(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、電磁クラッチ装置は、軸方向移動可能に駆動部材に支持されて当該駆動部材と一体に回転するアーマチャと、相対回転可能にアーマチャと同軸に並置されて出力部材と一体に回転するローターと、を備えている。そして、その電磁石が発生する電磁吸引力に基づきアーマチャとローターとを圧接させることにより、これら二つの回転体をトルク伝達可能に連結することが可能となっている。
【0003】
また、このような電磁クラッチ装置においては、通常、その互いに対向するアーマチャとローターとの間隔が、極めて小さな値に設定されている。即ち、両者が接触することにより生ずる接触音は、その間隔が広いほど大きくなる。このため、例えば、特許文献1に記載の電磁クラッチ装置では、その駆動部材とアーマチャとの間に粘弾性材料からなる制振部材が圧縮状態で介在されている。そして、この制振部材の弾性力に基づきアーマチャを軸方向に付勢してローターに当接させることにより、その接触音の発生を抑える構成となっている。
【0004】
ところが、このようにアーマチャとローターとの間隔を縮めることで、非連結時には、出力部材側からの逆入力によって、両者が摺接状態で相対回転する可能性がある。そして、このとき、両者の摩擦面が微視的に固着し及び滑るスティックスリップ現象によって、異音が発生するという問題がある。
【0005】
この点を踏まえ、上記特許文献1に記載の電磁クラッチ装置では、その制振部材がアーマチャに固着されている。そして、これにより、その制振部材とアーマチャとの接触状態を維持し、アーマチャの振動を効率よく減衰することで、その消音効果(静音効果)の向上が図られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、更なる静粛性の向上を図るためには、上記従来技術においてもなお、その消音効果が十分であるとは言い切れないのが実情である。そのため、より優れた静音構造が求められており、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、より静音性に優れた電磁クラッチ装置及びアクチュエータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する電磁クラッチ装置は、軸方向移動可能に駆動部材に支持されて該駆動部材と一体に回転するアーマチャと、相対回転可能に前記アーマチャと同軸に並置されて出力部材と一体に回転するローターと、通電により生ずる電磁吸引力に基づき前記アーマチャと前記ローターとを圧接させてトルク伝達可能に連結することが可能な電磁石と、を備えるとともに、前記アーマチャの外周部
に、前記アーマチャの振動により生ずる音を前記アーマチャ以外の部材に対して非接触な状態で減衰可能な軟質材料からなる消音部材
を備え、前記消音部材は、軟質材料のみからなり、前記アーマチャ自身の外周部に対して固定されている。
上記課題を解決する電磁クラッチ装置は、軸方向移動可能に駆動部材に支持されて該駆動部材と一体に回転するアーマチャと、相対回転可能に前記アーマチャと同軸に並置されて出力部材と一体に回転するローターと、通電により生ずる電磁吸引力に基づき前記アーマチャと前記ローターとを圧接させてトルク伝達可能に連結することが可能な電磁石と、を備えるとともに、前記アーマチャの外周部には、前記アーマチャの振動により生ずる音を前記アーマチャ以外の部材に対して非接触な状態で減衰可能な軟質材料からなる消音部材が設けられており、前記消音部材は、軟質材料のみからなり、前記アーマチャを前記軸方向に挟み込むフランジ部を有する。
【0010】
即ち、例えば、アーマチャとローターとの間のスティックスリップ現象により生ずる異音等、アーマチャから発せられる音は、当該アーマチャの振動に起因するものである。従って、上記のようにアーマチャに軟質材料からなる消音部材を設けることにより、そのアーマチャ以外の部材に非接触状態で、アーマチャの振動により生ずる音を減衰することができる。特に、アーマチャは、その外周部が最も大きく振動する。従って、この外周部に消音部材を設けることで、より顕著な効果を得ることができる。その結果、より優れた静音性を実現することができる。
