特許第6205216号(P6205216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6205216変異検出用プローブ、変異検出方法、薬効判定方法及び変異検出用キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6205216
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】変異検出用プローブ、変異検出方法、薬効判定方法及び変異検出用キット
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170914BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   C12Q1/68 AZNA
【請求項の数】13
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2013-186532(P2013-186532)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2014-76044(P2014-76044A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2016年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-210057(P2012-210057)
(32)【優先日】2012年9月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 かおる
【審査官】 小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/095894(WO,A2)
【文献】 国際公開第2011/130340(WO,A1)
【文献】 特開2002−119291(JP,A)
【文献】 N. Engl. J. Med., 2010, Vol.363, No.18, p.1734-1739
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12Q 1/00− 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記オリゴヌクレオチドからなる群より選択される少なくとも一種の蛍光標識オリゴヌクレオチドである、ALK遺伝子における変異を検出するための変異検出用プローブ:
(P1) 配列番号5に示す塩基配列であり且つ、3’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
(P2) 配列番号6に示す塩基配列であり且つ、3’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
(P3) 配列番号7に示す塩基配列であり且つ、5’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
(P4) 配列番号8に示す塩基配列であり且つ、3’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
(P7) 配列番号9に示す塩基配列であり且つ、5’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
(P8) 配列番号10に示す塩基配列であり且つ、3’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ標的配列にハイブリダイズしたときの蛍光強度が、ハイブリダイズしないときの蛍光強度に比べて、減少するか又は増加する、請求項1記載の変異検出用プローブ。
【請求項3】
前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、標的配列にハイブリダイズしたときの蛍光強度が、ハイブリダイズしないときの蛍光強度に比べて、減少する請求項2に記載の変異検出用プローブ。
【請求項4】
融解曲線分析用のプローブである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の変異検出用プローブ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の変異検出用プローブを用いて、配列番号1に示す塩基配列の133番目の塩基における変異、及び配列番号3に示す塩基配列の244番目の塩基における変異の少なくとも一方の変異を検出することを含むALK遺伝子の変異検出方法。
【請求項6】
配列番号1に示す塩基配列の133番目の塩基における変異、及び配列番号3に示す塩基配列の244番目の塩基における変異の少なくとも一方の変異を、同一の系で検出することを含む請求項5に記載の変異検出方法。
【請求項7】
(I)請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の変異検出用プローブ及び試料中の一本鎖核酸を接触させて、前記蛍光標識オリゴヌクレオチド及び前記一本鎖核酸をハイブリダイズさせてハイブリッドを得ることと、
(II)前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させることにより、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づく蛍光シグナルの変動を測定することと、
(III)前記蛍光シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を測定することと、
(IV)前記Tm値に基づいて、前記試料中の一本鎖核酸における、ALK遺伝子の変異の存在を検出することと、
を含む、請求項5又は請求項6に記載の変異検出方法。
【請求項8】
更に、前記(I)のハイブリッドを得る前又は前記(I)のハイブリッドを得ることと同時に、核酸を増幅することを含む請求項7に記載の変異検出方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の変異検出用プローブを用いて、配列番号1に示す塩基配列の133番目の塩基における変異を検出することを含み、更に、
以下のP5プライマー及びP6プライマーを使用して、核酸を増幅することを含む請求項7に記載の変異検出方法:
(P5) 配列番号14に示す塩基配列を有するプライマー、
(P6) 配列番号15に示す塩基配列を有するプライマー。
【請求項10】
請求項5〜請求項9のいずれか1項に記載の変異検出方法により、ALK遺伝子における変異を検出すること、及び
検出された変異の有無に基づいて薬剤に対する耐性又は薬剤の薬効を判定すること、
を含む薬剤の薬効判定方法。
【請求項11】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の変異検出用プローブを含む、ALK遺伝子における変異を検出する変異検出用試薬キット。
【請求項12】
以下のプライマーの少なくとも一方を更に含む請求項11に記載の変異検出用試薬キット:
前記P1、P2、P3、P7又はP8のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする領域を含む塩基配列を増幅するためのプライマー、及び
前記P4のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする領域を含む塩基配列を増幅するためのプライマー。
【請求項13】
下記のいずれかの蛍光標識オリゴヌクレオチド:
配列番号5に示す塩基配列であり且つ、3’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
配列番号6に示す塩基配列であり且つ、3’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
配列番号7に示す塩基配列であり且つ、5’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
配列番号8に示す塩基配列であり且つ、3’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
配列番号9に示す塩基配列であり且つ、5’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
配列番号10に示す塩基配列であり且つ、3’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変異検出用プローブ、変異検出方法、薬効判定方法及び変異検出用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
肺がんの発症原因のひとつに遺伝子変異が挙げられる。このため、肺がんの発症に関連すると思われている遺伝子の特定が進められている。このような肺がんの発症に関連すると考えられている遺伝子変異としては、EGFR遺伝子変異と、ALK遺伝子変異が挙げられる。
ALK(anaplastic lymphoma kinase:未分化リンパ腫キナーゼ)の遺伝子は、受容体型チロシンキナーゼをコードする遺伝子であり、2番染色体内で逆位を起こすと、EML4遺伝子と融合することが知られている。この融合遺伝子(EML4−ALK)により、恒常的に活性化されたチロシンキナーゼが産生され、肺腺がんを発症すると考えられている。このことから、肺がん治療の分野でのALK阻害剤の使用が試みられている。このようなALK阻害剤としては、クリゾチニブ(crizotinib)が知られている。
しかしながら、クリゾチニブについて、初期には一定の治療的効果が認められるものの、次第に薬剤の効果が期待された以上に上がらなくなることがある。
【0003】
このような阻害活性の発現については、EML4−ALK内に生じた2つの遺伝子変異、即ち、ALK遺伝子のアミノ酸配列のうち1156番目のシステインがチロシンに置換した変異(以下、「ALK(C1156Y)」と称する場合がある)と、ALK遺伝子のアミノ酸配列のうち1196番目のロイシンがメチオニンに置換した変異(以下、「ALK(L1196M)」と称する場合がある)が関与していることが見いだされた(非特許文献1参照)。これらの遺伝子変異は、EML4−ELK内のクリゾチニブ結合ポケット部位に生じ、その結果、結合ポケットの形状を変化させて、クリゾチニブとEML4−ALKとの結合親和性を低下させるという共通した特性を示すことが明らかとなった。このことから、ALK阻害剤を使用するに際して、その効果を予測するための予測因子として、これらのALK遺伝子変異の有無を検出することが重要となってきた。
【0004】
一方、近年、遺伝子変異を検出する検出試験として、融解曲線分析(Tm分析)を利用した検出が行われている。この方法では、変異を含む領域をPCR法で増幅した後、蛍光色素で標識された核酸プローブを用いて融解曲線分析を行い、融解曲線分析の結果に基づいて塩基配列の変異を解析する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−119291号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】New England Journal of Medicine, Vol.363, pp.1734-1739 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1では、それぞれの遺伝子変異を、それぞれの配列に基づいて直接的に検出する、いわゆるダイレクトシークエンス法で検出しているが、DNAの抽出精製およびPCRを行った後、シークエンス反応を行い、シークエンサーで電気泳動を行わなければならないなど手間又はコストを要する。また増幅産物が別の反応を汚染する(コンタミネーション)恐れがある。さらに自動化が困難であり、複数の核酸配列を同時に検査することができない。
