(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
親指掛け部は、連結部材のリング部より線状体押さえ部側に形成され、掴線器本体部の連結部材案内部より連結部材のリング部側に形成された、請求項2に記載の掴線器。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明にかかる掴線器は、電線の振り分け工事などを行う際に電線等の線状体を引っ張る装置に取り付けられて、電線等の線状体を掴持する用途に用いられる。
具体的には、掴線器10は、電力線、通信線といった電線や、エレベータのワイヤ等の線状体(W)を張線器(図示せず)によって引っ張ってテンションを掛けるときに、線状体(W)を掴持するために用いられる。
また、図示していないが、掴線器10は、張線器(図示せず)の両側に掴線器(10)を1個ずつ取り付け、1本の線状体(W)を2つの掴線器(10)で掴持し、張線器で引っ張ることによって線状体(W)に弛みを生じさせて行う切り分け作業等でも用いられる。
【0014】
この発明にかかる一実施の形態である掴線器10は、線状体押さえ部24を有する固定掴持体部20を設けた掴線器本体部材12と、
前記掴線器本体部材12に支軸70により揺動可能に取り付けられた作動部材14と、
前記作動部材14の揺動により、前記固定掴持体部20の線状体押さえ部24に向けて揺動する、線状体保持部22を有する可動掴持体部材16と、
前記作動部材14に回動軸により連結され、作動部材14を揺動させる連結部材18と、を備える掴線器10である。
前記連結部材18は、長尺状の連結部材本体部80と、前記連結部材本体部80の後端に設けたリング部130とを有し、前記リング部130は、前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22とが延びる方向である左右軸を含む基準平面に対して、連結部材本体部80との境界から引っ張る方向に沿う軸線に沿って側部輪郭部まで所定の角度に折り曲げられている。
前記折り曲げられた領域(100)は、線状体Wが前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22との間に掴持されたときにおいて、前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22とが延びる方向に沿った方向であって、連結部材を引っ張る方向に沿った位置で、かつ、前記線状体保持部22と同等又はそれより下方の位置である。
【0015】
前記掴線器本体部材12、前記作動部材14及び前記可動掴持体部材16に、連結部材18より多くの重量が配分されて、連結部材18を引っ張る側より押し戻す側が重い重量配分に設定されている。
重心に近い領域及び/又は連結部材を引っ張る側に掴線器10を把握するための把握部500が備えられており、前記把握部500は、連結部材18の連結部材本体部80と、掴線器本体部材12の引っ張る側において下方に向けて突設された連結部材案内部26とにより構成され、該把握部500を指及び/又は手の平で把握するように形成されている。
カバー部材19を備えた掴線器10の重心Gは、連結部材18が押し戻す側に位置しているとき(第1の状態)、可動掴持体部材回動軸74の近傍に位置している。
連結部材18を(前記第1の状態より)少しだけ引っ張る側に位置しているとき(第2の状態)、カバー部材19を備えた掴線器10の重心G1は、可動掴持体部材回動軸74より少し引っ張る側に位置している。
前記第2の状態より更に引っ張ったとき(第3の状態)、カバー部材19を備えた掴線器10の重心G2は、前記重心G1の位置より更に引っ張る側に位置する。
カバー部材19を備えない掴線器10の重心G3は、前記第1の状態より少し下方に位置したところに位置している。
【0016】
1.掴線器の構成
図1は、線状体押さえ部24と線状体保持部22との間を狭くした状態の掴線器10を示す正面図である。
図2は、線状体押さえ部24と線状体保持部22との間に線状体Wを装着した状態の掴線器10を示す正面図である。
図3は、線状体押さえ部24と線状体保持部22との間を広くした状態の掴線器10を示す正面図である。
図4は、
図2に示した掴線器10の右側面図である。
図5は、
図2に示した掴線器10の左側面図である。
【0017】
掴線器10は、掴線器本体部材12と、掴線器本体部材12に支軸70により揺動可能に取り付けられた作動部材14と、作動部材14の揺動により、掴線器本体部材12に形成された固定掴持体部20の線状体押さえ部24に向かって揺動する、線状体保持部22を有する可動掴持体部材16と、作動部材14に連結部材回動軸72により連結され、作動部材14を揺動させる連結部材18と、掴線器本体部材12にカバー部材回動軸210により回動可能に取り付けられたカバー部材19とを備える。
【0018】
(a)掴線器本体部材
掴線器本体部材12は、正面視略逆U字形状であり、上部において、手前側に向かって突設された固定掴持体部20を有している。固定掴持体部20には、その長手方向に延びる線状体押さえ部24が形成されている。線状体押さえ部24は、掴線器本体部材12の掴線器本体部12aより上方に向けて突設された架設部24cの上端において掴線器本体部材12の手前側に向けて突き出された庇状であり、その下面に挟持溝24aが形成されている。
線状体押さえ部24と可動掴持体部材16の線状体保持部22との間には開口部36が形成され、線状体が開口部36に嵌入される。
挟持溝24aは、固定掴持体部20の線状体押さえ部24および可動掴持体部材16の線状体保持部22が延びる方向である左右軸を含む基準平面Pyzに平行に形成されている。
【0019】
掴線器本体部材12は、後部において、連結部材案内部26が掴線器本体部材12の引っ張る側において下部後方に向けて突設されている。連結部材案内部26は、線状体押さえ部24の延長線と交差する方向であって後述する作動部材14を軸支するための支軸孔30より高さ方向において下方に延びている。
連結部材案内部26には、連結部材18を挿通して案内するためのガイド孔(貫通孔)28が、穿設されている。ガイド孔28は、作動部材14を軸支するための支軸孔30より下方にのびており、ガイド孔28の下端は、該支軸孔30より下方に位置している。ガイド孔28は、線状体押さえ部24及び線状体保持部22より後方、すなわち連結部材18を引っ張る側に位置している。連結部材案内部26は、作動部材14に回動可能に軸支された連結部材18を、ガイド孔28に挿通させて保持する。
【0020】
掴線器本体部材12は、前部の垂延部分であって、線状体押さえ部24の下方において、作動部材14を支軸70にて軸支するための円孔の支軸孔30が穿設されている。支軸孔30は、掴線器本体部材12の手前側(正面側)から向こう側(背面側)に向かって水平方向に延びる。
【0021】
図6に示すように、支軸70を挿入する支軸孔30の孔縁は、支軸70を保護するために突条32が形成されている。突条32は、正面視円形の肋(リブ)である。突条32は、支軸孔30の孔の外周縁の延びる方向(支軸70の軸心70aの延びる方向)に向けて、掴線器本体部材12から突出している。突条32は、頂部32aが平面状であって、支軸孔30の孔周縁の延びる方向と交差する方向である垂直方向に広がる。突条32は、その頂部32aが掴線器本体部材12の手前側面および線状体押さえ部24の挟持溝24aとは平行な平面を備え、かつ、その周縁が掴線器本体部材12の手前側面と交差する方向に延びる断面略台形状である。突条32は、作動部材14を載せておくための座を構成する。
【0022】
突条32の外周縁とは略々同じ間隔をおいて、突条32を囲繞するように、円弧状の突条40が、形成されている。突条40は、突条32と略々同じ高さを備えている。突条40と突条32との間には、ばね用溝44が形成されている。突条40は、支軸孔30の下部から前側にかけて連続して設けられた、正面視円弧状の肋(リブ)である。突条40は、後方(連結部材18を引っ張る方向(
図1図示a方向))の下部を切り欠かれて空所42が設けられており、空所42は、コイルばね110の移動をできるようにするために設けられている。突条40は、支軸孔30の孔の外周縁の延びる方向(支軸70の軸心70aの延びる方向)に向けて、掴線器本体部材12から突出している。突条40は、頂部40aが平面状であって、支軸孔30の孔の外周縁の延びる方向と交差する方向である垂直方向に広がる。突条40は、その頂部40aが掴線器本体部材12の手前側面および線状体押さえ部24の挟持溝24aとは平行な平面を備え、かつ、その周縁が掴線器本体部材12の手前側面と交差する方向に延びる断面略台形状である。突条40は、作動部材14を載せておくための座を構成する。
【0023】
掴線器本体部材12は、線状体Wを掴持したときに、可動掴持体部材16を固定掴持体
部20と平行にして線状体Wを確実に保持するための可動掴持体部材支持部68を有する。
可動掴持体部材支持部68は、掴線器本体部材12の後方の高さ方向における下部であって、連結部材案内部26より高さ方向における上方に位置している。
【0024】
