特許第6205212号(P6205212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6205212フィルム積層体の製造方法及びフィルム積層体の製造設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205212
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】フィルム積層体の製造方法及びフィルム積層体の製造設備
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/16 20060101AFI20170914BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20170914BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   B32B37/16
   G01N21/892 A
   G02B5/30
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-180196(P2013-180196)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-47749(P2015-47749A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】田村 透
(72)【発明者】
【氏名】古澤 修也
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−253864(JP,A)
【文献】 特開2009−069142(JP,A)
【文献】 特開2011−194585(JP,A)
【文献】 特開2007−114516(JP,A)
【文献】 特開2007−083647(JP,A)
【文献】 特開平09−229442(JP,A)
【文献】 特開2013−003436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 37/16
G01N 21/892
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の光学フィルム、又は、該光学フィルムの表面に粘着層を介して保護フィルムが積層されてなる帯状のフィルム積層体を長手方向が移動方向となるようにクリーンルーム内において移送し、
該クリーンルームには、他の領域よりもクリーン度が高いエリアを2以上配置し、該2以上のエリアの内の第1のエリアと該第1のエリアよりもクリーン度が高い第2のエリアとを前記移動方向に隣接させ且つ前記第1のエリアを前記移動方向上流側に配置し、
前記光学フィルム又は前記フィルム積層体が前記第1のエリアを通じて前記第2のエリアに供給されるように前記移送を実施して、
前記光学フィルム又は前記フィルム積層体の表面から異物を除去する異物除去工程を前記第1のエリアで実施した後に、
前記第2のエリアでは、前記光学フィルム、前記フィルム積層体から保護フィルムが剥離された後の光学フィルム、又は、前記保護フィルムが積層された状態の前記フィルム積層体に対して光学特性を検査する検査工程を実施し、且つ、前記第1のエリアでの前記異物除去工程に続けて該第2のエリアでの前記検査工程を実施し、
前記光学フィルム、又は、前記フィルム積層体から保護フィルムが剥離された後の光学フィルムに保護フィルムを貼合する貼合工程を前記第2のエリアでさらに実施してフィルム積層体を作製することを特徴とするフィルム積層体の製造方法。
【請求項2】
帯状の光学フィルムの表面に粘着層を介して保護フィルムが積層されてなる帯状のフィルム積層体を長手方向が移動方向となるようにクリーンルーム内において移送し、
該クリーンルームには、他の領域よりもクリーン度が高いエリアを2以上配置し、該2以上のエリアの内の第1のエリアと該第1のエリアよりもクリーン度が高い第2のエリアとを前記移動方向に隣接させ且つ前記第1のエリアを前記移動方向上流側に配置し、
前記フィルム積層体が前記第1のエリアを通じて前記第2のエリアに供給されるように前記移送を実施して、
前記フィルム積層体の表面から異物を除去する異物除去工程を前記第1のエリアで実施し、
前記第2のエリアに、前記異物除去工程後のフィルム積層体から保護フィルムを剥離するための剥離装置と、該剥離装置によって保護フィルムが剥離された後の光学フィルムの光学特性を検査する検査装置とをさらに配置し、
