(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205144
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】圧電素子、圧力センサ、及び圧電素子の耐衝撃強度の増加方法
(51)【国際特許分類】
G01L 9/08 20060101AFI20170914BHJP
G01L 23/22 20060101ALI20170914BHJP
G01L 23/10 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
G01L9/08
G01L23/22
G01L23/10
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-48721(P2013-48721)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-174075(P2014-174075A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】100083688
【弁理士】
【氏名又は名称】高畑 靖世
(74)【代理人】
【識別番号】100163120
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 嘉弘
(72)【発明者】
【氏名】前田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】福井 克彦
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−174882(JP,A)
【文献】
特開2000−277233(JP,A)
【文献】
特開平5−172680(JP,A)
【文献】
実開平4−130051(JP,U)
【文献】
実開昭61−66967(JP,U)
【文献】
特開昭57−151838(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0154957(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00−23/32
G01L27/00−27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電板と、前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有すると共に導電化手段を有する絶縁板とを有する圧電素子であって、
前記圧電板と、前記絶縁板とを、前記圧電板と前記絶縁板との面方向を平行にして積層してなり、
前記導電化手段は少なくとも前記圧電板と前記絶縁板との界面、前記絶縁板の厚さ方向に延びる面、及び前記界面の反対面に形成され、当該反対面において電極と接続される圧電素子。
【請求項2】
圧電板と、前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有すると共にその表面に導電化手段を有する第1絶縁板とを、前記圧電板と第1絶縁板との面方向を平行にして積層してなる積層板と、
前記積層板の厚さに対して、±5μmの厚さを有すると共に前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有する第2絶縁板と、を
前記積層板と第2絶縁板との厚さ方向に延びる面を突合わせてなる圧電素子。
【請求項3】
圧電板と、前記圧電板の厚さに対して、±5μmの厚さを有すると共に前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有する第3絶縁板とを、前記圧電板と第3絶縁板との厚さ方向に延びる面を突合わせて配設し、
更にこれら圧電板と第3絶縁板との上面を覆って前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有すると共にその表面に導電化手段を有する第4絶縁板を積層してなる圧電素子。
【請求項4】
圧電板が、単結晶酸化亜鉛、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、又は水晶からなる請求項1乃至3の何れか1項に記載の圧電素子。
【請求項5】
絶縁板が、石英ガラス、水晶、アルミナ又はダイヤモンドからなる(但し、圧電板が水晶からなる場合は絶縁板が水晶である場合を除く。)請求項1乃至3の何れか1項に記載の圧電素子。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の圧電素子を組込んでなる圧力センサ。
【請求項7】
圧電板と、前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有する絶縁板とを、前記圧電板と前記絶縁板との面方向を平行にして積層して束ねる圧電素子の耐衝撃強度の増加方法であって、
前記圧電板と前記絶縁板との界面、前記絶縁板の厚さ方向に延びる面、及び前記界面の反対面に導電化手段を有する圧電素子の耐衝撃強度の増加方法。
【請求項8】
