(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対のリード導体部の間に被加熱物の外周形状に沿うようにして加熱導体部が延出され、前記リード導体部又は加熱導体部に形成される屈曲部を少なくとも含み、内部に冷却水を流す冷却水流路を有する一又は二以上の内部中空の角パイプ部材よりなる高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法において、
予備加工部材の表面に前記冷却水流路の形状に沿って溝部を削り出し加工にて形成し、前記溝部の内側縁部に沿って段部を形成する第一加工工程と、
前記予備加工部材に形成された溝部の前記段部に、開口面の形状に合わせて形成される前記予備加工部材と同じ母材よりなる蓋部材を、予備加工部材の表面が略水平面状となるように係止させ、係止部分に沿って周辺部分を溶融させて溶融溶接にて取り付ける第二加工工程と、
前記蓋部材が溶融溶接された予備加工部材より内部中空の角パイプ部材を削り出し加工にて形成し、前記蓋部材の取り付け面の表面を薄層切削して平滑に仕上げる第三加工工程と、
を有してなることを特徴とする高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法。
前記角パイプ部材の屈曲部を除く箇所に設けられた接合端面を突き合わせ状態で溶融溶接して二以上の角パイプ部材を組み付ける第四加工工程を有する請求項1に記載の高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法。
前記第三加工工程では、前記一方の角パイプ部材の接合端面、及び他方の角パイプ部材の接合端面をインロー形状に形成する請求項2に記載の高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法。
前記第一加工工程では、前記屈曲部のコーナ部の内面側がR面状となるように前記溝部を加工する請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の高周波焼入れに用いる誘導加熱コイルの製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、誘導加熱を利用して鋼製部材などの被加熱物を所定の焼入れ温度に加熱し、急冷する高周波焼入れ装置の構成が公知である。このような高周波焼入れ装置には、通常、被加熱物を誘導加熱するために、被加熱物の形状(外周形状等)に沿って形成された加熱導体部を有する誘導加熱コイルが用いられる。被加熱物としては、例えば、自動車エンジン用クランクシャフト等の軸状部材などがあり、被加熱物の形状に応じて誘導加熱コイルが様々に構成される。
【0003】
誘導加熱コイルとしては、一般的には、高周波電源に接続される一対のリード導体部の間に、直線状又は湾曲状の加熱導体部が連続され、加熱導体部が全体として上述した被加熱物の外周形状に沿うようにして延出、屈曲、又は湾曲された構造体として構成されている。また、リード導体部及び加熱導体部の内部には、冷却水を流す冷却水流路が設けられており、誘導加熱時に冷却水流路に冷却水が常時流されることで、加熱導体部において自身の過熱による損傷を防止するように構成されている。
【0004】
これらの従来の誘導加熱コイルは、例えば、特許文献1に開示されるように、銅などの導電性材料よりなる内部中空の角パイプ部材を用いて、リード導体部や加熱導体部が全体として所定形状となるようにろう付けにより連結されて構成されている。特に、誘導加熱コイルにおいては、リード導体部と加熱導体部との接続部位や加熱導体部に複数の屈曲部が形成されるため、従来の誘導加熱コイルの製造方法としては、まず複数の角パイプ部材を成形し、次いで加熱導体部を構成する屈曲部にて角パイプ部材の端部同士をろう付けにより連結することで形成されていた。
【0005】
しかし、誘導加熱コイルにおいては、高周波電源より供給された高周波電流が他の部位に比べて屈曲部に集中するため、焼入れによる通電が繰り返されることで、屈曲部において温度が局所的に上昇し、また加熱・冷却による温度振幅が他の部分よりも大きくなる。そのため、従来の誘導加熱コイルの製造方法のように、ろう付けにより屈曲部を接合される方法では、ろう材自体が劣化(熱収縮や熱ひずみなど)して、ろう付け部分の接合強度が低減したり、ろう材自体が剥がれたりしてしまい、接合部にて冷却水が漏れ出すことによる製品寿命の低下が課題となっていた。