前記第1のエリアでの前記異物除去工程に続けて該第2のエリアでは前記剥離装置による前記剥離を実施し、
該第2のエリアでは、保護フィルムが剥離された後の前記光学フィルムの光学特性を前記検査装置で検査する検査工程を実施し、且つ、
検査工程後の光学フィルムに対して保護フィルムを貼合する貼合工程を実施することを特徴とするフィルム積層体の製造方法。
【請求項3】
前記異物除去工程には粘着ロールを用い、前記光学フィルム又は前記フィルム積層体の表面に前記粘着ロールの外周面を当接させて前記表面に付着している異物の除去を実施する請求項1又は2記載のフィルム積層体の製造方法。
【請求項4】
クリーンルームと、
帯状の光学フィルム、又は、該光学フィルムの表面に粘着層を介して保護フィルムが積層されてなる帯状のフィルム積層体を長手方向が移動方向となるように前記クリーンルーム内において移送する移送手段と、
前記移送手段によって移送されている前記光学フィルム又は前記フィルム積層体の表面に付着している異物を除去する異物除去装置と、
前記光学フィルム、前記フィルム積層体から保護フィルムが剥離された後の光学フィルム、又は、前記保護フィルムが積層された状態の前記フィルム積層体に対して光学特性を検査する検査装置と、
前記光学フィルム、又は、前記フィルム積層体から保護フィルムが剥離された後の光学フィルムに保護フィルムを貼合する貼合装置とが備えられ、
前記クリーンルームには、他の領域よりもクリーン度が高いエリアが2以上配置され、該2以上のエリアの内の第1のエリアと該第1のエリアよりもクリーン度が高い第2のエリアとが前記移動方向に隣接され且つ前記第1のエリアが前記移動方向上流側に配置されており、
前記移送手段が、前記光学フィルム又は前記フィルム積層体を前記第1のエリアを通じて前記第2のエリアに移送すべく備えられ、
前記異物除去装置が前記第1のエリアに配置されているとともに前記検査装置と前記貼合装置とが前記第2のエリアに配置されており、
前記光学フィルム又は前記フィルム積層体が前記異物除去装置に続けて前記検査装置に供給されることを特徴とするフィルム積層体の製造設備。
【請求項5】
クリーンルームと、
帯状の光学フィルムの表面に粘着層を介して保護フィルムが積層されてなる帯状のフィルム積層体を長手方向が移動方向となるように前記クリーンルーム内において移送する移送手段と、
前記移送手段によって移送されている前記フィルム積層体の表面に付着している異物を除去する異物除去装置と、
異物除去装置を通過した前記フィルム積層体から保護フィルムを剥離するための剥離装置と、
該剥離装置によって保護フィルムが剥離された後の光学フィルムの光学特性を検査する前記検査装置と、
前記フィルム積層体から保護フィルムが剥離された後の光学フィルムに保護フィルムを貼合する貼合装置とが備えられ、
前記クリーンルームには、他の領域よりもクリーン度が高いエリアが2以上配置され、該2以上のエリアの内の第1のエリアと該第1のエリアよりもクリーン度が高い第2のエリアとが前記移動方向に隣接され且つ前記第1のエリアが前記移動方向上流側に配置されており、
前記移送手段が、前記フィルム積層体を前記第1のエリアを通じて前記第2のエリアに移送すべく備えられ、
前記異物除去装置が前記第1のエリアに配置されているとともに前記剥離装置、前記検査装置、及び、前記貼合装置が前記第2のエリアに配置されており、
前記フィルム積層体が、前記異物除去装置に続けて前記剥離装置に供給され、
前記検査装置による検査後の光学フィルムに対して前記貼合装置による保護フィルムの貼合が実施されることを特徴とするフィルム積層体の製造設備。
【請求項6】
前記異物除去装置が粘着ロールを有し、該異物除去装置では、前記光学フィルム又は、前記フィルム積層体の表面に前記粘着ロールの外周面を当接させて前記表面に付着している異物の除去が実施される請求項4又は5記載のフィルム積層体の製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム積層体の製造方法及びフィルム積層体の製造設備に関し、より詳しくは、光学フィルムの表面に粘着層を介して保護フィルムが積層されてなるフィルム積層体を作製するフィルム積層体の製造方法及びこのようなフィルム積層体を製造するための製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置などの光学製品に適用される光学フィルムとして偏光フィルム(偏光板)が用いられている。
【0003】
