(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前脚及び後脚並びに前記前脚及び前記後脚が揺動可能に接続したフレーム部材を含む車体フレームと、前記車体フレームに支持されたシート支持体と、を有する乳母車本体と、
前記シート支持体、又は、前記シート支持体と前記前脚とを連結する前脚連結部材に両端部において接続したガード部材と、を備え、
前記ガード部材は、前記乳母車本体に接続した一対の端部取り付け部分と、一対の端部取り付け部分を連結するガード部分と、を有し、
前記ガード部分は、前記一対の端部取り付け部分から取り外し可能であり、
前記ガード部材の前記ガード部分は、前記端部取り付け部分に接続する一対の端部接続具と、一対の端部接続具に両端部を固定された樹脂製のガード本体と、有し、
各端部接続具は、前記ガード本体の端部を収容するケーシングと、締結具を用いて前記ケーシングと固定された押さえ板と、を有し、
前記ガード本体の前記端部は、前記ケーシング及び前記押さえ板の間に配置され、前記ケーシングの内面及び前記押さえ板の面に接触した状態で、前記ケーシング及び前記押さえ板とともに前記締結具によって貫通されている、乳母車。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、アームレスト等のガード部材を取り付けられる部材は、乳母車の外観において目につきやすい部位となる。したがって、この部位にガード部材が取り付けられるようにした場合、この目に付きやすい部位の設計に制約が生じ、乳母車の全体的な意匠性を改善することが難しくなる。本発明は、このような点を考慮してなされたものである。すなわち、本発明の第1の目的は、ガード部材の取り付けに起因して乳母車の外観意匠性を害することを効果的に回避することができる乳母車を提供することである。
【0005】
また、ガード部材の乳幼児に対面する部位は、通常、ポリプロピレン等の芯材を含む積層体と、この積層体が挿通する筒状縫製品と、を有している。筒状縫製品は、ガード部材及び乳母車全体に意匠性を付与するとともに、芯材を含む積層体が乳幼児に直接触れることを防止する。しかしながら、縫製品は、比較的にコストの高い部品である。したがって、芯材を含む積層体に加えて筒状縫製品を用いることは、ガード部材の製造コストを大幅に上昇させることになる。そこで、本発明は、単純な構成で安価なガード部材を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による乳母車は、
前脚及び後脚並びに前記前脚及び前記後脚が揺動可能に接続したフレーム部材を含む車体フレームと、前記車体フレームに支持されたシート支持体と、を有する乳母車本体と、
前記シート支持体、又は、前記シート支持体と前記前脚とを連結する前脚連結部材に両端部を取り付けられたガード部材と、を備える。
【0007】
本発明による乳母車において、
前記シート支持体は、座部支持体と、前記座部支持体に後方から接続した背部支持体と、を含み、
前記ガード部材の端部は、前記座部支持体の両側部に取り付けられていてもよい。
【0008】
本発明による乳母車において、
前記シート支持体は、座部支持体と、前記座部支持体に後方から揺動可能に接続した背部支持体と、を有し、
前記座部支持体は、一対の側枠部分と、前記一対の側枠部分を前方において連結する連結枠部分と、を含み、
前記ガード部材の端部は、前記側枠部分に取り付けられ、前記ガード部材は、前記一対の側枠部分の間を延びていてもよい。
【0009】
本発明による乳母車において、
前記座部支持体は、前記背部支持体と回動可能に接続された一対の端部接続材と、各端部接続材に前方から接続し且つ一対の端部接続材間を連結する枠材と、を有し、
前記端部接続材と前記枠材の一部分とによって、前記側枠部分が形成され、前記枠材の他の部分によって、前記連結枠部分が形成され、
前記ガード部材の端部は、前記端部接続材に取り付けられ、前記ガード部材は、前記一対の端部接続材の間を延びていてもよい。
【0010】
本発明による乳母車において、前記前脚連結部材は、前脚と前記端部接続材とを連結していてもよい。
【0011】
本発明による乳母車において、
前記一対の側枠部分の幅方向への離間間隔は、前記側枠部分の後方において前記側枠部分の前方よりも狭くなっており、
前記ガード部材の端部は、前記側枠部分の幅狭の後方部分に取り付けられていてもよい。
【0012】
本発明による乳母車において、
前記ガード部材は、前記乳母車本体に取り付けられた一対の端部取り付け部分と、一対の端部取り付け部分を連結するガード部分と、を有し、
前記ガード部分は、前記一対の端部取り付け部分から取り外し可能であってもよい。
【0013】
本発明による乳母車において、