【0006】
特に、近年では、誘導加熱コイルの形状は、被加熱物に対する加熱むらを低減し、また焼入れ深さを均質化して焼入れ精度を向上するために、被加熱物の形状に応じてより複雑化・細緻化される傾向にある。このような誘導加熱コイルの形状の複雑化に伴って、誘導加熱部において複数の屈曲部が形成されることから、製品寿命が低下してしまうという課題がより深刻化してきている。
【0007】
また、特許文献2又は特許文献3には、被加熱物の外周(被焼入れ部)に対向した部分或いはその近傍部分にろう付け箇所がないようにして、長期間使用しても劣化しない誘導加熱コイルの製造方法が開示されているが、かかる誘導加熱コイルの製造方法においては、円柱状の金属素材よりコイル形状を削り出すものであるため、製造できるコイル形状が制限され、被加熱物の形状に応じて複雑化・細緻化したコイル形状のものには適用することができず、上述したような課題は依然として解消されないままであった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、以下の実施例において、
図1及び
図3に示す矢印X方向を誘導加熱コイル1の上下方向とする。
【0021】
図1に示すように、本実施例の製造方法にて得られる誘導加熱コイル1は、図示せぬ高周波焼入れ装置に接続された状態で、誘導加熱を利用して鋼製部材などの被加熱物を所定の焼入れ温度に加熱・急冷して焼入れ処理(又は焼戻し処理)するためのコイルとして構成されている。なお、本実施例の誘導加熱コイル1は、被加熱物として自動車等のエンジン用クランクシャフトの高周波焼入れに用いるコイル部材として構成され、誘導加熱コイル1にてかかるエンジン用クランクシャフトの外周面が誘導加熱される。
【0022】
誘導加熱コイル1は、一対のリード導体部10・10の間に加熱導体部11が連続され、加熱導体部11が被加熱物の外周形状に沿うようにして延出、屈曲、又は湾曲された構造体として構成されており、上下方向の中心位置を通る水平面に対して左右方向に対称形状に形成されている。一対のリード導体部10・10は、図示せぬ高周波電源に接続され、高周波電源から一方のリード導体部10に供給された高周波電流が、加熱導体部11の形状にそって流れた後に他方のリード導体部10より高周波電源に戻る。
【0023】
本実施例の誘導加熱コイル1は、延出、屈曲、又は湾曲された複数(本実施例では3つ)の内部中空の角パイプ部材2・3・4が一体的に組み付けられて構成されている。誘導加熱コイル1は、角パイプ部材2・3・4が内部中空のパイプ状に形成されることで、内部に冷却水を流す冷却水流路5(
図2及び
図4等参照)が形成されており、一方のリード導体部10が図示せぬ冷却水タンクと接続され、冷却水タンクより一方のリード導体部10に供給された冷却水が、加熱導体部11の冷却水流路5内を流れて他方のリード導体部10より機外に排出される。
【0024】
誘導加熱コイル1の形状は、被加熱物に形状に応じて適宜設計されるが、本実施例では、一例として、水平方向に並行して延出される水平直線部20・30と、水平直線部20・30より水平方向に湾曲状に延出される上湾曲部21・31と、上湾曲部21・31より屈曲部22・32を介して下方向に直線状に延出される連結部23・33・40・41と、連結部40・41の下端が屈曲部42・43を介して水平方向に湾曲される下湾曲部44等とが形成されている。
【0025】
角パイプ部材2・3・4は、導電性材料としての銅材(真鍮等の銅合金材を含む)等にて断面矩形又は断面多角形の内部中空のパイプ状に形成されている。本実施例では、角パイプ部材2・3・4は、少なくともリード導体部10又は加熱導体部11の屈曲部22・32・42・43を含む形状に形成されており、角パイプ部材2は屈曲部22を含み、角パイプ部材3は屈曲部32を含み、及び角パイプ部材4は屈曲部42・43を含む形状にそれぞれ形成されている。
【0026】
具体的には、角パイプ部材2は、一方のリード導体部10を構成する水平直線部20、及び加熱導体部11を構成し、水平直線部20の端部から被加熱物の外周形状に沿って水平方向に延出・湾曲される上湾曲部21と、上湾曲部21の端部から屈曲部22を介して下方向に向けて直線状に延出される連結部23とが形成されている。
