(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JIS L1096(織物及び編物の生地試験方法)の引裂強さ(ペンジュラム法)に準じて測定した引裂け強度が、5N以上、50N以下であることを特徴とする請求項1記載の通気性繊維布帛。
JIS L1096(織物及び編物の生地試験方法)の引裂強さ(ペンジュラム法)に準じて測定した引裂け強度が、5N以上、50N以下であることを特徴とする請求項4記載の通気性繊維布帛の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る通気性繊維布帛について、詳細に説明する。
【0013】
(実施形態)
本発明の実施形態に係る通気性繊維布帛は、ウレタン樹脂が含浸している繊維布帛であり、所定の繊維布帛に所定の方法によってウレタン樹脂を含浸させることで得ることができる。さらに、本実施形態に係る通気性繊維布帛は、通気度が0.01cm
3/cm
2・s以上、10.00cm
3/cm
2・s以下である。
【0014】
本実施形態において、繊維布帛とは、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、アクリル、アセテート、レーヨン、ポリ乳酸、大豆蛋白、絹、羊毛、綿または麻などからなる化学繊維や天然繊維等、いかなるものからなる繊維であってもよく、また、これらの繊維が混繊、混紡、交織、交編等がなされているものであってもよい。
【0015】
また、繊維布帛の形態としては、織物、編物または不織布等、いかなる形態を有するものであってもよい。
【0016】
また、繊維布帛に対して、染色加工、捺染加工、撥水加工、制電加工、吸水加工、SR加工、抗菌防臭加工、制菌加工、消臭加工、紫外線遮蔽加工、防炎加工またはカレンダー加工などを施してもよい。
【0017】
上述のとおり、本実施形態における通気性繊維布帛を構成する繊維布帛には、ウレタン樹脂が含浸している。ここで、ウレタン樹脂が含浸しているとは、繊維布帛の表面だけにウレタン樹脂が存在するのではなく、少なくとも一部のウレタン樹脂が繊維布帛の厚み方向に浸透しているものを意味する。
【0018】
ウレタン樹脂が繊維布帛に含浸していることにより、繊維布帛の表面(表側の面および裏面の面)および内部における繊維がウレタン樹脂によって柔軟に拘束されるため、表面のみに局所的に樹脂が存在するものに比べ、柔らかな風合いを維持しながら、通気量を適度に低下させることができ、また、洗濯処理などによる経時的な通気度の増加を抑制できるので、防風性を維持することができる。
【0019】
また、ウレタン樹脂は水で凝固されているとよい。水で凝固されたウレタン樹脂は、水中で凝固する際に、ウレタン樹脂で形成された膜の表面に多数の孔が形成されたり、また、膜自体が形成されずに繊維と繊維の間を橋渡しする糸状で存在したりする。このため、繊維と繊維をより柔軟に拘束し、繊維布帛に適度の伸縮性を与えるので、風合いをより柔らかくするとともに、洗濯処理などによる通気度の増加を一層抑制することができる。
【0020】
また、本実施形態における通気性繊維布帛において、繊維布帛の質量に対するウレタン樹脂の付与量は、0.01質量%以上、30質量%以下であるとよい。この場合、ウレタン樹脂の付与量の下限は、0.1質量%以上とすることがより好ましく、さらに好ましくは1.0質量%以上がよい。また、ウレタン樹脂の付与量の上限は、20質量%以下とすることがより好ましく、15%質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下がさらにより好ましい。ウレタン樹脂の付与量が下限を下回ると、通気度を十分低下させることができなかったり、洗濯処理などによる通気度の増加を十分抑制することができなくなったりするおそれがある。また、ウレタン樹脂の付与量が上限を超えると、通気度が低下しすぎたり、風合いが硬くなるおそれがある。
