(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205096
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】順次延長される機械式マスト用のトグルラッチ
(51)【国際特許分類】
F16B 7/14 20060101AFI20170914BHJP
F16M 11/28 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
F16B7/14 M
F16M11/28 D
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-541121(P2014-541121)
(86)(22)【出願日】2012年11月2日
(65)【公表番号】特表2015-504502(P2015-504502A)
(43)【公表日】2015年2月12日
(86)【国際出願番号】US2012063293
(87)【国際公開番号】WO2013067330
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年10月29日
(31)【優先権主張番号】61/555,722
(32)【優先日】2011年11月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591144947
【氏名又は名称】ザ ウィルーバート カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE WILL−BURT COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ダイクス、ニール、ディビット
(72)【発明者】
【氏名】ブラックウェルダー、ポール、ビー.
(72)【発明者】
【氏名】クワートラー、アナトール
(72)【発明者】
【氏名】マスト、レックスフォード、アール.
(72)【発明者】
【氏名】ワッソン、アンドリュー、ポール
(72)【発明者】
【氏名】カードヘリー、マイケル、ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブス、ダグラス、エー.
【審査官】
葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05593129(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0145056(US,A1)
【文献】
実開昭52−038891(JP,U)
【文献】
特開2009−007848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 12/18
F16B 7/14
F16M 11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入れ子式管部を有する入れ子式マスト用のラッチアセンブリであって、
付随する第1の管部に取り付け可能なラッチ本体と、
前記ラッチ本体に支持されたラッチ機構と、
前記ラッチ機構に動作可能に連結されたトグル機構と、
付随する第2の管部に取り付け可能なラッチプレートと、
付随する第3の管部に取り付け可能なトリガー支柱と
を有し、
前記ラッチ機構は、前記ラッチプレート内の対応する凹部と係合することにより前記第1および第2の管部の軸方向の動きを制限する係合位置と、前記第1および第2の管部の軸方向の相対的な動きを可能にする係合解除位置との間で枢動可能な爪部材を含み、
前記トグル機構は、前記ラッチ機構の前記係合位置に対応するオーバーセンターロック位置と、前記ラッチ機構の前記係合解除位置に対応するロック解除位置との間で移動可能であり、
前記トグル機構は、さらに、前記ラッチ本体に回転自在に支持されたカムプレートと、枢軸継手において前記カムプレートに枢着され、且つ前記爪部材に動作可能に連結された連結アームとを含み、
前記枢軸継手は、前記ラッチ本体における前記爪部材の取り付け点に対してオーバーセンターに回転するように構成され、
前記カムプレートは、前記付随する第1の管部が前記付随する第3の管部の内部で完全に入れ子状態にあり、前記トグル機構が前記ロック解除位置にあるとき、前記トリガー支柱とかみ合うように構成されており、
前記トリガー支柱は、前記カムプレートを第1の方向に回転させて、前記トグル機構を前記ラッチ機構の前記係合位置に対応する前記ロック位置から、前記付随する第1の管部が前記付随する第3の管部の内部に入れ子状態にある間の、前記ラッチ機構の前記係合解除位置に対応する前記ロック解除位置にトグルするように動作可能であり、