【0027】
角パイプ部材3は、角パイプ部材2と対称形状に形成され、他方のリード導体部10を構成する水平直線部30、及び加熱導体部11を構成し、水平直線部30の端部から被加熱物の外周形状に沿って水平方向に延出・湾曲される上湾曲部31と、上湾曲部31の端部から屈曲部32を介して下方向に向けて直線状に延出される連結部33とが形成されている。
【0028】
角パイプ部材4は、加熱導体部11を構成し、上述した角パイプ部材2の連結部23と接合される連結部40と、角パイプ部材3の連結部33と接合される連結部41と、連結部40・41の端部から屈曲部42・43を介して被加熱物の外周形状に沿って水平方向に延出・湾曲される下湾曲部44とが形成されている。
【0029】
図2に示すように、角パイプ部材2の屈曲部22は、コーナ部22aの内面側がR面状に形成されている。これは、後述するように角パイプ部材2が削り出し加工にて形成されるため(
図5等参照)、コーナ部22aをR面状等の任意の形状に形成することが可能とされているためである。このように屈曲部22のコーナ部22aの内面側がR面状に形成されることで、冷却水流路5の冷却水が屈曲部22にて滑らかに流れることができ、冷却水による誘導加熱コイル1(特に、屈曲部22)の冷却効率を高めることができる。
【0030】
図示しないが、本実施例の誘導加熱コイル1では、上述した角パイプ部材2の屈曲部22の他に、角パイプ部材3の屈曲部32及び角パイプ部材4の屈曲部42・43においても同様に、各コーナ部の内面側がR面状に形成されている。
【0031】
また、後述する
図10に示すように、本実施例の角パイプ部材2(平直線部20、上湾曲部21、及び連結部23)は、外壁の隅角部26(計4箇所)が長さ方向に沿って曲面状(R面状)に形成されている。これは、後述するように角パイプ部材2が削り出し加工にて形成されるため(
図5等参照)、隅角部26を曲面状(R面状)に形成することが可能とされているためである。このように外壁の隅角部26が曲面状(R面状)に形成されることで、角パイプ部材2に流れる高周波電流を均一にすることできる。
【0032】
図3及び
図4に示すように、角パイプ部材2・3・4は、各角パイプ部材2・3・4の突き合わせ箇所に形成される接合部12・13で隣り合う2つの部材が接合されて一体的に組み付けられている。接合部12は、角パイプ部材2及び角パイプ部材4の離間であって屈曲部22・42を除く突き合わせ箇所に設けられ、接合端面24・45が突き合わせ状態で溶融溶接(レーザ溶接)されることで形成される。また、接合部13は、角パイプ部材3及び角パイプ部材4の離間であって屈曲部32・43を除く突き合わせ箇所に設けられ、接合端面34・46が突き合わせ状態で溶融溶接されることで形成される。
【0033】
角パイプ部材2及び角パイプ部材4の突き合わせ箇所は、角パイプ部材2の連結部23に設けられる接合端面24、及び角パイプ部材4の連結部40に設けられる接合端面45がインロー形状に形成され、接合端面24・45が突き合わせ状態で互いに嵌合されている。接合端面24は、角パイプ部材2の中心方法に向かって外径寸法が縮小された凸インロー部24aが形成され、接合端面45は、角パイプ部材4の外側方向に向かって内径寸法が縮小され、凸インロー部24aと嵌合可能な凹インロー部45aが形成されている。
【0034】
そして、角パイプ部材2及び角パイプ部材4の接合部12は、角パイプ部材2の接合端面24の凸インロー部24aと角パイプ部材4の接合端面45の凹インロー部45aとが嵌合された状態で、凸インロー部24a及び凹インロー部45aの嵌合部分に対して周方向に沿ってレーザが照射されることで、その周辺部分が溶融されて角パイプ部材2及び角パイプ部材4が接合されて形成される。
【0035】
また、角パイプ部材3及び角パイプ部材4の突き合わせ箇所においても同様に、角パイプ部材3の連結部33に設けられる接合端面34、及び角パイプ部材4の連結部41に設けられる接合端面46がインロー形状に形成され、接合端面34・46が突き合わせ状態で互いに嵌合されている。接合端面34は、角パイプ部材3の中心方法に向かって外径寸法が縮小された凸インロー部34aが形成され、接合端面46は、角パイプ部材4の外側方向に向かって内径寸法が縮小され、凸インロー部34aと嵌合可能な凹インロー部46aが形成されている。
【0036】