圧電板と、前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有すると共にその表面に導電化手段を有する第1絶縁板とを、前記圧電板と第1絶縁板との面方向を平行にして積層してなる積層板と、
前記積層板の厚さに対して、±5μmの厚さを有すると共に前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有する第2絶縁板と、を
前記積層板と第2絶縁板との厚さ方向に延びる面を突合わせて束ねる圧電素子の耐衝撃強度の増加方法。
【請求項9】
圧電板と、前記圧電板の厚さに対して、±5μmの厚さを有すると共に前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有する第3絶縁板とを、前記圧電板と第3絶縁板との厚さ方向に延びる面を突合わせて配設し、
更にこれら圧電板と第3絶縁板との上面を覆って前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有すると共にその表面に導電化手段を有する第4絶縁板を積層して束ねる圧電素子の耐衝撃強度の増加方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力を検知する圧電素子に関し、更に詳述すれば、本発明は耐衝撃強度が高い圧電素子、耐衝撃強度が高い圧力センサ及び圧電素子の耐衝撃強度の増加方法に関する。本圧電素子は、特に自動車等の内燃機関の燃焼圧力の測定等に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車業界に於いては、エンジンに種々のセンサを取付け、センサが検出するデータを基礎としてエンジンの動作を制御することが行われている。中でも、走行経済性を向上させるため、エンジンの動作の制御に種々の改良が加えられている。その例として、希薄燃焼制御システムがある。このシステムを採用するエンジンにおいては、圧電材料を圧力検知素子とする圧力センサをシリンダー内に組込んで、エンジンの燃焼圧を直接測定している(例えば特許文献1、2)。
【0003】
希薄燃焼制御システムにおいては、燃料ガス濃度を希薄な状態にして燃焼させるので、通常のエンジンと比較してプレイグニッションが多発し、その際の燃焼圧は、通常の燃焼圧の数倍にも達する。従って、燃焼圧測定用センサに対しても、プレイグニッション時に発生する衝撃圧に耐え得る強度、特に圧電素子に高い耐衝撃強度を有することが求められている。しかし、既存の圧電材料は、十分の耐衝撃強度を持たず、プレイグニッション時に、圧電材料が破壊されることがある。
【0004】
特許文献3は、圧電材料をチタン酸鉛系から、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)に変更することにより、耐熱性を高める技術を開示している。
【0005】
しかし、これら特許文献は、何れも耐衝撃圧を高めることについては言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許公開2011−174882
【特許文献2】特許公開平2000−277233
【特許文献3】特許公開平5−172680
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、耐衝撃性の高い圧電素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記目的を達成するために鋭意検討を行った。従来の圧電材料を利用する圧電素子の耐衝撃強度は、圧電素子を構成する材質の有する固有の値を示す。従って、圧力検知素子の耐衝撃強度は、圧電材料を変える以外は変更できないと従来考えられている。
【0009】
一方、本発明者等は、圧電素子の耐衝撃強度よりも高い耐衝撃強度を有する絶縁材料を用いて形成した絶縁板を圧電素子に積重して圧電素子を構成すると、驚くことに、圧電素子の耐衝撃強度が大きく向上することを発見した。
【0010】
本発明は、上記発見に基づいて完成するに到ったものである。
【0011】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。
【0012】
〔1〕 圧電板と、前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有すると共にその表面に導電化手段を有する絶縁板とを有する圧電素子であって、
圧電板と、絶縁板とを、前記圧電板と絶縁板との面方向を平行にして積層してなる圧電素子。
【0013】
〔2〕 圧電板と、前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有すると共にその表面に導電化手段を有する第1絶縁板とを、前記圧電板と第1絶縁板との面方向を平行にして積層してなる積層板と、
前記積層板の厚さに対して、±5μmの厚さを有すると共に前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有する第2絶縁板とを、
前記積層板と第2絶縁板との厚さ方向の面を突合わせてなる圧電素子。
【0014】