掴線器本体部材12は、固定掴持体部20の上部において、カバー部材19をカバー部材回動軸210にて回動自在に軸支するための円孔のカバー部材取付孔160と、カバー部材19を押圧体220にて締め付けることによって位置決めするための円孔の螺子孔162とが穿設されている。カバー部材取付孔160は掴線器本体部材12の前方に位置し、螺子孔162は掴線器本体部材12の後方に位置し、カバー部材取付孔160と螺子孔162とは並設されている。
図10に示すように、カバー部材取付孔160および螺子孔162は、掴線器本体部材12の手前側(正面側)から向こう側(背面側)に向かって水平方向に延びる。押圧体220は、スプリングワッシャ又はコイルバネ(図示せず)を介在させてカバー部材19を締め付ける。
【0025】
(b)作動部材
作動部材14は、正面視略三角形状で、前方の上部の内角部分に、支軸70を挿入する掴線器本体部材取付孔60が穿設され、後方の上部の内角部分に可動掴持体部材回動軸74を挿入する可動掴持体部材取付孔62が穿設され、後方の下部の内角部分に連結部材回動軸72を挿入する連結部材取付孔64が穿設されている。連結部材回動軸72および可動掴持体部材回動軸74は、支軸70と比較して、連結部材18の延びる方向である後方(右側)に位置している。
作動部材14は、線状体保持部22の下方において、線状体保持部22の下面の近傍から垂下されている。
【0026】
作動部材14は、線状体Wの径が細くて線状体押さえ部24と線状体保持部22とが近づいて線状体Wを掴持したとき及び線状体Wの径が太くて線状体押さえ部24と
線状体保持部22とが離れて線状体Wを掴持するときにおいて、連結部材本体部80を連結部材回動軸72に取り付ける部位が可動掴持体部材回動軸74の垂直下より引っ張る側に位置するとともに線状体Wの引張力がかかる基点tを線状体Wの中心線に近い位置に到達させることができる長さを備えている(
図25〜27参照)。
作動部材14は、線状体Wの径が細くて線状体押さえ部24と線状体保持部22とが近づいて線状体Wを掴持したとき及び線状体Wの径が太くて線状体押さえ部24と
線状体保持部22とが離れて線状体Wを掴持するときにおいて、連結部材18が線状体保持部22の下方から線状体保持部22の高さと同等かそれより高い位置にのび且つ中腹で連結部材案内部26に支持される長さを備えている(
図25〜27参照)。
【0027】
作動部材14は、掴線器本体部材12の一端部に設けられた突条32の上に載せられ、支軸孔30と掴線器本体部材取付孔60とを一直線状に並列されて、支軸70を枢軸として回動自在に掴線器本体部材12に取り付けられている。作動部材14は、掴線器本体部材12の線状体押さえ部24の延びる方向と平行に揺動する。さらに、作動部材14は、他端部に連結部材18の一端部が合わされ、連結部材18の作動部材取付孔82と作動部材14の連結部材取付孔64とが一直線状に並列され、連結部材回動軸72を枢軸として回動自在に連結部材18が取り付けられている。また、作動部材14は、掴線器本体部材取付孔60と隣り合う位置に設けられた可動掴持体部材取付孔62において、可動掴持体部材回動軸74を枢軸として回動自在に可動掴持体部材16が取り付けられている。
【0028】
図5および
図6に示すように、掴線器本体部材取付孔60、可動掴持体部材取付孔62および連結部材取付孔64の周辺は、作動部材14の手前側面および向こう側面のいずれもその他の部分より高く膨出しており、その膨出部の頂部は、取付孔60,可動掴持体部材取付孔62,連結部材取付孔64の周縁の延びる方向と直交する垂直な平面である。すなわち、掴線器本体部材取付孔60の向こう側の孔周辺の膨出部の頂部60aおよび手前側の孔周辺の膨出部の頂部60bと、可動掴持体部材取付孔62の向こう側の孔周辺の膨出部の頂部62aおよび手前側の孔周辺の膨出部の頂部62bと、並びに、連結部材取付孔64の向こう側の孔周辺の膨出部の頂部64aおよび手前側の孔周辺の膨出部の頂部64bとは、平行に形成され、掴線器本体部材取付孔60、可動掴持体部材取付孔62および連結部材取付孔64の孔縁(孔の外周縁)の延びる方向と直交する。
【0029】
掴線器本体部材取付孔60の作動部材14の向こう側の孔周辺の膨出部の頂部60aの摺接面(突条32の頂部32a及び突条40の頂部40aと摺接する摺接面)は、作動部材14の支軸70の軸心70aと直交し、かつ、固定掴持体部20の線状体押さえ部24の挟持溝24aおよび可動掴持体部材16の線状体保持部22の挟持溝22aに平行になるように垂直面に形成されている。
【0030】
可動掴持体部材取付孔62の手前側の孔周辺の膨出部の頂部の摺接面(可動掴持体部材16の取り付け面と摺接する摺接面)および向こう側の孔周辺の膨出部の頂部は、可動掴持体部材16の可動掴持体部材回動軸74の軸心と直交し、かつ、固定掴持体部20の線状体押さえ部24の挟持溝24aおよび可動掴持体部材16の線状体保持部22の挟持溝22aに平行になるように垂直面に形成されている。
【0031】
連結部材取付孔64の向こう側の孔周辺の膨出部の頂部64aの摺接面(連結部材18の取り付け面と摺接する摺接面)は、連結部材18の連結部材回動軸72の軸心72aと直交し、かつ、固定掴持体部20の線状体押さえ部24の挟持溝24aおよび可動掴持体部材16の線状体保持部22の挟持溝22aに平行になるように垂直面に形成されている。
【0032】
支軸70は、長さ方向に延びる軸心70aを有する円柱状で、その手前側に軸心70aに交差する方向に突き出た鍔部70bを備えている。支軸70は、作動部材14の掴線器本体部材取付孔60に手前側から嵌挿され、掴線器本体部材12の支軸孔30に螺着されて、掴線器本体部材12および作動部材14に取り付けられる。支軸70の軸心70aは、作動部材14の揺動の中心となる。支軸70は、支軸孔30の向こう側にてかしめられていてもよい。
【0033】
連結部材回動軸72は、長さ方向に延びる軸心72aを有する円柱状で、その手前側に軸心72aに交差する方向に突き出た鍔部72bを備えている。連結部材回動軸72は、作動部材14の連結部材取付孔64および連結部材18の作動部材取付孔82に手前側から嵌合され、作動部材取付孔82の向こう側にてかしめられて、作動部材14および連結部材18に取り付けられる。連結部材回動軸72の軸心72aは、連結部材18の回動の中心となる。
【0034】
可動掴持体部材回動軸74は、長さ方向に延びる軸心74aを有する円柱状で、その向こう側に軸心74aに交差する方向に突き出た鍔部74bを備えている。可動掴持体部材回動軸74は、後述する可動掴持体部材16の向こう側の第2作動部材取付孔98から作動部材14の可動掴持体部材取付孔62および第1作動部材取付孔96に嵌挿されて、可動掴持体部材16の手前側の第1作動部材取付孔96の手前側に突き出た部位において、割りピン76にて固定されている。可動掴持体部材回動軸74の軸心74aは、可動掴持体部材16の回転の中心となる。
【0035】
第2作動部材取付孔98の向こう側の孔周辺には、円周方向に円環状段差部98aが形成されている。可動掴持体部材回動軸74の鍔部74bの向こう側の表面は、可動掴持体部材回動軸74の鍔部74bを円環状段差部98aに嵌挿したとき、第2作動部材取付部94の向こう側面と平面的に連続するように構成されている。
【0036】
支軸孔30と作動部材14の掴線器本体部材取付孔60とは同一径で、その孔の外周縁を平行になるようにして並列される。支軸孔30の周縁の延びる方向と、掴線器本体
部材取付孔60、可動掴持体部材取付孔62および連結部材取付孔64の周縁の延びる方向と、支軸70の軸心70a、連結部材回動軸72の軸心72aおよび可動掴持体
部材回動軸74の軸心74aとは、平行である。
【0037】
さらに、掴線器本体部材12と作動部材14との間には、連結部材18が引っ張られる側に作動部材14を付勢するためのコイルばね110が設けられており、コイルばね110は、支軸70を挿通するように設けられている。コイルばね110は、コイル部112が掴線器本体部材12のばね用溝44に嵌挿されている。コイルばね110は、コイル部112の一端から延びた直線状第1引掛部114が作動部材14の向こう側面に形成された引掛穴66に固定されている。コイル部112の他端から延びた直線状第2引掛部116は、掴線器本体部材12の手前側面に形成された引掛穴48に固定されている。第1引掛部114は、掴線器10が無負荷の状態において、連結部材18がコイルばね110によって引っ張る側(
図1図示a方向)に引っ張られた状態になるように、引掛穴66に固定されている。
【0038】
掴線器本体部材12の突条32および突条40は、作動部材14の掴線器本体部材取付孔60の向こう側の孔周辺の膨出部の頂部60aと対向する頂部32aおよび頂部40aの摺接面が、固定掴持体部20の挟持溝24aの延びる方向と平行であって、支軸70の軸心70aと直交するように、一定の高さに形成されている。
【0039】
突条32の頂部32aおよび突条40の頂部40aの摺接面は、掴線器本体部材取付孔60、可動掴持体部材取付孔62および連結部材取付孔64のそれぞれの向こう側の孔周辺の膨出部の頂部60a,62a,64a並びに手前側の孔周辺の膨出部の頂部60b,62b,64bの摺接面と対向する平行な面である。そして、支軸70の軸心70aを中心として作動部材14が回動するように、突条32の頂部32aおよび突条40の頂部40aと掴線器本体部材取付孔60の向こう側の孔周辺の膨出部の頂部60aとが、面接触している。
