(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の行列が、取得の前のアクティブな通信経路のサブセットに関連する行および列を有する補償部分行列、および取得の前の非アクティブな通信経路のサブセットに関連する行および列のうちの少なくとも1つを有するチャネル部分行列のみを含む、請求項3に記載の方法。
アクティブな通信経路の数が変化する場合に、決定の前に第2の行列を取得することであって、第2の行列が補償部分行列を含み、補償部分行列がアクティブな補償係数を含む、取得すること
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
例示的実施形態は、通信経路をアクティブ化および非アクティブ化するための方法およびシステムを対象とする。たとえば、例示的実施形態は、DSL回線をアクティブ化および非アクティブ化するための方法およびシステムを開示する。
【0013】
少なくとも1つの例示的実施形態では、過去のプリコーダではなく過去のチャネル行列が記憶され、その理由は、チャネル行列がアクティブ回線のセットに依存しないためである。過去のチャネル行列が記憶されるので、アクティブ回線の数が変化する場合のプリコーダ係数を決定するための計算回数が減少する。
【0014】
過去のチャネル行列からの情報をアクティブなプリコーダ内の情報と組み合わせることで、推定なしで、かつ明示的な行列反転なしで、新たなプリコーダ係数を得ることができる。過去のチャネル行列は、アクティブなプリコーダに含まれる情報に基づいて更新することができる。
【0015】
非アクティブ回線に対応するチャネル係数と、アクティブ回線に対応するプリコーダ係数とを保持することができる。全回線がアクティブな場合のプリコーダ行列と同じ大きさの1つの配列に、全ての係数を記憶することができる。
【0016】
少なくとも1つの例示的実施形態は、システム内の複数の通信経路を初期化する方法を開示する。方法は、記憶媒体から第1の行列を取得することであって、第1の行列が、複数の通信経路のサブセットに関連するシステムの少なくとも1つのチャネル部分行列を含む、取得することと、どの通信経路がアクティブになるかについての指示(indication)を取得することと、指示の取得の後に、少なくとも1つのチャネル部分行列およびアクティブな補償係数に基づいて新たな補償係数を決定することであって、アクティブな補償係数が、アクティブな通信経路の数が変化する前の、アクティブな通信経路の間のクロストークを補償するためのものである、決定することとを含む。
【0017】
一例示的実施形態では、少なくとも1つのチャネル部分行列が、取得の前の非アクティブな通信経路に対応するチャネル係数を含む。
【0018】
一例示的実施形態では、第1の行列が、アクティブな補償係数を含む補償部分行列をさらに含む。
【0019】
一例示的実施形態では、第1の行列が、取得の前のアクティブな通信経路のサブセットに関連する行および列を有する補償部分行列、および取得の前の非アクティブな通信経路のサブセットに関連する行および/または列を有するチャネル部分行列のみを含む。
【0020】
一例示的実施形態では、アクティブな補償係数は、アクティブな通信経路に対応する。
【0021】
一例示的実施形態では、方法は、少なくとも1つのチャネル部分行列を更新することをさらに含む。
【0022】
一例示的実施形態では、方法は、アクティブな通信経路の数が変化する場合に、決定の前に第2の行列を取得することであって、第2の行列が補償部分行列を含み、補償部分行列がアクティブな補償係数を含む、取得することをさらに含む。
【0023】
一例示的実施形態では、第1の行列が、複数の通信経路のサブセットに関連する複数のチャネル部分行列を含む。
【0024】
一例示的実施形態では、方法は、システム内のアクティブな通信経路の数が変化する場合に第1の行列を保持することをさらに含む。
【0025】
一例示的実施形態では、方法は、新たな補償係数を用いてデータを送信することをさらに含む。
【0026】
少なくとも1つの例示的実施形態は、システム内の複数の通信経路を非アクティブ化する方法を開示する。方法は、記憶媒体から第1の行列を取得することであって、第1の行列が、システム内のアクティブな通信経路の少なくとも第1および第2のサブセットに関連するアクティブな補償部分行列を含み、アクティブな補償部分行列が、システム内のクロストークを補償するための補償係数を表す、取得することと、どの通信経路が非アクティブになるかについての指示を取得することと、指示の取得の後に、新たな補償係数とシステムの複数のチャネル部分行列とをアクティブな補償部分行列に基づいて決定することとを含む。
【0027】
一例示的実施形態では、方法は、通信経路の第2のサブセットを非アクティブ化することをさらに含む。
【0028】
一例示的実施形態では、決定することが:
【数1】
G
DD,stor=(I+Ω
DD−Ω
DR(I+Ω
RR)
−1Ω
RD)
−1−I
G
DR,stor=−(I+Ω
DD)
−1Ω
DR(I+Ω
RR−Ω
RD(I+Ω
DD)
−1Ω
DR)
−1
G
RD,stor=−(I+Ω
RR)
−1Ω
RD(I+Ω
DD−Ω
DR(I+Ω
RR)
−1Ω
RD)
−1
として、新たな補償係数と複数のチャネル部分行列とを決定することを含み、ここでRは第1のサブセットであり、Dは第2のサブセットであり、G
DD,stor、G
DR,storおよびG
RD,storは記憶されたチャネル部分行列の推定値であり、Ω
RR、Ω
RD、Ω
DR、Ω
DDはアクティブな補償部分行列であり、Ω
RR’は新たな補償係数を含む新たな補償部分行列であり、Iは単位行列である。
【0029】
一例示的実施形態では、決定することが:
Ω
RR’=Ω
RR−Ω
RD(I−Ω
DD)Ω
DR
G
DD,stor=−Ω
DD+Ω
DR(I−Ω
RR)Ω
RD
G
DR,stor=−(I−Ω
DD)Ω
DR(I−Ω
RR+Ω
RD(I−Ω
DD)Ω
DR)
G
RD,stor=−(I−Ω
RR)Ω
RD(I−Ω
DD+Ω
DR(I−Ω
RR)Ω
RD)
として、新たな補償係数と複数のチャネル部分行列とを決定することを含み、ここでRは第1のサブセットであり、Dは第2のサブセットであり、G
DD,stor、G
DR,storおよびG
RD,storは記憶されたチャネル部分行列の推定値であり、Ω
RR、Ω
RD、Ω
DR、Ω
DDはアクティブな補償部分行列であり、Ω
RR’は新たな補償係数を含む新たな補償部分行列であり、Iは単位行列である。
【0030】
一例示的実施形態では、方法は、新たな補償係数を用いてデータを送信することをさらに含む。
【0031】
少なくとも1つの例示的実施形態は、複数の通信経路を有するシステムを開示する。システムは、第1の行列を記憶するように構成されたメモリであって、第1の行列が、複数の通信経路のサブセットに関連するシステムの少なくとも1つのチャネル部分行列を含む、メモリと、どの通信経路がアクティブになるかについての指示を取得することと、指示の取得の後に、記憶された少なくとも1つのチャネル部分行列およびアクティブな補償係数に基づいて新たな補償係数を決定することであって、アクティブな補償係数が、アクティブな通信経路の数が変化する前の、アクティブな通信経路の間のクロストークを補償するためのものである、決定することとを行うように構成されたプロセッサとを含む。
