(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
建築物の区画部と、前記区画部に貫通して配設される管体と、前記管体における前記区画部に貫通する部位の外周に取り付けられる耐火被覆材とを備える耐火構造であって、
前記管体は、難燃性を有する樹脂製の管本体を備え、
前記耐火被覆材は、非通気層と、通気性及び耐火性を有する無機繊維層とを備え、
前記非通気層は、高分子材料からなる基材と無機充填剤とを含有する材料から形成され、
前記無機繊維層は、第1無機繊維層と第2無機繊維層とを含み、
前記非通気層は、前記第1無機繊維層と前記第2無機繊維層との間に配置され、
前記耐火被覆材の端部には、前記区画部から突出する突出部が設けられていることを特徴とする耐火構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、耐火性の向上の観点においては、給排水管や冷媒管等の管体として、難燃性を有する樹脂により形成される管体を用いることが好ましい。しかしながら、難燃性を有する樹脂により形成される管体であっても、火災時に長時間加熱されると、軟化や熱分解を起こして焼損や溶損等が生じる。管体に焼損や溶損等が生じると、その焼損や溶損部分から管体の内部に流入した火炎、煤煙、ガス等が管体内を流れることにより火災が拡大する可能性がある。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、管体の内部を通じた火災の拡大を抑制することのできる耐火被覆材及び耐火構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための耐火被覆材は、難燃性を有する樹脂製の管本体を備える配管の外周に取り付けて用いられる耐火被覆材であって、非通気層と、通気性及び耐火性を有する無機繊維層とを備え、
前記非通気層は、高分子材料からなる基材と無機充填剤とを含有する材料から形成され、前記無機繊維層は、第1無機繊維層と第2無機繊維層とを含み、前記非通気層は、前記第1無機繊維層と前記第2無機繊維層との間に配置されている。
【0008】
上記耐火被覆材は、管本体の外周側に防音層を備える防音配管の外周に取り付けて用いられることが好ましい。
また、上記課題を解決するための耐火構造は、建築物の区画部と、前記区画部に貫通して配設される管体と、前記管体における前記区画部に貫通する部位の外周に取り付けられる耐火被覆材とを備える耐火構造であって、前記管体は、難燃性を有する樹脂製の管本体を備え、前記耐火被覆材は、非通気層と、通気性及び耐火性を有する無機繊維層とを備え、
前記非通気層は、高分子材料からなる基材と無機充填剤とを含有する材料から形成され、前記無機繊維層は、第1無機繊維層と第2無機繊維層とを含み、前記非通気層は、前記第1無機繊維層と前記第2無機繊維層との間に配置され、前記耐火被覆材の端部には、前記区画部から突出する突出部が設けられている。
【0009】
上記耐火被覆材及び上記耐火構造によれば、通気性及び耐火性を有する無機繊維層によって管体への熱伝導が抑制される。また、非通気層が第1無機繊維層と第2無機繊維層との間に配置されているため、管体の外周への熱風の到達が抑制される。これにより、火災の際に、耐火被覆材の内部の温度上昇が抑制されて、管本体を構成する難燃性の樹脂の軟化や熱分解が進行し難くなり、同樹脂が耐火被覆材の内側に残留し易くなる。そして、耐火被覆材の内側に残留した樹脂が管体の流路の一部又は全体を閉塞することによって、管体内を火炎、煤煙、ガス等が流れ難くなる。その結果、管体の内部を通じた火災の拡大が抑制される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の耐火被覆材及び耐火構造によれば、管体の内部を通じた火災の拡大を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、耐火被覆材及び耐火構造の一実施形態を図面に基づいて説明する。
<耐火構造>
図1に示すように、耐火構造は、建築物の区画部としての床スラブ10と、床スラブ10に貫通して配設される管体20と、管体20における床スラブ10に貫通する部位の外周に取り付けられる耐火被覆材30とを備える。具体的には、コンクリート製の床スラブ10に形成された貫通孔11に対して管体20が挿通されている。そして、管体20における貫通孔11の内域に位置する部位には、その周方向の全体を覆うようにしてシート状の耐火被覆材30が取り付けられている。