この種の偏光フィルムは、通常、連続的に作製されて長尺な帯状となっている。
そして、偏光フィルムは、少なくとも一方の面に粘着層を介して前記保護フィルムが積層されたフィルム積層体とされ、さらにこのフィルム積層体がロール状に巻き取られた原反ロールと呼ばれる形で一旦保管される。
その後、打抜きなどにより前記原反ロールから所定形状を有するシート片(偏光板)へと加工され、該シート片が光学製品に組み込むための製品として出荷されている。
【0004】
なお、前記原反ロールは、必ずしも、偏光フィルムが全面にわたって良品となっているとは限らず、前記打抜き前に一旦保護フィルムが剥離された状態で検査装置にかけられて欠陥箇所の検出を行う技術が知られている。
このような場合、再び検査後の偏光フィルムに保護フィルムが積層されてフィルム積層体が改めて作製された後で前記打抜きが行われている。
この種の偏光フィルムの検査やフィルム積層体の作製は、通常、クリーンルーム内において実施されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−069142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のようなフィルム積層体の作製においては、当該フィルム積層体に異物が混入することを防止する上において、前記クリーンルームのクリーン度が高度なものであることが望ましい。
しかし、フィルム積層体の製造設備全体を高いクリーン度に維持させることは容易ではなく、従来の設備を利用したフィルム積層体の製造においては、最終的に得られるフィルム積層体への異物の混入を抑制することが困難であるという問題を有する。
【0007】
本発明は、このような問題を解決することを課題としており、フィルム積層体への異物混入を抑制することを課題としている。
【0008】
なお、フィルム積層体への異物の混入を抑制することが要望されているのは、検査後の偏光フィルムに再び保護フィルムを貼合せる場合のみならず、検査前の原反ロールを作製すべく偏光フィルムに保護フィルムを貼合せる場合についても同じである。
また、フィルム積層体への異物の混入を抑制することが要望されているのは、光学フィルムが偏光フィルムである場合のみならず他の光学フィルムについても同じである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、光学フィルムに保護フィルムを貼合してフィルム積層体を作製する貼合装置が設置されているエリアを局所的に囲うことで該エリアのクリーン度をクリーンルーム内の他の領域よりも向上させることが容易になることに着目して上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。
そして、本発明者は、前記のエリアの前段にも局所的に囲まれたエリアを設けてこの前段側のエリア(第1のエリア)をクリーンルーム内の他の領域に比べてクリーン度を向上させて当該第1のエリアで光学フィルムなどに対する異物除去を実施し、該第1のエリアの後段側のエリア(第2のエリア)のクリーン度をさらに向上させて当該第2のエリアにおいて前記貼合を実施することで従来のフィルム積層体に比べて異物の混入が抑制されたフィルム積層体が得られることを見出して本発明を完成させるに至ったものである。
【0010】
即ち、上記課題を解決するためのフィルム積層体の製造方法に係る本発明は、帯状の光学フィルム、又は、該光学フィルムの表面に粘着層を介して保護フィルムが積層されてなる帯状のフィルム積層体を長手方向が移動方向となるようにクリーンルーム内において移送し、該クリーンルームには、他の領域よりもクリーン度が高いエリアを2以上配置し、該2以上のエリアの内の第1のエリアと該第1のエリアよりもクリーン度が高い第2のエリアとを前記移動方向に隣接させ且つ前記第1のエリアを前記移動方向上流側に配置し、前記光学フィルム又は前記フィルム積層体が前記第1のエリアを通じて前記第2のエリアに供給されるように前記移送を実施して、前記光学フィルム又は前記フィルム積層体の表面から異物を除去する異物除去工程を前記第1のエリアで実施した後に、前記光学フィルム、又は、前記フィルム積層体から保護フィルムが剥離された後の光学フィルムに保護フィルムを貼合する貼合工程を前記第2のエリアで実施してフィルム積層体を作製することを特徴としている。
【0011】