前記ガード部材の前記ガード部分は、前記端部取り付け部分に接続する一対の端部接続具と、一対の端部接続具に両端部を固定された樹脂製のガード本体と、有し、
各端部接続具は、前記ガード本体の端部を収容するケーシングと、締結具を用いて前記ケーシングと固定された押さえ板と、を有し、
前記ガード本体の前記端部は、前記ケーシング及び前記押さえ板の間に配置され、前記ケーシングの内面及び前記押さえ板の面に接触した状態で、前記ケーシング及び前記押さえ板とともに前記締結具によって貫通されていてもよい。
【0014】
本発明による乳母車において、前記端部取り付け部分は、前記乳母車本体に回動可能に取り付けられていてもよい。
【0015】
本発明による乳母車が、前記シート支持体に支持されたベース布状材を、さらに備え、
前記ベース布状材は、前記シート支持体に装着された座布状部及び背布状部と、前記座布状部及び背布状部から両側方に延び出す一対の側布状部と、を有し、
各側布状部には穴が形成され、前記ガード部材の前記端部取り付け部分が前記側布状部の前記穴を通過していてもよい
【0016】
本発明による乳母車が、前記シート支持体に支持されたベース布状材を、さらに備え、
前記ベース布状材は、前記シート支持体に装着された座布状部及び背布状部と、前記座布状部及び背布状部から両側方に延び出す一対の側布状部と、を有し、
前記ガード部材の端部は、前記乳母車本体に回動可能に取り付けられ、
各側布状部には穴が形成され、前記ガード部材が前記側布状部の前記穴を通過していてもよい。
【0017】
本発明による乳母車が、前記シート支持体に支持されたベース布状材を、さらに備え、
前記ベース布状材は、前記シート支持体に装着された座布状部及び背布状部と、前記座布状部及び背布状部から両側方に延び出す一対の側布状部と、を有し、
前記ガード部材の端部は、前記乳母車本体に回動可能に取り付けられ、
前記側布状部には、補助布材が取り付けられ、
前記側布状部と前記補助布材との間に、前記ガード部材が通過する筒状の経路が形成されていてもよい。
【0018】
本発明による第2の乳母車は、
乳母車本体と、
幅方向に離間して乳母車本体に取り付けられた一対の端部取り付け部分と、一対の端部取り付け部分を連結するガード部分と、を有するガード部材と、を備え、
前記ガード部材の前記ガード部分は、前記端部取り付け部分に接続する一対の端部接続具と、一対の端部接続具に両端部を固定された樹脂製のガード本体と、有し、
各端部接続具は、前記ガード本体の端部を収容するケーシングと、締結具を用いて前記ケーシングと固定された押さえ板と、を有し、
前記ガード本体の前記端部は、前記ケーシング及び前記押さえ板の間に配置され、前記ケーシングの内面及び前記押さえ板の面に接触した状態で、前記ケーシング及び前記押さえ板とともに前記締結具によって貫通されている。
【0019】
本発明による第3の乳母車は、
乳母車の幅方向に互いから離間して当該乳母車に取り付けられる一対の端部取り付け部分と、
一対の端部取り付け部分を連結するガード部分と、を備え、
前記ガード部分は、前記端部取り付け部分に接続する一対の端部接続具と、一対の端部接続具に両端部を固定された樹脂製のガード本体と、有し、
各端部接続具は、前記ガード本体の端部を収容するケーシングと、締結具を用いて前記ケーシングに取り付けられた押さえ板と、を有し、
前記ガード本体の前記端部は、前記ケーシング及び前記押さえ板の間に配置され、前記ケーシングの内面及び前記押さえ板の面に接触した状態で、前記ケーシング及び前記押さえ板とともに前記締結具によって貫通されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガード部材の両端は、シート支持体、又は、シート支持体と前脚とを連結する前脚連結部材に取り付けられる。したがって、ガード部材の取り付けに起因して乳母車の外観意匠性を害することを効果的に回避することができる。
また本発明によれば、ガード部材が、乳母車に着座した乳幼児に対面する位置に、樹脂製のガード本体を有している。樹脂製のガード本体は縫製品で被覆して用いる必要がないので、ガード部材を単純で安価な構成とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
【0023】
図1〜
図9は本発明による乳母車の一実施の形態を説明するための図である。このうち、
図1には、乳母車の全体構成が示されている。乳母車10は、乳幼児を連れ出す際に用いられる。
図1に示すように、乳母車10は、乳母車本体15と、乳母車10に乗車した乳幼児の上方に位置する幌12と、乳母車10に乗車した乳幼児の下方に配置されたかご13と、両端を乳母車本体15に取り付けられたガード部材70と、を有している。ガード部材70は、乳母車10に乗車した乳幼児の前方を幅方向に延びる。