特許文献1には、蛍光色素で標識された核酸プローブを用いて標的核酸にハイブリダイゼーションさせ、蛍光色素の発光の減少量を測定する方法が記載されている。しかしながら、蛍光色素で標識された核酸プローブを用いて標的核酸にハイブリダイゼーションさせ、蛍光色素の発光の減少量測定を実施する上で何れの任意配列で実施できるわけではなく、変異毎に適正な配列を見つける必要がある。
【0008】
これらの現状を踏まえ、ALK阻害剤の効果を予測するなどの目的のためにALK(L1196M)変異型及びALK(C1156Y)変異型のALK遺伝子における変異を検出するために効果的な技術開発が待ち望まれていた。
【0009】
本発明は、ALK遺伝子における変異を簡便に検出することを可能にする変異検出用プローブ、これを用いた変異検出方法および薬効判定方法、ならびに変異検出用キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下のとおりである。
[1] 下記オリゴヌクレオチドからなる群より選択される少なくとも一種の蛍光標識オリゴヌクレオチドである、ALK遺伝子における変異を検出するための変異検出用プローブ:
(P1) 配列番号5に示す塩基配列を有し、3’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
(P2) 配列番号6に示す塩基配列を有し、3’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
(P3) 配列番号7に示す塩基配列を有し、5’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
(P4) 配列番号8に示す塩基配列を有し、3’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
(P7) 配列番号9に示す塩基配列を有し、5’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
(P8) 配列番号10に示す塩基配列を有し、3’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド。
[2] 前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、且つ標的配列にハイブリダイズしたときの蛍光強度が、ハイブリダイズしないときの蛍光強度に比べて、減少するか又は増加する、[1]記載の変異検出用プローブ。
[3] 前記蛍光標識オリゴヌクレオチドが、標的配列にハイブリダイズしないときに蛍光を発し、標的配列にハイブリダイズしたときの蛍光強度が、ハイブリダイズしないときの蛍光強度に比べて、減少する[2]に記載の変異検出用プローブ。
[4] 融解曲線分析用のプローブである[1]〜[3]のいずれか1に記載の変異検出用プローブ。
[5] [1]〜[4]のいずれか1に記載の変異検出用プローブを用いて、配列番号1に示す塩基配列の133番目の塩基における変異、及び配列番号3に示す塩基配列の244番目の塩基における変異の少なくとも一方の変異を検出することを含むALK遺伝子の変異検出方法。
[6] 配列番号1に示す塩基配列の133番目の塩基における変異、及び配列番号3に示す塩基配列の244番目の塩基における変異の少なくとも一方の変異を、同一の系で検出することを含む[5]に記載の変異検出方法。
[7] (I)[1]〜[4]のいずれか1に記載の変異検出用プローブ及び試料中の一本鎖核酸を接触させて、前記蛍光標識オリゴヌクレオチド及び前記一本鎖核酸をハイブリダイズさせてハイブリッドを得ることと、
(II)前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させることにより、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づく蛍光シグナルの変動を測定することと、
(III)前記蛍光シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を測定することと、
(IV)前記Tm値に基づいて、前記試料中の一本鎖核酸における、ALK遺伝子の変異の存在を検出することと、
を含む、[5]又は[6]に記載の変異検出方法。
[8] 更に、前記(I)のハイブリッドを得る前又は前記(I)のハイブリッドを得ることと同時に、核酸を増幅することを含む[7]に記載の変異検出方法。
[9] [1]〜[4]のいずれか1に記載の変異検出用プローブを用いて、配列番号1に示す塩基配列の133番目の塩基における変異を検出することを含み、さらに、
以下のP5プライマー及びP6プライマーを使用して、核酸を増幅することを含む[7]に記載の変異検出方法:
(P5) 配列番号14に示す塩基配列を有するプライマー、
(P6) 配列番号15に示す塩基配列を有するプライマー。
[10] [5]〜[9]のいずれか1に記載の変異検出方法により、ALK遺伝子における変異を検出すること、及び、検出された変異の有無に基づいて薬剤に対する耐性又は薬剤の薬効を判定すること、を含む薬剤の薬効判定方法。
[11] [1]〜[4]のいずれか1に記載の変異検出用プロープを含む、ALK遺伝子における変異を検出する変異検出用試薬キット。
[12] 以下のプライマーの少なくとも一方を更に含む[11]に記載の変異検出用キット:
前記P1、P2、P3、P7又はP8のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする領域を含む塩基配列を増幅するためのプライマー、及び
前記P4のオリゴヌクレオチドがハイブリダイズする領域を含む塩基配列を増幅するためのプライマー。
[13] 下記のいずれかの蛍光標識オリゴヌクレオチド:
配列番号5に示す塩基配列を有し、3’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
配列番号6に示す塩基配列を有し、3’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
配列番号7に示す塩基配列を有し、5’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
配列番号8に示す塩基配列を有し、3’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
配列番号9に示す塩基配列を有し、5’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド、
配列番号10に示す塩基配列を有し、3’末端のシトシンが蛍光色素で標識されているオリゴヌクレオチド。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ALK遺伝子における変異を簡便に検出することを可能にするALK遺伝子の変異検出用プローブ、これを用いた変異検出方法および薬効判定方法、ならびに変異検出用キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(A)は、核酸混合物の融解曲線の一例であり、(B)は微分融解曲線の一例である。
図2】(A)〜(B)は本発明の実施例1にかかる試料ID:Aを用いたときのTm解析の結果を示すグラフである。
図3】(A)〜(B)は本発明の実施例1にかかる試料ID:Bを用いたときのTm解析の結果を示すグラフである。
図4】(A)〜(B)は本発明の実施例1にかかる試料ID:Cを用いたときのTm解析の結果を示すグラフである。
図5】(A)〜(B)は本発明の実施例1にかかる全血を試料としたときのTm解析の結果を示すグラフである。
図6】(A)〜(D)は本発明の実施例2にかかるTm解析の結果を示すグラフである。
図7】本発明の比較例1にかかるTm解析の結果を示すグラフである。
図8】本発明の比較例2にかかるTm解析の結果を示すグラフである。
図9】本発明の比較例3にかかるTm解析の結果を示すグラフである。
図10】本発明の実施例3にかかるTm解析の結果を示すグラフである。
図11】本発明の比較例4にかかるTm解析の結果を示すグラフである。
図12】本発明の実施例4にかかるTm解析の結果を示すグラフである。
図13】本発明の実施例5にかかるTm解析の結果を示すグラフである。
図14】本発明の比較例5にかかるTm解析の結果を示すグラフである。
図15】本発明の比較例6にかかるTm解析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかるALK遺伝子の変異検出用プローブ(以下、単に「変異検出用プローブ」ということがある)は、前記P1、P2、P3、P4、P7及びP8の各蛍光標識オリゴヌクレオチドからなる群より選択される少なくとも1種の蛍光標識オリゴヌクレオチドを変異検出用プローブとするものである。
本発明のALK遺伝子の変異検出方法は、前記変異検出用プローブを用いて、配列番号1に示す塩基配列の133番目の塩基における変異、及び配列番号3に示す塩基配列の244番目の塩基における変異の少なくとも一方を検出することを含む変異検出方法である。
本発明における薬効判定方法は、前記ALK遺伝子の変異検出方法によりALK遺伝子における変異を検出すること、及び、検出された変異の有無に基づいて薬剤に対する耐性又は薬剤の薬効を判定すること、を含む薬剤の薬効判定方法である。
また本発明の変異検出用試薬キットは、前記変異検出用プローブを含む、ALK遺伝子における変異を検出する変異検出用試薬キットである。
【0014】
即ち、本発明では、変異検出用プローブとして、変異を示す塩基に対応する塩基を含み、且つ特定の位置に蛍光標識されたシトシンを有する蛍光標識オリゴヌクレオチドを設計することにより、融解曲線分析などの自動検出可能な検出方法に適用可能で且つ目的とするALK遺伝子変異を簡便に検出することができる。また、この変異検出用プローブを用いることにより、ALK遺伝子変異に基づく薬効判定を簡便に行うことができる。
【0015】
本発明における「ALK遺伝子」は、既に公知であり、その塩基配列は、NCBIのReference Sequence: NC_000002.11のうち29415640番目の塩基〜30144477番目の塩基の配列に相当する。なお、本明細書においては、特に断らない限り「ALK遺伝子」は、配列番号2又は配列番号4に示す塩基配列を意味するものとする。
【0016】
配列番号1の塩基配列は、NCBIのReference Sequence:NT_022184.15のうち8265650番目の塩基〜8265351番目の塩基を第1〜300番目の塩基とし、8265518番目の塩基に対応する133番目の塩基を「A(アデニン)」とする変異型の塩基配列である。
配列番号2の塩基配列は、NCBIのReference Sequence:NT_022184.15のうち8265650番目の塩基〜8265351番目の塩基を第1〜300番目の塩基とし、8265518番目の塩基に対応する133番目の塩基を「C(シトシン)」とする野生型の塩基配列である。
【0017】
また配列番号3の塩基配列は、NCBIのReference Sequence: NT_022184.15のうち8267388番目の塩基〜8267089番目の塩基を第1〜300番目の塩基とし、8267145番目の塩基に対応する244番目の塩基を「A(アデニン)」とする変異型の塩基配列である。
また配列番号4の塩基配列は、NCBIのReference Sequence: NT_022184.15のうち8267388番目の塩基〜8267089番目の塩基を第1〜300番目の塩基とし、8267145番目の塩基に対応する244番目の塩基を「G(グアニン)」とする野生型の塩基配列である。
【0018】
