特許第6205101号(P6205101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205101
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】細胞塊取得装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20170914BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20170914BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C12M1/26
   C12M1/00 A
   C12M3/00
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-125102(P2013-125102)
(22)【出願日】2013年6月13日
(65)【公開番号】特開2015-17(P2015-17A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(73)【特許権者】
【識別番号】501397920
【氏名又は名称】旭光電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136205
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康
(74)【代理人】
【識別番号】100127166
【弁理士】
【氏名又は名称】本間 政憲
(72)【発明者】
【氏名】小西 聡
(72)【発明者】
【氏名】田畑 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】和田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】萩原 文弘
【審査官】 千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−259445(JP,A)
【文献】 特許第5074382(JP,B2)
【文献】 特開2003−102466(JP,A)
【文献】 特開2008−148685(JP,A)
【文献】 特開2012−016316(JP,A)
【文献】 特開2006−055069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の細胞培養容器で培養された細胞塊を取得する細胞塊取得装置であって、
所定の気体を射出する気体射出手段、
前記気体射出手段に一体として固定される細胞塊受容部、
前記細胞塊受容部を前記細胞培養容器に配置したときに、前記細胞塊受容部と前記細胞培養容器の側壁との間に、前記細胞培養容器の底部から上部へと通ずるように形成される通過空間、
を有し、
前記細胞塊受容部は、
前記細胞培養容器の前記上部に向かって開口する細胞塊受容凹部、
を有し、さらに、
前記気体射出手段は、
前記細胞培養容器から前記細胞塊を取得する際に、前記細胞培養容器に注入された所定の液体培地内に位置し、 前記細胞培養容器の前記底部に向かって前記気体を射出し、前記細胞培養容器の前記底部から前記通過空間への向かう前記液体培地の流れを形成すること、
を特徴とする細胞塊取得装置。
【請求項2】
請求項1に係る細胞塊取得装置において、さらに、
前記細胞塊受容部を前記細胞培養容器に配置したときに、前記細胞塊受容部と前記細胞培養容器の底面との間に形成される底部空間、
を有する細胞塊取得装置。
【請求項3】
請求項1に係る細胞塊取得装置において、
前記細胞塊受容部は、
前記細胞培養容器の側壁に平行な端面を有すること、
を特徴とする細胞塊取得装置。
【請求項4】
請求項2に係る細胞塊取得装置において、
前記細胞塊受容部は、
前記細胞培養容器の前記底面に対して水平な端面を有すること、
を特徴とする細胞塊取得装置。
【請求項5】
請求項2に係る細胞塊取得装置において、
前記細胞塊受容部は、
前記細胞培養容器の前記底面に沿った底面を有すること、
を特徴とする細胞塊取得装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに係る細胞塊取得装置において、さらに、
前記細胞培養容器の側壁に配置される流路規制手段であって、前記通過空間の上部に配置され、前記培養用容器の側壁から前記培養用容器の中心に向かって上昇する斜面を有する流路規制手段、
を有する細胞塊取得装置。
【請求項7】