【0032】
一例示的実施形態では、少なくとも1つのチャネル部分行列が、指示の取得の前の非アクティブな通信経路に対応する行および/または列を有するチャネル係数を含む。
【0033】
一例示的実施形態では、第1の行列が、アクティブな補償係数を含む補償部分行列をさらに含む。
【0034】
一例示的実施形態では、第1の行列が、指示の取得の前のアクティブな通信経路のサブセットに関連する行および列を有する補償部分行列、および指示の取得の前の非アクティブな通信経路のサブセットに関連する行および/または列を有するチャネル部分行列のみを含む。
【0035】
一例示的実施形態では、アクティブな補償係数は、アクティブな通信経路に対応する。
【0036】
一例示的実施形態では、プロセッサは、少なくとも1つのチャネル部分行列を更新するように構成される。
【0037】
一例示的実施形態では、メモリは第2の行列を記憶するように構成され、第2の行列が補償部分行列を含み、補償部分行列がアクティブな補償係数を含む。
【0038】
一例示的実施形態では、第1の行列が、複数の通信経路のサブセットに関連する複数のチャネル部分行列を含む。
【0039】
一例示的実施形態では、メモリは、システム内のアクティブな通信経路の数が変化する場合に第1の行列を保持するように構成される。
【0040】
少なくとも1つの例示的実施形態は、複数の通信経路を有するシステムを開示する。システムは、第1の行列を記憶するように構成されたメモリであって、第1の行列が、システム内のアクティブな通信経路の少なくとも第1および第2のサブセットに関連するアクティブな補償部分行列を含み、アクティブな補償部分行列が、システム内のクロストークを補償するための補償係数を表す、メモリと、どの通信経路が非アクティブになるかについての指示を取得することと、指示の取得の後に、新たな補償係数とシステムの複数のチャネル部分行列とを記憶されたアクティブな補償部分行列に基づいて決定することとを行うように構成されたプロセッサとを含む。
【0041】
一例示的実施形態では、プロセッサは、通信経路の第2のサブセットを非アクティブ化するように構成される。
【0042】
一例示的実施形態では、プロセッサは:
【数2】
G
DD,stor=(I+Ω
DD−Ω
DR(I+Ω
RR)
−1Ω
RD)
−1−I
G
DR,stor=−(I+Ω
DD)
−1Ω
DR(I+Ω
RR−Ω
RD(I+Ω
DD)
−1Ω
DR)
−1
G
RD,stor=−(I+Ω
RR)
−1Ω
RD(I+Ω
DD−Ω
DR(I+Ω
RR)
−1Ω
RD)
−1
として、新たな補償係数と複数のチャネル部分行列とを決定するように構成され、ここでRは第1のサブセットであり、Dは第2のサブセットであり、G
DD,stor、G
DR,storおよびG
RD,storは記憶されたチャネル部分行列の推定値であり、Ω
RR、Ω
RD、Ω
DR、Ω
DDはアクティブな補償部分行列であり、Ω
RR’は新たな補償係数を含む新たな補償部分行列であり、Iは単位行列である。
【0043】
一例示的実施形態では、プロセッサが:
Ω
RR’=Ω
RR−Ω
RD(I−Ω
DD)Ω
DR
G
DD,stor=−Ω
DD+Ω
DR(I−Ω
RR)Ω
RD
G
DR,stor=−(I−Ω
DD)Ω
DR(I−Ω
RR+Ω
RD(I−Ω
DD)Ω
DR)
G
RD,stor=−(I−Ω
RR)Ω
RD(I−Ω
DD+Ω
DR(I−Ω
RR)Ω
RD)
として、新たな補償係数と複数のチャネル部分行列とを決定するように構成され、ここでRは第1のサブセットであり、Dは第2のサブセットであり、G
DD,stor、G
DR,storおよびG
RD,storは記憶されたチャネル部分行列の推定値であり、Ω
RR、Ω
RD、Ω
DR、Ω
DDはアクティブな補償部分行列であり、Ω
RR’は新たな補償係数を含む新たな補償部分行列であり、Iは単位行列である。
【0044】
例示的実施形態は、以下の詳細な説明から、添付の図面と併せてより明確に理解されよう。
図1−9は、本明細書に記載の非限定的な例示的実施形態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、様々な例示的実施形態を、いくつかの例示的実施形態が図示された添付の図面を参照してより完全に説明することにする。
【0047】
したがって、例示的実施形態は様々な修正例および代替形態が可能であるが、それらの実施形態は図面に例として示されており、本明細書でより詳細に説明することにする。しかしながら、例示的実施形態を開示された特定の形態に限定する意図はなく、むしろ例示的実施形態は特許請求の範囲の範囲内に入る全ての修正例、均等物、および代替例を包含するものとすることを理解されたい。図面の説明全体にわたって、同様の符号は同様の要素を指す。
【0048】
第1、第2などの用語が様々な要素を説明するために本明細書で使用されるが、これらの要素がこれらの用語により限定されるべきではないことは理解されよう。これらの用語は、1つの要素を他の要素から区別するために用いられているにすぎない。たとえば、例示的実施形態の範囲から逸脱することなく、第1の要素が第2の要素と呼ばれることがあり、同様に第2の要素が第1の要素と呼ばれることがある。本明細書では、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つまたは複数の項目のいずれかおよび全ての組み合わせを含む。
【0049】
ある要素が他の要素と「接続される(connected)」または「結合される(coupled)」と称される場合、他の要素と直接的に接続または結合されることがあり、または介在要素が存在する場合があることは理解されよう。対照的に、ある要素が他の要素と「直接的に接続される(directly connected)」または「直接的に結合される(directly coupled)」と称される場合、介在要素は存在しない。要素間の関係を説明するのに使用される他の語は、同様に解釈されるべきである(たとえば、「間に(between)」と「直接的に間に(directly between)」、「隣接した(adjacent)」と「直接的に隣接した(directly adjacent)」など)。
【0050】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、例示的実施形態を限定するものではない。本明細書では、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかにそれ以外を示さない限り、複数形を含むものとする。「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、および/または「含んでいる(including)」という用語が、本明細書で用いられる場合、記述された特徴、整数、ステップ、動作、要素および/または構成要素の存在を示すが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素および/またはこれらの組の存在または追加を排除しないことはさらに理解されよう。
【0051】
いくつかの代替的実装形態では、記載された機能/振る舞いが図面に記載の順序以外で行われ得ることにも留意されたい。たとえば、連続して示された2つの図面は、関連する機能/振る舞いに応じて、実際にはほぼ同時に実行されることがあり、または逆順で実行される場合がある。