【0040】
そして、作動部材14の掴線器本体部材取付孔60、可動掴持体部材取付孔62および連結部材取付孔64のそれぞれの向こう側の孔周辺の膨出部の頂部60a,62a,64aの摺接面を通る垂直平面P1、並びに、掴線器本体部材取付孔60および可動掴持体部材取付孔62のそれぞれの手前側の孔周辺の膨出部の頂部60b,62bの摺接面を通る垂直平面P2は、支軸70の軸心70a、連結部材回動軸72の軸心72aおよび可動掴持体部材回動軸74の軸心74aと垂直であり、かつ、固定掴持体部20の挟持溝24aに平行である。垂直平面P1は、連結部材案内部26のガイド孔28の内側を通るように構成されている。
【0041】
(c)可動掴持体部材
可動掴持体部材16は、
図5に示すように、断面形状がコの字状に形成され、前後において平行に並ぶ第1作動部材取付部92および第2作動部材取付部94を備えている。第1作動部材取付部92と第2作動部材取付部94とは、作動部材14の後部の上部に跨っている。第1作動部材取付部92には第1作動部材取付孔96が穿設され、第2作動部材取付部94には第2作動部材取付孔98が穿設されている。可動掴持体部材16は、一直線状に並列された第1作動部材取付孔96、第2作動部材取付孔98および作動部材14の可動掴持体部材取付孔62に貫挿された可動掴持体部材回動軸74によって、作動部材14に回動自在に取り付けられている。第1作動部材取付孔96、第2作動部材取付孔98および可動掴持体部材取付孔62は、同一径で、それらの孔の外周縁が平行になるように並列されている。
【0042】
さらに、第1作動部材取付部92と第2作動部材取付部94とは、それらが対向する面(それぞれの内面)が平行な垂直面であり、突条32の頂部32aおよび突条40の頂部40aに平行になるように作動部材14に取り付けられている。第1作動部材取付部92と第2作動部材取付部94とが対向する面(それぞれの内面)は、第1作動部材取付孔96および第2作動部材取付孔98の孔の外周縁の延びる方向と直交し、可動掴持体
部材回動軸74の軸心74aと直交する。作動部材14に取り付けられた可動掴持体部材16は、可動掴持体部材回動軸74の軸心74aを中心にして回動する。可動掴持体部材16の回動範囲は、作動部材14の揺動により上面が固定掴持体部20の線状体押さえ部24の下面と平行となる状態から外れるのを補正する程度の回動でよく、回動範囲は規制されている。
【0043】
可動掴持体部材16の上面には、線状体Wの下部を収容する線状体保持部22が形成されている。線状体保持部22は、その上面に、挟持溝22aが、固定掴持体部20の下面に形成された挟持溝24aと対向するように形成されている。挟持溝22aは、固定掴持体部20の線状体押さえ部24および可動掴持体部材16の線状体保持部22が延びる方向である左右軸を含む基準平面Pyzに平行に形成されている。
【0044】
(d)連結部材
前記連結部材18は、長尺状の連結部材本体部80と、前記連結部材本体部80の後端に設けたリング部130とを有している。
前記リング部130は、前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22とが延びる方向である左右軸を含む基準平面に対して、連結部材本体部80との境界から引っ張る方向に沿う軸線に沿って側部輪郭部まで所定の角度に折り曲げられている。
前記折り曲げられた領域は、線状体Wが前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22との間に掴持されたとき、前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22とが延びる方向に沿った方向であって、連結部材を引っ張る方向に沿った位置で、かつ、前記線状体保持部22と同等又は下方の位置である。
連結部材18は、作動部材14の向こう側において(すなわち架設部24c寄りにおいて)、作動部材14の下端より、引っ張る側の上方に向けてのびている。
【0045】
連結部材18は、線状体Wの径が細くて線状体押さえ部24と線状体保持部22とが近づいて線状体Wを掴持したとき及び線状体Wの径が太くて線状体押さえ部24と
線状体保持部22とが離れて線状体Wを掴持するときにおいて、連結部材回動軸72に取り付けられる部位が可動掴持体部材回動軸74の垂直下より引っ張る側に位置するとともに線状体Wの引張力がかかる基点tが線状体Wの中心線に近い位置に到達する長さを備えている(
図25〜27参照)。
連結部材18は、線状体Wの径が細くて線状体押さえ部24と線状体保持部22とが近づいて線状体Wを掴持したとき及び線状体Wの径が太くて線状体押さえ部24と
線状体保持部22とが離れて線状体Wを掴持するときにおいて、線状体保持部22の下方から線状体保持部22の高さと同等かそれより高い位置にのび且つ中腹で連結部材案内部26に支持される長さを備えている(
図25〜27参照)。
【0046】
連結部材18は、長尺の棒状体でかつ断面矩形状の連結部材本体部80と、連結部材本体部80の後端に設けたリング部130と、連結部材本体部80のリング部130側に設けた親指掛け部120とを有している。連結部材本体部80の前部には作動部材取付孔82が穿設されている。作動部材14の連結部材取付孔64と連結部材18の作動部材取付孔82とは、同一径で、その孔の外周縁を平行になるようにして並列されている。そして、連結部材18は、連結部材取付孔64から作動部材取付孔82に貫挿された連結部材回動軸72により、回動自在に作動部材14に取り付けられている。
【0047】
掴線器本体部材12の連結部材案内部26のガイド孔28は、掴線器本体部材12の支軸孔30と略々同じ高さに形成されており、作動部材14の掴線器本体部材取付孔60は、掴線器本体部材12の支軸孔30およびガイド孔28と略々同じ高さに形成されている。それゆえに、作動部材14の掴線器本体部材取付孔60より下方に形成された連結部材取付孔64に取り付けられた連結部材18は、ガイド孔28に貫挿されて、連結部材18を引っ張る側(
図1図示a方向)に向けて上昇する。
【0048】
連結部材18は、連結部材本体部80が、掴線器本体部材12の突条32の頂部32aおよび突条40の頂部40aと平行であり、かつ、固定掴持体部20の挟持溝24aおよび可動掴持体部材16の挟持溝22aの延びる方向に沿って延びるように、作動部材14に取り付けられている。連結部材18は、連結部材回動軸72の軸心72aを中心にして回動する。
【0049】
連結部材18の連結部材本体部80は、略直線状帯状体ないしは上方に行くに従ってわん曲した円弧状帯状体であり、上端縁と、上端縁に沿う下端縁とを備える。
連結部材18の連結部材本体部80は、左側の端部が連結部材回動軸72により作動部材14に回動自在に取り付けられ、且つ、中間が連結部材案内部26のガイド孔28に支持されている。
【0050】
連結部材案内部26のガイド孔28は、連結部材回動軸72の位置より後方であってその上方に位置しており、連結部材案内部26のガイド孔28に支持された連結部材18の連結部材本体部80は、後方の上方に向けてのびている。
連結部材18の連結部材本体部80は、その下端縁が連結部材案内部26のガイド孔28の下端に摺動自在に支持されている。
【0051】
図7A(
C)および
図8に示すように、連結部材本体部80は、固定掴持体部20の線状体押さえ部24および可動掴持体部材16の線状体保持部22が延びる方向である左右軸を含む基準平面Pyzに平行に延びる。基準平面Pyzは、固定掴持体部20と可動掴持体部材16との間に掴持された線状体Wの延びる方向である左右軸を含む平面でもある。
【0052】
リング部130は、平面視略楕円環であって、上輪郭部分132と下輪郭部分134と側輪郭部分136とを備える。
リング部130は、略卵形であり、連結部材本体部80側の領域が細く、連結部材本体部80側とは反対側の自由端領域が膨らんでいる。
【0053】
傾斜部分140の上側領域を形成する上輪郭部分132と下輪郭部分134の下側領域とは、連結部材本体部80とリング部130との境界部138より自由端側に行くに従ってその間の間隔が広がるテーパー状である。
下輪郭部分134は、自由端側である側輪郭部分136が、連結部材本体部80の下端縁よりやや下方に向けて下がっている。
【0054】
リング部130は、その中央に、線状体Wを引っ張るワイヤ等を挿入する引張り穴144が穿設されている。引張り穴144は、その後方すなわち引っ張る側の孔縁が張線装置のフック等を引っ掛け易くするために円弧状である。
【0055】
連結部材18は、リング部130の引張り穴144に張線装置のフック等を引っ掛けて引っ張るときに引張力がかかる、引張力がかかる基点tが線状体Wに近い位置になるように形成されている。さらに、可動掴持体部材16の線状体保持部22の高さに近い高さに、リング部130の引張力がかかる、引張力がかかる基点tが位置するように形成されている。
引張力がかかる基点tは、折り曲げ領域100の位置より上方に位置するように形成されている。