本発明において、検出対象となる試料中の試料核酸、変異検出用プローブ又はプライマーの個々の配列に関して、これら互いの相補的な関係に基づいて記述された事項は、特に断らない限り、それぞれの配列と、各配列に対して相補的な配列とについても適用される。各配列に対して相補的な当該配列について本発明の事項を適用する際には、当該相補的な配列が認識する配列は、当業者にとっての技術常識の範囲内で、対応する本明細書に記載された配列に相補的な配列に、明細書全体を読み替えるものとする。
【0019】
本発明において、「Tm値」とは、二本鎖核酸が解離する温度(解離温度:Tm)であって、一般に、260nmにおける吸光度が、吸光度全上昇分の50%に達した時の温度と定義される。即ち、二本鎖核酸、例えば、二本鎖DNAを含む溶液を加熱していくと、260nmにおける吸光度が上昇する。これは、二本鎖DNAにおける両鎖間の水素結合が加熱によってほどけ、一本鎖DNAに解離(DNAの融解)することが原因である。そして、全ての二本鎖DNAが解離して一本鎖DNAになると、その吸光度は加熱開始時の吸光度(二本鎖DNAのみの吸光度)の約1.5倍程度を示し、これによって融解が完了したと判断できる。Tm値は、この現象に基づき設定される。本発明におけるTm値は、特に断らない限り、吸光度が、吸光度全上昇分の50%に達した時の温度をいう。
【0020】
本明細書においてTm値を算出する場合、得られたTm値は、特に断らない限り、ソフトウェア「Meltcalc 99 free」(http://www.meltcalc.com/)を用い、設定条件:Oligoconc[μM]0.2、Na eq.[mM]50の条件で算出した値とする。このソフトウェアは、当業界で公知のものであり、Clinical Chemistry Vol.54, No.6, pp.990−999 (2008)等でもプローブの設計に使用されている。
【0021】
本発明において、オリゴヌクレオチドの配列に関して「3’末端から数えて1〜3番目」という場合は、オリゴヌクレオチド鎖の3’末端にある塩基を1番目として数える。同様に「5’末端から数えて1〜3番目」という場合は、オリゴヌクレオチド鎖の5’末端にある塩基を1番目として数える。
【0022】
本発明において、前記蛍光標識オリゴヌクレオチドにおける「オリゴヌクレオチド」としては、オリゴヌクレオチドの他、修飾されたオリゴヌクレオチドも含まれる。
前記オリゴヌクレオチドの構成単位としては、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、人工核酸等が挙げられる。前記人工核酸としては、DNA、RNA、RNAアナログであるLNA(Locked Nucleic Acid);ペプチド核酸であるPNA(Peptide Nucleic Acid);架橋化核酸であるBNA(Bridged Nucleic Acid)等が挙げられる。
前記オリゴヌクレオチドは、前記構成単位のうち、一種類の構成単位から構成されてもよいし、複数種類の構成単位から構成されてもよい。
【0023】
本発明においてハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning 3rd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 2001)に記載の方法等に従って行うことができる。この文献は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0024】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本発明において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本発明において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0025】
本明細書において変異とは、野生型の塩基配列の一部の塩基が置換、欠失、重複又は挿入されることによって生じる新たな塩基配列を意味する。
以下、本発明について説明する。
【0026】
<ALK遺伝子変異検出用プローブ>
本発明のALK遺伝子の変異検出用プローブ(以下、単に「変異検出用プローブ」ともいう)は、前記P1、P2、P3、P4、P7及びP8からなる群より選択された少なくとも1種の蛍光標識オリゴヌクレオチドであるALK遺伝子の変異を検出するための変異検出用プローブである。
ALK遺伝子の野生型では、配列番号1に示す配列のうち133番目に対応する塩基は、C(シトシン)であるが、変異型においてはA(アデニン)に変異しており(以下、「ALK(L1196M)変異型」ともいう)、当該塩基は、ALK遺伝子の8265650番目の塩基〜8265351番目の塩基のうち、8265518番目の塩基に該当する。
ALK遺伝子の野生型では、配列番号3に示す配列のうち244番目に対応する塩基は、G(グアニン)であるが、変異型においてはA(アデニン)に変異しており(以下、「ALK(C1156Y)変異型」ともいう)、当該塩基は、ALK遺伝子の8267388番目の塩基〜8267089番目の塩基のうち、8267145番目の塩基に該当する。
前記P1、P2、P3、P7及びP8の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、ALK(L1196M)変異を検出することができるプローブであり、前記P4の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、ALK(C1156Y)変異を検出することができるプローブである。これらの蛍光標識オリゴヌクレオチドである変異検出用プローブを用いることにより、ALK遺伝子における変異を検出することができる。
【0027】
前記P1、P2、P3、P4,P7及びP8の蛍光標識オリゴヌクレオチドにおける塩基配列を表1に示す。
P1のオリゴヌクレオチドは、配列番号1に示す塩基配列において、123番目〜139番目の塩基からなる塩基長17の塩基配列に相補的な配列であって、123番目の塩基に対応する塩基がシトシンである塩基配列を有する。P1の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、P1のオリゴヌクレオチドの3’末端となる配列番号1に示す塩基配列の123番目の塩基に対応する塩基であるシトシンが蛍光色素で標識されている。
P2のオリゴヌクレオチドは、配列番号1に示す塩基配列において、123番目〜141番目の塩基からなる塩基長19の塩基配列であって、141番目の塩基に対応する塩基がシトシンである塩基配列を有する。P2の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、P2のオリゴヌクレオチドの3’末端となる配列番号1に示す塩基配列の141番目の塩基に対応する塩基であるシトシンが蛍光色素で標識されている。
P3のオリゴヌクレオチドは、配列番号2に示す塩基配列において、123番目〜138番目の塩基からなる塩基長16の塩基配列に相補的な配列であって、138番目の塩基に対応する塩基がシトシンである塩基配列を有する。P3の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、P3のオリゴヌクレオチドの5’末端となる配列番号2に示す塩基配列の138番目の塩基に対応する塩基であるシトシンが蛍光色素で標識されている。
P4のオリゴヌクレオチドは、配列番号3に示す塩基配列において、235番目〜252番目の塩基からなる塩基長18の塩基配列であって、252番目の塩基に対応する塩基がシトシンである塩基配列を有する。P4の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、P4のオリゴヌクレオチドの3’末端となる配列番号3に示す塩基配列の252番目の塩基に対応する塩基であるシトシンが蛍光色素で標識されている。
【0028】
P7のオリゴヌクレオチドは、配列番号1に示す塩基配列において、129番目〜145番目の塩基からなる塩基長17の塩基配列に相補的な配列であって、129番目の塩基に対応する塩基がシトシンである塩基配列を有する。P7の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、P7のオリゴヌクレオチドの5’末端となる配列番号1に示す塩基配列の129番目の塩基に対応する塩基であるシトシンが蛍光色素で標識されている。
P8のオリゴヌクレオチドは、配列番号1に示す塩基配列において、129番目〜146番目の塩基からなる塩基長18の塩基配列であって、146番目の塩基に対応する塩基がシトシンである塩基配列を有する。P8の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、P8のオリゴヌクレオチドの3’末端となる配列番号1に示す塩基配列の146番目の塩基に対応する塩基であるシトシンが蛍光色素で標識されている。
【0029】
なお、表1において、P1、P2、P3、P7及びP8については、配列番号1の133番目の塩基に対応する塩基を大文字で表記した。また、配列番号1の133番目に対応する塩基がC(野生型)又はA(変異型)の場合である試料核酸と、それぞれの各蛍光標識オリゴヌクレオチドとのハイブリッドのTm値を算出し、併せて示した。
また、表1において、P4については、配列番号3の244番目の塩基に対応する塩基を大文字で表記した。また、配列番号3の244番目に対応する塩基がG(野生型)又はA(変異型)の場合である試料核酸と、それぞれの各蛍光標識オリゴヌクレオチドとのハイブリッドのTm値を併せて示した。
【0030】
【表1】
【0031】
なお、本発明に係る変異検出用プローブにおける前記P1、P2、P3、P4,P7及びP8の蛍光標識オリゴヌクレオチドの各塩基配列から、1個〜3個の塩基が伸長、短縮、挿入、欠失、又は置換された塩基配列を有する蛍光標識オリゴヌクレオチドであっても、本発明に係る変異検出用プローブと同等に、ALK(L1196M)変異又はALK(C1156Y)変異を検出可能なプローブが存在しうる。このような本発明に係る変異検出用プローブと1個〜3個の塩基が伸長、短縮、挿入、欠失、又は置換された塩基配列を有する蛍光標識オリゴヌクレオチドであるプローブのうち変異を検出可能な変異検出用プローブも本発明に包含される。
【0032】
本発明に係る変異検出用プローブにおけるP1、P2、P3、P7及びP8の蛍光標識オリゴヌクレオチドの各塩基配列から、1個〜3個の塩基が伸長、短縮、挿入、欠失、又は置換された塩基配列を有する蛍光標識オリゴヌクレオチドであって、配列番号1における第133番目の変異を認識するプローブのうち変異を検出可能な変異検出用プローブも、本発明に包含される。
なお、「配列番号1における第133番目の変異を認識する」等の表現は、「配列番号1における第133番目の変異を示す塩基に結合する」の意味である。
【0033】
本発明に係る変異検出用プローブにおけるP4の蛍光標識オリゴヌクレオチドの塩基配列から、1〜3個の塩基が伸長、短縮、挿入、欠失、又は置換された塩基配列を有する蛍光標識オリゴヌクレオチドであって、配列番号3における第244番目の変異を認識するプローブのうち変異を検出可能な変異検出用プローブも、本発明に包含される。
なお、「配列番号3における第244番目の変異を認識する」等の表現は、「配列番号3における第244番目の変異を示す塩基に結合する」の意味である。
【0034】
本発明の前記蛍光標識オリゴヌクレオチドは、標的配列にハイブリダイズしていないときの蛍光強度に比べて、標的配列にハイブリダイズしているときの蛍光強度が減少(消光)するかまたは増加する蛍光標識オリゴヌクレオチドであることができる。その中でも標的配列にハイブリダイズしていないときの蛍光強度に比べて、標的配列にハイブリダイズしているときの蛍光強度が減少する蛍光標識オリゴヌクレオチドであることができる。
【0035】
