【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年7月20日 一般社団法人 日本建築学会発行 「2013年度 日本建築学会大会(北海道)学術講演梗概集」にて公開 平成25年8月30日 一般社団法人 日本建築学会主催 「2013年度 日本建築学会大会(北海道)」にて公開
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係る減衰機構を備える免震構造物について説明する。なお、鉛直方向を矢印Zで示し、水平方向における直交する2方向を矢印X及び矢印Yで示す。
【0020】
図1に示すように、免震構造物10は、地盤12に構築された基礎部14と上部構造部20との間に免震層30が設けられた基礎免震構造となっている。また、
図2に示すように、免震構造物10の平面視における外形形状は、略矩形状(本実施形態では略正方向状)となっている。
【0021】
なお、
図1及び
図2において上部構造部20が地盤12(基礎部14)に対して右側に変位する方向を免震層30の正方向の免震層変位とする。また、
図2において上部構造部20が地盤12(基礎部14)に対して下側に変位する方向を免震層30の正方向の免震層変位とする。
【0022】
図1及び
図2に示すように、免震層30には、免震装置50が設置されている。免震装置50は、上部構造部20を支持する免震支承(アイソレータ)の一例としての積層ゴム52と、振動エネルギーを吸収する減衰機構100X及び減衰機構100Y(
図2参照)を有している。積層ゴム52は平面視における免震層30(基礎部14)の隅部に設けられ、減衰機構100X,100Y(
図2参照)は、辺部15X,15Yにおける積層ゴム52間に設けられている。
【0023】
減衰機構100Xは、X方向に沿った辺部15Xに設けられX方向の振動を減衰する。減衰機構100Yは、Y方向に沿った辺部15Yに設けられY方向の振動を減衰する。
【0024】
なお、減衰機構100Xを構成する部材には符号の後にXを付し、減衰機構100Yを構成する部材には符号を後にYを付す。しかし、減衰機構100Xと減衰機構100Yとは、配置位置が異なるだけで、同様の構成であるので、両者を区別する必要がない場合は、符号の後のX、Yを省略する。
【0025】
減衰機構100は、配置手段の一例としての下側架台112及び上側架台114と、伸縮体の一例としてのロック機構付きのオイルダンパー150と、を有している。
【0026】
図3に示す本実施形態のロック機構付のオイルダンパー150は、予め定められたロック解除荷重を超えるとパッシブにロックが解除される片ロッドユニフロータイプの流体系ダンパーである。また、オイルダンパー150は、シリンダー152と、シリンダー152に対して出没するロッド154と、ロック機構156と、を含んで構成されている。
【0027】
シリンダー152の内部には、オイル(作動油)Pが充填されている。そして、シリンダー152からロッド154が引き出されることでオイルダンパー150の全長が伸長し、シリンダー152にロッド154が押し込まれることでオイルダンパー150の全長が収縮する。なお、オイルダンパー150の伸長方向を+S方向とし、収縮方向を−S方向とする。
【0028】
ロック機構156は、予め定められたロック解除荷重を超えるまで、シリンダー152の内部のオイルPの流路を閉塞しロックするように構成されている。つまり、ロック機構156は、風荷重等のロック解除荷重以下の場合(微小なストロークで伸縮する場合)には、オイルPの流れを閉塞したロック状態を維持し伸縮を阻止するようになっている。
【0029】
しかし、地震荷重等でロック解除荷重を超えると(大きなストロークで伸縮すると)、ロック機構156はロックを解除してオイルPの流れを開放しロック解除状態にする。これによりオイルダンパー150は自由に伸縮し減衰効果を発揮する。
【0030】
ここで、オイルダンパー150は、
図3に示すロック状態においては、伸長側のオイルPの流体体積V1と収縮側のオイルPの流体体積V2とが異なっている。よって、ロック状態におけるオイルダンパー150の装置剛性は、伸長時(伸長側、伸長方向(+S方向))と収縮時(収縮側、収縮方向(−S方向))とで異なる。なお、本実施形態では、伸長側のオイルPの流体体積V1よりも収縮側のオイルPの流体体積V2の方が大きいので、伸長時(伸長側)の装置剛性は収縮時(収縮側)の装置剛性よりも大きい。
