【実施例1】
【0026】
本発明に係る細胞塊取得装置の一例である細胞塊取得装置100について説明する。細胞塊取得装置100は、所定の細胞培養容器内で培養された細胞塊を簡単に取得するための装置である。
【0027】
第1 構成
細胞塊取得装置100の構成について
図1を用いて説明する。細胞塊取得装置100は、マイクロウェルMにおいて培養した細胞塊Bを取得するための装置である。
【0028】
細胞塊取得装置100は、エア射出ノズル110、及び、細胞塊受容部130を有している。細胞塊受容部130は、エア射出ノズル110に固定されており、一体となっている。
【0029】
エア射出ノズル110は、エア射出用のμコンプレッサ等をμTASに接続されている(図示せず)細長い筒状の部材である。エア射出ノズル110は、一端にエア射出開口111を有している。エア射出ノズル110は、μコンプレッサから取得したエアを、エア射出開口111から射出する。
【0030】
細胞塊受容部130は、細胞塊Bを取得する際にマイクロウェルMに注入された液体培地L内に位置する。細胞塊受容部130は、ノズル支持部131及び細胞塊受容凹部形成部133を有している。
【0031】
図1において、マイクロウェルMの開口部から曲面状の底部に向かう軸をZ軸、Z軸に対してそれぞれ垂直なX軸、Y軸であって、互いに直交するX軸、Y軸を設定し、X軸、Y軸、Z軸、それぞれの方向から見た細胞塊取得装置100を、平面図、正面図、左側面図として、
図2A、
図2B、
図2Cに示す。なお、
図2A、
図2Cにおいては、取得する細胞塊Cを点線にて示している。
【0032】
図2Aに示すように、ノズル支持部131は、細胞塊受容凹部形成部133の一端部側に形成される。また、
図2Bに示すように、ノズル支持部131は、細胞塊受容凹部形成部133の上面U133から突出して形成される。
【0033】
ここで、
図2AのR−R断面
図3に示す。
図3に示すように、細胞塊受容凹部形成部133は、細胞塊Bを受容するための細胞塊受容凹部S133を有している。細胞塊受容凹部S133は、中央に向かって窪んだ曲面状の底面を有している。これにより、細胞塊受容凹部131は、細胞塊Cを安定的に保持することができる。
【0034】
図2Bに示すように、細胞塊受容部130のノズル支持部131が形成される側とは反対側の端部には、垂直な端面E1が形成されている。また、
図2Cに示すように、端面E130は、受容凹部開口A133を有している。
【0035】
さらに、
図2Bに示すように、細胞塊受容凹部形成部133の底部には、水平な底面E3が形成されている。
【0036】
なお、細胞塊CをマイクロウェルMから取得する際には、細胞塊取得装置100とマイクロウェルMの底面との間、つまり、細胞塊受容凹部形成部133の底面E3とマイクロウェルPMの側壁との間に底部空間BSが形成されるように、細胞塊取得装置100をマイクロウェルMに配置する。
【0037】
同様に、細胞塊CをマイクロウェルMから取得する際には、
図2Bに示すように、細胞塊取得装置100とマイクロウェルMの側壁との間、つまり、細胞塊受容凹部形成部133の端面E1とマイクロウェルPMの側壁との間に通過空間PSが形成されるように、細胞塊取得装置100をマイクロウェルMに配置する。なお、細胞塊受容凹部形成部133のY軸方向の長さLは、マイクロウェルMの内径MLよりも短い。
【0038】
第2 細胞塊取得装置100を用いた細胞塊Cの取得方法
細胞塊取得装置100を用いてマイクロウェルM内に培養した細胞塊Cを取得する方法について、
図4を用いて説明する。マイクロウェルMから細胞塊Cを取得しようとする使用者は、細胞塊Cが培養されたマイクロウェルMに液体培地Lを、所定量、注入しておく。
【0039】
使用者は、細胞塊受容部130のノズル固定孔139にエア射出ノズル110を挿入し、エア射出ノズル110に細胞塊受容部130を取り付ける。なお、細胞塊受容部130をエア射出ノズル110に取り付ける際には、細胞塊受容部130をエア射出ノズル110のエア射出開口111から所定距離だけ離した位置に取り付ける。そして、使用者は、エア射出ノズル110をマイクロウェルMの壁面に沿うように、細胞塊取得装置100を、エア射出開口111がマイクロウェルMの所定の深さとなるまで、マイクロウェルMに挿入する。
【0040】