【0052】
別途定義されていなければ、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、例示的実施形態が属する当技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。一般的に使用される辞書で定義された用語などの用語が、関連技術の文脈でのその意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、理想化されたまたは過度に形式的な意味で、本明細書でそのように明示的に定義されない限り、解釈されないことはさらに理解されよう。
【0053】
例示的実施形態の一部および対応する詳細な説明は、ソフトウェア、またはアルゴリズムおよびコンピュータメモリ内のデータビットへの演算の記号表現によって与えられる。これらの記述および表現は、当業者が自らの成果物(work)の本質を他の当業者に効果的に伝えるものである。アルゴリズムは、この用語が本明細書で使用される場合、および、一般的に使用される場合、所望の結果をもたらす首尾一貫した一連のステップであると考えられる。ステップは、物理量の物理操作を必要とするものである。通常、必ずそうではないが、これらの量は、記憶、転送、組み合わせ、比較、あるいは操作が可能な光学、電気、または磁気信号の形をとる。主に一般的な用法であるという理由から、これらの信号をビット、値、要素、記号、文字、単語(terms)、数字などと呼ぶことが便利な場合があることが分かっている。
【0054】
以下の説明では、例示的実施形態は、特定のタスクを実施するまたは特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含むプログラムモジュールまたは機能的処理として実装でき、また、既存のネットワーク要素または制御ノードにおける既存のハードウェアを用いて実装できる、(たとえばフローチャートの形式の)振る舞いおよび演算の記号表現に関連して記載することにする。そのような既存のハードウェアは、1つまたは複数の中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)コンピュータなどを含むことができる。これらの用語は概して、プロセッサまたはコントローラと呼ばれることがある。
【0055】
特段の断りがない限り、または議論から明らかなように、「処理(processing)」または「計算(computing)」または「計算(calculating)」または「決定/判定(determining)」または「表示(displaying)」などの用語は、コンピュータシステムのレジスタおよびメモリ内の物理的、電子的な量として表現されるデータを、コンピュータシステムのメモリまたはレジスタあるいは他のそのような情報ストレージ、伝送または表示デバイス内の物理量として同様に表現される他のデータに操作および変換する、コンピュータシステムまたは類似の電子コンピューティングデバイスの振る舞いおよび処理を指す。
【0056】
例示的実施形態のソフトウェア実装された態様が、典型的には何らかの形の有形(または記録)記憶媒体上に符号化されることにも留意されたい。有形記憶媒体は、磁気式(たとえばフロッピー(登録商標)ディスクまたはハードドライブ)あるいは光学式(たとえばコンパクトディスク読出し専用メモリ、すなわち「CD ROM」)とすることができ、また、読出し専用またはランダムアクセスとすることができる。例示的実施形態は、任意の所与の実装のこれらの態様により限定されない。
【0057】
図1に、従来のDSLシステムを示す。図示のように、システム100は、アクセスノード110、および顧客宅内機器(CPE:Customer Premises Equipment)150
1−150
nを含む。いくつかの例示的実施形態では、アクセスノード110は、DSLAM(デジタル加入者線アクセスマルチプレクサ(digital subscriber line access multiplexer))とすることができる。他の例示的実施形態では、アクセスノード110は、各ユーザに関連付けられた個別の光ネットワークユニット(ONU:optical network unit)、および接続された4つの光ファイバを含むことができる。4人のユーザの1本の回線への多重化は、ネットワークの光ファイバ部分で行われることになる。CPE150
1−150
nの各々は、たとえば、別々の家またはオフィス内に、それ自体のCPEと共にあってもよい。さらに、CPE150
1−150
nの各々は、データを送信および受信することができるので、送受信機と呼ばれることがある。
【0058】
システム100は、たとえば、DSLシステム、VDSLシステムまたはVDSL2システムとすることができる。
【0059】
アクセスノード110は、事業者(operator)の管理下とすることができる。アクセスノード110は、ネットワークプロセッサ(NP)120と通信するように構成されたONU115を含む。知られているように、ONU115は、中央局に配置された光回線終端装置(OLT:optical line terminal)に対して、光ファイバーチャネル上の高帯域幅データ接続を提供する。ONUは、受信された下流データフレームまたはパケットをNP120へ渡し、次いでNP120は、フレームまたはパケットの宛先を決定し、それに従って適切なDSLインターフェースに転送する。同様に、上流方向において、NP120はフレームまたはパケットをDSLインターフェースからONU115に転送する。
【0060】
NP120は信号を処理デバイス125
1−125
nに提供し、各々、1つまたは複数のプロセッサを有する。処理デバイス125
1−125
nの各々は、DSLインターフェースを提供する。図示された処理デバイス125
1−125
nの数は4つであるが、処理デバイス125
1−125
nの数は、4つより多くても少なくてもよい。処理デバイス125
1−125
nは、物理層単一入力単一出力(SISO:single−input−single−output)処理デバイスとすることができる。
【0061】
処理デバイス125
1−125
nの各々は、CPE150
1−150
nの1つと通信回線L1−Ln上で、関連付けられたラインドライバ(LD)130
1−130
nを介して通信することができる。通信回線L1−Lnは、電磁信号を搬送するツイスト線対とすることができる。理解されるべきであるように、通信はツイスト線対に限定されない。システム100は、たとえば、DSL信号、VDSL信号、およびイーサネット(登録商標)信号を用いて通信することができる。処理デバイス125
1−125
nおよび関連付けられたLD130
1−130
nの各ペアは、データを送信および受信することができるので、送受信機と呼ばれることがある。
【0062】
処理デバイス125
1−125
nはデータを変調して、送信すべきサンプリングされた一連の値からなるLD130
1−130
nへの時間領域デジタル信号を生成する。そしてLD130
1−130
nはデジタル信号をアナログ形式に変換し、増幅し、アナログ信号を通信回線L1−Ln上でそれぞれ、CPE150
1−150
nにそれぞれ送信する。
【0063】