図2に示すように、乳母車本体15は、シート支持体40と、シート支持体40を支持する車体フレーム18と、を有している。
図1に示すように、乳母車10は、シート支持体40に装着されたベース布状材60をさらに有している。ベース布状材60には、クッション性を有したシート(図示せず)が取り外し可能に取り付けられる。乳母車10は、全体的に、前後方向に沿って延びる幅方向中心面を中心として概ね対称な構成となっている。以下、乳母車10を構成する乳母車本体15、ガード部材70及びベース布状材60について、順に説明する。
【0024】
なお、本明細書中において、乳母車10およびその構成要素に対して用いる「前」、「後」、「上」および「下」の用語は、特に指示がない場合、展開状態にある乳母車10に乗車する乳幼児を基準とした「前」、「後」、「上」および「下」を意味する。したがって、「前後方向」とは、
図1における紙面の左下と右上とを結ぶ方向に相当する。そして、特に指示がない限り、「前」とは、乗車した乳幼児が向く側であり、
図1における紙面の左下側が「前側」となる。一方、「上下方向」とは前後方向に直交するとともに乳母車10の接地面に直交する方向である。したがって、乳母車10の接地面が水平面である場合、「上下方向」とは垂直方向をさす。また、「横方向」および「幅方向」とは、「前後方向」および「上下方向」のいずれにも直交する方向である。さらに、「右」および「左」についても、それぞれ、乳母車10に乗車する乳幼児を基準とした横方向または幅方向における「右」および「左」のことを意味する。
【0025】
上述したように、乳母車本体15は、シート支持体40と、シート支持体40を支持する車体フレーム18と、を有している。このうちまず、主として
図5を参照しながら、シート支持体40について説明する。
【0026】
シート支持体40は、主たる構成として、乳幼児の上半身の後方に位置し乳幼児を後方から支持するようになる背部支持体42と、乳幼児の臀部の下方に位置し臀部を下方から支持するようになる座部支持体50と、を有している。背部支持体42は、座部支持体50に後方から接続している。背部支持体42は、座部支持体50に対して揺動可能となっている。背部支持体42の座部支持体50に対する揺動角度、すなわちリクライニング角度は、背部支持体42の背面を通過して車体フレーム18に取り付けられたリクライニング調節ベルト33(
図2参照)の長さを調節することによって、制御し得る。
【0027】
図5に示すように、背部支持体42は、幅方向に離間して配置された一対の側枠部44と、一対の側枠部44,44の上端部に枢着された上部枠部47と、を有している。各側枠部44の下端部は、座部支持体50に枢着されている。上部枠部47は、各側枠部44に接続する一対の側部47a,47aと、一対の側部47a,47a間を幅方向に延びる連結部47bと、を含み、三方枠状に形成されている。
図1及び
図6に示すように、シート支持体40にベース布状材60が装着された場合、一対の側枠部44,44の間の領域に乳幼児の背中を支持する面が形成され、上部枠部47で取り囲まれた領域内に乳幼児の頭部を支持または保護する面が形成される。
【0028】
図5に示すように、背部支持体42は、上部枠部47の各側部47aに一端部を枢着された一対の接続枠部48を、さらに有している。接続枠部48の他端部は、
図4及び
図6に示すように、ハンドル28に枢着されている。接続枠部48は、後述するベース布状材60を支持し、乳母車10に着座した乳幼児を側方から保護する。また、接続枠部48は、リクライニング動作に応じて、上部枠部47を側枠部44に対して回動させるリンク材としても機能する。
図4及び
図5に示すように、背部支持体42が座部支持体50に対して倒れた状態において、上部枠部47は、側枠部44に対して立ち上がっている。一方、
図6に示すように、背部支持体42が座部支持体50に対して立ち上がっている状態において、上部枠部47の側部47aの下方部分は、側枠部44と概ね平行となる。
【0029】
次に、引き続き主として
図5を参照しながら、座部支持体50について説明する。座部支持体50は、前後方向に延びる一対の側枠部分50a,50aと、一対の側枠部分50a,50aの先端部間を連結する連結枠部分50bと、を含み、枠状に形成されている。ただし具体的な構成としては、座部支持体50は、背部支持体42の各側枠部44と枢着された一対の端部接続材52,52と、各端部接続材52に前方から接続し且つ一対の端部接続材52,52間を連結する枠材54と、を有している。端部接続材52は、例えば樹脂成形品からなり、枠材54は、筒状金属を曲げ加工して作製した部材からなる。枠材54の両端部は、対応する側の端部接続材52に、締結具56を介して、固着されている。なお、端部接続材52と枠材54の一部分とによって、側枠部分50aが形成され、枠材54のその他の部分によって、連結枠部分50bが形成されている。