【0011】
また、上記のように消音部材がアーマチャを軸方向に挟み込むフランジ部を有することにより、より確実に、アーマチャの外周部に対して消音部材を固定することできる。
上記課題を解決する電磁クラッチ装置は、前記消音部材は、環形状を有して前記アーマチャ
自身の外周部に
対して固定され
ていることが好ましい。
上記構成によれば、アーマチャが振動することにより生ずる音を当該アーマチャの全周に亘って効果的に減衰することができる。
【0013】
上記課題を解決する電磁クラッチ装置は、前記外周部には、軸方向厚みの薄い薄肉部が形成されることが好ましい。
上記構成によれば、その大きく振動する外周部に設けられた消音部材が、アーマチャ以外の部材(例えば、シール部材やハウジング等)に干渉することを回避することができる。
【0014】
上記課題を解決する電磁クラッチ装置は、前記駆動部材と前記アーマチャとの間には、前記消音部材の径方向内側の位置において前記アーマチャを軸方向に付勢して前記ローターに当接させる付勢部材が介在されることが好ましい。
【0015】
即ち、消音部材がアーマチャの外周部に設けられることによって、その径方向内側において当該アーマチャと駆動部材との間に付勢部材を介在させることができる。そして、この付勢部材によりアーマチャを軸方向に付勢して予めローターに当接させることにより、両者間の接触音を抑えることができる。
【0016】
上記課題を解決するアクチュエータ装置は、上記何れかの電磁クラッチ装置を備えたものであることが好ましい。
上記構成によれば、その静粛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より優れた静音性を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、パワースライドドア装置に適用されるアクチュエータ装置、及びその電磁クラッチ装置に関する一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両に設けられた開閉体としてのスライドドア1は、車両前後方向に移動することにより車両のボディ側面に設けられた開口部(図示略)を開閉できるように構成されている。具体的には、このスライドドア1は、車両前方側(同図中、左側)に移動することにより、ボディの開口部を閉塞する閉状態となり、車両後方側(同図中、右側)に移動することにより、その開口部を介して乗降可能な開状態になる。そして、スライドドア1には、当該スライドドア1を開閉すべく操作されるハンドル装置3が設けられている。
【0020】
詳述すると、スライドドア1には、当該スライドドア1を全閉位置で拘束するためのフロントロック5a及びリアロック5b(全閉ロック)が設けられている。また、スライドドア1には、当該スライドドア1を全開位置で拘束するための全開ロック5cが設けられている。そして、これらの各ロック機構(ラッチ機構)5は、リモコン6から延びるワイヤ等の伝達部材を介して機械的にハンドル装置3と連結されている。
【0021】
即ち、ハンドル装置3に対する操作入力は、そのスライドドア1の外装面及び内装面に設けられた操作部(アウターハンドル及びインナーハンドル)3aの動作に基づいて、各ロック機構5へと伝達される。そして、その操作力に基づいてスライドドア1の拘束が解除されることにより、全閉位置にあるスライドドア1の開方向への移動、又は全開位置にあるスライドドア1の閉方向への移動が許容されるようになっている。
【0022】
また、この車両には、モータ10を駆動源とするアクチュエータ装置11を有してスライドドア1を開閉作動させることが可能なパワースライドドア装置20が設けられている。
【0023】
詳述すると、本実施形態では、アクチュエータ装置11のモータ10は、制御装置21が供給する駆動電力に基づいて回転する。即ち、アクチュエータ装置11は、制御装置21が実行する駆動電力の供給を通じて、その作動が制御されている。また、アクチュエータ装置11は、そのモータ10の回転を減速して出力する減速機構22を備えている。そして、本実施形態のパワースライドドア装置20は、その減速機構22により減速されたモータ10の回転をスライドドア1の駆動部(図示略)に伝達することにより、当該スライドドア1を開閉作動させることが可能となっている。
