【文献】
社団法人日本道路協会,道路土工−のり面工・斜面安定工指針,社団法人日本道路協会,2007年 3月15日,改訂版第15刷,P.138、表3−1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の石詰籠のうち第1の石詰籠の上に載せられた第2の石詰籠において、前記第2の石詰籠の背面は、前記第1の石詰籠の背面に連結部材によって連結されている、請求項1又は2に記載されている法面保護構造。
【背景技術】
【0002】
従来より、山や谷、道路、住宅地、川岸等における法面の保護のためにふとん籠と呼ばれる石詰籠が用いられてきた。例えば、特許文献1には、直方体状をした石詰籠を一段ごとに後方に一定距離ずつ後退させた状態で段積した個性の法面保護構造が開示されている。また、特許文献2にはそれぞれ単一の金網材料を仕切ることによって底網と側網とを形成する高地用の第1の胴網とのり面用の第2の胴網と低地用の第3の胴網とを縦列に連結してなり、前記第1、第2の胴網は、当て網を介して前記側網を連結し、前記第2、第3の胴網は、前記側網を重ね合わせて連結する法面保護構造が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されているような法面を掘削して階段状にした、いわゆる多段積みと呼ばれる法面保護構造は、法勾配が8分以下である傾斜が大きな法面に適用される。なぜならば、急斜面からの土圧に対して安定して積み上げ・固定することができるからである一方、緩傾斜に対しては、傾斜方向に沿った水平長さを長くしないと後端の沈下変形を抑えることができないためコストが大きくなってしまうからである。このため、緩斜面に対しては特許文献2に開示されているような、法面にそのまま石詰籠を載せるいわゆる平張り構造が用いられる。
【0004】
平張り構造は法勾配が1割より小さい法面に適用すると滑り落ちるおそれが大きく、1割から1割5分の法面では、籠の中に石を詰める際に作業員の安全のための足場や命綱等の設備を設置して石詰め後に撤去する必要があるため、法勾配が1割5分よりも大きい緩斜面に適用される。なお、法勾配の数値が大きいのは、法面の傾斜度合いが小さいということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、法勾配が1割から1割5分の法面においては多段積みでは高コストになってしまい、平張り構造では石詰め時の安全性や滑り落ちなどの点で不適であるという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、法勾配が1割から1割5分の法面において低コストで形成できる法面保護構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の法面保護構造は、複数の石詰籠を積み上げてなる法面保護構造であって、法勾配が1割以上1割5分以下であり、前記石詰籠において前面、底面及び背面は、溶接金網パネルを折り曲げて一体に形成された折り曲げパネル部材によって構成されており、前記背面は法面に載せられている構成を有している。
【0009】
前記折り曲げパネル部材は、前記溶接金網パネルを平行な2本の折り目により折り曲げて形成されており、前記底面は、前記2本の折り目に挟まれた部分であり、前記前面は、前記底面から直角に上方に折り曲げられた部分であり、前記法面は、前記底面から前記法勾配の角度に上方に折り曲げられた部分であることが好ましい。ここで2本の折り目が平行であるとは溶接金網パネルの製造・折り曲げ工程における誤差や製造ばらつき等を考慮した範囲での折り目同士の位置関係であり、数学的に厳密な意味での平行を意味していない。直角および法勾配の角度についても同様である。
【0010】
さらに、前記折り曲げパネル部材において、前記2本の折り目間の距離をa、前面部分の高さをbとしたときに、b/aが3/5以上8/5以下であることが好ましい。aは底面の奥行き長さ(前面から背面までの長さ)のことである。
【0011】