〔3〕 圧電板と、前記圧電板の厚さに対して、±5μmの厚さを有すると共に前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有する第3絶縁板とを、前記圧電板と第3絶縁板との厚さ方向の面を突合わせて配設し、
更にこれら圧電板と第3絶縁板との上面を覆って前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有する第4絶縁板を積層してなる圧電素子。
【0015】
〔4〕 圧電板が、単結晶酸化亜鉛、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、又は水晶からなる〔1〕乃至〔3〕の何れかに記載の圧電素子。
【0016】
〔5〕 絶縁板が、石英ガラス、水晶、アルミナ又はダイヤモンドからなる(但し、圧電板が水晶からなる場合は絶縁板が水晶である場合を除く。) 〔1〕乃至〔3〕に記載の圧電素子。
【0017】
〔6〕 〔1〕乃至〔3〕の何れかに記載の圧電素子を組込んでなる圧力センサ。
【0018】
〔7〕 圧電板と、前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有すると共にその表面に導電化手段を有する絶縁板とを、前記圧電板と絶縁板との面方向を平行にして積層して束ねる圧電素子の耐衝撃強度の増加方法。
【0019】
〔8〕 圧電板と、前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有すると共にその表面に導電化手段を有する第1絶縁板とを、前記圧電板と第1絶縁板との面方向を平行にして積層してなる積層板と、
前記積層板の厚さに対して、±5μmの厚さを有すると共に前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有する第2絶縁板と、を
前記積層板と第2絶縁板との厚さ方向の面を突合わせて束ねる圧電素子の耐衝撃強度の増加方法。
【0020】
〔9〕 圧電板と、前記圧電板の厚さに対して、±5μmの厚さを有すると共に前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有する第3絶縁板とを、前記圧電板と第3絶縁板との厚さ方向の面を突合わせて配設し、
更にこれら圧電板と第3絶縁板との上面を覆って前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有する第4絶縁板を積層して束ねる圧電素子の耐衝撃強度の増加方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の圧電素子は、圧電板と、絶縁板とを積重して用いているので、耐衝撃強度が高く、例えばエンジンの燃焼圧の測定等に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の第1の態様の圧電素子の一例を示す側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の態様の圧電素子の一例を示す、側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3の態様の圧電素子の一例を示す、側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の圧電素子をセンサに組込んだ状態の一例を示す一部省略側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施態様に付き、詳細に説明する。
【0024】
(第1の態様)
図1は、本発明の第1の圧電素子100の形態例を示す。この例に於いては、圧電板2と、絶縁板4とは、互いの板面を平行にして積層され、束ねられている。6は、導電膜等の導電化手段で、圧電板2と絶縁板4との界面、絶縁板4の厚さ方向の面(本図に於いては、側面)、及び絶縁板4の表面(本図に於いては上面)に形成されている。センサにこの圧電素子を組込んで圧力を測定する場合、圧電板2の表面に誘起された電荷が、この導電化手段6を通して不図示の電極に供給される。
【0025】
導電化手段6の形成方法としては、絶縁板4の表面に直接形成しても良い。例えば、導電ペースト、金、白金、銅等の導電性金属薄膜のコーティング等の公知の方法が制限無く採用できる。更には、金属板をコ字状に曲げた治具を形成し、この治具の中に絶縁板を挟み込む方法も例示できる。
【0026】
このように積層されることにより、圧電素子100の耐衝撃性は大きく向上する。
【0027】
圧電板2の材質としては、圧電性を示す公知の圧電体の何れも使用することが出来る。具体的には、ジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、マグネシウムニオビウムチタン酸鉛、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、ポリフッカビニリデン等が、例示される。
【0028】
これらの圧電体の中でも、耐熱性が高く、大きな圧電性を示すことから、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、単結晶酸化亜鉛が好ましく、特に単結晶酸化亜鉛が好ましい。