前記トリガー支柱は、さらに、前記カムプレートを第2の方向に回転させて、前記トグル機構を前記ロック解除位置から、前記付随する第1の管部が前記付随する第3の管部から延長された状態にある前記ロック位置にトグルするように動作可能であり、
当該ラッチアセンブリは、格納された状態にある隣接した管部を互いにロックし、且つ延長された状態にある隣接した管部を互いにロックするように構成されているものである、
ラッチアセンブリ。
【請求項2】
請求項1記載のラッチアセンブリにおいて、前記爪部材は、前記爪部材が前記係合位置にあるとき当該爪部材に対応した前記ラッチプレートの傾斜面に嵌合する傾斜面を含み、前記傾斜面は、前記ラッチ機構が係合されたとき前記付随する第1および第2の管部の相対回転を制限するものであるラッチアセンブリ。
【請求項3】
請求項1または2記載のラッチアセンブリにおいて、前記爪部材は、対応する前記ラッチプレートの傾斜面に嵌合する複合角度を有する傾斜面を含むものであるラッチアセンブリ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のラッチアセンブリにおいて、前記ラッチ本体は、前記ラッチ本体を付随する管部に固定する取り付け用フランジを含むものであるラッチアセンブリ。
【請求項5】
請求項1記載のラッチアセンブリにおいて、前記トリガー支柱は、ステム部分と、このステム部分に略垂直な上方部分とを有し、前記カムプレートは、前記トリガー支柱の上方部分とかみ合うことにより、前記付随する第1の管部および前記付随する第3の管部の軸方向の動きを制限するように構成されたキャッチ部を含むものであるラッチアセンブリ。
【請求項6】
請求項5記載のラッチアセンブリにおいて、前記トグル機構は、前記トリガー支柱が前記ラッチ本体から引き離されると、前記ロック位置に移動し、前記トリガー支柱が前記ラッチ本体へ向かって移動され前記トグル機構とかみ合うことにより、前記ロック解除位置に移動するように構成されるものであるラッチアセンブリ。
【請求項7】
入れ子式マストであって、
複数の入れ子式管部と、
第1の管部に取り付けられ、ラッチ機構と当該ラッチ機構に動作可能に連結されたトグル機構とを支持するラッチ本体と、
第2の管部に取り付けられ、前記第1の管部内に入れ子式に受容されるように構成されたラッチプレートと、
前記第1および第2の管部を入れ子式に受容するように構成された第3の管部に取り付けられたトリガー支柱と
を有し、
前記ラッチ機構は、前記第2の管部が延長されたとき前記ラッチプレート内の対応する凹部と係合することにより前記第1および第2の管部の軸方向の動きを制限する係合位置と、前記第2の管部が前記第1の管部内に入れ子式に受容可能となるように、前記第1および第2の管部の軸方向の相対的な動きを可能にする係合解除位置との間で枢動可能な爪部材を含み、
前記トグル機構は、前記ラッチ機構の前記係合位置に対応するオーバーセンターロック位置と、前記ラッチ機構の前記係合解除位置に対応するロック解除位置との間で移動可能であり、
前記トグル機構は、さらに、前記ラッチ本体に回転自在に支持されたカムプレートと、枢軸継手において前記カムプレートに枢着され、且つ前記爪部材に動作可能に連結された連結アームとを含み、
前記枢軸継手は、前記ラッチ本体における前記爪部材の取り付け点に対してオーバーセンターに回転するように構成され、
前記カムプレートは、前記第1の管部が前記第3の管部の内部で完全に入れ子状態にあり、前記トグル機構が前記ロック解除位置にあるとき、前記第3の管部の前記トリガー支柱とかみ合うように構成されており、
前記トリガー支柱は、前記カムプレートを第1の方向に回転させて、前記トグル機構を前記ラッチ機構の前記係合位置に対応する前記ロック位置から、前記第1の管部が前記第3の管部の内部に入れ子状態にある間の、前記ラッチ機構の前記係合解除位置に対応する前記ロック解除位置にトグルするように動作可能であり、
前記トリガー支柱は、さらに、前記カムプレートを第2の方向に回転させて、前記トグル機構を前記ロック解除位置から、前記第1の管部が前記第3の管部から延長された状態にある前記ロック位置にトグルするように動作可能であり、
当該ラッチアセンブリは、前記第1の管部が前記第3の管部内に完全に受容されたとき前記第1および第3の管部を互いにロックし、且つ前記第1の管部が前記第3の管部から少なくとも部分的に延長されたとき、前記第1の管部を前記第3の管部から解放して前記第1の管部を前記第2の管部にロックするように構成されているものである、
入れ子式マスト。
【請求項8】
請求項7記載の入れ子式マストにおいて、前記爪部材は、前記爪部材が前記係合位置にあるとき当該爪部材に対応した前記ラッチプレートの傾斜面に嵌合する傾斜面を含み、前記傾斜面は、前記ラッチ機構が係合されたとき前記第1および第2の管の相対回転を制限するものである入れ子式マスト。