この構成によって、掴線器10が張線装置のフック等を引っ掛けて張線装置で引っ張られたとき、線状体Wの延びる方向と略々並行に引っ張ることができ、掴線器10を傾けたり、線状体Wを曲げ・回転させたりすることなく、引っ張ることができる。それは、線状体Wの径の大きさが変わっても、ほぼ同様である。
【0056】
リング部130は、折り曲げ領域100にて、固定掴持体部20の線状体押さえ部24と可動掴持体部材16の線状体保持部22とが延びる方向である左右軸を含む基準平面Pyzに対して、所定の角度で向こう側にリング部130の上側の領域が折り曲げられている。言い換えると、リング部130は、連結部材本体部80の主面に対して、リング部130の上側の領域が開口部36側より固定掴持体部20の架設部24c側に向けて折り曲げ領域100にて線状体Wを避けるように所定の角度で向こう側に折り曲げられてなる傾斜部分140と、連結部材本体部80の主面に対して平行な下輪郭部分134とを有している。リング部130は、引張り穴144の上側の領域を含む傾斜部分140を通る平面Pxzが、基準平面Pyzに斜交するように構成されている。一方、下輪郭部分134は基準平面Pyzに平行に形成されている。
線状体Wを掴線器10により掴むとき、リング部130の上側の領域が手前側から向こう側に向けて折り曲げられているので、掴線器10を把握部500にて把握して線状体Wに向けて持ち上げて線状体Wに近づけても、線状体Wがリング部130に干渉することなく、線状体押さえ部24と線状体保持部22との間に線状体Wを挟むことができる。
又、線状体Wに取り付けられた掴線器10の連結部材18のリング部130を張線器などで引っ張る側に向けて引っ張ったときも、リング部130の上側の領域が手前側から向こう側に向けて折り曲げられているので、リング部130が線状体Wに干渉されることなく引っ張ることができる。
【0057】
連結部材本体部80の軸線A1(連結部材回動軸72を通る)とリング部130の中心線A2(リング部130の引張力がかかる、引張力がかかる基点tを通る)とは、斜交している。
リング部130の長手方向の中心線A2は、傾斜部分140の上側領域を形成する上輪郭部分132と下輪郭部分134の下側領域との間を通る。
【0058】
折り曲げ領域100は、
図2に示すように、線状体Wが線状体押さえ部24と線状体保持部22との間に掴持されたとき、線状体押さえ部24と線状体保持部22とが延びる方向に略平行で、かつ、引張り穴144を通ってリング部130を亘る位置であって、線状体Wの下方の位置である。従って、リング部130は、線状体Wに近い側の領域である傾斜部分140の上側領域が、線状体押さえ部24と線状体保持部22との間に略々水平に掴持された線状体Wの向こう側に位置するように構成されている。言い換えると、傾斜部分140を通る平面Pxzは、リング部130の上側が線状体押さえ部24と線状体保持部22との間に略々水平に掴持された線状体Wの向こう側に位置するように、傾斜している。
【0059】
折り曲げ領域100は、連結部材本体部80の上端縁でリング部130の前側であって、連結部材本体部80とリング部130との境界より前側から、リング部130の後方側まで続いている。
折り曲げ領域100は、略々直線状であり、連結部材本体部80の軸線A1と斜交しており、下輪郭部分134の下側領域の引張り穴144側に続いている。
そして、折り曲げ領域100は、リング部130の後ろ側領域の下方に続いており、リング部130の後ろ側領域の下輪郭部分134の下側領域との境界の近傍に続き、リング部130の後ろ側領域を折り曲げられている。
折り曲げ領域100は、リング部130の中心線A2に近い位置において、該中心線A2と略々平行又はそれに近いすなわち該中心線A2とのなす角度が小さい角度でのびている。
折り曲げ領域100は、線状体Wの径が短い細い線状体Wであっても、又、線状体Wの径が長い太い線状体Wであっても、線状体Wののびる方向と略々平行であって、すなわち、線状体押さえ部24及び線状体保持部22ののびる方向と略々平行で又は線状体Wののびる方向に近いすなわちWののびる方向とのなす角度が小さい角度でのびるように形成されている。
【0060】
リング部130の折り曲げ領域100は、線状体Wの径が細くて線状体押さえ部24と線状体保持部22とが近づいて線状体Wを掴持したとき及び線状体Wの径が太くて線状体押さえ部24と
線状体保持部22とが離れて線状体Wを掴持するときにおいて、(正面視において)線状体保持部22の高さと略々同じ位置又はそれより僅かに高い若しくは僅かに低い位置に位置するように形成されている(
図25〜27参照)。
リング部130の折り曲げ領域100は、線状体Wの径が細くて線状体押さえ部24と線状体保持部22とが近づいて線状体Wを掴持したとき及び線状体Wの径が太くて線状体押さえ部24と
線状体保持部22とが離れて線状体Wを掴持するときにおいて、(正面視において)支軸70及び可動掴持体部材回動軸74の高さと略々同じ位置又はそれより僅かに高い若しくは僅かに低い位置に位置するように形成されている(
図25〜27参照)。
【0061】
リング部130は、折り曲げ加工によって、例えば鍛造よって所定の角度に折り曲げられているため、折り曲げ部分に係る機械的ストレスが小さく、連結部材18の機械的強度が殆んど変化しない。また、折り曲げは、少なくともリング部130を亘る折り曲げ領域100にて実行されているので、折り曲げ加工の際の機械的ストレスが、リング部130全体に分散されている。折り曲げ領域100は、そののびる方向が、リング部130の中心線A2(リング部130の引張力がかかる、引張力がかかる基点tを通る)と略々平行であるので、連結部材18の機械的強度の低下防止がより一層促され、耐久性に優れている。
【0062】
また、所定の角度は、線状体Wが線状体押さえ部24と線状体保持部22との間に掴持されたとき、線状体Wの外周面がリング部130の表面に近接するような角度である。
この発明の実施の形態においては、所定の角度、すなわち、固定掴持体部20の線状体押さえ部24と可動掴持体部材16の線状体保持部22とが延びる方向である左右軸を含む基準平面Pyzとリング部130の引張り穴144の上側の領域を含む傾斜部分140を通る平面Pxzとのなす角度は、25度であり、所定の角度は、15〜40度の範囲である。
所定の角度が15度未満であると、線状体Wに干渉する可能性が高まり、又、所定の角度が40度を超えると張線装置のフックもしくはベルトを引っ掛けて張線装置で引っ張るときに、線状体Wの延びる方向と略々平行に引っ張ることができにくくなる。
これにより、リング部130が線状体Wに確実に干渉することなく、線状体Wに近接する。従って、リング部130の中心線A2と線状体Wの中心との位置が大きく離れることはない。つまり、リング部130は、引張り穴144に取り付けられた張線装置のフックもしくはベルトを引っ張るとき、線状体Wの中心に近い位置において引っ張られるので、掴線器10が傾くことなく、また、線状体Wが屈曲することなく、線状体Wを引っ張ることができる。この結果、屈曲に起因する線状体Wの表面に生じる損傷などが抑制される。
【0063】
(e)把握部
この発明にかかる掴線器10は、人が片手で掴線器10を把持するための把握部500を備える。
把握部500は、主として、連結部材案内部26と連結部材本体部80と親指掛け部120とによって構成されている。
【0064】
連結部材案内部26の把握部500は、線状体保持部22及び線状体押さえ部24より高さ方向における下方であって、支軸孔30より上方に形成されている。
【0065】
連結部材案内部26は、向こう側面(背面側面)に、人の手の手の平と、人差し指の付け根の近傍とを宛がう手当て部150を備える。
掴線器本体部材12は、向こう側(背面側)に連結部材案内部26を形成された領域及び連結部材案内部26の上部の近傍において、人差し指を宛がう、人差指当て部152を備える。
掴線器本体部材12の連結部材案内部26は、手前側(正面側)に連結部材18の向こう側(背面側)から回してこられた中指の腹を宛がう領域に中指当て部154を備える。
掴線器本体部材12は、前方すなわち押し戻す側の面に中指の付け根の近傍を宛がう握り部156を備える。
握り部156は、宛てがわれた中指により後方(引っ張る側)に引かれる。
【0066】
連結部材案内部26は、ガイド孔28の手前側の本体部26aが中指当て部154を構成しており、中指当て部154は、線状体保持部22の挟持溝22aの下方において垂下されている。
連結部材案内部26は、中指当て部154を構成する本体部26aとは反対側すなわちガイド孔28を挟んだ向こう側の本体部26bが人差指当て部152を構成しており、人差指当て部152は、線状体押さえ部24の架設部24cの下方において垂下されている。
本体部26aと本体部26bとの間に形成されたガイド孔28は、連結部材18の連結部材本体部80が貫挿されている。
【0067】
掴線器本体部材12は、中指の先端から2番目の関節(P1P
関節)と指の根元の関節(MP関節)との間の指の上部で掴線器本体部材12を支える指当接部158を備える。
指当接部158は、可動掴持体部材支持部68より後方にのびる水平面を有し、連結部材案内部26の前方の面と交差する。
【0068】