前記複数の石詰籠のうち第1の石詰籠の上に載せられた第2の石詰籠において、前記第2の石詰籠の背面は、前記第1の石詰籠の背面に連結部材によって連結されていることが好ましい。 なお、第1の石詰籠は、複数の石詰籠の中で上に別の石詰籠(第2の石詰籠)を積まれている任意の石詰籠である。
【0012】
前記連結部材はコイルであることが好ましい。
【0013】
本発明の法面保護構造の形成方法は、法勾配は1割以上1割5分以下であり、溶接金網パネルを2本の折り目により折り曲げて前面、底面及び背面を構成した第1の折り曲げパネル部材のうち前記背面を法面の最も下の部分に載せるとともに、法面の下端から続く地盤の上に前記底面を載せる工程と、前記第1の折り曲げパネル部材の前記前面、前記底面及び前記背面に囲まれた部分に石を詰める工程と、溶接金網パネルを2本の折り目により折り曲げて前面、底面及び背面を構成した第2の折り曲げパネル部材のうち前記背面を、前記第1の折り曲げパネル部材における前記背面の上方の法面に載せるとともに、石を詰めた前記第1の折り曲げパネル部材の上に前記第2の折り曲げパネル部材の前記底面を載せる工程と、前記第2の折り曲げパネル部材の前記背面の下端部分と前記第1の折り曲げパネル部材の前記背面の上端とを連結部材によって連結する工程と、前記第2の折り曲げパネル部材の前記前面、前記底面及び前記背面に囲まれた部分に石を詰める工程とを含む構成を有している。第1の折り曲げパネル部材の底面を載せる法面の下端から続く地盤は略水平な地盤である。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、溶接金網からなる折り曲げパネル部材により前面、底面及び背面が構成されていて、背面が法面に載せられるため、安価であらかじめ工場で製造された自立する折り曲げパネル部材を用いて石詰籠を容易に形成でき、石詰めも各石詰籠毎に容易に行うことができて、低コストで法面保護構造を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1に係る法面保護構造の模式的な側面図である。
【
図2】実施形態1に係る法面保護構造の一部の正面図である。
【
図3】実施形態1に係る法面保護構造の一部の背面図である。
【
図4】実施形態1に係る法面保護構造の一部の右側面図である。
【
図5】実施形態1に係る法面保護構造の一部の平面図である。
【
図6】実施形態1に係る法面保護構造の一部の底面図である。
【
図9】実施形態1に係る石詰籠を解体した状態の模式的な図である。
【
図11】実施形態2に係る法面保護構造の模式的な側面図である。
【
図12】実施形態2に係る法面保護構造の一部の正面図である。
【
図13】実施形態2に係る法面保護構造の一部の背面図である。
【
図14】実施形態2に係る法面保護構造の一部の右側面図である。
【
図15】実施形態2に係る法面保護構造の一部の平面図である。
【
図16】実施形態2に係る法面保護構造の一部の底面図である。
【
図19】実施形態3に係る法面保護構造の模式的な側面図である。
【
図20】実施形態3に係る法面保護構造の一部の正面図である。
【
図21】実施形態3に係る法面保護構造の一部の背面図である。
【
図22】実施形態3に係る法面保護構造の一部の右側面図である。
【
図23】実施形態3に係る法面保護構造の一部の平面図である。
【
図24】実施形態3に係る法面保護構造の一部の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態について説明を行う前に特許文献3について本発明との対比を行う。
【0017】
特許文献3には、法面に沿って上下複数段の石詰篭に跨がるように配設された共通の背面網;法面の傾斜角度に合わせて傾斜し且つ開放する背面を有し、該背面を上記背面網に沿わせた状態で複数段段積されると共に、各々の背面が上記共通の背面網で閉塞された複数の石詰篭;からなることを特徴とする石詰篭製構造壁が開示されている。特許文献3に係る発明は、「本発明の技術的課題は、法面を階段状に切削したり埋め戻したりすることなく設置することができる、施工が簡単な石詰篭製構造壁を得ることにある」と0005段落に記載されているように、多段積み構造の代替を目的としている。図面においても5分から7分の法勾配となっており、傾斜度合いの大きい法面に適用することが前提になっている。この点から、平張り構造の代替とするため、法勾配が1割以上1割5分以下である法面に適用する本願発明とは異なる技術的思想に基づいた発明であることが明らかである。