所定の細胞培養容器で培養された細胞塊を取得する細胞塊取得装置を製造する細胞塊取得装置の製造方法であって、
所定の曲面状の底面を有する製造容器に、所定の材料を注入し、
前記製造容器に注入した前記材料に、所定の曲面を有する細胞塊受容凹部形成部材を配置し、
前記細胞塊受容凹部形成部材が配置された状態で、前記材料を固化し、
固化した前記材料から前記細胞塊受容凹部形成部材を取り除くことによって、細胞塊受容凹部を形成し、
前記細胞塊受容凹部を形成した前記固化した材料から、前記前記細胞塊受容凹部が形成されている側の一部を、前記細胞培養容器の側壁から所定の位置で、前記細胞塊受容凹部が露出するように垂直に切除すること、
を特徴とする細胞塊取得装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養された細胞塊を取得する細胞塊取得装置に関し、特に、凹状の細胞培養容器で培養された細胞塊を簡単に取得できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養技術において、生体内と同等な三次元組織を構築できる細胞塊(スフェロイド、細胞凝集体ともいう)の培養が着目されている。細胞塊の培養では、細胞が三次元に集合して塊となるので、細胞が二次元に集合する単層培養法に比して、細胞の特異的な機能を長期間維持することができる。このような細胞塊の培養方法としては、例えば、マイクロウェルを用いるものがある(特許文献1)。これにより、均一な大きさの細胞塊を大量に培養できる。培養した細胞塊については、化学的な標識を行ったり、物理的なダメージを与えたりすることなく、回収することが必要である。
【0003】
ここで、化学的な標識を行ったり物理的なダメージを与えたりすることなく、培養した細胞塊を回収する装置について、図11を用いて説明する。図11(a)、(b)は装置を横から見た図であり、(c)は装置を上から見た図である。また、図11(a)は培養時を、図11(b)、(c)は回収時を、それぞれ示す。
【0004】
この細胞塊を回収する装置には、 形成されたスフェロイドを回収する際、蓋102をはずし、ナノピラーシート部を保持する容器101の外に、液流を発生させる制御部104、駆動部105、シリンジポンプ106が配置される。液流はシリンジポンプ106からチューブを通して吐出口107よりナノピラーシート部101に与えられ、ナノピラーシート部101に形成されたスフェロイドに液流を与えて回収する。制御部104および駆動部105で液体の流速を規定できる。吐出口107の下には、液流を実質的に均一にナノピラーシート部に与えるための第1板状部材(拡散板)108が備えられている。第1板状部材は、ナノピラーシート部に対して0度よりも大きい角度をもって配置される。液流を受けたスフェロイドの一部は、ナノピラーシート部から溢れ出し、ナノピラーシート部に対して0度よりも大きい角度をもって配置される第2板状部材(傾斜板)109を通して、スフェロイド回収部110Pに集められる。スフェロイド回収部110Pは、ナノピラーシート部に隣接して、液流方向でナノピラーシート部より下流位置に配置される(以上、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−249547号公報
【0006】
【特許文献2】特開2008−259445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の細胞塊を回収する装置には、以下に示すような改善すべき点がある。前述の細胞塊を回収する装置では、ナノピラーシート部に培養した細胞塊を、所定の液流を用いて回収するものである。このため、マイクロウェル等の凹状の細胞培養容器に用いることができない、という改善すべき点がある。
【0008】
そこで、本発明は、細胞培養容器において培養した細胞塊を、化学的な標識を行ったり、物理的なダメージを与えたりすることなく、取得することができる細胞塊取得装置を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明における課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
【0010】
本発明に係る細胞塊取得装置は、所定の細胞培養容器で培養された細胞塊を取得する細胞塊取得装置であって、所定の気体を射出する気体射出手段、前記気体射出手段に一体として固定される細胞塊受容部、を有し、前記細胞塊受容部は、上部に向かって開口する細胞塊受容凹部、を有し、さらに、前記細胞塊受容部を前記細胞培養容器に配置したときに、前記細胞塊受容部と前記細胞培養容器の側壁との間に、前記細胞塊受容部の底部から上部へと通ずる通過空間が形成されること、を特徴とする。