【0031】
前述したように免震層30には、二つの減衰機構100X、100Yが設けられている(
図2参照)。各減衰機構100の下側架台112は基礎部14に形成され、上側架台114は上部構造部20に形成されている(
図1参照)。
【0032】
なお、辺部15Xの
図2における左側から下側架台112、上側架台114、下側架台112、上側架台114の順番で設けられている。また、辺部15Yの
図2における上側から下側架台112、上側架台114、下側架台112、上側架台114の順番で設けられている。
【0033】
そして、各下側架台112にオイルダンパー150のロッド154の端部155が接合され、各上側架台114にオイルダンパー150のシリンダー152側の端部153が接合されている。
【0034】
したがって、X方向の振動を減衰する減衰機構100Xを構成する四つのオイルダンパー150Xは、伸縮方向がX方向に沿って配置されると共に、伸長方向(+S方向)及び収縮方向(−S方向)が同じ方向になるように同向配置されている。なお、本実施形態では、
図1及び
図2における右側方向(正方向)が伸長方向(+S方向)であり、左側方向(負方向)が収縮方向(−S方向)である。
【0035】
同様に、Y方向の振動を減衰する減衰機構100Yを構成する四つのオイルダンパー150Yは、伸縮方向がY方向に沿って配置されると共に、伸長方向(+S方向)及び収縮方向(−S方向)が同じ方向になるように同向配置されている。なお、本実施形態では、
図2における下側方向(正方向)が伸長方向(+S方向)であり、上側方向(負方向)が収縮方向(−S方向)である。
【0036】
このように、X方向に沿った二つの辺部15Xに配置された四つのオイルダンパー150Xは、+S方向が
図1及び
図2における右側方向(正方向)に向いた同向配置となっており、Y方向に沿った二つの辺部15Yに配置された四つのオイルダンパー150Yは+S方向が
図2の下側方向(正方方向)に向いた同向配置となっている。
【0037】
(作用及び効果)
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0038】
免震構造物10では、風荷重のような低荷重の場合は上部構造部20が変位しないように免震層30が剛である構造と、地震荷重のような高荷重の場合は上部構造部20が変位するように免震層30が柔である構造と、を切り替えることが理想的とされている。
【0039】
そして、本実施形態の免震構造物10では、免震層30に設けられた免震装置50の減衰機構100を構成するロック機構付きオイルダンパー150は、予め定められたロック解除荷重Q(後述する)を超えるとパッシブにロックが解除される片ロッドユニフロータイプの流体系ダンパーが採用されている。
【0040】
よって、減衰機構100は、低荷重ではオイルダンパー150がロックされており減衰効果を発揮しない(免震装置50は免震効果を発揮しない)。一方、減衰機構100は、高荷重となるとオイルダンパー150のロックが解除され減衰効果を発揮する(免震装置50が免震効果を発揮する)。
【0041】
しかし、各方向における全てのオイルダンパー150のロックが解除され、減衰機構100が起動し減衰効果を発揮する起動荷重が小さいと、風荷重のような低荷重であっても減衰機構100が起動し、上部構造部20が変位する。よって、居住性が確保されない。
【0042】
さて、前述したように、
図3に示す本実施形態のロック機構付きのオイルダンパー150は、ロック状態においては、オイルPの伸長側の流体体積V1と収縮側の流体体積V2が異なっているので、オイルダンパー150の装置剛性が伸長時(伸長側、伸長方向(+S方向))と収縮時(収縮側、収縮方向(−S方向))とで異なる。なお、本実施形態では、伸長側のオイルPの流体体積V1よりも収縮側のオイルPの流体体積V2の方が大きいので、伸長時(伸長側)の装置剛性は収縮時(収縮側)の装置剛性よりも大きい。
【0043】
したがって、
図4に示すように、本実施形態のロック機構付きのオイルダンパー150は、ロック解除荷重Qが同じであってもロック解除変位量が伸長方向と収縮方向とで異なる。なお、本実施形態では、伸長方向(+S方向)のロック解除変位量R1よりも収縮方向(−S方向)のロック解除変位量R2の方が大きい。