【0024】
さらに詳述すると、本実施形態では、制御装置21には、スライドドア1の作動位置(開閉位置)Pxを検出する作動位置センサ23が接続されている。また、制御装置21には、上記のハンドル装置3や携帯機(リモコンキー)、或いは車室内等に設けられた開閉操作スイッチ24が操作されることにより、そのモータ駆動によるスライドドア1の開閉作動を要求する作動要求信号Sqが入力されるようになっている。そして、制御装置21は、その作動要求信号Sqの入力、及びスライドドア1の作動位置Pxに基づいて、当該スライドドア1を開閉作動(又は停止)させるべく、アクチュエータ装置11の作動を制御する構成となっている。
【0025】
(電磁クラッチ装置)
次に、アクチュエータ装置に設けられた電磁クラッチ装置の構成について説明する。
図2〜
図4に示すように、本実施形態のアクチュエータ装置11は、上記減速機構22を収容するハウジング30を備えている。本実施形態では、このハウジング30は、第1ハウジング部材31及び第2ハウジング部材32を組み付けることにより形成されている。そして、減速機構22は、このハウジング30に設けられたギヤ収容部33内に収容されている。
【0026】
詳述すると、本実施形態のハウジング30において、ギヤ収容部33は、扁平略円筒状の外形を有している。また、本実施形態では、減速機構22には、周知のウォーム&ホイールが採用されている。そして、ギヤ収容部33内には、そのホイールギヤ34が回転自在に収容されている。
【0027】
即ち、
図2及び
図3に示すように、本実施形態のモータ10は、その図示しないモータ軸をギヤ収容部33内に挿入する態様でハウジング30に固定されている。具体的には、本実施形態のハウジング30は、ギヤ収容部33の側方(各図中、右側)に延びる扁平略四角箱状の外形を有して制御基板35を収容する基板収容部36を備えている。モータ10は、この基板収容部36に略平行する態様で、第1ハウジング部材31に固定されている。そして、
図4に示すように、ホイールギヤ34は、そのモータ軸と一体に回転するウォームギヤ37に噛合する状態でギヤ収容部33内における第1ハウジング部材31側(
図4中、左側)に配置されている。
【0028】
さらに詳述すると、
図4に示すように、ギヤ収容部33内には、その先端40aが第1ハウジング部材31を厚み方向(同図中、左右方向)に貫通する態様で、回転自在に支持された出力軸40が設けられている。具体的には、第1ハウジング部材31には、その略円筒形状をなすギヤ収容部33の中央部分となる位置に、出力軸40が挿通される開口部41が形成されている。そして、この開口部41内、及び当該開口部41に対向する第2ハウジング部材32の底壁部32aには、それぞれ、その出力軸40を回転自在に軸支するボール軸受42,43が設けられている。
【0029】
一方、ホイールギヤ34には、その回転中心となる中央部分に円環状の滑り軸受44が設けられている。そして、ホイールギヤ34は、その滑り軸受44に上記出力軸40が挿通されることにより、当該出力軸40を回転軸Lとして回転自在に支持されている。
【0030】
また、本実施形態では、ギヤ収容部33内には、軸方向移動可能に上記ホイールギヤ34に支持されて当該ホイールギヤ34と一体に回転するアーマチャ50と、このアーマチャ50に対して相対回転可能な状態で同軸に並置されて上記出力軸40と一体に回転するローター51とが設けられている。
【0031】
図4及び
図5に示すように、本実施形態のアーマチャ50は、中央部に円孔52を有する略円板状の外形を有している。また、アーマチャ50は、鉄系の磁性材料により形成されている。そして、アーマチャ50は、その円孔52内に上記出力軸40が挿通されることにより、ホイールギヤ34と同軸に並置されている。
【0032】
また、
図5及び