【0011】
これにより、細胞塊が培養されている細胞培養容器に液体培地を注入し、液体培地の内部の所定の位置に細胞塊取得装置を配置し、気体射出手段から気体を射出することによって、細胞培養容器の底部から通過空間への向かう液体培地の流れを形成することができる。形成した液体培地の流れによって、細胞培養容器の底部に癒着している細胞塊を剥離できるとともに、剥離した細胞塊を、通過空間を介して、細胞塊受容凹部に配置することができる。
【0012】
本発明に係る細胞塊取得装置では、前記細胞塊受容部は、さらに、前記細胞塊受容部を前記細胞培養容器に配置したときに、前記細胞塊受容部と前記細胞培養容器の底面との間に、所定の底部空間が形成されること、を特徴とする。
【0013】
これにより、細胞培養容器の底部に癒着している細胞塊を剥離するための液体培地の流れを、容易に形成することができる。
【0014】
本発明に係る細胞塊取得装置では、前記細胞塊受容部は、前記細胞培養容器の側壁に平行な端面を有すること、を特徴とする。
【0015】
これにより、容易に通過空間を形成することができる。
【0016】
本発明に係る細胞塊取得装置では、前記細胞塊受容部は、前記細胞培養容器の底面に対して水平な端面を有すること、を特徴とする。
【0017】
これにより、容易に底部空間を形成することができる。
【0018】
本発明に係る細胞塊取得装置では、前記細胞塊受容部は、前記細胞培養容器の底面に沿った底面を有すること、を特徴とする。
【0019】
これにより、底部空間において液体培地の流れが乱れることを防止することができる。よって、細胞塊の取得率を高めることができる。
【0020】
本発明に係る細胞塊取得装置では、さらに、前記細胞培養容器の側壁に配置される流路規制手段であって、前記通過空間の上部に配置され、前記培養用容器の側壁から前記培養用容器の中心に向かって上昇する斜面を有する流路規制手段、を有する。
【0021】
これにより、通過空間の通過後液体培地の流れを細胞培養容器の側壁から細胞培養容器の中心側に移動することができる。よって、細胞塊の取得率を高めることができる。
【0022】
本発明に係る細胞塊取得装置の製造方法は、所定の細胞培養容器で培養された細胞塊を取得する細胞塊取得装置を製造する細胞塊取得装置の製造方法であって、所定の曲面状の底面を有する製造容器に、所定の材料を注入し、前記製造容器に注入した前記材料に、所定の曲面を有する細胞塊受容凹部形成部材を配置し、前記細胞塊受容凹部形成部材が配置された状態で、前記材料を固化し、固化した前記材料から前記細胞塊受容凹部形成部材を取り除くことによって、細胞塊受容凹部を形成すること、を特徴とする。
【0023】
これにより、細胞塊受容凹部を有する細胞塊取得装置を容易に製造することができる
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る細胞塊取得装置の一実施例である細胞塊取得装置100の構成を示す図である。
図2】細胞塊取得装置100の平面図、正面図、左側面図を示す図であり、Aは平面図を、Bは正面図を、Cは左側面図を、それぞれ示す図である。
図3】細胞塊取得装置100に関する図2AのR−R断面を示す図である。
図4】細胞塊取得装置100における細胞塊Cの取得方法を示す図である。
図5】細胞塊取得装置100の製造方法を示す図である。
図6】細胞塊取得装置100の製造方法を示す図である。
図7】受容凹部形成部材135を示す図である。
図8】本発明に係る細胞塊取得装置の一実施例である細胞塊取得装置200の平面図、正面図、左側面図を示す図であり、Aは平面図を、Bは正面図を、Cは左側面図を、それぞれ示す図である。
図9】細胞塊取得装置200に関する図8AのR−R断面を示す図である。
図10】本発明に係る細胞塊取得装置の一実施例である細胞塊取得装置300の断面を示す図である。
図11】従来の細胞塊取得装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0026】
本発明に係る細胞塊取得装置の一例である細胞塊取得装置100について説明する。細胞塊取得装置100は、所定の細胞培養容器内で培養された細胞塊を簡単に取得するための装置である。
【0027】
第1 構成
細胞塊取得装置100の構成について図1を用いて説明する。細胞塊取得装置100は、マイクロウェルMにおいて培養した細胞塊Bを取得するための装置である。
【0028】
細胞塊取得装置100は、エア射出ノズル110、及び、細胞塊受容部130を有している。細胞塊受容部130は、エア射出ノズル110に固定されており、一体となっている。