【請求項9】
請求項7または8記載の入れ子式マストにおいて、前記爪部材は、対応する前記ラッチプレートの傾斜面に嵌合する複合角度を有する傾斜面を含むものである入れ子式マスト。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1つに記載の入れ子式マストにおいて、前記ラッチ本体は、前記ラッチ本体を前記第1の管部に固定する取り付け用フランジを含むものである入れ子式マスト。
【請求項11】
請求項7記載の入れ子式マストにおいて、前記トリガー支柱は、ステム部分と、このステム部分に略垂直な上方部分と、前記カムプレートの少なくとも1つのキャッチ部とを有し、前記キャッチ部は、前記トリガー支柱の上方部分とかみ合うことにより、前記第1の管部および前記第3の管部の軸方向の動きを制限するように構成されているものであり、
前記トグル機構は、前記ラッチ本体が取り付けられた管部が前記トリガー支柱が取り付けられた管部から延長されて前記トリガー支柱が前記ラッチ本体から引き離されると、前記ロック位置に移動し、前記ラッチ本体が取り付けられた管部が前記トリガー支柱が取り付けられた管部内へ引き込まれて前記トリガー支柱が前記ラッチ本体へ向かって移動され前記トグル機構と係合すると、前記ロック解除位置に移動するように構成されているものである
入れ子式マスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2011年11月4日付で出願された米国仮特許出願第61/555,722号に基づく利益を主張するものであり、その内容はこの参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本実施形態は、マストに関する。特に、アンテナ、照明、および他のペイロード用の入れ子式マストと併用する用途が見出され、特にそれを参照して記述される。ただし、例示的な本実施形態は、他の同様な用途にも適していることを理解すべきである。
【背景技術】
【0003】
入れ子式マストは、一般に、入れ子式に伸縮し、または互いの内部に入れ子になるよう構成された複数の管部を含む。駆動系は、通常、延長構成および引き込み構成間で管を順次展開させ、および/または引き込ませるよう構成される。ロックまたはラッチは、一般に、前記延長構成において各管をそれに隣接する1つまたは複数の管にロックするため使用される。
【0004】
ハイエンドの入れ子式マストを使用する顧客、特に軍顧客は、高感度の監視および照準用電子機器を伴う支線のない車載ペイロードを上昇させるため、機械式マストを使用している。これらの電子機器は、多くの場合、非常に長距離離れた対象を見ようとする際に使用され、安定が悪いと悪影響を受ける。多くの用途において、目標までの視線を維持することは非常に重要である。
【0005】
一般に、入れ子式マストのペイロードを安定させるため使用される技術は、2つある。その第1の技術は、ジャイロスコープによる安定化である。ジャイロスコープによる安定化は、使用可能であるが、著しい重量およびコストがペイロードに加わることになる。第2の技術では、高度なアルゴリズムを使って捕捉された画像を補正し、「目標」を視野に維持するが、そのような技術は、高速で「予測できない」動きについては、あまり効果的ではない。
【0006】
外力(例えば、風)およびマスト継手の逃げの相互作用により、高速で「予測不能な」動きが生じ、これにより長距離離れた対象を「見る」ペイロードの性能が低下してしまう。これらの動きは、一般に回転と呼ばれる方位(北、南、東、西)の小さな変化、および/または一般にたわみと呼ばれる水平方向の小さな変化であるかもしれない。
【0007】
現行の技術では、一般に、前記管同士の直接的な相互作用により回転運動を制限するよう試みられている。底部または基部の管は、車両またはシェルターに強固に取り付けられている。円筒形の管の場合、その管に続くすべての管は、すべて当該管の全長に沿って少なくとも1つの縁部を生じる隆起または陥凹した表面により回転しないようにされる。その縁部は、それに嵌合する管上の溝または突出部と相互作用して、任意の2つの管が互いに対して軸方向にスライド(延長または引き込み)はできるが、互いに対し、かつ、基部の管に対して回転しないようになっている。これは、一般に管の「キーイング」(keying)または「キー」および「キー溝」構成と呼ばれている。円柱形以外の管の場合は、その管自体の形状が管の角同士の相互作用により回転を防ぐ。
【0008】