図6に示すように、アーマチャ50は、その円孔52を囲むように周方向に並んで形成された複数の貫通孔53を有している。更に、ホイールギヤ34には、その回転軸Lとなる出力軸40に沿った軸方向に延設されることにより、アーマチャ50の各貫通孔53に挿入される複数の支持突部54が設けられている。そして、アーマチャ50は、これら支持突部54に支持されることにより、駆動部材としてのホイールギヤ34と一体に回転し、及びその軸方向に移動することが可能となっている。
【0033】
一方、
図4に示すように、ローター51は、上記出力軸40と同軸に固定されることにより当該出力軸40と一体回転可能な状態で、そのギヤ収容部33内における第2ハウジング部材32側(同図中、右側)に配置されている。
【0034】
また、本実施形態のローター51は、上記アーマチャ50と同様に、鉄系の磁性材料により形成されている。更に、ギヤ収容部33内には、通電により起磁力を発生する電磁コイル55が設けられている。そして、本実施形態では、この電磁コイル55に通電することにより生ずる電磁吸引力に基づいて、そのアーマチャ50とローター51とを圧接させることが可能な電磁石56が形成されている。
【0035】
具体的には、ギヤ収容部33内には、出力軸40の基端40b(及びローター51の固定部51b)を囲む略円環状の外形を有したヨーク57が設けられている。尚、本実施形態では、このヨーク57は、ボルト58を用いて第2ハウジング部材32の底壁部32aに固定されている。また、ヨーク57は、上記アーマチャ50及びローター51と同様に、鉄系の磁性材料により形成されている。更に、このヨーク57は、その円板状をなすローター本体51aに対向して軸方向(第1ハウジング部材31側、
図4中、左側)に開口する環状溝59を有している。そして、電磁コイル55は、この断面略コ字状をなす環状溝59に対し、その周方向に沿って巻き付けられた状態で保持されている。
【0036】
即ち、本実施形態の電磁コイル55は、通電されることにより、当該電磁コイル55を包囲する位置に配置されたヨーク57及びローター51に磁気回路Mを形成する。そして、本実施形態では、そのローター51を含んで形成される電磁石56が軸方向移動可能に設けられたアーマチャ50を吸引することによって、これらアーマチャ50とローター51とを圧接させることが可能になっている。
【0037】
また、本実施形態のアクチュエータ装置11において、そのホイールギヤ34(駆動部材)と一体に回転するアーマチャ50及び出力軸40(出力部材)と一体に回転するローター51は、それぞれ、互いの対向面50s,51sが圧接されることによりトルク伝達可能に連結されるように構成されている。そして、本実施形態では、これにより、その電磁コイル55に対する通電制御に基づいて、上記アーマチャ50及びローター51とが相対回転可能な開放状態と、これらのアーマチャ50とローター51とがトルク伝達可能に連結された連結状態と、を切り替え可能な電磁クラッチ装置60が形成されている。
【0038】
即ち、電磁石56の磁気吸引力は、電磁コイル55への通電を停止することにより消失する。そして、これにより、そのアーマチャ50とローター51とが相対回転可能な開放状態となることにより、その駆動源であるモータ10と出力部材としての出力軸40との間のトルク伝達経路を遮断することが可能となっている。
【0039】
(静音構造)
次に、本実施形態の電磁クラッチ装置における静音構造について説明する。
図4、
図6及び
図7に示すように、本実施形態では、アーマチャ50と当該アーマチャ50を支持するホイールギヤ34との間、詳しくは、その円板状をなすホイールギヤ本体34aとの間には、付勢部材としてウェーブワッシャ61が介在されている。具体的には、このウェーブワッシャ61は、その周方向に沿って交互に波状の凹凸が形成された周知の構成を有しており、その環形状の内側に上記出力軸40が挿通される状態でアーマチャ50とホイールギヤ34との間に介在されている。そして、アーマチャ50は、このウェーブワッシャ61の弾性力に基づき軸方向に付勢されることにより、そのローター51との対向面50sがローター51側の対向面51sに当接する状態で保持されるようになっている。
【0040】
即ち、本実施形態の電磁クラッチ装置60は、上記電磁コイル55に対する通電が行われていない非連結時には、そのアーマチャ50とローター51とが摺接状態で相対回転するように構成されている。そして、本実施形態では、これにより、両者の間隔(クリアランス)を詰めることで、そのアーマチャ50とローター51との接触音を抑える構成になっている。