【0018】
そして、特許文献3においては共通の背面網を備えていることが特徴である。この背面網はフレキシブルな菱形金網か亀甲金網であり、溶接金網ではないことは明らかである。その理由は以下の4点である。まず0021段落に記載されているように、背面網をアンカーボルト等で固定したり、ワイヤロープに支持させて法面に張設して固定していることが挙げられる。溶接金網は法面に載せた際に形状が変形することがなく、法面下の平地部分に下端が当たって移動することがないため、固定する必要性がなく、施工コストを抑えるために溶接金網の固定は行わない。この点、特許文献3においては明細書中でわざわざ背面網の固定を記載しているということは、背面網が変形してしまう菱形金網か亀甲金網であるからである。
【0019】
次に菱形金網や亀甲金網は変形しやすく、巻回した状態で運ぶことができるため、工場で製造した長尺品を施工現場に容易に運搬することができる。特許文献3の図に示されているような法面を全面的に覆うような長尺品として菱形金網や亀甲金網は対応可能である。しかし、溶接金網は変形させることが非常に困難なので、平面形状のままで運搬する必要があり、法面全面を覆うような長尺品を工場から施工現場に運搬することは非常に困難であったり、不可能な場合もある。
【0020】
そして、特許文献3では背面網を法面の路肩部分や最下段の石詰籠の底面にまで延ばしているが、このような構造はフレキシブルな菱形金網や亀甲金網であるから形成することができるのであり、溶接金網ではこのような構造を形成させることは施工現場で複数の鉄線を同時に曲げる必要があるため非常に困難である。
【0021】
さらには、特許文献3では背面網を「張設する」と表現している。この表現はフレキシブルな菱形金網や亀甲金網に対して使用されるものであり、法面に置いただけでは変形しない溶接金網には使用されない。特に0021段落の「ワイヤロープに支持させることによって法面に張設する」のは菱形金網や亀甲金網であり、溶接金網ではない。
【0022】
以上のように、特許文献3における共通の背面網はフレキシブルな菱形金網あるいは亀甲金網であって溶接金網ではないこと、或いは枠線に菱形金網や亀甲金網を張ったフレキシブリティのない金網パネルではないことは明らかである。一方本願発明においては、各石詰籠において前面、底面及び背面が1枚の金網パネルを折り曲げて一体に形成されているので背面の土圧に対する強度が高く、この点で特許文献3とは明確な違いがある。また、本願発明では強度の高い石詰籠を一段ずつ積み重ねて施工するため、急斜面に背面網を固定する必要が無く安全であり、石詰め作業を確実且つ楽に行うことができる。これは特許文献3に係る発明は急斜面における多段積みを代替して各石詰籠を一体に連結するという技術的思想を有しているのに対し、本願発明は斜度が比較的緩い法勾配が1割から1割5分の法面における平張り構造を代替して1段ずつ確実に低コスト高強度の石詰籠を形成するという技術的思想を有しているので、両者の技術的思想が明確に異なっているからである。
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0024】
(実施形態1)
実施形態1に係る法面保護構造は
図1に示すように、法勾配が1割の法面400を保護する法面保護構造100である。この法面保護構造100は3つの石詰籠10,10,10を積み重ねて形成されている。
【0025】
図2〜8に、本実施形態の法面保護構造100のうち、2つの石詰籠10,10を積み重ねた状態を各方向から見て示し、また内部を示す。これらの図面では法面下端に沿って並ぶ石詰籠二つ分のみを示している。
図9に石詰籠10を構成する部材を示す。
【0026】