図1に、アクセスノード110に接続された計4本の通信回線を示す。しかしながら、分配点(distribution point)は、4本より多い回線に接続することができる。加えて、プリコーディンググループは、単一の分配点に接続された回線に限定されるものではない。プリコーディンググループは、たとえば、いくつかの分配点にわたって分散した数十回線を含むことができる。そのような場合、分配点の間の協調が必要となる場合がある。さらに、
図1には、例示的実施形態の理解のために関連する通信ネットワークの要素のみが示されている。したがって、分配点が接続されたネットワーク機器などの要素、分配点をそのような機器に接続するリンク、中間デバイスなどは、この図には示されていない。
【0064】
図示されたCPE150
1−150
nの数は4つであるが、CPE150
1−150
nの数は、4つより多くても少なくてもよい。CPE150
1−150
nの各々は、関連付けられたラインドライバ155
1−155
nおよび処理デバイス160
1−160
nを含み、各々1つまたは複数のプロセッサを有する。
【0065】
処理デバイス160
1−160
nは、処理デバイス125
1−125
nと同一または実質的に同一とすることができるので、簡潔にするためにさらに詳細に説明することはない。
【0066】
通信回線L1−Lnは、アクセスノード110からCPE150
1−150
nまでそれぞれ達することができる。
【0067】
しかしながら、システム100は、回線L1−Lnが十分に物理的に離れていない場合に、クロストークにさらされることがある。
【0068】
より具体的には、回線L1−Lnのいずれか1本は被妨害回線とみなすことができ、残りの回線L1−Lnは妨害回線とみなすことができる。回線L1−Lnの各々は、顧客に関連付けることができる。明瞭さおよび簡潔さのため、L1を被妨害回線として説明することにする。
【0069】
近端クロストーク(NEXT:near end crosstalk)とは、通信回線L2−Lnなどの妨害回線の片側における送信信号と、被妨害回線L1の同一端の送受信機(図示せず)における信号との間で生じる結合である。たとえば、LD130
1の受信機内へのLD130
2から送信された信号間の結合が、近端クロストークである。
【0070】
NEXTとは逆に、遠端クロストーク(FEXT:far end crosstalk)は、たとえばアクセスノード110から妨害回線L2−Ln内に送信された信号が被妨害回線L1と結合してCPE150
1の受信機への干渉を引き起こす場合、またはCPE150
2−150
nから妨害回線L2−Ln内に送信された信号が被妨害回線L1と結合してLD130
1の受信機への干渉を引き起こす場合に発生する。
【0071】
システム100において、データ速度は、通信回線L1−Lnの間のクロストーク干渉の影響を受けることがある。
【0072】
クロストーク干渉を回避するために、スケジューラをアクセスノード110に追加することができる。スケジューラにより、一度に一人の加入者が送信できるようになる。インターフェースが、処理デバイス125
1−125
nおよびスケジューラの間に定義される。このようにして、各ユーザは、クロストークに影響されることなく高いピーク速度を得ることができる。
【0073】
しかしながら、スケジューリングを用いる場合、通信回線L1−Lnは共有媒体となり、平均データ速度は、アクティブ回線の数に反比例する。スケジューラでは、一度に一本のアクティブ回線のみとなる。
【0074】
性能を改善するために、ベクトル化を用いることができる。ベクトル化は、クロストークキャンセルとも呼ばれる。クロストークキャンセルはデータ速度を改善し、スケジューリングするのではなく複数回線上での同時通信を可能にする。VDSL2におけるクロストークキャンセルについては、ITU G.993.5、「Self−FEXT cancellation (vectoring) for use with VDSL2 transceivers」、Series G:Transmission Systems and Media、Digital Systems and Networks、ITU G.993.5、2010年4月に記載されており、G.vector勧告としても知られている。
【0075】
図2に、ベクトル化(クロストークキャンセル)のためのシステムを示す。
図2に示されるように、システム200は、分配点210および顧客宅内機器(CPE)250
1−250
nを含む。
【0076】
システム200において、G.vectorで定義された技法は、アクティブ回線の間のクロストークを緩和するために用いられる。分配点210は、事業者の管理下とすることができる。分配点210は、NP220と通信するように構成された光ネットワークユニット(ONU)215を含む。ONU215およびNP220は、ONU115およびNP120とそれぞれ同一であるので、さらに詳細に説明することはない。
【0077】
NP220は信号を処理デバイス225
1−225
nに提供し、各々1つまたは複数のプロセッサを有する。図示された処理デバイス225
1−225
nの数は4つであるが、処理デバイス225
1−225
nの数は、4つより多くても少なくてもよい。処理デバイス225
1−225
nは、ポイントツーポイント通信に適している。
【0078】
分配点210は、コントローラ222をさらに含む。コントローラ222は、以下でさらに詳細に説明される例示的実施形態によるプリコーダを含むことができる。コントローラ222は、処理デバイス225
1−225
nから信号データを受信するように構成される。信号データは、対応する処理デバイス260
1−265
nにより受信されることが意図された信号値を含むことができる。コントローラは、前置補償されたシンボルデータを処理デバイス225
1−225
nに返送するようにさらに構成される。一般的には、処理デバイス2251−225nの間で交換されるデータは周波数領域のサンプルであるが、代わりにそのデータは時間領域のサンプルなどとして表現されることがある。
【0079】
コントローラ222は、処理デバイス225
1−225
nと通信する。あるいは、コントローラ222は、処理デバイス225
1−225
nおよびラインドライバ230
1−230
nの間にあってもよい。したがって、コントローラ222の位置は、
図2に示された位置に限定されない。
【0080】
より具体的には、下流方向において、コントローラ222は、処理デバイス225
1−225
nから信号データを受信し、プリコーダ係数を適用してクロストークに対して信号データを前置補償し、処理デバイス225
1−225
nに前置補償された信号データを提供する。
【0081】
上流方向において、処理デバイス225
1−225
nは、クロストークが混入した信号をラインドライバ230
1−230
nから受信する。コントローラ222は、処理デバイス225
1−225
nからクロストークが混入した信号を受信し、クロストークフィルタ係数を適用してクロストークに対して受信信号を後置補償し、処理デバイス225
1−225
nに後置補償された信号データを提供する。そして、処理デバイス225
1−225
nは、引き続き信号データを処理して意図された上流情報を復調する。
【0082】
CPE250
1−250
nの各々は、ラインドライバ255
1−255
nおよび処理デバイス260
1−260