【0041】
また、
図8及び
図9に示すように、本実施形態では、アーマチャ50の外周部50aには、そのアーマチャ50が振動することにより発生する音を当該アーマチャ50以外の部材に対して非接触な状態で減衰可能な軟質材料からなる消音部材62が設けられている。
【0042】
詳述すると、本実施形態では、この消音部材62は、アーマチャ50の素材よりも軟質な素材から形成されている。具体的には、弾性変形可能なゴムや軟質プラスチック等により形成されている。そして、この消音部材62は、円環状の外形を有してアーマチャ50の外周部50aに嵌着されている。
【0043】
さらに詳述すると、
図10に示すように、本実施形態の消音部材62は、アーマチャ50の外周部50aを軸方向(各図中、左右方向)に挟み込み可能なフランジ部62a,62bを備えている。また、
図9に示すように、このアーマチャ50の外周部50aには、上記対向面50sの裏面側にテーパ面63が形成されている。そして、本実施形態では、これにより、アーマチャ50の外周部50aは、その軸方向厚みDの薄い薄肉部64となっている(同図中、D0>D1)。
【0044】
即ち、消音部材62は、一方のフランジ部62aが弾性変形した状態で、そのアーマチャ50の外周部50aに設けられた薄肉部64に外嵌されている。また、第1ハウジング部材31と第2ハウジング部材32との境界部分には、その略円筒状をなすギヤ収容部33の内周に沿うように延びる略円環状のシール部材65が設けられている。具体的には、このシール部材65は、略円板状をなすアーマチャ50とホイールギヤ本体34aとの間において、その減速機構22に塗布された潤滑剤(グリス等)が、電磁コイル55を収容する第2ハウジング部材32側に漏出することを防止する所謂グリスシールプレートとして機能する。そして、本実施形態では、上記のように、アーマチャ50の外周部50aに薄肉部64を形成することで、その消音部材62とシール部材65との干渉を回避する構成となっている。
【0045】
次に、上記のように構成された電磁クラッチ装置60の作用について説明する。
本実施形態では、上記電磁クラッチ装置60もまた、制御装置21によって、その作動が制御されている。例えば、スライドドア1が手動で開閉される場合には、その電磁コイル55に対する通電が停止される。そして、これにより電磁クラッチ装置60が開放状態となり、アクチュエータ装置11のトルク伝達経路が遮断されることによって、手動操作時においても、その円滑なスライドドア1の動作が確保されるようになっている。
【0046】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)即ち、例えば、アーマチャ50とローター51との間のスティックスリップ現象により生ずる異音等、アーマチャ50から発せられる音は、当該アーマチャ50の振動に起因するものである。従って、上記のようにアーマチャ50に軟質材料からなる消音部材62を設けることにより、そのアーマチャ50の振動により生ずる音を減衰することができる。特に、アーマチャ50は、その外周部50aが最も大きく振動する。従って、この外周部50aに消音部材62を設けることで、より顕著な効果を得ることができる。その結果、より優れた静音性を実現することができる。
【0047】
(2)また、環形状を有した消音部材62を外周部50aに嵌着することにより、そのアーマチャ50が振動することにより生ずる音を当該アーマチャ50の全周に亘って効果的に減衰することができる。
【0048】
(3)特に、弾性変形可能な軟質材料を用いてアーマチャ50を形成することで、優れた消音効果が得られる。加えて、そのアーマチャ50の外周部50aに対する組み付けを容易化することができる。
【0049】
(4)また、アーマチャ50の外周部50aを軸方向に挟み込み可能なフランジ部62a,62bを設けることで、より確実に、その消音部材62をアーマチャ50の外周部50aを固定することできる。
【0050】
