される粘度は低ければ低いほど良好であり、膨潤性は、水にハイドロゲル高分子ブレンドを1%投入したとき、水に対して1.2倍〜1.5倍の膨潤性を示すことが好ましい。膨潤性が1.2倍未満である場合、吸水力が相対的に弱いため浸透圧に対する効率が顕著に低下し、その結果、本発明において求められる外部環境に対する防御機序を形成し難い。逆に、膨潤性が1.5倍を超える場合、三重層カプセルを製造した後にハイドロゲル高分子ブレンド層が膨潤してカプセルの損傷が生じるため好ましくない。
【0033】
水に対する抵抗性は、本発明においてデザインされた抵抗性テストに適した規格を有するものを基準とする。さらに詳しくは、100mlのビーカーに水50g及びカプセル5gを投入し、インペラ攪拌器を用いて定速度を維持しながら24時間攪拌する。このとき、4時間を基準としてそれぞれ6つの資料を得てマイクロ粒度分析器を用いて粒度分布を比較する。水に対する抵抗性が弱い場合、粒度分布度において微粉が持続的に増加し続ける傾向を示し、平均粒径度が急激に減少する。このため、テスト前のカプセルの平均粒径及びテスト後の平均粒径が略同じである場合、水に対する抵抗性に優れていると認められる。これに対する好適な基準は、ハイドロゲル高分子の組み合わせ及び含量により調節して平均粒径±5μmの範囲内に限定する。
【0034】
使用感は官能評価により判断し、普通、ハイドロゲル高分子ブレンドカプセルを水に熟成した後に肌に塗布してこすった場合に異物感が存在しなければ、好適な状態であると判断する。
【0035】
コア及びシェルの割合は、コアが50〜80重量%であるときにシェルが20〜50重量%の割合の範囲を示すことが好ましい。好ましくは、コアが70〜80重量%であるときにシェルが20〜30重量%の割合の範囲を示すことが最も好ましい。相対的にコアの割合が10重量%未満である場合には、水難溶性物質の含量が最終的に低過ぎるためその効用が低下し、80重量%超える場合にはカプセル壁材の含量が低いため二重層カプセルを構成する上で不足した物性を示す。
【0036】
一方、コア及びシェルの固形分の含量は、第2の溶媒として用いられる水又は含水エタノールの含量が低ければ低いほど高くなるが、固形分は、10〜50重量比であることが好ましく、15〜35重量比であることが最も好ましい。固形分の含量が10重量比未満であるか、又は50重量比を超える場合には、粘度の不足又は濃度の過剰によりカプセルの大きさが制御し難い。このような制御し難さにより微粒子状や巨大顆粒状がさらに発生して不所望のカプセルが形成され、これは、歩留まり率の低下につながる。
【0037】
噴霧乾燥温度条件は、カプセル内の含水量及びカプセルの形状に膨大な影響を及ぼすが、特に、ハイドロゲル高分子ブレンドを壁材として用いる場合、汎用高分子物質を適用するときよりもさらに特定の温度区間が存在する。噴霧乾燥器の内部温度条件を基準として85〜115℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは、95〜105℃の範囲である。乾燥温度条件が85℃未満である場合、カプセルの乾燥が十分に行われないため噴霧乾燥器の内壁に付着して損失分として働いて歩留まり率が低下し、生成されたカプセルもまた含水率が高いため好適な物性を示すのに不足感がある。これに対し、乾燥温度条件が115℃を超える場合、熱安定性に乏しい水溶性物質の安定性を阻害するという問題があり、カプセルの形状もまた急激な水分の蒸発によりカプセルの外壁が破損されたままで形成される。
【0038】
(3)三重層カプセルの製造
三重層カプセルの製造に際して、二重層カプセル及び疎水性高分子は、三重層カプセルの合計の固形分に対して二重層カプセルは50〜90重量%、疎水性高分子は10〜50重量%で用いられる。
【0039】
三重層カプセルは、前記二重層カプセルの製造ステップにおいて生成されたカプセルを疎水性高分子が溶解された第3の溶媒に均質に分散させた後に乾燥させて製造するか、又は疎水性高分子が溶解された第3の溶媒に機能性顔料を分散させ、二重層カプセルを投入して均質に分散させた後に乾燥させて製造する。このような三重層カプセルは、噴霧乾燥工程又は流動層コーティング工程により製造されることが好ましく、特に、均一なカプセル層を形成する流動層コーティング工程により製造されることが最も好ましい。このようにして形成された三重層カプセルは、支持層に形成された疎水性を有する高分子によりカプセルの内部に水溶性物質が急激に流入しないように調節し、機能性顔料を添加して煉瓦構造などの硬い構造及び隠蔽力を有するカプセルを完成する。