【0013】
また、耐火被覆材30の下端部には、床スラブ10から突出する突出部30aが設けられている。つまり、耐火被覆材30の幅(管体20の軸方向における長さ)は、床スラブ10の厚さよりも大きく設定され、耐火被覆材30の下端部は床スラブ10から下側へ突出している。
【0014】
耐火被覆材30の外周における貫通孔11の内壁に対向する部位には、貫通部処理部材40が巻き付けられている。耐火被覆材30は、貫通部処理部材40による締め付け作用によって管体20の外周に固定されている。そして、床スラブ10の貫通孔11の内壁と、耐火被覆材30の外周に巻き付けられた貫通部処理部材40との間がモルタル12で埋められることで、床スラブ10に管体20が固定されている。
【0015】
上記耐火構造は、例えば次のようにして施工することができる。先ず、管体20の所定部位の外周にシート状の耐火被覆材30を取り付けるとともに、その耐火被覆材30の外周に更に貫通部処理部材40を取り付ける。そして、床スラブ10の貫通孔11に管体20を挿通させるとともに、管体20に取り付けられた耐火被覆材30及び貫通部処理部材40が貫通孔11内に位置するように管体20を位置決めする。管体20を位置決めした状態で、床スラブ10の貫通孔11の内壁と貫通部処理部材40との間にモルタル12を打設する。
【0016】
<管体>
図3に示すように、管体20は、難燃性を有する樹脂製の管本体21と、その外周に配置される防音層22と、その更に外周に配置される被覆材23とを有する防音配管である。こうした防音配管は、例えば、排水管として、建築物の排水システムを構成する。なお、
図1及び
図2においては、管体20を簡略化して図示している。
【0017】
管本体21を形成する材料としては、例えば、硬質のポリ塩化ビニルが挙げられる。
防音層22は、吸音層22a及び遮音層22bを有し、この順に管本体21の外周面に配置されている。吸音層22aとしては、連続気泡体を好適に用いることができる。連続気泡体としては、例えば、ウレタン系発泡体、ポリオレフィン系発泡体等の連続気泡体や、各種不織布、グラスウール、ロックウール等の繊維系材料や、これらの複合材料が挙げられる。
【0018】
遮音層22bとしては、高分子材料に無機充填材を含有させた材料を好適に用いることができる。高分子材料としては、例えば、合成樹脂、エラストマー、及びゴムから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。合成樹脂としては、例えばオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂が挙げられる。エラストマーとしては、例えばオレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー等が挙げられる。ゴムとしては、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム等が挙げられる。無機充填材としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化チタン、バライト、鉄粉、酸化亜鉛、グラファイトが挙げられる。また、遮音層22bには、必要に応じて、可塑剤、酸化防止剤、粘着剤等の添加剤を含有させることもできる。
【0019】
被覆材23は、熱収縮性フィルムにより構成される。被覆材23は、筒状をなす熱収縮性フィルムを熱収縮させることで形成される。被覆材23を構成する熱収縮性フィルムとしては、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン等から構成される市販の熱収縮性フィルム(シュリンクフィルム)を用いることができる。
【0020】
<耐火被覆材>
図1に示すように、耐火被覆材30は、通気性及び耐火性を有する無機繊維層31と、非通気層32とを備えている。無機繊維層31は第1無機繊維層31a及び第2無機繊維層31bから構成されている。非通気層32は、第1無機繊維層31aと第2無機繊維層31bとの間に配置されている。このように耐火被覆材30は、第1無機繊維層31a、非通気層32、及び第2無機繊維層31bが順に積層された積層構造を有している。
【0021】