石詰籠10は、その前面80(正面)、底面70および背面30を、溶接金網パネルを折り曲げて形成された折り曲げパネル部材20により構成されている。溶接金網パネルは、表面に亜鉛アルミ合金めっきが施された鉄線から構成されており、複数の横線及び縦線を直角に交わるように配列させて、その交点を溶接して形成されている。
【0027】
折り曲げパネル部材20は、溶接金網パネルの縦線を二箇所折り曲げて形成されており、その2つの折り目は横線に平行となっている。前面80は一つの折り目において底面70から上方へ直角に折り曲げられており、背面30は別の折り目において底面70から法勾配1割の角度(45度)に上方に折り曲げられている。背面30と底面70とのなす角は135度である。
【0028】
石詰籠10の背面30は、法面400に載せられる。石詰籠10の側面40は台形の溶接金網パネルからなっている。石詰籠10の上蓋50は溶接金網パネルからなっており、石詰籠10の上面部分の一部を覆い、この石詰籠10(第1の石詰籠)の上に積まれる別の石詰籠10(第2の石詰籠)の底面70とともに石詰籠10(第1の石詰籠)の上面全面を塞ぐ。さらに石詰めによる籠のはらみを考慮して上蓋50の一部は第2の石詰籠10の底面70と重なり合うように設定されている。なお、
図5においては最上段の石詰籠10の上面は上蓋50’が全面を覆っている。
【0029】
折り曲げパネル部材20は底面70を地面に置くと自立するため、側面40及び後述の補強枠90とコイル60により連結する際に前面80を支える必要がなく、施工を容易に行うことができる。
【0030】
折り曲げパネル部材20において、底面70の奥行きa(2本の折り目の間の距離)は50cm、前面80の高さbも50cmであってb/a=1であり、石詰籠10の組み立てが容易に行えるとともに、内部への石詰めも手作業によって容易に行うことができる。
【0031】
<法面保護構造の形成>
まず、切土又は盛土によって法勾配が1割の法面400を形成する。この法面400と法面下の平地部分に不織布からなる吸い出し防止材を敷く。これは平地や法面400の土砂が雨によって石詰籠10の内部(石と石との間)に入っていく(吸い出される)ことを防止するためのものである。土砂が吸い出されると石詰籠10が地面に沈んでいくからである。
【0032】
それから法面の一番下の部分において、石詰籠10(第1の石詰籠)を組み立てる。折り曲げパネル部材20(第1の折り曲げパネル部材)を用意して、法面400の最も下の部分に背面30を載せて、その前の平地部分に底面70の後端を法面下端に位置させ、前面80を法面400から離して置く。折り曲げパネル部材20に側面40をコイル60,60’で連結するとともに、法面下端に沿って複数の折り曲げパネル部材20を同じように並べていき、隣接する折り曲げパネル部材20,20同士をコイル60で連結する。コイルには、径の小さいコイル60と径の大きいコイル60’の2種類があり、外観の良さや連結のしやすさなどによって適宜選択して使用する。
【0033】
また、隣接する折り曲げパネル部材20,20同士を連結する際に、部材同士の境界部に
図10に示す側面40の外形と同じ台形形状であって上下方向の中間に中線を入れた補強枠90を置いて、補強枠90と折り曲げパネル部材20,20とをコイル60により連結する。また、折り曲げパネル部材20の長さ方向の中間地点においては、鉄線の両端を曲げてフック状にした補強部材であるステー64を用いて、底面70と前面80とをフックに引っかけて補強する。また、底面70と側面40もステー64を用いて補強する。このとき、上蓋50は取り付けないでおく。
【0034】
次に前面80と底面70と背面30と側面40とで囲まれた部分に石を詰め込む。石は例えば、割り栗石や砕石、コンクリート破砕物等を用いることができる。
【0035】
石を詰め込んだらその上に上蓋50を載せてコイル60’により前面80、側面40、補強枠90と連結させる。
【0036】
次に、折り曲げパネル部材20(第2の折り曲げパネル部材)を用意して、第1の石詰籠10の上に続く法面400に背面30を載せ、第1の石詰籠10の上面のうち上蓋50が載っていない法面400に近い部分に、底面70の後端を法面400のところに位置させ、前面80を法面400から離して置く。このとき、第2の折り曲げパネル部材20の前面80と底面70の境界部分は、上蓋50の後端よりも少し前側に配置されることになる。