【0021】
また、本実施形態における通気性繊維布帛は、通気度が0.01cm
3/cm
2・s以上、10.00cm
3/cm
2・s以下である。通気度がこの範囲であれば、ジャンパー、コート、ウインドブレーカーなどの衣服等に適した通気性および防風性を有する通気性繊維布帛とすることができる。また、本実施形態における通気性繊維布帛を、ジャンパー、コート、ウインドブレーカーなどの衣服や手袋等に用いて使用し、洗濯処理等をおこなったとしても、防風性が低下することを抑制することができ、所望の防風性を長期間維持することができる。
【0022】
また、本実施形態における通気性繊維布帛を、羽毛などの中綿を用いたダウンジャケットの表地、裏地、ダウンパック、羽毛布団の側地などに用いる場合、通気度は、0.01cm
3/cm
2・s以上、1.5cm
3/cm
2・s以下であるとよい。通気度がこの範囲であれば、羽毛などが飛び出すことを防止する飛び出し防止性能を有する通気性繊維布帛を実現することができる。また、この通気性繊維布帛を、ダウンジャケットや羽毛布団の側地等に用いて使用し、洗濯処理等を行ったとしても、羽毛などの飛び出し防止性能が低下することを抑制できる。
【0023】
なお、本実施形態における通気性繊維布帛に対して、染色加工、捺染加工、撥水加工、制電加工、吸水加工、SR加工、抗菌防臭加工、制菌加工、消臭加工、紫外線遮蔽加工、防炎加工またはカレンダー加工などを施すことにより、性能を向上させたり機能性を付与させたりした通気性繊維布帛を実現することができる。特に、防水性を付与させたいときには撥水加工やカレンダー加工を行うとよい。
【0024】
以上、本実施形態に係る通気性繊維布帛によれば、衣服や布団等に用いた場合に、優れた防風性および羽毛の飛び出し抑制性能を有する通気性繊維布帛を得ることができる。また、衣服や布団側地等に用いて使用し、洗濯処理をおこなったとしてもこれらの性能の低下を抑制することができ、性能の経時的悪化を抑制できる通気性繊維布帛を得ることができる。
【0025】
さらに、一般的には、繊維布帛に樹脂加工を行うと、引裂け強度が大きく低下するといわれているが(例えば、特許文献1の[0026]、[0041]参照)、本実施形態に係る通気性繊維布帛では、繊維布帛にウレタン樹脂を含浸させているので、繊維布帛を構成する糸や、糸を構成する繊維が柔軟に拘束されるので、引裂け強度が低下することを抑制できる。また、好ましい形態であれば、引裂け強度を向上させることもできる。
【0026】
なお、引裂け強度は、5N以上が好ましく、より好ましくは8N以上、さらに好ましくは10N以上がよい。引裂け強度の上限は特に限定されず、用途等によって任意に設定されるが、衣服や布団側地用途では50N程度である。
【0027】
次に、本発明の実施形態に係る通気性繊維布帛の好ましい製造方法について説明する。なお、本実施形態に係る通気性繊維布帛の製造方法は、以下の態様に限定されるものではない。また、これまで説明した構成についての詳細な記載は、省略または簡略化した。
【0028】
本実施形態に係る通気性繊維布帛の製造方法は、繊維布帛にウレタン樹脂溶液を付与した後、当該繊維布帛を水中に浸漬してウレタン樹脂を凝固させるものである。
【0029】
まず、所定の繊維布帛を用意して、この繊維布帛に所定の方法によってウレタン樹脂溶液を付与する。本実施形態では、ディップ−ニップ法を用いて、繊維布帛にウレタン樹脂溶液を付与した。ディップ−ニップ法は、ウレタン樹脂溶液に繊維布帛を浸漬し(ディップ)した後、余剰なウレタン樹脂溶液をロールで絞って(ニップ)除去することによって、繊維布帛にウレタン樹脂溶液を付与するものである。
【0030】
次に、このようにして得られた繊維布帛(ウレタン樹脂溶液を付与した繊維布帛)を水中に浸漬し、ウレタン樹脂をゲル化させて凝固させる。これにより、ウレタン樹脂が含浸された繊維布帛を得ることができる。