【0044】
ここで、
図15に示すような、二つのオイルダンパー150の伸長方向(+S方向)及び収縮方向(−S方向)が逆方向になるように対向配置されている比較例としての減衰機構900、及びこの減衰機構900を備える免震装置950について説明する。
【0045】
二つのオイルダンパー150が対向配置されている減衰機構900では、一方のオイルダンパー150が伸長する場合は、他方のオイルダンパー150は収縮する。前述したようにオイルダンパー150は、伸長方向(+S方向)のロック解除変位量R1よりも収縮方向(−S方向)のロック解除変位量R2が大きいので、
図16に示すように二つのオイルダンパー150は同時にロックが解除されないで順番にロックが解除される。
【0046】
よって、免震装置950は、二つのオイルダンパー150の両方のロックが解除されて減衰機構900が起動し減衰効果を発揮する起動荷重FB(免震装置950が免震効果を発揮する荷重値)は、先にロック解除された伸長側のオイルダンパー150のロック解除荷重Qに、まだロックされた状態の収縮側のオイルダンパー150の負担荷重を加えた荷重値となる。
【0047】
つまり、減衰機構900が起動する起動荷重は、二つのオイルダンパー150のロック解除荷重Qを足した合計荷重よりも小さい(免震装置950が免震効果を発揮する荷重は、ロック解除荷重Qの合計荷重よりも小さい)。なお、正確には、免震装置950が免震効果を発揮する荷重は、免震装置950を構成する積層ゴム52等のその他構成部材の負担荷重も加わった荷重値となる。
【0048】
これに対して、本実施形態のように二つのオイルダンパー150の伸長方向(+S方向)及び収縮方向(−S方向)が同じ方向になるように同向配置されている減衰機構では、一方のオイルダンパー150が伸長する場合は他方のオイルダンパー150も伸長し、一方のオイルダンパー150が収縮する場合は他方のオイルダンパー150も収縮する。よって、二つのオイルダンパー150は同時又はほぼ同時にロックが解除され減衰機構が起動し減衰効果を発揮する(免震装置50が免震効果を発揮する)。
【0049】
したがって、
図5に示すように、二つのオイルダンパー150は同時又はほぼ同時にロック解除され減衰機構が起動し減衰効果を発揮する起動荷重FAが、二つのオイルダンパー150のロック解除荷重Qの略合計荷重となる。つまり、二つのオイルダンパー150が対向配置された比較例の減衰機構900(
図15参照)の起動荷重FB(
図16参照)よりも大きい。
【0050】
なお、二つのオイルダンパー150が同向配置されている減衰機構では、一方側の変位では両方のオイルダンパー150が伸長、他方側の変位では両方のオイルダンパー150が収縮する。よって、
図5に示すように、二つのオイルダンパー150が伸長する場合はロック解除変位R1でロックが解除され、二つのオイルダンパー150が収縮する場合はロック解除変位R2でロックが解除される。
【0051】
そして、本実施形態においては、
図2に示すように、減衰機構100Xは四つのオイルダンパー150がX方向に沿って同向配置され、減衰機構100Yは四つのオイルダンパー150はY方向に沿って同向配置されている。
【0052】
よって、X方向の振動に対しては、減衰機構100Xを構成する四つのオイルダンパー150Xのロックが解除され減衰機構900が起動し減衰効果を発揮する起動荷重(免震装置50が免震効果を発揮する荷重値)は、四つのオイルダンパー150Xのロック解除荷重Qの略合計荷重となる。
【0053】
同様に、Y方向の振動に対しては、減衰機構100Yを構成する四つのオイルダンパー150Yのロックが解除され減衰機構100Yが起動し減衰効果を発揮する起動荷重(免震装置50が免震効果を発揮する荷重値)は、四つのオイルダンパー150Yのロック解除荷重Qの略合計荷重となる。
【0054】
したがって、このように、四つのオイルダンパー150のロックが解除され減衰機構100が起動し減衰効果を発揮する起動荷重が、オイルダンパー150が対向配置された場合と比較し、大きくなる。よって、風荷重のような低荷重で減衰機構100が起動し上部構造部20が変位することが防止され、居住性が確保される。
【0055】