エア射出ノズル110のエア射出開口111を所定の位置に配置した後、使用者は、μTASを稼働させて、エア射出開口111からエアを射出する。これにより、エア射出開口111からマイクロウェルMの底面へと向かう液体培地Lの流れa41、マイクロウェルMの底面からマイクロウェルMと細胞塊受容凹部形成部133との間に形成される通路空間PSへと向かう液体培地Lの流れa43、通路空間PSを上昇する液体培地Lの流れa45、さらに、通路空間PSから上昇した後、下降し、マイクロウェルMの側壁から離れるように、細胞塊受容凹部S133へと向かう液体培地Lの流れa47を形成することができる。
【0041】
液体培地Lの流れa41によって、マイクロウェルMの底面に癒着している細胞塊Cを剥離することができる。マイクロウェルMから剥離された細胞塊Cは、液体培地Lの流れa41、a43、a45、a47に乗って、最終的に、細胞塊受容凹部S133に落下する。これにより、細胞塊Cを細胞塊受容凹部形成部133の細胞塊受容凹部S133によって受容することができる。
【0042】
このように、細胞塊取得装置100を用いることによって、マイクロウェルMに貯留する液体培地Lに制御した流れを形成し、形成した液体培地Lの流れに細胞塊Cを乗せることによって細胞塊Cの移動を操作し、最終的に、自動的に、細胞塊Cを取得することができる。
【0043】
第3 細胞塊取得装置100の製造方法
細胞塊取得装置100の製造方法について、
図5、
図6を用いて説明する。細胞塊取得装置100を製造するにあたって、まずは、細胞塊受容凹部形成部133を製造する。細胞塊受容凹部形成部133の製造には、所定のマイクロウェルを製造用マイクロウェルPMとして用意する。なお、細胞塊Cを培養するマイクロウェルMの大きさ、及び、製造する細胞塊受容凹部形成部133の大きさに合わせた製造用マイクロウェルPMを用意する。
【0044】
図5Aに示すように、製造用マイクロウェルPMに所定量のポリジメチルシロキサン(PDMS)を注入する。その後、
図5Bに示すように、受容凹部成型部材135を、注入したPDMS内の、細胞塊受容凹部S133を形成しようとする位置に配置する。受容凹部形成部材135は、細胞塊受容凹部S133の形成に用いる部材である。受容凹部形成部135は、例えば、所定のプラスチックによって形成されている。
【0045】
ここで、受容凹部形成部135の形状について、
図7を用いて説明する。
図7において、Aは受容凹部形成部材135の平面図を、Bは受容凹部形成部材135の正面図を、Cは受容凹部形成部材135の左側面図を、Dは受容凹部形成部材135の底面図を、それぞれ示している。
図7Bに示すように、受容凹部形成部材135は、一の端部に位置する曲面形状の凹部形成端部135a、及び、凹部形成端部135aに連続する本体部135bを有している。また、
図7Cに示すように、凹部形成端部135aと本体部135bとは、接続部において段差を形成している。これにより、細胞塊取得装置100の細胞塊受容凹部形成部133に、細胞塊受容凹部S133の取り囲むような側壁を形成することができる。
【0046】
受容凹部形成部材135を配置した後、製造用マイクロウェルPM内のPDMSに対してエア抜きを実施する。摂氏100度で養生し、PDMSが固化した固化PDMS部材P130が形成されると、
図6Aに示すように、受容凹部形成部材135を取り除く。
【0047】
その後、
図6Bに示すように、製造用マイクロウェルPMから、固化PDMS部材P130を取り出し、固化PDMS部材P130の底部から細胞塊受容凹部S133の底部までの間の位置T1で、固化PDMS部材P130の半球状部分の一部を切除する。これにより、細胞塊取得装置100をマイクロウェルM内に配置した際に、マイクロウェルMの底部と細胞塊取得装置100との間に底部空間BSを形成することができる。
【0048】
さらに、固化PDMS部材P130から、細胞塊受容凹部131が形成されている側の一部を、製造用マイクロウェルPMの側壁から所定の位置T3で、細胞塊受容凹部S133が露出するように垂直に切除する。これにより、細胞塊取得装置100をマイクロウェルMの内部に位置させたときに、細胞塊取得装置100とマイクロウェルMとの間に通過空間PSを形成することができる。
【0049】
以上により、
図6Cに示すような細胞塊受容部130を形成する。その後、形成した細胞塊受容部130のノズル固定部131の所定の位置からエア射出ノズル110を挿入し、細胞塊受容凹部形成部133を貫通させて、エア射出開口111を細胞塊受容凹部形成部133の外部に位置させる。
【実施例2】
【0050】