第1無機繊維層31a及び第2無機繊維層31bを構成する無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、アルミナ繊維、及びカーボン繊維が挙げられる。第1無機繊維層31a及び第2無機繊維層31bは、織布又は不織布から構成される。第1無機繊維層31a及び第2無機繊維層31bの耐熱温度は、好ましくは700℃以上であり、より好ましくは800℃以上であり、さらに好ましくは900℃以上である。第1無機繊維層31a及び第2無機繊維層31bの密度は、30〜250kg/m
3の範囲であることが好ましい。第1無機繊維層31a及び第2無機繊維層31bの厚みは、2〜15mmの範囲であることが好ましい。
【0022】
非通気層32は、高分子材料からなる基材と無機充填材とを含有する材料から形成されている。高分子材料としては、例えば、合成樹脂、エラストマー、及びゴムから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。合成樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びスチレン系樹脂が挙げられる。エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー、及びウレタン系エラストマーが挙げられる。ゴムとしては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、及びブチルゴムが挙げられる。高分子材料の中でも、可撓性が付与されることで、管体20の外周に沿った形状に変形することが容易であることから、エラストマー及びゴムから選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0023】
無機充填材としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化チタン、バライト、鉄粉、酸化亜鉛、及びグラファイトが挙げられる。無機充填剤の含有量は、高分子材料100質量部に対して、50〜85質量部の範囲であることが好ましい。
【0024】
非通気層32には、必要に応じて、可塑剤、酸化防止剤、粘着剤等の添加剤を含有させることもできる。非通気層32の厚みは、0.5〜5mmの範囲であることが好ましい。
また、本実施形態において、耐火被覆材30は、無機繊維層31と非通気層32との積層構造を有する一枚のシート状の耐火被覆材30を、管体20の外周に巻き付けることによって、管体20に取り付けられている。
【0025】
<貫通部処理部材>
貫通部処理部材40としては、例えば、不織布、織布、及び編布等の基布からなる基材と、基材の片面に形成される接着層とを有する接着テープを用いることができる。上記基布を構成する繊維としては、例えば合成繊維、天然繊維及び耐炎化繊維が挙げられる。合成繊維としては、例えばポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維及び芳香族ポリアミド繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えばセルロースを主成分とした木質繊維、葉脈繊維、靭皮繊維及び種子繊維が挙げられる。耐炎化繊維としては、例えばグラスウール及びロックウールが挙げられる。また、接着層を構成する材料は、耐火被覆材30の外周(最外層)に接着可能な材料であればよい。
【0026】
<作用>
次に、耐火被覆材30及び耐火構造の作用について説明する。
火災の際、耐火被覆材30を構成する無機繊維層31(第1無機繊維層31a及び第2無機繊維層31b)は、特に突出部30aにおいて、耐火被覆材30の内部への熱伝導を抑制する。また、無機繊維層31を構成する第1無機繊維層31aと第2無機繊維層31bとの間に配置される非通気層32は、特に突出部30aにおいて、耐火被覆材30の内部への熱風の到達を抑制する。これにより、耐火被覆材30の内部の温度上昇が抑制されて、耐火被覆材30に被覆された管体20の軟化や熱分解が進行し難くなる。
【0027】
図2に示すように、火災時に耐火構造が加熱され続けると、管体20における耐火被覆材30により被覆されていない部分は、軟化や熱分解が進行して溶け落ちる。一方、耐火被覆材30の内部は温度上昇が抑制されている。そのため、管体20における耐火被覆材30に被覆されている部分は、軟化や熱分解を起こして変形しつつも、溶け落ちることなく耐火被覆材30の内部に残留して残留物20aを形成する。
