(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GPS衛星から送信される信号には、時刻情報の他に日付情報が含まれる。時刻情報はGPS衛星から6秒間隔で送信され、日付情報はGPS衛星から30秒間隔で送信される。例えば、ユーザが電波時計を窓際等の受信環境がよい場所に持って行き、電波時計が時刻情報を受信して表示時刻の修正を開始すると、ユーザは、受信に成功したと思い込み、窓から離れた受信環境の悪い場所に移動してしまう場合がある。指針位置の検出及び表示時刻の調整には数分を要する場合があるが、これらの処理の後に電波時計がGPS衛星から送信される日付情報の取得動作を開始すると、受信環境の悪い場所では受信感度の低下により日付情報の取得に長時間を要する場合がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、GPS衛星から送信される情報の取得にかかる時間が長時間化するのを抑制した電波時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の電波時計は、複数のGPS衛星から送信される衛星信号を受信するアンテナと、前記アンテナにより受信した衛星信号から、前記衛星信号に含まれる情報を取得する受信処理を行う受信手段と、前記受信手段で取得した前記情報に日付を補正する日付情報が含まれていない場合に、前記受信手段を、前記衛星信号を送信したGPS衛星との同期状態を維持させて、前記日付情報を含む衛星信号を前記受信手段に受信させる制御手段とを備える。
【0007】
上記電波時計において、時刻を表示する表示手段と、前記受信手段が前記衛星信号から取得した時刻情報により前記表示手段の表示する時刻を修正する時刻修正手段と、を備え、前記制御手段は、前記日付情報の取得後に、前記表示手段の表示を前記時刻修正手段に修正させる。
【0008】
上記電波時計において、前記制御手段は、サマータイムの設定が有効である場合に、前記受信手段を、前記衛星信号を送信した前記GPS衛星との同期状態を維持させて、前記日付情報を含む衛星信号を前記受信手段に受信させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、GPS衛星から送信される情報の取得にかかる時間が長時間化するのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、
図1を参照しながら本実施形態の構成について説明する。本実施形態の電波時計1は、GPSアンテナ110と、受信部120と、受信部駆動部150と、表示装置161と、表示装置駆動部162と、メモリ170と、制御部180と、指針駆動部191と、輪列192と、時刻表示部200と、指針位置検出部210と、計時部220と、操作部230とを備える。
【0012】
GPSアンテナ110は、複数のGPS衛星10から送信される衛星信号を受信するアンテナである。GPSアンテナ110は、受信した衛星信号を受信部120に出力する。なお、
図1には、簡略化してGPS衛星10を1つだけ示す。
【0013】
受信部120は、RF(Radio Frequency:無線周波数)部130とベースバンド部140とを備える。RF部130とベースバンド部140とは、GPS衛星10から送信される1.5GHz帯の衛星信号に重畳された航法メッセージから軌道情報や時刻情報等の情報を取得する処理を行う。
【0014】
図2に、RF部130とベースバンド部140との構成の一例を示す。RF部130は、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ131と、LNA(Low Noise Amplifier)132と、ダウンコンバータ133と、PLL(Phase Locked Loop)回路134と、ADC(A/D変換器)135とを備える。
【0015】
SAWフィルタ131は、GPSアンテナ110が受信した信号から衛星信号を抽出する処理を行う。すなわち、SAWフィルタ131は、1.5GHz帯の信号を通過させるバンドパスフィルタとして構成される。
【0016】
LNA132は、SAWフィルタ131で抽出された衛星信号を増幅する。LNA132で増幅された衛星信号は、ダウンコンバータ133に出力される。
【0017】
ダウンコンバータ133は、衛星信号を中間周波数の信号に変換する回路であり、例えば、ミキサや挟帯域フィルタを備えている。ダウンコンバータ133は、LNA132から出力された衛星信号に、PLL回路134が出力するクロック信号をミキシングして、中間周波数帯の信号にダウンコンバートする。ダウンコンバータ133の出力信号は、ADC135に出力される。
【0018】
PLL回路134は、不図示の発振回路の出力信号に同期してダウンコンバータ133のミキサに所定のローカル周波数のクロック信号を出力する回路であり、例えば、VCO(Voltage Controlled Oscillator)、プリスケーラ、および、位相比較器などを備えている。
【0019】
ADC135は、ダウンコンバータ133から出力された衛星信号を所定のサンプリング周波数でデジタル値に変換してデジタルデータとしてベースバンド部140へ出力する。
【0020】
ベースバンド部140は、同期捕捉部141と、同期追従部142と、演算処理部143とを備える。ベースバンド部140は、RF部130のADC135が変換したデジタル信号(中間周波数帯の信号)からベースバンド信号を復調する。