【0029】
圧電板2の平面形状(本態様に於いては長方形)は、特に制限が無く、正方形、長方形、多角形、不定形、円形、楕円形、菱形等の任意の形状を採用できる。圧電板の大きさも特に制限がないが、センサに組込むことを考えると、縦、横が0.5〜10mmが好ましく、1〜5mmがより好ましく、1〜3mmが特に好ましい。
【0030】
圧電板2の厚みは、特に制限がないが、センサに組込むことを考慮すると、0.1〜5mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましい。
【0031】
絶縁板4は、前記圧電板よりも大きな耐衝撃強度を有する電気的絶縁板である。絶縁抵抗は、比抵抗として、1.0E+13Ω・cm以上であることが好ましく、1.0E+14Ω・cm以上であることがより好ましい。
【0032】
絶縁板4の材質としては、石英ガラス、テンパックスガラス、ネオセラムガラス、バイコールガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、水晶、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア、コーディエライト又はダイヤモンド等が例示される。
【0033】
絶縁板4の耐衝撃性は、圧電板の耐衝撃強度の2倍以上、通常2〜20倍が好ましく、5倍以上がより好ましい。耐衝撃強度の測定方法は、後述する。
【0034】
この圧電素子は、センサに組込まれた際に、圧電板面に垂直方向Xから圧力が負荷される。
【0035】
圧電板2と、絶縁板4とを束ねる形態としては、特に制限が無く、任意の束ね方が採用できる。
【0036】
圧電板2と、絶縁板4とを束ねる方法としては、導電性ペースト、セラミック系接着材等を利用する接着方法がある。更には、金属やセラミックス製の枠を使用して、その内部に閉じこめる方法がある。
【0037】
また、導電性ペーストの硬化膜に圧電板12と、絶縁板14とを貼着しても良い。
【0038】
なお、上記例に於いては、圧電板2と絶縁板4とは束ねられて積層構造を形成しているが、具体的に何らかの束ね手段を用いて両者が固着されている必要はない。使用時に、例えば、センサに組込まれたときに、結果的に圧電板2と絶縁板4とが
図1に示す積層構造に保たれていればよい。このことは、以下の各形態に於いても同様である。
【0039】
本発明の圧電素子は、圧力センサに組込まれて、圧力測定に使用される。
図4は、
図1に示す圧電素子100が組込まれた圧力センサの電極部分を示す一部省略断面図である。なお、圧力センサの構造自体は公知である。
【0040】
図4中、400は、圧力センサの電極部である。有底円筒状のダイヤフラム32の底壁上には、下電極34が載置されている。下電極34の上面には、圧電板2と絶縁板4とが積層されて束ねられた本発明の圧電素子100が載置されている。圧電素子100の上面には、更に上電極40が載置されている。
【0041】
(第2の形態)
図2は、本発明の第2の形態の圧電素子200の一例を示す。この例に於いては、圧電板60と、第1絶縁板62とが、互いの板面を平行にして厚さ方向に積層され、束ねられて、積層板64が構成されている。66は、導電膜からなる導電化手段で、圧電板60と第1絶縁板62との界面、第1絶縁板62の厚さ方向の面、及び第1絶縁板62の表面(本図に於いては上面)に形成されている。センサにこの圧電素子を組込んだ場合、この導電膜66を通じて、圧電板60に誘起された電荷が電極に供給される。
【0042】
68は、第2絶縁板で、前記積層板64の厚さに対して、±5μm、好ましくは±3μm、より好ましくは±2μmの厚さを有する。第2絶縁板68と前記積層板64とは、これらの厚さ方向の面を突合わせて束ねられている。厚さは、マイクロメーターを用いて測定できる。
【0043】
ここで、圧電板、(第1、又は第2)絶縁板、導電膜等については、すでに述べた。
【0044】
(第3の形態)
図3は、本発明の第3の形態の圧電素子300の一例を示す。この例に於いて、12は、圧電板で、14は、第3絶縁板である。第3絶縁板14は、圧電板12の厚さに対して、±5μm以内の厚さであることが好ましく、±3μm以内であることがより好ましく、2μm以内であることが特に好ましい。
【0045】
圧電板12と、第3絶縁板14とは、互いに厚さ方向の面を突合わせて配設されている。更に、これら圧電板12と、第3絶縁板14との一方の板面(本図に於いては上面)を覆って第4絶縁板10が積層されている。なお、16は、導電膜等からなる導電化手段で、圧電板12と第4絶縁板10との界面、第4絶縁板10の厚さ方向の面(本図に於いては側面)、及び第4絶縁板10の表面(本図に於いては上面)に形成されている。
【0046】
第4絶縁板10の厚さは、特に制限がないが、実用上、第3絶縁板14とほぼ同様の厚さが好ましい。その他材質等は、第1の形態で述べた。
【0047】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【実施例】
【0048】
耐衝撃性試験