親指掛け部120は、掴線器10を人の手で握ったときに親指を掛けるためのものである。このため、掴線器10を片手で安定して握り易い。突起状の親指掛け部120は、連結部材本体部80のリング部130側であって、固定掴持体部20の架設部24c側の領域の上部に形成され、連結部材本体部80に対して略直交するように、連結部材本体部80の向こう側に突出している。親指掛け部120は、連結部材18を引っ張る側(
図1図示a方向)に対して直交している。
親指掛け部120は、リング部130より前方にあり、且つ、連結部材案内部26は、親指掛け部120より前方に有る。
親指掛け部120及び連結部材案内部26は、線状体Wを挟持する線状体押さえ部24と線状体保持部22との後方部分より後方側であるが、リング部130より前方側である。
【0069】
連結部材本体部80は、掴線器10を把握するときに、中指及び薬指の腹を宛がう指当接部84を備える。
そして、親指掛け部120及び連結部材案内部26は、線状体押さえ部24と線状体保持部22に近い位置に形成されているために、重量のバランスが比較的良く、掴線器10を連結部材案内部26と親指掛け部120とに跨って手で持ち、掴線器10を持ち上げて線状体Wに引っ掛け易い。
この発明の実施の形態においては、連結部材案内部26と親指掛け部120との間の長さL1は、リング部130を後方に引いた状態において、親指掛け部120に親指を引っ掛け、連結部材案内部26の前方端に人差指、中指及び薬指を引っ掛けて把握するために、親指と人差し指との間の長さL2が3〜6cmとすると、それに対応する長さに形成されている。
【0070】
前記連結部材18は、長尺状の連結部材本体部80と、前記連結部材本体部80の後端に設けたリング部130とを有し、
前記連結部材18の掴線器を人の手で握ったときに親指が掛かる親指掛け部120は、連結部材本体部80のリング部130側であって、固定掴持体部20の架設部24c側の領域に形成されている。
前記リング部130は、前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22とが延びる方向である左右軸を含む基準平面に対して、リング部130と連結部材本体部80との境界から引っ張る方向に沿う軸線に沿って側部輪郭部まで所定の角度に折り曲げられている。
前記折り曲げられた領域は、線状体Wが前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22との間に掴持されたとき、前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22とが延びる方向に沿った方向であって、
連結部材を引っ張る方向に沿った位置で、かつ、前記線状体保持部22と同等又は下方の位置である。
かかる折り曲げられた領域の折り曲げは、鍛造で形成することがあるが、該折り曲げ時に親指掛け部120も同時に鍛造によって折り曲げられる。そこで、親指掛け部120の最上端は、折り曲げられた領域を折り曲げのできる位置において、折り曲げの高さと同じかそれよりも若干低い形状となる。
(f)カバー部
材
カバー部材19は、正面視略四角形状であり、掴線器本体部材12にカバー部材回動軸210により回動可能に取り付けられている。カバー部材19は、固定掴持体部20の線状体押さえ部24および可動掴持体部材16の線状体保持部22によって掴持された線状体Wが掴線器10から外れるのを防止するためのものである。カバー部材19は、固定掴持体部20の線状体押さえ部24および可動掴持体部材16の線状体保持部22の延びる方向である左右軸を含む基準平面Pyzに平行に形成されている。
【0071】
カバー部材19は、前方の内角部分に、カバー部材回動軸210を挿入する掴線器本体部材取付孔170が穿設され、後方の上部の内角部分に、カバー部材19を手で回動させる際に利用する引掛け孔174が穿設されている。カバー部材19の中央部には、カバー部材回動軸210を中心にした円弧状の可動域規制長孔176が穿設されている。可動域規制長孔176は、押圧体220と協働してカバー部材19の回動域を規制するためのものである。押圧体220は、カバー部材回動軸210と比較して後方(右側)に位置している。掴線器本体部材取付孔170と掴線器本体部材12のカバー部材取付孔160とは同一の孔径で、その孔の外周縁を平行にして並列される。可動域規制長孔176の孔径は、掴線器本体部材12の螺子孔162の孔径より若干大きく設定されており、カバー部材19を回動させたとき、押圧体220が可動域規制長孔176の外周縁に接触することなく円滑に移動できるように構成されている。
【0072】
図10に示すように、カバー部材19は、掴線器本体部材12の上部の固定掴持体部20上に載せられ、カバー部材取付孔160と掴線器本体部材取付孔170とを一直線状に並列されて、カバー部材回動軸210を枢軸として回動自在に掴線器本体部材12に取り付けられている。カバー部材19は、掴線器本体部材12の固定掴持体部20の線状体押さえ部24の延びる方向と平行に回動する。そのとき、カバー部材19の向こう側面が、固定掴持体部20の線状体押さえ部24および可動掴持体部材16の線状体保持部22のそれぞれの手前側面に摺接する。
【0073】
カバー部材回動軸210は、長さ方向に延びる軸心210aを有する円柱状で、その手前側に軸心210aに交差する方向に突き出た鍔部210bを備えている。カバー部材回動軸210は、カバー部材19の掴線器本体部材取付孔170に手前側から嵌挿され、掴線器本体部材12のカバー部材取付孔160に螺着されて、掴線器本体部材12およびカバー部材19に取り付けられる。カバー部材回動軸210の軸心210aは、カバー部材19の回動の中心となる。
【0074】
押圧体220は、長さ方向に延びる軸心220aを有する円柱状で、その手前側に軸心220aに交差する方向に突き出た鍔部220bを備えている。押圧体220は、カバー部材19の可動域規制長孔176に手前側から嵌挿され、掴線器本体部材12に進退自在に取り付けられている。押圧体220は、鍔部220bを回転操作して掴線器本体部材12の螺子孔162との螺合によって進退移動できる。押圧体220は、ワッシャー180を介してカバー部材19が掴線器本体部材12の手前側面を押圧する位置まで進出移動させることによって、カバー部材19を掴線器本体部材12に位置決め(固定)する。そして、カバー部材19を回動するときは、押圧体220を後退移動させて緩め、カバー部材19が掴線器本体部材12の手前側面を押圧するのを解除する。
【0075】
2.掴線器の操作
(a)掴線器を線状体へ取り付ける手順
次に、以上の構成からなる掴線器10を線状体Wへ取り付ける手順について説明する。
図11に示すように、掴線器10が掴線器本体部材12側を上にして持ち上げられるとき、人の一方の手(左手)で作動部材14と連結部材18との連結部分を把持し、人の他方の手(右手)で把握部500を構成する、掴線器本体部材12の連結部材案内部26と連結部材18とを握る。
そのとき、人の指の付け根に近い手の平に連結部材18(向こう側面)を当て、中指、薬指及び小指を折り曲げてそれらの指の腹を連結部材18の手前側面に当て、母指球を連結部材18の向こう側面に当接させる。
親指は、曲げられて親指掛け部120に親指の人差指側の面を掛ける。
人差指は、伸ばして連結部材案内部26の向こう側面及び掴線器本体部材12の向こう側面に当接させる。
中指は、曲げられて連結部材案内部26の手前側(正面側)に、指の腹を添える。
【0076】
そして、中指と親指とが近づくようにして、
図3に示す矢印に示すように、連結部材18を押し戻す側方向(
図3に示すb方向)に押し、連結部材案内部26と親指掛け部120との間隔が縮められる。これにより、可動掴持体部材16の線状体保持部22が固定掴持体部20の線状体押さえ部24から充分に離れた状態になり、線状体押さえ部24と線状体保持部22との間に線状体Wが通し易くなる。
【0077】
次に、
図13に示すように、線状体Wが、線状体押さえ部24と線状体保持部22との間に挿通され、線状体押さえ部24の下面に形成された挟持溝24aに、線状体Wの上部が収容され、掴線器10が線状体Wに吊り下げられた状態とされる。
【0078】
次に、
図12に示すように、カバー部材19を位置決めしている押圧体220が緩められ、カバー部材19が可動域規制長孔176によって可動域を規制されながら、カバー部材回動軸210の軸心210aを中心にして下向き方向(
図14に示すd方向)に下方に回動される。こうして、カバー部材19が、線状体押さえ部24と線状体保持部22との間の手前側の開口部を略半分塞ぐ。その後、押圧体220が、鍔部220bの回転操作によって掴線器本体部材12の螺子孔162との螺合により進退移動し、ワッシャー180を介してカバー部材19が掴線器本体部材12の手前側面を押圧する位置まで進出移動させることによって、カバー部材19を掴線器本体部材12に位置決め(固定)する。
【0079】
この掴線器10の線状体Wへの取り付けが、線状体Wである電線の振り分け工事に適用される場合には、電線を両側から引き寄せる作用をなす