nを含む。ラインドライバ255
1−255
nの各々は、ラインドライバ(LD)230
1−230
nと同一または実質的に同一とすることができる。
【0083】
従来技術についての議論
ベクトル化されたDSLセッションの初期化は通常、アクティブ化する回線および既にアクティブな回線の間のクロストークチャネル結合を推定するための推定処理を用いる。
【0084】
従来、回線が非アクティブになる場合、過去のプリコーダが使用される。DSL回線が非アクティブになる場合、DSL回線が使用していたプリコーダ係数は、メモリに保持され、次にその回線がアクティブになる際に再使用される。理論的には、過去の係数を用いることで、二度目に回線が初期化される際に始まるクロストーク推定処理の反復を不要にすることができる。
【0085】
しかしながら、プリコーダ係数は、単なるチャネル係数の負の値ではなく、チャネル係数のアクティブな部分行列の逆行列の係数である。クロストークが少ないシステムでは、係数は、おおよそチャネル係数の負の値であり、回線のどのサブセットがアクティブであるかに強く依存せず、その場合、従来の過去のプリコーダが効果的な場合がある。対照的に、クロストークがより大きいシステムでは、係数は、回線のどのサブセットがアクティブであるか、したがってどのアクティブな部分行列が反転されるかに大きく依存する。回線が二度アクティブになり、各回で異なる回線がアクティブとなる場合、2次以上の効果のために異なる係数が必要となる。言い換えれば、以前のプリコーダ係数を用いるだけでは、DSL回線は、2次の残留クロストークの項で初期化されることになる。
【0086】
G.vectorは、従来の初期化処理を提供する。G.vector初期化処理は、誤差フィードバックを用いて残留クロストークチャネルの部分行列を推定する。
【0087】
一例として、2011年1月28に出願された米国特許出願公開第2012/0195183号の方法を用いて、推定された残留クロストークチャネル部分行列に基づいて、クロストークの過渡現象を回避するための乗法的技法によって、補償行列を更新することができ、その内容全体が引用により組み込まれている。誤差フィードバックを送信し収集する処理は、かなりの時間がかかる。加えて、誤差フィードバックを処理して残留クロストークチャネルの推定値を形成するのに必要な計算もまた、時間がかかる場合がある。結果的に、残留クロストークチャネルの推定に基づいた初期化処理は、実行するのに長い時間がかかる場合がある。
【0088】
対照的に、少なくとも例示的実施形態では、過去のチャネル行列を用いて推定ステップをスキップすることが開示される。
【0089】
残留クロストークとは、ベクトル化が適用された後にアクティブ回線上に残っているクロストークである。プリコーダ行列を決定し使用した後、通常は多少の残留クロストークが存在し、これは推定可能である。したがって、プリコーダ行列を更新して、残留クロストークをさらに低減する。
【0090】
フィードバックという用語は、CPEなどの通信システムの送受信機が、分配点などの通信システムの送受信機に、受信されたパイロット信号から導出された値を伝達する手段を指す。
【0091】
例示的実施形態によるアクティブ化および非アクティブ化についての議論
図3に、一例示的実施形態によるプリコーダを含むコントローラ222を示す。コントローラ222は、処理デバイス225
1−225
nの各々との通信インターフェース305を有する。着信通信インターフェース305は、処理デバイス225
1−225
nからデータおよび制御信号を受信する。着信通信インターフェース305は、シンボルデータXをサブセット選択器307に転送する。着信通信インターフェース305はさらに、どの回線がアクティブであるかに関する情報をサブセット選択器307およびプロセッサ310に転送する。プロセッサ310は、過去のチャネル行列などのデータを、メモリ(記憶媒体)312に対して記憶および取り出しを行うように構成される。メモリ312は、1つまたは複数のメモリモジュールを含むことができる。メモリモジュールは、別々の物理メモリ(たとえばハードドライブ)、単一の物理メモリ上の別々のパーティション、および/または単一の物理メモリの単一のパーティション上の別々の記憶位置とすることができる。
【0092】
着信通信インターフェース305、サブセット選択器307、プロセッサ310、プリコーダ315、および発信通信インターフェース320は、たとえばハードウェア、ソフトウェアまたはファームウェアで実装することができる。着信通信インターフェース305、サブセット選択器307、プロセッサ310、プリコーダ315、および発信通信インターフェース320のいずれか1つがソフトウェアである場合、コントローラ222などのコントローラは、そのソフトウェアを実行するように具体的にプログラムされる。
【0093】
DSLセッションの間、アクティブ回線は、一定のデータのストリーム(実際のユーザデータまたはランダムな「プレースホルダ」データのいずれか)を送信する。
【0094】
サブセット選択器307は、アクティブ回線のサブセットに対応するシンボルデータX
Sをプリコーダ315に転送する。プリコーダ315は、プロセッサ310から受信された係数を、サブセット選択器307から受信されたシンボルデータに適用して、補償されたデータシンボル(プリコードされたデータ)を生成し、これは発信通信インターフェース320に転送される。発信通信インターフェース320は、補償されたデータシンボルを処理デバイス225
1−225
nに送信する。
【0095】
メモリ312は、(直接ゲイン(direct gain)が除去された)正規化されたクロストークチャネルHの推定値を記憶することができ、これは:
H=(I+G) (1)
であり、Gは相対クロストーク行列であり、Iは単位行列である。完全な相対クロストーク行列Gは、任意の知られている手段、たとえば、学習フェーズ中に全ての通信経路上で複数のパイロット信号を送信し、全ての通信経路からのフィードバック信号を用いてクロストークチャネルを推定することによって、推定することができる。記憶された推定値は、真の物理チャネルを表す行列Gとは異なる、G
storと表すことにする。
【0096】
あるいは、記憶される相対クロストーク行列は、異なる通信経路がアクティブになるにつれて、時間をかけて徐々に構築することができる。たとえば、通信経路mおよびkに関する係数G
mkおよびG
kmは、通信経路mおよびkが両方ともアクティブである最初の推定の機会にフィードバック信号を用いて推定することができる。
【0097】
N本の回線全てがアクティブな場合、プリコーダ315は行列Cを実装し、これは理想的には正規化されたクロストークチャネルHの逆行列であるべきである:
C=(I+G)
−1 (2)
【0098】
プロセッサ310は、前置補償行列Ωを決定し、前置補償行列Ωをメモリ312に記憶するように構成される。前置補償行列は:
Ω=C−I (3)
である。
【0099】
AおよびBが回線のサブセットである場合、G
ABは、セットAの行およびセットBの列に対応するGの部分行列として表すことができ、他の行列およびサブセットに対しても同様である。
【0100】
アクティブ回線のセットSについて、アクティブチャネル部分行列はG
SSと表され、プリコーダの対応する部分行列は理想的には:
C
SS=(I+G
SS)
−1 (4)
である。
【0101】