図4に示すように、一対の側枠部分50a,50aの幅方向への離間間隔は、側枠部分50aの後方部分で狭く(間隔da)、側枠部分50aの前方部分で広く(間隔db)なっている。
【0030】
なお、
図5に示すように、シート支持体40は、一対の端部接続材52,52の間を連結する後上部連結部材41を、さらに有している。
【0031】
次に、主として
図1、
図2、
図4及び
図6を参照しながら、以上の構成からなるシート支持体40を支持する車体フレーム18について説明する。なお、
図4においては、図面における手前側(乳母車10における右側)に配置されるべき一部の構成要素を省略しており、同様に
図6においても、図面における手前側(乳母車10における左側)に配置されるべき一部の構成要素を省略している。
図1及び
図4から理解され得るように、シート支持体40の両側に、フレーム部材20、前脚22及び後脚25が設けられている。各フレーム部材20は、乳母車10に着座した乳幼児の側方に位置し、アームレストとして機能する。このフレーム部材20の前方部分(図示された例では、前端部)に、対応する側の前脚22及び後脚25の上方部分(図示された例では、上端部)が、揺動可能に接続されている。一対の前脚22,22の下端部に、それぞれ、前輪23が回転可能に支持されている。一対の後脚25,25の下端部に、それぞれ、後輪26が回転可能に支持されている。
【0032】
一対のフレーム部材20の後方部分(図示された例では、後端部)が、ハンドル28に揺動可能に接続されている。ハンドル28は、幅方向に離間して配置された一対の延出部28a,28aと、一対の延出部28a,28aの間を連結する把持部28bと、を有し、略U字状に形成されている。延出部28aは、棒状に延びており、ハンドル28の中間部分または下方部分に、フレーム部材20が枢着されている。
【0033】
図2及び
図4に示されているように、車体フレーム18は、各前脚22の中間部に枢着された一対の前脚連結部材38と、各後脚25の中間部に枢着された一対の後脚連結部材39と、を有している。
図2及び
図4に示されているように、車体フレーム18は、この前脚連結部材38及び後脚連結部材39において、シート支持体40に接続している。なお上述したように、車体フレーム18は、シート支持体40の接続枠部48とも接続している。前脚連結部材38は、その下端部(前端部)を、前脚22に揺動可能に接続されている。一方、前脚連結部材38の上端部(後端部)は、座部支持体50の側枠部分50aに接続されている。より詳しくは、前脚連結部材38の上端部(後端部)は、座部支持体50をなす端部接続材52に固着されている。後脚連結部材39は、その下端部を、後脚25に揺動可能に接続されている。後脚連結部材39の上端部は、シート支持体40の座部支持体50に揺動可能に接続されている。とりわけ図示された例においては、背部支持体42の座部支持体50に対する揺動軸線を中心として、シート支持体40に対して揺動可能となるよう、後脚連結部材39はシート支持体40に枢着されている。したがって、後脚連結部材39は、座部支持体50だけでなく、背部支持体42に対しても揺動可能に接続している。
【0034】
なお、ハンドル28の各延出部28aの下端部は、後脚連結部材39に揺動可能に接続されている。とりわけ図示された例においては、後脚連結部材39のシート支持体40に対する揺動軸線を中心として、後脚連結部材39に対して揺動可能となるよう、ハンドル28は後脚連結部材39に枢着されている。したがって、ハンドル28は、後脚連結部材39だけでなく、シート支持体40の背部支持体42及び座部支持体50に対しても揺動可能に接続している。
【0035】
図4に示すように、乳母車10の横方向(幅方向)に延びる部材として、一対の前脚22,22の間を連結するフットレスト30と、一対の後脚25,25の間を連結する後下部連結部材31と、が設けられている。
【0036】
以上のような全体構成を有した乳母車本体15は、各構成部材を互いに回動させることにより、折り畳むことができる。具体的には、ハンドル28をいったん後上方に引き上げ、その後、下方に押し下げることによって、後脚連結部材39を後脚25に対し
図2において時計回り方向に回動させる。この操作にともなって、フレーム部材20及び前脚連結部材38はハンドル28に対し
図2において時計回り方向に回動する。このような操作により、側面視においてハンドル28と前脚22とが接近して略平行に配置されるとともに、ハンドル28の配置位置が下げられるようになる。以上のようにして、乳母車本体15を折り畳むことができ、乳母車の前後方向および上下方向に沿った寸法を小型化することができる。