現行の技術では、同様に、前記管同士の直接的な相互作用によりたわみを制限するよう試みられている。この場合も、底部または基部の管は、車両またはシェルターに強固に取り付けられている。それに続く管は、完全に延長した場合でも、著しくオーバーラップした状態を保つ。すなわち、各管は、その長さの著しい割合だけ当該管の下の管内にとどまり、その重なり合う距離は一般に「重複距離」と呼ばれる。この重複距離により、また1つの管の外径とその下の管の内径間で遊びの少ない嵌合を維持することにより、1つの管がその下の管に対して自由に傾くことのできる量が制限される。
【0009】
妥当な製造公差で、かつ、典型的な軍事環境条件下(高温、低温、砂、粉じん、氷)でスライド運動(マストの延長および引き込み)を可能にするには、相互作用しあう表面間が結合しないよう、その表面間に逃げを維持しなければならない。その逃げが、直接的に回転およびたわみを増大させてしまう。
【0010】
各管上にロックまたはラッチを設けると、前記マスト駆動系により延長位置まで駆動された前記管を延長状態に保つよう、前記ペイロードの重量に抗して垂直方向の支持が得られる。一般に、そのようなロックは、(単純化のため)外力を必要としないよう、かつ(安全のため、また遠隔操作を可能にするため)手作業での介入を必要としないよう、通常のマスト延長または引き込みにより自動的に駆動されることが望ましいと考えられている。前記ロックは、騒音源となるため、前記マストが一定の用途(例えば、軍用途)に適さなくなってしまう場合もある。
【0011】
現行のロック設計は、傾向として、大きな音を立て、広いスペースを必要とし、手作業での係合を必要とし、および/または別個の電源を必要とする。また、ロック設計の多くは、延長位置にある管しかロックしない。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 国際公開第2009/058241号
(特許文献2) 独国特許出願公開第3116770号明細書
(特許文献3) 独国実用新案第202006007012号明細書
(特許文献4) 国際公開第93/07395号
(特許文献5) 米国特許出願公開第2009/0110527号明細書
(特許文献6) 米国特許第6,000,354号明細書
(特許文献7) 米国特許第4,254,423号明細書
(特許文献8) 米国特許第4,663,900号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様によれば、自動ロックシステムが提供され、この自動ロックシステムは、マストの通常の延長および引き込みにより駆動され、前記マストの逃げにより当該マストに内在する回転およびたわみを低減し、従来のロックシステムよりスムーズかつ静かに動作する。また、当該ロックシステムは、一般的な機械式マストの既存の設置面積内に妥当に収まる。
【0013】
別の態様によれば、複数の入れ子式管部を有する入れ子式マスト用のラッチアセンブリは、付随する第1の管部に取り付け可能なラッチ本体と、前記ラッチ本体に支持されたラッチ機構と、前記ラッチ機構に動作可能に連結されたトグル機構と、付随する第2の管部に取り付け可能なラッチプレートとを有する。前記ラッチ機構は、前記ラッチプレート内の対応する凹部とかみ合うことにより前記第1および第2の管部の軸方向の動きを制約する係合位置と、前記第1および第2の管部の軸方向の相対的な動きを可能にする係合解除位置との間で枢動可能に爪部材を含む。前記トグル機構は、前記ラッチ機構の前記係合位置に対応するオーバーセンターロック構成と、前記ラッチ部材の前記係合解除位置に対応するロック解除構成との間で動くことができる。
【0014】
前記トグル機構は、前記ラッチ本体に枢動可能に固定されたカムプレートと、枢軸継手において前記カムプレートに枢着され前記爪部に動作可能に連結された連結アームとを含むことができ、前記枢軸継手は、前記ラッチ本体への前記爪部の取り付け点に対してオーバーセンターに回転するよう構成される。前記爪部は、前記爪部材が前記係合位置にあるとき当該爪部に対応した前記ラッチプレートの傾斜面に嵌合する傾斜面を含むことができ、前記傾斜面は、前記ラッチ機構が係合されたとき前記付随する第1および第2の管の相対回転を制約する。前記爪部は、それに対応した前記ラッチプレートの傾斜面に嵌合する複合角度を有する傾斜面を含むことができる。前記ラッチ本体は、前記ラッチ本体を付随する管部に固定する取り付け用フランジを含むことができる。
【0015】
前記アセンブリは、さらに、隣接する管部に取り付け可能なトリガー支柱を含むことができ、前記トグル機構は、隣接し付随する管部のトリガー支柱とかみ合うよう構成されたカムプレートを含み、前記トリガー支柱は、隣接しあう管部間の相対運動に基づき、前記ロックおよびロック解除位置間で前記トグル機構をトグルするよう動作可能である。前記トリガー支柱はT字状の部分を含むことができ、当該T字状の部分は、ステム部分と、このステム部分に略垂直な頂部とを有し、前記カムプレートは、前記ステム部分の対向しあう側部上で前記頂部の対向しあう側部の各々とかみ合うようなっているキャッチ部を含むことができる。前記トグル機構は、前記トリガー支柱が前記ラッチ本体から引き離されると、前記ロック位置に移動し、前記トリガー支柱が前記ラッチ本体へ向かって動かされて前記トグル機構に当たると、前記ロック解除位置に移動するよう構成することができる。