【0021】
GPSシステムでは、すべてのGPS衛星10が異なるC/Aコードを用いて同一周波数の衛星信号を送信するCDMA(Code Division Multiple Access)方式を採用している。同期捕捉部141は、GPS衛星10で用いられているC/Aコードと同じPN系列の符号(以下、同期捕捉部141が発生させる符号をローカルコードと呼ぶ)を用いてC/Aコードの位相同期を取ることにより衛星信号を捕捉する。すなわち、同期捕捉部141は、ベースバンド信号に含まれるC/Aコードと同一パターンのローカルコードを発生し、C/Aコードとローカルコードとの相関を取る処理を行う。そして、同期捕捉部141は、各ローカルコードに対する相関値がピークになるようにローカルコードの発生タイミングを調整し、相関値が閾値以上となる場合にはそのローカルコードのGPS衛星10に同期したものと判断する。
【0022】
同期追従部142は、受信信号より早いタイミング、受信信号と同じタイミングおよび受信信号より遅いタイミング、の3通りのタイミングでベースバンド信号とローカルコードとの相関を取る。これら3つのタイミングとの相関を測定し、早いタイミングの相関が強くなれば受信タイミングを早め、遅いタイミングの相関が強くなれば受信タイミングを遅くするようにして、同期追跡(tracking)を行う。
【0023】
演算処理部143は、同期捕捉部141で捕捉したGPS衛星10のC/Aコードと同一パターンのローカルコードとベースバンド信号をミキシングして航法メッセージを復調し、航法メッセージに含まれる時刻情報や日付情報等の情報を取得する。
【0024】
受信部駆動部150は、制御部180の制御に従って受信部120を動作させ、又は、受信部120の動作を停止させる。
【0025】
表示装置161は、LCD(liquid crystal monitor)等の装置であって、例えば、日付、曜日等の情報を表示部に表示する。表示装置駆動部162は、表示装置161を駆動して、表示装置161の表示部に情報を表示させる。
【0026】
メモリ170には、制御部180が制御に使用するプログラム、GPS衛星10から受信した情報や、サマータイムの設定情報等が保存されている。サマータイムの設定情報の一例を
図3に示す。サマータイムの設定情報には、サマータイムの開始月及び開始週の情報と、終了月及び終了週の情報と、サマータイムの設定を有効にするのか、無効にするのかを設定する情報とが含まれる。
【0027】
制御部180は、メモリ170に記録されたプログラムに従って各部を制御する。
【0028】
指針駆動部191は、不図示のステップモータ等を備え、輪列192を駆動して、時刻表示部200の指針(時針、分針、秒針)が指す表示時刻を修正する時刻修正動作を行う。
【0029】
指針位置検出部210は、輪列192の位置を検出して、各指針の位置を検出する。指針位置検出部210の指針位置の検出方法については、例えば特開2011−122891号公報に開示がある。
【0030】
時計部220は、電波時計1内で現在時刻を計時する時計部であり、例えば、年カウンタ、月カウンタ、日カウンタ、時カウンタ、分カウンタ、秒カウンタ等を有している。
【0031】
操作部230は、例えば、アラームの設定等の操作情報の入力を受け付ける。
【0032】
次に、
図4を参照しながら、GPS衛星10から送信される衛星信号に重畳された航法メッセージについて説明する。
航法メッセージは、全ビット数1500ビットのメインフレームを1単位とするデータとして構成される。メインフレームは、それぞれ300ビットの5つのサブフレーム1〜5に分割されている。1つのサブフレームのデータは、各GPS衛星10から6秒で送信される。従って、1つのメインフレームのデータは、GPS衛星10から30秒で送信される。
サブフレーム1には、週番号データ(すなわち、日付情報)等の衛星補正データが含まれている。週番号データは、現在の時刻情報が含まれる週を表す情報である。GPS時刻情報の起点は、UTC(協定世界時)における1980年1月6日00:00:00であり、この日に始まる週は週番号0となっている。週番号データは、1週間単位で更新される。サブフレーム2、3には、エフェメリスパラメータ(各GPS衛星10の詳細な軌道情報)が含まれる。また、サブフレーム4、5には、アルマナックパラメータ(全GPS衛星10の概略軌道情報)が含まれている。さらに、サブフレーム1〜5には、先頭から30ビットのTLM(Telemetry word)データが格納されたTLM(Telemetry)ワードと30ビットのHOW(hand over word)データが格納されたHOWワードが含まれている。従って、TLMワードやHOWワード、すなわち時刻情報は、GPS衛星10から6秒間隔で送信されるのに対し、週番号データ、すなわち日付情報等の衛星補正データは30秒間隔で送信される。
【0033】