図3には、折り畳まれた状態の乳母車本体15が示されている。一方、乳母車本体15を折り畳み状態から展開するには、上述した折り畳み操作と逆の手順を踏めばよい。
【0037】
次に、主として
図1、
図6及び
図7を参照して、ベース布状材60について説明する。ベース布状材60は、シート支持体40に装着された座布状材61及び背布状材62と、座布状材61及び背布状材62から両側方に延び出した一対の側布状材63と、を含んでいる。座布状材61は、シート支持体40の座部支持体50に装着されて、乳幼児の臀部を下方から支持する座面を形成する。背布状材62は、背部支持体42のうちの側枠部44及び上部枠部47に装着されて、乳幼児の上半身を後方から支持する面を形成する。側布状材63は、ハンドル28及び接続枠部48に支持されて、乳幼児の臀部及び上半身の側方を広がっている。各側布状部63は、シート支持体40から車体フレーム18のアームレストとして機能するフレーム部材20まで延び広がっている。
【0038】
ベース布状材60は、柔軟性を有した布状の材料から形成されている。ベース布状材60は、例えば、適切な強度が得られるように通気性を有した布材を縫製して作製される。
図6に示された例では、ベース布状材60のうちの座布状材61及び背布状材62が、メッシュ材から形成されている。一方、ベース布状材60の側布状材63は、布材から形成されている。
【0039】
ところで、
図6に示すように、次に詳述するガード部材70と関連して、側布状材63には、穴63aが形成されている。また、
図6及び
図7に示すように、側布状材63には、補助布材65が取り付けられている。図示する例では、補助布材65は、側布状材63の幅方向内側面に取り付けられている。補助布材65は、二つに縫い目69a,69bに沿って、側布状材63に縫い付けられている。そして、側布状材63と補助布材65との間に、二つに縫い目69a,69bによって画成された筒状の部位が形成されている。この筒状の部位は、次に説明するガード部材70の経路68となる。筒状経路68は、座布状材61と背布状材62との接合領域近傍から、前方に向けて斜め上方に延びている。
図6に示された側面図において、筒状経路68は、後脚25の上方部分と平行に延びている。
図6に示すように、補助布材65は、穴63aを覆う位置に配置されている。穴63aは、筒状経路68における後端部に位置している。
【0040】
次に、ガード部材70について説明する。図示された例においてガード部材70は、その両端部をシート支持体40に取り付けられ、幅方向に延びるベルト状の部材である。
図1に示すように、ガード部材70は、乳母車10に着座した乳幼児の前方に配置される。
図5及び
図6によく示されているように、図示された例でのガード部材70の端部は、シート支持体40の座部支持体50の両側部、さらに詳しくは、座部支持体50の側枠部分50aに取り付けられている。
【0041】
とりわけ本実施の形態では、ガード部材70の端部は端部接続材52に取り付けられ、ガード部材70は一対の端部接続材52,52の間を延びている。すなわち、ガード部材70の端部が、座部支持体50の後方側の両側部に取り付けられている。したがって。乳母車10に着座した乳幼児の胴体をより安定して且つより確実に取り囲むようにガード部材70を設置することができる。
【0042】
上述したように端部接続材52には枠材54が固着されている。この固着には、
図6に示すように、例えばピンやリベットからなる締結具56が用いられている。そして、ガード部材70は、この締結具56を利用して、端部接続材52に回動可能に接続している。したがって、乳母車の使用時に、着座した乳幼児の動作に応じて、ガード部材70が回動することができる。すなわち、着座した乳幼児の動作に追従して、ガード部材70が上下に移動することができる。これにより、ガード部材70が乳幼児の胴体の周囲を取り囲みながら、同時に、乳母車10の乗り心地を良好に維持することができる。
【0043】
図4に示すように、座部支持体50の一対の側枠部分50a,50aの幅方向への離間間隔は、側枠部分50aの後方において側枠部分50aの前方よりも狭くなっている。ガード部材70の端部は、側枠部分50aの幅狭の後方部分に取り付けられている。そして、乳母車10の幅方向において、ガード部材70は、側枠部分50aの幅広の前方部分と少なくとも部分的に重なるように配置されている。したがって、乳母車10の折り畳み動作時に、座部支持体50及び背部支持体42が互いに接近するように相対揺動した際、ガード部材70が一対の側枠部分50aの幅広の部分によって、押し上げられるように誘導される。すなわち、