なお、四つのオイルダンパー150が同向配置されている減衰機構100では、四つのオイルダンパー150が伸長する場合はロック解除変位R1でロックが解除され、四つのオイルダンパー150が収縮する場合はロック解除変位R2でロックが解除される(
図5参照)。つまり、免震層30(上部構造部20)が+S方向に変位する場合のロック解除変位量と−S方向に変位する場合のロック解除変位量とが異なる。
【0056】
よって、仮に正方向(+S方向)の変位では上部構造部20の固有周期のピークと一致又は略一致して応答を示しても、負方向(−S方向)の変位ではピークとならないので、繰り返し振動が作用しても振動が増幅しにくい。
【0057】
なお、このように正方向(+S方向)に変位する場合のロック解除変位と、負方向(−S方向)に変位する場合のロック解除変位と、が異なると、水平方向のねじれが発生しやすくなる。しかし、本実施形態では、
図2に示すように、減衰機構100X,100Yを構成するオイルダンパー150X,150Yを、平面視において、中央部分でなく、外側の各辺部15X,15Yに沿ってバランスよく配置することで、ねじれが生じにくくなっている。
【0058】
[変形例]
つぎに、本実施形態の変形例について説明する。
【0059】
図6に示す変形例の免震構造物11は、基礎部16と上部構造部(図示略)との間に免震層32が設けられた基礎免震構造となっている。また、免震構造物11の平面視における外形形状は、略三角形状(本変形例では略正三角形状)となっている。なお、平面視において、各辺に沿った方向をLA、LB,LCとし、各辺から中心に向かう方向(各辺と直交する方向)をMA,MB,MCとする。
【0060】
免震層32には、免震装置55が設置されている。免震装置55は、角部に配置された上部構造部を支持する積層ゴム52と、振動エネルギーを吸収する減衰機構101MA,101MB、101MC及び減衰機構900LA,900LB,900LCと、を有している。
【0061】
なお、MA方向に沿って配置された減衰機構及びその構成部材には、符号の後にMAを付す。同様にMB方向、MC方向、LA方向,LB方向,LC方向に沿って配置された減衰機構及びその構成部材には、符号の後にMB、MC、LA,LB,LCを付す。また、これらMA,MB、MC、LA,LB,LCを区別する必要がない場合は、MA,MB、MC、LA,LB,LCを省略する。
【0062】
各減衰機構900LA,900LB,900LCは、それぞれ各辺部にオイルダンパー150の伸縮方向がそれぞれLA方向、LB方向,LC方向に沿って配置されている。また、減衰機構900は、
図15に示す比較例と同様に二つのオイルダンパー150が対向配置されている構成である。
【0063】
各減衰機構101MA,101MB,101MCは、オイルダンパー150の伸縮方向がそれぞれMA方向,MB方向,MC方向に沿って配置されている。また、減衰機構101は、同向配置された三つのオイルダンパー150が並列に並んだ構成である。
【0064】
(作用及び効果)
本変形例の作用及び効果について説明する。
【0065】
減衰機構101MAは三つのオイルダンパー150MAがMA方向に沿って同向配置され、減衰機構101MBは三つのオイルダンパー150MBがMB方向に沿って同向配置され、減衰機構101MCは三つのオイルダンパー150MCがMC方向に沿って同向配置されている。
【0066】
よって、MA方向の変位に対しては、減衰機構101MAを構成する三つのオイルダンパー150MAのロックが同時又は略同時に解除され、減衰機構101MAが起動し減衰効果を発揮する起動荷重が、三つのオイルダンパー150MAのロック解除荷重Qの略合計荷重となる。
【0067】
同様に、MB方向の変位に対しては、減衰機構101MBを構成する三つのオイルダンパー150MBのロックが同時又は略同時に解除され、減衰機構101MBが起動し減衰効果を発揮する起動荷重が、三つのオイルダンパー150MBのロック解除荷重Qの略合計荷重となる。
【0068】
同様に、MC方向の変位に対しては、減衰機構101MCを構成する三つのオイルダンパー150MCのロックが同時又は略同時に解除され、減衰機構101MCが起動し減衰効果を発揮する起動荷重が、三つのオイルダンパー150MCのロック解除荷重Qの略合計荷重となる。
【0069】