【0037】
それから、第2の折り曲げパネル部材20に側面40をコイル60で連結するとともに、法面下端に沿って複数の折り曲げパネル部材20を同じように並べていき、隣接する折り曲げパネル部材20,20同士をコイル60で連結する。また第1の石詰籠10の側面40と第2の折り曲げパネル部材20の底面70とをコイル60’によって連結するとともに、第2の折り曲げパネル部材20の背面30の下端部分と第1の折り曲げパネル部材20の背面30の上端とをコイル60’によって連結する。
【0038】
また、第1の石詰籠10の形成時と同様に、隣接する第2の折り曲げパネル部材20,20同士を連結する際に、部材同士の境界部に補強枠90を置いて、補強枠90と折り曲げパネル部材20,20とをコイル60により連結する。また、第2の折り曲げパネル部材20の長さ方向の中間地点においては、ステー64を用いて、底面70と前面80とをフックに引っかけて補強するとともに、底面70と側面40もステー64を用いて補強する。
【0039】
次に第2の石詰籠10の前面80と底面70と背面30と側面40とで囲まれた部分に石を詰め込む。石を詰め込む際には、第1の石詰籠10の上面に人が載って作業を行うことができるので、安全且つ効率よく石詰めが行える。これ以降は、同じ工程を繰り返して石詰籠10を法面400に沿って上方へ積み上げていく。その際、石が詰められた最上段の籠が第1の石詰籠であり、その上に積まれるのが第2の石詰籠である。
【0040】
本実施形態では、石詰籠10を1段ずつ形成し石を詰めていくので、低コストで確実に法面保護構造100を形成することができる。また、石詰籠10は各部材を工場で製造して運搬し、自立する折り曲げパネル部材20を中心にして施工現場において少ない人数で容易に短時間で組み立てることができる。
【0041】
(実施形態2)
図11に実施形態2に係る法面保護構造200を示す。また、
図12〜18に本実施形態の法面保護構造200のうち、2つの石詰籠11,11を積み重ねた状態を各方向から見て示し、また内部を示す。本実施形態における法面410の法勾配は1割であって実施形態1と同じである。
【0042】
本実施形態では、石詰籠11の底面71の奥行きが実施形態1の1.6倍であって、b/a=8/5であり、それに合わせて側面41及び補強枠91も水平部分が実施形態1よりも長くなっている。また最上段の上蓋51’も実施形態1よりも奥行きが長くなっている。なお、前面80と背面30とコイル60,60’とステー64は実施形態1と同じである。本実施形態の折り曲げパネル部材は、実施形態1における折り曲げパネル部材20に対して底面の奥行きが1.6倍であって、それ以外の部分は実施形態1と同じ構成のものである。法面保護構造200の形成方法は実施形態1と同じである。
【0043】
実施形態2においても実施形態1と同じ効果を奏する。
【0044】
(実施形態3)
図19に実施形態3に係る法面保護構造300を示す。また、
図20〜26に本実施形態の法面保護構造300のうち、2つの石詰籠12,12を積み重ねた状態を各方向から見て示し、また内部を示す。本実施形態における法面420の法勾配は1割5分である。
【0045】
本実施形態では、石詰籠12の底面72の奥行きが実施形態1の3/5、上面の奥行きが辞し形態1の1.05倍であって、b/a=3/5である。本実施形態では法勾配が1割5分であって実施形態1よりも緩やかな斜面であるので、底面72の奥行きを小さくすることができる。また、それに合わせて側面42及び補強枠92も底面側が実施形態1よりも短くなっている。そして上蓋52,52’も実施形態1よりも奥行きが長くなっている。緩斜面になっているので背面32は実施形態1よりも奥行きが長くなっている。なお、前面80とコイル60,60’は実施形態1と同じである。ステー65は、底面72における引っかける位置が実施形態1よりも前面80に近い側にあるので、全体に実施形態1よりも短くなっている。本実施形態の折り曲げパネル部材は、実施形態1における折り曲げパネル部材20に対して底面の奥行きが3/5であり背面の奥行きが1.27倍であり、底面と背面とのなす角が146度であり、それ以外の部分は実施形態1と同じ構成のものである。法面保護構造300の形成方法は実施形態1と同じである。