【0031】
繊維布帛をウレタン樹脂溶液に浸漬する(ディップする)際、ディップ回数は1回でもよいし、2回以上であってもよい。また、1回の浸漬時間は特に限定されるものではないが、0.1秒〜1分程度がよい。1回の浸漬時間が0.1秒未満では繊維布帛に対しウレタン樹脂溶液を十分付与できないおそれがあり、また、1回の浸漬時間が1分を超えると生産性が低下してしまうおそれがある。
【0032】
また、ウレタン樹脂溶液を浸漬後、余剰なウレタン樹脂溶液をロールで絞る(ニップする)際、ニップ回数は1回でもよいし、2回以上であってもよい。
【0033】
また、ディップとニップの組み合わせは、ディップ1回の後ニップ1回、ディップ2回の後ニップ1回、ディップ2回の後ニップ2回など任意の組み合わせとすることができる。また、ディップ1回した後ニップ1回し、再度、ディップ1回した後ニップ1回行うなどの組み合わせであってもよい。なお、ウレタン樹脂溶液が含浸しがたい繊維布帛を用いる場合には、ディップおよび/またはニップを複数回行うとよい。
【0034】
また、ディップ−ニップ法にて繊維布帛にウレタン樹脂溶液を付与する前に、繊維布帛に対し、水やエチルアルコール、またはこれらの混合物をディップ−ニップ法などにより付与し、繊維布帛内へのウレタン樹脂溶液の含浸の程度を調整してもよい。
【0035】
ディップ−ニップ法にて繊維布帛に付与されるウレタン樹脂溶液の量(ピックアップ)は、目的とする通気度等により任意に選択すればよいが、繊維布帛の質量に対して10%から200%の質量のウレタン樹脂溶液を付与するとよい。この場合、繊維布帛の質量に対するウレタン樹脂溶液の質量の割合の下限は、20%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは30%以上がよい。また、繊維布帛の質量に対するウレタン樹脂溶液の質量の割合の上限は、150%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは100%以下がよい。
【0036】
繊維布帛の質量に対するウレタン樹脂溶液の質量の割合が10%未満では、十分な通気量の低下および通気量の悪化の抑制効果が十分得られないおそれがある。また、繊維布帛の質量に対するウレタン樹脂溶液の質量の割合が200%を超えると通気度が小さくなりすぎたり、風合いが硬くなったりするおそれがある。
【0037】
また、ニップに用いるロールは、ゴムロールであっても、金属ロールであっても、また、金属ロールとゴムロールとを組み合わせたものであってよく、特に限定されるものではない。また、ニップ圧についても、特に限定されるものではないが、ゲージ圧で0.1kg/cm
2(9.8kPa)〜100kg/cm
2(9800kPa)程度がよい。
【0038】
また、ウレタン樹脂溶液は、水により凝固するウレタン樹脂と有機溶剤とを含むものである。この場合、ウレタン樹脂は、水で凝固するものであれば特に限定されるものではなく、エーテル系、エステル系、エステルーエーテル系またはポリカーボネート系等などのウレタン樹脂を挙げることができる。
【0039】
また、有機溶剤は、ウレタン樹脂を溶解し、かつ、ウレタン樹脂溶液が付与された繊維布帛が水に浸漬された際、水と置き換わり、ウレタン樹脂を凝固させることができるものである。具体的には、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド、N−メチルピロリドン、またはヘキサメチレンホスホンアミドなどが挙げられる。好ましくは、有機溶剤としてジメチルホルムアミドを用いるとよい。
【0040】