また、上記課題を解決するためのフィルム積層体の製造設備に係る本発明は、クリーンルームと、帯状の光学フィルム、又は、該光学フィルムの表面に粘着層を介して保護フィルムが積層されてなる帯状のフィルム積層体を長手方向が移動方向となるように前記クリーンルーム内において移送する移送手段と、前記移送手段によって移送されている前記光学フィルム又は前記フィルム積層体の表面に付着している異物を除去する異物除去装置と、前記光学フィルム、又は、前記フィルム積層体から保護フィルムが剥離された後の光学フィルムに保護フィルムを貼合する貼合装置とが備えられ、前記クリーンルームには、他の領域よりもクリーン度が高いエリアが2以上配置され、該2以上のエリアの内の第1のエリアと該第1のエリアよりもクリーン度が高い第2のエリアとが前記移動方向に隣接され且つ前記第1のエリアが前記移動方向上流側に配置されており、前記移送手段が、前記光学フィルム又は前記フィルム積層体を前記第1のエリアを通じて前記第2のエリアに移送すべく備えられ、前記異物除去装置が前記第1のエリアに配置されているとともに前記貼合装置が前記第2のエリアに配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フィルム積層体への異物の混入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の製造方法に利用する初期のフィルム積層体の構成を示した概略斜視図。
図2】本発明の製造方法を実施するための設備の一態様を示した概略図。
図3】本発明の製造方法の他の実施形態を示した概略図。
図4】本発明の製造方法の他の実施形態を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
なお、ここでは、帯状の偏光フィルムの両面に粘着層を介して保護フィルムが積層されたフィルム積層体から保護フィルムが除去されて前記偏光フィルムが表面露出され、該偏光フィルムに対して検査装置で光学的な検査が行われた後に前記偏光フィルムに再び保護フィルムが積層されて初期のフィルム積層体と同様のフィルム積層体が形成される場合を例にしてフィルム積層体の製造方法を説明する。
【0015】
まず、本発明の製造方法で作製されるフィルム積層体の構成を図1を参照しつつ説明する。
図1は、初期のフィルム積層体(以下、「初期フィルム積層体」ともいう)の積層構造を示したものである。
なお、以下においては、この初期のフィルム積層体を「初期フィルム積層体」と称し、前記検査後に改めて作製されるフィルム積層体を「最終フィルム積層体」と称してそれぞれを区別することとする。
【0016】
図1に示されているように、初期フィルム積層体f0は、長尺な帯状の偏光フィルムfxと、該偏光フィルムfxの両面を保護するための2枚の保護フィルムfy,fzとを有する。
該フィルム積層体f0における2枚の前記保護フィルムfy,fzは、偏光フィルムfxと同形状を有し、それぞれ粘着層a1,a2を介して偏光フィルムfxに接着されている。
従って、本実施形態における初期フィルム積層体f0は、平面形状が偏光フィルムfxと同じく長尺な帯状で、厚みが偏光フィルムfxよりも厚く、図1の上から、保護フィルムfy、粘着層a1、偏光フィルムfx、粘着層a2、及び、保護フィルムfzの順となる層構成を有している。
【0017】
なお、本実施形態においては、2枚の前記保護フィルムfy,fzは、両方とも検査装置での検査前に偏光フィルムfxから剥離される。
より詳しく説明すると、前記保護フィルムfy,fzの内、上側の保護フィルムfyは、偏光フィルムfxとの間の粘着層a1(以下、「第1粘着層a1」ともいう)の表面から検査前に剥離される。
一方で、下側の保護フィルムfzは、偏光フィルムfxとの間の粘着層a2(以下、「第2粘着層a2」ともいう)を伴って粘着層付保護フィルムfbとなって検査前に偏光フィルムf0の表面から剥離される。
なお、以下において、単に「保護フィルム」と称する場合は、特段の断りがない限りにおいて粘着層付保護フィルムfbとなって偏光フィルムfxから剥離される下側の保護フィルムfzを意味するものとし、第1粘着層a1の表面から剥離される上側の保護フィルムfyは、「第1保護フィルムfy」、又は、「セパレータfy」と称して下側の保護フィルムfzと区別することとする。
また、以下においては、より区別が明確になるように、下側の保護フィルムfzを「第2保護フィルムfz」と称することがある。
【0018】
次いで、図2を参照しつつ、フィルム積層体の製造方法の第一の実施形態について説明する。
まず、製造設備について説明する。
図2に示しているように、最終フィルム積層体を製造するための設備は、クリーンルームCRと、該クリーンルーム内に配された各種装置類とを備えている。