図3に示すように、乳母車10の折り畳んだ際に、ガード部材70が上方に延び上がるようになり、折り畳まれた乳母車10からガード部材70が前方に突出することを防止することができる。
【0044】
図5及び
図7によく示されているように、ガード部材70は、乳母車本体15に取り付けられた一対の端部取り付け部分71,71と、一対の端部取り付け部分71,71を連結するガード部分75と、を有している。このうち各端部取り付け部分71が、乳母車本体10に回動可能に取り付けられている。また、
図7に示すように、ガード部分75は、一対の端部取り付け部分71,71のそれぞれから取り外し可能となっている。したがって、乳母車10へ乳幼児を乗り降ろしする際、ガード部分75を取り外すことができる。また、乳母車10に乗車する乳幼児の月齢によっては、ガード部材70は必ずしも必要ではなくなる。このような場合には、ガード部分75を取り外して乳母車10を使用することが可能となる。
【0045】
各端部取り付け部分71は、例えば樹脂成形物からなるバックルとして形成されている。
図9に示すように、乳母車本体15への取り付け側となる端部取り付け部分71の基端部には、接続貫通孔74が形成されている。締結具56(
図6参照)が接続貫通孔74を貫通して、端部取り付け部分71が端部接続材52に対して回動可能に接続されている。一方、
図9に示すように、ガード部分75の取り付け側となる端部取り付け部分71の先端部には、収容凹部73が形成されている。この収容凹部73には、ガード部分75のタング部82が挿入されるようになる。収容凹部73には係止溝73aが形成され、タング部82には係止突起83aが形成されている。タング部82の係止突起83aが、収容凹部73の係止溝73aに嵌り込むことにより、ガード部分75が端部取り付け部分71に固定される。また、係止突起83aと係止溝73aとの係合は、タング部82を撓ませることにより解除される。係止突起83aと係止溝73aとの係合が解除された状態にて、ガード部分75を端部取り付け部分71から取り外すことができる。
【0046】
ところで、
図6に示すように、端部取り付け部分71は、ベース布状材60の側布状材63に形成された穴63aを通過することができる。この結果、乳母車本体15への取り付け側となる端部取り付け部分71の基端部が、対応する側の側布状材63に対して幅方向外側に位置し、ガード部分75と接続する側となる端部取り付け部分71の先端部が、当該側布状材63に対して幅方向内側に位置する。また、端部取り付け部分71は、側布状材63と補助布材65との間に画成された筒状経路68を通過している。
図6及び
図7に示すように、端部取り付け部分71の先端は、筒状経路68の先端開口68aから僅かに延び出すようになっている。すなわち、端部取り付け部分71は、乳幼児が着座するベース布状材60で取り囲まれた領域に、ほとんど露出していない。
【0047】
揺動可能な端部取り付け部分71が側布状材63に設けられた穴63a及び筒状経路68の少なくとも一方を通過していることにより、乳母車10が展開されている状態にて、端部取り付け部分71の先端部が或る程度限られた範囲内に位置するようになる。したがって、ガード部分75の端部取り付け部分71への取り付け作業及びガード部分75の端部取り付け部分71からの取り外し作業を容易に行うことができる。また、ガード部材70の端部取り付け部分71が、ベース布状材60の側布状部63に形成された筒状経路68内を通過していることから、当該端部取り付け部分71を目立たなくさせることができる。これにより、ガード部分75が取り外された状態においても、端部取り付け部分71に関連して違和感を生じさせること無く、乳母車10の意匠性を向上させることができる。
【0048】
次に、ガード部分75についてさらに詳述する。
図6〜
図9に示すように、ガード部分75は、端部取り付け部分71に接続する一対の端部接続具80と、一対の端部接続具80に両端部を固定されたガード本体77と、有している。
【0049】
このうち、ガード本体77は、樹脂から形成されている。とりわけ、ガード本体77は、単一の樹脂成形品として形成されている。樹脂製のガード本体77は、軟質とすることが可能であり、縫製品等で被覆することなく使用され得る。このような樹脂製のガード本体77を用いることにより、ガード部材70を大幅に単純化且つ低コスト化することが可能となる。また、樹脂製のガード本体77の成形時にデザインを形成することにより、目に付く位置に配置されるガード部分75の意匠性、さらには乳母車10の意匠性を改善することができる。
【0050】