【0040】
三重層カプセルの場合、最外縁層に二重層カプセルが露出されないように安定的に設計しなけばならない。このようなカプセルに安定性を与える役割は、基本的に適切な疎水性高分子物質が果たし、機能性顔料をさらに含むことが好ましい。適切な疎水性高分子物質としては、ゼイン、水不溶性セルロース誘導体、4級アンモニウム基を有するアクリレート及びメタクリレートのコポリマー、シェラックのうちのいずれか一種以上が用いられ、機能性顔料としては、二酸化チタン、マイカ、合成マイカ、窒化ホウ素、タルク、酸化鉄、タール色素、レーキ顔料、パールのうちのいずれか一種以上が用いられる。第3の溶媒としてエチルアルコール又は含水エタノールが用いられ、機能性顔料としては二酸化チタン、マイカ、合成マイカ、窒化ホウ素、タルク、酸化鉄、タール色素、レーキ顔料、パールなどが用いられる。
このとき、機能性顔料を用いる場合に、三重層カプセルの合計の固形分に対して二重層カプセル10〜60重量%、疎水性高分子10〜50重量%、機能性顔料10〜80重量%で混合される。
【0041】
このようにして製造された溶液を流動層コーティング器の内部に入れられている二重層カプセルに噴霧して三重層カプセルを製造する。
【0042】
このとき、カプセルのコーティングが均一に行われるためには、溶液の粘度及び粘着性、溶液の供給速度及び乾燥温度が非常に重要である。溶液の粘度は疎水性高分子と第3の溶媒との割合により決定され、このとき、生成される適切な粘度範囲は10cP〜300cPであり、さらに好ましくは、50cP〜180cPの範囲である。溶液の粘着性は、疎水性高分子物質の性質及び濃度、機能性顔料の投入含量により決定され、粘着能は官能評価により好適な条件が確保される。溶液の供給速度及び乾燥温度は、供給ポンプの速度と、流動層コーティング器の投入温度及び内部圧力条件により決定されるが、溶液の種類及び状態に応じて工程条件が種々に変更される。
【0043】
前記製造工程により得られる三重層カプセルは様々な粒径を有するように製造され、具体的に、平均粒径50μm〜3,000μmの範囲を示す。それぞれのカプセルの粒径に応じて上述した条件が種々に変更される。
【0044】
以下、本発明について実施例及び試験例を挙げて詳細に説明するが、本発明がこれらの例に限定されることはない。
【実施例】
【0045】
<比較例1〜2及び実施例1〜5>
表1の各成分を用いて比較例1の単一層カプセルと、比較例2の二重層カプセル及び実施例1〜5の三重層カプセルを下記の製造方法を用いて製造した。このとき、各成分の含量は、重量で表示される。
【0046】
【表1】
【0047】
<製造方法>
(1)前記表1における1ステップ製造工程を用いて水難溶性物質及び安定化剤を20℃で第1の溶媒に溶解した。このとき、実施例2の場合にのみ50〜60℃で第1の溶媒上で加温して溶解する。ここに中空状シリカを投入して機械式攪拌器を用いて攪拌速度500〜1,000rpmにて30分間均一に分散する。
【0048】
(2)前記(1)において生成された分散液の第1の溶媒を回転式蒸発濃縮器を用いて蒸発させて単一層のカプセル粉末を回収した。このとき、工程条件は、温度が20〜30℃であり、圧力は5〜6barであり、回転速度は50〜100rpmである。
【0049】
(3)2ステップ製造工程を用いてハイドロゲル高分子を第2の溶媒に溶解した。このとき、製造順序は、一次的に澱粉を溶解するために糊化温度である90〜100℃で第2の溶媒を加温して溶解した後に20〜30℃に冷却させてゲランガムを溶解する。
【0050】
(4)前記(3)において生成された溶液に前記(2)において製造された粉末を投入して機械式攪拌器を用いて攪拌速度1,000〜1,500rpmで30分間均一に分散した。
【0051】
(5)前記(4)において生成された分散液の第2の溶媒を噴霧乾燥器を用いて蒸発させて二重層のカプセル粉末を回収した。このとき、工程条件は、噴霧乾燥器の排出温度は80〜100℃であり、分散液の投入量は30ml/min〜150ml/minであり、アトマイザー回転数は6,500〜10,000rpmである。
【0052】