【0029】
エア射出ノズル110は、エア射出用のμコンプレッサ等をμTASに接続されている(図示せず)細長い筒状の部材である。エア射出ノズル110は、一端にエア射出開口111を有している。エア射出ノズル110は、μコンプレッサから取得したエアを、エア射出開口111から射出する。
【0030】
細胞塊受容部130は、細胞塊Bを取得する際にマイクロウェルMに注入された液体培地L内に位置する。細胞塊受容部130は、ノズル支持部131及び細胞塊受容凹部形成部133を有している。
【0031】
図1において、マイクロウェルMの開口部から曲面状の底部に向かう軸をZ軸、Z軸に対してそれぞれ垂直なX軸、Y軸であって、互いに直交するX軸、Y軸を設定し、X軸、Y軸、Z軸、それぞれの方向から見た細胞塊取得装置100を、平面図、正面図、左側面図として、図2A図2B図2Cに示す。なお、図2A図2Cにおいては、取得する細胞塊Cを点線にて示している。
【0032】
図2Aに示すように、ノズル支持部131は、細胞塊受容凹部形成部133の一端部側に形成される。また、図2Bに示すように、ノズル支持部131は、細胞塊受容凹部形成部133の上面U133から突出して形成される。
【0033】
ここで、図2AのR−R断面図3に示す。図3に示すように、細胞塊受容凹部形成部133は、細胞塊Bを受容するための細胞塊受容凹部S133を有している。細胞塊受容凹部S133は、中央に向かって窪んだ曲面状の底面を有している。これにより、細胞塊受容凹部131は、細胞塊Cを安定的に保持することができる。
【0034】
図2Bに示すように、細胞塊受容部130のノズル支持部131が形成される側とは反対側の端部には、垂直な端面E1が形成されている。また、図2Cに示すように、端面E130は、受容凹部開口A133を有している。
【0035】
さらに、図2Bに示すように、細胞塊受容凹部形成部133の底部には、水平な底面E3が形成されている。
【0036】
なお、細胞塊CをマイクロウェルMから取得する際には、細胞塊取得装置100とマイクロウェルMの底面との間、つまり、細胞塊受容凹部形成部133の底面E3とマイクロウェルPMの側壁との間に底部空間BSが形成されるように、細胞塊取得装置100をマイクロウェルMに配置する。
【0037】
同様に、細胞塊CをマイクロウェルMから取得する際には、図2Bに示すように、細胞塊取得装置100とマイクロウェルMの側壁との間、つまり、細胞塊受容凹部形成部133の端面E1とマイクロウェルPMの側壁との間に通過空間PSが形成されるように、細胞塊取得装置100をマイクロウェルMに配置する。なお、細胞塊受容凹部形成部133のY軸方向の長さLは、マイクロウェルMの内径MLよりも短い。
【0038】
第2 細胞塊取得装置100を用いた細胞塊Cの取得方法
細胞塊取得装置100を用いてマイクロウェルM内に培養した細胞塊Cを取得する方法について、図4を用いて説明する。マイクロウェルMから細胞塊Cを取得しようとする使用者は、細胞塊Cが培養されたマイクロウェルMに液体培地Lを、所定量、注入しておく。
【0039】
使用者は、細胞塊受容部130のノズル固定孔139にエア射出ノズル110を挿入し、エア射出ノズル110に細胞塊受容部130を取り付ける。なお、細胞塊受容部130をエア射出ノズル110に取り付ける際には、細胞塊受容部130をエア射出ノズル110のエア射出開口111から所定距離だけ離した位置に取り付ける。そして、使用者は、エア射出ノズル110をマイクロウェルMの壁面に沿うように、細胞塊取得装置100を、エア射出開口111がマイクロウェルMの所定の深さとなるまで、マイクロウェルMに挿入する。
【0040】
エア射出ノズル110のエア射出開口111を所定の位置に配置した後、使用者は、μTASを稼働させて、エア射出開口111からエアを射出する。これにより、エア射出開口111からマイクロウェルMの底面へと向かう液体培地Lの流れa41、マイクロウェルMの底面からマイクロウェルMと細胞塊受容凹部形成部133との間に形成される通路空間PSへと向かう液体培地Lの流れa43、通路空間PSを上昇する液体培地Lの流れa45、さらに、通路空間PSから上昇した後、下降し、マイクロウェルMの側壁から離れるように、細胞塊受容凹部S133へと向かう液体培地Lの流れa47を形成することができる。
【0041】
液体培地Lの流れa41によって、マイクロウェルMの底面に癒着している細胞塊Cを剥離することができる。マイクロウェルMから剥離された細胞塊Cは、液体培地Lの流れa41、a43、a45、a47に乗って、最終的に、細胞塊受容凹部S133に落下する。これにより、細胞塊Cを細胞塊受容凹部形成部133の細胞塊受容凹部S133によって受容することができる。