現在、圧電材料の耐衝撃性試験を行うために適当な装置は、市販されていない。そこで、本発明者等は、宮城県産業技術総合センターの加速式衝撃試験装置SM-110-MP(エアブラウン社製)を用いて、耐衝撃性試験を行った。
【0049】
耐衝撃試験方法を、以下に記載する。先ず、試験治具を衝撃試験装置に取付け、この治具に試料(圧電素子)を取付けた。衝撃試験装置に取付けた治具の落下速度を所定値に設定した。治具を落下させ、試験装置の基台に衝突させた。この衝突により、試料に衝撃を与えた。その後、試料の割れの有無を目視で観察した。
【0050】
一方、治具に取付けられた重力センサの加速度を読取った。この加速度を用いて、下記式から衝撃荷重を算出した。なお、治具重量は、1.07066Kgであった。
衝撃荷重(N)=加速度(m/s
2)x 治具重量(Kg)x 9.80665
算出した衝撃荷重を試料面積(mm
2)で除算することにより、単位面積あたりの衝撃強度(MPa)を算出した。
【0051】
実施例1
図1に示す第1の形態の圧電素子を製造した。東京電波株式会社製の寸法が10x10x0.5mmの酸化亜鉛(ZnO)の単結晶板を、2mmx2mmx0.5mm(厚さ)の寸法に切断し、圧電板を製造した。一方、石英ガラスを用いて同寸法の絶縁板を製造した。スーパーエンジニアリングプラスチックPPSGF40(ガラス繊維40%補強ポリフェニレンスルフィド)で作成した円筒ガイド内に、これらの圧電板と、絶縁板とを挿入し、これらを積層することにより、圧電素子を製造した。同様にして、圧電素子を合計10個製造した。
【0052】
なお、この実施例に於いては、耐衝撃性試験の結果を得ることを主目的としていたので、導電膜は形成していなかった。
【0053】
前記加速式衝撃試験装置を用いて、これらの圧電素子の耐衝撃性試験を行った。得られた破壊しない衝撃強度は640MPaであった。
【0054】
比較例1
圧電材料として、実施例1で用いた酸化亜鉛の単結晶と同一の単結晶を用いて2mmx2mmx0.5mm(厚さ)の圧電素子を製造した。
【0055】
実施例1と同様にして、この圧電素子の耐衝撃性試験を行った。得られた破壊しない衝撃強度は130MPaであった。
【0056】
実施例2
図2に示す第2の形態の圧電素子を製造した。先ず、酸化亜鉛(ZnO)の単結晶を用いて、1mmx1mmx0.5mm(厚さ)の圧電板60を製造した。一方、石英ガラスを用いて同寸法の第1絶縁板62を製造した。これらの圧電板と、絶縁板とをスーパーエンジニアリングプラスチックPPSGF40で作成した円筒ガイド内に絶縁板とを積層し、積層板64を製造した。
【0057】
石英ガラスで、1mmx1mmx1mm(厚さ)の第2絶縁板68を作製した。
前記積層板64の厚さ面に、第2絶縁板68の厚さ面を突合わせるように第2絶縁板68を円筒ガイド内に挿入し、圧電素子を製造した。圧電素子は、合計10個製造した。なお、積層板の厚さと、第2絶縁板の厚さの差は、全て5μm以内であった。
【0058】
なお、この実施例に於いては、耐衝撃性試験の結果を得ることを主目的としていたので、導電化手段66は形成していなかった。
【0059】
前記加速式衝撃試験装置を用いて、これらの圧電素子の耐衝撃性試験を行った。得られた破壊しない衝撃強度は600MPaであった。
【0060】
比較例2
積層板64の厚さが、第2絶縁板68の厚さよりも10μm小さい積層板を用いた以外は、実施例2と同様の圧電素子を製造した。この場合は、耐衝撃試験では、破壊しない衝撃強度は550MPaと高かったが、センサ感度が、低下していた。
【0061】
実施例3
図3に示す第3の形態の圧電素子を製造した。先ず、酸化亜鉛(ZnO)の単結晶を用いて、1mmx1mmx0.5mm(厚さ)の圧電板12を製造した。一方、石英ガラスを用いて同寸法の第3絶縁板14を製造した。これらの圧電板12と絶縁板14とを、スーパーエンジニアリングプラスチックPPSGF40で作成した円筒ガイド内に互いに厚さ面を突合わせて載置した。
【0062】
次に、石英ガラスで、1mmx1mmx0.5mm(厚さ)の第4絶縁板10を製造した。
【0063】
前記載置した圧電板12と第3絶縁板14との上面に、第4絶縁板10を積層し、圧電素子を製造した。圧電素子は、合計10個製造した。なお、圧電板の厚さと、第3絶縁板の厚さの差は、全て5μm以内であった。
【0064】
なお、この実施例に於いては、耐衝撃性試験の結果を得ることを主目的としていたので、導電膜は形成していなかった。
【0065】
前記加速式衝撃試験装置を用いて、これらの圧電素子の耐衝撃性試験を行った。得られた破壊しない衝撃強度は550MPaであった。
【0066】
比較例3
圧電板の厚さが、第3絶縁板の厚さよりも10μm小さい圧電板を用いた以外は、実施例3と同様の圧電素子を製造した。この場合は、耐衝撃試験では、破壊しない衝撃強度は550MPaと高かったが、センサ感度が、低下していた。
【符号の説明】
【0067】
100、200、300 圧電素子
2、12、60 圧電板
4 絶縁板
10 第4絶縁板
14 第3絶縁板
16 導電化手段
32 ダイヤフラム
34 下電極
40 上電極
62 第1絶縁板
64 積層板
6、66 導電化手段
68 第2絶縁板