このような蛍光消光現象(Quenching phenomenon)を利用したプローブは、一般的に、グアニン消光プローブと呼ばれており、いわゆるQProbe(登録商標)として知られている。中でも、オリゴヌクレオチドを、3'末端もしくは5'末端がシトシン(C)となるように設計し、その末端のCが、グアニン(G)に近づくと発光が弱くなるように蛍光色素で標識化されたオリゴヌクレオチドであることが挙げられる。
このようなプローブを使用すれば、シグナルの変動により、ハイブリダイズと解離とを容易に確認することができる。
【0036】
なお、Q Probeを用いた検出方法以外にも、公知の検出様式を適用してもよい。このような検出様式としては、Taq−man Probe法、Hybridization Probe法、Moleculer Beacon法又はMGB Probe法などを挙げることができる。
【0037】
前記蛍光色素としては、特に制限されないが、例えば、フルオレセイン、リン光体、ローダミン、ポリメチン色素誘導体等があげられる。これらの蛍光色素の市販品としては、例えば、Pacific Blue、BODIPY FL、FluorePrime、Fluoredite、FAM、Cy3およびCy5、TAMRA等が挙げられる。
蛍光標識オリゴヌクレオチドの検出条件は特に制限されず、使用する蛍光色素により適宜決定できる。例えば、Pacific Blueは、検出波長445nm〜480nm、TAMRAは、検出波長585nm〜700nm、BODIPY FLは、検出波長520nm〜555nmで検出できる。
このような蛍光色素を有するプローブを使用すれば、それぞれの蛍光シグナルの変動により、ハイブリダイズと解離とを容易に確認することができる。蛍光色素のオリゴヌクレオチドへの結合は、通常の方法、例えば特開2002−119291号公報等に記載の方法に従って行うことができる。
【0038】
また前記蛍光標識オリゴヌクレオチドは、例えば、3'末端にリン酸基が付加されてもよい。蛍光標識オリゴヌクレオチドの3'末端にリン酸基を付加させておくことにより、プローブ自体が遺伝子増幅反応によって伸長することを十分に抑制できる。後述するように、変異の有無を検出するDNA(標的DNA)は、PCR等の遺伝子増幅法によって調製することができる。その際、3'末端にリン酸基が付加された蛍光標識オリゴヌクレオチドを用いることで、これを増幅反応の反応液中に共存させることができる。
また、3'末端に前述のような標識化物質(蛍光色素)を付加することによっても、同様の効果が得られる。
【0039】
前記P1、P2、P3、P7及びP8の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、ALK遺伝子における変異、特にALK(L1196M)変異型を検出するALK遺伝子変異検出用プローブとして使用することができ、また、ALK遺伝子変異検出用プローブは、融解曲線分析用のプローブとして使用することができる。
前記P4の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、ALK遺伝子における変異、特にALK(C1156Y)変異型を検出するALK遺伝子変異検出用プローブとして使用することができ、また、ALK遺伝子変異検出用プローブは、融解曲線分析用のプローブとして使用することができる。
【0040】
なお、前記P1、P2、P3、P7及びP8の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、配列番号1に示す塩基配列において、前記P1の蛍光標識オリゴヌクレオチドの場合には123番目の塩基に対応する塩基、前記P2の蛍光標識オリゴヌクレオチドの場合には141番目の塩基に対応する塩基、前記P3の蛍光標識オリゴヌクレオチドの場合には138番目の塩基に対応する塩基が、前記P7の蛍光標識オリゴヌクレオチドの場合には145番目の塩基に対応する塩基が、前記P8の蛍光標識オリゴヌクレオチドの場合には146番目の塩基に対応する塩基が、それぞれシトシンであり、当該シトシンが蛍光色素で標識された塩基を用いる以外は、オリゴヌクレオチドの合成方法として知られている公知の方法、例えば特開2002−119291号公報等に記載の方法に従って作製することができる。
【0041】
また、前記P4の蛍光標識オリゴヌクレオチドは、配列番号3に示す塩基配列において252番目の塩基に対応する塩基がシトシンであり、当該シトシンが蛍光色素で標識された塩基を用いる以外は、オリゴヌクレオチドの合成方法として知られている公知の方法、例えば特開2002−119291号公報等に記載の方法に従って作製することができる。
【0042】
<プライマー>
後述するALK遺伝子変異検出方法では、検出対象となるALK遺伝子変異を含む配列をPCR法により増幅する場合には、プライマーが用いられる。
本発明において使用しうるプライマーは、目的とする検出対象となるALK遺伝子の変異が、ALK(L1196M)変異型の場合には配列番号1で示される塩基配列のうち133番目の塩基に対応する塩基を含む核酸、ALK(C1156Y)変異型の場合には配列番号3で示される塩基配列のうち244番目の塩基に対応する塩基を含む核酸を、それぞれ増幅可能であれば特に制限されない。
【0043】
PCR法に適用するプライマーは、本発明の変異検出用プローブがハイブリダイズする領域を含む塩基配列を増幅できるものであれば特に制限されず、例えば、配列番号1〜配列番号4で示される塩基配列から、当業者であれば適宜設計することができる。プライマーの長さ及び、プライマーがハイブリダイズする一本鎖核酸に対するTm値は、12mer〜40mer及び40℃〜70℃、又は16mer〜30mer及び55℃〜60℃にすることができる。
また、プライマーセットの各プライマーの長さは同一でなくてもよく、両プライマーのTm値はほぼ同一(又は、Tm値の両プライマーでの差が5℃以内)であってもよい。
【0044】
本発明にかかるALK遺伝子変異検出方法がALK(L1196M)変異型を検出対象とするALK遺伝子変異検出方法である場合には、前記P5及びP6をプライマーとして使用して、試料核酸を増幅することができる。
【0045】
前記P5プライマーは、ALK(L1196M)変異型の塩基配列を有する核酸を鋳型として効率よく核酸を増幅することができる。前記P6プライマーは、ALK遺伝子の野生型の塩基配列を有する核酸を鋳型として効率よく核酸を増幅することができる。このため、P5及びP6プライマーを、前記P1、P2、P3、P7及びP8の蛍光標識オリゴヌクレオチドと共に使用すると、ALK(L1196M)変異型を、感度よく検出することができる。特に、P2の蛍光標識オリゴヌクレオチドと共に使用することが、より高い感度でALK(L1196M)変異型を検出することができる。
なお、本発明において、核酸増幅反応において、プライマーがハイブリダイズ可能な塩基配列を有する核酸を鋳型核酸と称することがある。
【0046】
なお、本発明に係る変異検出用プライマーにおけるP5及びP6のプライマーの各塩基配列から、1〜3個の塩基が伸長、短縮、挿入、欠失、又は置換された塩基配列を有するプライマーであっても、本発明に係る変異検出用プライマーと同等に、本発明に係る変異検出用プローブと組み合わせて使用してALK(L1196M)変異又はALK(C1156Y)変異を検出可能なプライマーが存在し得る。このような本発明に係る変異検出用プライマーと1個〜3個の塩基が伸長、短縮、挿入、欠失、又は置換された塩基配列を有するプライマーのうち本発明に係る変異検出用プローブと組み合わせて変異を検出可能なプライマーも本発明に係る変異検出用プライマーに包含される。
【0047】
前記P5プライマーの塩基配列(配列番号14)及びP6プライマーの塩基配列(配列番号15)は、それぞれ配列番号1又は配列番号2に示される塩基配列の133番目の塩基に対応する塩基を含む。これにより、例えば、目的とする塩基配列を有する核酸の増幅効率を高めることができる。
【0048】
前記P6プライマーは、配列番号2に示される塩基配列と異なる塩基(ミスマッチ塩基)を有する。ミスマッチ塩基とは、G(グアニン)−C(シトシン)とは異なる塩基の組み合わせ又はA(アデニン)−T(チミン)とは異なる塩基の組み合わせを意味し、具体的には、G−G、G−A、G−T、A−A、A−C、C−T、C−C、T−Tの塩基の組み合わせを意味する。
【0049】
以下に本発明の変異検出方法における本発明の変異検出用プローブがハイブリダイズする領域を含む塩基配列の増幅に使用できるプライマーの例を示す。なお、これらは例示であって、本発明を制限するものではない。
以下のALK L1196M−mt−F10は、5’末端側に7塩基の付加配列を有し、3’末端に配列番号1における133番目の塩基に相当する「A」を有するP5プライマーである。ALK L1196M−WT−F6は、5’末端側に6塩基の付加配列を有し、3’末端に配列番号2における133番目の塩基に相当する「C」を有し、3’末端側から5塩基目の位置に配列番号2の128番目の塩基に対応する塩基とは異なるミスマッチ塩基(「a」)を有するP6プライマーである。
【0050】
【表2】
【0051】
変異の検出方法は、前記蛍光標識ヌクレオチドをプローブとして利用する方法であれば、特に制限されない。前記蛍光標識ヌクレオチドをプローブとして用いる変異検出方法の一例として、Tm解析を利用した変異検出方法について、以下に説明する。
【0052】
<変異検出方法>
本発明にかかるALK遺伝子変異検出方法は、前記ALK遺伝子変異検出用プローブを少なくとも1種用いて、ALK遺伝子の変異を検出することを含むALK遺伝子変異検出方法である。
本発明にかかる変異検出方法によれば、前記変異検出用プローブを少なくとも1種含むことにより、ALK遺伝子の変異、特にALK(L1196M)変異型及びALK(C1156Y)変異型の少なくとも一方を簡便に、感度よく検出可能にする。
また、本発明の変異検出方法は、ALK遺伝子における変異の検出方法であって、下記工程(I)〜工程(IV)を含むことができ、下記工程(V)を含んでいてもよい。なお、本発明の変異検出方法は、前記変異検出用プローブを使用することが特徴であって、その他の構成及び条件等は、以下の記載に制限されない。
【0053】
(I)前記変異検出用プローブ及び試料中の一本鎖核酸を接触させて、前記蛍光標識オリゴヌクレオチド及び前記一本鎖核酸をハイブリダイズさせてハイブリッドを得ること。
(II)前記ハイブリッドを含む試料の温度を変化させることにより、前記ハイブリッドを解離させ、前記ハイブリッドの解離に基づく蛍光シグナルの変動を測定すること。
(III)前記蛍光シグナルの変動に基づいてハイブリッドの解離温度であるTm値を測定すること。
(IV)前記Tm値に基づいて、ALK遺伝子における変異の存在を検出すること。
(V)前記変異の存在に基づいて、前記試料中の一本鎖核酸における、変異を有する一本鎖核酸の存在比を検出すること。
【0054】
また、本発明においては、上記工程(I)〜(IV)又は上記工程(I)〜(V)に加えて、さらに、工程(I)のハイブリッドを得る前又は工程(I)のハイブリッドを得ることと同時に、核酸を増幅することを含んでいてもよい。
なお、(III)でTm値を測定することには、ハイブリッドの解離温度を測定することだけでなく、ハイブリット形成体の融解時に温度に応じて変動する蛍光シグナルの微分値の大きさを測定することを含んでもよい。
【0055】
本発明において、試料中の核酸は、一本鎖核酸でもよいし二本鎖核酸であってもよい。前記核酸が二本鎖核酸の場合は、例えば、前記蛍光標識オリゴヌクレオチドとハイブリダイズすることに先立って、加熱により前記試料中の二本鎖核酸を融解(解離)させて一本鎖核酸とすることを含むことが挙げられる。二本鎖核酸を一本鎖核酸に解離することによって、前記蛍光標識オリゴヌクレオチドとのハイブリダイズが可能となる。
【0056】