また、ウレタン樹脂溶液中のウレタン樹脂の固形分の量は、0.1質量%以上、15質量%以下であるとよい。この場合、ウレタン樹脂の固形分量の下限は、0.2質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上がさらに好ましい。また、ウレタン樹脂の固形分量の上限は、13質量%以下がより好ましく、さらに好ましくは10質量%以下、さらにより好ましくは9質量%以下がよい。
【0041】
ウレタン樹脂溶液中のウレタン樹脂固形分の量が0.1質量%未満であると、衣服などでの使用に伴う通気度の悪化(通気度が大きくなること)を抑制することができないおそれがある。また、ウレタン樹脂溶液中のウレタン樹脂固形分が15質量%を超えると、ウレタン樹脂が繊維布帛に十分含浸できなかったり、通気度が小さくなりすぎたり、風合いが硬くなってしまうおそれがある。
【0042】
また、ウレタン樹脂溶液には、ウレタン樹脂と前記の有機溶剤以外に、トルエン、メチルエチルケトンなどの他の有機溶剤や架橋剤、顔料、セル調整剤などの界面活性剤、その他に、抗菌剤、消臭剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤をはじめ、牛皮や卵殻膜などのプロテインパウダー、吸湿性、吸水性を有するアクリル粒子等を本発明の目的を逸脱しない範囲で添加してもよい。
【0043】
また、ウレタン樹脂溶液が付与された繊維布帛を水中に浸漬してウレタン樹脂を凝固させる場合、ウレタン樹脂を凝固させる水は、水のみであってもよいが、前記ウレタン樹脂溶液に用いたジメチルホルムアミドのような有機溶剤が含まれているものであってもよい。水に含まれるジメチルホルムアミドのような有機溶剤の量は30質量%以下がよく、より好ましくは15質量%以下である。
【0044】
さらに、水中でウレタン樹脂が凝固した後、繊維布帛から有機溶剤等を除去するための脱溶媒処理を行うとよい。脱溶媒処理は、水を用いて行うとよい。この場合、水の温度は特に限定されないが、40℃〜80℃程度のお湯を用いると脱溶媒が速く行われる。さらに、脱溶媒処理の後に、60〜150℃程度で乾燥を行うとよい。また、乾燥した後は、必要に応じ、撥水加工、帯電防止加工、抗菌防臭加工、制菌加工、カレンダー加工、柔軟加工、染色加工、仕上げセット等を行ってもよい。通気度を低下させるとの観点からは、カレンダー加工を行うとよく、防水性を付与させるとの観点からは、撥水加工やカレンダー加工を行うとよい。また、羽毛の飛び出し抑止性の観点からは、カレンダー加工を行うとよい。
【0045】
以上、本実施形態に係る通気性繊維布帛の製造方法によれば、ウレタン樹脂溶液を繊維布帛にディップ−ニップ法にて付与し、かつ、ウレタン樹脂を水中に浸漬して湿式法にて凝固させている。これにより、コーティング法やスプレー法などによってウレタン樹脂溶液を繊維布帛に付与したものや乾式法にて樹脂成膜した場合ものに比べ、繊維布帛の内部にまでウレタン樹脂を含浸させることができる。特に、本実施形態における製造方法によって得られた通気性繊維布帛は、乾式法にて樹脂成膜したものと比べ、繊維布帛に対するウレタン樹脂の付着状態が異なる。
【0046】
このように繊維布帛の内部にまでウレタン樹脂が含浸されているので、本実施形態における通気性繊維布帛を衣服等に用い、伸縮、摩耗、屈曲、洗濯処理などが繰り返して施されても、その使用によって通気度が変化することを抑制できる。つまり、防風性の低下を抑制することができる。また、本実施形態における製造方法によって得られた通気性繊維布帛は、風合いも柔らかく、樹脂の付与に起因する縫目ずれが発生しやすくなるなどの問題の発生も抑止することができる。
【0047】
さらに、本実施形態における製造方法では、繊維布帛にウレタン樹脂を含浸させているので、繊維布帛を構成する糸や、糸を構成する繊維が柔軟に拘束される。これにより、引裂け強度の低下を抑制することもできる。あるいは、構成によっては、引裂け強度を向上させることもできる。
【0048】
(実施例)
