特許第6205142号(P6205142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205142
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】定電圧回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   G05F1/56 320E
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-46803(P2013-46803)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-174737(P2014-174737A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂口 薫
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−029856(JP,A)
【文献】 特開2003−186554(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0195953(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を所定の出力電圧に変換して出力端子に出力する定電圧回路であって、
出力トランジスタに流れる出力電流に基づいてセンス電流を流すセンストランジスタと、
前記センス電流を受けて、前記センス電流を分割して出力する電流分割回路と、
前記電流分割回路が出力する第1分割電流を受けて電圧を発生する第1電流電圧変換回路と、
前記電流分割回路が出力する第2分割電流を受けて、前記第1電流電圧変換回路よりも高い電圧を発生する第2電流電圧変換回路と、
前記出力端子の電圧と前記センストランジスタのドレイン電圧が同じになるように前記電流分割回路を制御する出力電圧検出回路と、
を有し、前記第1電流電圧変換回路が発生する電圧を受けて、前記出力トランジスタに流れる過電流を検出し、さらに前記出力電圧の低下を受けて前記電流分割回路が前記第2分割電流を減少させるとともに前記第1分割電流を増加させることで前記出力電流を低下させるように、前記出力電圧と出力電流を制御する過電流保護回路を、
備えたことを特徴とする定電圧回路。
【請求項2】
前記第1電流電圧変換回路は、可変抵抗で構成され、前記第2電流電圧変換回路の出力信号を受けて抵抗値を可変する、
ことを特徴とする請求項1に記載の定電圧回路。
【請求項3】
前記過電流保護回路は、
前記電流分割回路が出力する第3分割電流を受けて電圧を発生する第3電流電圧変換回路を備え、
前記第1電流電圧変換回路は、可変抵抗で構成され、前記第2電流電圧変換回路及び前記第3電流電圧変換回路の出力信号を受けて抵抗値を可変する、
ことを特徴とする請求項1に記載の定電圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器や集積回路において負荷へ電力を供給する定電圧回路に関し、より詳しくは定電圧回路の過電流を防止する過電流保護回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器や集積回路において所望の電源電圧を得るために定電圧回路が必要とされる。定電圧回路は一定の電圧を出力し、負荷へ電力を供給する能力を有する。定電圧回路の出力負荷が大電流を流したり短絡したりした場合に過剰な電力が供給されることによって生じる発熱等の問題を避けるために過電流保護回路が必要とされ、精度の良い過電流保護特性を得るために様々な過電流保護回路が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
従来の過電流保護回路を備えた定電圧回路の回路図の一例を図8に示す。
従来の定電圧回路は、基準電圧源101が出力した基準電圧と、出力端子Voutの電圧を分圧回路104によって分圧した帰還電圧とを誤差増幅器102によって比較し、出力電圧が一定となるように出力トランジスタ105を制御する電圧を誤差増幅器102が出力することで、定電圧回路として動作する。
【0004】
従来の過電流保護回路103は、出力電流をセンスする出力電流センストランジスタ106を有し、出力電流センストランジスタ106の出力するセンス電流に基づいてPMOSトランジスタ107を制御することによって、出力トランジスタ105の出力電流が所定の制限電流以上とならないように動作する。この過電流保護回路103は、垂下型過電流保護回路である。
【0005】