ここでガード本体77に用いられる樹脂とは、天然樹脂、合成樹脂、ゴム、発泡プラスチック等を含む概念である。ガード本体77に用いられる樹脂材料として、EVA(Ethylene-Vinyl Acetate)樹脂を例示することができる。EVA樹脂は、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂であって、エチレン系炭化水素を重合して作製される熱可塑性樹脂である。EVA樹脂は、適度な強度とともに柔軟性および弾力を有する点において、ガード本体77の材料として好適である。また、EVA樹脂にゴム類を添加することにより、ガード本体77の弾性や耐熱性を改善することができ、顔料を添加することによりガード本体77を着色することもできる。また、EVA樹脂は、発泡成形することができ、ガード本体77の成形時にデザインを付与することができる。
【0051】
端部接続具80は、ガード本体77の両端部78を把持し、ガード部分75の両端部を形成している。
図7〜
図9に示すように、図示された端部接続具80は、端部取り付け部分71に接続する第1部材81と、ガード本体77の端部78を把持する第2部材86と、を有している。
図8に示すように、第1部材81と第2部材86は、回動軸部材85を介して相対回動可能に接続されている。
【0052】
第1部材81は、上述したタング部82を有している。
図7に示すように、タング部82は、上述した係止突起83aが形成されたタング片83と、タング片83を支持する支持部84と、を有している。タング片83は、ガード部分75の先端となる側に位置する基端部83bにて支持部に接続されている。基端部83bの反対側となるタング片83の先端部83cを押圧することにより、タング片83は支持部84に対して撓むことができる。第1部材81のタング部82が、端部取り付け部分71の収容凹部73に挿入され、タング片83の係止突起83aが収容凹部73の係止溝73aに嵌り込むことにより、ガード部分75が端部取り付け部分71に固定される。一方、タング片83の先端部83cを押圧することにより、係止突起83aが係止溝73aから抜け出す。これにより、タング部82を収容凹部73から引き出し、ガード部分75を端部取り付け部分71から取り外すことが可能となる。
【0053】
図9に示すように、第2部材86は、ガード本体77の端部78を受けるケーシング87と、ケーシング87に装着される蓋体88と、を有している。ケーシング87及び蓋体88によって画成される空間内には、ガード本体77の端部78とともに、押さえ板89が配置されている。ケーシング87及び蓋体88として、樹脂成形品を用いることができる。また、押さえ板89として、金属板を用いることができる。
【0054】
図9に示すように、ガード本体77の端部78は、ケーシング87と押さえ板89との間に配置されている。ケーシング87は、ガード本体77の端部78と面接触する内面87aを有している。押さえ板89も、ガード本体77の端部78と面接触する表面89aを有している。ガード本体77の端部78は、ケーシング87の内面87aと押さえ板89の表面89aとの両方に面接触した状態にて、ケーシング87及び押さえ板89によって挟持されている。より具体的な構成として、
図9に示すように、ケーシング87、ガード本体77の端部78、押さえ板89には、それぞれ、貫通孔87b,78a,89bが形成されている。これらの貫通孔87b,78a,89bを貫通した締結具91、例えば、リベットや、ボルト及びナット等によって、ケーシング87及び押さえ板89の間に、ガード本体77の端部78が把持されている。本件発明者が確認したところ、このような締結方法によれば、EVA等の比較的な軟質な樹脂をガード本体77の材料として用いたとしても、ガード本体77の端部78に形成された貫通孔78aを起点として、樹脂製のガード本体77が破断してしまうことを効果的に回避することができた。
【0055】
また、
図8及び
図9に示すように、ケーシング87には、螺子受け突起87cが形成されている。蓋体88を貫通して螺子受け突起87cに螺子93を螺合させることにより、蓋体88がケーシング87に固定される。図示された例において、ガード本体77の端部78には、第2貫通孔78bが形成されている。螺子受け突起87cは、第2貫通孔78bを貫通している。ただし、締結具91を介してガード本体77の端部78が端部接続具80に安定して固定されているため、第2貫通孔78bに大きな力が加わることがなく、第2貫通孔78bを起点としてガード本体77が破断することを効果的に回避することができる。
【0056】