Tが非アクティブ回線のセットである場合、前置補償行列の残りの部分行列Ω
ST、Ω
TS、およびΩ
TTは、零となり得る。
【0102】
一実施形態では、メモリ312は2つの配列を記憶することができる。メモリ312は、チャネル行列G
storを1つの配列に記憶し、現在のプリコーダCを他の配列に記憶する。プロセッサ310は、前述のように、様々な回線のペアが初めて両方ともアクティブとなった時間中にG
storの値を決定する。
【0103】
後続の初期化の際には、Gの値は記憶された配列から取得され、測定されるのではない。
【0104】
他の実施形態では、メモリ312は、単一の結合されたチャネル/補償行列の配列Aを記憶する。アクティブ回線に関連する部分行列内に、現在の補償行列が記憶される:
【数3】
【0105】
Aの残りの部分行列内に、メモリ312は、チャネル行列の対応する部分行列の推定値を記憶する。言い換えれば、メモリ312は、対応する部分行列をA
ST=G
ST,stor、A
TS=G
TS,stor、およびA
TT=G
TT,storとして記憶する。
【0106】
アクティブ化
図4に、システム内の通信経路のサブセットを初期化する方法を示す。
図4の方法の説明を補助するために、
図3を用いる。しかしながら、
図4の方法が、
図3に示されたものと異なるコントローラおよびプリコーダにより実施できることを理解されたい。
【0107】
N本の回線が、回線のサブセットに分割される。たとえば、アクティブ回線のサブセットSと、非アクティブ回線のサブセットTとが存在する。
【0108】
S405において、システムは第1の行列を取得する。たとえば、メモリ312は、推定されたチャネル行列G
storおよび補償行列Ωを記憶する。この例では、チャネル行列G
storは、第1の行列と呼ばれることがある。チャネル行列は、チャネル行列Gの推定値を含み、補償行列Ωは、現在のアクティブ回線に関連する補償係数を含む。たとえば、2つの回線のサブセットSおよびTを有するシステムでは、記憶されたチャネル行列G
storは、チャネル部分行列G
SS,stor、G
ST,stor、G
TS,stor、およびG
TT,storを備える2×2のブロック構造を有するN×N行列となる。回線のサブセットSがアクティブでTが非アクティブである場合、補償行列Ωはまた、アクティブ回線間のクロストークを補償するための非零部分行列Ω
SSと、3つの零部分行列Ω
ST、Ω
TS、Ω
TTとを含むブロック構造を有する。
【0109】
プリコーダは、現在のアクティブ回線に関連する補償係数の行列と単位行列とを用いてアクティブ回線間のクロストークをキャンセルするプリコーダ行列を実装する。Sがアクティブな回線のサブセットである例では、プリコーダ行列は、部分行列C
SS=I+Ω
SSと3つの零部分行列とを含む。
【0110】
プロセッサ310は、ある回線が初めて加わった場合にチャネル行列Gの任意の未知の要素を推定し、後で用いるために記憶する。記憶されたチャネル行列G
storは、非アクティブ回線に対応するチャネル係数を有する部分行列を、これらの回線が以前にアクティブであった場合に含む。プロセッサ310は、回線がアクティブ化または非アクティブ化したときに随時、補償行列Ωを更新する。
【0111】
あるいは、メモリ312は、結合されたチャネルおよび補償行列Aを記憶する。結合されたチャネルおよび補償行列Aは、本実施形態では、第1の行列と呼ばれることがある。アクティブ回線のセットのみに関連する部分行列は、アクティブ回線に関連する現在の補償行列の部分行列を含む。結合された行列の全ての他の部分行列は、関連するチャネル行列Gの推定値G
storを含む。言い換えれば、結合された行列Aは、アクティブ回線のサブセットに関連する行および列を有する補償部分行列(複数可)、および非アクティブ回線のサブセットに関連する行および/または列を有するチャネル部分行列のみを含む。
【0112】
S410において、プロセッサ310は、少なくとも1つの追加回線がアクティブになる旨の指示をサブセット選択器から受信する。指示は、回線のうちのいずれがアクティブになるかを示す。
【0113】
そして、プロセッサ310は、S415において、記憶された第1の行列とアクティブな補償係数とに基づいて、新たな補償係数を決定する。アクティブな補償係数は、プロセッサ310が指示を受信する前に、メモリ312に記憶された係数Ω
SSである。
【0114】
たとえば、Rはアクティブ化前のアクティブ回線のセットであり、Tはアクティブ化前の非アクティブ回線のセットである。Tの中の回線のサブセットJがアクティブ化する。アクティブ化後、回線のセットS=R∪Jがアクティブになる。
図5A−5Bに、S415の一例示的実施形態を示す。
【0115】
図5A全体にわたって、簡潔さのために、セットS=R∪J内の回線に対応する部分行列のみが示されている。アクティブ化手順の前後どちらでもアクティブでない回線に対応する部分行列は、アクティブ化手順中に変化しないので、図示されていない。
【0116】
図5Aのステップ(1)に、Jがアクティブ化する前の、正規化されたクロストークチャネルおよびプリコーダ行列を示す。I+Ω
RRが(I+G
RR)
−1に近いので、残留クロストークE
RRは零に近い。正規化されたクロストークチャネルHおよびチャネル行列Gのうちの少なくとも1つは、メモリ312により記憶することができる。プリコーダ行列は、セットR内のアクティブ回線間のクロストークを補償するための部分行列I+Ω
RRを含む。
【0117】
そして、
図5Aのステップ(2)に示されるように、パイロット信号がセットJの回線上で送信される。プリコーダ行列の部分行列C
JJは、このとき単位行列に等しくなり、結果的にJ内の回線からR内の回線への残留クロストークはE
RJ=G
RJとなる。プロセッサ310は、セットR内の回線上の誤差フィードバックを収集することで、残留クロストークE
RJを推定し、この推定値はE
RJ,estと表される。G.vectorでは、パイロットシンボルは同期シンボルの間のみ送信されるので、セットJ内の回線からのクロストークは、セットR内の回線上で受信されるデータシンボルと干渉しない。
【0118】
一例示的実施形態では、推定された残留クロストークE
RJ,estおよび記憶されたチャネル推定値G
RJ,storの差は、後のステップにおいて新たな補償係数を決定するために記憶された値G
JR,storおよびG
JJ,storを用いることを進めるべきかを決定するための指針としてシステムにより使用することができる。全体を通して、「est」は、誤差フィードバックを介して取得された推定値を示す。たとえば、差のノルム||E
RJ,est−G
RJ,stor||が閾値より大きい場合、使用される記憶された情報が正確でない尤度がより高い。
【0119】
図5Aのステップ(3)に示されるように、プロセッサ310は、プリコーダが:
Ω
RJ=−(I+Ω
RR)E
RJ,est (6)
を実装してセットJからセットRへのクロストークをキャンセルするための係数を決定する。これらの係数が適用されると、E
RJが零に近くなり、E
RRは零に近いままとなるので、システムは、セットR内の回線を妨害することなくセットJの回線上で通常の初期化およびデータ信号を送信することができる。
【0120】