したがって、三つのオイルダンパー150のロックが解除され減衰機構101が起動し減衰効果を発揮する起動荷重が、オイルダンパー150が対向配置された場合と比較し、大きくなる。よって、風荷重のような低荷重で減衰機構100が起動し上部構造部20が変位することが防止され、居住性が確保される。また、繰り返し振動が作用しても振動が増幅しにくい。
【0070】
[その他の変形例]
図2等に示す上記実施形態では、減衰機構100Xを構成する四つのオイルダンパー150XはX方向に沿って同向配置され、減衰機構100Yを構成する四つのオイルダンパー150YはY方向に沿って同向配置されている。しかし、減衰機構100X及び減衰機構100Yのいずれか一方の減衰機構のオイルダンパー150は同向配置され、他方の減衰機構のオイルダンパー150は
図15に示す比較例のよう対向配置されていてもよい。
【0071】
つまり、ある方向の振動(例えばX方向)に対して減衰機能を発揮する減衰機構のオイルダンパーが全て同向配置されていれば、他の方向(例えばY方向)の振動に対して減衰機能を発揮する減衰機構ではオイルダンパーが対向配置されていてもよい。
【0072】
要は、本発明を適用する所定の方向の振動に対して減衰機能を発揮する減衰機構ではオイルダンパーが全て同向配置となっていれば、所定の方向以外の方向に対して減衰機能を発揮する減衰機構では対向配置となっていてもよい。
【0073】
<第二実施形態>
つぎに、本発明の第二実施形態に係る減衰機構を備える免震構造物について説明する。なお、第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0074】
図7に示すように、免震構造物18は、地盤12(
図1参照)に構築された基礎部14と上部構造部20との間に免震層30が設けられた基礎免震構造となっている。免震層30には、免震装置80が設置されている。免震装置80は、積層ゴム52と、振動エネルギーを吸収する減衰機構200と、を有している。
【0075】
減衰機構200は、下側架台112及び上側架台114と、伸縮体の一例としてのロック機構付きのオイルダンパー150と、下側架台112に設けられた剛性低減機構210と、を有している。
【0076】
ロック機構付のオイルダンパー150は、予め定められたロック解除荷重Qを超えるとパッシブにロックが解除される片ロッドユニフロータイプの流体系ダンパーである。二つのオイルダンパー150は、第一実施形態で説明した比較例と同様に対向配置されている。また、上側架台114にはオイルダンパー150のシリンダー152側の端部153が接合され、下側架台112には、オイルダンパー150のロッド154の端部155が、剛性低減機構210を介して接合されている。
【0077】
図8に示すように、剛性低減機構210は、下側架台112に形成されたオイルダンパー150側が開口する凹部212と、この凹部212内に設けられた皿ばね214と、ロック機構付きのオイルダンパー150のロッド154の端部155に接続されたアンカー216と、を含んで構成されている。また、アンカー216は、軸部218が皿ばね214を貫通し、先端部220が円盤状となっている。
【0078】
図8(A)に示すように、オイルダンパー150のロッド154がシリンダー152の押し込まれる収縮方向(−S方向)の変位の場合は、アンカー216の先端部220が凹部212の側部(底部)222に当接し、下側架台112から荷重が伝達される。また、皿ばね214は圧縮されない。
【0079】
図8(B)に示すように、オイルダンパー150のロッド154がシリンダー152から引き出される伸長方向(+S方向)の変位の場合は、アンカー216の先端部220が皿ばね214を圧縮させ、皿ばね214を介して下側架台112から荷重が伝達される。よって、オイルダンパー150と皿ばね214とが直列剛性になり、剛性が低減する。
【0080】
なお、剛性低減機構210における皿ばね214のばね力は、
図8(B)に示すオイルダンパー150の伸長方向(+S方向)の剛性が、
図8(A)に示す収縮方向(−S方向)の剛性と同じ又は略同じとなるように調整されている。
【0081】
(作用及び効果)
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0082】
第一実施形態で説明したように、