また、従来の過電流保護回路は、センス電流を供給する出力電流センストランジスタ115と、センス電流が流れるNMOSトランジスタ116と、NMOSトランジスタ116とカレントミラー回路を構成するNMOSトランジスタ117と、センス電流に比例した電流が流れるPMOSレベルシフタ118と、PMOSレベルシフタ118のドレイン電圧をゲートに入力されたPMOSレベルシフタ119と、によって構成された出力電圧検出回路を備えている。出力電圧検出回路は、PMOSレベルシフタ119によって、出力電流センストランジスタ115のドレイン電圧が出力端子Voutの電圧と等しくなるように制御する。更に、PMOSレベルシフタ120のゲートにPMOSレベルシフタ118のドレイン電圧を入力することで、出力電流センストランジスタ106のドレイン電圧が出力端子Voutの電圧と等しくなるように制御する。このような構成とすることで、出力トランジスタ105と出力電流センストランジスタ106のソースドレイン間電圧が等しくなるので、入力端子Vinと出力端子Voutの電圧差が小さい場合であっても、精度の良い過電流保護特性を得ることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−029856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の定電圧回路では、垂下型過電流保護特性と同時にフォールドバック特性の過電流保護特性を得るためには、新たにフォールドバック型過電流保護回路を設ける必要があり、回路規模が増大するという課題がある。
【0008】
本発明では、簡便な回路を追加するだけで、精度が良く、垂下型過電流保護特性と同時にフォールドバック特性の過電流保護特性を有する過電流保護回路を備えた定電圧回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の定電圧回路は、上記課題を解決するために、以下のような構成とした。
出力トランジスタに流れる出力電流に基づいてセンス電流を流すセンストランジスタと、センス電流を分割して出力する電流分割回路と、電流分割回路が出力する第1分割電流を受けて電圧を発生する第1電流電圧変換回路と、電流分割回路が出力する第2分割電流を受けて電圧を発生する第2電流電圧変換回路と、出力端子の電圧とセンストランジスタのドレイン電圧が同じになるように電流分割回路を制御する出力電圧検出回路と、を有し、第1電流電圧変換回路が発生する電圧を受けて、出力トランジスタに流れる過電流を検出し、出力電圧と出力電流を制御する過電流保護回路を備えた定電圧回路。
【発明の効果】
【0010】
本発明の過電流保護回路を備えた定電圧回路によれば、簡便な回路を追加するだけでフォールドバック型特性が得られるので、回路規模が増大することなく、精度が良く、垂下型とフォールドバック型の過電流保護特性を有する過電流保護回路を備えた定電圧回路を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第一の実施形態の定電圧回路を示す回路図である。
図2】第一の実施形態の定電圧回路の出力電圧−出力電流特性を示す図である。
図3】第二の実施形態の定電圧回路を示す回路図である。
図4】第二の実施形態の定電圧回路の出力電圧−出力電流特性を示す図である。
図5】第三の実施形態の定電圧回路を示す回路図である。
図6】第三の実施形態の定電圧回路の出力電圧−出力電流特性を示す図である。
図7】出力電圧検出回路の他の例を示す回路図である。
図8】従来の過電流保護回路を備えた定電圧回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第一の実施形態>
図1は、第一の実施形態の定電圧回路を示す回路図である。
第一の実施形態の定電圧回路は、基準電圧源101と、誤差増幅器102と、過電流保護回路103と、分圧回路104と、出力トランジスタ105と、を備えている。
【0013】
過電流保護回路103は、第一の出力電流センストランジスタ106と、PMOSトランジスタ107と、NMOSトランジスタ108と、抵抗109、110、126と、出力電圧検出回路121と、電流分割回路122と、を備える。電圧検出回路121は、第二の出力電流センストランジスタ115と、NMOSトランジスタ116、117と、PMOSレベルシフタ118,119と、を備える。電流分割回路122は、PMOSレベルシフタ123、124を備える。抵抗109は第一の電流電圧変換回路に相当し、抵抗126は第二の電流電圧変換回路に相当する。
【0014】
誤差増幅器102は、反転入力端子を基準電圧源101の出力端子に接続し、非反転入力端子を分圧回路104の出力端子に接続し、出力端子を出力トランジスタ105のゲートに接続する。出力トランジスタ105は、ソースを電源入力端子Vinに接続し、ドレインを定電圧出力端子Voutに接続する。分圧回路104は、定電圧出力端子Voutと接地端子の間に接続され、出力端子を誤差増幅器102の非反転入力端子に接続する。
【0015】