(6)3ステップ製造工程を用いて疎水性高分子を第3の溶媒に溶解した後に機能性顔料を投入して分散した。疎水性高分子として用いられたゼインを混合溶媒である含水エタノールに溶解温度20〜30℃で完全に溶解した後に二酸化チタンを投入して機械式攪拌器を用いて攪拌速度1,000〜1,500rpmで30分間均一に分散する。
【0053】
(7)前記(6)において生成された分散液に前記(5)において製造された粉末を投入して機械式攪拌器を用いて攪拌速度500〜1,000rpmで30分間均一に分散した。
【0054】
(8)前記(7)において生成された分散液の第3の溶媒を流動層コーティング器を用いて蒸発させて三重層のカプセル粉末を回収した。
【0055】
このとき、工程条件は、流動層コーティング器の排出温度を50〜70℃に保ちながら製造するものとする。
【0056】
図1図3は、1ステップ製造過程、2ステップ製造過程及び3ステップ製造過程により製作された単一層カプセル、二重層カプセル及び三重層カプセルを走査電子顕微鏡を用いて観察した写真であり、図4は、三重層カプセルの外壁を人為的に破損して二重層カプセルを確認した写真である。また、図5は、実施例1〜5において製造された三重層カプセルの外観写真である。
【0057】
図1図3の写真に示すように、本発明の製造ステップにより製作される単一層カプセル、二重層カプセル及び三重層カプセルは、互いに分離された球状に内部のカプセルを完全に取り囲んでいることが分かり、図4の三重層カプセルの内部には多数の二重層カプセルが内蔵されていることが確認される。
【0058】
<比較剤形例1〜3及び剤形例1〜5>
前記表2に記載の成分を用いて比較例及び実施例において生成されたカプセルを水難溶性物質を基準として同じ含量で投入して剤形を製造し、それぞれの剤形において、温度条件及び日光条件における含量の経時的な変化を点検して表3に示す。前記各成分の含量は、重量%で表示される。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
<試験例1>アスタキサンチン含量分析実験
1.分析条件及び方法
前記表1の比較例1〜2のカプセル及び実施例1のカプセルに対する活性を測定するために対照群として5%含量のアスタキサンチンを用いて下記のようにHPLC分析条件を設定して実験を行い、4℃、25℃、50℃における温度安定性の変化及び日光安定性の変化を図6〜9のグラフで示す。
【0062】
HPLCカラム:Zorbax
Eclipse XDB−C18(2.1×150mm,5μm)
温度:30℃
移動相:メチルt−ブチルエーテル:メタノール=15:85〜80:20
注入体積:1μl
流量:0.12ml/分
検出波長:UV 474nm
【0063】
(1)対照群又は提示されたカプセルサンプル0.1gを10mlのメスフラスコに移した後にクロロホルムを10mlまで満たす。
【0064】
(2)超音波粉砕器において30分間超音波処理を施す。
【0065】
(3)振とう器を用いて振とうさせ、4.5μmのフィルターでろ過した後に分析する。
【0066】
2.分析結果
図6図9に示すように、比較剤形例1〜3は、時間が経過するにつれて安定性が低下するのに対し、本発明により製造された剤形例1は安定性が保たれることが確認される。
【0067】
また、温度区間のうち相対的に低い温度では非カプセル化した原料であっても安定性が比較的に良好であるが、高温における安定性が急激に低下することが確認される。このような現象は、カプセル化が進むにつれて改善され、三重層カプセルになる場合に極大化されるという現象を示す。
【0068】
このため、このような実験結果から、アスタキサンチンを三重層構造にカプセル化させて剤形に適用する場合に高い安定度が保たれることが確認される。
【0069】
<試験例2> セラマイドの含量分析の実験
1.分析条件及び方法
前記表1の実施例2のカプセルに対して様々な環境下で時間が経過するにつれて含量の変化が生じるか否かを測定するために、剤形例2のサンプルに対して下記のようにHPLC分析条件を設定して実験を行った。
【0070】
HPLCカラム:ACE5−C18(4.6×150μm,5μm)
ガードカラム:ACE5−C18(4.6×12.5μm,5μm)
移動相:メタノール100%
注入体積:10μl
流量:1.0ml/分
検出波長:UV 203nm
【0071】
(1)カプセルサンプル0.1gを10mlのフラスコに移した後にメタノール10mlを添加する。
【0072】