そして、角パイプ部材3及び角パイプ部材4の接合部13は、角パイプ部材3の接合端面34の凸インロー部34aと角パイプ部材4の接合端面46の凹インロー部46aとが嵌合された状態で、凸インロー部34a及び凹インロー部46aの嵌合部分に対して周方向に沿ってレーザが照射されることで、その周辺部分が溶融されて角パイプ部材3及び角パイプ部材4とが接合されて形成される。
【0037】
次に、本実施例の誘導加熱コイル1の製造方法について、以下に詳述する。
図5乃至
図10に示すように、本実施例の誘導加熱コイル1の製造方法は、予備加工部材6の表面に冷却水流路5の形状に沿って溝部60を削り出し加工にて形成する第一加工工程S100と、予備加工部材6に形成された溝部60に開口面の形状に合わせて形成された蓋部材61を溶融溶接にて取り付ける第二加工工程S110と、蓋部材61が溶融溶接された予備加工部材6より内部中空の角パイプ部材2・3・4を削り出し加工にて形成する第三加工工程S120と、角パイプ部材2・3・4の屈曲部22・32・42・43を除く箇所に設けられた接合端面24・45及び接合端面34・46を突き合わせ状態で溶融溶接して二以上の角パイプ部材2・3・4を組み付ける第四加工工程S130等とを有してなるものである。
【0038】
なお、第一加工工程S100、第二加工工程S110及び第三加工工程S120は、予め誘導加熱コイル1を構成する各角パイプ部材2・3・4をそれぞれ形成する工程であるが、以下では一例として角パイプ部材2(
図1等参照)を形成する方法について説明する。なお、他の角パイプ部材3・4についての説明は省略するが、特に言及する場合を除いて同様の方法にて形成される。
【0039】
まず、第一加工工程S100では、角パイプ部材2の母材(銅材等)よりなる成形体としての予備加工部材6の表面に誘導加熱コイル1に形成される冷却水流路5の形状に沿って溝部60を形成する(
図6及び
図7参照)。予備加工部材6の形状は、特に限定されないが、後述するように角パイプ部材2が削り出し加工にて形成される際に、角パイプ部材2の形状(水平直線部20・上湾曲部21・屈曲部22・連結部23等)に応じて、予備加工部材6の表面に形成される溝部60が被加熱物の外周と対向しない面に開口するような形状とされ、本実施例では水平面を有する直方体形状のものが用いられている。この点、他の角パイプ部材3・4においても同様である。
【0040】
溝部60は、内側縁部に沿って後述する蓋部材61が係止される段部60aが形成され(
図7参照)、角パイプ部材2において屈曲部22のコーナ部22aの内面側がR面状となるように加工される(
図2参照)。なお、本実施例では、溝部60の底面側の隅角部27(計2箇所)が長さ方向に沿って曲面状(R面)状に形成され、冷却水流路5の冷却水の流速を一定にして、冷却水による誘導加熱コイル1の冷却効率を高めることができるように形成されている。
(
図10参照)。
【0041】
次いで、第二加工工程S110では、予備加工部材6の溝部60の開口面の形状に合わせて形成された蓋部材61を溶融溶接にて取り付ける(
図8参照)。蓋部材61は、予備加工部材6と同じ母材(銅材等)により形成され、本実施例では予備加工部材6の表面に開口された溝部60を閉止するために二つの部材が用いられている。この蓋部材61は、予備加工部材6の表面が略水平面状となるように溝部60の段部60aに係止され、係止部分に沿ってレーザが照射されることで周辺部分が溶融されて予備加工部材6及び蓋部材61が接合される。
【0042】
次いで、第三加工工程S120では、上述した第二加工工程S110にて蓋部材61が溶融溶接された予備加工部材6より内部中空の角パイプ部材2を削り出し加工にて形成する(
図9参照)。その際、上述したように本実施例の誘導加熱コイル1は、角パイプ部材2の連結部23に設けられる接合端面24、及び角パイプ部材4の連結部40に設けられる接合端面45が接合されて組み付けられて構成されるため、角パイプ部材2の連結部23に設けられる接合端面24がインロー形状に形成され、具体的には、接合端面24に角パイプ部材2の中心方法に向かって外径寸法が縮小された凸インロー部24aが形成される(
図3及び
図4等参照)。
【0043】
また、第三加工工程S120では、予備加工部材6より角パイプ部材2を削り出し加工にて形成する際には、蓋部材61の取り付け面の表面を薄層切削する(