第一の出力電流センストランジスタ106は、ゲートを出力トランジスタ105のゲートに接続し、ソースを電源入力端子Vinに接続し、ドレインを電流分割回路122の入力端子(A点)に接続する。電流分割回路122は、第一の出力端子(C点)を抵抗109の一方の端子とNMOSトランジスタ108のゲートに接続し、第二の出力端子(D点)を抵抗126の一方の端子に接続する。抵抗109、126は、各々他方の端子を接地端子に接続する。NMOSトランジスタ108は、ソースを接地端子に接続し、ドレインを抵抗110の一方の端子とPMOSトランジスタ107のゲートに接続する。抵抗110は、他方の端子を電源入力端子Vinに接続する。PMOSトランジスタ107は、ソースを電源入力端子Vinに接続し、ドレインを出力トランジスタ105のゲートに接続する。
【0016】
PMOSレベルシフタ123及び124は、ソースをA点に接続し、ゲートに出力電圧検出回路121のレベルシフタ電圧を入力する。PMOSレベルシフタ123は、ドレインをC点に接続する。PMOSレベルシフタ124は、ドレインをD点に接続する。
【0017】
第二の出力電流センストランジスタ115は、ゲートを出力トランジスタ105のゲートに接続し、ソースを電源入力端子Vinに接続し、ドレイン(B点)をPMOSレベルシフタ119のソースに接続する。PMOSレベルシフタ119は、ゲートをPMOSレベルシフタ118のゲートに接続し、ドレインをNMOSトランジスタ116のドレインとゲート、及び、NMOSトランジスタ117のゲートに接続する。NMOSトランジスタ116、117は、ソースを接地端子に接続する。NMOSトランジスタ117は、ドレインをPMOSレベルシフタ118ドレインに接続する。PMOSレベルシフタ118は、ソースを定電圧出力端子Voutに接続する。
【0018】
次に、第一の実施形態の定電圧回路の動作を説明する。
電流分割回路122のPMOSレベルシフタ123及び124は、PMOSレベルシフタ118とカレントミラー回路を構成するので、それぞれのゲートの電圧はPMOSレベルシフタ118のドレイン電圧と等しくなる。従って、第一のセンス電流は、PMOSレベルシフタ123とPMOSレベルシフタ124のK値の比で決定される分割比で第一の分割電流と第二の分割電流に分けられ、それぞれ出力される。
【0019】
出力電流センストランジスタ106は、出力トランジスタ105が流す出力電流に基づく第一のセンス電流を流す。第一のセンス電流は、電流分割回路122によって第一の分割電流と第二の分割電流に分けられる。第一の分割電流と抵抗109によって発生する電圧に基づいて、PMOSトランジスタ108は電流を流す。その電流と抵抗110によって発生する電圧に基づいて、PMOSトランジスタ107が制御されることによって、出力トランジスタ105の出力電流が所定の制限電流以上とならないように動作する。
【0020】
出力電流センストランジスタ115は、出力トランジスタ105が流す出力電流に基づく第二のセンス電流を流す。NMOSトランジスタ116とNMOSトランジスタ117によって構成されたカレントミラー回路は、第二のセンス電流に比例した電流をPMOSレベルシフタ118に流す。PMOSレベルシフタ118とカレントミラー回路を構成するPMOSレベルシフタ119によって、出力電流センストランジスタ115のドレイン電圧が出力端子Voutの電圧と等しくなるように制御する。
【0021】
図2は、第一の実施形態の定電圧回路の出力電圧−出力電流特性を示す図である。
先ず、定電圧出力端子Voutと接地端子の間に外部で接続される負荷が高抵抗状態から低抵抗状態になっていく、即ち、定電圧回路の特性が現れる領域において出力端子電流が大きくなっていく場合を説明する。
【0022】
出力トランジスタ105の出力電流が大きくなる程、第一の出力電流センストランジスタ106が出力する第一のセンス電流は大きくなる。第一のセンス電流は、電流分割回路122に入力され、所定の分割比で抵抗109と抵抗126に分配される。ここで、C点の電圧よりD点の電圧が高くなるように、電流分割回路122の電流分割比と抵抗109、126の抵抗値を設定する。また、定電圧回路の特性が現れる条件において、D点の電圧はA点の電圧に達しないよう抵抗126を設定する。第一のセンス電流が大きくなり、抵抗109の端子間に発生する電圧が、NMOSトランジスタ108がオンする電圧に達すると、NMOSトランジスタ108は電流を流す。NMOSトランジスタ108が流す電流に基づいて、抵抗110の端子間に電圧が発生する。抵抗110の端子間に発生する電圧が、PMOSトランジスタ107がオンする電圧に達すると、PMOSトランジスタ107は電流を流す。PMOSトランジスタ107が流す電流によって、出力トランジスタ105のゲートを制御し、出力トランジスタ105の出力電流が所定の制限電流以上とならないように動作する。これが、出力電圧−出力電流特性の(a)点である。
【0023】
次に、過電流保護回路103が出力端子電流を制限し始めると、定電圧出力端子Voutの電圧が低下する。定電圧出力端子Voutの電圧が低下し始めると、出力電圧検出回路121の働きにより、A点の電圧も同様に低下する。A点の電圧がD点の電圧と近接すると、PMOSレベルシフタ124は飽和動作状態から非飽和動作状態に移る。従って、飽和動作状態を継続するPMOSレベルシフタ123とPMOSレベルシフタ124の間で電流分割比が変化し始め、第一の分割電流の比率が大きくなる。これが、出力電圧−出力電流特性の(b)点である。