図5Bに示されたステップ(4)において、セットJ内の回線は、初期化のチャネル発見フェーズを経て、セットJ内の回線上で双方向通信を確立する。続いて、プロセッサ310は、G.vector初期化のO−P−VECTOR−2フェーズ中に、セットJ内の回線から誤差フィードバックを受信することができる。しかしながら、少なくとも1つの例示的実施形態によれば、初期化時間を削減するために、誤差フィードバックは収集されず、代わりにプロセッサ310は、記憶されたチャネル部分行列に基づいて残留クロストーク行列E
JR,compおよびE
JJ,compを計算する。より具体的には、プロセッサ310は、残留クロストーク行列E
JR,compおよびE
JJ,compを:
E
JJ,comp=G
JJ,stor+G
JR,storΩ
RJ (7)
E
JR,comp=G
JR,stor+G
JR,storΩ
RR (8)
として計算する。
【0121】
残留クロストーク行列E
JJ,compを計算した後、プロセッサ310は、セットJに関連するプリコーダ行列Cの列に行列I−E
JJ,compを乗じることで、セットJ内の回線間のクロストークを低減/除去する。結果的に、新たな補償係数は:
Ω’
JJ=−E
JJ,comp (9)
Ω’
RJ=Ω
RJ(I−E
JJ,comp) (10)
となる。
【0122】
新たな補償係数Ω’
JJおよびΩ’
RJが適用される場合(ステップ5)、残留クロストーク行列E
JJはほぼ零に減少し、E
RJは零の近くに維持される。
【0123】
次に、プロセッサ310は、E
JR,compの決定された値を用いて、セットRに関連するプリコーダ行列Cの列を:
Ω’
JR=−(I+Ω’
JJ)E
JR,comp (11)
Ω’
RR=Ω
RR−Ω’
RJE
JR,comp (12)
に従って更新する。
【0124】
新たな補償係数Ω’
JRおよびΩ’
RRが適用された場合(
図5Bのステップ6)、残留クロストーク行列E
JRはほぼ零に減少し、E
RRが零の近くに維持される。この時点で、残留クロストーク部分行列E
SSの全体がほぼ零となり、このことは、新たなアクティブセット内の回線間のクロストークが正しく補償されることを意味する。
【0125】
図6A−6Bに、S415の他の例示的実施形態を示す。
図6A−6Bに示された例示的実施形態は、
図5A−5Bに記載された実施形態と類似している。したがって、簡潔さのために、相違点のみを説明することにする。
【0126】
図6Aのステップ(2)において、プロセッサ310は、E
RJを推定するためのパイロット信号を送信する前に、チャネル行列の記憶された値G
storを用いて:
Ω
RJ=−(I+Ω
RR)G
RJ,stor (13)
を設定する。記憶された値が正確であり(G
RJ,storがG
RJに近く)、アクティブな補償係数Ω
RRが閾値分散内である((I+G
RR)
−1−Iに近い)場合、残留クロストークE
RJは既に零に近い。いくつかの実施形態では、これにより、E
RJが大きい場合がある
図5A−5Bに記載の方法で得られるものよりも正確な推定値E
RJ,estが得られる。
【0127】
図6Aのステップ(3)において、プロセッサ310はプリコーダ係数を:
Ω’
RJ=Ω
RJ−(I+Ω
RR)E
RJ,est (14)
として改良して、セットJからセットRへの残留クロストークをさらにキャンセルする。
図6A−6Bの後続のステップは、
図5A−5Bの対応するステップについて説明されたように実行される。
【0128】
アクティブな補償係数が新たなアクティブ化回線を含むように決定されると、システムは、新たな補償係数を送信すべきデータに適用する。
【0129】
非アクティブ化
図7に、システム内の通信経路のサブセットを非アクティブ化する方法を示す。
図7の方法の説明を補助するために、
図3が用いられる。しかしながら、
図7の方法が、
図3に記載のものとは異なるコントローラおよびプリコーダにより実施できることは理解されたい。
【0130】
S705において、システムは第1の行列を取得する。ステップS705は、S405と同一である。したがって、簡潔さのために、S705はさらに詳細に説明することはない。
【0131】
S710において、プロセッサ310は、現在アクティブである少なくとも1つの回線が非アクティブになる旨の指示を受信する。
【0132】
そして、プロセッサ310は、S715において、記憶された第1の行列およびアクティブな補償係数に基づいて、新たな補償係数を決定する。
【0133】
たとえば、メモリ312は:
【数4】
と分割されたアクティブチャネル行列G
SS,storを記憶し、ここで、S={RとDの和集合}はアクティブ回線であり、Dは非アクティブ化される回線のセットであり、Rはアクティブのままとなる回線のセットである。
【0134】
プロセッサ310は、サブセットD内の回線が非アクティブ化される旨の指示を受信する。
【0135】
逆プリコーダΩ
SSは、
【数5】
を(近似的に)満たす。
【0136】
したがって、メモリ312は、補償行列または結合されたチャネル/補償行列の以下の部分行列:
【数6】
を記憶する。
【0137】
脱退イベント(leaving event)の間に、プロセッサ310は、新たな縮小された逆プリコーダ部分行列:
Ω
RR’=(I+G
RR)
−1−I (18)
を計算する。
【0138】
メモリ312が結合された行列Aを記憶する結合された行列の実施形態では、プロセッサ310はまた、チャネル部分行列G
RD,stor、G
DR,stor、およびG
DD,storの推定値を計算し記憶する。メモリ312がチャネル行列G
storおよび補償行列Ωを別々に記憶する2行列の実施形態では、プロセッサは、部分行列G
RD,stor、G
DR,stor、およびG
DD,storがメモリ312に既に記憶されているので、これらの計算を行わない。
【0139】
結合された行列の実施形態では、メモリ312が結合された行列Aを記憶している場合、新たなプリコーダΩ
RR’およびチャネル部分行列G
RD,stor、G
DR,stor、およびG
DD,storが、古いプリコーダ係数Ω
SSの代わりにメモリ312により配列A
SS内に記憶される。このようにして、新たなアクティブセットRに対応するAの一部はプリコーダ係数から構成され、新たな非アクティブセット{TとDの和集合}に対応するAの一部はチャネル係数から構成される。2行列の実施形態では、新たなプリコーダΩ
RR’は補償行列に記憶され、部分行列Ω
RD、Ω
DR、およびΩ
DDは零に設定される。
【0140】
新たな部分行列についての正確な公式は以下である:
【数7】
G
DD,stor=(I+Ω
DD−Ω
DR(I+Ω
RR)
−1Ω
RD)
−1−I
G
DR,stor=−(I+Ω
DD)
−1Ω
DR(I+Ω
RR−Ω
RD(I+Ω
DD)
−1Ω
DR)
−1
G
RD,stor=−(I+Ω
RR)
−1Ω
RD(I+Ω
DD−Ω
DR(I+Ω
RR)
−1Ω
RD)
−1 (19)
【0141】
これらの式は、逆行列に関して1次近似を用いることで、簡単化することができる。得られる全体の近似は2次である。
Ω
RR’=Ω
RR−Ω
RD(I−Ω
DD)Ω
DR
G
DD,stor=−Ω
DD+Ω
DR(I−Ω
RR)Ω
RD
G
DR,stor=−(I−Ω
DD)Ω
DR(I−Ω
RR+Ω
RD(I−Ω
DD)Ω
DR)
G
RD,stor=−(I−Ω
RR)Ω
RD(I−Ω
DD+Ω