図10)。ここでの薄層切削とは、予備加工部材6及び取り付けられた蓋部材61の表層を切削加工にて平滑にすることをいう。すなわち、予備加工部材6の蓋部材61の取り付け面には、蓋部材61との段差、ビード64、又はスパッタなどにより凹凸が形成される場合があるため、このように蓋部材61の取り付け面の表面を薄層切削することで、角パイプ部材2の表面を平滑に仕上げることができる。
【0044】
そして、第四加工工程S130では、上述した工程(S100〜S120)にて形成された角パイプ部材2・3・4を突き合わせ箇所に形成される接合部12・13にて溶融接合することで一体的に組み付けて、誘導加熱コイル1を形成する。すなわち、角パイプ部材2及び角パイプ部材4において、屈曲部22・42を除く箇所に設けられた接合端面24・45を突き合わせ状態で溶融溶接することで接合部12を形成して接合し、また、角パイプ部材3及び角パイプ部材4において、屈曲部32・43を除く箇所に設けられた接合端面34・46を突き合わせ状態で溶融溶接することで接合部13を形成して接合する(
図1及び
図3等参照)。
【0045】
以上のように、本実施例の誘導加熱コイル1の製造方法では、一対のリード導体部10・10の間に被加熱物の外周形状に沿うようにして加熱導体部11が延出され、リード導体部10・10又は加熱導体部11に形成される屈曲部22・32・42・43を少なくとも含み、内部に冷却水を流す冷却水流路5を有する一又は二以上の内部中空の角パイプ部材2・3・4よりなる高周波焼入れに用いる誘導加熱コイル1の製造方法において、予備加工部材6の表面に冷却水流路5の形状に沿って溝部60を削り出し加工にて形成する第一加工工程S100と、予備加工部材6に形成された溝部60に開口面の形状に合わせて形成された蓋部材61を溶融溶接にて取り付ける第二加工工程S110と、蓋部材61が溶融溶接された予備加工部材6より内部中空の角パイプ部材2・3・4を削り出し加工にて形成する第三加工工程S120と、を有してなるため、コイル形状を問わず高品質で製品寿命に優れた誘導加熱コイル1を得ることができる。
【0046】
すなわち、冷却水流路5の形状に沿って形成された溝部60に蓋部材61が溶融溶接された予備加工部材6より削り出し加工にて角パイプ部材2・3・4を形成するものであるため、従来の誘導加熱コイルの製造方法とは異なり、ろう付け箇所がなく、焼入れによりろう付け箇所が剥がれたりするのを防止できるとともに、円熟した技能が不要で、作業者の熟練度による製品品質のばらつきを低減でき、コイル形状を問わず高品質で、製品寿命を長寿命化することができる。また、接合方法として溶融溶接を採用することで、加工工程(接合工程)におけるバリの形成を防止でき、バリ取り加工等の後加工が不要となって製造コストを低減できるとともに、接合状態の検査に超音波探傷を適用することが可能となるので品質保証レベルも向上できる。
【0047】
特に、本実施例の誘導加熱コイル1の製造方法では、角パイプ部材2・3・4の屈曲部22・32・42・43を除く箇所に設けられた接合端面24・45及び接合端面34・46を突き合わせ状態で溶融して角パイプ部材2・3・4を組み付けるため、角パイプ部材2・3・4を屈曲部22・32・42・43にて接合させる場合と比べて、焼入れの際に繰り返される温度振幅(加熱・冷却)に起因する接合部12・13の劣化を低減できる。
【0048】
また、角パイプ部材2の接合端面24及び角パイプ部材4の接合端面45がインロー形状に形成されて互いに嵌合され、また、角パイプ部材3の接合端面34及び角パイプ部材4の接合端面46がインロー形状に形成されて互いに嵌合されるため、平坦面同士を突き合わせる構成と比べて、接合端面24・45及び接合端面34・46の接触面積を増大することができ、接合部12・13において溶融溶接による接合強度を高め、製品品質をより向上できる。
【0049】
なお、誘導加熱コイル1の製造方法としては、上述した実施例に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0050】
すなわち、上述した実施例では(
図1等参照)、コイル形状に合わせて3つの角パイプ部材2・3・4が接合されて一体に組み付けられた誘導加熱コイル1の製造方法について説明したが、誘導加熱コイル1のコイル形状や角パイプ部材の個数等はこれに限定されず、角パイプ部材において少なくともリード導体部又は加熱導体部の屈曲部を含む形状に形成されるものであれば、被加熱物の形状に応じてより複雑化・細緻化された形状に形成されてもよい。