図3に示す本実施形態のロック機構付きのオイルダンパー150は、ロック状態においては、オイルPの伸長側の流体体積V1と収縮側の流体体積V2が異なっているので、オイルダンパー150の装置剛性が伸長時(伸長側、伸長方向(+S方向))と収縮時(収縮側、収縮方向(−S方向))とで異なる。
【0083】
しかし、
図7及び
図8に示すように、本実施形態では、剛性低減機構210によって、伸長時(伸長側)の剛性が、収縮時(収縮側)の剛性と同じ又は略同じとなるように低減されている。
【0084】
よって、
図9に示すように、オイルダンパー150の伸長時のロック解除変位量が大きくなり、オイルダンパー150の収縮時のロック解除変位R2に近づき、一致又は略一致する。
【0085】
したがって、
図10に示すように、二つのオイルダンパー150のロックがロック解除変位R2で同時又は略同時に解除される。よって、減衰機構200が起動し減衰効果を発揮する起動荷重が、二つのオイルダンパー150のロック解除荷重Qの略合計荷重となる。
【0086】
つまり、二つのオイルダンパー150のロックが解除され減衰機構200が起動し減衰効果を発揮する起動荷重が、剛性低減機構210を有しない場合と比較し、大きくなる。よって、風荷重のような低荷重で減衰機構200が起動し上部構造部20が変位することが防止され、居住性が確保される。
【0087】
[変形例]
つぎに、本実施形態の変形例について説明する。なお、変形例は、剛性低減機構以外の構成は、上記実施形態と同様である。
【0088】
(第一変形例)
図11に示す第一変形例の減衰機構201では、剛性低減機構250は、下側架台112に形成された複数の貫通孔260と、皿ばね252と、ロック機構付きのオイルダンパー150のロッド154の端部155に接続された複数のアンカー256と、を含んで構成されている。また、アンカー256は、軸部257が下側架台112の貫通孔260を挿通し、各軸部257の先端部は一枚の板状の固定部材258に固定されている。また、皿ばね252は固定部材258と下側架台112との間の軸部257に挿通されている。
【0089】
図12(A)に示すように、オイルダンパー150のロッド154がシリンダー152の押し込まれる収縮方向(−S方向)の変位の場合は、ロッド154の端部155が下側架台112の側壁113に当接し、下側架台112から荷重が伝達される。また、皿ばね252は圧縮されない。
【0090】
図12(B)に示すように、オイルダンパー150のロッド154がシリンダー152から引き出される伸長方向(+S方向)の変位の場合は、アンカー256の先端部に取り付けられた固定部材258が+S方向に移動して皿ばね252を圧縮する。よって、皿ばね252を介して下側架台112から荷重が伝達される。したがって、オイルダンパー150と皿ばね252とが、直列剛性になり、剛性が低減する。
【0091】
なお、剛性低減機構250における皿ばね252のばね力は、
図12(A)に示すオイルダンパー150の収縮方向(−S方向)の剛性が、
図12(B)に示す伸長方向(+S方向)の剛性と同じ又は略同じとなるように調整されている。
【0092】
よって、本変形例においても、剛性低減機構250によって、
図11及び
図12に示すように、伸長時(伸長側)の剛性が、収縮時(収縮側)の剛性と同じ又は略同じとなるように低減されている。
【0093】
したがって、
図10に示すように、二つのオイルダンパー150のロックがロック解除変位R2で同時又は略同時に解除される。よって、減衰機構201が起動し減衰効果を発揮する起動荷重が、二つのオイルダンパー150のロック解除荷重Qの略合計荷重となる。
【0094】
つまり、二つのオイルダンパー150のロックが解除され減衰機構201が起動し減衰効果を発揮する起動荷重が、剛性低減機構250を有しない場合と比較し、大きくなる。よって、風荷重のような低荷重で減衰機構100が起動し上部構造部20が変位することが防止され、居住性が確保される。
【0095】
(第二変形例)
図13に示す第二変形例の減衰機構203では、剛性低減機構251は、上側架台114に形成された複数の貫通孔260と、皿ばね252と、ロック機構付きのオイルダンパー150のロッド154の端部155に接続された複数のアンカー256と、を含んで構成されている。また、アンカー256は、軸部257が上側架台114の貫通孔260を挿し、各軸部257の先端部は一枚の板状の固定部材258に固定されている。また、皿ばね252は、固定部材258と下側架台112との間の軸部257に挿通されている。