図15に示すように、張線装置の両端には、連結部材18のリング部130の引張り穴144を利用して、掴線器10に連結する連結手段300が設けられる。張線装置は両端に連結した後、その長さを縮める操作がなされることにより、掴線器10の連結部材18には、引っ張る側(
図15に示すa方向)に引っ張る力が加わる。
【0080】
掴線器10は、
図15に示すように、連結部材18が引っ張る側方向(
図15に示す矢印a方向)に引っ張られると、連結部材18の一端側が連結された作動部材14は支軸70を支点として上向き矢印方向(
図15に示すc方向)に回動する。この作動部材14の回動により、可動掴持体部材16は固定掴持体部20の方向に押し上げられ、線状体保持部22の挟持溝22aに線状体Wの下部が収容されて、固定掴持体部20の線状体押さえ部24と線状体保持部22との間に、線状体Wが挟み込まれて掴持される。
【0081】
張線装置により更に引っ張る側方向(
図3に示す矢印a方向)への引っ張り力が加えられると、掴線器10によって掴持された線状体Wは、引っ張る側方向(
図3に示す矢印a方向)矢印a方向に引っ張られるので、これによって両側の掴線器10が互いに引き寄せられるようになり、両側の掴線器10の間にある線状体Wは、弛みが生じた状態となり、振り分け工事を実施できる状態が得られる。
【0082】
上記のように掴線器10の取り付け作業は、線状体Wに掴線器10を装着させる作業および連結部材18に張線装置等の連結手段300を連結する作業を、全て正面側から実施することができるので、高所作業で危険作業でもある電線の振り分け工事などを容易かつ安全に行うことができる。
【0083】
(b)掴線器を線状体から取り外す手順
次に、掴線器10を線状体Wから取り外す手順について説明する。
図16に示すように、掴線器10のリング部130の引張り穴144に連結された張線装置等による連結手段300を解除し、連結部材18に対する引っ張り力を解除する。
【0084】
その後、カバー部材19を位置決めしている押圧体220が緩められ、カバー部材19が可動域規制長孔176によって可動域を規制されながら、カバー部材回動軸210の軸心210aを中心にして、引掛け孔174を手で引掛けるなどして上向き矢印方向(図
14に示すd方向とは反対側の方向)に上方に回動される。こうして、カバー部材19が、線状体押さえ部24と線状体保持部22との間の手前側の開口部を開口する。その後、押圧体220が、鍔部220bの回転操作によって掴線器本体部材12の螺子孔162との螺合により進退移動し、ワッシャー180を介してカバー部材19が掴線器本体部材12の手前側面を押圧する位置まで進出移動させることによって、カバー部材19を掴線器本体部材12に位置決め(固定)する。
【0085】
次に、掴線器本体部材12の連結部材案内部26と連結部材18とが人の手で握られる。そのとき、掴線器10が掴線器本体部材12側を上にして持ち上げられるとき、人の一方の手(左手)で作動部材14と連結部材18との連結部分を把持し、人の他方の手(右手)で把握部500を構成する、掴線器本体部材12の連結部材案内部26と連結部材18とを握る。
そのとき、人の指の付け根に近い手の平に連結部材18(向こう側面)を当て、中指、薬指及び小指を折り曲げてそれらの指の腹を連結部材18の手前側面に当て、母指球を連結部材18の向こう側面に当接させる。
親指は、曲げられて親指掛け部120に親指の人差指側の面を掛ける。
人差指は、伸ばして連結部材案内部26の向こう側面及び掴線器本体部材12の向こう側面に当接させる。
中指は、曲げられて連結部材案内部26の手前側(正面側)に、指の腹を添える。
【0086】
そして、中指と親指とが近づくようにして、矢印に示すように、連結部材18を押し戻す側に押し、連結部材案内部26と親指掛け部120との間隔が縮められる。これにより、可動掴持体部材16の線状体保持部22が固定掴持体部20の線状体押さえ部24から充分に離れた状態になる。可動掴持体部材16は線状体Wから離れるので、線状体Wの掴持が解除され、そのために、線状体Wから固定掴持体部20を外して掴線器10を取り外すことができる。
【0087】
次に、この発明にかかる別の実施の形態である掴線器1000について、主として
図19ないし
図24に基づいて説明する。
この実施の形態である掴線器1000は、
図1図示実施の形態である掴線器10とは、連結部材18の構成が異なる。
【0088】
この発明にかかる第2の実施の形態である掴線器1000は、線状体押さえ部24を有する固定掴持体部20を設けた掴線器本体部材12と、
前記掴線器本体部材12に支軸70により揺動可能に取り付けられた作動部材14と、
前記作動部材14の揺動により、前記固定掴持体部20の線状体押さえ部24に向けて揺動する、線状体保持部22を有する可動掴持体部材16と、
前記作動部材14に回動軸により連結され、作動部材14を揺動させる連結部材18と、を備える掴線器1000である。
前記連結部材18は、長尺状の連結部材本体部80と、前記連結部材本体部80の後端に設けたリング部130とを有し、前記リング部130は、前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22とが延びる方向である左右軸を含む基準平面に対して、連結部材本体部80との境界から引っ張る方向に沿う軸線に沿って側部輪郭部まで所定の角度に折り曲げられている。
前記折り曲げられた領域は、線状体Wが前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22との間に掴持されたとき、前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22とが延びる方向に沿った方向であって、連結部材を引っ張る方向に沿った位置で、かつ、前記線状体保持部22と同等又は下方の位置である。
【0089】
前記掴線器本体部材12、前記作動部材14及び前記可動掴持体部材16に、連結部材18より多くの重量が配分されて、連結部材18を引っ張る側より押し戻す側が重い重量配分に設定されている。
重心に近い領域及び/又は連結部材を引っ張る側に掴線器1000を把握するための把握部1500が備えられており、前記把握部1500は、連結部材18の連結部材本体部80と、掴線器本体部材12の引っ張る側において下方に向けて突設された連結部材案内部26とにより構成され、該把握部1500を指及び/又は手の平で把握するように形成されている。
カバー部材19を備えた掴線器1000の重心Gは、連結部材18が押し戻す側に位置しているとき(第1の状態)、可動掴持体部材回動軸74の近傍に位置している。
連結部材18を(前記第1の状態より)少しだけ引っ張る側に位置しているとき(第2の状態)、カバー部材19を備えた掴線器1000の重心G1は、可動掴持体部材回動軸74より少し引っ張る側に位置している。
前記第2の状態より更に引っ張ったとき(第3の状態)、カバー部材19を備えた掴線器1000の重心G2は、前記重心G1の位置より更に引っ張る側に位置する。
カバー部材19を備えない掴線器1000の重心G3は、前記第1の状態より少し下方に位置したところに位置している。
【0090】
(a)連結部材
前記連結部材18は、長尺状の連結部材本体部80と、前記連結部材本体部80の後端に設けたリング部130とを有している。
前記リング部130は、前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22とが延びる方向である左右軸を含む基準平面に対して、連結部材本体部80との境界から引っ張る方向に沿う軸線に沿って側部輪郭部まで所定の角度に折り曲げられている。
前記折り曲げられた領域は、線状体Wが前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22との間に掴持されたとき、前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22とが延びる方向に沿った方向であって、連結部材を引っ張る方向に沿った位置で、かつ、前記線状体保持部22と同等又は下方の位置である。
連結部材18は、作動部材14の向こう側において(すなわち架設部24c寄りにおいて)、作動部材14の下端より、引っ張る側の上方に向けてのびている。
【0091】
連結部材18は、線状体Wの径が細くて線状体押さえ部24と線状体保持部22とが近づいて線状体Wを掴持したとき及び線状体Wの径が太くて線状体押さえ部24と
線状体保持部22とが離れて線状体Wを掴持するときにおいて、連結部材回動軸72に取り付けられる部位が可動掴持体部材回動軸74の垂直下より引っ張る側に位置するとともに線状体Wの引張力がかかる基点tが線状体Wの中心線に近い位置に到達する長さを備えている(
図25〜27参照)。
連結部材18は、線状体Wの径が細くて線状体押さえ部24と線状体保持部22とが近づいて線状体Wを掴持したとき及び線状体Wの径が太くて線状体押さえ部24と
線状体保持部22とが離れて線状体Wを掴持するときにおいて、線状体保持部22の下方から線状体保持部22の高さと同等かそれより高い位置にのび且つ中腹で連結部材案内部26に支持される長さを備えている(
図25〜27参照)。
【0092】