(5)アーマチャ50の外周部50aには、軸方向厚みDの薄い薄肉部64が形成される。これにより、その大きく振動する外周部50aに設けられた消音部材62が、シール部材65のようなアーマチャ50以外の部材に干渉することを回避することができる。
【0051】
(6)また、消音部材62がアーマチャ50の外周部50aに設けられることによって、その径方向内側において当該アーマチャ50とホイールギヤ34との間に付勢部材としてのウェーブワッシャ61を介在させることができる。そして、このウェーブワッシャ61の弾性力に基づき軸方向にアーマチャ50を付勢してローター51に予め当接させることにより、両者間の接触音を抑えることができる。
【0052】
(7)アーマチャ50の外周部50aには、その軸方向一方側(対向面50sの裏面側)にテーパ面63が形成される。これにより、プレス加工を用いて容易に薄肉部を形成することが可能になる。
【0053】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、消音部材62を構成する軟質材料として、アーマチャ50の素材よりも軟質であること、及び弾性変形可能であることとし、これに該当するものとしてゴムや軟質プラスチックを例示した。しかし、これに限らず、アーマチャ50の振動により生ずる音を当該アーマチャ50以外の部材に対して非接触な状態で減衰可能であれば、例えば、スポンジ等を用いてもよい。
【0054】
・上記実施形態では、ウェーブワッシャ61を付勢部材に用いてローター51にアーマチャ50を当接させることとしたが、その付勢部材については、任意に変更してもよい。また、このような付勢部材を有しない構成に適用してもよい。
【0055】
・上記実施形態では、消音部材62は、円環状の外形を有してアーマチャ50の外周部50aに嵌着されることとした。しかし、これに限らず、消音部材62の形状は、任意に変更してもよい。例えば、周方向の一部分が切り欠かれたC字状であってもよい。また、アーマチャ50の周方向、複数箇所に消音部材62が設けられる構成であってもよい。そして、アーマチャ50の外周部50aを軸方向に挟み込み可能なフランジ部62a,62bを備えない構成であってもよい。
【0056】
・上記実施形態では、ローター51に磁気回路Mを形成することにより当該ローター51を含む電磁石56が形成されることとした。しかし、これに限らず、電磁石56の形態は任意に変更してもよい。その電磁吸引力に基づきアーマチャ50とローター51とを圧接させてトルク伝達可能に連結することができればよい。
【0057】
・上記実施形態では、対向面50sの裏面側にテーパ面63を形成することにより、そのアーマチャ50の外周部50aを軸方向厚みDの薄い薄肉部64とした。しかし、これに限らず、その薄肉部64の形状については、任意に変更してもよい。例えば、その外周部50aに段部を形成する構成であってもよい。また、外周部50aの対向面50s側、或いはその両面を薄肉化する構成であってもよい。そして、このような薄肉部64が設けられない構成についてもまた、これを排除しない。
【0058】
・上記実施形態では、減速機構22を構成するホイールギヤ34を駆動部材としたが、駆動部材については、任意に変更してもよい。
・上記実施形態では、アクチュエータ装置11に設けられた電磁クラッチ装置60に具体化したが、これ以外の用途に用いられる電磁クラッチ装置に適用してもよい。
【0059】
・また、アクチュエータ装置11は、パワースライドドア装置20に用いられることとしたが、これ以外の用途に用いられるアクチュエータ装置に適用してもよい。例えば、車両後部に設けられたバックドアやラゲッジドア、或いはトランク蓋等、スライドドア1以外の開閉体を開閉動作させるその他の車両用開閉体駆動装置に適用してもよい。
【0060】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を効果とともに記載する。
(イ)前記アーマチャは、前記外周部における軸方向一方側にテーパ面を有すること、を特徴とする電磁クラッチ装置。これにより、プレス加工を用いて容易に薄肉部を形成することが可能になる。
【0061】
(ロ)請求項6に記載のアクチュエータ装置を備えた車両用開閉体制御装置。これにより、その静粛性を向上させることができる。