本実施形態の製造設備は、前記クリーンルーム内に、前記初期フィルム積層体f0が巻回されてなる原反ロールが装着された送出機1と、前記最終フィルム積層体f0’を巻取って製品ロールを形成するために巻取機6とがフィルム積層体の製造ラインの両端に備えられており、前記初期フィルム積層体f0を長手方向が移動方向となるように前記クリーンルーム内において移送する移送手段を前記送出機1と前記巻取機6とによって構成している。
【0019】
前記製造設備は、前記送出機1と前記巻取機6との間に、クリーンルーム内の他の領域よりもクリーン度の高い第1のエリアA1と該第1のエリアよりもクリーン度がさらに高い第2のエリアA2とを有し、この第1のエリアA1と第2のエリアA2とを初期フィルム積層体f0の移動方向に隣接させ且つ前記第1のエリアA1を前記移動方向上流側に配置している。
即ち、前記製造設備は、第1のエリアA1よりも上流側の前記送出機1の配置された領域から、第1のエリアA1、第2のエリアA2へと段階的にクリーン度を向上させている。
本実施形態における前記移送手段は、フィルム積層体を長手方向が移動方向となるように移送すべく構成されており、該フィルム積層体を第1のエリアA1、第2のエリアA2の順に通過させるべく構成されている。
【0020】
前記第1のエリアA1は、初期フィルム積層体f0の表面に付着している異物を除去するためのエリアであり、前記第2のエリアA2は、初期フィルム積層体f0から保護フィルムを剥離した後の偏光フィルム(粘着層付偏光フィルムfa)に対して保護フィルムを貼合するためのエリアである。
そして、本実施形態における前記製造設備は、前記送出機1から繰り出された初期フィルム積層体f0が前記セパレータ側を上面側に向けた形で移送され、該初期フィルム積層体f0が第1のエリアA1を通じて第2のエリアA2に供給され、該第2のエリアA2で得られた最終フィルム積層体f0’が第2のエリアA2よりも下流側に設けられた前記巻取機6によって巻き取られるべく構成されている。
【0021】
なお、前記第1のエリアA1や前記第2のエリアA2は、小型のクリーンルームを前記クリーンルームCRの内部に隣接配置することで形成させることができ、このような小型クリーンルームをクリーンルーム内に設置する方法に代えて前記クリーンルームCRを床面から天井面まで間仕切ることによって形成させることもできる。
また、小型のクリーンルームによって第1のエリアA1や第2のエリアA2を形成させる場合には、該クリーンルームは、所謂クリーンブースなどと呼ばれる簡易的なものであっても良い。
【0022】
本実施形態の製造設備においては、前記第1のエリアA1には、前記移送手段によって移送されている初期フィルム積層体f0の表面に付着している異物を除去する異物除去装置2が配置されている。
また、本実施形態の製造設備は、フィルム積層体の移動方向上流側から、順に、剥離装置3、検査装置4、及び、貼合装置5を前記第2のエリアA2に備えている。
【0023】
前記異物除去装置2は、初期フィルム積層体f0の表面から異物を除去する異物除去工程を前記第1のエリアA1において実施させるためのもので、本実施形態におけるフィルム積層体のような帯状シートの表面に付着している異物を除去可能なものであればどのようなものでも採用可能であるが、例えば、異物を風とともに吸引除去するようなタイプのものに比べて直接的に帯状シートの表面に当接させて異物を除去するタイプのものの方が確実に異物を除去する上において好ましい。
従って、本実施形態においては、一対の粘着ロール21を備えた異物除去装置2を前記第1のエリアA1に配置している。
【0024】
一対の前記粘着ロール21は、回転軸周りに回転可能で、回転軸を初期フィルム積層体f0の移送方向と略直交する水平方向とし、且つ上下二段となって異物除去装置2に備えられている。
該一対の前記粘着ロール21は、初期フィルム積層体f0の幅以上の長さを有し、該初期フィルム積層体f0を軽くニップする形で初期フィルム積層体f0の上面(セパレータ)と、下面(保護フィルム)との両方にそれぞれの外周面を当接させている。
そして、前記粘着ロール21は、初期フィルム積層体f0の全幅に亘って当接されるように配されており、初期フィルム積層体f0の移動に伴って供回りするように配されている。
即ち、初期フィルム積層体表面の付着異物は、回転する前記粘着ロール21の外周面に転写される形で初期フィルム積層体f0の表面から除去されることになる。
【0025】