以下、本発明に係る通気性繊維布帛およびその製造方法について、実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明に係る通気性繊維布帛およびその製造方法は、これらに限定されるものではない。なお、以下に記載される「部」とは質量部のことであり、「%」は質量%のことである。また、各種物性等は、以下の方法にて測定した。
【0049】
(繊維布帛への樹脂の付着状態)
繊維布帛への樹脂の付着状態は、電子顕微鏡(SEMEDX Type H形、日立サイエンスシステムズ製)を用い100〜1500倍にて観察を行った。
【0050】
(通気度)
通気度は、「JIS L1096(織物及び編物の生地試験方法)」のA法(フラジール形法)に準じて測定した。
【0051】
(洗濯処理)
洗濯処理は、「JIS L0217(繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法)」の103法に準じて10回行った。なお、洗濯処理10回後とは、25分間洗剤を含む洗濯液中で洗濯を行い、その後10分間注水を行いながらのすすぎを2回行ったものを洗濯5回としたときに、この操作を2回繰り返し、乾燥処理として最後に1回のみ吊り干し乾燥を行ったものとした。この場合、洗濯用合成洗剤は花王株式会社製のアタック高活性バイオEXを1g/lで使用し、洗濯機は旧松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)製のナショナル全自動電気洗濯機NA−F50Y2を用いた。なお、乾燥後、ドライアイロン仕上げなどの熱処理は行っていない。
【0052】
(耐水圧)
耐水圧は、「JIS L1092(繊維製品の防水性試験方法)」の静水圧法(A法(低水圧法))に準じて測定を行った。
【0053】
(引裂け強度)
引裂け強度は、「JIS L1096(織物及び編物の生地試験方法)」の引裂強さ(ペンジュラム法)に準じて測定を行った。
【0054】
<実施例1>
実施例1では、ナイロン繊維を用いた平織物(経糸、緯糸とも22デシテックス、24フィラメント。密度:タテ206本/2.54cm、ヨコ151本/2.54cm、目付34g/m
2)を酸性染料で青色に染色したものを繊維布帛として用いた。
【0055】
まず、この繊維布帛に対して下記のウレタン樹脂および有機溶剤からなるウレタン樹脂溶液をディップ−ニップ法(2回ディップ後、1回ニップ)で付与した後(ピックアップ73%)、直ちに水中に浸漬してウレタン樹脂を凝固させ、引き続き脱溶媒処理と乾燥処理(120℃、3分)を行った。
【0056】
ウレタン樹脂溶液(ウレタン樹脂溶液中のウレタン樹脂の固形分:8.1%)
・ウレタン樹脂:クリスボン8006HV 100部
(エステル系ウレタン樹脂(DIC(株)製)、ウレタン樹脂固形分30%)
・有機溶剤:ジメチルホルムアミド 270部
【0057】
次に、旭硝子株式会社製のフッ素系撥水剤アサヒガードAG−E081を用いて撥水加工を行った。さらに、カレンダー処理も行った。このようにして得られた通気性繊維布帛を手で触ったところ、とても柔らかかった。なお、繊維布帛へのウレタン樹脂の付与量は2g/m
2であった。得られた通気性繊維布帛における各種物性等の測定結果を以下に記す。
【0058】
(繊維布帛への樹脂の付着状態)
通気性繊維布帛の表と裏の表面を100倍で観察すると、表の面および裏の面の両表面における凹部および凸部のいずれにもほぼ均一に樹脂が付着していることが確認された。また、通気性繊維布帛を1500倍で観察すると、繊維と繊維の間に虫食い状の穴のあいた薄いフィルム状のものや、繊維と繊維の間を橋渡しする太さ1μm未満の細い糸状物が確認された。
【0059】
また、通気性繊維布帛の断面を500倍で観察すると、繊維布帛の表面付近には樹脂が多く存在し、繊維間の一部を埋めたものや繊維間を橋渡しする糸状のものが確認された。また、繊維布帛の厚み方向の中心部や糸の中心部分の繊維の表面にも1μm程度の太さの糸状物が確認され、ウレタン樹脂が繊維布帛の中心部にまで含浸していることが確認された。また、コーティング法でウレタン樹脂を繊維布帛に付与して水中で凝固させる湿式凝固法で形成した膜で一般的にみられる多孔質膜は確認されなかった。