【0096】
図13(A)に示すように、オイルダンパー150のロッド154がシリンダー152の押し込まれる収縮方向(−S方向)の変位の場合は、上側架台114の−S方向側の側壁115がシリンダー152側の端部153に当接し、上側架台114から荷重が伝達される。また、皿ばね252は圧縮されない。
【0097】
図13(B)に示すように、オイルダンパー150のロッド154がシリンダー152から引き出される伸長方向(+S方向)の変位の場合は、上側架台114の+S方向側の側壁117が皿ばね252を圧縮する。よって、皿ばね252を介して荷重が伝達される。したがって、オイルダンパー150と皿ばね252とが、直列剛性になり、剛性が低減する。
【0098】
なお、剛性低減機構250における皿ばね252のばね力は、
図13(B)に示す伸長方向(+S方向)の剛性が、
図13(A)に示すオイルダンパー150の収縮方向(−S方向)の剛性と同じ又は略同じとなるように調整されている。
【0099】
作用効果は第一変形例と同様であるので説明を省略する。
【0100】
(第三変形例)
図14に示す第三変形例の減衰機構205では、第一変形例の剛性低減機構250と第二変形例の剛性低減機構251との両方が設けられている。
【0101】
本変形例においても、剛性低減機構250及び剛性低減機構251におけるそれぞれの皿ばね252のばね力は、伸長方向(+S方向)の剛性が収縮方向(−S方向)の剛性と同じ又は略同じとなるように調整されている。作用効果は第一変形例及び第二変形例と同様であるので説明を省略する。
【0102】
[その他の変形例]
上記実施形態及び変形例では、二つのオイルダンパー150は、対向配置されていたが、これに限定されない。第一実施形態のように同向配置されていてもよい。また、三つ以上のオイルダンパー150を有していてもよい。更に、本発明が適用されていない比較例の減衰機構900(
図15参照)と上記実施形態及び変形例の減衰機構200、250、251とが設けられていてもよい。
【0103】
また、剛性減衰機構は皿ばねのばね力で、剛性を低減したがこれに限定されない。皿ばね以外のばね、例えば、コイルばねであってもよい。或いは、ばね以外の弾性体、例えば、ゴムであってもよい。或いは、弾性体以外の部材や機構等で剛性を低減させてもよい。
【0104】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0105】
例えば、第二実施形態(変形例を含む)の減衰機構では、複数のオイルダンパー150を有していたが、これに限定されない。一つのオイルダンパー150(伸縮体)のみを有する構成であってもよい。これによりは減衰機構を構成するロックダンパー150(伸縮体)の伸長方向のロック解除変位量と収縮方向のロック解除変位量とを一致又は近づけることができる。
【0106】
また、例えば、第一実施形態の減衰機構と第二実施形態の減衰機構との両方を有する免震装置(免震層)であってもよい。或いは、第一実施形態の減衰機構と第二実施形態の減衰機構と比較例の減衰機構の三つを有する免震装置(免震層)であってもよい。
【0107】
また、例えば、積層ゴム52以外の免震支承(アイソレータ)、例えば、すべり支承や転がり支承であってもよい。
【0108】
また、ロック機構付きのオイルダンパー150は一例であって、他の構成のロック機構付のダンパーであってもよい。要は、ロック解除荷重を超えるとロックが解除され減衰機能を発揮すると共にロック解除変位量が伸長方向と収縮方向とで異なる伸縮体であればよい。
【0109】
また、例えば、基礎免震構造でなく、中間免震構造にも本発明を適用できる。
【0110】
更に、本発明が適用された減衰機構は、免震装置(免震層)以外にも適用することができる。例えば、TMD(チューンド・マス・ダンパー)等の制振装置にも適用することができる。
【0111】
また、上述の複数の実施形態及び変形例は、適宜、組み合わされて実施可能である。更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。