【0042】
このように、細胞塊取得装置100を用いることによって、マイクロウェルMに貯留する液体培地Lに制御した流れを形成し、形成した液体培地Lの流れに細胞塊Cを乗せることによって細胞塊Cの移動を操作し、最終的に、自動的に、細胞塊Cを取得することができる。
【0043】
第3 細胞塊取得装置100の製造方法
細胞塊取得装置100の製造方法について、図5図6を用いて説明する。細胞塊取得装置100を製造するにあたって、まずは、細胞塊受容凹部形成部133を製造する。細胞塊受容凹部形成部133の製造には、所定のマイクロウェルを製造用マイクロウェルPMとして用意する。なお、細胞塊Cを培養するマイクロウェルMの大きさ、及び、製造する細胞塊受容凹部形成部133の大きさに合わせた製造用マイクロウェルPMを用意する。
【0044】
図5Aに示すように、製造用マイクロウェルPMに所定量のポリジメチルシロキサン(PDMS)を注入する。その後、図5Bに示すように、受容凹部成型部材135を、注入したPDMS内の、細胞塊受容凹部S133を形成しようとする位置に配置する。受容凹部形成部材135は、細胞塊受容凹部S133の形成に用いる部材である。受容凹部形成部135は、例えば、所定のプラスチックによって形成されている。
【0045】
ここで、受容凹部形成部135の形状について、図7を用いて説明する。図7において、Aは受容凹部形成部材135の平面図を、Bは受容凹部形成部材135の正面図を、Cは受容凹部形成部材135の左側面図を、Dは受容凹部形成部材135の底面図を、それぞれ示している。図7Bに示すように、受容凹部形成部材135は、一の端部に位置する曲面形状の凹部形成端部135a、及び、凹部形成端部135aに連続する本体部135bを有している。また、図7Cに示すように、凹部形成端部135aと本体部135bとは、接続部において段差を形成している。これにより、細胞塊取得装置100の細胞塊受容凹部形成部133に、細胞塊受容凹部S133の取り囲むような側壁を形成することができる。
【0046】
受容凹部形成部材135を配置した後、製造用マイクロウェルPM内のPDMSに対してエア抜きを実施する。摂氏100度で養生し、PDMSが固化した固化PDMS部材P130が形成されると、図6Aに示すように、受容凹部形成部材135を取り除く。
【0047】
その後、図6Bに示すように、製造用マイクロウェルPMから、固化PDMS部材P130を取り出し、固化PDMS部材P130の底部から細胞塊受容凹部S133の底部までの間の位置T1で、固化PDMS部材P130の半球状部分の一部を切除する。これにより、細胞塊取得装置100をマイクロウェルM内に配置した際に、マイクロウェルMの底部と細胞塊取得装置100との間に底部空間BSを形成することができる。
【0048】
さらに、固化PDMS部材P130から、細胞塊受容凹部131が形成されている側の一部を、製造用マイクロウェルPMの側壁から所定の位置T3で、細胞塊受容凹部S133が露出するように垂直に切除する。これにより、細胞塊取得装置100をマイクロウェルMの内部に位置させたときに、細胞塊取得装置100とマイクロウェルMとの間に通過空間PSを形成することができる。
【0049】
以上により、図6Cに示すような細胞塊受容部130を形成する。その後、形成した細胞塊受容部130のノズル固定部131の所定の位置からエア射出ノズル110を挿入し、細胞塊受容凹部形成部133を貫通させて、エア射出開口111を細胞塊受容凹部形成部133の外部に位置させる。
【実施例2】
【0050】
本発明に係る細胞塊取得装置の一例である細胞塊取得装置200について説明する。前述の実施例1における細胞塊取得装置100では、通過空間PSを通過したとしても、細胞塊受容凹部S133に到達しない場合がある。このような細胞塊Cの取得失敗は、例えば、一連の液体培地Lの流れが、所定よりも強くなく、流れa47におけるマイクロウェルMから離れる方向に向かう力が弱い場合に生ずる。そこで、本実施例における細胞塊取得装置200は、実施例1における細胞塊取得装置100に、流れ規制部材210を追加配置した装置である。なお、以下においては、細胞塊取得装置200において、細胞塊取得装置100と同様の構成については、細胞塊取得装置100と同様の番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0051】
第1 構成