【0060】
(通気度)
洗濯処理前の通気度は0.09cm
3/cm
2・sであり、洗濯処理後の通気度は0.12cm
3/cm
2・sであった。
【0061】
(耐水圧)
洗濯処理前の耐水圧は500mmであり、洗濯処理後の耐水圧は600mmであった。
【0062】
(引裂け強度)
たて糸引裂け強さは9.2Nであり、よこ糸引裂強さは9.6Nであった。
【0063】
<実施例2>
実施例2では、ナイロン繊維を用いた平織物(経糸56デシテックス、24フィラメント。緯糸94デシテックス、48フィラメント。密度:タテ146本/2.54cm、ヨコ116本/2.54cm、目付58g/m
2)を酸性染料で赤色に染色したものを繊維布帛として用いた。
【0064】
まず、この繊維布帛に対して下記のウレタン樹脂および有機溶剤からなるウレタン樹脂溶液をディップ−ニップ法(1回ディップ後、1回ニップ)で付与した後(ピックアップ80%)、直ちに水中に浸漬してウレタン樹脂を凝固させ、引き続き脱溶媒処理と乾燥処理(120℃、3分)を行った。
【0065】
ウレタン樹脂溶液(ウレタン樹脂溶液中のウレタン樹脂の固形分:8.1%)
・ウレタン樹脂:レザミンCUS−2360 100部
(エーテル系ウレタン樹脂(大日精化工業(株)製)、ウレタン樹脂固形分30%)
・有機溶剤:ジメチルホルムアミド 270部
【0066】
次に、旭硝子株式会社製のフッ素系撥水剤アサヒガードAG−E081を用いて撥水加工を行った。さらに、カレンダー処理も行った。このようにして得られた通気性繊維布帛を手で触ったところ、とても柔らかかった。なお、繊維布帛へのウレタン樹脂の付与量は4g/m
2であった。得られた通気性繊維布帛における各種物性等の測定結果を以下に記す。
【0067】
(繊維布帛への樹脂の付着状態)
通気性繊維布帛の表と裏の表面を100倍で観察すると、表の面および裏の面の両表面における凹部および凸部のいずれにもほぼ均一に樹脂が付着していることが確認された。また、通気性繊維布帛を1500倍で観察すると、繊維と繊維の間に虫食い状の穴のあいた薄いフィルム状のものや、繊維と繊維の間を橋渡しする太さ1μm未満の細い糸状物が確認された。
【0068】
また、通気性繊維布帛の断面を500倍で観察すると、繊維布帛の表面付近には樹脂が多く存在し、繊維間の一部を埋めたものや繊維間を橋渡しする糸状のものが確認された。また、繊維布帛の厚み方向の中心部や糸の中心部分の繊維の表面にも1μm程度の太さの糸状物が確認され、ウレタン樹脂が繊維布帛の中心部にまで含浸していることが確認された。また、コーティング法でウレタン樹脂を繊維布帛に付与して水中で凝固させる湿式凝固法で形成した膜で一般的にみられる多孔質膜は確認されなかった。
【0069】
(通気度)
洗濯処理前の通気度は1.47cm
3/cm
2・sであり、洗濯処理後の通気度は1.49cm
3/cm
2・sであった。
【0070】
(耐水圧)
洗濯処理前の耐水圧は350mmであり、洗濯処理後の耐水圧は370mmであった。
【0071】
(引裂け強度)
たて糸引裂強さは13.2Nであり、よこ糸引裂強さは9.2Nであった。
【0072】
<実施例3>
実施例3では、ナイロン繊維を用いた平織物(経糸17デシテックス、7フィラメント。緯糸26デシテックス、20フィラメント。密度:タテ248本/2.54cm、ヨコ157本/2.54cm、目付34g/m
2)を酸性染料で赤色に染色したものを繊維布帛として用いた。
【0073】
まず、この繊維布帛に対して下記のウレタン樹脂および有機溶剤からなるウレタン樹脂溶液をディップ−ニップ法(1回ディップ後、1回ニップ)で付与した後(ピックアップ73%)、直ちに水中に浸漬してウレタン樹脂を凝固させ、引き続き脱溶媒処理と乾燥処理(120℃、3分)を行った。