本発明において、検出対象である試料に含まれる核酸は、例えば、生体試料に元来含まれる核酸でもよいが、検出精度が向上できることから、生体試料に元来含まれている核酸を鋳型としてPCR等によりALK遺伝子の変異した部位を含む領域を増幅させた増幅産物であることが挙げられる。増幅産物の長さは、特に制限されないが、例えば、50mer〜1000mer、又は80mer〜200merにすることができる。また、試料中の核酸は、例えば、生体試料由来のRNA(トータルRNA、mRNA等)からRT−PCR(Reverse Transcription PCR)により合成したcDNAであってもよい。
【0057】
本発明において、前記試料中の核酸に対する、本発明の変異検出用プローブの添加割合(モル比)は特に制限されない。試料中のDNAに対して例えば1倍以下が挙げられる。また、十分な検出シグナル確保の観点より、前記試料中の核酸に対する、本発明の変異検出用プローブの添加割合(モル比)は、0.1倍以下とし得る。
ここで、試料中の核酸とは、例えば、検出目的の変異が発生している検出対象核酸と前記変異が発生していない非検出対象核酸との合計でもよいし、検出目的の変異が発生している検出対象配列を含む増幅産物と前記変異が発生していない非検出対象配列を含む増幅産物との合計でもよい。なお、試料中の核酸における前記検出対象核酸の割合は、通常、不明であるが、結果的に、前記変異検出用プローブの添加割合(モル比)は、検出対象核酸(検出対象配列を含む増幅産物)に対して10倍以下とし得る。また、前記変異検出用プローブの添加割合(モル比)は、検出対象核酸(検出対象配列を含む増幅産物)に対して、5倍以下、又は3倍以下とし得る。また、その下限は特に制限されないが、例えば、0.001倍以上、0.01倍以上、又は0.1倍以上とし得る。
【0058】
前記DNAに対する本発明の変異検出用プローブの添加割合は、例えば、二本鎖核酸に対するモル比でもよいし、一本鎖核酸に対するモル比でもよい。
【0059】
本発明において、Tm値を決定するための温度変化に伴うシグナル変動の測定は、前述のような原理から260nmの吸光度測定により行うこともできるが、前記変異検出用プローブに付加した標識のシグナルに基づくシグナルであって、一本鎖DNAと前記変異検出用プローブとのハイブリッド形成の状態に応じて変動するシグナルを測定することが挙げられる。このため、前記変異検出用プローブとして、蛍光標識オリゴヌクレオチドを使用することが挙げられる。前記蛍光標識オリゴヌクレオチドとしては、例えば、標的配列にハイブリダイズしていないときの蛍光強度に比べて、標的配列にハイブリダイズしているときの蛍光強度が減少(消光)する蛍光標識オリゴヌクレオチド、または標的配列にハイブリダイズしていないときの蛍光強度に比べて、標的配列にハイブリダイズしているときの蛍光強度が増加する蛍光標識オリゴヌクレオチドが挙げられる。
前者のようなプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖DNA)を形成している際には蛍光シグナルを示さないか、蛍光シグナルが弱いが、加熱によりプローブが解離すると蛍光シグナルを示すようになるか、蛍光シグナルが増加する。
また、後者のプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖DNA)を形成することによって蛍光シグナルを示し、加熱によりプローブが解離すると蛍光シグナルが減少(消失)する。従って、この蛍光標識に基づく蛍光シグナルの変化を蛍光標識特有の条件(蛍光波長等)で検出することによって、前記260nmの吸光度測定と同様に、融解の進行ならびにTm値の決定を行うことができる。
【0060】
次に、本発明の変異検出方法について、蛍光色素に基づくシグナルの変化を検出する方法について具体例を挙げて説明する。なお、本発明の変異検出方法は、前記変異検出用プローブを使用すること自体が特徴であり、その他の工程及び条件については何ら制限されない。
【0061】
核酸増幅を行う際の鋳型となる核酸を含む試料としては、核酸、特にALK遺伝子を含む核酸を含む試料であればよく、特に制限されない。例えば、大腸、肺等の組織、白血球細胞等の血球、全血、血漿、喀痰、口腔粘膜懸濁液、爪、毛髪等の体細胞、生殖細胞、乳、腹水液、パラフィン包埋組織、胃液、胃洗浄液、尿、腹膜液、羊水、細胞培養などの任意の生物学的起源に由来する又は由来しうるものを挙げられる。なお、試料の採取方法、核酸を含む試料の調製方法等は、制限されず、いずれも従来公知の方法が採用できる。また、鋳型となる核酸は、該起源から得られたままで直接的に、あるいは該サンプルの特性を改変するために前処理した後で使用することができる。
例えば、全血を試料とする場合、全血からのゲノムDNAの単離は、従来公知の方法によって行うことができる。例えば、市販のゲノムDNA単離キット(商品名GFX Genomic Blood DNA Purification kit;GEヘルスケアバイオサイエンス社製)等が使用できる。
【0062】
次に、単離したゲノムDNAを含む試料に、前記蛍光標識オリゴヌクレオチドを含む変異検出用プローブを添加する。
前記変異検出用プローブは、単離したゲノムDNAを含む液体試料に添加してもよいし、適当な溶媒中でゲノムDNAと混合してもよい。前記溶媒としては、特に制限されず、例えば、Tris−HCl等の緩衝液、KCl、MgCl、MgSO、グリセロール等を含む溶媒、PCR反応液等、従来公知のものが挙げられる。
【0063】
前記変異検出用プローブの添加のタイミングは、特に制限されず、例えば、後述するPCR等の増幅処理を行う場合、増幅処理の後に、PCR増幅産物に対して添加してもよいし、増幅処理前に添加してもよい。
このようにPCR等による増幅処理前に前記検出用プローブを添加する場合は、例えば、前述のように、その3'末端に、蛍光色素を付加したり、リン酸基を付加したりすることができる。
【0064】
核酸増幅の方法としては、例えばポリメラーゼを用いる方法等が挙げられる。その例としては、PCR法、ICAN法、LAMP法、NASBA法等が挙げられる。ポリメラーゼを用いる方法により増幅する場合は、本発明プローブの存在下で増幅を行うことが挙げられる。用いるプローブ及びポリメラーゼに応じて、増幅の反応条件等を調整することは当業者であれば容易である。これにより、核酸の増幅後にプローブのTm値を解析するだけで変異の有無を判定できるので、反応終了後増幅産物を取り扱う必要がない。よって、増幅産物による汚染の心配がない。また、増幅に必要な機器と同じ機器で検出することが可能なので、容器を移動する必要がなく、自動化も容易である。
【0065】
またPCR法に用いるDNAポリメラーゼとしては、通常用いられるDNAポリメラーゼを特に制限なく用いることができる。例えば、GeneTaq(ニッポンジーン社製)、PrimeSTAR Max DNA Polymerase(タカラバイオ社製)、Taq ポリメラーゼ等を挙げることができる。
ポリメラーゼの使用量としては、通常用いられている濃度であれば特に制限はない。例えば、Taqポリメラーゼを用いる場合、例えば、反応溶液量50μlに対して0.01U〜100Uの濃度とすることができる。これにより、ALK遺伝子変異の検出感度が高まるなどの傾向がある。
【0066】
またPCR法は、通常用いられる条件を適宜選択することで行うことができる。
なお、増幅の際、リアルタイムPCRによって増幅をモニタリングし、試料に含まれるDNA(検出対象配列)のコピー数を調べることもできる。すなわち、PCRによるDNA(検出対象配列)の増幅に従ってハイブリッドを形成するプローブの割合が増えるので蛍光強度が変動する。これをモニタリングすることで、試料に含まれる検出対象配列(正常DNAまたは変異型DNA)のコピー数又は存在比を検出することができる。
【0067】
本発明の変異検出方法においては、前記蛍光標識オリゴヌクレオチドと、試料中の一本鎖核酸とを接触させて、両者をハイブリダイズさせる。試料中の一本鎖核酸は、例えば、上記のようにして得られたPCR増幅産物を解離することで調製することができる。
【0068】
前記PCR増幅産物の解離(解離工程)における加熱温度は、前記増幅産物が解離できる温度であれば特に制限されない。例えば、85℃〜95℃である。加熱時間も特に制限されない。加熱時間は、例えば1秒〜10分、又は1秒〜5分としうる。
【0069】
また、解離した一本鎖DNAと前記蛍光標識オリゴヌクレオチドとのハイブリダイズは、例えば、前記解離工程の後、前記解離工程における加熱温度を降下させることによって行うことができる。温度条件としては、例えば、40℃〜50℃である。
【0070】
ハイブリダイズ工程の反応液における各組成の体積又は濃度は、特に制限されない。具体例としては、前記反応液におけるDNAの濃度は、例えば、0.01μM〜1μM、又は0.1μM〜0.5μMとしうる。前記蛍光標識オリゴヌクレオチドの濃度は、例えば、前記DNAに対する添加割合を満たす範囲であり、例えば、0.001μM〜10μM、又は0.001μM〜1μMとしうる。
【0071】
そして、得られた前記一本鎖DNAと前記蛍光標識オリゴヌクレオチドとのハイブリッドを徐々に加熱し、温度上昇に伴う蛍光シグナルの変動を測定する。例えば、QProbeを使用した場合、一本鎖DNAとハイブリダイズした状態では、解離した状態に比べて蛍光強度が減少(または消光)する。したがって、例えば、蛍光が減少(または消光)しているハイブリッドを徐々に加熱し、温度上昇に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
【0072】
蛍光強度の変動を測定する際の温度範囲は、特に制限されないが、例えば、開始温度が室温〜85℃、又は25℃〜70℃としうる。終了温度は、例えば、40℃〜105℃としうる。また、温度の上昇速度は、特に制限されないが、例えば、0.1℃/秒〜20℃/秒、又は0.3℃/秒〜5℃/秒としうる。
【0073】
次に、前記シグナルの変動を解析してTm値として決定する(図1参照)。具体的には、得られた蛍光強度から各温度における微分値(−d蛍光強度/dt)を算出し、最も低い値を示す温度をTm値として決定できる。また、単位時間当たりの蛍光強度増加量(蛍光強度増加量/t)が最も高い点をTm値として決定することもできる。なお、標識化プローブとして、消光プローブではなく、ハイブリッド形成によりシグナル強度が増加するプローブを使用した場合には、反対に、蛍光強度の減少量を測定すればよい。
【0074】
また、本発明においては、前述のように、ハイブリッドを加熱して、温度上昇に伴う蛍光シグナル変動(好ましくは蛍光強度の増加)を測定するが、この方法に代えて、例えば、ハイブリッド形成時におけるシグナル変動の測定を行ってもよい。すなわち、前記プローブを添加した試料の温度を降下させてハイブリッドを形成する際の前記温度降下に伴う蛍光シグナル変動を測定してもよい。
【0075】
具体例として、QProbeを使用した場合、前記プローブを試料に添加した直後では前記プローブは解離状態にあるため蛍光強度が大きいが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、前記蛍光が減少(または消光)する。したがって、例えば、前記加熱した試料の温度を徐々に降下して、温度下降に伴う蛍光強度の減少を測定すればよい。
他方、ハイブリッド形成によりシグナルが増加する標識化プローブを使用した場合、前記プローブを試料に添加した直後は、前記プローブは解離状態にあるため蛍光強度が小さい(または消光)が、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、蛍光強度が増加するようになる。したがって、例えば、前記試料の温度を徐々に降下して、温度下降に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
【0076】
本発明の変異検出方法においては、ALK(L1197M)変異型とALK(C1156Y)変異型との少なくとも一方の変異型を検出することを含む。即ち、以下のいずれかの態様を含む:
(1)前記P1、P2、P3、P7及びP8のオリゴヌクレオチドの少なくとも1種である蛍光標識オリゴヌクレオチドを使用し、前記P4のオリゴヌクレオチドである蛍光標識オリゴヌクレオチドを使用せずに、ALK(L1197M)変異型のみを検出するもの、
(2)前記P1、P2、P3、P7及びP8のオリゴヌクレオチドの少なくとも1種である蛍光標識オリゴヌクレオチドを使用せず、前記P4のオリゴヌクレオチドである蛍光標識オリゴヌクレオチドを使用して、ALK(C1156Y)変異型のみを検出するもの、又は
(3)前記P1、P2、P3、P7及びP8のオリゴヌクレオチドの少なくとも1種である蛍光標識オリゴヌクレオチドと、前記P4のオリゴヌクレオチドである蛍光標識オリゴヌクレオチドとを共に使用して、ALK(L1197M)変異型とALK(C1156Y)変異型との双方を検出するもの。
【0077】
ALK遺伝子における複数の変異は、同一の系で検出してもよく、異なる系で検出してもよい。同一の系で検出する場合の検出方法としては、特に制限されるものではない。例えば、各変異を検出できる各プローブを予め混合し、試料に添加してもよいし、一本鎖核酸を含む試料に各変異を検出できる各プローブを連続的に添加してもよい。
ここで、「系」とは、蛍光標識オリゴヌクレオチドと一本鎖核酸がハイブリダイズしたハイブリッドとを含む試料で形成される1個の独立した反応系を意味する。
なお、本変異検出方法に使用可能な各プローブ及びプライマーの好ましい態様又は配列については、上述の各プローブ及びプライマーに関する説明を適用することができる。
【0078】
<薬効判定方法>
本発明の薬効判定方法は、上述した変異検出方法によりALK遺伝子における変異を検出すること、及び、前記検出結果、即ち、検出された変異の有無に基づいて薬剤に対する耐性又は薬剤の薬効を判定することを含む。
上述した変異検出方法では、本発明における変異検出用プローブを用いて、感度よく且つ簡便にALK遺伝子のL1196M変異またはC1156Y変異を検出するので、ALK遺伝子におけるこれらの変異に基づいて薬剤の判定を感度よく且つ簡便に行うことができる。
【0079】
また、ALK遺伝子における変異の有無に基づいて薬剤に対する耐性又は薬剤の薬効を判定することができる。そして、本発明の薬効判定方法は、ALK遺伝子における変異の有無に基づいて、薬剤の投与量の増加、他の治療薬への変更等への切り替え等の疾病の治療方針を決定するのに有用である。
また、判定対象となる薬剤としては、具体的には、ALK阻害剤を有効成分とする抗がん剤が挙げられ、特に抗がん剤、中でも肺がん治療用の抗癌剤、例えば、クリゾチニブ等が挙げられる。
【0080】
<変異検出用試薬キット>
本発明の変異検出用試薬キットは上述した変異検出用プローブを含む。
この変異検出用試薬キットには、上述の変異検出用プローブの少なくとも1種を含むことにより、例えばALK遺伝子の変異の検出をより簡便に行うことができる。
【0081】
変異検出用試薬キットは、上述のプローブがハイブリダイズする領域を含む塩基配列を増幅するためのプライマーをさらに含むことができる。
これにより、本発明における変異検出用試薬キットは、精度よくALK遺伝子の変異の検出を行うことができる。
変異検出用試薬キットに含まれ得るプローブ及びプライマーについては、前述した事項をそのまま適用することができる。
【0082】
変異検出用プローブとして2種以上の蛍光標識オリゴヌクレオチドを含む場合、それぞれの蛍光標識オリゴヌクレオチドは、混合された状態で含まれていても、別個に含まれていてもよい。
また、2種以上の前記プローブが混合された状態で前記変異検出用キットに含まれる場合又は、前記変異検出キットに別個の試薬として含まれた2種以上のプローブを、例えば使用時に同じ反応系で混合して使用する場合、2種以上の各プローブは発光波長が互いに異なる蛍光色素で標識化されていることが好ましい。
このように蛍光物質の種類を変えることで、同じ反応系であっても、それぞれのプローブについての検出を行うことも可能になる。
【0083】
また、本発明における検出用試薬キットは、前記プローブ及び前記プライマーの他に、本発明の検出方法における核酸増幅を行うのに必要とされる試薬類をさらに含んでいてもよい。また、プローブ、プライマー及びその他の試薬類は、別個に収容されていてもよいし、それらの一部が混合物とされていてもよい。
なお、「別個に収容」とは、各試薬が非接触状態を維持できるように区分けされたものであればよく、必ずしも独立して取り扱い可能な個別の容器に収容される必要はない。
変異部位を含む配列(プローブがハイブリダイズする領域)を増幅するためのプライマーセットを含むことで、例えば、より高感度に変異を検出することができる。
【0084】
さらに本発明の変異検出用試薬キットは、前記変異検出用プローブを使用して、検出対象である核酸を含む試料について微分融解曲線を作成し、そのTm値解析を行って、ALK遺伝子における変異を検出することが記載された取扱い説明書、又は検出用試薬キットに含まれる若しくは追加的に含むことが可能な各種の試薬について記載された使用説明書を含むことができる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。
【0086】
[実施例1]
ALK(L1196M)の変異部位を含む塩基配列(配列番号1)又はALK(C1156Y)の変異部位を含む塩基配列(配列番号3)に基づき、配列番号1に示す塩基配列の123番目〜139番目の塩基に対応する塩基からなり、123番目の塩基に対応し且つ蛍光標識されたシトシンを有するP1蛍光標識オリゴヌクレオチドであるプローブ、3PB−ALKL1196M−mt−R1(配列番号5:ALK(L1196M)変異型検出用)と、配列番号3に示す塩基配列の235番目〜252番目の塩基に対応する塩基からなり、252番目の塩基に対応し且つ蛍光標識されたシトシンを有するP4蛍光標識オリゴヌクレオチドであるプローブ、3T−ALKC1156Y−mt−F2(配列番号8:ALK(C1156Y)変異型検出用)をそれぞれ設計し、常法に従って作製した(表3参照)。シトシンの標識化は、常法に従って、それぞれ、Pacific Blue(以下、「PB」)又はTAMRAを用いて行った。なお、プローブ中の3’末端の括弧内は蛍光色素の種類を示す。表3に示す塩基配列中、大文字は、変異の位置を示す。以下同様である。
【0087】
【表3】
【0088】
下記表4及び表5に示す試薬を用いて全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(商標)、アークレイ社製)でPCR及びTm解析を行い、本発明の変異検出用の蛍光標識オリゴヌクレオチドによるプローブの性能を確認した。なお、表4及び表5中の「%」は質量%を意味する(以下、同じ)。
PCRは、95℃で60秒処理した後、95℃で1秒及び61℃で30秒を1サイクルとして、50サイクル繰り返した。
Tm解析は、95℃で1秒、40℃で60秒処理し、続けて温度の上昇速度1℃/3秒で、40℃から75℃まで温度を上昇させ、その間の経時的な蛍光強度の変化を測定した。Tm解析における励起波長及び検出波長は、蛍光色素Pacific Blueの場合は、それぞれ365nm〜415nm、445nm〜480nmであり、蛍光色素TAMRAの場合はそれぞれ、520nm〜555nm、585nm〜700nmであった。それぞれの波長により、蛍光標識プローブに由来する蛍光強度の変化をそれぞれ測定した。
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
<核酸混合液>
核酸混合液は、ALK(L1196M)変異又はALK(C1156Y)変異の各変異部位に対応する配列を含む配列番号18〜配列番号21に示す核酸配列(表6参照)を、pUC57のEcoRV部位に挿入し、次いでEcoRIで処理したプラスミド、Mt(L1196M)、Wt(L1196M)、Mt(C1156Y)及びWt(C1156Y)を所定の割合で含む。サンプルA〜Cにおける核酸混合液中のプラスミドの含有比率(1μLあたりのコピー数)は、表7に記載した。
<前処理全血>
全血10μlを70μlの希釈液1に加え、よく混合した後、この混合液10μlを70μlの希釈液2に加えた。この混合液17μlを95℃10分で加熱すると4μlの前処理済全血が得られた。この4μlを全量、反応液に添加した。希釈液1及び希釈液2の組成は表8のとおりである。
【0092】
【表6】
【0093】
【表7】
【0094】
【表8】
【0095】
Tm解析によって、プローブの蛍光値の変化量を示す図2図5を得た。図2図4は、試料として核酸混合液を含む試料ID:A〜Cを用いた結果をそれぞれ示す。図5は試料として全血を用いた場合の結果を示す。また図2図5において、(A)はALK(L1196M)変異型の有無を示し、(B)はALK(C1156Y)変異型の有無を示す。図中、縦軸は単位時間当たりの蛍光強度の変化量(d蛍光強度増加量/t)を表し、横軸は温度(℃)をそれぞれ表す。
【0096】
その結果、ALK(L1196M)変異型の検出を確認した図2(A)〜図5(A)において、野生型(C/C)では49℃にピークが観察され、変異型(A/A)では58℃にピークが観察された。ALK(C1156Y)変異型の検出を確認した図2(B)〜図5(B)において、野生型(G/G)では51℃にピークが観察され、変異型(A/A)では58℃にピークが観察された。変異型及び野生型を混合した試料液ID:Bでは、ALK(L1196M)変異型による58℃と、ALK(C1156Y)変異型による58℃にそれぞれピークが観察された(図3参照)。
また、血液検体を試料とした場合でも、容易にALK(L1196M)変異型とALK(C1156Y)変異型とを同時に検出できることが明らかとなった。
従って、本発明に係る蛍光標識オリゴヌクレオチドをプローブとして用いることにより、ALK(L1196M)変異型とALK(C1156Y)変異型とを同時に検出できることが明らかとなった。
【0097】
[実施例2]
ALK(L1196M)変異型を検出するためのプローブとして、ALK(L1196M)の変異部位を含む塩基配列(配列番号1)に基づき、配列番号1に示す塩基配列の123番目〜141番目の塩基に対応する塩基からなり、141番目の塩基に対応し且つ蛍光標識されたシトシンを有するP2蛍光標識オリゴヌクレオチドであるプローブ、3T−ALKL1196M−mt−F7を設計し、常法に従って作製した(表9)。標識化Cの標識は、常法に従ってTAMRAを用いて行った。
また、配列番号1に示す塩基配列に基づき、配列番号1に示す配列の133番目の塩基に対応する塩基を有するP5プライマーの一例としてのプライマー、ALK L1196M−mt−F10と、配列番号2に示す塩基配列に基づき、配列番号2に示す配列の133番目の塩基に対応する塩基を有し且つ、ミスマッチ塩基を含むP6プライマーとしてのプライマー、ALK L1196M−WT−F6を設計し、常法に従って作製した(表10)。なお、表10において下線は、ミスマッチ塩基を示す。また配列番号1の配列に基づき、リバース用のプライマー、ALK L1196M R−3を設計し、常法に従って製造した(表10)。
【0098】
【表9】
【0099】
【表10】
【0100】
下記の試薬を用いて全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(商標)、アークレイ社製)でPCR及びTm解析を行い、本発明の変異検出用の蛍光標識オリゴヌクレオチドによるプローブの性能を確認した。
【0101】
PCRは、95℃で60秒処理した後、95℃で1秒及び52℃で15秒を1サイクルとして、50サイクル繰り返した。
Tm解析は、PCR後に95℃で1秒、40℃で60秒処理し、続けて温度の上昇速度1℃/3秒で、40℃から75℃まで温度を上昇させ、その間の経時的な蛍光強度の変化を測定した。Tm解析における励起波長及び検出波長は、520nm〜555nm、585nm〜700nm(TAMRA)であった。それぞれの波長により、蛍光標識プローブに由来する蛍光強度の変化をそれぞれ測定した。