【0016】
別の態様によれば、入れ子式マストは、複数の入れ子式管部と、ラッチ機構と、当該ラッチ機構に動作可能に連結されたトグル機構とを支持する、第1の管部に取り付けられたラッチ本体と、第2の管部に取り付けられたラッチプレートであって、前記第2の管部は前記第1の管部内に入れ子式に受容されるようなっている、ラッチプレートとを有する。前記ラッチ機構は、前記第2の管部が延長されたとき前記ラッチプレート内の対応する凹部とかみ合うことにより前記第1および第2の管部の軸方向の動きを制約する係合位置と、前記第2の管部が前記第1の管部に入れ子式に受容可能になるよう、前記第1および第2の管部の軸方向の相対的な動きを可能にする係合解除位置との間で枢動可能な爪部材を含む。前記トグル機構は、前記ラッチ機構の前記係合位置に対応するオーバーセンターロック構成と、前記ラッチ部材の前記係合解除位置に対応するロック解除構成との間で動くことができる。
【0017】
前記トグル機構は、前記ラッチ本体に枢動可能に固定されたカムプレートと、枢軸継手において前記カムプレートに枢着され前記爪部に動作可能に連結された連結アームとを含むことができ、前記枢軸継手は、前記ラッチ本体への前記爪部の取り付け点に対してオーバーセンターに回転するよう構成される。前記爪部は、前記爪部材が前記係合位置にあるとき当該爪部に対応した前記ラッチプレートの傾斜面に嵌合する傾斜面を含むことができ、前記傾斜面は、前記ラッチ機構が係合されたとき前記付随する第1および第2の管の相対回転を制約する。前記ラッチ本体は、前記ラッチ本体を第1の管部に固定する取り付け用フランジを含むことができる。
【0018】
トリガー支柱は、前記第1および第2の管部が入れ子式に受容されるよう構成された第3の管部に取り付けることができ、前記トグル機構は、前記トリガー支柱とかみ合うよう構成された少なくとも1つのキャッチ部を含んだカムプレートを含み、前記トリガー支柱は、隣接しあう管部間の相対運動に基づき、前記ロックおよびロック解除位置間で前記トグル機構をトグルするよう動作可能である。前記トリガー支柱はT字状の部分を含むことができ、当該T字状の部分は、ステム部分と、このステム部分に略垂直な頂部とを有し、前記カムプレートの少なくとも1つのキャッチ部は、前記ステム部分の対向しあう側部上で前記頂部の対向しあう側部の各々とかみ合うよう構成することができる。前記トグル機構は、前記ラッチ本体を取り付けた管部が前記トリガー支柱を取り付けた管部から延長された場合に前記トリガー支柱が前記ラッチ本体から引き離されると、前記ロック位置に移動し、前記ラッチ本体を取り付けた管部が前記トリガー支柱を取り付けた管部内へ引き込まれた場合に前記トリガー支柱が前記ラッチ本体へ向かって動かされて前記トグル機構に当たると、前記ロック解除位置に移動するよう構成することができる。
【0019】
別の態様によれば、複数の管部を有する入れ子式マストに使用するラッチは、ラッチ本体であって、付随する管部に取り付け可能なラッチ機構を含み、当該ラッチ本体は、第2の管に取り付けられた付随するラッチプレートに対し係合し若しくは係合解除するラッチ解除位置とラッチ位置との間で移動可能な爪部を含むラッチ機構を支持する、ラッチ本体と、前記ラッチ機構に動作可能に連結されたトグル機構であって、ロック解除位置とロック位置との間で移動可能であり、前記入れ子式マストが延長し、および/または引き込まれるに伴い、当該トグル機構は、前記ロックおよびロック解除位置間で自動的に平行移動するよう構成され、前記爪部は、前記ラッチおよびラッチ解除位置間で自動的に平行移動するよう構成された、トグル機構とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】
図1Aは、本開示に係るラッチアセンブリを含んだ例示的なマストの概略図である。
【
図1B】
図1Bは、本開示に係る例示的なラッチアセンブリの斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の位置にある
図1Bの前記例示的なラッチアセンブリを含むマストの断面図である。
【
図3】
図3は、第2の位置にある
図2の前記マストおよび例示的なラッチの断面図である。
【
図4】
図4は、第3の位置にある
図2の前記マストおよび例示的なラッチの断面図である。
【
図5】
図5は、第4の位置にある
図2の前記マストおよび例示的なラッチの断面図である。
【
図6】