【0074】
ウレタン樹脂溶液(ウレタン樹脂溶液中のウレタン樹脂の固形分:7.5%)
・ウレタン樹脂:クリスボン8006HV 100部
(エステル系ウレタン樹脂(DIC(株)製)、ウレタン樹脂固形分30%)
・有機溶剤:ジメチルホルムアミド 300部
【0075】
次に、旭硝子株式会社製のフッ素系撥水剤アサヒガードAG−E081を用いて撥水加工を行った。さらに、カレンダー処理も行った。このようにして得られた通気性繊維布帛を手で触ったところ、とても柔らかかった。なお、繊維布帛へのウレタン樹脂の付与量は2g/m
2であった。得られた通気性繊維布帛における各種物性等の測定結果を以下に記す。
【0076】
(繊維布帛への樹脂の付着状態)
通気性繊維布帛の表と裏の表面を100倍で観察すると、表の面および裏の面の両表面における凹部および凸部のいずれにもほぼ均一に樹脂が付着していることが確認された。また、通気性繊維布帛を1500倍で観察すると、繊維と繊維の間に虫食い状の穴のあいた薄いフィルム状のものや、繊維と繊維の間を橋渡しする太さ1μm未満の細い糸状物が確認された。
【0077】
また、通気性繊維布帛の断面を500倍で観察すると、繊維布帛の表面付近には樹脂が多く存在し、繊維間の一部を埋めたものや繊維間を橋渡しする糸状のものが確認された。また、繊維布帛の厚み方向の中心部や糸の中心部分の繊維の表面にも1μm程度の太さの糸状物が確認され、ウレタン樹脂が繊維布帛の中心部にまで含浸していることが確認された。また、コーティング法でウレタン樹脂を繊維布帛に付与して水中で凝固させる湿式凝固法で形成した膜で一般的にみられる多孔質膜は確認されなかった。
【0078】
(通気度)
洗濯処理前の通気度は0.78cm
3/cm
2・sであり、洗濯処理後の通気度は0.98cm
3/cm
2・sであった。
【0079】
(耐水圧)
洗濯処理前の耐水圧は380mmであり、洗濯処理後の耐水圧は400mmであった。
【0080】
(引裂け強度)
たて糸引裂強さは10.4Nであり、よこ糸引裂強さは13.6Nであった。
【0081】
<比較例1>
比較例1では、繊維布帛にウレタン樹脂を付与しなかった以外は、実施例1と同様にして繊維布帛を得た。このようにして得られた繊維布帛における各種物性等の測定結果を以下に記す。
【0082】
(通気度)
洗濯処理前の通気度は0.77cm
3/cm
2・sであり、洗濯処理後の通気度は1.00cm
3/cm
2・sであった。
【0083】
(耐水圧)
洗濯処理前の耐水圧は300mm未満であり、洗濯処理後の耐水圧も300mm未満であった。
【0084】
(引裂け強度)
たて糸引裂強さは6.7Nであり、よこ糸引裂強さは6.1Nであった。
【0085】
<比較例2>
比較例2では、ウレタン樹脂溶液の付与方法として、ディップ−ニップ法ではなくナイフコータを用いたフローティング法を用いて繊維布帛を得た。また、ウレタン樹脂溶液は、繊維布帛の片面にのみ付与した。この結果、ウレタン樹脂が繊維布帛の裏面から漏れてしまい、それ以上加工することができなかった。
【0086】
<比較例3>
比較例3は、実施例1において、ウレタン樹脂溶液に配合されたジメチルホルムアミドの配合量を270部から5部に変更し、付与の方法をディップ−ニップ法からナイフコータを用いたフローティング法に変え、繊維布帛の片面にのみウレタン樹脂溶液を付与したのもであり、これ以外は実施例1と同様にして通気性繊維布帛を得た。得られた通気性繊維布帛を手で触ったところ、実施例1のものに比べるとやや硬く、また、反発感のあるものであった。得られた繊維布帛における各種物性等の測定結果を以下に記す。
【0087】
(繊維布帛への樹脂の付着状態)