(2)30分間振とう器を用いて振とうして分析する。
【0073】
2.分析結果
剤形例2のサンプルを分析したところ、表3によれば、時間による含量の変化がほとんどないことが確認される。
【0074】
さらに、剤形安定性(相分離又は沈殿)もまた安定化したことが観察されて、セラマイド液晶カプセルを剤形に適用する場合に剤形化に役立つことが期待される。
【0075】
<試験例3> ユビキノンの含量分析の実験
1.分析条件及び方法
前記表1の実施例3のカプセルに対して様々な環境下で時間が経過するにつれて含量の変化が生じるか否かを測定するために、剤形例3のサンプルに対して下記のようにHPLC分析条件を設定して実験を行った。
【0076】
HPLCカラム:ACE5−C18(4.6×150μm,5μm)
ガードカラム:ACE5−C18(4.6×12.5μm,5μm)
移動相:メタノール:エタノール=13:7
温度:35℃
注入体積:50μl
流量:1.5ml/分
検出波長:UV 275nm
【0077】
(1)カプセルサンプル0.1gを10mlのメスフラスコに移した後にエタノール10mlを添加する。
【0078】
(2)振とう器を用いて振とうした後に超音波粉砕器を用いて30分間超音波処理して分析を行う。
【0079】
2.分析結果
剤形例3のサンプルを分析したところ、表3によれば、時間による含量の変化がほとんどないことが確認される。
【0080】
このような実験結果から、ユビキノンを三重層カプセルに製造して剤形に適用する場合に高い安定度が保たれることが確認される。
【0081】
<試験例4> 緑茶エキスの含量分析実験
1.分析条件及び方法
前記表1の実施例4のカプセルに対して様々な環境下で時間が経過するにつれて含量の変化が生じるか否かを測定するために、緑茶エキスに含まれている没食子酸エピガロカテキンを指標として剤形例4のサンプルに対して下記のようにHPLC分析条件を設定して実験を行った。
【0082】
HPLCカラム:ACE5−C18(2.1×150μm,5μm)
ガードカラム:ACE5−C8(2.1×12.5μm,5μm)
移動相:アセトニトリル:酢酸:メタノール:精製水=
150:5:20:862
注入体積:1μl
流量:0.2ml/分
検出波長:UV280nm
【0083】
(1)カプセルサンプル0.1gを10mlのメスフラスコに移した後にエタノール10mlを添加する。
【0084】
(2)30秒間振とう器を用いて振とうする。
【0085】
(3)超音波粉砕器を用いて30分間超音波処理した後にサンプル1mlを1.5mlチューブに入れる。
【0086】
(4)遠心分離器を用いて5,000rpmで20分間遠心分離して分析を行う。
【0087】
2.分析結果
剤形例4のサンプルを分析したところ、表3によれば、時間による含量の変化がほとんどないことが確認される。
【0088】
このような実験結果から、緑茶エキスを三重層カプセルに製造して剤形に適用する場合、高い安定度が保たれることが確認される。
【0089】
<試験例5> 赤色223号色差計の分析実験
1.分析条件及び方法
前記表1の実施例5のカプセルに対する時間による日光安定性の変化を測定するために、下記のように色差計を用いて実験を行い、その結果を表4に示す。
【0090】
分析機器名:Spectrophotometer ColorQuest XE
モードの種類:RSIN
Area View:0.780in
UVフィルター:Nominal
【0091】
(1)カプセルサンプル1gを5mlの石英セルに投入してセル固定台に位置させて分析を行う。
【0092】
分析結果値に対するサンプルの固有色相はL、a、b値で表示され、サンプル間の色相差に対する比較は、△Eにより表現される。
【0093】
△Eは、
【0094】
【数1】
により計算される。
【0095】
通常、前記計算された値が1以下である場合、色相の変化がないことを意味する。
【0096】
2.分析結果
剤形例5のサンプルを分析したところ、表4によれば、日光露出条件下で時間による色差の変化量の値が1以下であるため、色差の変化がほとんどないことが確認される。
【0097】
このような実験結果から、赤色223号を三重層カプセルに製造して剤形に適用する場合、高い安定度が保たれることが確認される。
【0098】
【表4】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9