該異物除去装置2を通過した初期フィルム積層体f0が異物除去装置2に続いて供給される前記剥離装置3は、初期フィルム積層体f0の一面側(下面側)から粘着層付保護フィルムfbを剥離除去するとともに他面側(上面側)から前記セパレータfyを剥離除去する剥離工程を前記第2のエリアA2において実施させるためのものである。
また、前記剥離装置3の下流側に設けられた前記検査装置4は、保護フィルムが剥離された後の粘着層付偏光フィルムfaの光学特性を検査する検査工程を前記第2のエリアA2において実施するためのもので、偏光フィルムの欠陥箇所を特定するためものである。
【0026】
そして、剥離装置3や検査装置4とともに第2のエリアA2に備えられている貼合装置5は、前記検査装置4を通過した後の粘着層付偏光フィルムfaの上面側に新たなるセパレータfy’を第1粘着層a1を介して積層するとともに前記粘着層付偏光フィルムfaの下面側に新たなる粘着層付保護フィルムfb’を積層する貼合工程を実施するためのものであり、粘着層付偏光フィルムfaの両面に保護フィルムを設けて初期フィルム積層体f0と同様の構成を有する最終フィルム積層体f0’を形成させるためのものである。
【0027】
なお、本実施形態においては、保護フィルムを初期フィルム積層体f0の両面から剥離除去して検査装置4による偏光フィルムの検査精度を向上させるべく検査装置4の上流側に前記剥離装置3を設けているが、前記剥離装置3による保護フィルムの剥離は、フィルム積層体f0の両面に対して実施する必要は無く片面側だけでもよい。
また、要すれば、剥離装置3を第2のエリアA2に設けずに、保護フィルムを両面に設けたままの状態で検査装置4による検査を実施させるようにしてもよい。
【0028】
さらに、本実施形態においては、貼合装置5による貼合工程において新たなセパレータfy’や粘着層付保護フィルムfb’を使用する場合を例示しているが、例えば、図3に示すように、剥離装置3で剥離したセパレータfyを検査装置4を迂回して貼合装置5に供給し、該貼合装置5で再び元の面(上面)に貼合するようにしてもよい。
また、粘着層付保護フィルムfbの側を検査装置4を迂回して貼合装置5に供給し、該貼合装置5で再び元の面(下面)に貼合するようにしてもよい。
さらには、セパレータfyと粘着層付保護フィルムfbとの両方を検査装置4を迂回して貼合装置5に供給し、該貼合装置5で再び元の面に貼合するようにしてもよい。
【0029】
これらの製造設備を用いたフィルム積層体の製造方法においては、初期フィルム積層体f0の異物除去、該初期フィルム積層体f0を構成している偏光フィルムの検査、及び、検査後の偏光フィルムへの保護フィルムの貼合とを並行して最終フィルム積層体f0’を連続的に製造することができる。
【0030】
そして、このフィルム積層体の製造方法では、偏光フィルムが露出状態にされる第2のエリアA2をクリーン度が高度な状態とすることができる。
従って、高度なクリーン度を維持させる空間を比較的狭小なものとしつつも最終フィルム積層体f0’に異物が混入することを抑制させ得る。
しかも、本実施形態においては、第2のエリアA2の直前に当該第2のエリアA2に次いでクリーン度の高い第1のエリアA1が設けられ、該第1のエリアA1で初期フィルム積層体f0に対する異物除去が実施される。
従って、本実施形態においては、直前のエリアとのクリーン度の差が小さくなり、初期フィルム積層体f0に同伴されて第2のエリアA2に異物が持ち込まれることを抑制することができ、クリーン度の高い第1のエリアA1で異物除去が行われることで、異物除去後のフィルム積層体f0に異物が再付着することなく第2のエリアA2をクリーン度が高い状態に維持させ易く且つ最終フィルム積層体f0’に異物が混入することを抑制させ得る。
【0031】
なお、このような段階的なクリーン度をクリーンルームCRに形成させるためには、例えば、前記第1のエリアA1を、クリーンルーム内の他の領域よりも正圧が高い状態にし、第2のエリアA2の正圧を第1のエリアA1よりもさらに高くさせるようにすれば良い。
即ち、フィルム積層体を製造するためのクリーンルームは、例えば、第1のエリアA1及び第2のエリアA2に対してクリーン度が相対的に低いクリーンルーム内の他の領域の正圧を「P0」、クリーン度を「C0」とし、第1のエリアA1の正圧を「P1」、クリーン度を「C1」とし、さらに第2のエリアの正圧を「P2」、クリーン度を「C2」とした場合に、下記の関係となるようにそれぞれの環境を調整すればよい。

(正圧) 0<P0<P1<P2