【0102】
【表11】
【0103】
<核酸混合液>
核酸混合液は、実施例1で使用したものと同じプラスミド、Mt(L1196M)又はWt(L1196M)を含む。サンプルD〜Gにおける核酸混合液中のプラスミドの含有比率(1μLあたりのコピー数)は、表12に記載した。
【0104】
【表12】
【0105】
Tm解析によって、プローブの蛍光値の変化量を示す図6を得た。図6(A)はサンプルID:Dを用いた結果を示し、図6(B)はサンプルID:Eを用いた結果を示し、図6(C)はサンプルID:Fを用いた結果を示し、図6(D)はサンプルID:Gを用いた結果を示す。図中、縦軸は単位時間当たりの蛍光強度の変化量(d蛍光強度増加量/t)を表し、横軸は温度(℃)をそれぞれ表す。
【0106】
図6に示されるように、野生型(C/C)では54℃にピークが観察され、変異型(A/A)では63℃にピークが観察された。
従って、本発明に係る蛍光標識オリゴヌクレオチドをプローブとして使用すると共に、ミスマッチ塩基を含むプライマー(本実施例では野生型核酸配列増幅用のプライマー)を使用すると、ALK(L1196M)変異型の有無を、変異型0.3%含有比率(mt0.3%、20000cp/test)の場合でも、容易に且つ高特異的に検出できることが明らかとなった。
【0107】
[比較例1]
ALK(L1196M)変異型を含む塩基配列(配列番号1)に基づき、配列番号1に示す塩基配列の126番目〜142番目の塩基に対応する塩基からなり、141番目の塩基に対応する塩基がシトシン以外であり、且つ5’末端のシトシンが蛍光標識されたプローブ、3PB−ALKL1196M−mt−F1(配列番号22)を設計し、常法に従って作製した(表13参照)。
また鋳型核酸としては、配列番号1又は配列番号2に示す塩基配列に相補的な塩基配列を有する鋳型オリゴヌクレオチド(野生型(配列番号23)及び変異型(配列番号24))を用いた。鋳型オリゴヌクレオチドの配列を表14に示す。サンプルとしては、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドのみ、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドのみ、野生型の鋳型オリゴヌクレオチド及び変異型の鋳型オリゴヌクレオチドを1:1(モル比、以下同じ)で混合したものを用いた。
【0108】
【表13】
【0109】
【表14】
【0110】
下記の試薬を用いて全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(商標)、アークレイ社製)でTm解析を行い、3PB−ALKL1196M−mt−F1の性能を確認した。なお、表15中、Gene Taq Universal bufferは、ニッポンジーン社製を使用した。核酸混合液は、5μMの鋳型オリゴヌクレオチドとなるように濃度に調整後、4μLを反応液に添加した。
【0111】
Tm解析は、95℃で1秒、40℃で60秒処理し、続けて温度の上昇速度1℃/3秒で、40℃から75℃まで温度を上昇させ、その間の経時的な蛍光強度の変化を測定した。なお、Tm解析における励起波長及び検出波長は、それぞれ365nm〜415nm、445nm〜480nm(PB)であった。それぞれの波長により、蛍光標識プローブに由来する蛍光強度の変化をそれぞれ測定した。
【0112】
【表15】
【0113】
Tm解析によって、プローブの蛍光値の変化量を示す図7を得た。図中、縦軸は単位時間当たりの蛍光強度の変化量(d蛍光強度増加量/t)を表し、横軸は温度(℃)をそれぞれ表す。図中、四角で表すパターンは、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドのみを鋳型核酸として用いた場合の結果を示し、菱形で表すパターンは、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドのみを鋳型核酸として用いた場合の結果を示し、三角で表すパターンは、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドと変異型の鋳型オリゴヌクレオチドとを1:1混合したものを鋳型核酸として用いた場合の結果を示す。
【0114】
図7において、野生型では51℃にピークが観察され、ALK(L1196M)変異型では55℃にピークが観察された。野生型100%の場合とALK(L1196M)変異型100%の場合とでは、上述した計算値とは異なりTm値の差は4℃しかなく、ピークを見分けにくかった。
また、変異型及び野生型の各鋳型オリゴヌクレオチド1:1を鋳型核酸とした場合には、54℃にブロードなピークがひとつ観察されるだけであり、ALK(L1196M)変異型の検出ができなかった。
【0115】
[比較例2]
ALK(L1196M)変異型を含む塩基配列(配列番号1)に基づき、配列番号1に示す塩基配列の126番目〜142番目の塩基に対応する塩基からなり、141番目の塩基に対応する塩基以外となる5’末端のシトシンが蛍光標識されたプローブ、5T−ALK−L1196M−mt−F5(配列番号25)を設計し、常法に従って作製した(表16参照)。
【0116】
【表16】
【0117】
下記表17の試薬を用いて全自動SNPs検査装置(商品名i−densy(商標)、アークレイ社製)でPCR及びTm解析を行い、プローブ、5T−ALK−L1196M−mt−F5の性能を確認した。鋳型核酸としては、実施例1で使用したものと同じプラスミドを含む核酸混合液を使用した。核酸混合液における各プラスミドのコピー数は、表18の通りである。
PCRは、95℃で60秒処理した後、95℃で1秒及び52℃で15秒を1サイクルとして、50サイクル繰り返した。プライマーとしては、実施例2で使用したものと同じものを用いた。
Tm解析は、95℃で1秒、40℃で60秒処理し、続けて温度の上昇速度1℃/3秒で、40℃から75℃まで温度を上昇させ、その間の経時的な蛍光強度の変化を測定した。
Tm解析における励起波長及び検出波長は、520nm〜555nm、585nm〜700nm(TAMRA)であった。それぞれの波長により、蛍光標識プローブに由来する蛍光強度の変化をそれぞれ測定した。
【0118】
【表17】
【0119】
【表18】
【0120】
Tm解析によって、プローブの蛍光値の変化量を示す図8を得た。図中、縦軸は単位時間当たりの蛍光強度の変化量(d蛍光強度増加量/t)を表し、横軸は温度(℃)をそれぞれ表す。
図8に示されるように、実施例2で使用した高感度検出用のミスマッチ塩基を含むプライマーを使用しても、54℃に一つのピークが観察されるだけであり、ALK(L1196M)変異型の検出はできなかった。
【0121】
[比較例3]
ALK(C1156Y)変異型を含む塩基配列(配列番号3)に基づき、配列番号3に示す塩基配列の229番目〜245番目の塩基に対応する塩基からなり、252番目の塩基に対応する塩基以外となる3’末端のシトシンが蛍光標識されたプローブ、3T−ALK−C1156Y−mt−F4(配列番号26)を設計し、常法に従って作製した(表19参照)。
また鋳型核酸としては、配列番号3又は配列番号4に示す塩基配列に相補的な塩基配列を有する鋳型オリゴヌクレオチド(野生型(配列番号27)及び変異型(配列番号28))を用いた。鋳型オリゴヌクレオチドの配列を表20に示す。サンプルとしては、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドのみ、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドのみ、野生型の鋳型オリゴヌクレオチド及び変異型の鋳型オリゴヌクレオチドを1:1で混合したものを用いた。
上記のプローブ、鋳型核酸を使用し、励起波長及び検出波長をそれぞれ、520nm〜555nm、585nm〜700nmとした以外は、比較例1と同様にTm解析を行い、プローブの性能を確認した。
【0122】
【表19】
【0123】
【表20】
【0124】
Tm解析によって、プローブの蛍光値の変化量を示す図9を得た。図中、縦軸は単位時間当たりの蛍光強度の変化量(d蛍光強度増加量/t)を表し、横軸は温度(℃)をそれぞれ表す。図中、四角で表すパターンは、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドのみを鋳型核酸として用いた場合の結果を示し、菱形で表すパターンは、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドのみを鋳型核酸として用いた場合の結果を示し、三角で表すパターンは、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドと変異型の鋳型オリゴヌクレオチドとを1:1混合したものを鋳型核酸として用いた場合の結果を示す。
【0125】
図9において、ALK(C1156Y)変異型では66℃にピークが観察されるものの、野生型のピークが検出されず、野生型及び変異型を混合したサンプルの場合にはピークが1つしか検出されなかった。このように、ALK(C1156Y)変異型の検出はできなかった。
【0126】
[実施例3]
ALK(L1196M)変異型を検出するためのプローブとして、野生型の塩基配列(配列番号2)に基づき、配列番号2に示す塩基配列の123番目〜138番目の塩基に対応する塩基からなり、138番目の塩基に対応し且つ蛍光標識されたシトシンを有するP3蛍光標識オリゴヌクレオチドであるプローブ、5T−ALK−L1196M−R1:配列番号7)を設計し、常法に従って作製した(表21)。標識化シトシンの標識は、常法に従って行った。
また、鋳型核酸として、配列番号1又は配列番号2に示す塩基配列に相補的な塩基配列を有する鋳型オリゴヌクレオチド(野生型(配列番号29)及び変異型(配列番号30)を用いた。鋳型オリゴヌクレオチドの配列を表22に示す。サンプルとしては、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドのみ、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドのみ、野生型の鋳型オリゴヌクレオチド及び変異型の鋳型オリゴヌクレオチドを1:1で混合したものを用いた。
上記のプローブ、鋳型核酸を使用し、励起波長については520nm〜555nmとし、検出波長については585nm〜700nmとして蛍光標識プローブに由来する蛍光強度の変化をそれぞれ測定した以外は、実施例1と同様にして、Tm解析を行った。
なお、表22において「S」及び「Y」は、ALK(L1196M)変異以外の他の変異部位に相当する塩基であり、「S」は「g又はc」を示し、「Y」は「t又はc」を意味する。
【0127】
【表21】
【0128】
【表22】
【0129】
Tm解析によって、プローブの蛍光値の変化量を示す図10を得た。図中、縦軸は単位時間当たりの蛍光強度の変化量(d蛍光強度増加量/t)を表し、横軸は温度(℃)をそれぞれ表す。図中、菱形で表すパターンは、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドのみを鋳型核酸として用いた場合の結果を示し、四角で表すパターンは、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドのみを鋳型核酸として用いた場合の結果を示し、三角で表すパターンは、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドと、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドとを1:1混合して用いたものを鋳型核酸として用いた場合の結果を示す。
【0130】