【0024】
第一の分割電流の比率が大きくなると、抵抗109に流れる電流が大きくなるため、C点の電圧が上がる。C点の電圧が上がると、NMOSトランジスタ108の流す電流が大きくなり、出力トランジスタ105の出力電流をより小さく制限する。
【0025】
定電圧出力端子Voutの電圧が低下するに従い、第一の分割電流の比率が大きくなるため、出力端子電流は低下して定電圧出力端子Voutが接地端子と短絡した際の出力端子電流を低下させることが出来る。
従って、第一の実施形態の定電圧回路は、図2のような垂下型とフォールドバック型の過電流保護特性を得ることが出来る。
【0026】
以上説明したように、第一の実施形態の定電圧回路は、PMOSレベルシフタ124と抵抗126を追加するのみの簡便な回路でフォールドバック型特性が得られる。更に、第一のセンス電流の電流分割比の変化を利用してフォールドバック型特性が得られるので、消費電流が増加することない、という効果もある。
【0027】
<第二の実施形態>
図3は、第二の実施形態の定電圧回路を示す回路図である。
第二の実施形態の定電圧回路は、第一の実施形態の定電圧回路の過電流保護回路103から、第一の電流電圧変換回路と第二の電流電圧変換回路を変更した。
第二の実施形態の定電圧回路の回路構成については、第一の実施形態と同じものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0028】
第一の電流電圧変換回路は、抵抗127aと抵抗127bとNMOSトランジスタ128とで構成される。第二の電流電圧変換回路は、抵抗129aと抵抗129bで構成される。
【0029】
抵抗127aと抵抗127bは、PMOSレベルシフタ123のドレインと接地端子の間に接続される。NMOSトランジスタ128は、ソースとドレインが抵抗127bの両端に接続される。抵抗129aと抵抗129bは、D点と接地端子の間に接続され、その接続点はNMOSトランジスタ128のゲートに接続される。
【0030】
第二の実施形態の定電圧回路の動作を説明する。
図4は、第二の実施形態の定電圧回路の出力電圧−出力電流特性を示す図である。
【0031】
図4の(b)点迄の動作は、第一の実施形態の定電圧回路と同様である。ここで、(b)点に達するまで、C点の電圧よりD点の電圧が高くなるように設定し、且つ、NMOSトランジスタ128がオンするように抵抗129aと129bの抵抗値を設定する。即ち、第一の電流電圧変換回路は、抵抗127aになる。図4の(b)点より定電圧出力端子Voutの電圧が低下すると、出力電圧検出回路121の働きにより、A点の電圧も同様に低下する。A点の電圧がD点の電圧と近接すると、PMOSレベルシフタ124は飽和動作状態から非飽和動作状態に移る。従って、飽和動作状態を継続するPMOSレベルシフタ123とPMOSレベルシフタ124の間で分割比が変化し、第一の分割電流の比率が大きくなる。第二の分割電流の比率は小さくなるためD点の電圧は低下し、抵抗129aと抵抗129bの接続点、即ち、NMOSトランジスタ128のゲートの電圧も低下する。そして、NMOSトランジスタ128がオフすると、第一の電流電圧変換回路は、抵抗127aと127bの直列になる。従って、C点の電圧が上昇するので、NMOSトランジスタ108の電流が増加し、出力トランジスタ105の出力電流はより強く制限される。これが、出力電圧−出力電流特性の(c)−(d)である。即ち、出力端子電流は(c)点から(d)点まで減少する。(d)点に達して以降の動作は、第一の実施形態と同様であり、定電圧出力端子Voutが接地端子と短絡した際の出力端子電流を低下させることが出来る。
【0032】
以上説明したように、第二の実施形態の定電圧回路は、図4の(c)点から(d)点へと急峻に電流を制限することが出来るため、出力短絡時の出力端子電流を容易に低くすることが可能であり、熱損失が大きい条件を回避出来るという効果が得られる。また、電流分割回路122の分割比、及び、抵抗127a、127b、129a、129bの調整を行うことで、(b)点、(c)点、(d)点の変化点を容易に調整することが可能である。
【0033】
更に、第一のセンス電流の電流分割比の変化を利用してフォールドバック型特性が得られるので、消費電流が増加することない、という効果もある。
【0034】
<第三の実施形態>
図5は、第三の実施形態の定電圧回路を示す回路図である。
第三の実施形態の定電圧回路は、第二の実施形態の定電圧回路の過電流保護回路103から、電流分割回路122と第一の電流電圧変換回路を変更し、第三の電流電圧変換回路を追加した。
第三の実施形態の定電圧回路の回路構成については、第二の実施形態と同じものには同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0035】