以上のような本実施の形態によれば、ガード部材70の両端は、シート支持体40に取り付けられており、シート支持体40よりも上方に保持され且つアームレストとしても機能するフレーム部材20には取り付けられていない。したがって、ガード部材70を取り付けるための突起等の構成を、フレーム部材20に設ける必要がない。このため、目に付きやすい位置に配置されたフレーム部材20の意匠性が害されることを回避することができる。さらに、目に付きやすい位置に配置されたフレーム部材20の意匠を、ガード部材70からの制約無しに設計することも可能となる。
【0057】
また本実施の形態によれば、ガード部材70の端部は、シート支持体40のうちの座部支持体50の両側部に取り付けられている。図示された例では、座部支持体50が、一対の側枠部分50a,50aと、一対の側枠部分50a,50aを前方において連結する連結枠部分50bと、を含んでいる。すなわち、座部支持体50は、後方に開口した三方枠、言い換えるとU字状の枠として、形成されている。そして、ガード部材70の各端部は、側枠部分50aに取り付けられ、ガード部材70は、一対の側枠部分50a,50aの間を延びている。したがって、乳幼児の腰部および腹部を取り囲むようにガード部材70を設置することができ、保護者にも視覚的な安心感を与えることができる。
【0058】
さらに本実施の形態によれば、端部取り付け部分71が、シート支持体40に取り付けられており、アームレストとしても機能し且つ目に付きやすい位置に配置されたフレーム部材20には取り付けられていない。したがって、ガード部材70のガード部分75を取り外して乳母車10を使用する場合にも、端部取り付け部分71を目立たなくさせることができる。この結果、ガード部分75が取り外された状態においても、違和感を生じさせることない優れた意匠性を乳母車10に付与することができる。また、ガード部材70のガード部分75を取り外した際に、端部取り付け部分71がフレーム部材20から大きく突出しないようにすることも可能であるので、取り扱い性の面からも都合がよい。
【0059】
さらに本実施の形態によれば、ガード部分75は、一対の端部接続具80に両端を固定された樹脂製のガード本体77を有している。樹脂製のガード本体77は、十分な軟質性を付与され得る。十分に軟質化されたガード本体77は、筒状の縫製品で被覆して用いる必要がなく、ガード部材70を大幅に単純化且つ低コスト化することが可能となる。また、樹脂製のガード本体77の成形時にデザインを形成することにより、目に付く位置に配置されるガード部分75の意匠性、さらには乳母車10の意匠性を改善することができる。なお、ガード本体77の端部は、ケーシング87及び押さえ板89の間に配置され、ケーシング87の内面87a及び押さえ板89の表面89aに接触した状態で、ケーシング87及び押さえ板89とともに締結具91によって貫通されている。この構成によれば、締結具91が貫通する貫通孔78aを起点として、樹脂製のガード本体77が破断してしまうことを効果的に回避することができる。
【0060】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0061】
上述した実施の形態において、ガード部材70の端部が、端部接続材52に取り付けられている例を示したが、この例に限られない。ガード部材70の端部が、シート支持体40の他の部位、例えば枠材54や、背部支持体42の側枠部44等に取り付けられていてもよい。さらに、ガード部材70の端部が、前脚連結部材38に取り付けられていてもよい。
【0062】
また上述した実施の形態において、側布状材63に穴63aが形成されるとともに、補助布材65を用いて筒状経路68が形成される例を示したが、これに限られない。例えば、筒状経路68が形成されておらず、側布状材63に穴63aだけ形成されていてもよい。また、側布状材63に穴63aが形成されていなくてもよい。この場合、ガード部材70は、側布状部63の幅方向外方を通過して前方に延び出すようになる。
【0063】
さらに上述した実施の形態において説明した乳母車10の乳母車本体15の構成は、単なる例に過ぎない。例えば、折り畳み不可能に乳母車本体15を構成するようにしてもよい。また、
図10に示すように、ハンドル28を背面押し位置と対面押し位置との間で揺動可能とした乳母車本体115に対して、上述したガード部材70やベース布状材60が適用されてもよい。
図10に示す例においては、アームレストとして機能するフレーム部材20と後脚連結部材39との間に、上述した実施の形態のハンドル28に代えてリンク材100が配置されている。ハンドル128は、リンク材100と後脚連結部材39との回動軸線を中心として揺動可能となるように、リンク材100に接続されている。この乳母車100において、シート支持体40の座部支持体50の両側部にガード部材70の端部が取り付けられている。
【0064】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。