本発明に係る細胞塊取得装置の一例である細胞塊取得装置200について説明する。前述の実施例1における細胞塊取得装置100では、通過空間PSを通過したとしても、細胞塊受容凹部S133に到達しない場合がある。このような細胞塊Cの取得失敗は、例えば、一連の液体培地Lの流れが、所定よりも強くなく、流れa47におけるマイクロウェルMから離れる方向に向かう力が弱い場合に生ずる。そこで、本実施例における細胞塊取得装置200は、実施例1における細胞塊取得装置100に、流れ規制部材210を追加配置した装置である。なお、以下においては、細胞塊取得装置200において、細胞塊取得装置100と同様の構成については、細胞塊取得装置100と同様の番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0051】
第1 構成
細胞塊取得装置200の構成について
図8及び
図8AにおけるR−R断面を示す
図9を用いて説明する。細胞塊取得装置200は、細胞塊取得装置100に加えて、流路規制部材210を配置している。
【0052】
流路規制部材210は、
図8Aに示すように、マイクロウェルMの内部、マイクロウェルMの側壁に沿って配置される。なお、流路規制部材210は、PDMSによって形成される。
【0053】
また、流路規制部材210は、マイクロウェルMに取り付けられる。
【0054】
図8Bに示すように、流路規制部材210は、流路規制部材210を、通過空間PSの上部に配置している。また、
図9に示すように、流路規制部材210は、断面三角形状を有している。流路規制部材210は、マイクロウェルMの側壁から中心に向かって上昇する斜面S210を有している。
【0055】
これにより、
図9に示すように、通過空間PSから上部に向かう液体培地Lの流れを、通過空間PSの通過後、早い段階で、つまり、液体培地Lの流れが早い段階で、マイクロウェルMの中心方向に向かう流れa97とすることができる。よって、液体培地Lの流れa97に沿って細胞塊Cを移動させることによって、細胞塊Cの取得率を上げることができる。
【実施例3】
【0056】
本発明に係る細胞塊取得装置の一例である細胞塊取得装置300について説明する。前述の実施例1における細胞塊取得装置100では、細胞塊Cが通過空間PSに到達しない場合がある。このような細胞塊Cの取得失敗は、例えば、底部空間BSにおいて、液体培地Lの流れが乱れる場合に生ずる。そこで、本実施例における細胞塊取得装置300は、実施例1における細胞塊取得装置100とは異なる細胞塊受容凹部形成部133の底部の形状を有するものである。なお、以下においては、細胞塊取得装置300において、細胞塊取得装置100と同様の構成については、細胞塊取得装置100と同様の番号を付し、詳細な説明を省略する。なお、
図10は、細胞塊取得装置300の断面を示す図であり、実施例1における
図3に相当する図である。
【0057】
第1 構成
細胞塊取得装置300の構成について
図10を用いて説明する。細胞塊取得装置300の細胞塊受容凹部形成部333は、曲面状の底面E9を有している。これにより、細胞塊取得装置300をマイクロウェルMの所定の位置に配置したときに、細胞塊受容凹部形成部333とマイクロウェルMの底部との間に形成される底部空間BS3を、マイクロウェルMの底面に沿って形成される液体培地Lの流れa41、a43に沿う形状とすることができる。
【0058】
これにより、底部空間BS3において、液体培地Lの流れが乱れることを防止し、液体培地Lの流れa41、a43から、通過空間PSにおける液体培地Lの流れa45へと、スムーズに繋げることができる。よって、細胞塊Cの取得率を上げることができる。
【0059】
なお、細胞塊取得装置300は、例えば、
図6Bにおける固化PDMS部材P130の面T1に沿った切断を実施しないことによって、製造することができる。
【0060】
[他の実施例]
(1)細胞塊受容部130の製造材料:前述の実施例1においては、細胞塊受容部130をPDMSによって製造するとしたが、所定の形状を維持できるものであれば、例示のものに限定されない。
【0061】
(2)流路規制部材210:前述の実施例2においては、流路規制部材210は、PDMSを用いて製造したが、所定の形状を維持できるものであれば、例示のものに限定されない。
【0062】
(3)マイクロウェルM:前述の実施例1〜実施例3においては、一つのマイクロウェルMを用いて細胞を培養し、回収することとしたが、複数のマイクロウェルMによってマイクロウェル・アレイを形成し、それぞれのマイクロウェルMに細胞塊を形成し、全て又は一部の細胞塊を同時に、細胞塊取得装置100〜細胞塊取得装置300を利用して、回収するようにしてもよい。