(クリーン度) 低:C0<C1<C2:高

具体的には、前記クリーンルームは、例えば、第2のエリアのクリーン度(C2)をクラス100以下、第1のエリアのクリーン度(C1)をクラス1000以下、その他の領域のクリーン度(C0)をクラス10000以下とすれば良い。
【0032】
なお、前記のような効果は、初期フィルム積層体f0を形成させる際にも発揮されるものであり、初期フィルム積層体f0を作製するための製造方法についても本発明が意図する範囲のものである。
【0033】
この初期フィルム積層体f0を作製するためのフィルム積層体の製造方法について、以下に図4を参照しつつ第二の実施形態として説明する。
図4に例示の本発明の第二の実施形態は、クリーンルームCRに、他の領域よりも相対的にクリーン度の高い第1のエリアA1と、該第1のエリアA1に比べて相対的にクリーン度の高い第2のエリアA2とを備えている点においては、第一の実施形態と共通する。
また、前記第1のエリアA1に、異物除去装置1を配置し、前記第2のエリアA2に、貼合装置5を配置している点においても第二の実施形態は、第一の実施形態と共通する。
【0034】
一方で、第一の実施形態が、第1のエリアA1で異物除去する対象を偏光フィルムの表面に粘着層を介して保護フィルムが積層されてなる初期フィルム積層体f0としているのに対し、第二の実施形態においては、第1のエリアA1で異物除去する対象が偏光フィルム単体である点において第一の実施形態と相違している。
また、剥離装置3が第2のエリアAに配置されていない点においても第二の実施形態は第一の実施形態と異なっている。
なお、当該第二の実施形態においては、初期フィルム積層体f0の形成前に偏光フィルムfxの光学特性を検査し得るように第2のエリアAに検査装置4を配置している態様を例示しているが、要すれば、第2のエリアAに検査装置4を配置しないようにしてもよい。
【0035】
また、第二の実施形態は、貼合装置5で偏光フィルムfxの下面側に粘着層付保護フィルムfb’を積層する点においては第一の実施形態と共通するものの偏光フィルムfxの上面側には、第一の実施形態とは違って粘着層(第1粘着層a1)が備えられていないことから、セパレータfyに代えて粘着層付セパレータfcを積層させる点において第一の実施形態と異なっている。
即ち、第一の実施形態においては、偏光フィルム上に存在している粘着層を介してセパレータfyを積層していたが、第二の実施形態においては、セパレータ側に存在している粘着層を介して偏光フィルムfxにセパレータfyを積層させている。
【0036】
当該実施形態のフィルム積層体(初期フィルム積層体f0)の製造方法は、長尺な帯状の偏光フィルムfxを長手方向に移送して前記異物除去装置1に供給し、該異物除去装置1を通過した前記偏光フィルムfxを前記貼合装置5に供給し、前記第1のエリアでの前記異物除去装置1による異物除去と前記第2のエリアでの前記貼合装置5による前記偏光フィルムfxへの保護フィルムfy,fzの貼り合わせとを並行してフィルム積層体を連続的に製造するような態様により実施することができる。
【0037】
なお、上記においては、偏光フィルムに粘着層を介して保護フィルムやセパレータを積層したフィルム積層体を例にしてフィルム積層体の製造方法を例示しているが、本発明は、保護フィルムなどとともにフィルム積層体を構成させる光学フィルムを偏光フィルムに限定するものではなく、位相差フィルム、輝度向上フィルム、又は、これらを積層した光学フィルムなどに対して保護フィルムを積層してフィルム積層体を作製する場合なども本発明の意図する範囲のものである。
【0038】
また、上記においては、クリーン度の高いエリアを2箇所形成させる態様を例示しているが、本発明を実施するのにあたっては、例えば、第1のエリアの直前に、他のエリアよりも相対的にクリーン度が高く、第1のエリアよりもクリーン度の低いエリアを設け、第2のエリアに向けて3段階にクリーン度を向上させるようにしても良い。
当然ながら、クリーン度の高いエリアをさらに設けて4段階以上にクリーン度を向上させる場合も本発明の意図する範囲である。
さらに本発明は上記に限らず各種変更をさらに加えることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
2:異物除去装置、21:粘着ロール、5:貼合装置、CR:クリーンルーム、A1:第1のエリア、A2:第2のエリア、fa:粘着層付偏光フィルム、fx:偏光フィルム、fy:保護フィルム(セパレータ)、fz:保護フィルム
図1
図2
図3
図4