【0028】
この残留物20aにより、耐火被覆材30の内部(流路)の径方向全体又は径方向の一部が閉塞される。その結果、管体20内を火炎、煤煙、ガス等が流れ難くなって、床スラブ10の上面側の温度上昇が抑制されるとともに、床スラブ10の下側から上側へ火災が拡大することが抑制される。
【0029】
次に、本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)耐火被覆材30は、難燃性を有する樹脂製の管本体21を備える管体20に取り付けて用いられる。耐火被覆材30は、通気性及び耐火性を有する無機繊維層31と、非通気層32とを備えている。無機繊維層31は第1無機繊維層31aと第2無機繊維層31bとから構成され、非通気層32は第1無機繊維層31aと第2無機繊維層31bとの間に配置されている。
【0030】
上記構成の耐火被覆材30を、床スラブ10に貫通して配置される管体20の外周に取り付けた耐火構造とすることにより、火災の際に、耐火被覆材30の内部の管体20の温度上昇が抑制される。これにより、管体20の軟化や熱分解が進行し難くなり、管本体21を構成する難燃性の樹脂が耐火被覆材の内側に残留し易くなる。そして、耐火被覆材30の内側に残留した樹脂(残留物20a)が管体20の流路の一部又は全体を閉塞することによって、管体20内の流路を火炎、煤煙、ガス等が流れ難くなる。その結果、管体20の内部を通じた火災の拡大が抑制される。
【0031】
(2)耐火被覆材30を用いた耐火構造において、管体20は、管本体21の外周側に防音層22を備える防音配管である。
この場合には、耐火被覆材30による温度上昇の抑制作用に加えて更に、防音層22がその内部に位置する管本体21の温度上昇を抑制する。そのため、火災の際に、管本体21を構成する難燃性の樹脂が耐火被覆材30の内側に残留し易くなる。
【0032】
(3)耐火被覆材30の外周における貫通孔11の内壁に対向する部位には、基布からなる基材を備える貫通部処理部材40が取り付けられている。上記構成によれば、床スラブ10の貫通孔11にモルタル12を打設する際に、貫通部処理部材40の基材の繊維間にモルタル12が入り込む。そして、モルタル12が硬化すると、貫通部処理部材40の一部がモルタル12内に埋設された状態で、貫通部処理部材40とモルタル12とが接着される。
【0033】
そのため、貫通部処理部材40を省略して耐火被覆材30とモルタル12とを直接接着させた場合と比較して、耐火被覆材30に対するモルタル12の接着性を好適に高めることができる。その結果、耐火被覆材30とモルタル12との間の隙間を通じて火災が拡大することが抑制される。
【0034】
(4)難燃性を有する樹脂の一種である塩化ビニル樹脂が加熱されると、分子中の塩素原子及び水素原子が塩化水素ガスとして脱離する。この塩化水素ガスは塩化ビニル樹脂を体積膨張させる。このため、管本体21は塩化ビニル樹脂から構成されることで、残留物20aの体積が増加し易くなる。したがって、管体20の流路の閉塞を促進させることが可能である。
【0035】
なお、上記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 耐火被覆材30の非通気層32には、無機繊維が含有されていてもよい。また、非通気層32は、金属箔から構成されてもよい。このように変更した場合でも、管体20の外周への熱風の到達が抑制される。
【0036】
・ 耐火被覆材30における第1無機繊維層31a、第2無機繊維層31b、及び非通気層32の少なくとも一つの層を複数の層から構成してもよい。
・ 耐火被覆材30は、第2無機繊維層31bの外周に第2の非通気層を更に備える構成であってもよい。
【0037】
・ 管本体21は、難燃性を有する樹脂以外の材料が含まれていてもよい。例えば、管本体21は、難燃性を有する樹脂と熱膨張性の材料とを含む構成に変更することで、加熱による膨張を促進することができる。
【0038】
・ 管本体21は、難燃性を有するオレフィン系樹脂により形成されてもよい。
・ 床スラブ10は、コンクリート製に限らず、石板等で形成されていてもよい。