図10において、野生型では60℃にピークが観察され、ALK(L1196M)変異型では54℃にピークが観察された。野生型と変異型1:1の混合液をサンプルとした場合でも、54℃及び60℃の2つのピークが区別可能に観察され、ALK(L1196M)変異型の有無を良好に検出することができた。
【0131】
[比較例4]
野生型の塩基配列(配列番号2)に基づき、配列番号2に示す塩基配列の123番目〜139番目の塩基に対応する塩基からなり、138番目の塩基に対応する塩基がシトシン以外の塩基であり且つ5’末端のシトシンが蛍光標識されたプローブ、3T−ALK−L1196M−F5(配列番号31)を設計し、常法に従って作製した(表23参照)。
また鋳型核酸としては、配列番号1又は配列番号2に示す塩基配列に相補的な塩基配列を有する鋳型オリゴヌクレオチド(野生型(配列番号32)及び変異型(配列番号33))を用いた。鋳型オリゴヌクレオチドの配列を表24に示す。サンプルとしては、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドのみ、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドのみ、野生型の鋳型オリゴヌクレオチド及び変異型の鋳型オリゴヌクレオチドを1:1で混合したものを用いた。
上記プローブ及び鋳型核酸を使用した以外は、実施例3と同様にTm解析を行い、プローブの性能を確認した。
【0132】
【表23】
【0133】
【表24】
【0134】
Tm解析によって、プローブの蛍光値の変化量を示す図11を得た。図中、縦軸は単位時間当たりの蛍光強度の変化量(d蛍光強度増加量/t)を表し、横軸は温度(℃)をそれぞれ表す。図中、菱形で表すパターンは、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドのみを鋳型核酸として用いた場合の結果を示し、四角で表すパターンは、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドのみを鋳型核酸として用いた場合の結果を示し、三角で表すパターンは、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドと変異型の鋳型オリゴヌクレオチドとを1:1混合したものを鋳型核酸として用いた場合の結果を示す。
【0135】
図11において、野生型では66℃にピークが観察され、変異型では55℃にピークが観察されたが、野生型と変異型1:1の混合液をサンプルとした場合には、プローブの反応性が弱く、変異型を示すピークを充分に検出することが困難であった。
【0136】
[実施例4及び実施例5]
実施例4の、ALK(L1196M)変異型を検出するためのプローブとして、野生型の塩基配列(配列番号2)に基づき、配列番号2に示す塩基配列の129番目〜145番目の塩基に対応する塩基からなり、145番目の塩基に対応し且つ蛍光標識されたシトシンを有するP7蛍光標識オリゴヌクレオチドであるプローブ、5T−ALK−L1196M−mtR5:配列番号9)を設計し、常法に従って作製した(表25)。標識化シトシンの標識は、常法に従って行った。
また、鋳型核酸として、配列番号1又は配列番号2に示す塩基配列に相補的な塩基配列を有する鋳型オリゴヌクレオチド(野生型(配列番号34)及び変異型(配列番号35)を用いた。鋳型オリゴヌクレオチドの配列を表26に示す。サンプルとしては、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドのみ、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドのみ、野生型の鋳型オリゴヌクレオチド及び変異型の鋳型オリゴヌクレオチドを1:1で混合したものを用いた。
【0137】
【表25】
【0138】
【表26】
【0139】
また、実施例5の、ALK(L1196M)変異型を検出するためのプローブとして、野生型の塩基配列(配列番号2)に基づき、配列番号2に示す塩基配列の133番目〜141番目の塩基に対応する塩基からなり、141番目の塩基に対応し且つ蛍光標識されたシトシンを有するP8蛍光標識オリゴヌクレオチドであるプローブ、3T−ALK−L1196M−WTF12:配列番号10)を設計し、常法に従って作製した(表27)。標識化シトシンの標識は、常法に従って行った。
また、鋳型核酸として、配列番号1又は配列番号2に示す塩基配列に相補的な塩基配列を有する鋳型オリゴヌクレオチド(野生型(配列番号36)及び変異型(配列番号37)を用いた。鋳型オリゴヌクレオチドの配列を表28に示す。サンプルとしては、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドのみ、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドのみ、野生型の鋳型オリゴヌクレオチド及び変異型の鋳型オリゴヌクレオチドを1:1で混合したものを用いた。
【0140】
【表27】
【0141】
【表28】
【0142】
実施例4及び実施例5の各プローブ、それぞれの鋳型核酸及び以下の反応試薬を使用し、励起波長については520nm〜555nmとし、検出波長については585nm〜700nmとして蛍光標識プローブに由来する蛍光強度の変化をそれぞれ測定した以外は、実施例1と同様にして、Tm解析を行った。表29中、Gene Taq Universal bufferは、ニッポンジーン社製を使用した。
【0143】
【表29】
【0144】
Tm解析によって、プローブの蛍光値の変化量を示す図12(実施例4)及び図13(実施例5)を得た。図中、縦軸は単位時間当たりの蛍光強度の変化量(d蛍光強度増加量/t)を表し、横軸は温度(℃)をそれぞれ表す。図中、菱形で表すパターンは、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドのみを鋳型核酸として用いた場合の結果を示し、四角で表すパターンは、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドのみを鋳型核酸として用いた場合の結果を示し、三角で表すパターンは、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドと、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドとを1:1混合して用いたものを鋳型核酸として用いた場合の結果を示す。
【0145】
実施例4では、図12に示されるように、野生型では54℃にピークが観察され、ALK(L1196M)変異型では64℃にピークが観察された。野生型と変異型1:1の混合液をサンプルとした場合でも、53℃及び63℃の2つのピークが区別可能に観察され、ALK(L1196M)変異型の有無を良好に検出することができた。
実施例5では、図13に示されるように、野生型では70℃にピークが観察され、ALK(L1196M)変異型では60℃にピークが観察された。野生型と変異型1:1の混合液をサンプルとした場合でも、60℃及び70℃の2つのピークが区別可能に観察され、ALK(L1196M)変異型の有無を良好に検出することができた。
【0146】
[比較例5及び比較例6]
比較例5の、ALK(L1196M)変異型を検出するためのプローブとして、野生型の塩基配列(配列番号2)に基づき、配列番号2に示す塩基配列の124番目〜139番目の塩基に対応する塩基からなり、139番目の塩基に対応し且つ蛍光標識されたシトシンを有する蛍光標識オリゴヌクレオチドであるプローブ、3T−ALK−L1196M−mtF9:配列番号38)を設計し、常法に従って作製した(表30)。標識化シトシンの標識は、常法に従って行った。
また、鋳型核酸として、配列番号1又は配列番号2に示す塩基配列に相補的な塩基配列を有する鋳型オリゴヌクレオチド(野生型(配列番号39)及び変異型(配列番号40)を用いた。鋳型オリゴヌクレオチドの配列を表31に示す。サンプルとしては、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドのみ、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドのみ、野生型の鋳型オリゴヌクレオチド及び変異型の鋳型オリゴヌクレオチドを1:1で混合したものを用いた。
【0147】
なお、表31において「S」及び「R」は、ALK(L1196M)変異以外の他の変異部位に相当する塩基であり、「S」は「g又はc」を示し、「R」は「g又はa」を意味する。
【0148】
【表30】
【0149】
【表31】
【0150】
また比較例6の、ALK(L1196M)変異型を検出するためのプローブとして、野生型の塩基配列(配列番号2)に基づき、配列番号2に示す塩基配列の119番目〜136番目の塩基に対応する塩基からなり、119番目の塩基に対応し且つ蛍光標識されたシトシンを有する蛍光標識オリゴヌクレオチドであるプローブ、5T−ALK−L1196M−WTF11:配列番号41)を設計し、常法に従って作製した(表32)。標識化シトシンの標識は、常法に従って行った。
また、鋳型核酸として、配列番号1又は配列番号2に示す塩基配列に相補的な塩基配列を有する鋳型オリゴヌクレオチド(野生型(配列番号42)及び変異型(配列番号43)を用いた。鋳型オリゴヌクレオチドの配列を表33に示す。サンプルとしては、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドのみ、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドのみ、野生型の鋳型オリゴヌクレオチド及び変異型の鋳型オリゴヌクレオチドを1:1で混合したものを用いた。
比較例5及び比較例6のプローブ、それぞれの鋳型核酸を使用し、励起波長については520nm〜555nmとし、検出波長については585nm〜700nmとして蛍光標識プローブに由来する蛍光強度の変化をそれぞれ測定した以外は、実施例4と同様にして、Tm解析を行った。
【0151】
【表32】
【0152】
【表33】
【0153】
Tm解析によって、プローブの蛍光値の変化量を示す図14(比較例5)及び図15(比較例6)を得た。図中、縦軸は単位時間当たりの蛍光強度の変化量(d蛍光強度増加量/t)を表し、横軸は温度(℃)をそれぞれ表す。図中、菱形で表すパターンは、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドのみを鋳型核酸として用いた場合の結果を示し、四角で表すパターンは、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドのみを鋳型核酸として用いた場合の結果を示し、三角で表すパターンは、野生型の鋳型オリゴヌクレオチドと、変異型の鋳型オリゴヌクレオチドとを1:1混合して用いたものを鋳型核酸として用いた場合の結果を示す。
【0154】
比較例5では、図14に示されるように、野生型では57℃、変異型では60℃にピークが観察されたが、野生型及び変異型の混合液を用いた場合にも59℃にひとつのピークしか観察されなかった。
また比較例6では、図15に示されるように、野生型では69℃、変異型では59℃にピークが観察されたが、野生型及び変異型の混合液を用いた場合には、明瞭なピークは59℃のピークのみであった。
従って、比較例5及び比較例6のプローブは、いずれもALK(L1196M)の変異の検出には適さないことがわかった。
【0155】
このように本発明によれば、ALK遺伝子の変異、即ち、ALK(L1196M)変異型及びALK(C1156Y)変異型を、同時に又は個別に感度よく簡便に検出することができる。
これにより、ALK遺伝子変異に基づく薬剤、例えば、ALK阻害剤を有効成分とする抗癌剤等の薬剤の薬効の判定を簡便に行うことが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]