電流分割回路122は、更にPMOSレベルシフタ125を備える。第一の電流電圧変換回路は、抵抗127aと抵抗127bと抵抗127cとNMOSトランジスタ128とNMOSトランジスタ130とで構成される。第三の電流電圧変換回路は、抵抗131aと抵抗131bで構成される。
【0036】
抵抗127aと抵抗127bと抵抗127cは、PMOSレベルシフタ123のドレインと接地端子の間に接続される。PMOSレベルシフタ125は、ソースをA点に接続され、ゲートに出力電圧検出回路121のレベルシフタ電圧を入力さ、ドレインを電流分割回路122の第三の出力端子(E点)に接続される。NMOSトランジスタ128は、ソースとドレインが抵抗127bと127cの両端に接続される。NMOSトランジスタ130は、ソースとドレインが抵抗127cの両端に接続される。抵抗131aと抵抗131bは、E点と接地端子の間に接続され、その接続点はNMOSトランジスタ130のゲートに接続される。
【0037】
第三の実施形態の定電圧回路の動作を説明する。
図6は、第三の実施形態の定電圧回路の出力電圧−出力電流特性を示す図である。
【0038】
ここで、C点の電圧よりE点の電圧が高く、E点の電圧よりD点の電圧が高くなるように電流分割回路122の電流分割比と各電流電圧変換回路の抵抗値を設定する。また、定電圧回路の特性が現れる条件において、D点、及び、E点の電圧はA点の電圧に達しないように、且つ、NMOSトランジスタ128とNMOSトランジスタ130がオンするように各電流電圧変換回路の抵抗値を設定する。
【0039】
図6の(d)点迄の動作は、第二の実施形態の定電圧回路と同様である。(a)点において、過電流保護回路103が出力電流を制限し始めると、定電圧出力端子Voutの電圧が低下する。定電圧出力端子Voutの電圧が低下すると、D点の電圧がA点の電圧と近接し、電流分割回路の分割比率が変化し始める((b)点)。定電圧出力端子Voutの電圧が低下してD点の電圧が低下すると、NMOSトランジスタ128がオフし((c)点)、出力端子電流をより強く制限する((d)点)。更に定電圧出力端子Voutの電圧が低下すると、出力電圧検出回路121の働きにより、E点の電圧も同様に低下する。A点の電圧がE点の電圧と近接すると、PMOSレベルシフタ125は飽和動作状態から非飽和動作状態に移り、飽和動作状態を継続するPMOSレベルシフタ123とPMOSレベルシフタ125の間で分割比が変化し始め、PMOSレベルシフタ123の出力する第一の分割電流の比率がより大きくなる((e)点)。反対に第三の分割電流の比率は小さくなるため、E点の電圧は低下して、NMOSトランジスタ130がオフし((f)点)、抵抗127cに第一の分割電流が流れるように変化するため、C点の電圧が上昇する。C点の電圧が上昇すると、出力トランジスタ105の出力電流はより強く制限され、出力端子電流は(g)点まで減少する。(g)点に達して以降の動作は第一、第二の実施形態と同様であり、定電圧出力端子Voutが接地端子と短絡した際の出力端子電流を低下させることが出来る。
【0040】
以上説明したように、第三の実施形態の定電圧回路では、(c)点から始まるフォールドバック型の過電流保護特性を、(d)点から(g)点のように段階的に特性にすることが出来る。且つ、その電圧値や電流値を抵抗値や電流分割比の多様な組み合わせで設定できるため、設計上の自由度が高く、所望の過電流保護特性を得ることが容易になるという効果が得られる。
【0041】
更に、第一のセンス電流の電流分割比の変化を利用してフォールドバック型特性が得られるので、消費電流が増加することない、という効果もある。
尚、第三の実施形態において、電流分割回路122は3つに分割電流を出力する構成としたが、本発明の効果を得るための分割数は限定されない。
【0042】
以上説明した第一から第三の実施形態において、出力電圧検出回路121を出力電流センストランジスタ115とカレントミラー回路を備えた構成で説明したが、同様の機能を有する回路であればこれに限定されるものではない。例えば、図7に示した出力電圧検出回路121のように、誤差増幅器132で構成しても良い。
【0043】
誤差増幅器132は、非反転入力端子を定電圧出力端子Voutに接続し、反転入力端子を出力電流センストランジスタ126のドレインに接続し、出力端子をPMOSレベルシフタ123、124のゲートに接続する。
【0044】
このように構成された出力電圧検出回路121は、誤差増幅器132が非反転入力端子に入力された定電圧出力端子Voutの電圧と、A点の電圧とを比較して、A点の電圧が定電圧出力端子Voutの電圧と等しくなるようにPMOSレベルシフタ123、124のゲートを制御する。
【符号の説明】
【0045】
101 基準電圧源
102、132 誤差増幅器
103 過電流保護回路
104 分圧回路
106、115 出力電流センストランジスタ
121 出力電圧検出回路
122 電流分割回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8