本実施形態の制御部180は、受信部120で受信した衛星信号に日付を補正する日付データが含まれていない場合、すなわち、受信部120が時刻情報を受信し、日付情報をまだ受信していない場合、受信部120に、時刻情報を受信したGPS衛星10との同期状態を維持させる。すなわち、同期追従部142に同一のローカルコードを使用させて、入力したベースバンド信号とローカルコードとの相関を取らせる。時刻情報は、GPS衛星10から6秒間隔で送信されるのに対し、日付情報は送信間隔が30秒であるため、時刻情報を受信した後直ぐに日付情報を受信できない場合もある。このような場合に、本実施形態では、受信部120に、時刻情報を受信したGPS衛星10との同期状態を維持させることで、日付情報の受信の際の受信部120の受信感度の低下を抑制する。GPS衛星10との同期が維持された状態では、同期がとれていない場合(すなわち同期捕捉時)に比べて20dBm程度、受信感度がよい。従って、ユーザが、受信に成功したと思い込み、窓から離れた受信環境の悪い場所で移動してしまっても、同期を維持して受信感度の低下を抑制しているので、日付情報の取得が長時間化するのを抑制することができる。また、情報の取得が長時間化するのを抑制することができるので、電波時計の電力消費量を低減することができる。
また、制御部180は、特に、サマータイムの設定が有効に設定されている場合に、受信部120を、GPS衛星10との同期状態を維持させて、日付情報を含む衛星信号を受信部120に受信させる。サマータイムの設定が有効な場合であって、かつ夏時間である場合、日付情報を受信するまで正確な時刻を表示することができない場合がある。このため、サマータイムの設定が有効である場合に、受信部120を、GPS衛星10との同期状態を維持させることで、日付情報の取得が長時間化するのを抑制し、衛星信号の受信を開始してから正確な時刻を表示するまでの時間を短縮することができる。
また、サマータイムの設定が有効である場合には、日付情報を取得した後に、指針駆動部190が時刻表示部200の指針位置を調整する。従って、サマータイムの設定が有効な場合であって、かつ夏時間である場合に、正確な時刻を表示することができる。
【0034】
図5に示すフローチャートを参照しながら制御部180の処理フローを説明する。
制御部180は、衛星信号の受信開始タイミングとなると(ステップS1/YES)、まず、メモリ170に保存されたサマータイム設定情報を取得する(ステップS2)。次に、制御部180は、受信部駆動部150を制御して受信部120を起動させ、衛星信号の受信動作を開始させる(ステップS3)。
【0035】
次に、制御部180は、衛星信号の受信を開始してから30分が経過したか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4の判定が肯定判定である場合、制御部180は衛星信号の受信失敗と判定し(ステップS18)、処理を終了する。また、ステップS4の判定が否定判定である場合、制御部180は、時刻情報を取得できたか否かを判定する(ステップS5)。否定判定の場合、制御部180は、ステップS4の判定から再度繰り返し行う。また、肯定判定の場合、制御部180は、ステップS2で取得したサマータイム設定情報を参照し、サマータイム設定が有効であるか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6の判定が肯定判定の場合、制御部180は、衛星信号の受信を開始してから30分が経過したか否かを判定する(ステップS7)。ステップS7の判定が肯定判定である場合、制御部180は衛星信号の受信失敗と判定し(ステップS18)、処理を終了する。ステップS7の判定が否定判定である場合、制御部180は日付情報を取得したか否かを判定する(ステップS8)。なお、サマータイム設定が有効である場合、ステップS3において受信部120の受信を開始してから、ステップS8で日付情報を受信し、ステップS9で受信部120を停止させるまで、同期追従部142は同じローカルコードを使用して衛星信号を受信する。すなわち、同じGPS衛星10からの衛星信号の受信を継続させる。このため、時刻情報の受信から日付情報の受信までの間の受信部120の受信感度の低下を抑制することができる。
【0036】
ステップS8の判定が肯定判定である場合、制御部180は受信部120を停止させる(ステップS9)。その後、制御部180は、指針位置検出部210で指針位置の検出を行って(ステップS10)、受信した時刻情報及び日付情報に基づいて、指針駆動部191に指針の表示位置を修正させる(ステップS11)。
【0037】
また、ステップS6の判定が否定判定である場合、制御部180は、指針位置検出部210で指針位置の検出を行って(ステップS12)、受信した時刻情報に基づいて、指針駆動部191に指針の表示位置を修正させる(ステップS13)。
【0038】
次に、制御部180は、衛星信号の受信を開始してから30分が経過したか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14の判定が肯定判定である場合、制御部180は受信部120を停止させ(ステップS16)、通常運針を行う(ステップS17)。また、ステップS14の判定が否定判定である場合、制御部180は、指針表示の修正を継続しながら、引き続き日付情報の取得を行う(ステップS15)。制御部180は、日付情報を取得することができたか否かを判定し(ステップS15)、この判定が肯定判定である場合、受信部120を停止させ(ステップS16)、通常運針を行う(ステップS17)。また、ステップS15の判定が否定判定の場合、制御部180は、ステップS14からの処理を繰り返す。
【0039】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の形態である。ただし、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。