通気性繊維布帛の表と裏の表面を100倍で観察すると、ウレタン樹脂溶液を付与した面では、表面が樹脂膜でほぼ覆われているが、糸が交絡した凸部の表面には樹脂がほとんど付着していない箇所が存在することが確認された。また、ウレタン樹脂溶液を付与しなかった面の表面には樹脂が存在しないことが確認できた。
【0088】
また、通気性繊維布帛の断面を150倍および500倍で観察すると、ウレタン樹脂溶液を付与した面の表面には、コーティング法でウレタン樹脂を繊維布帛に付与して水中で凝固させる湿式凝固法で形成した膜で一般的にみられる厚さ方向にも孔を有する多孔質膜が確認された。特に糸と糸の谷間にはウレタン樹脂が入り込んで表面に存在するものに比べて比較的大きな孔も確認されたが、糸の中心部の繊維表面には樹脂が確認さなかった。従って、比較例3では、繊維布帛の表面付近にはウレタン樹脂が存在するものの、内部にまでウレタン樹脂が含浸されていないことが確認できた。
【0089】
(通気度)
洗濯処理前の通気度は0.29cm
3/cm
2・sであり、洗濯処理後の通気度は0.33cm
3/cm
2・sであった。
【0090】
(耐水圧)
洗濯処理前の耐水圧は850mmであり、洗濯処理後の耐水圧は710mmであった。
【0091】
(引裂け強度)
たて糸引裂強さは3.2Nであり、よこ糸引裂強さは3.5Nであった。
【0092】
上記実施例1〜3および比較例1〜3で得られた繊維布帛の各種物性等の測定結果をまとめたものを以下の表1に記載する。
【0094】
表1に示す結果によれば、本実施例(実施例1〜3)における通気性繊維布帛では、通気度が、0.01cm
3/cm
2・s以上、10.00cm
3/cm
2・s以下の範囲となっている。これにより、衣服等に適した防風性を有する通気性繊維布帛を得ることができる。
【0095】
さらに、本実施例における通気性繊維布帛は、比較例の繊維布帛と比べて、洗濯処理を行っても通気度が大きく変化していないことが分かる。すなわち、防風性が低下することを抑制することができる。したがって、本実施例における通気性繊維布帛を、ジャンパー、コート、ウインドブレーカーなどの衣服や手袋等に用いた場合に、所望の防風性を長期間維持することができる。
【0096】
また、本実施例(実施例1〜3)における通気性繊維布帛では、通気度が、0.01cm
3/cm
2・s以上、1.5cm
3/cm
2・s以下の範囲となっている。これにより、本実施例における通気性繊維布帛を、羽毛などの中綿を用いたダウンジャケットの表地、裏地、ダウンパック、羽毛布団の側地などに用いた場合に、羽毛等の中綿が飛び出してしまうことを防止することができる。
【0097】
さらに、本実施例における通気性繊維布帛は、比較例の繊維布帛と比べて、洗濯処理を行っても通気度が大きく変化しないので、上記の羽毛の飛び出し防止性能が低下することを抑制することができる。したがって、羽毛の飛び出し防止性能を長期間維持することができる。
【0098】
また、本実施例における通気性繊維布帛は、比較例の繊維布帛と比べて、引裂け強度を向上させることができる。また、上述のとおり、本実施例における通気性繊維布帛は、とても柔らかい風合いとなっている。
【0099】
以上、本実施例における通気性繊維布帛によれば、防風性の低下を抑制するとともに、羽毛等の飛び出し防止性能の低下を抑制することができ、また、風合いが柔らかく、かつ引裂け強度にも優れている。
【0100】
以上、本発明に係る機能性繊維布帛およびその製造方法について、実施形態および実施例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施形態および実施例に限定されるものではない。例えば、各実施形態および実施例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施形態および実施例における構成要素を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。