【0046】
実施形態3においても実施形態1と同じ効果を奏する。
【0047】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
【0048】
石詰籠を積み上げる段数は特に限定されない。
【0049】
石詰籠を形成する各部材の金網パネルはすべて同じ種類であってもよいし、別の種類を混合してもよい。背面を構成する溶接金網よりも前面を構成する溶接金網の方が、金網の編み目を小さくする或いは使用される鉄線の径を大きくすることが好ましい。このようにすることにより、内部の石から加わる圧力に耐える必要がある前面と、法面の凹凸に適合する必要がある背面とにそれぞれ適した溶接金網を使用できる。この場合縦線と横線の一方のみの径を変えてもよいし、両方変えてもよい。
【0050】
石詰籠の各部材(折り曲げパネル部材や上蓋)の法面下端に沿う長さは特に限定されない。また、一つの法面保護構造において、この長さは一種類であってもよいし、複数の長さの部材を用いてもよい。
【0051】
前面の高さ
bは50cmに限定されず、80cm、1mなど任意の高さにすることができる。底面の奥行き
aも限定されない。ただし、b/aが3/5以上8/5以下であることが好ましい。この数値範囲とすることにより、施工が容易となり、法面保護構造の容積を小さく抑えることができてコストを小さくすることができる。
【0052】
折り曲げパネル部材を前面と底面の二つの面のみから構成される部材としてもよい。すなわち背面は別部材(金網パネル)としてもよい。このとき、背面を構成する金網パネルに溶接金網パネルを用いてもよいし、鉄線枠に菱形金網や亀甲金網を張った金網パネルを用いてもよい。鉄線枠に菱形金網や亀甲金網を張った金網パネルよりも溶接金網からなる金網パネルの方が、製造コストが低く面にかかる圧力に対して強いという特徴が有る。
【0053】
石詰籠を構成する金網は、表面が防錆処理されていることが好ましく、具体的には防錆めっき(例えば、亜鉛含有めっき)、防錆被覆又は防錆塗料の塗布がなされていることが好ましい。亜鉛含有めっきには、亜鉛めっき及び亜鉛合金めっきが含まれる。防錆被覆としては、熱可塑性樹脂の被覆が例示できる。防錆塗料としては、例えば鉄骨や鉄線等についてのJIS規格錆止め塗料(K5621など)や日本塗料工業界規格の錆止め塗料などを挙げることができる。
【0054】
溶接金網の材料や径は特に限定されない。溶接金網同士や金網パネルを連結する部材はコイルに限定されず、針金等で結んでもよいし、U字ねじと穴あき金属板とボルトとを用いてもよい。
【0055】
法面保護構造においては、保護構造が法面を滑り落ちることがないこと(滑動安全率)、転倒しないこと(転倒安全率)、地盤内への沈下が無いこと(最大地盤反力度)が許容値であることが重要である。安定計算により、これらを算定できる。しかしながら、許容値を満たしていてもマージンが大きすぎるとオーバースペックとなってコストが増大してしまう。そこで、本発明の構成の法面保護構造について、法勾配1割:b/a=3/5〜8/5、8〜16段、法勾配1割1分:b/a=3/5〜5/5、11〜16段、法勾配1割2分:b/a=3/5〜5/5、12〜16段、法勾配1割3分:b/a=3/5〜5/5、13〜16段、法勾配1割4分:b/a=3/5〜5/5、13〜16段、法勾配1割5分:b/a=3/5〜5/5、8〜16段、の各種について計算を行った。
【0056】
滑動安全率、転倒安全率はどちらも1.50以上であることが定められているが、これらが最小であるのは法勾配1割:b/a=6/5、13段のときであって滑動安全率3.97、転倒安全率1.51であり、最小のマージンとなっている。また、最大地盤反力度は200kN/m
2以下であることが定められているが、これが最大であるのは法勾配1割5分:b/a=4/5、15段のときであって199.1kN/m
2であり、最小のマージンとなっている。