連結部材18は、長尺の棒状体でかつ断面矩形状の連結部材本体部80と、連結部材本体部80の後端に設けたリング部130と、連結部材本体部80のリング部130側に設けた親指掛け部120とを有している。連結部材本体部80の前部には作動部材取付孔82が穿設されている。作動部材14の連結部材取付孔64と連結部材18の作動部材取付孔82とは、同一径で、その孔の外周縁を平行になるようにして並列されている。そして、連結部材18は、連結部材取付孔64から作動部材取付孔82に貫挿された連結部材回動軸72により、回動自在に作動部材14に取り付けられている。
【0093】
掴線器本体部材12の連結部材案内部26のガイド孔28は、掴線器本体部材12の支軸孔30と略々同じ高さに形成されており、作動部材14の掴線器本体部材取付孔60は、掴線器本体部材12の支軸孔30およびガイド孔28と略々同じ高さに形成されている。それゆえに、作動部材14の掴線器本体部材取付孔60より下方に形成された連結部材取付孔64に取り付けられた連結部材18は、ガイド孔28に貫挿されて、連結部材18を引っ張る側(
図19図示a方向)に向けて上昇する。
【0094】
連結部材18は、連結部材本体部80が、掴線器本体部材12の突条32の頂部32aおよび突条40の頂部40aと平行であり、かつ、固定掴持体部20の挟持溝24aおよび可動掴持体部材16の挟持溝22aの延びる方向に沿って延びるように、作動部材14に取り付けられている。連結部材18は、連結部材回動軸72の軸心72aを中心にして回動する。
【0095】
連結部材18の連結部材本体部80は、略直線状帯状体ないしは上方に行くに従ってわん曲した円弧状帯状体であり、上端縁と、上端縁に沿う下端縁とを備える。
連結部材18の連結部材本体部80は、左側の端部が連結部材回動軸72により作動部材14に回動自在に取り付けられ、且つ、中間が連結部材案内部26のガイド孔28に支持されている。
【0096】
連結部材案内部26のガイド孔28は、連結部材回動軸72の位置より後方であってその上方に位置しており、連結部材案内部26のガイド孔28に支持された連結部材18の連結部材本体部80は、後方の上方に向けてのびている。
連結部材18の連結部材本体部80は、その下端縁が連結部材案内部26のガイド孔28の下端に摺動自在に支持されている。
【0097】
図23A(
D)および
図23Cに示すように、連結部材本体部80は、固定掴持体部20の線状体押さえ部24および可動掴持体部材16の線状体保持部22が延びる方向である左右軸を含む基準平面Pyzに平行に延びる。基準平面Pyzは、固定掴持体部20と可動掴持体部材16との間に掴持された線状体Wの延びる方向である左右軸を含む平面でもある。
【0098】
リング部130は、平面視略楕円環であって、上輪郭部分132と下輪郭部分134と側輪郭部分136とを備える。
リング部130は、略卵形であり、連結部材本体部80側の領域が細く、連結部材本体部80側とは反対側の自由端領域が膨らんでいる。
【0099】
傾斜部分140の上側領域を形成する上輪郭部分132と下輪郭部分134の下側領域とは、連結部材本体部80とリング部130との境界部138より自由端側に行くに従ってその間の間隔が広がるテーパー状である。
下輪郭部分134は、自由端側である側輪郭部分136が、連結部材本体部80の下端縁よりやや下方に向けて下がっている。
【0100】
リング部130は、その中央に、線状体Wを引っ張るワイヤ等を挿入する引張り穴144が穿設されている。引張り穴144は、その後方すなわち引っ張る側の孔縁が張線装置のフック等を引っ掛け易くするために円弧状である。
【0101】
連結部材18は、リング部130の引張り穴144に張線装置のフック等を引っ掛けて引っ張るときに、引張力がかかる、引張力がかかる基点tが線状体Wに近い位置になるように形成されている。さらに、可動掴持体部材16の線状体保持部22の高さに近い高さに、リング部130の引張力がかかる、引張力がかかる基点tが位置するように形成されている。
引張力がかかる基点tは、折り曲げ領域100の位置より上方に位置するように形成されている。
この構成によって、掴線器10が張線装置のフック等を引っ掛けて張線装置で引っ張られたとき、線状体Wの延びる方向と略々並行に引っ張ることができ、掴線器10を傾けたり、線状体Wを曲げ・回転させたりすることなく、引っ張ることができる。それは、線状体Wの径の大きさが変わっても、ほぼ同様である。
【0102】
リング部130は、折り曲げ領域100にて、固定掴持体部20の線状体押さえ部24と可動掴持体部材16の線状体保持部22とが延びる方向である左右軸を含む基準平面Pyzに対して、所定の角度で向こう側にリング部130の上側の領域が折り曲げられている。言い換えると、リング部130は、連結部材本体部80の主面に対して、リング部130の上側の領域が開口部36側より固定掴持体部20の架設部24c側に向けて折り曲げ領域100にて線状体Wを避けるように所定の角度で向こう側に折り曲げられてなる傾斜部分140と、連結部材本体部80の主面に対して平行な下輪郭部分134とを有している。リング部130は、引張り穴144の上側の領域を含む傾斜部分140を通る平面Pxzが、基準平面Pyzに斜交するように構成されている。一方、下輪郭部分134は基準平面Pyzに平行に形成されている。
線状体Wを掴線器10により掴むとき、リング部130の上側の領域が手前側から向こう側に向けて折り曲げられているので、掴線器10を把握部500にて把握して線状体Wに向けて持ち上げて線状体Wに近づけても、線状体Wがリング部130に干渉することなく、線状体押さえ部24と線状体保持部22との間に線状体Wを挟むことができる。
又、線状体Wに取り付けられた掴線器10の連結部材18のリング部130を張線器などで引っ張る側に向けて引っ張ったときも、リング部130の上側の領域が手前側から向こう側に向けて折り曲げられているので、リング部130が線状体Wに干渉されることなく引っ張ることができる。
【0103】
連結部材本体部80の軸線A1(連結部材回動軸72を通る)とリング部130の中心線A2(リング部130の引張力がかかる、引張力がかかる基点tを通る)とは、斜交している。
リング部130の長手方向の中心線A2は、傾斜部分140の上側領域を形成する上輪郭部分132と下輪郭部分134の下側領域との間を通る。
【0104】
折り曲げ領域100は、
図21に示すように、線状体Wが線状体押さえ部24と線状体保持部22との間に掴持されたとき、線状体押さえ部24と線状体保持部22とが延びる方向に略平行で、かつ、引張り穴144を通ってリング部130を亘る位置であって、線状体Wの下方の位置である。従って、リング部130は、線状体Wに近い側の領域である傾斜部分140の上側領域が、線状体押さえ部24と線状体保持部22との間に略々水平に掴持された線状体Wの向こう側に位置するように構成されている。言い換えると、傾斜部分140を通る平面Pxzは、リング部130の上側が線状体押さえ部24と線状体保持部22との間に略々水平に掴持された線状体Wの向こう側に位置するように、傾斜している。
【0105】
折り曲げ領域100は、連結部材本体部80の上端縁でリング部130の前側であって、連結部材本体部80とリング部130との境界より前側から、リング部130の後方側まで続いている。
折り曲げ領域100は、略々直線状であり、連結部材本体部80の軸線A1と斜交しており、下輪郭部分134の下側領域の引張り穴144側に続いている。
そして、折り曲げ領域100は、リング部130の後ろ側領域の下方に続いており、リング部130の後ろ側領域の下輪郭部分134の下側領域との境界の近傍に続き、リング部130の後ろ側領域を折り曲げられている。
折り曲げ領域100は、リング部130の中心線A2に近い位置において、該中心線A2と略々平行又はそれに近いすなわち該中心線A2とのなす角度が小さい角度でのびている。
折り曲げ領域100は、線状体Wの径が短い細い線状体Wであっても、又、線状体Wの径が長い太い線状体Wであっても、線状体Wののびる方向と略々平行であって、すなわち、線状体押さえ部24及び線状体保持部22ののびる方向と略々平行で又は線状体Wののびる方向に近いすなわちWののびる方向とのなす角度が小さい角度でのびるように形成されている。
【0106】
リング部130の折り曲げ領域100は、線状体Wの径が細くて線状体押さえ部24と線状体保持部22とが近づいて線状体Wを掴持したとき及び線状体Wの径が太くて線状体押さえ部24と
線状体保持部22とが離れて線状体Wを掴持するときにおいて、(正面視において)線状体保持部22の高さと略々同じ位置又はそれより僅かに高い若しくは僅かに低い位置に位置するように形成されている(
図25〜27参照)。
リング部130の折り曲げ領域100は、線状体Wの径が細くて線状体押さえ部24と線状体保持部22とが近づいて線状体Wを掴持したとき及び線状体Wの径が太くて線状体押さえ部24と
線状体保持部22とが離れて線状体Wを掴持するときにおいて、(正面視において)支軸70及び可動掴持体部材回動軸74の高さと略々同じ位置又はそれより僅かに高い若しくは僅かに低い位置に位置するように形成されている(
図25〜27参照)。
【0107】