細胞塊取得装置200の構成について図8及び図8AにおけるR−R断面を示す図9を用いて説明する。細胞塊取得装置200は、細胞塊取得装置100に加えて、流路規制部材210を配置している。
【0052】
流路規制部材210は、図8Aに示すように、マイクロウェルMの内部、マイクロウェルMの側壁に沿って配置される。なお、流路規制部材210は、PDMSによって形成される。
【0053】
また、流路規制部材210は、マイクロウェルMに取り付けられる。
【0054】
図8Bに示すように、流路規制部材210は、流路規制部材210を、通過空間PSの上部に配置している。また、図9に示すように、流路規制部材210は、断面三角形状を有している。流路規制部材210は、マイクロウェルMの側壁から中心に向かって上昇する斜面S210を有している。
【0055】
これにより、図9に示すように、通過空間PSから上部に向かう液体培地Lの流れを、通過空間PSの通過後、早い段階で、つまり、液体培地Lの流れが早い段階で、マイクロウェルMの中心方向に向かう流れa97とすることができる。よって、液体培地Lの流れa97に沿って細胞塊Cを移動させることによって、細胞塊Cの取得率を上げることができる。
【実施例3】
【0056】
本発明に係る細胞塊取得装置の一例である細胞塊取得装置300について説明する。前述の実施例1における細胞塊取得装置100では、細胞塊Cが通過空間PSに到達しない場合がある。このような細胞塊Cの取得失敗は、例えば、底部空間BSにおいて、液体培地Lの流れが乱れる場合に生ずる。そこで、本実施例における細胞塊取得装置300は、実施例1における細胞塊取得装置100とは異なる細胞塊受容凹部形成部133の底部の形状を有するものである。なお、以下においては、細胞塊取得装置300において、細胞塊取得装置100と同様の構成については、細胞塊取得装置100と同様の番号を付し、詳細な説明を省略する。なお、図10は、細胞塊取得装置300の断面を示す図であり、実施例1における図3に相当する図である。
【0057】
第1 構成
細胞塊取得装置300の構成について図10を用いて説明する。細胞塊取得装置300の細胞塊受容凹部形成部333は、曲面状の底面E9を有している。これにより、細胞塊取得装置300をマイクロウェルMの所定の位置に配置したときに、細胞塊受容凹部形成部333とマイクロウェルMの底部との間に形成される底部空間BS3を、マイクロウェルMの底面に沿って形成される液体培地Lの流れa41、a43に沿う形状とすることができる。
【0058】
これにより、底部空間BS3において、液体培地Lの流れが乱れることを防止し、液体培地Lの流れa41、a43から、通過空間PSにおける液体培地Lの流れa45へと、スムーズに繋げることができる。よって、細胞塊Cの取得率を上げることができる。
【0059】
なお、細胞塊取得装置300は、例えば、図6Bにおける固化PDMS部材P130の面T1に沿った切断を実施しないことによって、製造することができる。
【0060】
[他の実施例]
(1)細胞塊受容部130の製造材料:前述の実施例1においては、細胞塊受容部130をPDMSによって製造するとしたが、所定の形状を維持できるものであれば、例示のものに限定されない。
【0061】
(2)流路規制部材210:前述の実施例2においては、流路規制部材210は、PDMSを用いて製造したが、所定の形状を維持できるものであれば、例示のものに限定されない。
【0062】
(3)マイクロウェルM:前述の実施例1〜実施例3においては、一つのマイクロウェルMを用いて細胞を培養し、回収することとしたが、複数のマイクロウェルMによってマイクロウェル・アレイを形成し、それぞれのマイクロウェルMに細胞塊を形成し、全て又は一部の細胞塊を同時に、細胞塊取得装置100〜細胞塊取得装置300を利用して、回収するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る細胞塊取得装置は、例えば、IPS細胞(Induced Pluripotent Stem cell)の製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
100・・・・・細胞塊取得装置
110・・・・・エア射出ノズル
130・・・・・細胞塊受容部
131・・・・ノズル支持部
133・・・・細胞塊受容凹部形成部
135・・・・受容凹部成型部材
200・・・・・細胞塊取得装置
210・・・・・流路規制部材
300・・・・・細胞塊取得装置
330・・・・・細胞塊受容部
333・・・・細胞塊受容凹部形成部
図1
図2
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図11