・ 上記実施形態では、水平方向に沿って区画する床スラブ10を区画部とする耐火構造に具体化していたが、区画部の形成方向は特に限定されるものではない。例えば、垂直方向に沿って区画する壁材を区画部とする耐火構造であってもよい。
【0039】
・ 上記実施形態では、防音配管を管体20とする耐火構造に具体化していたが、難燃性を有する樹脂製の管本体21を備えるものであれば、管体20の種類は特に限定されるものではない。管体20は、例えば、通気システムを構成する排気管であってもよい。
【0040】
・ 耐火被覆材30は、最外層となる側の面に貫通部処理部材40を備えるものであってもよい。
・ 耐火構造において、貫通部処理部材40を省略してもよい。この場合には、例えば、接着剤等を用いて管体20の外面に耐火被覆材30を取り付ければよい。
【0041】
・ 耐火構造において、突出部30aは耐火被覆材30のいずれの側の端部に設けられていてもよいし、両端部に共に設けられていてもよい。なお、水平方向に沿って区画する床スラブ10を区画部とする場合には、少なくとも下端側に突出部30aを設けることが好ましい。
【0042】
・ 管体20の軸方向において、管体20に対する耐火被覆材30の取り付け位置は、耐火被覆材30の少なくとも一部が貫通孔11の内域に位置する取り付け位置であればよい。例えば、
図1に示す耐火構造において、耐火被覆材30の取り付け位置を下側にずらして、耐火被覆材30の上端が貫通孔11の内域に位置する取り付け位置としてもよい。
【0043】
・ 管体20に対する耐火被覆材30の取り付け態様は特に限定されるものではない。例えば、第1無機繊維層31aと第2無機繊維層31bとの間に非通気層32が配置された積層構造を有する複数のシート状の耐火被覆材30を組み合わせて管体20の外周に巻き付けてもよい。また、第1無機繊維層31aと第2無機繊維層31bとの間に非通気層32が配置された積層構造を有する筒状の耐火被覆材30を管体20に外嵌させてもよい。
【0044】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ) 前記非通気層は、高分子材料からなる基材と無機充填剤とを含有する材料から形成される前記耐火被覆材。
【0045】
(ロ) 前記耐火被覆材の外周における前記貫通孔の内壁に対向する部位には、基布からなる基材を備える貫通部処理部材が取り付けられている前記耐火構造。
【実施例】
【0046】
次に、実施例及び比較例を挙げて上記実施形態を具体的に説明する。
(実施例1)
図4に示すように、耐火性及び断熱性を有する容器91の開口にコンクリート製の試験用床スラブ92を設け、この試験用床スラブ92に対して
図1に示す耐火構造を製造した。管体20としては、塩化ビニル樹脂製の管本体21と、ウレタン系発泡体製の吸音層22aと、オレフィン系樹脂材料からなる基材に無機充填剤としての硫酸バリウムを含有させてなる吸音層22aと、ポリエチレンテレフタレート製の被覆材23とを有する4層構造の防音配管を用いた。
【0047】
耐火被覆材30を構成する第1無機繊維層31a及び第2無機繊維層31bとしては、シリカ繊維の不織布を用いた。これらの不織布の厚みは約5mmであり、密度は約125kg/m
3であり、耐熱温度は約1000℃である。また、耐火被覆材30を構成する非通気層32としては、オレフィン系樹脂材料からなる基材と、無機充填剤としての硫酸バリウムとを含有するシートを用いた。このシートの厚みは、約1.5mmである。また、貫通部処理部材40としては、ポリエチレンテレフタレート製の基材とブチルゴム系粘着剤からなる接着層とを有する接着テープ(ブチルテープ)を用いた。
【0048】
(比較例1)
比較例1では、耐火被覆材30を省略した以外は、実施例1と同様に試験用の耐火構造を形成した。
【0049】
(耐火性の試験)
実施例1の耐火構造について耐火性の試験を行った。この試験では、バーナ93を用いて容器91内を加熱した。そして、温度測定箇所94の温度が、開始温度20℃、終了温度1000℃となるようにバーナ93の火力を調整し、60分後に耐火性の試験を終了した。
【0050】
比較例1についても、実施例1と同様に耐火性の試験を行った。
続いて、各例の試験後に、管体20の上方から流路の写真を撮影した。その写真を用いて、管体20下端の開口面積に対して閉塞されている部分の面積を百分率で算出し、これを閉塞率とした。実施例1の閉塞率は90%以上であるのに対して、比較例1の閉塞率は0%であった。