DR(I−Ω
RR)Ω
RD) (20)
【0142】
上記の表示内のΩ
RR’およびG
DD,storについての式を最初に計算し、次いでG
DR,storおよびG
RD,storについての後続の計算で用いることができる。そして、G
DR,storおよびG
RD,storについての式は:
G
DR,stor=−(I−Ω
DD)Ω
DR(I−Ω
RR’)
G
RD,stor=−(I−Ω
RR)Ω
RD(I+G
DD,stor) (21)
である。
【0143】
アクティブな補償係数が新たな非アクティブ回線を含むように決定されると、システムは新たな補償係数を送信すべきデータに適用する。
【0144】
上流
上述の実施形態はプリコーダ係数を決定することに関して説明されているが、同様の方法がポストコーダ係数を決定するのに適用できることを理解されたい。
【0145】
たとえば、
図8に、上流通信を処理するためのコントローラ222の一部を示す。図示されているように、コントローラ222は、CPE250
1−250
nからシンボルデータを受信するための通信インターフェース820を有する。通信インターフェース820は、シンボルデータをポストコーダ815に転送する。ポストコーダ815は、ポストコーダ行列(I+Ω
UP)を適用してポストコードされたシンボルデータを取得する。添字「UP」は、上流のクロストークを除去するのに用いられる行列を識別するために用いられる。
【0146】
上述のように、プロセッサ310は、過去のチャネル行列など、メモリ(記憶媒体)312に対してデータを記憶および取り出しするように構成される。
【0147】
通信インターフェース820およびポストコーダ815は、たとえば、ハードウェア、ソフトウェアまたはファームウェアで実装することができる。通信インターフェース820およびポストコーダ815のいずれか1つがソフトウェアである場合、コントローラ222などのコントローラは、そのソフトウェアを実行するように具体的にプログラムされる。
【0148】
図9に、ポストコーダ係数を決定する方法を示す。理解されるべきであるように、また、説明されるように、
図9の方法は、回線のアクティブ化および非アクティブ化の間に実施することができる。
図9の方法の説明を補助するために、
図8が用いられる。しかしながら、
図9の方法が、
図8に記載のものと異なるコントローラおよびポストコーダにより実施できることは理解されたい。
【0149】
S905において、システムは第1の行列を取得する。たとえば、メモリ312は、推定されたチャネル行列G
storおよび補償行列Ω
UPを記憶する。
【0150】
ポストコーダは、現在のアクティブ回線に関連する補償係数の行列と単位行列とを用いてアクティブ回線間のクロストークをキャンセルするポストコーダ行列を実装する。
【0151】
あるいは、メモリ312は、結合されたチャネルおよび補償行列A
UPを記憶する。結合されたチャネルおよび補償行列A
UPは、本実施形態では第1の行列と呼ばれることがある。アクティブ回線のセットのみに関連する部分行列は、アクティブ回線に関連する現在の補償行列の部分行列を含む。結合された行列の全ての他の部分行列は、関連するチャネル行列Gの推定値G
storを含む。言い換えれば、結合された行列A
UPは、アクティブ回線のサブセットと関連する行および列を有する補償部分行列(複数可)、および非アクティブ回線のサブセットと関連する行および/または列を有するチャネル部分行列のみを含む。
【0152】
S910において、プロセッサ310は、少なくとも1つの追加回線がアクティブまたは非アクティブになる旨の指示をサブセット選択器から受信する。この指示は、回線のうちのいずれがアクティブまたは非アクティブになるかを示す。
【0153】
そして、プロセッサ310は、S915において、記憶された第1の行列と、アクティブなポストコーダ補償係数とに基づいて新たな補償係数を決定する。アクティブな補償係数は、プロセッサ310が指示を受信する前に、メモリ312により記憶された係数Ω
SS,UPである。
【0154】
プロセッサ310は、補償行列Ω
RR,UPおよび記憶されたチャネル行列G
JR,stor、G
RJ,stor、およびG
JJ,storを取り出す。次いで、新たな補償行列Ω’
SS,UPが計算される。
【0155】
プロセッサ310は、Ω’
SS,UPの対角部分行列を以下のように取得することができる:
Ω’
JJ,up=(I+G
JJ,stor−G
JR,stor(I+Ω
RR,up)G
RJ,stor)
−1−I
Ω’
RR,up=((I+Ω
RR,up)
−1−G
RJ,stor(I+G
JJ,stor)
−1G
JR,stor)
−1−I (22)
【0156】
次いでプロセッサ310は、非対角ブロックを:
Ω’
JR,UP=−(I+Ω’
JJ,UP)G
JR,stor(I+Ω
RR,UP)
Ω’
RJ,UP=−(I+Ω’
RR,UP)G
RJ,stor(I+G
JJ,stor)
−1 (23)
として取得する。
【0157】
これらの式は、以下のように、逆行列に関して1次近似または他の類似した近似を用いて簡単化することができる:
Ω’
JJ,UP=−G
JJ,stor+G
JR,stor(I+Ω
RR,UP)G
RJ,stor
Ω’
RR,UP=Ω
RR,UP+G
RJ,stor(I−G
JJ,stor)G
JR,stor (24)
【0158】
続いて:
Ω’
JR,UP=−(I+Ω’
JJ,UP)G
JR,stor(I+Ω
RR,UP)
Ω’
RJ,UP=−(I+Ω’
RR,UP)G
RJ,stor(I−G
JJ,stor) (25)
【0159】
新たな補償行列が適用されると、S={RとJの和集合}内の全ての回線間のクロストークが除去/低減される。したがって、セットJ内の回線上の初期化およびデータ信号の送信は、パイロット信号を送信したり誤差フィードバックを収集したりする必要なく、進めることができる。
【0160】
式(22)−(25)は、式の中のポストコーダ係数を、対応するアクティブ回線のプリコーダ係数と置き換えることで、下流のアクティブ化にも使用することができる。
【0161】
図4−6Bに関して説明された下流のアクティブ化とは対照的に、
図8−9に関して説明されたアクティブ化手順ではフィードバックが使用されない。式(22)−(25)ではフィードバックが使用されないので、記憶された係数が正確でない場合、アクティブ化手順により、既にアクティブな回線への干渉が増加することがある。
【0162】
結果的に、
図4−6Bに関して説明されたアクティブ化は、フィードバックなしのアクティブ化およびG.vectorの間の中間物として振る舞う。フィードバックが一度しか使用されないので(たとえば
図5Aのステップ(3))、
図4−6Bに関して記載された方法は、2つの異なるステップにおけるフィードバックが必要なG.vectorアクティブ化よりも高速である。
【0163】
上流における非アクティブ化については、同じ方法が、非アクティブ化に関する下流の場合で説明されたように適用できることに留意されたい。
【0164】
例示的実施形態がこのように記載されているが、これらは多数の方法で変形できることは明らかであろう。そのような変形は、例示的実施形態の趣旨および範囲からの逸脱とみなされるべきではなく、当業者にとって明らかなはずである全てのそのような修正は、特許請求の範囲の範囲内に含まれるものとする。