【0051】
例えば、
図11に示す別実施例の誘導加熱コイル101では、延出、屈曲、又は湾曲された一つの内部中空の角パイプ部材102にて構成されている。誘導加熱コイル101は、水平方向に並行して延出される水平直線部120・120と、水平直線部120・120より水平方向に湾曲状に延出される上湾曲部121・121と、上湾曲部121・121より屈曲部122・122を介して下方向に直線状に延出される連結部123・123と、屈曲部125・125を介して水平方向に湾曲される下湾曲部124等とが形成されている。
【0052】
このように、誘導加熱コイル101が一つの内部中空の角パイプ部材102にて構成される場合であっても、上述した実施例(
図1等参照)と同様に、第一加工工程S100にて、予備加工部材の表面に前記冷却水流路の形状に沿って溝部を削り出し加工にて形成し、第二加工工程S110にて、予備加工部材に形成された溝部に開口面の形状に合わせて形成された蓋部材を溶融溶接にて取り付け、第三加工工程S120にて、蓋部材が溶融溶接された予備加工部材より内部中空の角パイプ部材を削り出し加工にて形成することで、特に、歪みや寸法誤差の少ない誘導加熱コイル102を得ることができる。
【0053】
なお、かかる場合において、予備加工部材の表面に溝部を形成させる際には、削り出し加工により形成可能な範囲で被加熱物の外周と対向しない面に溝部が適宜形成され、例えば、被加熱物の外周と対向しない面の全面に渡って連続して形成されたり、被加熱物の外周と対向しない面の一部の箇所に非連続で形成されたりしてもよい。
【0054】
また、
図12に示す別実施例の誘導加熱コイル201では、被加熱物の形状の複雑化に伴って8つの屈曲部222・232・241・243・251・253・262・263が形成されて、5つの角パイプ部材202・203・204・205・206が接合されて一体に組み付けられて構成される。具体的には、誘導加熱コイル201では、角パイプ部材202は屈曲部222を含み、角パイプ部材203は屈曲部232を含み、角パイプ部材204は屈曲部241・243を含み、角パイプ部材205は屈曲部251・253を含み、及び角パイプ部材206は屈曲部262・263を含む形状にそれぞれ形成される。
【0055】
そして、角パイプ部材202が角パイプ部材204と突き合わせ箇所に形成される接合部212にて接合され、角パイプ部材203が角パイプ部材205と突き合わせ箇所に形成される接合部213にて接合され、角パイプ部材204が角パイプ部材206と突き合わせ箇所に形成される接合部214にて接合され、角パイプ部材205が角パイプ部材206と突き合わせ箇所に形成される接合部215にて接合されて一体的に組み付けられる。
【0056】
また、上述した実施例の誘導加熱コイル1では(
図4等参照)、例えば、接合部12において角パイプ部材2の連結部23に設けられる接合端面24、及び角パイプ部材4の連結部40に設けられる接合端面45がインロー形状に形成されて互いに嵌合されるように構成されるが、かかる接合部12(13)の形状はこれに限定されない。
【0057】
例えば、
図13に示す別実施例の接合部312のように、角パイプ部材302の連結部323に設けられる接合端面324、及び角パイプ部材304の連結部340に設けられる接合端面345がテーパ形状に形成されて互いに嵌合されるように構成されてもよい。具体的には、角パイプ部材302の接合端面324は、角パイプ部材302の中心方法に向かって外径寸法が徐々に縮小された凸テーパ部324aが形成され、角パイプ部材304の接合端面345は、角パイプ部材304の外側方向に向かって内径寸法が徐々に縮小され、凸テーパ部324aと嵌合可能な凹テーパ部345aが形成される。そして、接合部312において、接合端面324の凸テーパ部324aと接合端面345の凹テーパ部345aとが嵌合された状態で、凸テーパ部324a及び凹テーパ部345aの嵌合部分が溶融されて角パイプ部材302及び角パイプ部材304が接合される。
【0058】
また、上述した実施例の誘導加熱コイル1等においては、複数の角パイプ部材の溶融溶接による接合方法として、上述したレーザ溶接の他に、例えば、電子ビーム溶接等を採用することも可能である。