図6は、第5の位置にある前記マストおよび例示的なラッチアセンブリの断面図である。
【
図7】
図7は、第6の位置にある前記マストおよび例示的なラッチアセンブリの断面図である。
【
図8】
図8は、第7の位置にある前記マストおよび例示的なラッチアセンブリの断面図である。
【
図9】
図9は、第8の位置にある前記マストおよび例示的なラッチアセンブリの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず
図1Aを参照すると、一種の機械式マスト用の一般的な駆動系が、口径の最も小さい管T1をまず上昇させ、この第1の口径の管T1が完全に展開または延長されると、当該第1の管が、管同士の物理的な干渉を介して次に大きい(第2の)管T2を上昇させる。前記第2の管T2の初期の運動中、前記第1の管T1は前記駆動機構から係合解除され、前記第2の管T2が係合される。前記第1の管T1は、前記延長位置で前記第2の管T2にロックされ、前記第2の管T2は、この移行期間中に第3の管T3からリリースされる。すると、前記第2の管T2が駆動される管となり、次の3つの管のセットについて、当該マストを構成する管の数だけ、または望ましいマスト高さに達するまで、前記工程が繰り返される。引き込みは、一般に、延長の逆である。
【0022】
本開示に係る例示的なラッチアセンブリは、前記口径が比較的大きい第2の管T2に取り付けられたラッチ本体LBと、前記第1の管T1に取り付けられたラッチプレートLPとを含む。以下詳述するように、ラッチ機構は、前記ラッチ本体LBにより支持され、トグル機構は、前記ラッチ機構に動作可能に連結される。前記ラッチ機構は、前記ラッチプレートLP内の対応する凹部とかみ合うことにより前記第1および第2の管部T1およびT2の軸方向の動きを制約する係合位置と、前記第1および第2の管部の軸方向の相対的な動きを可能にする係合解除位置との間で枢動可能な爪部材を含む。前記トグル機構は、前記ラッチ機構の前記係合位置に対応するオーバーセンターロック構成と、前記ラッチ部材の前記係合解除位置に対応するロック解除構成との間で動くことができる。
【0023】
前述のように、外力または手動介入を伴わない前記ラッチアセンブリ機能を有することが好ましい。本開示において、前記ラッチは、前記第1の管T1の前記ラッチプレートLPが前記第2の管T2上の前記ラッチ本体LBに係合するとトリガーされ、前記第2の管T2を上昇させ始める。前記第2の管T2上の前記ラッチ機構は、当該ラッチ機構上のローラーが前記第1の頂部管T1上のダイク(dyke)と干渉することにより、前記ロック解除位置に保たれる。前記頂部管T1の前記ラッチプレートLPが前記第2の管T2の前記ラッチ本体LBに係合すると、前記ダイクは、もはや前記ロックシーケンスを妨げなくなり(当該ダイクが前記ローラーから離れ)、前記ラッチプレートの凹部は、当該ラッチ機構の爪部が回転して進入できる空き領域をもたらす。この動作は、以下でさらに詳しく説明するように、動力、あるいは小さいバネまたは他の付勢要素による付勢を、前記ラッチ本体と、前記第3の管上のトリガー支柱に係合するよう構成された前記トグル機構の枢動部材との間に作用させて行うことができる。その追加態様または代替態様において、トリガー支柱TPは、そのトリガー支柱から前記ラッチ本体が持ち上げられるに伴い、前記トグル機構の枢動部材を前記ロック位置へと回転させる一定の特徴とともに設計できる。前記ロック工程は、延長中、前記第2の管T2の前記ラッチ本体が前記第3の管T3の前記トリガー支柱から持ち上げられるまで完了しない。この工程は、前記マストが望ましい高さに引き上げられるまで繰り返される。
【0024】
マスト引き込み中、最初に駆動される管は、最後に引き上げられる管である(引き上げられる管のうち口径が最大のものなど、例えば、管T3)。前記駆動される管は、前記駆動される管の前記ラッチまたはトグル機構と、その下の管の前記トリガー支柱とが接触する点まで下ろされる(例えば、車両に強固に取り付けられた前記基部の管に伴うトリガー支柱)。前記トリガー支柱によりもたらされる上向きの力は、バネの付勢を上回り、前記トグル機構を上方の前記ロック解除位置へと駆動する。この工程中、前記ラッチ本体は、次に小さい管からロック解除されて、次に大きい管(例えば、前記基部の管)にロックされる。前記より小さい管は、この時点で駆動される管になり、当該マストが望ましい位置に引き込まれるまで前記工程が繰り返される。
【0025】
図1Aの前記マスト構成を一般的な出発点として、以下、本開示のラッチアセンブリの特徴を、
図1A〜9に関連付けて詳述する。
【0026】
ここで
図1Bを参照すると、例示的なラッチ本体10が例示されている。このラッチ本体10は空洞を有し、その中にラッチ機構12と、そのラッチ機構12を係合位置でロックするトグル機構16(