リング部130は、折り曲げ加工によって、例えば鍛造よって所定の角度に折り曲げられているため、折り曲げ部分に係る機械的ストレスが小さく、連結部材18の機械的強度が殆んど変化しない。また、折り曲げは、少なくともリング部130を亘る折り曲げ領域100にて実行されているので、折り曲げ加工の際の機械的ストレスが、リング部130全体に分散されている。折り曲げ領域100は、そののびる方向が、リング部130の中心線A2(リング部130の引張力がかかる、引張力がかかる基点tを通る)と略々平行であるので、連結部材18の機械的強度の低下防止がより一層促され、耐久性に優れている。
【0108】
また、所定の角度は、線状体Wが線状体押さえ部24と線状体保持部22との間に掴持されたとき、線状体Wの外周面がリング部130の表面に近接するような角度である。
この発明の実施の形態においては、所定の角度、すなわち、固定掴持体部20の線状体押さえ部24と可動掴持体部材16の線状体保持部22とが延びる方向である左右軸を含む基準平面Pyzとリング部130の引張り穴144の上側の領域を含む傾斜部分140を通る平面Pxzとのなす角度は、25度であり、所定の角度は、15〜40度の範囲である。
所定の角度が15度未満であると、線状体Wに干渉する可能性が高まり、又、所定の角度が40度を超えると張線装置のフックもしくはベルトを引っ掛けて張線装置で引っ張るときに、線状体Wの延びる方向と略々平行に引っ張ることができにくくなる。
これにより、リング部130が線状体Wに確実に干渉することなく、線状体Wに近接する。従って、リング部130の中心線A2と線状体Wの中心との位置が大きく離れることはない。つまり、リング部130は、引張り穴144に取り付けられた張線装置のフックもしくはベルトを引っ張るとき、線状体Wの中心に近い位置において引っ張られるので、掴線器10が傾くことなく、また、線状体Wが屈曲することなく、線状体Wを引っ張ることができる。この結果、屈曲に起因する線状体Wの表面に生じる損傷などが抑制される。
【0109】
(b)把握部
この発明にかかる第2の実施の形態にかかる掴線器1000は、人が片手で掴線器1000を把持するための把握部1500を備える。
把握部1500は、主として、連結部材案内部26と連結部材本体部80と親指掛け部1120とによって構成されている。
【0110】
連結部材案内部26の把握部1500は、線状体保持部22及び線状体押さえ部24より高さ方向における下方であって、支軸孔30より上方に形成されている。
【0111】
連結部材案内部26は、向こう側面(背面側面)に、人の手の手の平と、人差し指の付け根の近傍とを宛がう手当て部150を備える。
掴線器本体部材12は、向こう側(背面側)に連結部材案内部26を形成された領域及び連結部材案内部26の上部の近傍において、人差し指を宛がう、人差指当て部152を備える。
掴線器本体部材12の連結部材案内部26は、手前側(正面側)に連結部材18の向こう側(背面側)から回してこられた中指の腹を宛がう、領域を備える。
掴線器本体部材12は、前方すなわち押し戻す側の面に中指の付け根の近傍を宛がう握り部156を備える。
握り部156は、宛てがわれた中指により後方(引っ張る側)に引かれる。
【0112】
連結部材案内部26は、ガイド孔28の手前側の本体部26aが中指当て部154を構成しており、中指当て部154は、線状体保持部22の挟持溝22aの下方において垂下されている。
連結部材案内部26は、中指当て部154を構成する本体部26aとは反対側すなわちガイド孔28を挟んだ向こう側の本体部26bが人差指当て部152を構成しており、人差指当て部152は、線状体押さえ部24の架設部24cの下方において垂下されている。
本体部26aと本体部26bとの間に形成されたガイド孔28は、連結部材18の連結部材本体部80が貫挿されている。
【0113】
掴線器本体部材12は、中指の先端から2番目の関節(P1P
関節)と指の根元の関節(MP関節)との間の指の上部で掴線器本体部材12を支える指当接部158を備える。
指当接部158は、可動掴持体部材支持部68より後方にのびる水平面を有し、連結部材案内部26の前方の面と交差する。
【0114】
親指掛け部1120は、掴線器1000を人の手で握ったときに親指を掛けるためのものである。このため、掴線器1000を片手で安定して握り易い。突起状の親指掛け部1120は、連結部材本体部80のリング部130側であって、固定掴持体部20の架設部24c側の領域の高さ方向における中部に形成され、連結部材本体部80に対して略直交するように、連結部材本体部80の向こう側(背面側)に突出している。親指掛け部1120は、連結部材18を引っ張る側(
図19図示a方向)に対して直交している。
親指掛け部1120は、リング部130より前方にあり、且つ、連結部材案内部26は、親指掛け部1120より前方に有る。
親指掛け部1120及び連結部材案内部26は、線状体Wを挟持する線状体押さえ部24と線状体保持部22との後方部分より後方側であるが、リング部130より前方側である。
【0115】
親指掛け部1120の最上端は、リング部130の中心線A2より低い位置であり、且つ折り曲げられた領域を折り曲げのできる位置において、折り曲げの高さと同じかそれよりも若干低い形状となる。親指掛け部1120は、リング部130の中心線A2より低い位置にあるので、掴線器1000を把握部1500にて把握して線状体Wに向けて持ち上げて線状体Wに近づけるとき及び線状体押さえ部24と線状体保持部22との間に線状体Wを挟むときにおいて、線状体Wが親指掛け部1120に掛けた親指に干渉することがない。
【0116】
連結部材本体部80は、掴線器1000を把握するときに、中指及び薬指の腹を宛がう指当接部84を備える。
そして、親指掛け部1120及び連結部材案内部26は、線状体押さえ部24と線状体保持部22に近い位置に形成されているために、重量のバランスが比較的良く、掴線器1000を連結部材案内部26と親指掛け部1120とに跨って手で持ち、掴線器1000を持ち上げて線状体Wに引っ掛け易い。
この発明の実施の形態においては、連結部材案内部26と親指掛け部1120との間の長さL1は、リング部130を後方に引いた状態において、親指掛け部1120に親指を引っ掛け、連結部材案内部26の前方端に人差指、中指及び薬指を引っ掛けて把握するために、親指と人差し指との間の長さL2が3〜6cmとすると、それに対応する長さに形成されている。
【0117】
前記連結部材18は、長尺状の連結部材本体部80と、前記連結部材本体部80の後端に設けたリング部130とを有し、
前記連結部材18の掴線器を人の手で握ったときに親指が掛かる親指掛け部1120は、連結部材本体部80のリング部130側であって、固定掴持体部20の架設部24c側の領域に形成されている。
前記リング部130は、前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22とが延びる方向である左右軸を含む基準平面に対して、リング部130と連結部材本体部80との境界から引っ張る方向に沿う軸線に沿って側部輪郭部まで所定の角度に折り曲げられている。
前記折り曲げられた領域は、線状体Wが前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22との間に掴持されたとき、前記線状体押さえ部24と前記線状体保持部22とが延びる方向に沿った方向であって、
連結部材を引っ張る方向に沿った位置で、かつ、前記線状体保持部22と同等又は下方の位置である。
かかる折り曲げられた領域の折り曲げは、鍛造で形成することがある。
親指掛け部1120の最上端は、リング部130の中心線A2より低い位置であり、且つ折り曲げられた領域を折り曲げのできる位置において、折り曲げの高さと同じかそれよりも若干低い形状となる。親指掛け部1120は、リング部130の中心線A2より低い位置にあるので、掴線器1000を把握部1500にて把握して線状体Wに向けて持ち上げて線状体Wに近づけるとき及び線状体押さえ部24と線状体保持部22との間に線状体Wを挟むときにおいて、線状体Wが親指掛け部1120に掛けた親指に干渉することがない。
【0118】
以上のように、本発明の実施の形態は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施の形態に対し、機序、形状、材質、数量、位置又は配置等に関して、様々の変更を加えることができるものであり、それらは、本発明に含まれるものである。
掴線器10は、固定掴持体部20及び連結部材案内部26を設けた掴線器本体部材12と、掴線器本体部材12に揺動可能に取り付けられた作動部材14と、線状体保持部22を有する可動掴持体部材16と、前記作動部材14に回動軸72により連結され、作動部材14を揺動させる連結部材72と、を備え、前記掴線器本体部材12、前記作動部材14及び前記可動掴持体部材16に、連結部材72より多くの重量が配分されて、連結部材72を引っ張る側より押し戻す側が重い重量配分に設定され、重心に近い領域及び連結部材72を引っ張る側に掴線器を把握するための把握部500を備え、把握部500は、連結部材72の連結部材本体部と、掴線器本体部材12の引っ張る側において下方に向けて突設された連結部材案内部26とにより構成され、指及び/又は手の平で把握するように形成されている。