図1Bでは見えない)とが搭載されている。前記ラッチ本体10は、入れ子式マストの管部に当該ラッチ本体10を取り付けるための取り付け用フランジ20を含む。この取り付け用フランジ20は、前記ラッチ本体10を前記管部に固定する固定部材、例えばボルトを受容する複数の穴21を含む。頂部のリップ部またはフランジ22は、前記ラッチ本体の主要部分から外側へ延出し、当該マストの延長中、隣接した管部のラッチプレートにより係合されるよう構成される。下方の傾斜面24は、延長および引き込み中、前記管部をそれに隣接する管部に対し誘導するよう設けられる。
【0027】
図2〜9に移って、まず
図2を参照すると、例示的なラッチ本体10が、第1の管部30に取り付けられた状態で例示されている(例えば、
図1Aにおいて、ラッチ本体LBが管T2に取り付けられているのと同様な態様で)。第2の管部32(例えば、
図1Aの管T1)は、以降見られるように、前記第1の管部30内で入れ子にされ、当該第2の管部32に取り付けられたラッチプレートを含む(例えば、
図1Aにおいて、前記管T1がラッチプレートLPを含むのと同様な態様で)。ダイク36(レール状の構造)は、前記第2の管部32の外周面に取り付けられ、前記管32上方の軸方向の長さの主な部分に沿って延在する。このダイク36は、それに対応した前記第1の管部30内周面の溝にスライド可能に受容される。前記ダイク36および溝は、互いに係合して前記管部30および32の相対回転を制約し、またその上に前記ラッチ機構12のローラー42が乗り上げることで、前記ラッチ本体10上に当該ダイク36がない部分になるまで前記ラッチがロックするのを防ぐための表面も提供する。
【0028】
加えて
図3を参照すると、前記第2の管部32が
図2での位置に対し部分的に延長された位置で示されている。そのため、前記第2の管部32に固定されたラッチプレート40がこの時点で見えている。前記ラッチ機構12のローラー42は、まだダイク36に係合している。ローラー42は、枢動する爪部46に取り付けられる。そのため、前記ラッチ機構12の爪部46は、係合されていない位置に保たれる。前記トグル機構16は、
図1〜3において、ロックされていないロック解除位置にあることが理解されるであろう。前記トグル機構16は、前記ラッチ本体へと回転するよう取り付けられたカムプレート50を含む。連結アーム52は、前記カムプレート50を前記爪部46に連結する。連結アーム52は、枢軸継手56により前記カムプレート50に固定される。
【0029】
なお、トリガー支柱60は、次に大きな管部62(例えば、
図1Aの管T3)に取り付けられており、前記ラッチ本体10が前記次に大きな管部62上で入れ子になっている間、カムプレート50に係合して前記トグル機構16を前記ロック解除位置に保持する。また、前記トリガー支柱60が前記カムプレート50のキャッチ部64とかみ合うことで、以下説明するように、前記トリガー支柱60は、前記ラッチ本体10から引き抜かれると前記トグル機構16をロック位置へとトグルすることも理解されるであろう。
【0030】
図4に移ると、ラッチプレート40が前記ラッチ本体10のフランジ22に係合するまで、管部32がさらに延長される。管部32をさらに延長させると、管部30およびラッチ本体10が管部62より上に移動して、前記トリガー支柱60が前記ラッチ本体10から引き抜かれる。
【0031】
図5を参照すると、管部30がさらに持ち上げられて、トリガー支柱60は、前記ラッチ本体10からほぼ完全に引き抜かれた状態になっている。トリガー支柱60およびラッチ本体10が分離されるに伴い、図示したラッチ位置まで、キャッチ部64が前記カムプレート50を回転させる。これが起こるよう、トリガー支柱60には、特徴、例えば
図5の平面に対し法線方向に延出した突出部65を含めることができ、この突出部65は、前記トリガー支柱60が前記ラッチ本体10から分離されるに伴い、前記キャッチ部64と協動して前記カムプレート50を回転させる。
【0032】
前記トグル機構16がロック解除位置とロック位置間でシフトするのとほぼ同時に、爪部46は、ラッチされていないラッチ解除位置からラッチされた位置へとシフトして、そこで前記ラッチプレート40の凹部に係合する。前記爪部46が前記凹部にラッチされ、前記トグル機構16が前記ロック位置に動かされると、前記爪部46は、前記トグル機構16が前記ロック解除位置に動かされるまで、前記ラッチ解除位置に戻れなくなることが理解されるであろう。このラッチ解除またはラッチ状態間およびロック解除またはロック状態間の移行は一般に滑らかであるが、これは、この移行が、前記トリガー支柱60に対する前記ラッチ本体10の動きにより少なくとも部分的に駆動および/または制御されるためである。この結果、動作は滑らかで静かなものとなる。
【0033】
前記ラッチアセンブリのラッチおよびロックされた状態における最終的な位置を
図6に例示する。この工程は、当該入れ子式マストのすべての管部について、望ましい高さが達成されるまで反復できることが理解されるであろう。なお、前記ラッチアセンブリの最終的なラッチおよびロック状態における前記トグル機構は、オーバーセンター位置にあり、前記ラッチ本体10により支持される。前記ラッチアセンブリを前記ロック状態からリリースすることは、一般に、前記トグル機構が
図6の位置を出るよう付勢される場合を除き(この場合については以下説明する)、単に前記爪部自体に作用するだけでは不可能である。
【0034】
図7〜9は、前記マストの前記管部の引き込みを例示したものである。引き込みは、本質的に、上述した延長工程の逆にしたものである。
図7から始めると、管部30が管部62へ下ろされるに伴い、前記トリガー支柱60は、トグル機構16に係合するまで、前記ラッチ本体10に進入し始めることがわかるであろう。さらに管部30を下ろすと、
図8に示すように、トリガー支柱60がトグル機構16を付勢して前記ロック解除位置まで移動させる。トグル機構16が前記ロック解除状態へと切り替わるに伴い、前記ラッチ機構はラッチ解除される。具体的には、爪部46が回転し、(管部32に取り付けられた)前記ラッチプレート40の前記凹部から出て、ラッチ解除位置に戻される。
【0035】
前記ラッチ機構が前記ラッチプレート40からラッチ解除されると、管部32を下ろすことができるようになる。これについては
図9に示す。
【0036】
図10および11は、本開示に係る入れ子式マストの一部を例示したものである。
【0037】
本開示のトグルラッチアセンブリは、現行のラッチと比べ、いくつかの改善点を有する。例えば、前記トグルラッチ機構は、現在知られているラッチの一部と異なり、放射方向外向きの力を前記爪部46にかけても動かすことはできない。前記トグル機構は、その幾何学的構造上、オーバーセンター位置へ移動するため、前記ラッチ本体からの支持により前記爪部を前記ロック位置に保つ。これにより、剛性の傾斜面が前記ラッチプレート上の同様な傾斜面に嵌合する状態がもたらされ、前記マストのたわみが妨げられる。
【0038】
図1Bに示したように、爪部46は、前記ラッチプレートの嵌合面(または隣接した管部に伴う他の表面)に係合する傾斜させた係合面70aおよび70bを有する。これらの表面70aおよび70bは、前記管部の長手方向の軸に対し、2若しくはそれ以上の次元で角度を付けることができる。これら剛性の傾斜面の側部にかかる荷重が十分大きく、前記ラッチ機構より上へ前記管を上昇させる垂直成分が生じた場合、前記ラッチ機構にかかる荷重は、そのような水平方向の力を確実に吸収するよう設計されたウエアバンド(wear band)を前記管上に設けることにより限られたものになる。前記傾斜面の角度は、前記ラッチ機構が、弱風に起因する一般的な側部荷重に耐えられ、前記管がより極端な条件で荷重を吸収できるよう、最適に設計される。これは、想定される最悪の荷重に対応できるよう前記ラッチを十分大きくする必要なく、高感度のペイロードに関するたわみ要件を満たす上で役立つ。前記爪部46の表面の複合角度は、2つの隣接しあう管が互いにラッチされた場合にそれらの管間の回転運動を妨げるよう、前記ラッチプレートの同様な傾斜面に合わせることができる。
【0039】
また、本明細書で説明した前記ラッチアセンブリは、その幾何学的構造および制御された動きにより、著しく静かである。この機構がロックする率は、前記トリガー支柱により、どれだけ高速に前記管部が延長され若しくは引き込まれるかの関数として限定(または制御)される。現行のラッチは、その回転率を制限するものがない状態で、オーバーセンター位置へスナップ嵌合するため、大きな音を立てる場合がある。前記トリガー支柱が前記ロック機構と連動する態様には、両方向の確動を保証するという利点がある。バネの強さが一部損なわれた場合、あるいは損耗または土混入により前記機構の動きが困難な場合、前記トリガー支柱の動作により、当該機構は、強制的にロックまたはロック解除される。
【0040】
本開示の機構の別の改善点は、前記管部の順次延長を確実に実現する前記ダイクを追加したことである。前記爪部の中間部にある前記ローラーは、前記ロック用凹部に達するまで前記ダイクに接触し、前記ラッチをロックされていない状態に保つ。
【0041】
以上、例示的な実施形態について好適な実施形態を参照して説明した。当然ながら、以上の詳細な説明を読み理解すれば、他者も変更形態および修正形態を考案できるであろう。前記例示的な実施形態は、そのような変更形態および修正形態が添付の請求項またはその均等物の範囲内である限り、それらの変更形態および修正形態をすべて含むものと解釈されるよう意図されている。